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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】治験マッチング装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20240611BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20240611BHJP
【FI】
G16H10/00
G16H20/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020004131
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021111248
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 貞勝
(72)【発明者】
【氏名】石橋 恵理
(72)【発明者】
【氏名】森 啓
(72)【発明者】
【氏名】藤田 文理
(72)【発明者】
【氏名】金山 省一
(72)【発明者】
【氏名】角南 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】大脇 直記
【審査官】中元 淳二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-075046(JP,A)
【文献】特表2005-534082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0332191(US,A1)
【文献】米国特許第07711580(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の情報を受け付ける受付部と、
投薬する際の条件が設定された治験と当該治験による治験結果とを対応付けるデータを複数の治験について記憶する記憶部を参照して、前記複数の治験の中から、前記患者の情報に基づいて前記患者にマッチングする治験を検索する検索部と、
前記検索した治験の情報を提示する提示部と、
前記検索した治験を、前記情報を受け付けた患者に実施したときに得られた治験結果と当該患者の臨床情報とを収集して、前記記憶部に記憶させる収集部と、
前記収集した臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在する場合、当該臨床情報に基づいて、前記検索した治験の前記条件を更新する更新部と、
を備える治験マッチング装置。
【請求項2】
前記検索部は、前記記憶部を参照して、前記患者にマッチングする複数の治験を検索し、
前記提示部は、前記検索した複数の治験の中から1つの治験を選択させる画面と、当該治験の付帯情報としてQOL(Quality Of Life)に関する情報とを提示する、
請求項1に記載の治験マッチング装置。
【請求項3】
前記収集部は、前記QOLに関する情報を含む臨床情報を収集する、
請求項2に記載の治験マッチング装置。
【請求項4】
前記収集部は、遺伝子に関する情報を含む臨床情報を収集する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の治験マッチング装置。
【請求項5】
前記収集部は、匿名化された臨床情報を収集する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の治験マッチング装置。
【請求項6】
前記条件は、治験の実施に適格な適格基準と、当該適格基準に該当しない除外基準とを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の治験マッチング装置。
【請求項7】
実施する治験の情報を受け付ける受付部と、
複数の患者の情報を記憶する患者情報テーブルと、投薬する際の条件が設定された治験と当該治験による治験結果とを対応付けるデータを複数の治験について記憶する治験情報テーブルとを有する記憶部を参照して、複数の患者の中から、前記実施する治験の情報に基づいて前記実施する治験にマッチングする患者を検索する検索部と、
前記検索した患者の情報を提示する提示部と、
前記検索した患者に対して前記実施する治験により得られた治験結果と当該患者の臨床情報とを収集して、前記記憶部に記憶させる収集部と、
前記収集した臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在する場合、当該臨床情報に基づいて、前記実施する治験の前記条件を更新する更新部と、
を備える治験マッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、治験マッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌ゲノム医療では、主に癌の組織を用いて多数の遺伝子を調べ、遺伝子変異を明らかにすることにより、患者の体質や病状に合わせて治療などを行う医療である。例えば、病院では、患者の遺伝子変異の情報を確認して、治療方針を検討し、患者に合う治療薬を決定する。一方、患者に合う治療薬がない場合、治験が活用される。
【0003】
