(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】圧力逃がし弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20240611BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20240611BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20240611BHJP
F24D 5/12 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F16K17/04 Z
F24H1/18 G
F24H4/02 F
F24D5/12
(21)【出願番号】P 2023216817
(22)【出願日】2023-12-22
【審査請求日】2023-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391060029
【氏名又は名称】株式会社ダンレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】関 政志
(72)【発明者】
【氏名】石井 和壽
(72)【発明者】
【氏名】秋山 涼
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-304039(JP,A)
【文献】特開2017-180538(JP,A)
【文献】特開2011-220471(JP,A)
【文献】特開2015-117758(JP,A)
【文献】特開2013-100868(JP,A)
【文献】米国特許第04799506(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/00-17/168
31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と弁座と弁軸と弁体を閉弁方向へ付勢するバネとを有する弁機構と、弁機構を収容するケーシングと、ケーシング外へ延びた弁軸一端部にピンを介して揺動可能に連結する手動開弁用レバーと、前記弁軸一端部のケーシング外への突出量が所定値未満の時に弁開閉方向とは異なる所定方向への手動開弁用レバーの移動を阻止して前記所定方向に関して手動開弁用レバーを第1位置に保持し、前記突出量が所定値以上の時に手動開弁用レバーの前記所定方向への移動を許容する第1レバー移動規制機構と、前記所定方向へ手動開弁用レバーを付勢する弾性体と、前記所定方向へ移動して前記所定方向に関して第2位置にある手動開弁用レバーに係合して手動開弁用レバーに連結する弁軸の閉弁方向への移動を阻止する第2レバー移動規制機構と、を備えることを特徴とする圧力逃がし弁。
【請求項2】
第1レバー移動規制機構は、手動開弁用レバーの前記所定方向に差し向けられた表面と、ケーシング外面から起立し手動開弁用レバーの前記所定方向に差し向けられた前記表面に当接可能な突起部とを備え、第2レバー移動規制機構は、手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた表面と、ケーシング外面から起立し手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた前記表面に当接可能な突起部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の圧力逃し弁。
【請求項3】
前記所定方向に関する第2位置に於ける手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた表面とケーシング外面の突起との当接面が、第2位置から第1位置へ向けて開弁方向へ傾斜した斜面を形成していることを特徴とする請求項2に記載の圧力逃し弁。
【請求項4】
弁体がベロフラムを有すること特徴とする
請求項1に記載の圧力逃がし弁。
【請求項5】
貯湯タンクを有する貯湯ユニットとヒートポンプを有する熱源ユニットと、貯湯ユニットと熱源ユニットとを接続する循環路に取り付けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の圧力逃がし弁とを備えることを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項6】
