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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】カバーガラス
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20240611BHJP
   C03C 17/42 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240611BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240611BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20240611BHJP
   G02B 1/14 20150101ALN20240611BHJP
   G02B 1/11 20150101ALN20240611BHJP
【FI】
B32B17/10
C03C17/42
B32B27/36
B32B27/32 Z
G09F9/00 304Z
G02B1/10
G02B1/14
G02B1/11
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019228711
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094808
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓
(72)【発明者】
【氏名】金子 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大家 和晃
(72)【発明者】
【氏名】清原 康一郎
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246314(JP,A)
【文献】特開2004-117545(JP,A)
【文献】特開2014-040498(JP,A)
【文献】特開2014-080333(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199612(WO,A1)
【文献】特開平11-038402(JP,A)
【文献】特開2013-184396(JP,A)
【文献】国際公開第1998/013850(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/204080(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/057276(WO,A1)
【文献】特開2014-091256(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159983(WO,A1)
【文献】特表2015-535892(JP,A)
【文献】特開2016-031397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323723(US,A1)
【文献】中国実用新案第207637418(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C03C 15/00-23/00
G09F 9/00
G02B 1/10-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と間隔をあけて前記表示装置を覆うカバーガラスであって、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する、ガラス板と、
前記第1面側に配置された第1機能膜と、
前記第2面側に配置された第2機能膜と、
飛散防止膜と、
を備え、
前記カバーガラスの前記第2面側は、屋外に面しており、
前記ガラス板の厚みは、3mm以上8mm以下であり、
前記飛散防止膜は、前記ガラス板の第1面に配置され、
前記第1機能膜は防曇機能を有し、前記飛散防止膜上に配置され、
前記第1機能膜が前記表示装置と対向するように配置され、
前記第2機能膜が前記ガラス板の第2面に直接成膜され、
前記ガラス板の第2面側から当該カバーガラスを介して前記表示装置を視認可能となっている、カバーガラス。
【請求項2】
前記飛散防止膜の厚みは、50μm以上である、請求項1に記載のカバーガラス。
【請求項3】
前記飛散防止膜がフィルムによって形成され、
前記飛散防止膜は、粘着層によって前記ガラス板に固定され、
前記第1機能膜は、前記飛散防止膜において前記粘着層とは反対側に積層されている、請求項1または2に記載のカバーガラス。
【請求項4】
前記フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、またはポリエステルのいずれかにより形成されている、請求項3に記載のカバーガラス。
【請求項5】
前記第2機能膜及び前記ガラス板を透過する、波長が340nmの光の透過率が30%以下であり、且つ波長が330nmの光の透過率が1%以下である、請求項1から4のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項6】
Fe23に換算した質量%で、前記ガラス板に含まれる鉄の酸化物の含有率が、0.020%以下である、請求項1からのいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項7】
前記ガラス板は、強化ガラスである、請求項1からのいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項8】
前記ガラス板は、厚みが4~6mmの熱強化ガラスである、請求項1から7のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項9】
前記ガラス板は、厚みが約5mmの熱強化ガラスである、請求項1から7のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項10】
前記成膜がなされた前記第1機能膜または前記第2機能膜に対し、荷重4.9N,1000回転によるテーバー摩耗試験を実施後のヘイズ率が1.5%以下である、請求項1から4のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項11】
前記成膜がなされた前記第1機能膜または前記第2機能膜の膜厚は、300nm以下である、請求項10に記載のカバーガラス。
【請求項12】
前記第1機能膜は、アンチグレア機能を有する、請求項1から11のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項13】
前記第1機能膜は、反射防止機能を有する、請求項1から11のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項14】
前記第2機能膜は、反射防止機能を有する、請求項1から13のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項15】
前記第2機能膜は、防曇機能を有する、請求項1から14のいずれかにに記載のカバーガラス。
【請求項16】
前記第2機能膜は、傷防止機能を有する、請求項1から14のいずれかにに記載のカバーガラス。
【請求項17】
前記第2機能膜は、複数の層により構成され、