治験は、製薬会社が新薬を開発した場合、その新薬が国の機関(例えば、厚生労働省)から「薬」として承認を得るために実施される臨床試験である。治験は、製薬会社が病院等の医療機関に依頼して、患者等の被験者に対して新薬を投与することによって行われることが一般的である。その他、医療機関・医師が主導して新薬や新規治療方法の評価を行う医師主導治験も存在する。製薬会社では、治験による治験結果を基に新薬の安全性、有効性、用法及び用量などの確認が行われる。当該治験結果の成績が良い場合、当該新薬が「医薬品」として承認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-520941号公報
【文献】特開2014-38665号公報
【文献】特開2016-167190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、治験成績を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る治験マッチング装置は、受付部と、検索部と、提示部と、収集部と、更新部と、を備える。前記受付部は、患者の情報を受け付ける。前記検索部は、投薬する際の条件が設定された治験と当該治験による治験結果とを対応付けるデータを複数の治験について記憶する記憶部を参照して、前記複数の治験の中から、前記患者の情報に基づいて前記患者にマッチングする治験を検索する。前記提示部は、前記検索した治験を提示する。前記収集部は、前記提示した治験を、前記患者に実施したときに得られた治験結果と当該患者の臨床情報とを収集して、前記記憶部に記憶させる。前記更新部は、前記収集した臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在する場合、当該臨床情報に基づいて、前記検索した治験の前記条件を更新する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る治験マッチング装置を含む治験マッチングシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、記憶回路に記憶された患者情報テーブルの一例を示す図である。
図3図3は、記憶回路に記憶された治験情報テーブルの一例を示す図である。
図4図4は、治験情報に含まれる条件の一例を示す図である。
図5図5は、受付画面の一例を示す図である。
図6図6は、検索結果画面の一例を示す図である。
図7図7は、更新機能が実行する処理を説明するための図である。
図8図8は、更新機能が実行する処理を説明するための図である。
図9図9は、受付画面の一例を示す図である。
図10図10は、検索結果画面の一例を示す図である。
図11図11は、本実施形態に係る治験マッチング装置を含む治験マッチングシステムによる処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、治験マッチング装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下、治験マッチング装置を含む治験マッチングシステムを例に挙げて説明する。図1に示す治験マッチングシステムにおいては、各装置が1台ずつ示されているが、実際には更に複数の装置を含むことができる。
【0009】
図1は、本実施形態に係る治験マッチング装置100を含む治験マッチングシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示す治験マッチングシステム1は、治験マッチング装置100と、端末200と、端末300とを備える。
【0010】
端末200は、例えば、製薬会社内に設置された装置であり、製薬会社のスタッフにより操作される。製薬会社は、新薬を開発した場合、その新薬の臨床試験である治験を病院等の医療機関(以下、単に「病院」と記載する)に実施してもらう必要がある。この場合、製薬会社のスタッフは、端末300を操作して、当該治験に関する治験情報を治験マッチング装置100にアップロードする。ここで、治験情報については後述する。
【0011】
端末300は、例えば、病院内に設置された装置であり、医師や検査担当者等のスタッフにより操作される。ここで、端末300は、病院内で発生する情報を管理するHIS(Hospital Information System)サーバでもよい。例えば、病院では、患者の遺伝子変異の情報を確認して、治療方針を検討し、患者に合う治療薬を決定する。一方、患者に合う治療薬がない場合、治験が活用される。ここで、承認済みの薬を「治療薬」と記載し、治験が行われる薬を、後述の「治験薬」と記載する。
【0012】
具体的には、患者に合う治療薬がない場合、医師は、患者と治療方針を決定して、患者に対して治験に参加する意思を確認する。そして、同意が得られた場合、治験が活用される。治験は、当該病院、又は、医師の紹介により転院した病院で実施される。例えば、医師は、患者が治験に参加する意思を確認した場合、端末300を操作して、当該患者の情報(以下、「患者情報」と記載する)を治験マッチング装置100にアップロードする。ここで、患者情報については後述する。
【0013】
治験マッチング装置100は、ネットワークを介して、装置200、端末300と通信可能に接続される。例えば、治験マッチング装置100は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等のコンピュータ機器によって実現される。
【0014】
治験マッチング装置100は、入力インターフェース110と、ディスプレイ120と、通信インターフェース130と、記憶回路140と、処理回路150とを有する。なお、治験マッチング装置100は、上述の構成に限定されず、例えば、処理回路150のみを有しており、入力インターフェース110、ディスプレイ120、通信インターフェース130は、治験マッチング装置100に接続されることにより使用されてもよい。
