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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】聴取装置、及びイヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/02 20060101AFI20240611BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20240611BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H04R25/02 B
H04R1/10 104Z
H04R25/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019188218
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021064867
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】添田 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】弥永 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝 操枝
(72)【発明者】
【氏名】芝 幹雄
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063276(JP,A)
【文献】特開2016-201768(JP,A)
【文献】特開2011-193331(JP,A)
【文献】特表2010-537558(JP,A)
【文献】米国特許第02545731(US,A)
【文献】特開2019-145964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00-25/02
H04R 1/10
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴取装置本体と、耳甲介または外耳道に装用されるイヤホンと、当該聴取装置本体と当該イヤホンとを接続し、復元性を有するコードとを備える聴取装置であって、
前記コードは、基端部、中間部、及び末端部を備え、
装用前において、前記基端部は前記聴取装置本体を起点として前方から後方に向かって湾曲して延在し、前記中間部は当該基端部から後方に向かって延在し、前記末端部は当該中間部から下方に向かって延在して前記イヤホンに接続されるものであり、
装用時に前記聴取装置本体を耳介の裏側の付け根の上に載置した状態において、前記基端部は耳介の裏面から付け根の上部を通って延び、前記中間部は耳甲介艇の上部に当接しつつ対耳輪脚に沿って延び、前記末端部は湾曲するように弾性変形して耳甲介艇の後部に当接する、ことを特徴とする聴取装置。
【請求項2】
前記コードは、装用時において耳甲介艇から対珠に沿って延在する、ことを特徴とする請求項1に記載の聴取装置。
【請求項3】
前記イヤホンは、珠間切痕に収まる突起部を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の聴取装置。
【請求項4】
前記イヤホンは、電気信号に基づく振動を耳軟骨に伝達させることが可能な軟骨伝導イヤホンである、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の聴取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴取装置及びイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、難聴者の聴覚を補う聴取装置として、耳介に装用するイヤホンに気導音を発生させるレシーバ(スピーカ)を組み込んだRIC(Receiver in the canal)型補聴器や、電気信号に基づいて振動を発生させる振動部をイヤホンに内蔵し、その振動を耳軟骨に伝導させる軟骨伝導補聴器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、電気信号を振動に変換する電気機械変換器を備える軟骨伝導スピーカと、このスピーカを全体的に覆う軟骨伝導スピーカカバーとを備える軟骨伝導補聴器が示されている。このようなスピーカカバーは、装用者の耳介の形状に適合するように形成されているため、耳介に安定的に保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-63276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような聴取装置においては、装用した際に耳介及び/または外耳道に安定的に保持される点を重視すると、カバーは大きくなりがちである。このため従来の聴取装置は、耳介及び/または外耳道に装用した際にイヤホンが目立ち易くなっているものが多く、見栄えの点で課題がある。また、イヤホンのサイズが大きくなることで、装用時に違和感を覚える場合がある。イヤホンを外耳道に挿入し外耳道壁でレシーバー保持する場合もあるが、その場合は、圧迫感を覚えたり、煩わしいと感じたりするなど、不快感を覚える場合がある。
