(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】標的金属分離のための鉄-キャビテーションプロセス
(51)【国際特許分類】
B01D 9/02 20060101AFI20240611BHJP
C02F 1/36 20230101ALI20240611BHJP
C02F 1/62 20230101ALI20240611BHJP
C10G 29/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B01D9/02 601E
B01D9/02 602E
B01D9/02 604
B01D9/02 615A
B01D9/02 615Z
C02F1/36
C02F1/62 Z
C10G29/06
(21)【出願番号】P 2019515500
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(86)【国際出願番号】 CA2017051106
(87)【国際公開番号】W WO2018053630
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-07
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591106945
【氏名又は名称】ナショナル・リサーチ・カウンシル・オブ・カナダ
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL RESEARCH COUNCIL OF CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】キルパラニー ディーパック エム.
(72)【発明者】
【氏名】モハパトラ ディプティ プラカシュ
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】増山 淳子
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/025922(WO,A1)
【文献】特表2008-536302(JP,A)
【文献】特開2007-105557(JP,A)
【文献】特開2014-50799(JP,A)
【文献】特開2005-208529(JP,A)
【文献】特開2007-275694(JP,A)
【文献】特開2011-72692(JP,A)
【文献】Fenglian FU et al.,Degradation of Ni-EDTA Complex by Fenton reaction and ultrasonic treatment for the removal of Ni2+ ions,Environ Chem Lett,ドイツ,Springer,2010年,Vol.8,317-322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D9/00
C02F1/00
C10G29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体試料からの標的金属の除去のためのプロセスであって、
前記水性液体試料に音響キャビテーションを適用することと、
硫酸鉄(II)またはその前駆体を前記水性液体試料に加えて前記水性液体試料中の鉄と音響キャビテーションにより発生した過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルを生成することと
を含み、
前記プロセスの一部として、前記水性液体試料に過酸化水素は加えられることなく、及び前記水性液体試料のpHを酸性域に調整することがなく、
それにより前記水性液体試料中で低下した溶解度を有する標的金属塩または金属酸化物を生成し、前記水性液体試料からの前記標的金属の除去につながる、
前記プロセス。
【請求項2】
前記プロセスはさらに、前記水性液体試料からの標的有機化合物の除去につながり、前記標的有機化合物は残留性有機ポリマー(POP)を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記POPはペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ペルフルオロヘプタンスルホン酸塩(PFHpS)、または他のペル-もしくはポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記音響キャビテーションは20kHz~2.4MHz、または350kHz~800kHz、または500kHz~600kHzの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記標的金属を含む前記水性液体試料はプロセス影響水、油、ビチューメン、またはアスファルテン
を含み、プロセス影響水は水系尾鉱もしくは廃液、または冶金用石炭廃液、または貴金属廃液である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記標的金属はニッケル(Ni)、バナジウム(V)、またはセレン(Se)である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水性液体試料中で低下した溶解度を有する前記標的金属塩または金属酸化物は、前記水性液体試料から沈殿されてそこから除去される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスは、
前記標的金属に対する配位子を前記水性液体試料に加えるステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記配位子は前記標的金属と錯形成し、それにより前記水性液体試料中の前記標的金属の溶解度がさらに低下し、そこからの除去を促進する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記配位子の前記標的金属との錯形成は、前記水性液体試料からの前記標的金属の沈殿をもたらす、ただし、前記標的金属がニッケルである場合を除く、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記配位子はEDTAである、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記配位子は2-(アミノメチル)ピリジン:
【化1】
である、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記標的金属はセレンである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
セレンは前記配位子と錯形成して、以下の構造:
【化2】
を有する少なくとも1つの錯体を形成する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記水性液体試料に音響キャビテーションが適用されると、過酸化水素が前記水性液体試料中に発生する、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
水性液体試料からの有機混入物の除去のためのプロセスであって、
前記水性液体試料に音響キャビテーションを適用することと、
硫酸鉄(II)またはその前駆体を前記水性液体試料に加えて前記水性液体試料中の鉄と音響キャビテーションにより発生した過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルを生成することと
を含み、
前記プロセスの一部として、前記水性液体試料に過酸化水素は加えられることなく、及び前記水性液体試料のpHを酸性域に調整することがない、
前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、液体試料からの金属の除去に関する。より具体的には、本発明は、フェントン酸化およびキャビテーションを含む金属分離プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセスは、一般に、重金属、希土類元素などの金属を含有するか、または金属で汚染された液体を利用または生成する。それらの存在は、悪い毒性、環境または操作上の影響を有する場合があるため、これらの金属の除去がしばしば望ましい。プロセス影響水(process-affected water)中の高い金属濃度は、例えば、抽出回収率の低下、および/またはパイプのスケール発生/ファウリング、および水の再利用中の単位操作を含む、様々な操作上の問題につながり得る。さらに、これらの金属のいくつかは、費用効果の高い方法で抽出され得ると仮定すれば、高価な場合がある。
【0003】
液体試料からの金属の除去が望ましい場合がある工業操作は、例えば、エネルギー部門にしばしば見いだされる。オイルサンド操作は、しばしば、金属を含有するプロセス影響水、油、ビチューメン、および/またはアスファルテン試料を含む。そのような金属は、例えば、水系尾鉱、オイルサンド尾鉱、およびフロス浮選尾鉱で見出される場合がある。これらの金属の存在は、設備寿命の減少につながる場合があり、ならびに/またはそのような液体の毒性および/もしくは環境影響を低減するための費用のかかる処理を余儀なくさせる。さらに、これらの液体中に含有された金属は希少および高価な場合があり、したがって、これらの金属の除去および収集は、費用効果の高い方法で達成され得ると仮定すれば、望ましい場合がある。
【0004】
重金属分離/回収のための従来の手法は、尾鉱への過酸化物の添加、遠心分離、および共沈法を含んでいる。液体試料からの標的金属分離のための代替の、追加の、および/または改善されたプロセスが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
フェントン酸化をキャビテーションと組み合わせることによって、液体試料からの、向上した金属の分離および/または回収(および/または有機混入物の除去)が達成されてよいことが、本明細書で見出された。そのような処理プロセスは、音響キャビテーション/超音波処理とフェントン酸化とを組み合わせ、それにより処理される液体試料中のヒドロキシラジカルの効率的な生成を可能にし、標的金属の分離および回収および/またはアップグレーディングを促進する。
【0006】
実施形態では、液体試料からの標的金属の除去のためのプロセスが本明細書に提供され、前述のプロセスは、
液体に音響キャビテーションを適用することと、
鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えて液体中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルを生成することと
を含み、それにより液体試料中で低下した溶解度を有する標的金属塩または金属酸化物を生成し、液体試料からの標的金属の除去につながる。
【0007】
上に記載されたようなプロセスの別の実施形態では、プロセスはさらに、液体試料からの標的有機化合物の除去につながってよい。さらに別の実施形態では、標的有機化合物は残留性有機ポリマー(POP)を含んでよい。さらに別の実施形態では、POPはペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、またはペルフルオロヘプタンスルホン酸塩(PFHpS)、または他のペル-およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を含んでよい。
【0008】
上記のプロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、音響キャビテーションは20kHz~2.4MHz、または350kHz~800kHzの範囲であってよい。さらに別の実施形態では、音響キャビテーションは500~600kHzの範囲であってよい。
【0009】
上記のプロセス(単数または複数)の別の実施形態では、液体試料はプロセス影響水、油、ビチューメン、またはアスファルテンであるか、またはそれらを含んでよい。ある実施形態では、プロセス影響水は水系尾鉱または廃液であってよい。ある実施形態では、液体試料は冶金用石炭廃液、または貴金属廃液を含んでよい。他の実施形態では、液体試料はオイルサンド尾鉱またはフロス浮選尾鉱であるか、またはそれらを含んでよい。
【0010】
上記のプロセス(単数または複数)の別の実施形態では、標的金属はニッケル(Ni)、バナジウム(V)、またはセレン(Se)であってよい。
【0011】
上記のプロセス(単数または複数)の別の実施形態では、鉄(II)塩はFeSO4であってよい。
【0012】
上記のプロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、液体試料から除去された標的金属は回収されてよい。
【0013】
上記のプロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、液体試料中で低下した溶解度を有する標的金属塩または金属酸化物は、液体試料から沈殿されてそこから除去されてよい。
【0014】
上記のプロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、プロセスは、
標的金属に対する配位子を液体試料に加えるステップ
をさらに含んでよい。
【0015】
上記のプロセスのさらに別の実施形態では、配位子は標的金属と錯形成し、それにより液体試料中の金属の溶解度がさらに低下し、そこからの除去を促進してよい。ある実施形態では、配位子の金属との錯形成は液体試料からの金属の沈殿をもたらしてよい。
【0016】
上記のプロセス(単数または複数)のある実施形態では、配位子はEDTA、2-(アミノメチル)ピリジン:
【化1】
またはそれらの組み合わせであってよい。
【0017】
上記のプロセス(単数または複数)の別の実施形態では、配位子は2-(アミノメチル)ピリジンであってよく、標的金属はセレンであってよい。ある実施形態では、セレンは配位子と錯形成して、以下の構造:
【化2】
を有する少なくとも1つの錯体を形成してよい。
【0018】
上記のプロセス(単数または複数)の別の実施形態では、プロセスの一部として、液体にさらなる過酸化水素は加えられなくてよい。
【0019】
上記のプロセス(単数または複数)の別の実施形態では、液体試料に音響キャビテーションが適用されると、過酸化水素が液体試料中に発生してよい。
【0020】
別の実施形態では、液体試料から標的金属を除去するためのシステムが本明細書に提供され、前述のシステムは、
液体試料を含有し、必要に応じて混合するための容器と、
容器中の液体に音響キャビテーションを適用するための音響キャビテーションモジュールと、
液体中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応が起こり、それによりヒドロキシラジカルが生成するように、鉄(II)塩またはその前駆体を容器中の液体試料に加えるための入力口と、
必要に応じて、液体試料中で低下した溶解度を有する生成された標的金属塩または金属酸化物を液体試料から除去するための出力口と
を含む。
【0021】
上記のシステムのさらに別の実施形態では、音響キャビテーションモジュールは20kHz~2.4MHz、または350kHz~800kHzの範囲の音響キャビテーションを適用してよい。さらに別の実施形態では、音響キャビテーションモジュールは500~600kHzの範囲の音響キャビテーションを適用してよい。
【0022】
上記のシステム(単数または複数)の別の実施形態では、液体試料はプロセス影響水、油、ビチューメン、またはアスファルテンであるか、またはそれらを含んでよい。さらに別の実施形態では、プロセス影響水は水系尾鉱または廃液であってよい。ある実施形態では、液体試料は冶金用石炭廃液、または貴金属廃液を含んでよい。さらに別の実施形態では、液体試料はオイルサンド尾鉱またはフロス浮選尾鉱であるか、またはそれらを含んでよい。
【0023】
上記のシステム(単数または複数)の別の実施形態では、標的金属はニッケル(Ni)、バナジウム(V)、またはセレン(Se)であってよい。
【0024】
上記のシステム(単数または複数)の別の実施形態では、鉄(II)塩はFeSO4であってよい。
【0025】
上記のシステム(単数または複数)の別の実施形態では、出力口は、液体試料中で低下した溶解度を有する標的金属塩または金属酸化物を沈殿物として除去するためにあってよい。
【0026】
上記のシステム(単数または複数)のさらに別の実施形態では、システムは、標的金属に対する配位子を容器中の液体試料に加えるための第2の入力口をさらに含んでよい。代替の実施形態では、鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えるための入力口は、標的金属に対する配位子を容器中の液体試料に加えるためでもあってよい。
【0027】
上記のシステムのさらに別の実施形態では、配位子は標的金属と錯形成し、それにより液体試料中の金属の溶解度がさらに低下する配位子であってよい。
【0028】
上記のシステムのある実施形態では、配位子はEDTA、配位子は2-(アミノメチル)ピリジン:
【化3】
またはそれらの組み合わせであってよい。
【0029】
上記のシステム(単数または複数)の別の実施形態では、配位子は2-(アミノメチル)ピリジンであってよく、標的金属はセレンであってよい。あるさらなる実施形態では、配位子はセレンと錯形成して、以下の構造:
【化4】
を有する少なくとも1つの錯体を形成するためであってよい。
【0030】
上記のシステム(単数または複数)のさらに他の実施形態では、システムは、液体にさらなる過酸化水素を加えなくてよい。
【0031】
上記のシステム(単数または複数)のさらに別の実施形態では、システムは、液体試料に音響キャビテーションが適用されると、液体試料中に過酸化水素を発生させてよい。
【0032】
別の実施形態では、ビチューメンのアップグレーディングのためのプロセスが本明細書に提供され、前述のプロセスは、
ビチューメンに音響キャビテーションを適用することと、
鉄(II)塩またはその前駆体をビチューメンに加えてビチューメン中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルを生成することと
を含む。
【0033】
上記プロセスの別の実施形態では、ビチューメンのアップグレーディングは、粘度の低下、標的金属含有量の低減、アスファルテン分離、アスファルテンフロックの砕解もしくは可溶化、残留性有機ポリマー(POP)含有量の低減、またはそれらの任意の組み合わせを含んでよい。
【0034】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、標的金属はセレンを含んでよい。
【0035】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、POPはペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)またはペルフルオロヘプタンスルホン酸塩(PFHpS)を含んでよい。
【0036】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、音響キャビテーションは20kHz~2.4MHz、または350kHz~800kHzの範囲であってよい。ある実施形態では、音響キャビテーションは350~600kHzの範囲であってよい。
【0037】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、鉄(II)塩はFeSO4であってよい。
【0038】
上記プロセス(単数または複数)の別の実施形態では、プロセスは、
標的金属に対する配位子をビチューメンに加えるステップ
をさらに含んでよい。
【0039】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、配位子は標的金属と錯形成し、そこからの除去を促進してよい。ある実施形態では、配位子はEDTAを含んでよい。上記プロセス(単数または複数)の別の実施形態では、配位子は2-(アミノメチル)ピリジン:
【化5】
を含んでよい。
【0040】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、標的金属はセレンであってよい。さらに別の実施形態では、セレンは配位子と錯形成して、以下の構造:
【化6】
を有する少なくとも1つの錯体を形成してよい。
【0041】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、プロセスは、プロセスの一部として、液体に加えられるさらなる過酸化水素を含まなくてよい。
【0042】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、液体試料に音響キャビテーションが適用されると、過酸化水素が液体試料中に発生してよい。
【0043】
さらに別の実施形態では、上に記載されたようなビチューメンのアップグレーディングのためのプロセスを実施するためのシステムが本明細書に提供され、前述のシステムは、