室内熱交換機を有する暖房ユニットとヒートポンプを有する熱源ユニットと、暖房ユニットと熱源ユニットとを接続する循環路に取り付けられた請求項1乃至4の何れか1項に記載の圧力逃がし弁とを備えることを特徴とする暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力逃がし弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、流体経路内圧が所定値以上になった時に開弁し、流体経路内の流体を外部環境へ放出して、流体経路内圧を低下させる圧力逃がし弁を特許文献1で提案した。
上記圧力逃し弁は、従来の圧力逃し弁が、開弁して流体経路内圧が所定値未満まで低下すると閉弁するように構成されており、流体経路に接続された機器の不具合等の原因で流体経路内圧が異常高圧になった時でも開弁して流体経路内圧が低下すると閉弁するので、前記原因が解消される前に流体経路内圧が再び異常高圧になる事態が発生する可能性があるという、従来の圧力逃し弁の問題点に鑑みてなされたものであり、流体経路内圧が異常高圧になった時に開弁状態を維持できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧力逃がし弁には、流体経路内圧が異常高圧になった時に開弁状態を維持するための機構が弁ケーシング内に配設されており弁機構が複雑化しているという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、流体経路内圧が異常高圧になった時に開弁状態を維持できる圧力逃がし弁であって、弁機構の複雑化が防止された圧力逃し弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、弁体と弁座と弁軸と弁体を閉弁方向へ付勢するバネとを有する弁機構と、弁機構を収容するケーシングと、ケーシング外へ延びた弁軸一端部にピンを介して揺動可能に連結する手動開弁用レバーと、前記弁軸一端部のケーシング外への突出量が所定値未満の時に弁開閉方向とは異なる所定方向への手動開弁用レバーの移動を阻止して前記所定方向に関して手動開弁用レバーを第1位置に保持し、前記突出量が所定値以上の時に手動開弁用レバーの前記所定方向への移動を許容する第1レバー移動規制機構と、前記所定方向へ手動開弁用レバーを付勢する弾性体と、前記所定方向へ移動して前記所定方向に関して第2位置にある手動開弁用レバーに係合して手動開弁用レバーに連結する弁軸の閉弁方向への移動を阻止する第2レバー移動規制機構と、を備えることを特徴とする圧力逃がし弁を提供する。
手動開弁用レバーが弁ケーシング外に配設された圧力逃し弁が一般に使用されている。手動開弁用レバーは、手動で強制開弁させることにより、外部環境へ放出する液体を用いて弁体や弁座に付着した異物を洗い流すために設けられる。本発明では手動開弁用レバーを利用して流体経路内圧が異常高圧になった時に開弁状態を維持する機構を構成した。
流体経路内圧が圧力逃し弁の開弁圧を越えて圧力逃がし弁が開弁しても、流体経路内圧が所定値未満で弁軸一端部のケーシング外への突出量が所定値未満の時は第1レバー移動規制機構が作動して手動開弁用レバーの弁開閉方向とは異なる所定方向への移動が阻止されているので、流体経路内圧が低下すれば手動開弁用レバーも弁軸も閉弁方向へ移動して圧力逃し弁は閉弁する。流体経路内圧が異常高圧になり弁軸一端部のケーシング外への突出量が所定値以上になり、第1レバー移動規制機構による移動規制が解除されて弾性体により付勢された手動開弁用レバーが弁開閉方向とは異なる所定方向へ移動して前記所定方向に関して第2位置に到達すると、第2レバー移動規制機構が作動して手動開弁用レバーに連結する弁軸の閉弁方向への移動が規制されて開弁状態が維持される。
手動開弁用レバーの移動機構、移動規制機構はケーシング外に配設されるので、弁機構は複雑化しない。
手動開弁用レバーを第2位置から第1位置へ向けて押すことにより開弁状態を解除できる。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、第1レバー移動規制機構は、手動開弁用レバーの前記所定方向に差し向けられた表面と、ケーシング外面から起立し手動開弁用レバーの前記所定方向に差し向けられた前記表面に当接可能な突起部とを備え、第2レバー移動規制機構は、手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた表面と、ケーシング外面から起立し手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた前記表面に当接可能な突起部とを備える。
