(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】内視鏡撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20240611BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240611BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240611BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B13/18
G02B5/00 Z
G02B23/26 C
(21)【出願番号】P 2020158615
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123962
【氏名又は名称】斎藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】水澤 聖幸
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-008794(JP,A)
【文献】特開2011-228837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系と、
撮像面を持ち、且つ前記光学系により撮像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子と、を有し、
前記光学系が、
物体側から順に、
負の屈折力を有する第1レンズ群と、
第2レンズ群と、
正の屈折力を有する第3レンズ群と、を有し、
前記第1レンズ群は、最も物体側に、物体側に平面を向けた平凹負レンズを有し、
前記第2レンズ群は、絞りと、位相変調を行う光学面と、を有し、
前記位相変調を行う前記光学面は位相変調素子の像側面に設けられ、前記位相変調素子の物体側の面は平面であり、
前記光学面は、前記絞りと一致する位置、又は、前記絞りの隣に配置され、
前記位相変調によって、波面の位相に変化が生じ、
前記変化が生じたときの被写界深度の大きさは、前記変化が生じないときの被写界深度の大きさよりも大きくなるように、
前記位相変調によって、球面収差が付加され、
前記球面収差は、Fナンバーの値が小さくなるにつれてマイナス方向へ大きくなり、
以下の条件式(1)
、(2)
および(3)’を満足す
る撮像光学系
であることを特徴とする内視鏡撮像装置。
D2×cosα<D1 (1)
D1<D2 (2)
65°≦α (3)’
ここで、
前記マイナス方向は、近軸像面から前記撮像光学系に向かう方向、
αは、前記撮像光学系の半画角、
D1は、第1レンズ面における軸上光束の直径、
D2は、前記第1レンズ面における所定の軸外光束の直径、
前記第1レンズ面は、前記第1レンズ群において最も物体側に位置するレンズ面、
前記所定の軸外光束は、前記半画角で定義される光束、
である。
【請求項2】
前記球面収差の収差曲線は、変曲点を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像光学系、及びそれを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学系の特性を表す物理量として、被写界深度が知られている。被写界深度は、焦点を物体に合わせたときに、物体の像を鮮明に得ることができる範囲である。
【0003】
被写界深度は、物体空間における2つの点の間隔で表される。2つの点は、光軸上に位置している。
【0004】
2つの点のうち、一方の点を遠点とし、他方の点を近点とすると、近点は、遠点よりも光学系の近くに位置している。近点から遠点までの間に、焦点を合わせた物体の位置(以下、「合焦位置」という)が含まれている。
【0005】
通常光学系における被写界深度について説明する。通常光学系は、収差が良好に補正された光学系である。以下、通常光学系における被写界深度を、「通常深度」という。また、通常深度内に位置する物点に対応する光学像を、「通常点像」という。
【0006】
第1の状態は、物点の位置が合焦位置と一致している状態である。第2の状態は、物点の位置が遠点の位置と一致している状態である。第3の状態は、物点の位置が近点の位置と一致している状態である。
【0007】
点像N1は、第1の状態における通常点像である。点像N2は、第2の状態における通常点像である。点像N3は、第3の状態における通常点像である。
【0008】
通常点像の鮮明さは、点像N1で最も高い。よって、点像N2の鮮明さと点像N3の鮮明さは、点像N1の鮮明さよりも低い。
【0009】
ただし、点像N2の鮮明さと点像N1の鮮明さとの間に、大きさ違いはない。点像N3の鮮明さと点像N1の鮮明さとの間に、大きな違いはない。よって、点像N2の鮮明さと点像N3の鮮明さは、点像N1の鮮明さと、ほぼ同じであるとみなすことができる。
【0010】
物点が通常深度内に位置している場合、物点の位置にかかわらず、通常点像の鮮明さは点像N1の鮮明さと同じか、又は、ほぼ同じである。これに対して、物点が通常深度内に位置していない場合、通常点像の鮮明さは、点像N1の鮮明さよりも低い。