ビチューメンを含有し、必要に応じて混合するための容器と、
容器中のビチューメンに音響キャビテーションを適用するための音響キャビテーションモジュールと、
ビチューメン中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応が起こり、それによりヒドロキシラジカルが生成するように、鉄(II)塩またはその前駆体を容器中のビチューメンに加えるための入力口と
を含む。
【0044】
さらに別の実施形態では、液体試料からの有機混入物の除去のためのプロセスが本明細書に提供され、前述のプロセスは、
液体試料に音響キャビテーションを適用することと、
鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えて液体試料中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルを生成することと
を含む。
【0045】
上記プロセスのさらに別の実施形態では、プロセスはさらに、液体試料からの標的金属の除去につながってよい。
【0046】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、有機混入物は残留性有機ポリマー(POP)を含んでよい。さらに別の実施形態では、POPはペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)またはペルフルオロヘプタンスルホン酸塩(PFHpS)を含んでよい。
【0047】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、音響キャビテーションは20kHz~2.4MHzの範囲、例えば、20kHz~800kHz、または20kHz~200kHz、または350kHz~800kHzの範囲であってよい。
【0048】
ある実施形態では、例えば、有機物(すなわちPOP)除去では、それらは分子量がより高い化合物であるため、音響キャビテーションは20~40kHzの範囲であってよい。他の実施形態では、具体的には、より高い周波数を必要とする場合がある、より短い鎖長を有するPFAS物質では、約20~800kHzの範囲が好ましい場合がある。
【0049】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、液体試料はプロセス影響水、油、ビチューメン、またはアスファルテンであるか、またはそれらを含んでよい。
【0050】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、プロセス影響水は水系尾鉱もしくは廃液、または冶金用石炭廃液、または貴金属廃液であってよい。
【0051】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、液体試料はオイルサンド尾鉱またはフロス浮選尾鉱であるか、またはそれらを含んでよい。
【0052】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、標的金属はニッケル(Ni)、バナジウム(V)、またはセレン(Se)であってよい。
【0053】
上記プロセス(単数または複数)の別の実施形態では、鉄(II)塩はFeSO4であるか、またはFeSO4を含んでよい。
【0054】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、プロセスは、
標的金属に対する配位子を液体試料に加えるステップ
をさらに含んでよい。
【0055】
ある実施形態では、配位子はEDTAを含んでよい。ある実施形態では、配位子は2-(アミノメチル)ピリジン:
【化7】
を含んでよい。
【0056】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、標的金属はセレンを含んでよい。さらに別の実施形態では、セレンは配位子と錯形成して、以下の構造:
【化8】
を有する少なくとも1つの錯体を形成してよい。
【0057】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、プロセスの一部として、液体にさらなる過酸化水素は加えられなくてよい。
【0058】
上記プロセス(単数または複数)のさらに別の実施形態では、液体試料に音響キャビテーションが適用されると、過酸化水素が液体試料中に発生してよい。
【0059】
別の実施形態では、液体試料からの有機混入物の除去のためのプロセスを実施するためのシステムが本明細書に提供され、前述のシステムは、
液体試料を含有し、必要に応じて混合するための容器と、
液体試料に音響キャビテーションを適用するための音響キャビテーションモジュールと、
ビチューメン中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応が起こり、それによりヒドロキシラジカルが生成するように、鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えるための入力口と
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】UV-Vis分光光度計を使用して得られたヨウ素-キャビテーション曲線を示す。
【
図2】0.1wt% KI溶液を使用して超音波処理周波数および時間の異なる条件下で得られたキャビテーション収率を表すグラフを示す。
【
図3】0.1wt% KI溶液を使用して超音波処理周波数および時間の異なる条件下で得られたキャビテーション収率を表すグラフを示す。
【
図4】1.0wt% KI溶液中での超音波処理を、異なるパワー強度で、異なる超音波処理周波数で、30分間超音波処理して得られた、キャビテーション収率を表すグラフを示す。
【
図5】30分間超音波処理したCMC-水での、超音波処理周波数およびパワー強度の異なる条件下でのキャビテーション収率および粘度変化を表すグラフを示す。
【
図6】ビチューメンでの異なるパワー入力に対する異なる超音波処理周波数での粘度変化を表すグラフを示す。
【
図7】超音波処理されていない(UN)、ならびに50%および83.33%のパワー入力で超音波処理(378、574、および992kHz)されたビチューメンの、異なるせん断速度での粘度の変化を表すグラフを示す。
【
図8】超音波処理されていない(UN)、ならびに50%および83.33%のパワー入力で超音波処理(378、574、および992kHz)されたビチューメンのレオグラムを示す。
【
図9】異なる周波数および50%のパワー入力下で超音波処理されたビチューメンから抽出されたアスファルテンの金属含有量(ICP-MS分析)を表すチャートを示す(UN:超音波処理前)。
【
図10】異なる周波数および83.33%のパワー入力下で超音波処理されたビチューメンから抽出されたアスファルテンの金属含有量(ICP-MS分析)を表すチャートを示す(UN:超音波処理前)。
【
図11】配位子の使用を含む、プロセス影響水を処理するための鉄-キャビテーションプロセスの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
フェントン酸化およびキャビテーションを含む、金属または他の混入物の分離プロセスおよびシステムが本明細書に記載される。実施形態および実施例は、当業者を対象とした例示目的で提供され、いかなる限定も意図されていないこと理解されたい。
【0062】
ある実施形態では、液体試料からの標的金属の除去および/または分離のためのプロセスが本明細書に提供され、前述のプロセスは、
液体に音響キャビテーションを適用することと、
鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えて液体中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルおよび/または他の酸素ラジカルを生成することと
を含み、それにより液体試料中で低下した溶解度を有する標的金属塩または金属酸化物を生成し、液体試料からの標的金属の除去につながる/可能にする。そのようなプロセスは、本明細書では、鉄-キャビテーションプロセスとも呼ばれる。
【0063】
理解されるように、液体中の過酸化水素は、プロセス中に液体中にin situで音響化学的に発生した過酸化水素であってよく、過酸化水素自身、他の前駆体もしくは関連するヒドロキシ(OH)ラジカル、またはそれらの混合物を含んでよい。理論に拘束されることを望むものではないが、水溶液または水含有溶液のキャビテーション中の過酸化水素の生成は、下記(1)に示すような水の熱分解によって開始されてよく、媒体中で下記(2)に示すように自己反応して過酸化水素を形成してよいヒドロキシラジカル(OH・)を生成する。再び、理論に拘束されることを望むものではないが、過酸化水素を形成するヒドロキシラジカル(OH・)の再結合は、崩壊する気泡界面で最も起こり得る。
【化9】
【0064】
本明細書の教示を考慮して、当業者は、液体試料からの標的金属の除去または分離は、任意の形態(元素および塩形態(複数可)の両方)で液体中に存在する標的金属の全濃度の任意の低下を指してよいことを理解するであろう。低下は、例えば、沈殿、相分離、または液体からの標的金属の他の物理的除去の結果であってよい。標的金属は、例えば、単独で、または共沈剤の形態で、または両方で分離されてよい。標的金属は、元素形態で、または塩もしくはキレートとして、またはそれらの組み合わせで除去されてよい。標的金属は、例えば、酸化物、塩、もしくは非荷電金属種の形態、またはそれらの組み合わせで除去されてよい。
【0065】
液体試料は、処理される任意の好適な水性または油性試料であってよい。典型的には、液体試料は、本明細書に記載のプロセスで遭遇する条件下で液体(または実質的に液体)相であり(または、例えば、加熱または希釈を通して液体相にされてもよい)、水性(すなわち、プロセス影響水試料、水系尾鉱もしくは廃液試料、またはオイルサンド尾鉱、微細尾鉱、またはフロス浮選尾鉱試料)または油性(すなわち、油試料、ビチューメン試料、微細尾鉱試料、またはアスファルテン試料)のいずれかであってよい。好適な液体試料は、除去/分離およびまたは回収される少なくとも1つの標的金属を含有してよい。
【0066】