手動開弁用レバーの前記所定方向に差し向けられた表面と、ケーシング外面から起立し手動開弁用レバーの前記所定方向に差し向けられた前記表面に当接可能な突起部とで第1レバー移動規制機構を形成でき、手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた表面と、ケーシング外面から起立し手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた前記表面に当接可能な突起部とで第2レバー移動規制機構を形成できる。
本発明の好ましい態様においては、前記所定方向に関する第2位置に於ける手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた表面とケーシング外面の突起との当接面が、第2位置から第1位置へ向けて開弁方向へ傾斜した斜面を形成している。
前記所定方向に関する第2位置に於ける手動開弁用レバーの閉弁方向に差し向けられた表面とケーシング外面の突起との当接面を第2位置から第1位置へ向けて開弁方向に傾斜した斜面とすることにより、手動開弁用レバーの第2位置から第1位置への移動に対する抵抗として弁体を閉弁方向へ付勢するバネの弾性力を利用して、第2位置から第1位置への手動開弁用レバーの想定外の復帰を防止できる。
本発明の好ましい態様においては、弁体がベロフラムを有する。
ベロフラムを用いて開弁圧の受圧面積を増大させることにより、圧力逃し弁の開弁速度と放出流量の迅速な増加を図り、流体経路内圧の速やかな低減を実現することができる。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、貯湯タンクを有する貯湯ユニットとヒートポンプを有する熱源ユニットとを備える貯湯式給湯機の貯湯ユニットと熱源ユニットとを接続する循環路又は室内熱交換機とヒートポンプを有する熱源ユニットとを備える暖房機の室内熱交換器と熱源ユニットとを接続する循環路に上記何れかの圧力逃がし弁が取り付けられている。
貯湯タンクを有する貯湯ユニットとヒートポンプを有する熱源ユニットとを備える貯湯式給湯機の貯湯ユニットと熱源ユニットとを接続する循環路又は室内熱交換機とヒートポンプを有する熱源ユニットとを備える暖房機の室内熱交換器と熱源ユニットとを接続する循環路で発生する異常内圧は、ヒートポンプが備える水冷媒熱交換機の損傷による高圧冷媒の循環水への混入が原因である場合が多い。現在、地球温暖化抑制に向けて、温暖化係数が低く可燃性の炭化水素や有毒性のアンモニアなどが、ヒートポンプに使用する冷媒として主流になりつつある。上述の貯湯式給湯機や暖房機の循環路の室内で延在する部位に万一何らかの損傷が発生すると循環水へ混入した冷媒が室内に放出されて危険である。本願発明に係る圧力逃し弁を使用することより、循環水に混入した冷媒を外部環境へ放出して室内への冷媒の放出を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る圧力逃がし弁を備える貯湯式給湯機兼暖房機の構成図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係る圧力逃がし弁の構造図である。(a)は閉弁時の一部を平断面図で示す上面図であり、(b)は(a)のb-b矢視図であり、(c)は一部を(a)のc-c矢視図で示す正面図であり、(d)はケーシング上端壁から起立する突起の斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施例に係る圧力逃がし弁が備える手動開弁用レバーの斜視図である。(a)は斜め上方から見た斜視図であり(b)は斜め下方から見た斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施例に係る圧力逃がし弁が備える手動開弁用レバーとケーシング上端壁から起立する突起の相関を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施例に係る圧力逃がし弁の通常圧力時の作動状態を示す図である。(a)、(b)は
図2の(b)、(c)に相当する。
【
図6】本発明の第1実施例に係る圧力逃がし弁の異常圧力発生時の作動状態を示す図である。(a)、(b)は
図2の(b)、(c)に相当し、(c)は手動開弁用レバーとケーシング上端壁から起立する突起の相関を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施例に係る圧力逃がし弁の異常圧力発生時の手動開弁用レバーの右方向移動を示す図であり、手動開弁用レバーとケーシング上端壁から起立する突起の相関を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施例に係る圧力逃がし弁の異常圧力発生後の圧力低下時の作動状態を示す図である。(a)は