前記複数の層の少なくとも1つが、TCO(透明導電性酸化物)により形成されている、請求項1から16のいずれかに記載のカバーガラス。
【請求項18】
前記TCOの抵抗が、20~250Ω/□である、請求項17に記載のカバーガラス。
【請求項19】
前記TCOは、フッ素またはアンチモンの少なくとも1つを酸化スズにドープしたものである、請求項17または18に記載のカバーガラス。
【請求項20】
前記第2機能膜は、前記ガラス板とは反対側の面に配置される防曇層を有している、請求項1から19のいずれに記載のカバーガラス。
【請求項21】
前記防曇層は、親水性または撥水性である、請求項20に記載のカバーガラス。
【請求項22】
支持部材によって支持され、当該支持部材から上方に延びるように構成され、
前記ガラス板において、前記支持部材により支持される端部から1mm以上10mm以下離れた領域内には、前記飛散防止膜が設けられていない帯状の領域がある、請求項1から21のいずれかに記載のカバーガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスプレイ等の表示装置を覆うカバーガラスが開示されている。このカバーガラスの両面には、低反射膜が形成されており、これによって、光の反射を防止でき、カバーガラスを解したディスプレイを見たときの視認性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-224979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなカバーガラスは、屋内で用いられるほか、屋外でも用いられることがある。そして、屋外で用いられる場合には、外力が作用するおそれがあり、これによってカバーガラスが割れると、ガラスの破片が飛散するという問題があった。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、外力が作用した割れたときにガラスが飛散するのを防止することができる、カバーガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.表示装置を覆うカバーガラスであって、
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する、ガラス板と、
前記第1面側に配置された第1機能膜と、
前記第2面側に配置された第2機能膜と、
前記ガラス板の前記第1面側または前記第2面側のいずれか一方に配置された飛散防止膜と、
を備えている、カバーガラス。
【0006】
項2.前記飛散防止膜の厚みは、50μm以上である、項1に記載のカバーガラス。
【0007】
項3.前記飛散防止膜がフィルムによって形成され、
前記飛散防止膜は、粘着層によって前記ガラス板に固定され、
前記第1機能膜または前記第2機能膜は、前記飛散防止膜において前記粘着層とは反対側に積層されている、項1または2に記載のカバーガラス。
【0008】
項4.前記フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、またはポリエステルのいずれかにより形成されている、項3に記載のカバーガラス。
【0009】
項5.前記第1機能膜は、前記表示装置と対向するように配置される、項1から4のいずれかに記載のカバーガラス。
【0010】
項6.前記ガラス板において、前記飛散防止膜が配置されていない側の面には、前記第1機能膜または前記第2機能膜が成膜されている、項1から3のいずれかに記載のカバーガラス。
【0011】
項7.前記ガラス板において、前記飛散防止膜が配置されていない側の面には、前記第2機能膜が成膜されている、請求項6に記載のカバーガラス。
【0012】
項8.前記第2機能膜及び前記ガラス板を透過する、波長が340nmの光の透過率が30%以下であり、且つ波長が330nmの光の透過率が1%以下である、項7に記載のカバーガラス。
【0013】
項9.前記ガラス板において、前記飛散防止膜が配置されていない側の面には、前記第1機能膜または前記第2機能膜を構成するフィルムが固定されている、項1から5のいずれかに記載のカバーガラス。
【0014】
項10.Fe23に換算した質量%で、前記ガラス板に含まれる鉄の酸化物の含有率が、0.020%以下である、請求項1から9のいずれかに記載のカバーガラス。
【0015】
項11.前記ガラス板は、強化ガラスである、項1から10のいずれかに記載のカバーガラス。
【0016】
項12.前記ガラス板は、厚みが約5mmの熱強化ガラスである、項11に記載のカバーガラス。
【0017】
項13.前記成膜がなされた前記第1機能膜または前記第2機能膜に対し、荷重4.9N,1000回転によるテーバー摩耗試験を実施後のヘイズ率が1.5%以下である、項6に記載のカバーガラス。
【0018】
項14.前記成膜がなされた前記第1機能膜または前記第2機能膜の膜厚は、300nm以下である、項13に記載のカバーガラス。
【0019】
項15.前記第1機能膜は、前記表示装置と対向するように配置される、項1から10のいずれかに記載のカバーガラス。
【0020】
項16.前記第1機能膜は、アンチグレア機能を有する、項15に記載のカバーガラス。
【0021】
項17.前記第1機能膜は、反射防止機能を有する、項1から15のいずれかに記載のカバーガラス。
【0022】
項18.前記第1機能膜は、防曇機能を有する、項17に記載のカバーガラス。
【0023】
項19.前記第2機能膜は、反射防止機能を有する、項1から18のいずれかに記載のカバーガラス。
【0024】
項20.前記第2機能膜は、防曇機能を有する、項19に記載のカバーガラス。
【0025】
項21.前記第2機能膜は、傷防止機能を有する、項19に記載のカバーガラス。
【0026】
項22.前記第2機能膜は、複数の層により構成され、
前記複数の層の少なくとも1つが、TCOにより形成されている、項21に記載のカバーガラス。
【0027】
項23.前記TCOの抵抗が、20~250Ω/□である、項22に記載のカバーガラス。
【0028】
項24.前記TCOは、フッ素またはアンチモンの少なくとも1つを酸化スズにドープしたものである、項22または23に記載のカバーガラス。
【0029】
項25.前記第2機能膜は、前記ガラス板とは反対側の面に配置される防曇層を有している、項21に記載のカバーガラス。
【0030】
項26.前記防曇層は、親水性または撥水性である、項25に記載のカバーガラス。
【0031】
項27.前記防曇層は、親水性または撥水性である、項25に記載のカバーガラス。
【0032】
項28.支持部材によって支持され、当該支持部材から上方に延びるように構成され、
前記ガラス板において、前記支持部材により支持される端部から1mm以上10mm以下離れた領域内には、前記飛散防止膜が設けられていない帯状の領域がある、項1から27のいずれかに記載のカバーガラス。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、外力が作用した割れたときにガラスが飛散するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係るカバーガラスの一実施形態を示す平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のカバーガラスの使用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るカバーガラスの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1はカバーガラスの平面図、図2図1のA-A線断面図である。