【0015】
入力インターフェース110は、処理回路150に接続されており、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インターフェース110は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路150に出力する。例えば、入力インターフェース110は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本実施形態において、入力インターフェース110は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース110の例に含まれる。
【0016】
ディスプレイ120は、処理回路150に接続されており、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ120は、処理回路150から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ120は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0017】
通信インターフェース130は、処理回路150に接続されており、治験マッチング装置100と各システムとの間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース130は、治験マッチング装置100と端末200及び端末300との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。通信インターフェース130は、例えば、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0018】
記憶回路140は、処理回路150に接続されており、各種情報を記憶する。具体的には、記憶回路140は、各システムから受信した患者情報を記憶する。例えば、記憶回路140は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。記憶回路140は、治験マッチング装置100がネットワーク上でアクセス可能であれば、治験マッチング装置100に内蔵されていなくてもよい。ここで、記憶回路140は、記憶部の一例である。
【0019】
処理回路150は、治験マッチング装置100の構成要素を制御する。例えば、処理回路150は、受付機能151、検索機能152、出力処理機能153、収集機能154、及び、更新機能155を実行する。ここで、例えば、処理回路150の構成要素である受付機能151、検索機能152、出力処理機能153、収集機能154、及び、更新機能155が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路140に記録されている。処理回路150は、各プログラムを記憶回路140から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することとなる。ここで、受付機能151は、受付部の一例である。検索機能152は、検索部の一例である。出力処理機能153は、提示部の一例である。収集機能154は、収集部の一例である。更新機能155は、更新部の一例である。
【0020】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable GateArray:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0021】
以上、本実施形態に係る治験マッチング装置100を含む治験マッチングシステム1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、治験マッチング装置100は、例えば、患者に合う治験を探すときに用いられる。
【0022】
例えば、治験は、病院側で患者等の被験者に対して新薬(以下、「治験薬」と記載する)を投与することによって行われ、製薬会社では、治験による治験結果を基に治験薬の安全性、有効性、用法及び用量などの確認が行われる。ここで、当該治験結果の成績が良い場合、当該治験薬は「医薬品」として承認される。しかし、治験薬が「医薬品」として承認されるまでには、多くの時間やコストがかかる。このため、製薬会社にとって、治験の効率化が望まれる。
【0023】
そこで、本実施形態に係る治験マッチング装置100は、治験成績を向上させるために、以下の処理を行う。まず、受付機能151は、患者の情報(患者情報)を受け付ける。検索機能152は、投薬する際の条件が設定された治験と当該治験による治験結果とを対応付けるデータを複数の治験について記憶する記憶回路140を参照して、複数の治験の中から、患者情報に基づいて患者にマッチングする治験を検索する。出力処理機能153は、検索した治験の情報を提示する。収集機能154は、検索した治験を、患者に実施したときに得られた治験結果と当該患者の臨床情報とを収集して、記憶回路140に記憶させる。更新機能155は、収集した臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在する場合、当該臨床情報に基づいて、検索した治験の上記条件を更新する。
【0024】