図2の(c)に相当し、(b)は(a)の部分拡大図であり、(c)は手動開弁用レバーとケーシング上端壁から起立する突起の相関を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施例に係る圧力逃がし弁の構造図である。(a)は上面図であり、(b)は左側面図であり、(c)は手動開弁用レバーを斜め上方から見た斜視図であり、(d)は手動開弁用レバーを斜め下方から見た斜視図であり、(e)は一部を(a)のα-α矢視図とβ-β矢視図とした正面図である。
【
図10】本発明の第2実施例に係る圧力逃がし弁の通常圧力時の作動状態を示す、図であり、
図9(e)に相当する図である。
【
図11】本発明の第2実施例に係る圧力逃がし弁の異常圧力時の作動状態を示す、図であり、
図9(e)に相当する図である。(a)は異常圧力発生時を示す図であり、(b)は異常圧力発生時の手動開弁用レバーの右方向移動を示す図であり、(c)は異常圧力発生後の圧力低下時の作動状態を示す図である。
【
図12】本発明の第3実施例に係る圧力逃がし弁が備える手動開弁用レバーの斜視図である。(a)は手動開弁用レバーを斜め上方から見た斜視図でありを(b)は手動開弁用レバーを斜め下方から見た斜視図である。
【
図13】本発明の第4実施例に係る圧力逃がし弁の構造図である。(a)は一部を平断面図で示した閉弁時の上面図であり、(b)は(a)のb-b矢視図であり、(c)はケーシングから起立する突起の斜視図である。
【
図14】本発明の第4実施例に係る圧力逃がし弁の通常圧力時の作動を示す構造図である。(a)は一部を平断面図で示した上面図であり、(b)は(a)のb-b矢視図である。
【
図15】本発明の第4実施例に係る圧力逃がし弁の異常圧力時の作動を示す構造図である。(a)は異常圧力発生時の一部を平断面図で示した上面図であり、(b)は手動開弁用レバーが前方へ移動する前の(a)のb-b矢視図であり、(c)は異常圧力発生後に手動開弁用レバーが前方へ移動した後の圧力低下時の作動状態を示す(b)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施例に係る圧力逃し弁と、当該圧力逃し弁の貯湯式給湯機兼暖房機への適用例を以下に説明する。
図1に示すように、貯湯式給湯機兼暖房機は、高温水を生成するヒートポンプ式の熱源ユニット1と、貯湯タンクユニット2とを備えている。
熱源ユニット1は、冷媒配管によって順次環状に接続された水冷媒熱交換器11、圧縮機12、蒸発器13、膨張弁14を備えている。
貯湯タンクユニット2は、貯湯タンク21、貯湯タンク21の下部に接続された給水管22、貯湯タンク21の上部から水冷媒熱交換器11と循環ポンプ23と三方弁24とを経て貯湯タンク21の下部に接続し、更に熱交換パイプ25aを形成しつつ貯湯タンク21内を上方へ延びて貯湯タンクの上部に至る第1循環路25、貯湯タンク21の上部から高温水を取出す出湯管26、出湯管26に接続する貯湯タンク保護用の第1圧力逃がし弁27、第1圧力逃がし弁27から延びる排水管28、出湯管26と給水管22から延びる分岐管22aとに接続する湯水混合弁29を備えている。給湯配管を介して湯水混合弁29に蛇口30が接続している。
貯湯式給湯機兼暖房機は更に、第1循環路25の熱源ユニット1内で延在する部位、より具体的には水冷媒熱交換器11直近下流の部位に接続する水冷媒熱交換器11保護用及び損傷時対応用の第2圧力逃がし弁3、第2圧力逃がし弁3の排水部30aを備えている。
貯湯式給湯機兼暖房機は更に暖房ユニット4を備えている。暖房ユニット4は上流端が流路切換用の三方弁24に接続し下流端が第1循環路25の貯湯タンク21よりも下流部に接続する第2循環路41と第2循環路41の途上に配設された室内熱交換器42とを備えている。第2循環路41の室内熱交換器42内で延在する部位は熱交換パイプ41aを形成している。
【0010】
以下の説明において
図2~
図15の矢印I
II III IV V VIの方向を上方、下方、左方、右方、前方、後方と呼ぶ。
図2(a)~(c)に示すように、第2圧力逃がし弁3は、上下に延在する筒体のケーシング31を備えている。ケーシング31の下端に第1循環路25に接続する開口31a
1が形成され、ケーシング31の周側壁下部の前部に排水部30aに接続する開口31a
2が形成されている。ケーシング31の開口31a