【0011】
物体の表面(以下、「表面OB」という)は、複数の物点で形成されている。表面OBが非平面で、通常深度よりも広い範囲に位置している場合、物点の光学像の鮮明さは、物点の位置に応じて異なる。
【0012】
通常深度内に位置している物体の表面(以下、「表面OBin」という)では、点像N1の鮮明さと同じ鮮明さ(以下、「鮮明さH」という)で、各物点の光学像が形成される。よって、表面OBinの光学像は、鮮明さHを有する。鮮明さHには、点像N1の鮮明さとほぼ同じ鮮明さが含まれている。
【0013】
これに対して、通常深度内に位置していない物体の表面(以下、「表面OBoff」という)では、点像N1の鮮明さよりも低い鮮明さ(以下、「鮮明さL」という)で、各物点の光学像が形成される。よって、表面OBoffの光学像は、鮮明さLを有する。
【0014】
表面OBの光学像を撮像素子で撮像することで、表面OBの画像を取得することができる。表面OBが通常深度よりも広い範囲に位置している場合、通常光学系で取得された画像には、表面OBinの画像と表面OBoffの画像が含まれる。
【0015】
表面OBinの画像は、鮮明さHを持つ画像である。鮮明な画像を、鮮明さHを持つ画像とすると、表面OBinの画像は鮮明な画像である。
【0016】
表面OBoffの画像は鮮明さLを持つ画像である。不鮮明な画像を、鮮明さLを持つ画像とすると、表面OBoffの画像は不鮮明な画像である。
【0017】
このように、表面OBが通常深度よりも広い範囲に位置している場合、通常光学系で取得された画像には、鮮明な画像と不鮮明な画像とが含まれる。
【0018】
1つの画像では、鮮明さの違いができるだけ少ない方が好ましい。鮮明さの違いを少なくするには、被写界深度を広くすれば良い。
【0019】
被写界深度は、例えば、以下の式で表される。
DOF=DOFf+DOFn
DOFf=(H×D)/(H-D)
DOFn=(H×D)/(H+D)
H=f2/(F×c)
ここで、
DOFは、被写界深度、
DOFfは、遠点側の被写界深度、
DOFnは、近点側の被写界深度、
Hは、過焦点距離、
Dは、光学系から合焦位置までの距離、
fは、光学系の焦点距離、
Fは、光学系のFナンバー、
cは、許容錯乱円の直径、
である。
【0020】
被写界深度を広くする方法として、EDoF(Extended of Depth of Field)が知られている。EDoFを用いた光学系(以下、「EDoF光学系」という)では、例えば、収差の追加が、意図的に行われる。
【0021】
被写界深度を表す式には、許容錯乱円の直径が含まれている。点像N1の大きさは、許容錯乱円の直径と見なすことができる。よって、点像N1の大きさを変えることで、被写界深度を変えることができる。
【0022】
点像N1の鮮明さが変化すると、点像N1の大きさが変化する。収差の追加では、点像N1の鮮明さが低下するように、球面収差が追加される。
【0023】
点像N1の鮮明さが低下すると、点像N1の大きさが大きくなる。点像N1の大きさが大きくなると、許容錯乱円の直径が大きくなる。よって、被写界深度が広げることができる。
【0024】
EDoF光学系では、点像N1の大きさが大きくなるような収差の追加が行われる。その結果、EDoF光学系は、通常深度よりも広い被写界深度を有する。以下、EDoF光学系における被写界深度を、「拡張深度」という。また、拡張深度内に位置する物点に対応する光学像を、「拡張点像」という。
【0025】
点像E1は、第1の状態における拡張点像である。点像E2は、第2の状態における拡張点像である。点像E3は、第3の状態における拡張点像である。
【0026】
拡張点像の鮮明さは、点像E1で最も高い。よって、点像E2の鮮明さと点像E3の鮮明さは、点像E1の鮮明さよりも低い。
【0027】
ただし、点像E2の鮮明さと点像E1の鮮明さとの間に、大きさ違いはない。点像E3の鮮明さと点像E1の鮮明さとの間に、大きさ違いはない。よって、点像E2の鮮明さと点像E3の鮮明さは、点像E1の鮮明さと、ほぼ同じであるとみなすことができる。
【0028】
物点が拡張深度内に位置している場合、物点の位置にかかわらず、拡張点像の鮮明さは点像E1の鮮明さと同じか、又は、ほぼ同じである。これに対して、物点が拡張深度内に位置していない場合、拡張点像の鮮明さは、点像E1の鮮明さよりも低い。
【0029】
物体が通常深度よりも広い範囲に位置する場合について説明する。
【0030】
拡張深度は、通常深度よりも広い。よって、表面OBoffであっても、表面OBoffが拡張深度内に位置していれば、点像E1の鮮明さと同じ鮮明さで、表面OBoffの光学像が形成される。
【0031】
ただし、点像E1の大きさは、点像N1の大きさよりも大きい。そのため、点像E1の鮮明さは、点像N1の鮮明さより低い。その結果、EDoF光学系で取得された画像では、表面OBinの画像と表面OBoffの画像は、不鮮明な画像になる。
【0032】
不鮮明な画像は、焦点がぼけた画像である。そのため、不鮮明な画像のままでは、例えば、観察と診断に用いることができない。しかしながら、不鮮明な画像に対して回復処理を施すことで、鮮明な画像を得ることができる。
【0033】
光学系による結像では、以下の関係が成立する。