標的金属は、液体試料からのその除去および/または回収が望ましい場合がある任意の好適な標的金属またはイオンであってよい。金属という用語が本明細書で使用されているが、金属には、好適な古典的な金属と同様に、ある非金属、半金属、遷移金属、希土類金属、および他の好適な元素が含まれてよいことを当業者は理解するであろう。本明細書で言及される標的金属の例には、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、セレン(Se)、チタン(Ti)、セリウム(Ce)、ガドリニウム(Gd)、プラセオジム(Pr)、ユーロピウム(Eu)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、 ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、エルビウム(Er)、または任意の塩、イオン種、キレート、またはそれらの組み合わせ、または任意の他の好適な金属が含まれてよい。
【0067】
また理解されるように、鉄(II)塩またはその前駆体は、鉄(II)(すなわち二価鉄;Fe2+)種を液体試料に提供する任意の好適な試薬であってよい。鉄(II)塩には、例えば、硫酸鉄(II)(FeSO4)が含まれてよい。鉄(II)塩前駆体には、例えば、液体試料中で容易に還元されて鉄(II)を提供する任意の好適な鉄(III)種が含まれてよい。
【0068】
フェントン酸化は、概して、過酸化水素および二価鉄(鉄(II))触媒を含む。フェントン酸化は、例えば、廃水中の混入物を酸化するために当該技術分野で使用されてきた。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書で言及されるようなフェントン酸化は、概して、過酸化水素による鉄II(Fe2+)の鉄III(Fe3+)への酸化を含み、ヒドロキシラジカルを生成する。他のラジカルが形成されてもよい。鉄III(Fe3+)は、その後、還元されて鉄II(Fe2+)に戻ってよい。全体として、フェントン酸化は、過酸化水素の不均化を含み、HO・およびHOO・ラジカルを発生させると見なされてよく、本明細書に詳細に記載されるような金属の分離/回収に有用な場合がある。
【0069】
理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載されるような鉄-キャビテーションプロセスは、以下の反応の1つまたは複数を含んでよい。
【化10】
【0070】
本明細書に記載されるようなある回収/分離プロセス実施形態の一部として、液体試料に加えられた鉄(II)は、鉄-キャビテーションプロセス中に発生した過酸化水素と反応してよく、それによりヒドロキシラジカルおよび/または他の酸素ラジカル(すなわちHOO・ラジカル)を生成する。ある実施形態では、これらのラジカルは、例えば、音響化学的に生成してもよい。液体試料中に新しく形成されたヒドロキシラジカルおよび/または他の酸素ラジカル(すなわちHOO・ラジカル)は、標的金属と相互作用して標的金属塩、標的金属酸化物、標的金属キレート、または液体試料中で低下した溶解度(または、液体試料からの金属の少なくとも部分的な除去および/または分離を可能にする別の化学的性質の変化)を有する他の標的金属の形態を生成してよい。沈殿につながる可能性がある低下した溶解度が本明細書に一般に記載されるが、液体試料からの分離を可能にする標的金属の他の化学的性質の変化も本明細書で検討されることが理解されるであろう。
【0071】
非限定的な例として、本明細書に記載されたプロセス条件への標的金属の曝露は、液体試料の一次相から沈殿または他の方法で分離する標的金属塩および/または標的金属イオン種を形成する、標的金属のヒドロキシラジカルとの相互作用をもたらしてよい。さらに、標的金属が、例えば、鉄と少なくとも部分的に共沈する可能性、低下した溶解度を有する非荷電もしくは元素形態に変換される可能性、および/または液体試料中で低下した溶解度を有するように、もしくは抽出溶媒への上昇した溶解度/親和性を有するように酸化される可能性も検討される。
【0072】
本明細書の教示を考慮して、当業者は、検討されている特定の用途に適用可能な任意の好適な物理的または化学的技術を使用して、標的金属が液体試料から除去されてよいことを理解するであろう。例として、沈殿/デカンテーション、スキミング、溶媒-溶媒抽出、濾過、粉砕、沈降/密度分離/遠心分離、共沈、または他の好適な技術が、特定の用途、および特定のプロセスにより発生した標的金属の形態に応じて使用されてよい。理解されるように、除去された標的金属は、後続の使用、加工、もしくは販売のために回収されるか、または廃棄されるかのいずれかであってよい。回収された標的金属に価値がある例では、本明細書に記載されるようなプロセスを使用した標的金属の回収が特に望ましい場合がある。
【0073】
本明細書の教示を考慮して、当業者は、本明細書に記載されるような音響キャビテーションは、超音波を使用した液体試料内での蒸気キャビティ/気泡の形成を指すことを理解するであろう。音響キャビテーションは超音波処理として理解されてもよい。多くの音響キャビテーション/超音波処理周波数が可能であってよい。例として、約20kHz~約2.4MHzの範囲の音響キャビテーションが使用されてよい。ある好ましい実施形態では、約350~約800kHzの範囲の音響キャビテーションが使用されてよい。あるさらなる実施形態では、約500~約600kHzの範囲の音響キャビテーションが使用されてよい。フェントン酸化処理(過酸化水素の添加なしで)を音響キャビテーションと組み合わせることで、ヒドロキシラジカルおよび/または他の酸素ラジカルが発生し、向上した標的金属の分離をもたらすことが、本明細書で見出された。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載されるような鉄-キャビテーションは、フェントン酸化を通したヒドロキシラジカルの生成を向上させ、ならびに/または結果として生じるヒドロキシラジカルおよび/もしくは鉄種と標的金属との相互作用を向上させ、それにより標的金属の分離を向上させると考えられる。
【0074】
実際、フェントン酸化をキャビテーションで引き起こすことにより、過酸化水素の添加を必要とすることなく、液体試料からの、向上した金属の分離および/または回収が達成されてよいことが、本明細書で見出された。本明細書に記載されるようなフェントン酸化/音響キャビテーション組み合わせプロセスは、「鉄-キャビテーション」プロセスとも呼ばれてよい。そのような処理プロセスは、音響キャビテーション/超音波処理とフェントン酸化とを組み合わせ、それにより処理される液体中でのヒドロキシラジカルの生成を可能にする。本明細書に記載されるような鉄-キャビテーションプロセスは、処理される液体への過酸化水素の添加を必要としない。むしろ、キャビテーション中の媒体での過酸化水素およびヒドロキシラジカルの形成は強力な酸化体を提供し、その形成は(理論に拘束されることを望むものではないが)、少なくとも部分的に、気泡内の最終崩壊温度および圧力に影響されてよい。処理される液体でのキャビテーション中の過酸化水素形成は十分であり、それにより当該技術分野で従来使用されている、コストがかかる可能性がある過酸化水素添加ステップの必要性を回避する。
【0075】
本明細書の教示を考慮して、当業者は、フェントン酸化処理は、廃水処置の分野で従来使用されており、ある有機化合物の除去を可能にすることを理解するであろう。ある実施形態では、本明細書に記載されるようなプロセスは、標的金属の除去に加えて、そのような有機化合物の除去も同様に可能にしてよい。除去されてよい有機化合物の例には、医薬品、パーソナルケア製品、ビスフェノールA、カルバマゼピン、および/またはダイオキシンが含まれてよい。
【0076】
ある実施形態では、本明細書に記載されるようなプロセスは、標的有機化合物または混入物、例えば、残留性有機ポリマー(POP)などの除去を可能にしてよいが、これに限定されない。例として、本明細書に記載されるようなプロセスは、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ならびに/またはペルフルオロヘプタンスルホン酸塩(PFHpS)、ならびに/または他のペル-およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の除去を可能にしてよい。
【0077】
本明細書に記載されるような金属の分離/回収を可能にする鉄-キャビテーション処理プロセスは、金属含有量を除去または低減するための、プロセス影響水のような液体の処理を可能にしてよく、プロセス処理設備でのスケール発生または金属の蓄積を低減した水の再利用を可能にする。加えて、本明細書に記載されるような処理プロセスは、低コストの連続尾鉱処理プロセスを可能にしてよく、過酸化水素添加の要求を回避または低減する。
【0078】
本明細書に記載されるような金属の分離/回収プロセスは、さらなる、任意選択の、液体試料への配位子添加のステップを伴ってよく、ここで配位子は、分離/回収される金属(元素形態、塩、酸化物、錯体またはキレートを含む任意の好適な形態)と結合/錯形成するためにある。配位子と金属との結合は、金属の溶解度に影響を及ぼしてよく、および/または他の方法で金属の分離/回収を、必要に応じて金属酸化物(複数可)の形態で、支援してよい。以下の例でさらに詳細に議論されるように、キャビテーションを介したフェントン酸化(すなわち、鉄-キャビテーション)を、選択的な分離を得るための配位子添加と組み合わせることで、液体試料からの標的金属の分離/回収がさらに向上してよいことが、本明細書で見出された。実際、最も良い標的金属回収率のいくつかは、以下の例6で例示されるように、鉄-キャビテーションと配位子添加との組み合わせを使用して達成された。
【0079】
ある実施形態では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩形態のような、いわゆる「グリーン」、または環境に配慮した配位子が選択されてよい。他の実施形態では、セレンに対する2-(アミノメチル)ピリジンのような、選択された標的金属に特に効果的な配位子が使用されてよい。
【0080】
セレンは、本明細書に記載されるようなプロセスを使用して分離/回収されてよい金属の一例である。理解されるように、セレンは元素状セレン(不溶性;溶液から沈殿する)、亜セレン酸塩(SeO3
2-;可溶性、還元され得る)、およびセレン酸塩(SeO4