【0036】
<1.カバーガラスの概要>
図2に示すように、このカバーガラス10は、鉛直方向に延びるように配置されており、このカバーガラス10を挟んで右側の領域を第1領域100、左側の領域を第2領域200と称することとする。そして、第2領域200には、ディスプレイ(表示装置)300が配置されており、このディスプレイ300からの光、例えば、ディスプレイ300に映る画像がカバーガラス10を透過して、第1領域100から視認可能となっている。
【0037】
図1及び図2に示すように、このカバーガラス10は、2つの主面である第1面11及び第2面12を有する矩形状のガラス板1と、第1面11に配置された飛散防止膜2と、この飛散防止膜2上に配置された第1機能膜3と、ガラス板1の第2面12に配置された第2機能膜4と、を備えている。そして、ガラス板1の第1面11側に、上述したディスプレイ300が配置されている。以下、各部材1~4について、詳細に説明する。
【0038】
<1-1.ガラス板>
ガラス板1は、特には限定されず、公知のガラス板を用いることができる。例えば、フロートガラス、熱線吸収ガラス、クリアガラス、グリーンガラス、UVグリーンガラス、ソーダライムガラスなど種々のガラス板を用いることができる。ガラス板1の厚みは、特には限定されないが、例えば、3mm以上8mm以下とすることが好ましく、4mm以上6mm以下とすることがさらに好ましい。ガラス板1の厚みが3mm未満であると、ガラス板1の自重で反りが生じるおそれがあり、これによって透過像が歪む可能性がある。一方、ガラス板1の厚みが8mmより大きいと、重量が重くなるおそれがある。
【0039】
また、Fe23に換算した、ガラス板1に含まれる全酸化鉄の質量%を、0.020%以下とすることがこのましい。これは、フロートガラスでは、原料不純物として含有されるFeにより、光の吸収が生じて透過率が低くなるおそれがあることによる。そこで、全酸化鉄の質量%を0.020%以下とすることで、可視光透過率を高くすることができる。その結果、第1領域100から、ディスプレイ300の映る画像を鮮明に視認することができる。
【0040】
また、ガラス板1を強化ガラスで構成することもできる。例えば、カバーガラスを屋外に配置する場合には、風圧や盗難から保護するために、強化ガラスであることが好ましい。特に、熱強化ガラスであることが好ましく、厚みが5mmであることが好ましい。これは、厚みが5mmの熱強化ガラスは、流通量が多く、安価であることによる。
【0041】
<1-2.飛散防止膜>
飛散防止膜2は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、またはポリエステル等の樹脂製のフィルムによって形成することができる。また、飛散防止膜2の厚みは、50~400μmであることが好ましく、100~200μmであることがさらに好ましい。飛散防止膜2が50μm以上であると、例えば、ガラス板1が破断したときに、同時に飛散防止膜2が破れるのを抑制することができ、ガラス板1の破片が飛び散るのを抑制することができる。その一方で、飛散防止膜2の厚みが、400μmより大きくなると、透過像が歪むおそれがあるため、好ましくない。また、飛散防止膜2は、粘着層によってガラス板1の第1面11に貼り付けることができる。粘着層は、例えば、アクリル系、シリコーン系の接着剤により形成することができる。
【0042】
<1-3.第1機能膜>
第1機能膜3は種々の機能を有する膜で構成することができる。例えば、第1機能膜3は、反射防止機能、またはアンチグレア機能を有する膜とすることができる。
【0043】
反射防止機能を有する膜としては、例えば、無機シリコン化合物を主成分とする単層膜または無機シリコン化合物を主成分とする層を含む多層膜とすることができる。無機シリコン化合物は、酸化ケイ素であることが好ましい。
【0044】
また、反射防止機能を有する膜としては、金属酸化物層、金属窒化物層および金属酸窒化物層から選ばれる2種以上の層を積層した多層膜とすることもできる。金属酸化物層の好適な具体例としては、酸化ケイ素(SiO2)層、酸化チタン(TiO2)層または酸化スズ(SnO2)層が挙げられる。金属窒化物層の好適な例としては、窒化チタン(TiN)層が挙げられる。また、金属酸窒化物層の好適な例としては、酸窒化チタン層(TiON)が挙げられる。
【0045】
さらに、反射防止機能を有する膜としては、酸化ケイ素層、酸化スズ層、酸化チタン層、窒化チタン層および酸窒化チタン層から選ばれる3種以上の層を積層した多層からなる膜であることが好ましく、飛散防止膜2から順次、(1)窒化チタン層、酸化スズ層および酸化ケイ素層、(2)酸窒化チタン層、酸化スズ層および酸化ケイ素層、または(3)酸化スズ層、酸化チタン層および酸化ケイ素層を積層した3層で形成することが好ましい。
【0046】
反射防止機能を有する第1機能膜3の膜厚は、積層される膜の種類により適宜選択されるが、好ましくは、50~1000nmであり、より好ましくは100~700nmである。膜厚が50~1000nmの範囲内であれば、優れた光の干渉効果を発現させ、複層ガラスの可視光透過率、反射率および色調調整にその効果を最もよく反映させることができる。
【0047】
上述した反射防止膜の成膜方法は特には限定されないが、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法などのいわゆる物理蒸着法、スプレー法、あるいは、化学気相法(CVD法)を採用することができる。
【0048】
また、第1機能膜3を飛散防止膜上に直接形成するほか、上述した反射防止機能を有する層(機能層)を、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等のフィルム基材上に積層し、これを飛散防止膜2に粘着層によって貼り付けることもできる。
【0049】
あるいは、第1機能膜3は、アンチグレア機能を有する膜とすることもできる。アンチグレア機能を有するには、第1機能膜3がアンチグレア処理を行った膜とすることができる。アンチグレア処理とは、例えば、表面光沢を有する平滑な物質の表面に凹凸を形成するか、その物質中に屈折率が異なる微粒子を分散させることにより、表面から入射した光が散乱して反射するようにした処理をいう。
【0050】
アンチグレア処理の程度は、例えば、透過光のヘイズ率で表すことができ、ヘイズ率が2%~10%であることが好ましく、3%~5%であることがさらに好ましい。これは、ヘイズ率が2%未満であると、モアレ抑制効果がなく、ヘイズ率が10%を超えると表示像の鮮明度を確保することができない。なお、ヘイズ率の測定には、例えば、スガ試験機社製HZ-1Sを用いることができる。この点は、本明細書で説明される全てのヘイズ率について同じである。
【0051】
表面に微細な凹凸を設けるアンチグレア処理において、表面粗さRaは0.05μmであることが好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。例えば、第1機能膜3として、ポリエチレンテレフタレート、アクリル等のフィルムを準備し、その表面に凹凸を形成することができる。あるいは、上述した飛散防止膜2の表面に、凹凸を形成し、飛散防止膜2が第1機能膜3を兼ねてもよい。
【0052】
また、第1機能膜3が、微粒子を含む膜であってもよい。例えば、シリカ、アルミナ、酸化錫、雲母、二酸化チタンなどの無機物質で構成された微粒子を準備し、これを混入したインキまたは接着剤を飛散防止膜2の表面に塗布することで、第1機能膜3を形成することもできる。このときインキまたは接着剤としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが用いられる。