I(x,y)=O(x,y)*PSF(x,y) (A)
ここで、
O(x,y)は、物体、
I(x,y)は、物体の光学像、
PSF(x,y)は、点像分布関数、
*は、コンボリューションを表す演算子、
である。
【0034】
式(A)から分かるように、I(x,y)とPSF(x,y)から、O(x,y)を求めることができる。回復処理では、I(x,y)とPSF(x,y)を用いてデコンボリューションが行われる。その結果、O(x,y)を求めることができる。
【0035】
式(A)は、物体と、その物体の光学像との関係を表している。そのため、物体が光軸方向の広い範囲に位置する場合、光軸方向における物体の位置(以下、「物体位置」という)ごとに、PSF(x,y)を求めなくてはならない。
【0036】
PSF(x,y)は、点像の強度分布を表している。点像の強度分布は、光学系の瞳関数に基づいて求めることができる。よって、光学系の瞳関数から、PSF(x,y)を求めることができる。
【0037】
ただし、点像の強度分布は、物体位置ごとに異なる。そのため、物体位置ごとに、PSF(x,y)を求めなくてはならない。しかしながら、物体位置ごとにPSF(x,y)を求めることは、非常に困難である。
【0038】
上述のように、EDoF光学系では、点像E2の鮮明さと点像E3の鮮明さは、点像E1の鮮明さとほぼ同じである。そのため、物点が拡張深度内に位置している場合、拡張点像の強度分布は、物体位置にかかわらず同じであると見なすことができる。
【0039】
全ての物体位置で拡張点像の強度分布が同じ場合、全ての物体位置における拡張点像の強度分布は、1つのPSF(x,y)で表すことができる。よって、EDoF光学系では、物体位置ごとにPSF(x,y)を求める必要が無い。
【0040】
EDoF光学系では、PSF(x,y)の数は1つになる。回復処理では、1つPSF(x,y)を用いれば良いので、容易に、O(x,y)を求めることができる。
【0041】
広い被写界深度を有する結像光学系が、特許文献1に開示されている。この結像光学系では、被写界深度を拡大するために、意図的に球面収差が光学系に付加されている。球面収差は、位相板により付加されている。
【0042】
この結像光学系では、以下の条件を満足する。
A/10≧B
ここで、
Aは、球面収差が付加された後の球面収差量、
Bは、球面収差が付加される前の結像光学系の像面湾曲の最大値、
である。
【0043】
この条件を満足することで、被写界深度の拡大に対する像面湾曲の影響を、実質的に除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
特許文献1の結像光学系では、球面収差が付加される前の結像光学系において、像面湾曲を小さくしている。像面湾曲を小さくするためには、例えば、結像光学系に使用するレンズの枚数を多くすれば良い。しかしながら、レンズの枚数を多くすると、光学系の全長が長くなってしまう。
【0046】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、光学系の全長が短く、被写界深度が広い撮像光学系を提供することを目的とする。また、被写界深度が広く、且つ鮮明な画像を、容易に生成できる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0047】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る内視鏡撮像装置は、
光学系と、
撮像面を持ち、且つ光学系により撮像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子と、を有し、
光学系が、
物体側から順に、
負の屈折力を有する第1レンズ群と、
第2レンズ群と、
正の屈折力を有する第3レンズ群と、を有し、
第1レンズ群は、最も物体側に、物体側に平面を向けた平凹負レンズを有し、
第2レンズ群は、絞りと、位相変調を行う光学面と、を有し、
位相変調を行う光学面は位相変調素子の像側面に設けられ、位相変調素子の物体側の面は平面であり、
光学面は、絞りと一致する位置、又は、絞りの隣に配置され、
位相変調によって、波面の位相に変化が生じ、
変化が生じたときの被写界深度の大きさは、変化が生じないときの被写界深度の大きさよりも大きくなるように、
位相変調によって、球面収差が付加され、
球面収差は、Fナンバーの値が小さくなるにつれてマイナス方向へ大きくなり、
以下の条件式(1)、(2)および(3)’を満足する撮像光学系であることを特徴とする。
D2×cosα<D1 (1)
D1<D2 (2)
65°≦α (3)’
ここで、
マイナス方向は、近軸像面から撮像光学系に向かう方向、
αは、撮像光学系の半画角、
D1は、第1レンズ面における軸上光束の直径、
D2は、第1レンズ面における所定の軸外光束の直径、
第1レンズ面は、第1レンズ群において最も物体側に位置するレンズ面、
所定の軸外光束は、半画角で定義される光束、
である。
【0048】
また、本発明の撮像装置は、
光学系と、
撮像面を持ち、且つ光学系により撮像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子と、を有し、