【0006】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたものであって、耳介に安定的に保持することが可能であって軽い装用感を得ることができる、又は耳介に安定的に保持することが可能であって装用した際の見栄えを向上させることができるイヤホン、及び聴取装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における聴取装置は、聴取装置本体と、耳甲介または外耳道に装用されるイヤホンと、当該聴取装置本体と当該イヤホンとを接続し、復元性を有するコードとを備える聴取装置であって、前記コードは、基端部、中間部、及び末端部を備え、装用前において、前記基端部は前記聴取装置本体を起点として前方から後方に向かって湾曲して延在し、前記中間部は当該基端部から後方に向かって延在し、前記末端部は当該中間部から下方に向かって延在して前記イヤホンに接続されるものであり、装用時に前記聴取装置本体を耳介の裏側の付け根の上に載置した状態において、前記基端部は耳介の裏面から付け根の上部を通って延び、前記中間部は耳甲介艇の上部に当接しつつ対耳輪脚に沿って延び、前記末端部は湾曲するように弾性変形して耳甲介艇の後部に当接する、ことを特徴とする。
【0008】
このような聴取装置において、前記コードは、装用時において耳甲介艇から対珠に沿って延在することが好ましい。
【0009】
また前記イヤホンは、珠間切痕に収まる突起部を備えることが好ましい。
【0010】
また前記イヤホンは、電気信号に基づく振動を耳軟骨に伝達させることが可能な軟骨伝導イヤホンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
補聴器本体とイヤホンとを接続するコードが、装用時において耳甲介艇に当接する聴取装置においては、耳甲介艇で支持されたコードからイヤホンに対して弾性力が作用するため、耳介または外耳道に装用されたイヤホンを安定的に保持することができる。更に、耳甲介艇に当接していることからコードが目立ちにくくなるため、見栄えの点でも優れている。
また、電気信号に基づく振動を耳軟骨に伝達させることが可能であって、装用時に対珠、耳珠、及び外耳道の入口のうち少なくとも2箇所に当接するイヤホンにおいては、耳介に接触する部位が少なくても安定して保持できるため、発生させた振動を耳軟骨に効率よく伝えることができる。更に、耳介に接触する部位が少なくて済むことから軽い装用感を得ることができる。
そして、電気信号に基づく振動を耳軟骨に伝達させることが可能であって、本体部に被さるカバーに外耳道に通じる開口を設けたイヤホンにおいては、カバーによって耳介に安定して保持できるうえ、外耳道が塞がれずに開放感が生じるために装用感も軽くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を具現化した聴取装置(軟骨伝導補聴器)の第一実施形態(右耳用)を示した図であって、(a)は側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は底面図である。
図2】(a)は耳介(右耳)について説明するための図であり、(b)は図1の軟骨伝導補聴器を耳介に装用した状態について示した図である。
図3】第一実施形態の変形例(右耳用)について示した図であって、(a)は側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は底面図である。
図4】第一実施形態の他の変形例(右耳用)について示した図であって、(a)は側面図であり、(b)は耳介に装用した状態について示した図である。
図5】本発明を具現化した聴取装置(軟骨伝導補聴器)の第二実施形態(右耳用)で使用されるイヤホン(軟骨伝導イヤホン)を示した図であって、(a)は斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図であり、(d)は底面図であり、(e)は背面図であり、(f)は正面図である。
図6】(a)は図5の軟骨伝導イヤホンを耳介に装用した状態について示した図であり、(b)は(a)に示すA-Aに沿う断面図である。
図7】第二実施形態の変形例(右耳用)について示した図であって、(a)は軟骨伝導補聴器を耳介に装用した状態について示した図であり、(b)は、耳介に装用するにあたって軟骨伝導イヤホンを指で下方に押す状況を示した図である。
図8】本発明を具現化した聴取装置(軟骨伝導補聴器)の第三実施形態(右耳用)で使用されるイヤホン(軟骨伝導イヤホン)を示した図であって、(a)は斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面図であり、(d)は底面図であり、(e)は背面図であり、(f)は正面図である。
図9】(a)は図8の軟骨伝導イヤホンを耳介に装用した状態について示した図であり、(b)は(a)に示すB-Bに沿う断面図である。