1と開口31a
2の間で延在する部位に、弁座31bが形成されている。弁座31bに対峙して弁体32が配設されている。弁体32は弁本体32aと弁本体32aに装着されたベロフラム32bとを備えている。弁本体32aから上方へ伸びる弁軸33がケーシング31上部の小径筒体31cに摺動可能に挿通されてケーシング31の上方外方へ延びている。弁本体32aと小径筒体31c周囲のケーシング上端壁31dとに係合して弁本体32aひいては弁体32を下方へ即ち閉弁方向へ付勢するコイルバネ34が配設されている。
【0011】
弁軸33のケーシング31外へ延びる上端部33aを左右方向に摺動可能に貫通するピン35を介して、ピン35の中心軸線である左右方向軸線X回りに揺動可能に手動開弁用レバー36が弁軸上端部33aに連結されている。
図3に示すように、手動開弁用レバー36の後端部は長方形断面の上下に延在する筒体36aを形成しており、ピン35は筒体36aの左右側壁を貫通し、ピン35の頭部35aが筒体36aの右側壁に螺入している。ピン35の頭部35aと弁軸上端部33a右側面との間に頭部35aを、ひいては手動開弁用レバー36を右方向へ付勢するコイルバネ37が配設されている。
図2(b)において手動開弁用レバー36を時計回りに揺動させると、筒体36aの前端壁がケーシング上端壁31dに当接し、その後は前記当接部を中心に揺動して弁軸33が持ち上がり開弁する。
図2(a)、(d)に示すように、ケーシング上端壁31dから上面視略四角形の筒状の第1突起31eが上方へ起立している。第1突起31eは上面視で湾曲し弁軸上端部33aに摺接して弁軸上端部33aをガイドする前端壁31e
1と前後方向中央隔壁31e
2と後端壁31e
3とを備えている。前端壁31e
1と前後方向中央隔壁31e
2とは後端壁31e
3よりも高い同一高さを有している。第1突起31eは更に前端壁31e
1と前後方向中央隔壁31e
2と後端壁31e
3の左右両端を連結する左右両側壁31e
4を備えている。
上面視で第1突起31eの外側で第1突起31eを囲む上面視門形の第2突起31fがケーシング上端壁31dから上方へ起立している。第2突起31fは後端壁31f
1と、後端壁31f
1から前方下方へ延びる両側壁31f
2とを備えている。側壁31f
2の上面には前後方向中央部に段部31f
3が形成されている。この結果第2突起31fの上面は、後端壁31f
1上面が形成する上段部と、下方へ傾斜した中段部と、段部31f
3よりも前方の下段部31f
4を有している。右側壁31f
2上面の下段部31f
4に湾曲した凹部31f
5が成されている。
図2(d)に示すように、第2突起31f上面中段部前端平坦部31f
6と第1突起側壁31e
4の前端壁31e
1と中央隔壁31e
2の間で延在する部分の上面とは面一である。
第1突起の後端壁31e
3は第2突起の後端壁後端壁31f
1と一体化している。
【0012】
貯湯式給湯機兼暖房機と第2圧力逃がし弁3の作動を説明する。
給水管22を通って貯湯タンク21の下部に水道水が供給される。循環ポンプ23が作動し、熱源ユニット1の水冷媒熱交換器11で加熱された高温水が第1循環路25と三方弁24とを介して熱交換パイプ25aに流入する。貯湯タンク21の下部に流入した低温水道水が熱交換パイプ25aを流れる高温水と熱交換し加熱されて高温水となり、貯湯タンク21の上部を高温水で満たすと共に、熱膨張により貯湯タンク21を加圧する。低温水道水との熱交換により温度が低下した熱交換パイプ25a内の水は第1循環路25を通って水冷媒熱交換器11に戻り再加熱されて高温水になり、貯湯タンク21内の熱交換パイプ25aに還流する。
貯湯タンク21の上部から出湯管26を通って加圧された高温水が吐出し、湯水混合弁29で分岐管22aを介して供給された水道水と混合されて適温水となり、蛇口30から吐出する。
貯湯タンク21の内圧が所定値Aに達すると、第1圧力逃がし弁27が開弁し、排水管28を通って高圧高温水が外部環境に放出され、貯湯タンク21を減圧する。この結果貯湯タンク21の損傷が防止される。貯湯タンク21が減圧した後第1圧力逃がし弁27は閉弁する。
熱源ユニット1の水冷媒熱交換器11で加熱された高温水が第1循環路25と三方弁24と第2循環路41を経由して室内熱交換機42内で延在する熱交換パイプ41aに流入する。室内熱交換機42内に吸引された室内冷気が熱交換パイプ41aを流れる高温水と熱交換し加熱されて暖気となり室内に還流する。
【0013】
図2に示す第2圧力逃がし弁3の閉弁時に、
図2、