【0053】
また、第1機能膜3は、飛散防止膜2の表面を保護する公知のハードコート層により構成することもできる。すなわち、第1機能膜3は、公知のハードコート層等による、傷防止機能を有することができる。
【0054】
<1-4.第2機能膜>
第2機能膜4は、第1機能膜3と同様に、反射防止機能、またはアンチグレア機能を有する膜とすることができる。したがって、上述した第1機能膜3と同様の材料で形成することができる。但し、第1機能膜3は、飛散防止膜2上に配置したが、第2機能膜4を構成する各種の材料は、ガラス板1の第2面12に配置される点で相違する。また、第1機能膜3と第2機能膜4は同じ機能、あるいは同じ材料を有するものであってもよい。例えば、両機能膜3,4がともに反射防止機能、またはともにアンチグレア機能を有してもよい。その他、第2機能膜4は、抗菌、アンチフィンガープリント、防汚性能、紫外線カット機能、傷防止機能を有していてもよい。例えば、アンチフィンガープリントは、最表面を撥水性とすることができる。具体的には、例えば、ダイキン工業株式会社製オプツールDAC-HP、等を用いることができる。抗菌機能は、例えば、Ag、Cu、Znなどからなる金属微粒子または金属化合物微粒子、有機ヨウ素系、有機窒素イオウ系などの抗菌剤を膜中に分散することで発現させることができる。さらに、紫外線カット機能は、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムの少なくとも1つからなる化合物膜、または、これらの組成の少なくとも1つを含有する微粒子を膜中に分散させることで、発現させることができる。このような紫外線カット機能は、第1機能膜3にもたせることもできる。また、傷防止機能は、第1機能膜3で示した通り、公知のハードコート層等で実現することができる。以上の機能のうち、複数の機能が第2機能膜4に備えられていてもよい。
【0055】
但し、本実施形態において、ガラス板1の第2面12には、飛散防止膜2は配置されておらず、第2機能膜4のみが配置されているが、この場合には、第2機能膜4の総膜厚は、300nm以下であることが好ましい。これは、総膜厚が厚くなると、膜自体の凹凸が大きくなり、クリーニング時に引っ掛かりやすくなるからである。特に、膜材料として結晶性の材料を用いた場合には、膜厚が厚くなると、結晶成長しやすいので、結晶性粒子サイズが大きくなり、凹凸が大きくなるおそれがある。
【0056】
飛散防止膜2は、例えば、紫外線が長期に亘って照射されると、部分的に分子間の結合が切れて酸素と反応し、黄変するおそれがある。例えば、PETフィルムは、325nm以下の波長の光で劣化し易いことが知られている。したがって、第2面に配置される第2機能膜4に紫外線カット機能があれば、第1領域100側から照射される紫外線による飛散防止膜2の劣化、例えば黄変を防止することができる。具体的には、第2機能膜4とガラス板1を透過する、波長が340nmの光の透過率が30%以下、波長が330nmの光の透過率が1%以下となるような第2機能膜4、及びガラス板1が選択されることが好ましい。このような機能のためには、第2機能膜4単独、ガラス板1単独、またはガラス板1及び第2機能膜4の両方が、紫外線カット機能を有するようにすることができる。
【0057】
<1-5.機能膜の物性>
各機能膜3,4の耐摩耗性は、JIS R3221に準拠した摩耗試験により評価することができる。すなわち、テーバー摩耗試験機(例えば、TABER INDUSTRIES社製5050 ABRA)により、各機能膜3,4の表面に、4.9Nk荷重で1000回の摩耗を行ったときに、各機能膜3,4が飛散防止膜2またはガラス板1から剥離せず、且つこの摩耗試験後のヘイズ率が1.5%以下であることが好ましい。これは、膜の耐摩耗性が弱いと、クリーニング時に傷が生じ、ディスプレイによる映像の透過を阻害するおそれがあることによる。
【0058】
<2.特徴>
本実施形態に係るカバーガラス10は、以下の効果を奏することができる。
(1)第1機能膜3が、反射防止機能を有すると、ディスプレイ300の画像による光がカバーガラス10を透過しやすくなるため、第1領域100からのディスプレイ300の画像の視認性を向上することができる。同様に、第2機能膜4が反射防止機能を有すると、例えば、第1領域100にある光源からの光が、カバーガラスにおいて反射し難くなり、透過しやすくなるため、これによっても、第1領域100からのディスプレイの画像の視認性を向上することができる。
【0059】
(2)第1機能膜3が、アンチグレア機能を有すると、ディスプレイ300の光が第1機能膜において散乱するため、映り込みを低減することができる。したがって、第1領域100からのディスプレイ300の画像の視認性を向上することができる。同様に、第2機能膜4がアンチグレア機能を有すると、例えば、第1領域100にある光源からの光が、カバーガラス10に映り込みにくくなり、これによっても、第1領域100からのディスプレイの画像の視認性を向上することができる。
【0060】
(3)ガラス板1と接するように飛散防止膜2が設けられているため、例えば、カバーガラス10を屋外に配置した場合、風雨によって衝撃が加わってガラス板1が割れたり、あるいはディスプレイ300の盗難に際してガラス板1が割られても、ガラス板1の破片が飛散するのを防止することができる。飛散防止膜2は、ガラス板1に接していればその機能を果たすため、ガラス板1の両面に配置しなくてもよい。したがって、一方のみに設けることで、コストを低減することができる。
【0061】
(4)ガラス板1の第2面12は、第1領域100に面するが、例えば、第1領域100が屋外の場合には、第2機能膜4が、ガラス板1の第2面12に直接成膜されると、剥がれにくいという利点がある。一方、ディスプレイ300が配置されている第2領域200は屋内、または閉じられた空間であることが多いため、飛散防止膜2や第1機能膜3は、風雨や太陽光に直接曝されたり、清掃などで拭かれたりすることが少ない。したがって、例えば、これらの膜2,3を、上述したように、粘着層などで固定しても、上記環境により剥がれにくい。
【0062】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0063】
<3-1>
上記実施形態では、飛散防止膜2を第1機能膜3とガラス板1の第1面11との間に配置したが、飛散防止膜2の位置は特には限定されない。例えば、第1機能膜3の表面、第2機能膜4の表面、第2機能膜4とガラス板1の第2面12との間のいずれの位置であってもよい。但し、各機能膜3,4がアンチグレア機能を有する場合、アンチグレア機能のための凹凸を阻害しないようにするため、各機能膜3,4の表面に飛散防止膜2を配置せず、各機能膜3,4とガラス板1との間に、飛散防止膜2を配置することが好ましい。
【0064】
<3-2>
第1機能膜3及び第2機能膜4の少なくとも一方には、曇りを防止するための防曇機能を持たせることができる。例えば、第1機能膜3または第2機能膜4の表面に、防曇層を積層することができる。以下、防曇層の詳細について説明する。
【0065】
<3-2-1.防曇層>
防曇層は、カバーガラス10の防曇効果を奏するものであれば、特には限定されず、公知のものを用いることができる。一般的に、防曇層は、水蒸気から生じる水を水膜として表面に形成する親水タイプ、水蒸気を吸収する吸水タイプ、表面に水滴が凝結しにくい撥水吸水タイプ、及び水蒸気から生じる水滴を撥水する撥水タイプがあるが、いずれのタイプの防曇層も適用可能である。以下では、その一例として、撥水吸水タイプの防曇層の例を説明する。