図10】(a)は図8に示したイヤホンの開口が視認される向きからの斜視図であり、(b)~(f)はイヤホンの変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を具現化した聴取装置、及びイヤホンについて説明する。なお、本明細書等において「上」「下」「左」「右」「前」「後」等を使って説明する向きは、特に言及しない場合は聴取装置等を装用した状態での装用者にとっての向きである。
【0019】
まず、図1図2を参照しつつ、本発明を具現化した聴取装置の第一実施形態について説明する。本実施形態の聴取装置は、軟骨伝導補聴器として構成されるものであって、図1に示すように、補聴器本体1と、コード2と、イヤホン(軟骨伝導イヤホン)3を備えていて、所謂耳かけ型補聴器と称される形態をなすものである。なお、図1に示した軟骨伝導補聴器は、図2に示した装用者の右側の耳介100に装用されるものである。
【0020】
補聴器本体1は、全体的に緩やかに湾曲した形態をなす筐体を備えている。筐体の内部には、音を電気信号に変換するマイクロホンや、マイクロホンから出力される電気信号を装用者の聴力に適合するように処理する補聴処理手段の他、軟骨伝導補聴器を構成する各部に電力を供給する電池等が収められている。
【0021】
コード2は、補聴器本体1と軟骨伝導イヤホン3とを接続するものである。本実施形態のコード2は、補聴器本体1からの電気信号を軟骨伝導イヤホン3に伝える比較的細径の電線と、柔軟性を有する高分子材料(例えば熱可塑性エラストマーやナイロンなど)で形成されて電線の外側を覆う被覆材とにより構成されるものであって、図1に示すような形状に曲げられている。本実施形態のコード2は、概略的に、補聴器本体1を起点として前方から後方に向かって湾曲する(図1(a)参照)とともに装用者にとって体側に向けて延在する(図1(b)参照)基端部2aと、基端部2aから後方に向かって延在する(図1(a)参照)中間部2bと、中間部2bから緩やかに湾曲しつつ下方に向かって延在する(図1(a)参照)とともに装用者にとって体の外側に向けて延在する(図1(b)参照)末端部2cとを有するような形状に曲げられている。このようにコード2を所定の形状に曲げるための方法としては、図示した形状を彫り込んだ溝を有する治具を準備しておき、溝にコード2を嵌め込んだ後、加熱及び冷却を行う手法が一例として挙げられる。なお、コード2は復元性を有していて、図示した状態から形状が変えられると、元の形に戻るように弾性力が発現される。またコード2は、装用者の左側の耳介に装用されるものについては、図示した形状に対して左右対称になるように曲げられる。
【0022】
軟骨伝導イヤホン3は、図1に示すように、丸みを帯びた直方体或いは楕円体の如き形状に形作られる筐体を有している。筐体の後方下部には、コード2が接続される開口が設けられていて、この開口を通して筐体の内部にコード2が引込まれている。なおこの開口は封止剤によって閉鎖されている。また筐体の内部には、コード2に接続される電気機械変換器が設けられている。電気機械変換器は、コード2を介して伝えられる補聴器本体1の電気信号に基づいて振動するものであって、例えば電磁型(バネの復元力を利用したバランスド・アーマチュア型)、動電型、圧電型と称されるものが使用される。本実施形態の電気機械変換器は、図1(b)に矢印で示す方向に振動する向きで取り付けられている。
【0023】
このような構成になる軟骨伝導補聴器は、図2(a)に示す耳介100に対し、図2(b)に示すようにして装用される。具体的には、耳介100の上前方からコード2の基端部2aを掛けつつ、補聴器本体1は、耳介100の裏側の付け根の上に載置し、軟骨伝導イヤホン3は、耳珠102及び対珠104の内側に挿入する。そして、耳甲介艇106にコード2(主に中間部2b)を引っ掛けるようにして、耳甲介艇106にコード2を当接させ、対耳輪脚108に沿わせる。これにより、復元性を有するコード2から弾性力が生じて軟骨伝導イヤホン3が下向き前方に向けて(珠間切痕103が延在する方向に向けて)押圧されるため、軟骨伝導イヤホン3が安定的に保持される。従って、軟骨伝導イヤホン3から発生させた振動を耳軟骨に効率よく伝えることができる。なお、装用者によって耳介100の形や大きさは相違するが、コード2はある程度容易に変形するため、その形状や長さを細かく変えずとも違和感なく使用することができ、汎用性にも優れている。また、耳介100に装用した際にコード2は、耳甲介艇106に当接しつつ下側の対耳輪脚108に沿って延在し、更に対珠104の内側に沿うように延在し、軟骨伝導イヤホン3の筐体の後方下部に接続していて目立ちにくいため、見栄えの点でも優れている。なお、このように這わせることによって、コード2の長さは従来の軟骨伝導補聴器よりも長くなり、またコード2が耳甲介艇106に接触しているため、軟骨伝導イヤホン3の振動が、補聴器本体1に伝わり難くなる。すなわち、軟骨伝導イヤホン3からの振動が補聴器本体1にフィードバックされにくくなるため、ハウリングを抑制することができる。更に、軟骨伝導イヤホン3を耳介100に装用している状態でも外耳道101は開放されているため、軽い装用感で使用することができる。