光学系が撮像光学系であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、光学系の全長が短く、広い被写界深度を有する撮像光学系を提供することができる。また、被写界深度が広く、且つ鮮明な画像を、容易に生成できる撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本実施形態の撮像光学系のレンズ断面図である。
【
図2】第1レンズ面に入射する光束を示す図である。
【
図3】実施例1の撮像光学系のレンズ断面図である。
【
図4】実施例1の撮像光学系のMTFを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
実施例の説明に先立ち、本発明のある態様にかかる実施形態の作用効果を説明する。なお、本実施形態の作用効果を具体的に説明するに際しては、具体的な例を示して説明することになる。しかし、後述する実施例の場合と同様に、それらの例示される態様はあくまでも本発明に含まれる態様のうちの一部に過ぎず、その態様には数多くのバリエーションが存在する。したがって、本発明は例示される態様に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態の撮像光学系は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、を有し、第2レンズ群は、絞りと、位相変調を行う光学面と、を有し、光学面は、絞りと一致する位置、又は、絞りの近傍に配置され、位相変調によって、波面の位相に変化が生じ、変化が生じたときの許容錯乱円の大きさは、変化が生じないときの許容錯乱円の大きさよりも大きく、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
D2×cosα<D1 (1)
ここで、
αは、撮像光学系の半画角、
D1は、第1レンズ面における軸上光束の直径、
D2は、第1レンズ面における所定の軸外光束の直径、
第1レンズ面は、第1レンズ群において最も物体側に位置するレンズ面、
所定の軸外光束は、半画角で定義される光束、
である。
【0053】
図1は、本実施形態の撮像光学系のレンズ断面図である。撮像光学系OBJは、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、を有する。
【0054】
第1レンズ群G1は、負の屈折力を有する。第2レンズ群G2は、正の屈折力を有する。ただし、第2レンズ群G2の屈折力は、正の屈折力に限られない。第3レンズ群G3は、正の屈折力を有する。
【0055】
第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、及び第3レンズ群G3は、例えば、以下のように形成することができる。
【0056】
第1レンズ群G1は、負レンズL1を有することができる。第2レンズ群G2は、正レンズL2と、位相変調素子PMと、絞りSと、を有することができる。第3レンズ群G3は、正レンズL3と、正レンズL4と、負レンズL5と、正レンズL6と、を有することができる。
【0057】
撮像光学系OBJでは、負レンズL1が、最も物体側に配置されている。そのため、広い画角を確保することができる。
【0058】
撮像光学系OBJの像面には、光学像が形成される。光学像は、例えば、撮像素子を用いて撮像することができる。撮像素子は、カバーガラスを有する。カバーガラスの配置を可能にするためには、長いバックフォーカスが必要である。
【0059】
広い画角を有する光学系では、焦点距離が短い。焦点距離が短い光学系では、バックフォーカスが短い。撮像光学系OBJは広い画角を有するので、バックフォーカスが短い。よって、広い画角を確保しつつ、長いバックフォーカスを確保する必要がある。
【0060】
長いバックフォーカスを確保できる光学系として、レトロフォーカス型の光学系が知られている。レトロフォーカス型の光学系では、屈折力の並びが、負の屈折力、正の屈折力になっている。
【0061】
撮像光学系OBJでは、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3とで、屈折力の並びが、負の屈折力、正の屈折力になっている。この場合、撮像光学系OBJでは、レトロフォーカス型の光学系が形成されていると考えることができる。そのため、バックフォーカスを十分に確保することができる。その結果、像面の物体側に、カバーガラスを配置することができる。また、像面の物体側に、光学フィルタを配置することができる。
【0062】
第2レンズ群G2では、位相変調が行われる。位相変調とは、例えば、波面の位相を変化させることである。波面の位相に変化が生じると、収差が変化する。よって、位相変調は、収差の付加と見なすことができる。
【0063】
位相変調は、光学面で行うことができる。位相変調を行うために、第2レンズ群G2には、位相変調を行う光学面(以下、「位相変調面」という)が配置されている。
【0064】
第2レンズ群G2は、絞りSと、位相変調面PMSと、を有する。位相変調面PMSは、位相変調素子PMの像側面に設けられている。位相変調素子PMの物体側面は、平面である。
【0065】