[有機無機複合防曇層]
有機無機複合防曇層は、いずれかの機能膜の表面に形成された単層膜もしくは積層された複層膜である。有機無機複合防曇層は、少なくとも吸水性樹脂と撥水基と金属酸化物成分とを含んでいる。防曇層は、必要に応じ、その他の機能成分をさらに含んでいてもよい。吸水性樹脂は、水を吸収して保持できる樹脂であればその種類を問わない。撥水基は、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)から防曇層に供給することができる。金属酸化物成分は、撥水基含有金属化合物その他の金属化合物、金属酸化物微粒子等から防曇層に供給することができる。以下、各成分について説明する。
【0066】
(吸水性樹脂)
吸水性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、より好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0067】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを縮合反応させてアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコールのアセタール化は、酸触媒の存在下で水媒体を用いる沈澱法、アルコール等の溶媒を用いる溶解法等公知の方法を用いて実施すればよい。アセタール化は、ポリ酢酸ビニルのケン化と並行して実施することもできる。アセタール化度は、2~40モル%、さらには3~30モル%、特に5~20モル%、場合によっては5~15モル%が好ましい。アセタール化度は、例えば13C核磁気共鳴スペクトル法に基づいて測定することができる。アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂は、吸水性及び耐水性が良好である有機無機複合防曇層の形成に適している。
【0068】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200~4500であり、より好ましくは500~4500である。高い平均重合度は、吸水性及び耐水性が良好である有機無機複合防曇層の形成に有利であるが、平均重合度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎて膜の形成に支障をきたすことがある。ポリビニルアルコールのケン化度は、75~99.8モル%が好ましい。
【0069】
ポリビニルアルコールに縮合反応させるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルカルバルデヒド、オクチルカルバルデヒド、デシルカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒドを挙げることができる。また、ベンズアルデヒド;2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル基置換ベンズアルデヒド;クロロベンズアルデヒド、その他のハロゲン原子置換ベンズアルデヒド;ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等のアルキル基を除く官能基により水素原子が置換された置換ベンズアルデヒド;ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド等の縮合芳香環アルデヒド等の芳香族アルデヒドを挙げることができる。疎水性が強い芳香族アルデヒドは、低アセタール化度で耐水性に優れた有機無機複合防曇層を形成する上で有利である。芳香族アルデヒドの使用は、水酸基を多く残存させながら吸水性が高い膜を形成する上でも有利である。ポリビニルアセタール樹脂は、芳香族アルデヒド、特にベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含むことが好ましい。
【0070】
エポキシ系樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、環式脂肪族エポキシ樹脂である。
【0071】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとで構成されるポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、アクリルポリオール及びポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。
【0072】
有機無機複合防曇層は、吸水性樹脂を主成分とする。本発明において、「主成分」とは、質量基準で含有率が最も高い成分を意味する。有機無機複合防曇層の重量に基づく吸水性樹脂の含有率は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
【0073】
(撥水基)
撥水基による上述の効果を十分に得るためには、撥水性が高い撥水基を用いることが好ましい。好ましい撥水基は、(1)炭素数3~30の鎖状又は環状のアルキル基、及び(2)水素原子の少なくとも一部をフッ素原子により置換した炭素数1~30の鎖状又は環状のアルキル基(以下、「フッ素置換アルキル基」ということがある)から選ばれる少なくとも1種である。
【0074】
(1)及び(2)に関し、鎖状又は環状のアルキル基は、鎖状アルキル基であることが好ましい。鎖状アルキル基は、分岐を有するアルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。炭素数が30を超えるアルキル基は、防曇層を白濁させることがある。膜の防曇性、強度及び外観のバランスの観点から、アルキル基の炭素数は、20以下が好ましく、6~14がより好ましい。特に好ましいアルキル基は、炭素数6~14、特に炭素数6~12の直鎖アルキル基、例えばn-ヘキシル基(炭素数6)、n-デシル基(炭素数10)、n-ドデシル基(炭素数12)である。(2)に関し、フッ素置換アルキル基は、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子の一部のみをフッ素原子により置換した基であってもよく、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子のすべてをフッ素原子により置換した基、例えば直鎖状のパーフルオロアルキル基、であってもよい。フッ素置換アルキル基は撥水性が高いため、少ない量の添加によって十分な効果を得ることができる。ただし、フッ素置換アルキル基は、その含有量が多くなり過ぎると、膜を形成するための塗工液中でその他の成分から分離することがある。
【0075】
(撥水基を有する加水分解性金属化合物)
撥水基を防曇層に配合するためには、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)、特に撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜を形成するための塗工液に添加するとよい。言い換えると、撥水基は、撥水基含有加水分解性金属化合物に由来するものであってもよい。撥水基含有加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)に示す撥水基含有加水分解性シリコン化合物が好適である。