【0024】
ところで、コード2の形状は図1に示すものに限られるものではなく、例えば図3に示すコード4のような形状であってもよい。図3に示すコード4は、概略的に、補聴器本体1を起点として前方から後方に向かって湾曲する(図3(a)参照)とともに装用者にとって体側及び外側には殆ど傾かずに延在する(図3(b)参照)基端部4aと、基端部4aから後方に向かって延在する(図3(a)参照)とともに装用者にとって体側に向けて延在する(図3(b)参照)中間部4bと、中間部4bから緩やかに湾曲しつつ下方に向かって延在する(図3(a)参照)とともに装用者にとって体の外側に向けて延在する(図3(b)参照)末端部4cとを有するような形状に曲げられている。このようなコード4を使用する軟骨伝導補聴器においても、図2に示したコード2を備える軟骨伝導補聴器と同様にして耳介100に装用することができ、また同様の効果を得ることができる。
【0025】
軟骨伝導イヤホン3の形状や構成も、図1に示したものに限られない。例えば図4(a)に示す軟骨伝導イヤホン5は、丸みを帯びた直方体或いは楕円体の如き形状に形作られる筐体の前方下部に、例えば円錐状をなすように形作られた突起部5aを備えている。このような軟骨伝導イヤホン5は、図4(b)に示すように耳介100に装用した際、珠間切痕103に突起部5aが収まるため、更に安定的に耳介100に装用することができる。
【0026】
耳介100に保持した際の安定性を一層高めようとする場合には、軟骨伝導イヤホン3における筐体を、耳甲介107に(特に耳甲介腔105に)隙間なく収まる形状にしてもよい。またこの場合においては、筐体にカバーを被せるように構成し、カバーの形状を耳甲介107に(特に耳甲介腔105に)隙間なく収まるようにしてもよい。
【0027】
なお図示は省略するが、軟骨伝導イヤホン3に替えて、内部にレシーバ(スピーカ)を組み込んだイヤホンを備えるRIC型補聴器においても、図1図3に示す如きコード2やコード4を用いることによって、イヤホンを耳介100または外耳道101に安定的に保持することができる。また図示は省略するが、軟骨伝導イヤホン3に替えて、内部に電気機械変換器を組み込んだイヤホン(イヤホンが振動することで気導音を発生する)を備える聴取装置においても、図1図3に示す如きコード2やコード4を用いることによって、イヤホンを外耳道101に安定的に保持することができる。
【0028】
次に、本発明を具現化した聴取装置の第二実施形態について、図5図6を参照しながら説明する。本実施形態の聴取装置も軟骨伝導補聴器として構成されていて、図6に示すように補聴器本体1と、コード6と、イヤホン(軟骨伝導イヤホン)7を備えている。なおコード6は、補聴器本体1から前方に向けて延在し、更に耳珠102に近づくように延在した後、軟骨伝導イヤホン7の上面に接続されるものである。
【0029】
軟骨伝導イヤホン7は、図5に示すように、水平方向に向けて延在する略平坦な上面7aを備えている。また軟骨伝導イヤホン7の平面視における形状は、図5(c)に示すように、装用者にとって体の外側を向く側は緩やかに湾曲する一方、体の内側を向く側は先細りになっていて、全体的に三角形状をなすように形作られている。また、図5(f)に示すように軟骨伝導イヤホン7の正面視での形状は、装用者にとって体の外側を向く側は上下方向に略直線状に延在する一方、体の内側を向く側は先細りになっていて、全体的に三角形状をなすように形作られている。軟骨伝導イヤホン7の筐体は、本実施形態では例えば、ABSやポリカーボネートなどの高分子材料で形成される。また軟骨伝導イヤホン7の筐体の内部には、軟骨伝導イヤホン3と同様にコード接続される電気機械変換器が設けられている。電気機械変換器については軟骨伝導イヤホン3と同様であり省略する。
【0030】
このような形態になる軟骨伝導補聴器を図6(a)に示す耳介100に装用した状態において、軟骨伝導イヤホン7は、対珠104、耳珠102、及び外耳道101の入口のうち、少なくとも2箇所に当接し、耳介100に安定的に保持される。このため、軟骨伝導イヤホン7から発生させた振動を耳軟骨に効率よく伝えることができる。本実施形態の軟骨伝導イヤホン7は、図6に示すように対珠104、耳珠102、及び外耳道101の入口の合計3箇所に当接するため、耳介100に装用した際はより安定的に保持することができる。更に本実施形態の軟骨伝導イヤホン7によれば、上記のように耳介100に接触する部位は部分的であり、また装用時において外耳道101の上側は開放されているため、軽い装用感が得られる。
【0031】