図4から分かるように、手動開弁用レバー36の後端部筒体36aが第1突起31eと第2突起31fの間の隙間に嵌合し、筒体36a左側壁の右表面が第1突起左側壁31e
4の左表面に当接して手動開弁用レバー36の右方向への移動が阻止され、手動開弁用レバー36が右方向に関して第1所定位置に保持されている。また筒体36a右側壁の右表面から右方向へ突出してピン頭35aを収容するコーミング36a
1の下部下面が第2突起31f右側壁上面の下段部の湾曲凹部31f
5に当接して手動開弁用レバー36ひいては弁軸33の閉弁方向への移動が阻止されている。
【0014】
熱源ユニット1の作動不良等の何らかの原因で第1循環路25の内圧が所定値Bを超えると
図5に示すように第2圧力逃し弁3が開弁し、第1循環路25内の高圧高温水が外部環境に排出され、第1循環路25の内圧が低減し、熱源ユニット1の損傷が防止される。第1循環路25の内圧が所定値B達した時点で、弁軸上端部33aのケーシング31外への突出量は所定値未満であり、
図5から分かるように、筒体36a左側壁の右表面と第1突起左側壁31e
4の左表面との当接は維持されており、手動開弁用レバー36の右方向への移動は阻止されて、手動開弁用レバー36は右方向に関して第1位置に保持されている。従って第1循環路25の内圧が低下すると手動開弁用レバー36ひいては弁軸33は下降して第2圧力逃がし弁3は閉弁する。
【0015】
熱源ユニット1の水冷媒熱交換器11が損傷してヒートポンプ冷媒回路内の高圧のアンモニア、炭化水素等の冷媒が第1循環路25内の循環水に混入し、第1循環路25内圧が前記所定値Bを越えて異常上昇すると、弁体32が
図5に示す開弁位置よりも更に上昇し、
図6に示すようにケーシング31内部に形成された環状段部31gに当接して停止し、第2圧力逃がし弁3は全開する。ベロフラム32bの存在により弁体32の受圧面積が増大しているので第2圧力逃がし弁3は迅速に全開状態になり、循環水の放出流量が迅速に増加して速やかに第1循環路25内の高圧水と高圧冷媒が外部環境に放出される。この結果、万一第1循環路25の一部例えば熱交換パイプ25aや、第2循環路41の一部例えば熱交換パイプ41aが損傷した場合でも、可燃性や有毒性の冷媒が室内に放出される恐れは無い。
第2圧力逃し弁3が全開する過程で弁軸上端部33aのケーシング31外への突出量が所定値以上になり、
図6に示す第2圧力逃し弁3の全開状態では筒体36aの左側壁の右表面と第1突起左側壁31e
4の左表面との当接が解除されている。この結果、
図7に示すように、コイルバネ37の付勢力を受けた手動開弁用レバー36は右方向へ移動し、筒体36a左側壁の右表面が弁軸上端部33aの左表面に当接して停止し、右方向に関して第2位置に保持される。
第1循環路25の内圧が低下すると、バネ34の付勢力を受けて弁体32ひいては弁軸33、手動開弁用レバー36が下降するが、
図8に示すように、筒体36a左側壁の下面が第1突起左側壁31e
4の前端壁31e
1と中央隔壁31e
2の間で延在する部位の上面に当接し、筒体36a右側壁の下面が第2突起右側壁31f
2上面の中段部前端平坦部31f
6に当接して、手動開弁用レバー36ひいては弁軸33の下降を阻止する。この結果、第2圧力逃し弁3の開弁状態が維持される。従って、冷媒が確実に外部環境へ放出され室内の安全が担保される。また異常高圧の原因が解消される前に第1循環路25内圧が再び異常高圧になる事態は発生しない。
手動開弁用レバー36の移動機構、移動規制機構はケーシング31外に配設されるので、第2圧力逃し弁3の弁機構は複雑化していない。
開弁状態の維持を解除する際は、ピンの頭部35aを左方向へ付勢して第1位置まで手動開弁用レバー36を戻せば良い。
【0016】
本発明の第2実施例に係る第2圧力逃し弁3を説明する。
図9に示すように、筒体36aの左側壁の一部に切欠36a
1が形成され、第1実施例のコイルバネ37に代えて切欠36a
1内に板バネ36bが筒体36aと一体形成されている。板バネ36bは無負荷状態で
図9(c)に示すように、下端突起36b
1が切欠36a
1から左方向へ突出するように形成されている。上記を除き、第2実施例に係る第2圧力逃がし弁3の構成は第1実施例に係る第2圧力逃がし弁3の構成と同様である。
図9(d)、(e)に示すように、第2圧力逃し弁3の閉弁時は板バネ36bの下端突起36b
1が第1突起左側壁31e
4と第2突起左側壁31f
2の間に挟まれて板バネ36bは切欠36a
1内に押し込まれている。この結果手動開弁用レバー36の右方向への移動が阻止されている。
上記状態は、循環路内圧が所定値Bに達して第2圧力逃し弁3が開弁した時点でも、弁軸上端部33aのケーシング31外への突出量が所定値未満なので、