絞りSは、撮像光学系OBJの瞳位置に配置されている。ただし、絞りSは、瞳位置の近傍に配置されていても良い。この場合、絞りSは、開口絞りと見なすことができる。
【0066】
位相変調面PMSは、絞りSと一致する位置、又は、絞りSの近傍に配置されている。上述のように、絞りSは、撮像光学系OBJの瞳位置に配置されている。そのため、軸上光束と軸外光束の両方に対して、同じ位相変調を行うことができる。
【0067】
撮像光学系OBJでは、位相変調によって、波面の位相に変化が生じる。波面の位相に変化が生じると、位相変調面PMSから射出される波面の位相は、位相変調面PMSに入射する波面の位相と異なる。
【0068】
波面の位相に変化が生じることで、許容錯乱円の大きさが変化する。変化が生じたときの許容錯乱円の大きさは、変化が生じないときの許容錯乱円の大きさよりも大きい。
【0069】
許容錯乱円の大きさが大きくなると、物体距離の変化に対する許容錯乱円の大きさの変化(以下、「所定の変化」という)が小さくなる。所定の変化が小さいということは、被写界深度が広いことを意味している。よって、波面の位相に変化が生じたときの被写界深度は、波面の位相に変化が生じないときの被写界深度よりも広くなる。
【0070】
波面の位相に変化が生じないとき、収差が良好に補正されているとする。収差が良好に補正されている光学系は、通常光学系である。撮像光学系OBJでは、波面の位相に変化が生じている。よって、撮像光学系OBJにおける被写界深度は、通常光学系における被写界深度よりも広い。
【0071】
通常光学系における被写界深度は、通常深度である。撮像光学系OBJは、通常深度よりも広い被写界深度を有する。上述のように、EDoF光学系は、通常深度よりも広い被写界深度を有する。よって、撮像光学系OBJは、EDoF光学系である。
【0072】
本実施形態の撮像光学系は、EDoF光学系であると共に、条件式(1)を満足する。条件式(1)は、軸上光束の直径と所定の軸外光束の直径に関する条件式である。軸上光束の直径と所定の軸外光束の直径について説明する。
【0073】
図2は、第1レンズ面に入射する光束を示す図である。
図2には、負レンズL1、光束Lon、及び光束Loffが図示されている。
【0074】
負レンズL1は、第1レンズ面S1を有する。第1レンズ群G1では、負レンズL1が、最も物体側に配置されている。よって、第1レンズ面S1は、第1レンズ群G1において最も物体側に位置するレンズ面である。
【0075】
第1レンズ面S1には、様々な角度で光束が入射する。第1レンズ面S1に入射する光束には、軸上光束と軸外光束が含まれている。軸上光束では、中心光線が光軸AXと一致している。軸外光束では、中心光線が光軸AXと交差している。
【0076】
光束Lonでは、中心光線が光軸AXと一致している。よって、光束Lonは、軸上光束である。
【0077】
光束Loffは、主光線CRmaxが光軸AXと交差している。よって、光束Loffは、軸外光束を表している。
【0078】
光束Loffでは、主光線CRmaxと光軸AXとのなす角がαである。撮像光学系OBJの画角をωとすると、α=ω/2である。よって、αは、撮像光学系OBJの半画角を表している。画角は、光学系で撮像することができる物体空間の最大範囲を表す角度である。
【0079】
主光線と光軸とのなす角度が半画角のときの光束を、半画角で定義される光束とする。また、半画角で定義される光束を、所定の軸外光束とする。
【0080】
光束Loffでは、主光線CRmaxと光軸AXとのなす角度が半画角である。よって、光束Loffは、半画角で定義される光束である。半画角で定義される光束は所定の軸外光束なので、光束Loffは所定の軸外光束を表している。
【0081】
光束Lonと光束Loffは、物点が無限遠に位置しているときの光束を表している。物点は無限遠に位置しているため、光束Lonと光束Loffは、共に平行光束である。光束Lonと光束Loffは、第1レンズ面S1に入射する。
【0082】
直径D1は、第1レンズ面S1における光束Lonの直径である。光束Lonは軸上光束なので、直径D1は、第1レンズ面S1における軸上光束の直径である。直径D2は、第1レンズ面S1における光束Loffの直径である。光束Loffは所定の軸外光束なので、直径D2は、第1レンズ面S1における所定の軸外光束の直径である。
【0083】
光束Lonの直径は、中心光線と直交する平面内における光束の直径である。光束Lonでは、中心光線と直交する平面は、第1レンズ面S1と平行である。よって、光束Lonの直径は、直径D1と等しい。
【0084】
光束Loffの直径は、主光線CRmaxと直交する平面内における光束の直径である。光束Loffでは、主光線CRmaxと直交する平面は、第1レンズ面S1と非平行である。よって、光束Loffの直径は、直径D2と異なる。光束Loffの直径は、D2×cosαである。
【0085】
光束の直径と収差の発生量との関係について説明する。
【0086】
本実施形態の撮像光学系は、通常光学系に位相変調面が配置された光学系、と見なすことができる。上述のように、位相変調は、収差の付加と見なすことができる。よって、本実施形態の撮像光学系で発生する収差には、通常光学系で発生する収差(以下、「基本収差」という)と、位相変調面で発生する収差(以下、「追加収差」という)と、が含まれる。