mSiY4-m (I)
ここで、Rは、撥水基、すなわち水素原子の少なくとも一部がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~30の鎖状又は環状のアルキル基であり、Yは加水分解可能な官能基又はハロゲン原子であり、mは1~3の整数である。加水分解可能な官能基は、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはアルコキシ基、特に炭素数1~4のアルコキシ基である。アルケニルオキシ基は、例えばイソプロペノキシ基である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。なお、ここに例示した官能基は、以降に述べる「加水分解可能な官能基」としても使用することができる。mは好ましくは1~2である。
【0076】
式(I)により示される化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)により表示される成分を供給する。
mSiO(4-m)/2 (II)
ここで、R及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)により示される化合物は、実際には、防曇層中において、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。
【0077】
このように、式(I)により示される化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらには少なくとも一部が重縮合して、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si-O-Si)のネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に含まれるシリコン原子には撥水基Rが接続している。言い換えると、撥水基Rは、結合R-Siを介してシロキサン結合のネットワーク構造に固定される。この構造は、撥水基Rを膜に均一に分散させる上で有利である。ネットワーク構造は、式(I)により示される撥水基含有加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、シランカップリング剤)から供給されるシリカ成分を含んでいてもよい。撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有するシリコン化合物(撥水基非含有加水分解性シリコン化合物)を撥水基含有加水分解性シリコン化合物と共に防曇層を形成するための塗工液に配合すると、撥水基と結合したシリコン原子と撥水基と結合していないシリコン原子とを含むシロキサン結合のネットワーク構造を形成できる。このような構造とすれば、防曇層中における撥水基の含有率と金属酸化物成分の含有率とを互いに独立して調整することが容易になる。
【0078】
撥水基は、吸水性樹脂を含む防曇層の表面における水蒸気の透過性を向上させることにより防曇性能を向上させる効果がある。吸水と撥水という2つの機能は互いに相反するため、吸水性材料と撥水性材料とは、従来、別の層に振り分けて付与されてきたが、撥水基は、防曇層の表面近傍における水の偏在を解消して結露までの時間を引き延ばし、単層構造を有する防曇層の防曇性を向上させる。以下ではその効果を説明する。
【0079】
吸水性樹脂を含む防曇層へと侵入した水蒸気は、吸水性樹脂等の水酸基と水素結合し、結合水の形態で保持される。量が増加するにつれ、水蒸気は、結合水の形態から半結合水の形態を経て、ついには防曇層中の空隙に保持される自由水の形態で保持されるようになる。防曇層において、撥水基は、水素結合の形成を妨げ、かつ形成した水素結合の解離を容易にする。吸水性樹脂の含有率が同じであれば、膜中における水素結合可能な水酸基の数には差がないが、撥水基は水素結合の形成速度を低下させる。したがって、撥水基を含有する防曇層において、水分は、最終的には上記のいずれかの形態で膜に保持されることになるが、保持されるまでには膜の底部まで水蒸気のまま拡散することができる。また、一旦保持された水も、比較的容易に解離し、水蒸気の状態で膜の底部まで移動しやすい。結果的に、膜の厚さ方向についての水分の保持量の分布は、表面近傍から膜の底部まで比較的均一になる。つまり、防曇層の厚さ方向の全てを有効に活用し、膜表面に供給された水を吸収することができるため、表面に水滴が凝結しにくく、防曇性が高くなる。さらに、表面に水滴が凝結しにくいことにより、水分を吸収した防曇層は、低温でも凍結しにくいという特徴を有する。
【0080】
一方、撥水基を含まない防曇層においては、膜中に侵入した水蒸気は極めて容易に結合水、半結合水又は自由水の形態で保持される。したがって、侵入した水蒸気は、膜の表面近傍で保持される傾向にある。結果的に、膜中の水分は、表面近傍が極端に多く、膜の底部へ進むにつれて急速に減少する。つまり、膜の底部では未だ水を吸収できるにも拘わらず、膜の表面近傍では水分により飽和して水滴として凝結するため、防曇性が限られたものとなる。
【0081】
撥水基含有加水分解性シリコン化合物(式(I)参照)を用いて撥水基を防曇層に導入すると、強固なシロキサン結合(Si-O-Si)のネットワーク構造が形成される。このネットワーク構造の形成は、耐摩耗性のみならず、硬度、耐水性等を向上させる観点からも有利である。
【0082】
撥水基は、防曇層の表面における水の接触角が70度以上、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上になる程度に添加するとよい。水の接触角は、4mgの水滴を膜の表面に滴下して測定した値を採用することとする。特に撥水性がやや弱いメチル基又はエチル基を撥水基として用いる場合は、水の接触角が上記の範囲となる量の撥水基を防曇層に配合することが好ましい。この水滴の接触角は、その上限が特に制限されるわけではないが、例えば150度以下、また例えば120度以下、さらには100度以下である。撥水基は、防曇層の表面のすべての領域において上記水滴の接触角が上記の範囲となるように、防曇層に均一に含有させることが好ましい。
【0083】
なお、防曇層の表面を撥水化することもできる。これにより、防曇層へのアルカリ成分の侵入を抑制でき、ガラス板1の表面をアルカリ成分から保護することができる。
【0084】
防曇層は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上の範囲内となるように、また、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、の範囲内となるように、撥水基を含むことが好ましい。
【0085】
(無機酸化物)
無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、少なくとも、Siの酸化物(シリカ)を含む。有機無機複合防曇層は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは5重量部以上、場合によっては10重量部以上、必要であれば20重量部以上、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下、特に好ましくは35重量部以下、最も好ましくは33重量部以下、場合によっては30重量部以下となるように、無機酸化物を含むことが好ましい。無機酸化物は、有機無機複合防曇層の強度、特に耐摩耗性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇層の防曇性が低下する。