2-;可溶性、鉄との共沈によって除去される)として存在してよい。鉄共沈を使用したセレン除去は、例えば、Merrill et al., Field Evaluation of Arsenic and Selenium Removal by Iron Co-precipitation, Environmental Progress, 1987, 6(2):82-90に記載されている(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。セレン分取は、Shrimpton et al., Fractionation of Selenium during Selenate Reduction by Granular Zerovalent Iron, Environ. Sci. Technol., 2015, 49:11688-11696に記載されている(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0081】
元素状セレンの沈殿につながるセレン/鉄相互作用は、以下のように見なされてよい。
【化11】
【0082】
セレンは、明細書に記載されるような鉄-キャビテーションプロセスを使用して、除去および/または回収されてよい。セレンの溶解度、ならびに/または除去および/もしくは分離を促進する他の化学的性質にさらに影響を及ぼす、任意選択のセレン標的配位子を使用して、これらのプロセスはさらに強化されてよい。本明細書での使用に検討されたそのような配位子の1つは、2-(アミノメチル)ピリジンである。
【化12】
【0083】
理論に拘束されることを望むものではないが、2-(アミノメチル)ピリジン配位子とセレンとの間の相互作用は、例えば、
【化13】
を含んでよい。
【0084】
さらに別の実施形態では、液体試料から標的金属を除去するためのシステムが本明細書に提供され、前述のシステムは、
液体試料を含有し、必要に応じて混合するための容器と、
容器中の液体に音響キャビテーションを適用するための音響キャビテーションモジュールと、
液体中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応が起こり、それによりヒドロキシラジカルが生成するように、鉄(II)塩またはその前駆体を容器中の液体試料に加えるための入力口と、
必要に応じて、液体試料中で低下した溶解度を有する生成された標的金属塩または金属酸化物を液体試料から除去するための出力口と
を含む。
【0085】
理解されるように、そのようなシステムは、本明細書に詳細に記載されるような、液体試料から標的金属を除去するためのプロセスを実施するために使用されてよい。
【0086】
好適な容器には、反応容器、ドラム、タンク、または他の好適な構造などの、任意の好適な液体用コンテナが含まれてよい。容器は、必要に応じて、その中に含有された液体を混合するための混合ツールを含んでよい。
【0087】
好適な音響キャビテーションモジュールには、例えば、Cole-Parmer、Fisher Scientific、および/またはUltraschalltechnik-Meinhardt GMBH、ドイツから市販されるもののような、当該技術分野で既知の任意の好適な音響キャビテーション装置が含まれてよい。音響キャビテーションモジュールは、液体に音響キャビテーションを与えることができる任意の好適なデバイスを含んでよい。音響キャビテーションは、例えば、20kHz~2.4MHz、または350kHz~約800kHz、または500~600kHzの範囲であってよい。
【0088】
鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えるための好適な入力口には、任意の好適なノズル、ポート、ハッチ、アクセス、インジェクタ、または鉄(II)塩もしくはその前駆体を容器中の液体に加えるための他の好適な装置が含まれてよい。
【0089】
生成された標的金属塩または金属酸化物を除去するための好適な出力口には、任意の好適なノズル、ポート、ハッチ、アクセス、エジェクタ、または容器から生成された標的金属塩または金属酸化物を除去するための他の好適な装置が含まれてよい。ある実施形態では、出力口は、例えば、液体試料中で低下した溶解度を有する標的金属塩または金属酸化物を沈殿物として除去するためにある。
【0090】
ある実施形態では、システムは、
標的金属に対する配位子を容器中の液体試料に加えるための第2の入力口
をさらに含んでよい。
【0091】
理解されるように、標的金属に対する配位子を容器中の液体試料に加えるための好適な入力口には、任意の好適なノズル、ポート、ハッチ、アクセス、インジェクタ、または
配位子を容器中の液体に加えるための他の好適な装置が含まれてよい。
【0092】
本明細書に記載されるようなシステムのある代替の実施形態では、鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えるための入力口は、標的金属に対する配位子を容器中の液体試料に加えるためでもあってよい。
【0093】
さらなる実施形態では、本明細書に記載されるようなシステムは、液体試料に音響キャビテーションが適用されると、液体試料中に過酸化水素を発生させてよく、それにより液体試料への過酸化水素の添加の必要性を除去する。
【0094】
別の実施形態では、ビチューメンのアップグレーディングのためのプロセスが本明細書に提供され、前述のプロセスは、
ビチューメンに音響キャビテーションを適用することと、
鉄(II)塩またはその前駆体をビチューメンに加えてビチューメン中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルを生成することと
を含む。
【0095】
理解されるように、ビチューメンのアップグレーディングは、粘度の低下、標的金属含有量の低減、アスファルテン分離、アスファルテンフロックの砕解もしくは可溶化、残留性有機ポリマー(POP)含有量の低減を含んでよい。
【0096】
ある実施形態では、POPはペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、またはペルフルオロヘプタンスルホン酸塩(PFHpS)、または他のペル-およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を含んでよい。
【0097】
ある実施形態では、音響キャビテーションは20kHz~2.4MHz、または350kHz~800kHzの範囲で適用されてよい。ある実施形態では、音響キャビテーションは500~600kHzの範囲であってよい。
【0098】
キャビテーション収率および超音波処理の時間は、鉄-キャビテーションプロセス処理に影響を与えるパラメータである。ある実施形態では、好ましい超音波処理の時間は、約30分以上(1時間まで)であってよく、一方、50%のパワー(および関連するキャビテーション)強度が、574kHzに最適である。378kHz~1173kHzの様々な周波数に対するキャビテーション強度の好ましい範囲は、典型的には50~90%の範囲であろう。そのような実施形態での好ましい超音波処理の時間は30~60分であってよい。
【0099】
同様に、低周波数超音波処理(20および40kHz)に対して、好ましいパワー強度は約90%であってよく、超音波処理の時間は約1時間であってよい。
【0100】
さらに別の実施形態では、上に記載されたようなビチューメンのアップグレーディングのためのプロセスを実施するためのシステムが本明細書に提供され、前述のシステムは、
ビチューメンを含有し、必要に応じて混合するための容器と、
容器中のビチューメンに音響キャビテーションを適用するための音響キャビテーションモジュールと、
ビチューメン中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応が起こり、それによりヒドロキシラジカルが生成するように、鉄(II)塩またはその前駆体を容器中のビチューメンに加えるための入力口と
を含む。
【0101】
さらに別の実施形態では、液体試料からの有機混入物の除去のためのプロセスが本明細書に提供され、前述のプロセスは、
液体試料に音響キャビテーションを適用することと、
鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えて液体試料中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応を起こし、それによりヒドロキシラジカルを生成することと
を含む。
【0102】
ある実施形態では、プロセスはさらに、すでに上に記載されたような、液体試料からの標的金属の除去につながってよい。
【0103】
理解されるように、有機混入物は、例えば、残留性有機ポリマー(POP)を含んでよい。さらに別の実施形態では、POPはペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、またはペルフルオロヘプタンスルホン酸塩(PFHpS)、ならびに/または他のペル-およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を含んでよい。
【0104】
さらに別の実施形態では、音響キャビテーションは20kHz~2.4MHz、または350kHz~800kHzの範囲であってよい。ある実施形態では、音響キャビテーションは20~40kHzの範囲であってよい。
【0105】
さらに別の実施形態では、上に記載されたような液体試料からの有機混入物の除去のためのプロセスを実施するためのシステムが本明細書に提供され、前述のシステムは、
液体試料を含有し、必要に応じて混合するための容器と、
液体試料に音響キャビテーションを適用するための音響キャビテーションモジュールと、
ビチューメン中の鉄と過酸化水素との間でフェントン酸化反応が起こり、それによりヒドロキシラジカルが生成するように、鉄(II)塩またはその前駆体を液体試料に加えるための入力口と
を含む。
【実施例】
【0106】
実施例1 - ビチューメンのアップグレーディングについてのキャビテーション実験:粘度変化および化学的キャビテーション収率測定
ビチューメンアップグレーディングへのキャビテーションの効果を評価するために、一連の実験を設計および実施して、超音波パワー出力、キャビテーション収率、および粘度効果を調査した。中~高周波数範囲(378kHz、574kHz、850kHz、992kHzおよび1.1MHz)でのキャビテーション収率の経験的決定を、ヨウ化カリウム(KI)の酸化から遊離したヨウ素の量を測定することによって行った。さらに、キャビテーション収率、およびパワー入力(16.67~83.33%)のような異なる音波動作条件の効果、およびキャビテーション収率に対する溶質濃度を、KI溶液およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)-水混合物で行い、2つのモデル流体を使用して、レオロジーおよび化学のベンチマーク変化を得た。知見を、その後、超音波処理を通したビチューメンアップグレーディングに適用した。
【0107】