【0087】
被写界深度の広さは、許容錯乱円の大きさに応じて変化する。位相変調によって被写界深度を変化させるためには、許容錯乱円の大きさが、主に追加収差によって変化すれば良い。許容錯乱円の大きさを追加収差によって変化させるためには、基本収差の収差量(以下、「基本収差量」という)が、追加収差の収差量に比べて非常に少なければ良い。
【0088】
基本収差量は、軸上収差の収差量(以下、「軸上収差量」という)と、軸外収差の収差量(以下、「軸外収差量」という)と、で決まる。
【0089】
軸外光束のFナンバーの値が軸上光束のFナンバーの値と同じ場合、一般的には、軸外収差量の方が、軸上収差量よりも多い。基本収差量を少なくするためには、軸外収差量を少なくする必要がある。通常光学系において軸外収差量を少なくするためには、多くのレンズを用いる必要がある。
【0090】
条件式(1)を満足する場合、所定の軸外光束の直径は、軸上光束の直径よりも小さい。そのため、所定の軸外光束におけるFナンバーの値は、軸上光束におけるFナンバーの値よりも大きい。
【0091】
被写界深度は、Fナンバーの値が大きくなるほど広くなる。そのため、本実施形態の撮像光学系では、所定の軸外光束における被写界深度は、軸上光束における被写界深度よりも広い。
【0092】
収差量は、Fナンバーの値が大きくなるほど少なくなる。そのため、本実施形態の撮像光学系では、軸外光束のFナンバーの値が軸上光束のFナンバーの値と同じ場合に比べて、軸外収差量が少ない。
【0093】
上述のように、軸外収差量を少なくするためには、通常光学系において、多くのレンズを用いる必要がある。しかしながら、本実施形態の撮像光学系では、軸外収差量が少ない。そのため、通常光学系において、多くのレンズを用いる必要がない。よって、光学系の全長を短くすることができる。
【0094】
また、許容錯乱円の大きさは、Fナンバーの値が大きくなるほど大きくなる。そのため、本実施形態の撮像光学系では、軸外光束のFナンバーの値が軸上光束のFナンバーの値と同じ場合に比べて、軸外光束における許容錯乱円の大きさが大きい。
【0095】
許容錯乱円の大きさが大きくなるほど、軸外収差量が許容錯乱円に及ぼす影響は小さくなる。そのため、本実施形態の撮像光学系では、軸外光束のFナンバーの値が軸上光束のFナンバーの値と同じ場合に比べて、通常光学系において、より大きな軸外収差の発生を許容することができる。その結果、例えば、像面湾曲が大きく発生していても、広い被写界深度を得ることができる。
【0096】
また、光学系の製造では、例えば、レンズの加工と光学系の組み立てが行われる。レンズの加工では加工誤差が生じ、光学系の組み立てでは組み立て誤差が生じることがある。これらの誤差が生じると、例えば、片ボケと呼ばれる現象が生じる。片ボケが生じると、取得した画像では、右側の周辺部は鮮明であっても、左側の周辺部は不鮮明になる。
【0097】
片ボケが生じているときのPSF(x,y)は、設計時のPSF(x,y)と異なる。そのため、設計時のPSF(x,y)を用いて回復処理を行っても、被写界深度が広い画像を鮮明に取得することができない。
【0098】
本実施形態の撮像光学系では、より大きな軸外収差の発生を許容することができる。片ボケを軸外収差と見なすと、本実施形態の撮像光学系では、片ボケの影響を最小限に抑えることができる。そのため、取得した画像に片ボケが生じていても、設計時のPSF(x,y)を用いて回復処理を行うことで、被写界深度が広い画像を鮮明に取得することができる。
【0099】
物点が無限遠に位置していない場合、光束Lonと光束Loffは、共に発散光である。この場合、光束Lonと光束Loffの比較は、物体側開口数で行うことができる。条件式(1)を満足する場合、所定の軸外光束における物体側開口数の値は、軸上光束における物体側開口数の値よりも小さい。
【0100】
被写界深度は、物体側開口数の値が小さくなるほど広くなる。そのため、本実施形態の撮像光学系では、所定の軸外光束における被写界深度は、軸上光束における被写界深度よりも広い。
【0101】
よって、物点が無限遠に位置していても、物点が無限遠に位置していなくても、本実施形態の撮像光学系では、所定の軸外光束における被写界深度は、軸上光束における被写界深度よりも広い。
【0102】
位相変調素子PMでは、物体側面は平面である。しかしながら、物体側面は、球面にすることができる。物体側面を球面にすることで、物体側面を、通常光学系の収差補正に用いることができる。
【0103】
位相変調素子PMの像側面は、通常光学系の収差補正に用いても良い。この場合、位相変調素子PMの像側面では、位相変調と通常光学系の収差補正が行われる。また、通常光学系を形成するレンズのレンズ面に、位相変調を付加しても良い。
【0104】
本実施形態の撮像光学系は、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
D1<D2 (2)
ここで、
D1は、第1レンズ面における軸上光束の直径、
D2は、第1レンズ面における所定の軸外光束の直径、
第1レンズ面は、第1レンズ群において最も物体側に位置するレンズ面、
所定の軸外光束は、半画角で定義される光束、
である。