【0086】
(無機酸化物微粒子)
有機無機複合防曇層は、無機酸化物の少なくとも一部として、無機酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより有機無機複合防曇層に導入できる。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇層に加えられた応力を、有機無機複合防曇層を支持する物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、有機無機複合防曇層の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。また、有機無機複合防曇層に無機酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から膜中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、無機酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇層を形成するための塗工液に、予め形成した無機酸化物微粒子を添加することにより、有機無機複合防曇層に供給することができる。
【0087】
無機酸化物微粒子の平均粒径が大きすぎると、有機無機複合防曇層が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、無機酸化物微粒子の平均粒径は、好ましくは1~20nmであり、より好ましくは5~20nmである。なお、ここでは、無機酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。無機酸化物微粒子は、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇層全体の吸水量が低下し、有機無機複合防曇層が白濁するおそれがある。無機酸化物微粒子は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0~50重量部であり、より好ましくは2~30重量部、さらに好ましくは5~25重量部、特に好ましくは10~20重量部となるように添加するとよい。
【0088】
(撥水基を有しない加水分解性金属化合物)
防曇層は、撥水基を有しない加水分解性金属化合物(撥水基非含有加水分解性化合物)に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい撥水基非含有加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。
【0089】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であってもよい。
SiY4 (III)
上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。
【0090】
撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、金属酸化物微粒子と吸水性樹脂とを強固に接合し、防曇層の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。撥水基を有しない加水分解性金属化合物に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0~40質量部、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部、特に好ましくは3~10質量部、場合によっては4~12質量部の範囲とするとよい。
【0091】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1~4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン及びテトラ-tert-ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
【0092】
テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇層の防曇性が低下することがある。防曇層の柔軟性が低下し、水分の吸収及び放出に伴う膜の膨潤及び収縮が制限されることが一因である。テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0~30質量部、好ましくは1~20質量部、より好ましくは3~10質量部の範囲で添加するとよい。
【0093】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい別の一例は、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、互いに異なる反応性官能基を有するシリコン化合物である。反応性官能基は、その一部が加水分解可能な官能基であることが好ましい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシ基及び/又はアミノ基と加水分解可能な官能基とを有するシリコン化合物である。好ましいシランカップリング剤としては、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びアミノアルキルトリアルコキシシランを例示できる。これらのシランカップリング剤において、シリコン原子に直接結合しているアルキレン基の炭素数は1~3であることが好ましい。グリシジルオキシアルキル基及びアミノアルキル基は、親水性を示す官能基(エポキシ基、アミノ基)を含むため、アルキレン基を含むものの、全体として撥水性ではない。
【0094】
シランカップリング剤は、有機成分である吸水性樹脂と無機成分である金属酸化物微粒子等とを強固に結合し、防曇層の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。しかし、シランカップリング剤に由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇層の防曇性が低下し、場合によっては防曇層が白濁する。シランカップリング剤に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~2質量部の範囲で添加するとよい。
【0095】
(架橋構造)
防曇層は、架橋剤、好ましくは有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、防曇層の耐摩耗性、耐擦傷性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、防曇層の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。
【0096】
金属酸化物成分がシリカ成分である防曇層に架橋剤に由来する架橋構造を導入した場合、その防曇層は、金属原子としてシリコンと共にシリコン以外の金属原子、好ましくはホウ素、チタン又はジルコニウム、を含有することがある。
【0097】