超音波ホモジナイザ(Autotune 750W、Cole-Parmer Instruments、ヴァーノンヒルズ、イリノイ州、USA)を使用することによって、低周波数(20kHzおよび40kHz)超音波実験を行った。広帯域トランスデューサ(Ultraschalltechnik-Meinhardt GMBH、ドイツ)を使用して、中~高周波数(378kHz、574kHz、860kHz、992kHzおよび1.1MHz)音響化学プロセス処理システムを組み立てた。冷却剤ジャケット付きの、直径5cmおよび高さ100cmのガラスカラム反応器の底部にトランスデューサを設置した。関数発生器(HM 8030-5およびHM 8032)を通したパワーアンプ(HM8001-2)によって超音波エネルギーを供給した。同じ有効径を有する2つの異なる広帯域トランスデューサを使用して、5つの異なる周波数条件で超音波処理実験を行った。反応器に、16.67から83.33%までの異なるパワー入力を供給した。冷却システムを動作させて一定の温度を維持した。ジャケット付きガラス冷却カラム内に保持された100mLの試料体積で実験を行った。実験結果を以下の表1に提供する。
【0108】
【0109】
キャビテーション収率の実験的測定も実施した。水での378、574、860、992、および1173kHzでのキャビテーション収率を決定するために実験を行った。重油でこれらの超音波処理周波数の効果を観察するために、さらなる研究を行った。異なる濃度のヨウ化カリウム溶液が超音波を受けたときに遊離したヨウ素の量を決定して、キャビテーション収率測定を行った。キャビテーション収率は、水酸化物ラジカルおよびペルオキシラジカルによるヨウ化カリウムの酸化中に、単位パワー密度当たりに遊離したヨウ素のグラムとして定義された。様々な時間間隔でキャビテーション収率を決定するために、遊離したヨウ素の量を、UV/VIS分光光度計を使用して350nmで測定し、0~4×10-3Mのヨウ素の範囲の較正曲線を使用して定量化した。
【0110】
結果を
図1~5に提供する。
図1は、UV-Vis分光光度計を使用して得られたヨウ素キャビテーション曲線を示す。
図2は、0.1wt% KI溶液を使用して超音波処理周波数および時間の異なる条件下で得られたキャビテーション収率を示す。
図3は、1.0wt% KI溶液を使用して超音波処理周波数および時間の異なる条件下で得られたキャビテーション収率を示す。
図4は、1.0wt% KI溶液中での超音波処理を、異なるパワー強度で、異なる超音波処理周波数で、30分間超音波処理して得られた、キャビテーション収率を示す。
図5は、30分間超音波処理したCMC-水での、超音波処理周波数およびパワー強度の異なる条件下でのキャビテーション収率および粘度変化を示す。
【0111】
レオロジー研究も実施した。Wingather software(レオロジーモデル用)を備えた回転粘度計Brookefield DV-II Prime(Brookfield Engineering Laboratories Inc.、ストートン、MA、USA)を使用して、ナフサ希釈ビチューメンの粘度を測定した。2つの異なるスピンドル、すなわち、SC-31(少量試料アダプタ)および超低センチポアズアダプタを、試料カップ容積18mL/50mL(スピンドルに依存)とともに使用した。各スピンドルに対する較正および粘度試験手順を計器マニュアル通りに行った。0.5~20s
-1のせん断速度挙動を決定した。
図6は、ビチューメンでの異なるパワー入力に対する異なる超音波処理周波数での粘度変化を示す。
【0112】
あわせると、これらの結果は、試験された条件下では、378および574kHzのような中程度の周波数レベルが、ビチューメン重油でのキャビテーション収率の増加および粘度変化という点でより効果的であったことを表す。83.33%のパワー入力で574kHzの超音波処理周波数で、38%の最も高い粘度変化が観察され、83.33%のパワー入力で1173kHzの超音波処理周波数で、最も低い粘度変化(5%)が観察された。574kHzの超音波処理周波数で観察されたより高い粘度変化は、より高いキャビテーション収率に起因し、キャビテーション収率と粘度変化との間の直接的な関係を示した。
【0113】
パワー入力および溶質濃度のような異なる要素は、媒体のキャビテーション収率に影響を及ぼす。実験条件下では、試験された他の周波数と比較して、574kHzの超音波処理周波数および83.33%のパワー入力の条件が、ビチューメンの粘度を低下させるための最良の方法として観察された。
【0114】
実施例2 - キャビテーションプロセス処理によるビチューメン重油アップグレーディング:アスファルテン分離、レオロジー、および金属含有量への効果
ビチューメン重油アップグレーディングへのキャビテーションプロセス処理の効果を評価するために、一連の実験を設計および実施して、ビチューメン粘度、ナフサ希釈ビチューメンからのアスファルテン分離、および超音波処理されたビチューメンから分離されたアスファルテンの金属含有量へのキャビテーションの効果を調査した。超音波処理は、広いせん断速度範囲にわたってより低い粘度およびせん断応力につながる、ビチューメン中のアスファルテン含有量の減少をもたらした。調査された超音波処理周波数の範囲(20kHz~1.1MHz)にわたって、50%のパワー入力で574kHzの超音波処理周波数は、低いアスファルテン含有量および改善された輸送性に適したより低い粘度をもたらした。さらに、アスファルテンの性質(元素分析および金属含有量)への超音波の効果を調査するために、超音波処理周波数およびパワー入力の異なる条件の比較を行った。周波数および音響パワーの異なる条件下でのビチューメンの超音波処理は、試験された条件下でH/C比を減少させることが観察された。
【0115】
実施例1のように、Wingather software(レオロジーモデル用)を備えた回転粘度計Brookefield DV-II Prime(Brookfield Engineering Laboratories Inc.、ストートン、MA、USA)を使用して、ナフサ希釈ビチューメンの粘度を測定した。2つの異なるスピンドル、すなわち、SC-31(少量試料アダプタ)および超低センチポアズアダプタを、試料カップ容積18mL/50mL(スピンドルに依存)とともに使用した。各スピンドルに対する較正および粘度試験手順を計器マニュアル通りに行った。0.5~20s
-1のせん断速度挙動を決定した。
図7は、超音波処理されていない(UN)、ならびに50%および83.33%のパワー入力で超音波処理(378、574、および992kHz)されたビチューメンの、異なるせん断速度での粘度の変化を示す。
図8は、超音波処理されていない(UN)、ならびに50%および83.33%のパワー入力で超音波処理(378kHz、574kHz、および992kHz)されたビチューメンのレオグラムを示す。
【0116】
超音波処理されていない、または超音波処理されたナフサ希釈ビチューメン試料から、ASTM-D6560-12の通りに、アスファルテンを抽出した。丸底フラスコ中の4gの油試料で抽出プロセスを開始し、続いて120mLのヘプタンを加えた。その後、混合物を還流下で60分間沸騰させ、暗所に90~150分間保管した。結果として生じた溶液を円筒濾紙(ワットマン(GE Healthcare Life Sciences、ケベック州、カナダ)、厚さ2倍、43mm×123mm)を通して濾過し、その後、円筒濾紙をソックスレー抽出器に入れ、ヘプタンで60分間還流してワックスおよび樹脂化合物を分離した。さらに、抽出器中でトルエンを使用することによって還流下でアスファルテンを分離し、含有量を予め秤量した500mL丸底フラスコに移した。アスファルテン分離の完了後、ロータリーエバポレータでトルエンを完全に留去し、アスファルテンの質量を測定した。
【0117】
結果を以下の表2に示す。
【0118】
【0119】
アスファルテン試料のキャラクタリゼーションを行った。全反射蛍光X線(TXRF)および誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)法を使用することにより、アスファルテン試料中の重金属(Ni、FeおよびV)の存在の分析を行った。TXRFは基本的に、特殊な幾何配置のエネルギー分散型XRF技術である。入射ビームは、励起ビーム光子のほぼ100%の反射をもたらす、X線の外部全反射の臨界角未満の角度で試料上に衝突する。その特有の配置のため、従来のXRFを上回るTXRFの主な利点は、元素測定感度の上昇をもたらす、試料散乱の排除による測定バックグラウンドの寄与の減少である。TXRF分析では、10mgのアスファルテン試料を1mLのトルエンに溶解し、続いて10μLのガリウムを内部標準として加えた。その後、試料を2~5分間ボルテックスで適切に混合した。さらに、TXRFによるさらなる分析のために、10μLの試料を研磨した石英ガラスの表面で乾燥した。
【0120】
ICP-MS分析では、0.2gのアスファルテンをマイクロ波分解容器に秤量し、続いて10mLの硝酸および1mLの塩酸を加えた。さらに、2mLの30% H2O2を酸混合物に加え、酸-過酸化物混合物をマイクロ波分解システムへ移した。赤外温度制御装置および動作圧力の限界付近でマイクロ波パワーを低下させることができるフィードバック機能を有する水圧制御装置を備えたMultiwave-マイクロ波試料調製システム(Anton Parr、アシュランド、VA)を使用して、分解プロセスを実施した。1400Wのマイクロ波パワー、60barの動作圧力、および180±1℃の温度で1時間、マイクロ波分解プロセスを行った。さらに、hot block(Environmental Express、MA)中で106℃で完全に乾燥するまで分解物を乾燥し、続いて、ICP-MSでの分析のために25mLの1M HClを加えた。
【0121】
炭素、水素、窒素および硫黄含有量を決定するために、アスファルテン試料の元素分析を実施した。Vario MICRO CUBE分析装置(Elementar、ハーナウ、ドイツ)を使用することによって分析を行った。
【0122】
結果を以下の表3および表4に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
図9は、異なる周波数および50%のパワー入力下で超音波処理されたビチューメンから抽出されたアスファルテンの金属含有量(ICP-MS分析)を示す(UN:超音波処理前)。
図10は、異なる周波数および83.33%のパワー入力下で超音波処理されたビチューメンから抽出されたアスファルテンの金属含有量(ICP-MS分析)を示す(UN:超音波処理前)。
【0126】