【0105】
条件式(2)を満足することで、視野の周辺での解像力の低下を防止することができる。その結果、本実施形態の撮像光学系よれば、視野の中心から周辺まで、ほぼ同じ解像力を維持することができる。
【0106】
本実施形態の撮像光学系は、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
40°≦α (3)
ここで、
αは、撮像光学系の半画角、
である。
【0107】
条件式(3)を満足することで、広い視野を得ることができる。
【0108】
本実施形態の撮像光学系は、撮像装置、例えば内視鏡の対物光学系に用いることができる。内視鏡では、対物光学系は、例えば体腔内に挿入される。本実施形態の撮像光学系によれば、体腔内の広い範囲を、鮮明に観察することができる。
【0109】
本実施形態の撮像光学系では、全ての物体位置で、以下の条件式(4)を満足する所定の空間周波数帯域を有し、所定の空間周波数帯域の最大空間周波数は、ナイキスト周波数の近傍の空間周波数であることが好ましい。
0.08≦VMTF (4)
ここで、
VMTFは、物体高がゼロのときのMTFの値、
物体位置は、近点から遠点までの間の任意の位置、
近点は、撮像光学系の被写界深度において、撮像光学系に対して最も近くに位置する点、
遠点は、被写界深度において、撮像光学系に対して最も遠くに位置する点、
である。
【0110】
本実施形態の撮像光学系よれば、視野の中心から周辺まで、高い解像力を維持することができる。
【0111】
本実施形態の撮像光学系では、位相変調によって、球面収差が付加されることが好ましい。
【0112】
本実施形態の撮像光学系よれば、広い被写界深度を得ることができる。
【0113】
本実施形態の撮像光学系は、球面収差は、Fナンバーの値が小さくなるにつれてマイナス方向へ大きくなり、マイナス方向は、近軸像面から撮像光学系に向かう方向であり、球面収差の収差曲線は、変曲点を有することが好ましい。
【0114】
本実施形態の撮像光学系よれば、広い被写界深度を得ることができる。
【0115】
本実施形態の撮像光学系では、第1レンズ面は、凸面又は平面であることが好ましい。
【0116】
第1レンズ面は、物体に面している。そのため、第1レンズ面は、物体と接触する可能性がある。第1レンズ面を凸面又は平面にすることで、接触時の衝撃を緩和することができる。
【0117】
また、本実施形態の撮像光学系は、内視鏡の対物光学系に用いることができる。第1レンズ面を凸面又は平面にすることで、第1レンズ面の汚れを容易に落とすことができる。
【0118】
第1レンズ面が凸面の場合、凸面はなめらかな面であることが好ましい。また、凸面の曲率半径は大きいことが好ましい。凸面の曲率半径を大きくすることで、物体側への突出量を少なくすることができる。
【0119】
本実施形態の撮像光学系では、0からナイキスト周波数近傍までの周波数帯域、かつ近距離物体から遠距離物体までの領域で物体高0の光線のMTFが8%以上であることが好ましい。
【0120】
本実施形態の撮像光学系よれば、視野の中心から周辺まで、高い解像力を維持することができる。
【0121】
本実施形態の撮像装置は、光学系と、撮像面を持ち、且つ光学系により撮像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子と、を有し、光学系が本実施形態の撮像光学系であることを特徴とする。
【0122】
本実施形態の撮像装置よれば、被写界深度が広く、且つ鮮明な画像を、容易に生成することができる。
【0123】
以下に、撮像光学系の実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0124】
図3は、実施例1の撮像光学系のレンズ断面図である。第1レンズ群はG1、第2レンズ群はG2、第3レンズ群はG3、絞りはS、像面(撮像面)はIで示してある。
【0125】
実施例1の撮像光学系は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、を有する。
【0126】
第1レンズ群G1は、物体側に平面を向けた平凹負レンズL1を有する。
【0127】
第2レンズ群G2は、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL2と、位相変調素子PMと、を有する。位相変調素子PMでは、物体側は平面で、像側面は非球面である。
【0128】
第3レンズ群G3は、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3と、両凸正レンズL4と、平凹負レンズL5と、像側に平面を向けた平凸正レンズL6と、を有する。両凸正レンズL4と平凹負レンズL5とが接合されている。
【0129】
絞りSは、第2レンズ群G2に配置されている。より詳しくは、位相変調素子PMの像側面に配置されている。
【0130】
図4は、実施例1の撮像光学系のMTFを示す図である。
図4(a)は、物体距離が3mmのときのMTFである。
図4(b)は、物体距離が6.6mmのときのMTFである。
図4(c)は、物体距離が150mmのときのMTFである。
【0131】