架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート系化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ-ト系化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテートは、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート系化合物、特にチタンラクテートである。
【0098】
吸水性樹脂がポリビニルアセタールである場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。
【0099】
(その他の任意成分)
防曇層にはその他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。
【0100】
(下地層)
防曇層は、各機能膜3,4に直接積層することもできるが、各機能膜3,4上に下地層を形成し、その上に、防曇層を積層することもできる。このように下地層を介して、防曇層を各機能膜3,4上に積層することで、防曇層を剥がれにくくすることができる。下地層は、例えば、シランカップリング剤等を採用することができる。
【0101】
[厚み]
有機無機複合防曇層の厚みは、要求される防曇特性その他に応じて適宜調整すればよい。有機無機複合防曇層の厚みは、好ましくは2~15μmであり、より好ましくは2~12μm、さらに好ましくは3~10μmである。防曇層の厚みが2μm以上であれば、十分な防曇効果を得ることができる。一方、防曇層が厚すぎると、膜厚のムラにより反射像が歪むおそれがある。また、防曇層は、上記のように樹脂材料から形成されており、複屈折率を有するため、厚すぎると像がぼやけるおそれがある。
【0102】
<3-2-2.防曇層の成膜方法>
次に、防曇層の成膜方法について説明する。防曇層の成膜方法は、特には限定されないが、例えば、上述した有機無機複合防曇層は、有機無機複合防曇層を形成するための塗工液を各機能膜3,4等の上に塗布し、塗布した塗工液を乾燥させることにより、成膜することができる。塗工液の調製に用いる溶媒、塗工液の塗布方法は、公知の材料及び方法を用いればよい。このとき、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、有機無機複合防曇層が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、有機無機複合防曇層のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
【0103】
塗工液の乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に塗工液を曝すことにより、実施するとよい。風乾工程は、非加熱工程として、言い換えると室温で実施できる。塗工液に加水分解性シリコン化合物が含まれている場合、加熱乾燥工程では、シリコン化合物の加水分解物等に含まれるシラノール基及び物品上に存在する水酸基が関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si-O結合のネットワーク)が発達する。風乾工程は、例えば、約10分間行うことができる。
【0104】
吸水性樹脂等の有機物の分解を避けるべく、加熱乾燥工程において適用する温度は過度に高くしないほうがよい。この場合の適切な加熱温度は、300℃以下、例えば100~200℃である。具体的には、3つの工程を行うことができる。例えば、温度約120℃で約5分間焼成し、温度約80度、湿度90%で約2時間乾燥した後、温度約120℃で約30分間焼成する。こうして、防曇層の成膜が完了する。
【0105】
<3-2-3.防曇層の他の態様>
上記の例では、各機能膜3,4に、防曇層を直接積層したが、防曇シートを貼り付けることもできる。防曇シートは、シート状の透明の基材フィルムと、基材フィルムの一方の面上に積層された上記防曇層と、基材フィルムの他方の面上に積層された透明の粘着層と、を備えている。そして、粘着層を、各機能膜3,4の表面に固定すれば、防曇シートを固定することができる。
【0106】
基材フィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの透明の樹脂シートにより形成することができる。基材フィルムの厚みは、例えば、75~100μmにすることができる。一方、例えば、アクリル系、シリコーン系の接着剤により形成することができる。
【0107】
<3-2-4.その他>
上記のように、防曇層は、親水タイプ、吸水タイプ、撥水吸水タイプ、及び撥水タイプがあるが、吸水タイプまたは撥水吸水タイプの場合、水を吸収しすぎると高額膜厚が変化してしまい、機能膜としてアンチグレア機能を有する場合には、その機能が損なわれるおそれがある。そのため、このような場合には、光学膜厚が変化しない親水タイプまたは撥水タイプを用いることが好ましい。
【0108】
<3-3>
カバーガラス10は、例えば、図3に示すように、支持部材5によって支持され、この支持部材5から上方に延びるように構成することができる。支持部材5の上部には、カバーガラス10の端部が差し込まれる開口51が形成されており、この開口51の縁部とカバーガラス10との間にシリコーンなどの緩衝部材52が配置されている。カバーガラスにおいて、支持部材5に挿入される長さは、例えば、カバーガラスの厚みが8mm以下の場合には、10mm以下とすることができる。
【0109】
ところで、ガラス板1と飛散防止膜2とは熱膨張率に差があるため、支持部材5によって支持されている部分に熱が作用すると、飛散防止膜2が延びて歪み、ねじれたり、波打ったりするおそれがある。そこで、図3とは異なり、ガラス板1において、支持部材5に支持されている部分から上方に10mm以内の領域には、飛散防止膜2を設けないようにすることができる。例えば、ガラス板1の下端部から10mm以上20mm以内の領域に、飛散防止膜2を設けないようにすることができる。あるいは、この領域内において、飛散防止膜2に水平方向に延びる切り込みを形成することもできる。これにより、支持部材5からの熱による飛散防止膜2の延びによる影響を、上記領域内に留め、飛散防止膜2がガラス板1の全体に亘って、波打つ等するのを抑制することができる。また、支持部材5に支持されている部分に飛散防止膜2を設けないようにすることもできる。
【0110】
<3-4>
上記のような防曇層を用いる以外、または防曇層に加え、例えば、第2機能膜4を複数の層で形成し、そのうちの少なくとも1つを透明導電膜で形成することもできる。この透明導電膜に電流を印加することで発熱するため、曇りを防止することができる。
【0111】
透明導電膜としては、種々のものを用いることができるが、ITO,TCO等を用いることができる。TCOは、例えば、フッ素またはアンチモンの少なくとも1つを酸化スズにドープしたものとすることができる。また、TCOを用いる場合、そのシート抵抗は、例えば、20~25Ω/□とすることができる。
【0112】
<3-5>
ガラス板1の形状は特には限定されず、種々の形状が可能である。また、飛散防止膜2、各機能層3,4、及び防曇層は、ガラス板1の全面に亘って形成する必要はなく、ガラス板1において必要な面積に形成すればよい。
【0113】
<3-6>
上記実施形態では、本発明の表示装置としてディスプレイ300を使用しているが、ディスプレイ300は、蛍光灯、液晶、有機EL等、特には限定されず、画像のほか、何らかのサイン等が表示されればよい。
【符号の説明】
【0114】
1 ガラス板
11 第1面
12 第2面
2 飛散防止膜
3 第1機能膜
4 第2機能膜
300 ディスプレイ(表示装置)
図1
図2
図3