あわせると、これらの結果は、使用された実験条件下では、キャビテーション処理プロセスが、媒体中のアスファルテンフロックの砕解および可溶化により、ビチューメンから抽出されたアスファルテンの質量の減少をもたらすことを表す。さらに、結果は、使用された条件下では、ビチューメンの超音波処理が、せん断速度に伴う粘度およびせん断応力の減少をもたらすことを示す。50%のパワー入力で574kHzの超音波処理周波数で、最大の変化を観察した。ビチューメン中のアスファルテン含有量は、その粘度において支配的な役割を果たし、ビチューメンの超音波処理はアスファルテン粒子間の強力な引力相互作用の減少につながり、せん断流動化挙動を表す粘度およびせん断応力の減少をもたらす。20kHzおよび40kHzのような低い超音波処理周波数レベルは、試験された条件下では、ビチューメンのアスファルテン含有量に効果を示さなかった。
【0127】
異なる超音波処理周波数およびパワー入力下でのビチューメンのキャビテーション処理プロセスの結果は、アスファルテン試料の金属含有量(Ni、VおよびFe)の変化を示した。試験された条件下では、中周波数レベル(378kHzおよび574kHz)は、ビチューメンのアスファルテン含有量の低減に関してより高い効率を示し、より低い金属含有量につながった。
【0128】
実施例3 - ビチューメンのアップグレーディングのための促進酸化処理(AOP)の比較:粘度の変化およびアスファルテンキャラクタリゼーション
ビチューメンアップグレーディングへの促進酸化処理(AOP)の効果を評価するために、一連の実験を設計および実施して、ビチューメンアップグレーディングへのキャビテーション、フェントン酸化、オゾン処理、およびフェントン酸化/キャビテーションの組み合わせ(鉄-キャビテーション)の効果を調査した。ビチューメンの粘度、密度、質量の変化、温度変動、およびアスファルテン水素の種類(1H-NMR)への効果を評価した。
【0129】
促進酸化処理は、広いせん断速度範囲にわたってより低い粘度およびせん断応力につながる、ビチューメン中のアスファルテン含有量の減少をもたらした。試験された超音波処理周波数の範囲(20kHz~1.1MHz)にわたって、50%のパワー入力で574kHzの超音波処理周波数は、特に、低いアスファルテン含有量および改善された輸送性によく適したより低い粘度をもたらした。AOPの比較は、試験された条件下で、鉄-キャビテーション処理が低いアスファルテン含有量、より低い粘度、およびビチューメンのアスファルテン相からのより多くの重金属の除去をもたらすことを示した。
【0130】
さらに、アスファルテンの性質(元素分析および金属含有量)への超音波の効果を調査するために、鉄-キャビテーション処理中の超音波処理周波数およびパワー入力の異なる条件の比較を行った。周波数および音響パワーの異なる条件下でのビチューメンの鉄-キャビテーション処理は、H/C比を減少させることが観察された。これらの結果は、超音波処理周波数および強度の異なる条件下で処理されたビチューメン中のより高い芳香族水素の含有量およびより低い脂肪族水素の含有量を示した。ICP-MSおよびTXRFを使用して実施されたアスファルテンのキャラクタリゼーションは、プロセス処理(鉄-キャビテーション)されたビチューメンのアスファルテン相中のより低い金属含有量(Ni、FeおよびV)を明らかにした。
【0131】
実施例1のように、超音波ホモジナイザ(Autotune 750W、Cole-Parmer Instruments、ヴァーノンヒルズ、イリノイ州、USA)を使用することによって、低周波数(20kHzおよび40kHz)超音波実験を行った。広帯域トランスデューサ(Ultraschalltechnik-Meinhardt GMBH、ドイツ)を使用して、中~高周波数(378kHz、574kHz、860kHz、992kHzおよび1.1MHz)音響化学プロセス処理システムを組み立てた。冷却剤ジャケット付きの、直径5cmおよび高さ100cmのガラスカラム反応器の底部にトランスデューサを設置した。関数発生器(HM 8030-5およびHM 8032)を通したパワーアンプ(HM8001-2)によって超音波エネルギーを供給した。同じ有効径を有する2つの異なる広帯域トランスデューサを使用して、5つの異なる周波数条件で超音波処理実験を行った。反応器に、16.67から83.33%までの異なるパワー入力を供給した。冷却システムを動作させて一定の温度を維持した。ジャケット付きガラス冷却カラム内に保持された100mLの試料体積で実験を行った。
【0132】
実施例1および実施例2のように、Wingather software(レオロジーモデル用)を備えた回転粘度計Brookefield DV-II Prime(Brookfield Engineering Laboratories Inc.、ストートン、MA、USA)を使用して、ナフサ希釈ビチューメンの粘度を測定した。2つの異なるスピンドル、すなわち、SC-31(少量試料アダプタ)および超低センチポアズアダプタを、試料カップ容積18mL/50mL(スピンドルに依存)とともに使用した。各スピンドルに対する較正および粘度試験手順を計器マニュアル通りに行った。0.5~20s-1のせん断速度挙動を決定した。
【0133】
フェントン酸化反応を開始するために、H2O2ならびにFeSO4溶液を、異なる条件:0.5g/l、0.75g/l、1g/l、1.5g/l、および2g/lのFeSO4で、ならびに異なるH2O2濃度(500~1000μg/l)でビチューメン試料に加えた。振盪機を150rpmで使用して周囲温度で180分間、フェントン酸化を行った。
【0134】
0.5g/l、0.75g/l、1g/l、1.5g/l、2g/lのFeSO4を試料中に加え、続いて20kHz、40kHz、378kHz、574kHz、860kHz、992kHzおよび1.1MHzのような異なる周波数でキャビテーションを行うことにより、鉄-キャビテーション処理を行った。冷却システムを動作させて一定の温度を維持した。ジャケット付きガラス冷却カラム内に保持された100mLの試料体積で実験を行った。
【0135】
ナフサ希釈ビチューメン試料(400ml)のオゾン処理を、50g/l~350g/lの異なるオゾン量およびオゾン処理時間(30分~1.5時間)で行った。
【0136】
結果を以下の表5および表6に示す。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
400cm-1~4000cm-1の走査範囲でKBrペレットを使用して、Bruker Equinox-55分光光度計でフーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)を得た。400MHzで動作するVarian-FT-80A分光計で1H NMRを操作した。主な技術パラメータは以下の通りであった:45°のフリップ角および3秒の繰り返し率。重水素化DMSO(DMSO-d6)を溶媒として使用した。結果を以下の表8に示す。
【0141】
【0142】
これらの研究では、キャビテーションプロセス、オゾン処理、フェントン酸化、および鉄-キャビテーションプロセスのような異なる促進酸化処理(AOP)を、ビチューメン重油のアップグレーディングについて比較した。音響化学反応器システムで、入力音響強度の範囲にわたって低~高超音波処理周波数(20kHz、40kHz、378kHz、574kHz、860kHz、および1.1MHz)を使用し、続いて硫酸鉄を加えることによって鉄-キャビテーションプロセスを行った。ビチューメンアップグレーディングへのAOPの効果を、アスファルテン分離、レオロジーの変化、および重金属除去に基づいて行った。鉄-キャビテーション処理は、媒体中のアスファルテンフロックの砕解および可溶化により、ビチューメンから抽出されたアスファルテンの質量の減少をもたらした。さらに、試験された条件下では、他のAOPと比較して鉄-キャビテーション処理は、せん断速度に伴う粘度およびせん断応力の減少をもたらすことが観察された。50%のパワー入力で40kHzおよび574kHzの超音波処理周波数で、最大の変化を観察した。ビチューメン中のアスファルテン含有量は、その粘度において支配的な役割を果たし、ビチューメンの鉄-キャビテーションはアスファルテン粒子間の強力な引力相互作用の減少につながり、せん断流動化挙動を表す粘度およびせん断応力の減少をもたらす。
【0143】
実施例4 - AOPおよび配位子による酸-浸出液処理
酸浸出液中の希土類元素(REE)濃度への鉄-キャビテーションプロセスおよび配位子処理の効果を評価するために、一連の実験を下記のように設計および実施した。キャビテーションプロセス、フェントン酸化、ならびに配位子と組み合わせた鉄-キャビテーション処理のような異なるAOPを、弱酸浸出液(WAL)ならびに強酸浸出液(SAL)からの希土類元素(Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Lu、Hf、Ta、TmおよびYb)の抽出のために行った(表9および表10参照)。AOPの実験条件を、表5に示した結果に関連して記載したように行った。全反射蛍光X線(TXRF)および誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)法を使用することにより、酸浸出液中のREEの存在の分析を行った。処理後、沈殿法を使用して抽出を行った。希土類元素を、酸浸出液中の他の金属から、シュウ酸でそれらをシュウ酸塩として沈殿させることにより分離した。さらに、硫酸ナトリウムの添加によるナトリウムとの硫酸複塩水和物(NaRE(SO4)2・xH2O)の沈殿も、酸浸出液からのREEの抽出に使用された。
【0144】
【0145】
【0146】
EDTAのみ、および促進酸化処理の存在下でEDTAを使用することによる希土類元素のより高い抽出を比較するために、実験を行った。理論に拘束されることを望むものではないが、結果は、おそらく媒体中でヒドロキシラジカルが生成し、それが水酸化物配位子として働くことにより、促進酸化処理の存在下でより高い抽出を示した。
【0147】
さらに、酸化プロセスは、WAL濃縮物と比較して、SAL濃縮物中で希土類元素の抽出により効果的であることが観察された。これらの結果は、AOPが2.5~4のpH範囲の酸性条件でより効果的であることを示す他の研究と一致する。結果は、試験された条件下では、配位子技術を使用して希土類元素のより高い抽出が達成されてよく、異なる酸化プロセスを加えることにより強化が得られてよいことを表す。
【0148】
実施例5 - キャビテーションプロセス対鉄-キャビテーションプロセス:ナフサ希釈ビチューメンの粘度および密度への効果