実線は、軸上光束におけるMTFである。破線と一点鎖線は、所定の軸外光束におけるMTFである。破線はラジアル方向におけるMTFで、一点鎖線はタンジェンシャル方向におけるMTFである。点線は、回折限界におけるMTFの最大値を示している。
【0132】
軸上光束では、物体距離の変化に伴って、MTF曲線のピークの位置が大きく変化している。一方、所定の軸外光束でも、物体距離の変化に伴って、MTF曲線のピークの位置が変化している。
【0133】
しかしながら、所定の軸外光束におけるピークの位置の変化は、軸上光束におけるピークの位置の変化よりも小さい。特に、タンジェンシャル方向におけるMTFでは、ピークの位置が変化は非常に小さい。
【0134】
これは、所定の軸外光束では、物体距離が変化したときのデフォーカスの影響が、軸上光束に比べて小さいことを意味している。デフォーカスの影響が小さいということは、許容錯乱円の大きさの変化が小さいということである。
【0135】
上述のように、許容錯乱円の大きさの変化が小さいと、被写界深度が広い。よって、本実施例の撮像光学系では、所定の軸外光束における被写界深度は、軸上光束における被写界深度よりも広い。
【0136】
また、MTF曲線のピークの値は、軸上光束と所定の軸外光束とで、ほぼ同じである。よって、本実施例の撮像光学系では、視野の中心から周辺まで、ほぼ同じ解像力を維持することができる。
【0137】
以下に、実施例1の数値データを示す。面データにおいて、rは各レンズ面の曲率半径、dは各レンズ面間の間隔、neは各レンズのe線の屈折率、νdは各レンズのアッベ数、*印は非球面である。
【0138】
各種データにおいて、OBは物体距離、fは全系の焦点距離、FNO.はFナンバー、αは半画角である。
【0139】
また、非球面形状は、光軸方向をz、光軸に直交する方向をyにとり、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14…としたとき、次の式で表される。
z=(y2/r)/[1+{1-(1+k)(y/r)2}1/2]
+A4y4+A6y6+A8y8+A10y10+A12y12+A14y14+…
また、非球面係数において、「E+n」(nは整数)は、「10n」を示している。なお、これら諸元値の記号は後述の実施例の数値データにおいても共通である。
【0140】
数値実施例1
単位 mm
面データ
面番号 r d ne νd
1 ∞ 0.220 1.88815 40.76
2 0.6260 0.549
3 -3.1353 0.472 1.97188 17.47
4 -1.8636 0.033
5 ∞ 0.801 1.51825 64.14
6* ∞ 0
7(絞り) ∞ 0.187
8 -7.8277 0.582 1.88815 40.76
9 -1.3859 0.088
10 2.0766 0.692 1.69979 55.53
11 -1.3376 0.297 1.97188 17.47
12 ∞ 0.362
13 1.6055 0.953 1.51825 64.14
14 ∞ 0
像面 ∞
非球面データ
第6面
k=0.000
A4=-2.7933E+01,A6=3.0550E+03,A8=-1.5491E+05,
A10=4.0813E+06,A12=-5.7054E+07,A14=3.3699E+08
各種データ
OB 6.6
f 0.5
FNO. 3.8
α 65
【0141】
実施例1における条件式の値を以下に掲げる。
実施例1
(1)D2×cosα 0.063
(2)D1<D2
D1 0.121
D2 0.148
(3)α 65
【0142】
図5は、撮像装置の実施例を示す図である。撮像装置1は、撮像光学系2と、撮像素子3と、を有する。撮像光学系2には、例えば、実施例1の撮像光学系が用いられている。
撮像光学系2によって、像面に、物体4の光学像が形成される。
【0143】
像面には、撮像素子3の撮像面が位置している。撮像素子3によって、光学像は撮像される。光学像は電気信号に変換される。その結果、物体4の画像が取得される。
【0144】
撮像光学系2は、EDoF光学系である。EDoF光学系で取得された画像は、物体が拡張深度内に位置していても、不鮮明な画像である。よって、撮像装置1では、物体4の不鮮明な画像が取得される。
【0145】
撮像装置1は、画像処理装置5と組み合わせることができる。物体4の画像は、画像処理装置5に入力される。画像処理装置5では、物体4の画像に対して回復処理を施すことができる。その結果、物体4の鮮明な画像を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上のように、本発明は、光学系の全長が短く、広い被写界深度を有する撮像光学系に適している。また、本発明は、被写界深度が広く、且つ鮮明な画像を、容易に生成できる撮像装置に適している。
【符号の説明】
【0147】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
PM 位相変調素子
PMS 位相変調面
S 絞り
L1 負レンズ
Lon、Loff 光束
S1 第1レンズ面
AX 光軸
CRmax 主光線
α 半画角
ω 画角
D1、D2 直径
I 像面
1 撮像装置
2 撮像光学系
3 撮像素子
4 物体
5 画像処理装置