図10に示すように維持される。従って、循環路内圧が低下すると第2圧力逃し弁3は閉弁する。
循環路内圧が所定値Bを超えて異常上昇すると第2圧力逃し弁3は全開する。第2圧力逃し弁3が全開する過程で弁軸上端部33aのケーシング31外への突出量が前記所定値以上になり、
図11(a)に示すように板バネ下端突起36b
1が第1突起左側壁31e
4と第2突起左側壁31f
2の間に挟まれた状態から解放され、
図11(b)に示すように板バネ36bの弾性力を受けた筒体36aひいては手動開弁用レバー36が右方向へ移動し、筒体36aの左側壁が弁軸上端部33aに当接して手動開弁用レバー36は右方向に関して第2位置に保持される。循環路内圧が低下するとバネ34の付勢力を受けた弁体32ひいては弁軸33が下降するが、
図11(c)に示すように、筒体36a左側壁の下面が第1突起左側壁31e
4の前端壁31e
1と中央隔壁31e
2の間で延在する部位の上面に当接し、筒体36a右側壁の下面が第2突起右側壁31f
2上面の中段部前端平坦部31f
6に当接して、手動開弁用レバー36ひいては弁軸33の下降を阻止する。この結果、第2圧力逃し弁3の開弁状態が維持される。
開弁状態の維持を解除する際は、ピン35の右端部を左方向へ付勢して第1位置まで手動開弁用レバー36を戻せば良い。
【0017】
本発明の第3実施例に係る第2力逃し弁3を説明する。
図12に示すように、第2実施例の筒体36aに一体形成された板バネ36bに代えて、筒体36aとは別体の板バネ38が、筒体36aの左側壁の左表面の一部に形成された凹部36a
2内に収容されている。板バネ38の鉤状に折れ曲がった前端部が凹部36a
2の前端部が形成する鉤状に折れ曲がったスリットに嵌入し、後端部が凹部36a
2の後端部に形成された爪部に弾性嵌合することにより板バネ38は筒体36aに係止されている。板バネ38は無負荷状態で下部の切り起こし突起38aが凹部36a
2から左方向へ突出するように形成されている。
板バネ38の作動は板バネ36bの作動と同様であり、従って第3実施例に係る第2力逃し弁3の作動は第2実施例に係る第2圧力逃し弁3の作動と同様である。
【0018】
本発明の第4実施例に係る第2圧力逃し弁3を説明する。
図13に示すように、筒体36aの左側壁右側面に前後に延在する長凹部36a
3が形成され、長凹部36a
3に対峙して筒体36aの右側壁に前後に延在する長穴36a
4形成されている。ピン35は弁軸上端部33aを貫通して弁軸上端部33aに固定されており、ピン35の左右両端部は長凹部36a
3、長穴36a
4に摺動可能に係合している。筒体36aの前側端に螺入する蓋39と弁軸上端部33aの前面との間にコイルバネ37が配設されている。第1突起左右側壁31e
4の前端壁31e
1と中央隔壁31e
2との間で延在する部分31e
5が前端壁31e
1、中央隔壁31e
2よりも上方へ延び、左右側壁31e
5上面に上段部31h
1と下段部31h
2とから成る後方へ差し向けられた段部31hが形成されている。
下段部31h
2の後側面は
図13(b)に示すように第1突起中央隔壁31e
2の後側面と面一ではなく僅かに前方にずれている。これにより第2圧力逃し弁3を手動開弁すべく手動開弁用レバー36を
図13(b)で時計回りに揺動させる際に筒体36a後側壁前面下部と前記下段部31h
2後端との干渉が防止されている。中央隔壁31e
2後側面上端は面取り加工されている。弁軸上端部33aの前方でケーシング上面に第3突起31iが形成されている。
上記と第2突起31fの側壁31f
2上面が下方へ傾斜した中段部を有さない点とを除き第4実施例に係る第2圧力逃がし弁3の構成は第1実施例に係る第2圧力逃し弁3の構成と同様である。
【0019】
第2圧力逃し弁3の閉弁時には、
図13(a)、(b)に示すように、筒体36aの後側壁の前表面が第1突起中央隔壁31e
2の後表面に当接して手動開弁用レバー36の前方への移動が阻止されており、手動開弁用レバー36は前方に関して第1位置に保持されている。また筒体36a前側壁の下面が弁軸上端部33aの前方でケーシング上面に形成された第4突起31j上面に当接して手動開弁用レバー36ひいては弁軸33の閉弁方向の移動が阻止されている。ピン35の左右両端部は長凹部36a
3、長穴36a
4の前端に当接している。
熱源ユニット1の作動不良等の何らかの原因で第1循環路25の内圧が所定値Bを超えると
図14に示すように第2圧力逃し弁3が開弁するが、第1循環路25の内圧が所定値B達した時点での弁軸上端部33aのケーシング31外への突出量は所定値未満であり、