このような軟骨伝導イヤホン7を使用する軟骨伝導補聴器において、図7に示すように先に述べたコード2を用いる場合は、耳甲介艇106に当接させたコード2から弾性力が生じるため、軟骨伝導イヤホン7を下向き前方に向けて押圧させることができる。よって軟骨伝導イヤホン7を、より安定的に耳介100に保持させることができる。なお、図7に示した軟骨伝導補聴器は、軟骨伝導イヤホン7の後方下部にコード2を接続させている。また軟骨伝導イヤホン7の上面7aは、上述したように平坦に形作られている。このため、図7(b)に示すように、軟骨伝導イヤホン7の上面7aを指で容易に押圧することができる。すなわち、軟骨伝導イヤホン7が耳介100に対して若干浮いた状態で装用されることがあっても、軟骨伝導イヤホン7の上面7aを指で押圧することによってこれを下向き前方に向けて移動させることが可能であるため、浮きを解消させることができ、軟骨伝導イヤホン7で発生させた振動を意図した通りに耳軟骨に伝えることができる。
【0032】
次に、本発明を具現化した補聴装置の第三実施形態について、図8図9を参照しながら説明する。本実施形態の補聴装置も軟骨伝導補聴器として構成されていて、図9に示すように補聴器本体1と、コード6と、イヤホン(軟骨伝導イヤホン)8を備えている。
【0033】
軟骨伝導イヤホン8は、図8に示すように、丸みを帯びた直方体或いは楕円体の如き形状に形作られる筐体を有する本体部9と、本体部9に被せられるカバー10とを備えるものである。なお本体部9の内部には、コード6に接続される電気機械変換器が設けられている。電気機械変換器については軟骨伝導イヤホン3と同様である。
【0034】
カバー10は、本実施形態では弾力があり柔軟な素材(例えばシリコーンゴム、熱可塑性エラストマー等)で形成されていて、本体部9に対して着脱させることができる。なお、本実施形態のカバー10は、本体部9に被せた際に本体部9の一部が露出するものであるが、カバー10によって本体部9の全体が覆い隠されるようにしてもよい。またカバー10には、装用者にとって体の内側に向けて延在する筒状部10aが設けられていて、図9に示すように筒状部10aの径方向内側には、装用時において外耳道101に通じる開口10bを備えている。本実施形態の開口10bは、円形をなすように形作られていて、比較的広い開口面積を有するものである。
【0035】
このような形態になる軟骨伝導補聴器を耳介100に装用した状態において、カバー10は、図9(b)に示すように筒状部10aの外周面が外耳道101の入口に当接していて、軟骨伝導イヤホン8を耳介100に安定的に保持させている。本実施形態のカバー10は、耳珠102にも当接しているため、耳介100に対してより安定的に保持される。
【0036】
また装用時においてカバー10の開口10bは外耳道101に通じているため、外耳道101が塞がれずに開放感が生じることから軽い装用感を得ることができる。なお、外耳道101内での音圧(特に低音域の音圧)は、外耳道101が外側に向かって開放する面積によって変動する。このため、開口10bが設けられていない場合においては、耳介100への軟骨伝導イヤホンの装用具合によってこの面積が変わる可能性があり、音圧が変動するおそれがある。一方、本実施形態では開口10bが設けられていて、その開口面積は耳介100への装用具合によって変わることがないため、外耳道101内での音圧(特に低音域の音圧)を一定にすることができる。
【0037】
ところで、開口10bの開口面積を小さくしていくと、外耳道101からの音漏れが少なくなるため、外耳道101内の音圧(特に低音域の音圧)を上げることができる。このため、外耳道101内の音圧を上げることを他の特性よりも優先させる場合には、図10(b)に示すように開口10bの開口面積を小さくしてもよい。また開口10bの形状は種々変更可能であって、例えば図10(c)に示すような半円状にしてもよい。また、外耳道101内の音圧を上げることを更に優先させる場合には、図10(d)に示すように開口10bは設けなくてもよい。
【0038】
なお、外耳道101内での音圧(特に低音域の音圧)を調整する必要がある場合は、図10(e)、図10(f)に示すように、カバー10とは別異の部材になる装着部材11を複数種類準備しておき、最適な装着部材11を開口10bに装着するようにしてもよい。なお、図10(e)に示した装着部材11は、開口10bを塞ぐものであり、図10(f)の装着部材11は、開口10bの開口面積を狭めるものである。
【0039】
以上、本発明を具現化した実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記の一の実施形態が備える構成を、他の実施形態に適用してもよい。またコード2、4、6、軟骨伝導イヤホン3、5、7、8、カバー10などは、装用者の左側の耳介に装用されるものについては、図示した形状に対して左右対称になるように形成される。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。また聴取装置は、補聴器や集音器に限らず、オーディオ用のイヤホンにも応用できる。
【符号の説明】
【0040】
1:補聴器本体
2、4、6:コード
3、5、7、8:軟骨伝導イヤホン(イヤホン)
5a:突起部
9:本体部
10:カバー
10b:開口
11:装着部材
100:耳介
101:外耳道
102:耳珠
103:珠間切痕
104:対珠
106:耳甲介艇
107:耳甲介
108:対耳輪脚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10