ビチューメンアップグレーディング中の粘度、密度、およびアスファルテンの性質(元素分析および金属含有量)へのキャビテーションおよび鉄-キャビテーション処理の効果を評価するために、一連の実験を下記のように設計および実施した。粘度、密度、およびアスファルテンの性質を実施例1に記載したように分析した。キャビテーションおよび鉄-キャビテーションの実験条件を表7に提示する。鉄-キャビテーションプロセスは、0.75g/L FeSO4・7H2Oを添加したキャビテーション処理中に使用された条件に従った。
【0149】
【0150】
【0151】
あわせると、これらの結果は、試験された条件下では、周波数およびパワー入力の異なる条件下でのビチューメンの鉄-キャビテーション処理は、ビチューメン中のH/C比を減少させたことを表す。これらの結果は、超音波処理周波数およびパワー入力の異なる条件下で処理されたビチューメン中のより高い芳香族水素の含有量およびより低い脂肪族水素の含有量を示した。理論に拘束されることを望むものではないが、鉄-キャビテーション処理での芳香族性の増加は、おそらくアルキル側鎖の切断につながるアスファルテンの溶解および砕解によるものであった。
【0152】
実施例6 - キャビテーションプロセス対鉄-キャビテーションプロセス対鉄-キャビテーションおよび配位子プロセス:金属回収への効果
尾鉱沈殿池のプロセス影響水からの金属回収へのキャビテーション、鉄-キャビテーション、および配位子と組み合わせた鉄-キャビテーション処理の効果を評価するために、一連の実験を下記のように設計および実施した。キャビテーション、鉄-キャビテーション、および配位子と組み合わせた鉄-キャビテーションの実験条件を表13に提示する。プロセス影響水中の金属の分析をICP-MS法により行った。
【0153】
【0154】
上記の試験された3つの処理プロセス(キャビテーション、鉄-キャビテーション、および配位子分離と組み合わせた鉄-キャビテーション)の中で、配位子分離と組み合わせた鉄-キャビテーション処理中でプロセス影響水からのNiおよびVの最大の除去が観察された。
【0155】
実施例7 - プロセス影響水試料からのニッケル(Ni)回収の、任意選択の配位子添加を含む、鉄-キャビテーションプロセスの例
図11は、プロセス影響水試料を処理して標的金属(この場合はニッケル(Ni))を分離および回収するための、任意選択の配位子添加ステップを含む、鉄-キャビテーションプロセスの例示的実施形態を示す。
【0156】
この例示的および非限定的実施形態では、ニッケルを含有するオイルサンドプロセス影響水液体試料が鉄-キャビテーションを受けており、液体試料が500~800kHzの範囲の超音波処理(すなわち、音響キャビテーション)を同時に受けながら、鉄(II)塩(この例ではFeSO4)が液体試料に加えられ、フェントン酸化反応を介して試料中に含有された過酸化水素と反応してヒドロキシラジカル(および他の酸素ラジカル)を発生させる。
【0157】
上に記載されたような鉄-キャビテーションに続いて、四座配位子を液体試料に加える。この例では、配位子はEDTAであり、鉄-キャビテーションに続いて加えられる。配位子添加は、鉄-キャビテーションの前、最中、もしくは後に、またはそれらの任意の組み合わせで実施されてよいことを検討する。加えられたEDTAはニッケルと錯形成し、例えば、ニッケル(II)EDTA錯体(例えば、C10H14N2NiO8および/またはMiletic et al., Inorganic Chemistry Comm. J. 12 (2009) 720-723(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)に示されたような他の錯体)を形成し、液体試料中に存在する。金属-EDTA錯体は、硫化物または他の還元剤を使用して還元されてNiを沈殿させ得、金属の抽出をさらに支援する。金属-EDTA錯体は、続いて不安定化され、ニッケルの沈殿をもたらし、続いてそれが回収される。この説明例では、残存するEDTAは再生され、再利用される。結果として生じる処理された液体試料は、還元された金属含有量を有し、所望により、次に再利用されてよい。
【0158】
他の金属および半金属が同様の方法で抽出されてよいことを検討する。例えば、Seが抽出されてよい。ある実施形態では、セレン抽出は2-(アミノメチル)ピリジン配位子を利用してよい。液体試料中で生成された二酸化セレンは2-(アミノメチル)ピリジンと反応し得、一段階でのイミダゾ[1,5-α]ピリジン(2-アザインドリジン)骨格の形成につながる。そのような反応の主生成物は、固体として分離され得る3-(2-ピリジル)イミダゾ[1,5-α]ピリジン、ビス[3-(2-ピリジル)イミダゾ[1,5-α]ピリジン-1-イル]セレニド、または対応するジセレニドである。そのような錯体の化学構造は、J. Am. Chem. Soc., 2005, 127(10), pp3290-3291に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0159】
実施例8 - 鉱業における水からの無機汚染物質の除去
この研究では、鉱水中の無機混入物の除去を調べることに重点を置いた。具体的には、冶金用石炭および金鉱業で、鉱水からのセレン除去について、鉄キャビテーションを評価した。
【0160】
この例では、典型的な冶金用石炭廃液に類似した廃液試料を、鉄キャビテーションを使用してプロセス処理し、他の促進酸化処理に対して評価した。各実験について、廃液体積は200mLであった。
【0161】
以下の表14に提示された結果は、キャビテーションのみ(試料S1~S3)、フェントン酸化(S4~S8)、ならびに高pH(S5)および低pH(S9およびS10)での鉄キャビテーションで処理した廃液としてまとめられている。
【0162】
この例では、試料は、「廃液」と名付けられ、冶金用石炭廃水中で見出されるものに類似した硝酸塩および全セレン添加量を有するように選択された。全セレンを、予備試験としてマラカイトグリーン指示薬を使用して分析し、O. Reg. 153(511)を使用してICP-MSによりさらに分析して水(廃液)中の金属(水素化物を含む)を決定した。S5、S9およびS10で示された結果(下線で印が付けられている)は、プロセス条件S10で~50%のセレン除去効率を示す。
【0163】
【0164】
冶金用石炭廃液に類似した廃液試料を、10mgのEDTA(配位子)の添加を伴う鉄キャビテーションを使用してさらに調べ、他の促進酸化処理に対して評価した。各実験について、廃液体積は200mLであった。
【0165】
以下の表15のデータは、キャビテーションおよび配位子添加のみ(試料S1~S3)、配位子添加を伴うフェントン酸化(S4~S8)、ならびに高pH(S5)および低pH(S9およびS10)での配位子添加を伴う鉄キャビテーションで処理した廃液としてまとめられている。
【0166】
この例では、試料は、「廃液」と名付けられ、冶金用石炭廃水中で見出されるものに類似した硝酸塩および全セレン添加量を有するように選択された。全セレンを、予備試験としてマラカイトグリーン指示薬を使用して分析し、O. Reg. 153(511)を使用してICP-MSによりさらに分析して水(廃液)中の金属(水素化物を含む)を決定した。S5、S9およびS10で示された結果(下線で印が付けられている)は、プロセス条件S10で~50%のセレン除去効率を示す。
【0167】
【0168】
貴金属廃液で典型的に見出されるもののような高セレン濃度で、さらなるセレン除去実験を実施した。結果を以下の表16に示す。
【0169】
【0170】
金抽出およびプロセス処理中、セレンはプロセス水中に溶解しており、プロセス水中の高濃度のセレン混入物をもたらす(典型的には1~10ppmの範囲のSe)。精錬工程からの金廃液鉱水を、配位子としてEDTAを含む鉄キャビテーションを使用してプロセス処理し、結果は10ppmから2.7ppmへの低下を示した。
【0171】
実施例9 - 有機混入物(残留性有機ポリマー(POP))の除去および廃水試料からのペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)混入物除去
ペル-およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)は、熱、水および油に耐性のある多様な化合物群である。これらの化学品は残留性であり、環境中で分解に耐性がある。それらはまた、時間とともに血液および臓器中での増加をもたらす生体蓄積性がある。それらの生体蓄積特性による水からの化合物としてのPFOS除去に取り組むために、これらの実験を設計した。
【0172】
この例では、水からPFOS混入物を除去する可能性を調べるために、鉄-キャビテーションプロセスの実施形態をキャビテーション処理とともに評価した。この用途では、既知の濃度のPFOS(1ppmおよび10ppm設定)が再蒸留水にドープされ、鉄キャビテーションを受けた。以下のデータは、実験条件、ならびにプロセスは水中の有機物の除去/分解を必要とするため、配位子添加を伴わないキャビテーションおよび鉄-キャビテーションからの関連する結果を詳述する。
【0173】
実験条件:
R1:40kHzの周波数、振幅80%、1ppm試料で3時間、10ppm試料で2時間の超音波処理時間、試料体積250mLでのキャビテーション処理。
R2:20kHzの周波数、振幅80%、超音波処理時間2時間、試料体積250mLでのキャビテーション処理。
R4:0.2g FeSO4・7H2Oの添加で、40kHzの周波数、パワー入力80%、超音波処理時間2時間、試料体積250mLでの鉄-キャビテーション酸化処理。
R5:0.2g FeSO4・7H2Oの添加で、20kHzの周波数、パワー入力50%、超音波処理時間2時間、試料体積250mLでの鉄-キャビテーション酸化処理。
* 以下の結果表中の接頭辞1または10は、蒸留水中のPFOSのppmを表す。
** 1-rawは、1ppmまたは100ppm PFOS濃度でドープされた再蒸留水試料を指す。
【0174】
結果
実験結果を以下の表17~19に提示する。
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
1つまたは複数の例示的実施形態および実施例が、非限定的な例として本明細書に記載された。本明細書に提供された実施例および実施形態は例示的および非限定的であることが意図されていることが、当業者には理解されるであろう。本明細書の教示を考慮して、当業者は、特許請求の範囲で定義されるような本明細書の範囲を逸脱することなく、多数の変形および変更がなされてよいことを認識するであろう。