図14(b)から分かるように、筒体36aの後側壁の前表面は第1突起中央隔壁31e
2の後表面との当接から脱するが、第1突起側壁上面段部31hの下段部31h
2の後側面に当接しており、手動開弁用レバー36は僅かに前方へ移動した状態で停止しており、手動開弁用レバー36は前方向に関して略第1位置に保持されている。従って、第1循環路25の内圧が低下すると、バネ34の付勢力を受けた筒体36aの後側面が第1突起中央隔壁31e
2後側面上端部の面取り部にそって下降し、ひいては手動開弁用レバー36と弁軸33が下降して第2圧力逃がし弁3は閉弁する。
【0020】
熱源ユニット1の水冷媒熱交換器11が損傷して冷媒回路内の高圧冷媒が第1循環路25内の循環水に混入し第1循環路25内圧が前記所定値Bを越えて異常上昇すると、弁体32が
図14(b)に示す開弁位置よりも更に上昇し、ケーシング内部に形成された環状段31gに当接して停止し、
図15(b)に示すように第2圧力逃がし弁3は全開する。
第2圧力逃し弁3が全開する過程で弁軸上端部33aのケーシング31外への突出量が所定値以上になり、
図15(b)に示す第2圧力逃し弁3の全開状態では、筒体36a後側壁の前表面と第1突起側壁上面下段部31h
2後側面との当接が解除されている。この結果、
図15(a)、(c)に示すようにコイルバネ37の付勢力を受けた手動開弁用レバー36は前方向へ移動し、筒体36aの後側壁下部前表面が第1突起側壁上面上段部31h
1後側面に当接して停止し、前方向に関して第2位置に保持される。第1循環路25の内圧が低下すると、バネ34の付勢力を受けて弁体32ひいては弁軸33が下降するが、
図15(c)に示すように、筒体36a後側壁の下面が第1突起側壁上面下段部31h
2に当接し、筒体36aの前側壁の下面が第3突起31iの上面に当接して、手動開弁用レバー36ひいては弁軸33の下降を阻止する。この結果、第2圧力逃し弁3の開弁状態が維持される。
開弁状態の維持を解除する際は、手動開弁用レバー36の前端を後方へ付勢して第1位置まで手動開弁用レバー36を戻せば良い。
【0021】
上記第1~4実施例において、開弁状態を維持するための筒体36a下面とケーシングの突起31e、31f、31i上面との当接面を第2位置から第1位置へ向けて上方へ傾斜した斜面としても良い。
筒体36a下面と突起上面との当接面を第2位置から第1位置へ向けて上方へ即ち開弁方向に傾斜した斜面とすることにより、手動開弁用レバー36の第2位置から第1位置への移動に対する抵抗として弁体を閉弁方向へ付勢するバネ34の弾性力を利用して、第2位置から第1位置への手動開弁用レバー36の想定外の復帰を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、圧力逃がし弁に、特に貯湯ユニットと熱源ユニットとを備える貯湯式給湯機の貯湯ユニットと熱源ユニットとを接続する循環路に取り付けられた圧力逃がし弁又は室内熱交換機とヒートポンプを有する熱源ユニットとを備える暖房機の室内熱交換器と熱源ユニットとを接続する循環路に取り付けられた圧力逃がし弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 熱源ユニット
2 貯湯タンクユニット
27 第1圧力逃がし弁
3 第2圧力逃がし弁
4 暖房ユニット
31 ケーシング
31e 第1突起
31f 第2突起
31i 第3突起
31j 第4突起
32 弁体
33 弁軸
33a 弁軸上端部
35 ピン
36 手動開弁用レバー
36a 筒体
36b 板バネ
37 コイルバネ
38 板バネ
【要約】
【課題】 流体経路内圧が異常高圧になった時に開弁状態を維持できる圧力逃がし弁であって、弁機構の複雑化が防止された圧力逃し弁を提供する。
【解決手段】 弁体と弁座と弁軸と弁体を閉弁方向へ付勢するバネとを有する弁機構と、弁機構を収容するケーシングと、ケーシング外へ延びた弁軸一端部にピンを介して揺動可能に連結する手動開弁用レバーと、前記弁軸一端部のケーシング外への突出量が所定値未満の時に弁開閉方向とは異なる所定方向への手動開弁用レバーの移動を阻止して前記所定方向に関して手動開弁用レバーを第1位置に保持し、前記突出量が所定値以上の時に手動開弁用レバーの前記所定方向への移動を許容する第1レバー移動規制機構と、前記所定方向へ手動開弁用レバーを付勢する弾性体と、前記所定方向へ移動して前記所定方向に関して第2位置にある手動開弁用レバーに係合して手動開弁用レバーに連結する弁軸の閉弁方向への移動を阻止する第2レバー移動規制機構と、を備える。
【選択図】
図2