次に、記憶回路140が記憶する情報について説明する。図2は、記憶回路140に記憶された患者情報テーブル141の一例を示す図である。患者情報テーブル141は、複数の患者情報を記憶する。患者情報は、病院の端末300から治験マッチング装置100にアップロードされた情報である。患者情報は、患者に対して作成された電子カルテ等の情報であり、例えば、検査・診断等の情報を含む。
【0025】
具体的には、患者情報は、患者を識別する患者ID、当該患者の氏名である患者名、年齢(生年月日)、性別、病歴等を含む。例えば、患者情報テーブル141には、患者情報として、患者ID「A001」、患者名「患者A」、年齢「70」、性別「男性」等が登録される。
【0026】
また、患者情報は、患者の疾病を識別する疾病ID、当該疾病の名称である疾病名、患者の遺伝子検査の結果を表す検査情報等を含む。例えば、患者情報テーブル141には、患者情報として、患者ID「A001」に対応付けて、疾病ID「B001」、疾病名「肺癌」、検査情報「EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)遺伝子変異あり」等が登録される。ここで、検査情報は、遺伝子検査の結果の他に、患者のバイタル情報や、既往歴等の情報を含む。バイタル情報は、患者の血液検査の結果や、患者の体温、血圧、脈拍等の看護記録を含む。例えば、バイタル情報や、既往歴等の情報は、電子カルテの情報として、HISサーバから取得される。
【0027】
図3は、記憶回路140に記憶された治験情報テーブル142の一例を示す図である。治験情報テーブル142は、複数の治験情報を記憶する。治験情報は、製薬会社の端末200から治験マッチング装置100にアップロードされた情報である。
【0028】
具体的には、治験情報は、治験を識別する治験ID、当該治験の名称である治験名、当該治験の治験薬を投与する際の条件と、当該治験の対象となる疾病を識別する疾病ID、当該疾病の名称である疾病名等を含む。例えば、治験情報テーブル142には、治験情報として、治験ID「C001」、治験名「治験A1」、当該「治験A1」の治験薬を投与する際の条件「条件A1」、疾病ID「B001」、疾病名「肺癌」等が登録される。治験情報テーブル142には、治験情報として、治験ID「C002」、治験名「治験A2」、当該「治験A2」の治験薬を投与する際の条件「条件A2」、疾病ID「B001」、疾病名「肺癌」等が登録される。
【0029】
治験情報に含まれる条件は、治験実施計画書(以下、「治験プロトコル」と記載する)に設定されている。当該条件は、治験の実施に適格な基準である「適格基準」と、当該適格基準に該当しない基準である「除外基準」とを含む。例えば、図4に示すように、治験ID「C001」の治験情報に含まれる条件「条件A1」では、「適格基準」として、「EGFR変異あり」、「T790変異あり」、「ファーストラインでEGFR TKI(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)処方済」等の項目が設定される。また、条件「条件A1」では、「除外基準」として、「脳転移あり」、「胃腸切除等の既往歴あり」、「間質性肺疾患あり」等の項目が設定される。
【0030】
また、図3に示すように、治験情報テーブル142は、複数の治験情報の各々に対して、治験結果と患者の臨床情報とを記憶する。治験結果と患者の臨床情報との詳細については後述する。
【0031】
次に、受付機能151及び出力処理機能153が実行する処理について説明する。上述のように、受付機能151は、患者情報を受け付けて、記憶回路140に記憶させる。
【0032】
具体的には、受付機能151は、病院の端末300から治験マッチング装置100にアップロードされた患者情報(患者ID、患者名、年齢、性別、病歴、疾病ID、疾病名、検査情報等)を受け付ける。そして、受付機能151は、受け付けた患者情報を記憶回路140の患者情報テーブル141に記憶させる。例えば、受け付けた患者情報は、患者ID「A001」を含む患者情報である。この場合、出力処理機能153は、患者ID「A001」を含む患者情報を受け付けた旨を受付情報として、当該病院の端末300に送信する。端末300は、当該受付情報を受信し、受信した受付情報として、図5に示す受付画面10を当該端末300のディスプレイに表示させる。例えば、受付画面10は、受け付けた患者情報のうち、患者ID「A001」、疾病ID「B001」を表示する表示欄11と、病院のスタッフが後述の検索要求を行うときに操作する検索ボタン12とを含む。
【0033】
次に、検索機能152及び出力処理機能153が実行する処理について説明する。上述のように、検索機能152は、記憶回路140の治験情報テーブル142を参照して、治験薬を投与する際の条件が設定された複数の治験の中から、患者情報を受け付けた患者にマッチングする治験を検索し、出力処理機能153は、検索した治験の情報を提示する。
【0034】
具体的には、当該病院の端末300のディスプレイに受付画面10が表示されているときに、例えば、病院のスタッフが受付画面10上の検索ボタン12を操作したものとする。この場合、当該端末300は、検索要求を治験マッチング装置100に送信する。検索機能152は、検索要求に応じて、記憶回路140の治験情報テーブル142に記憶された複数の治験情報の中から、患者ID「A001」を含む患者情報にマッチングする治験情報を検索する。このとき、出力処理機能153は、検索した治験情報を当該病院の端末300に送信する。端末300は、当該治験情報を受信し、受信した治験情報として、図6に示す検索結果画面20を当該端末300のディスプレイに表示させる。例えば、検索結果画面20は、患者ID「A001」、疾病ID「B001」を表示する表示欄21と、検索した治験情報を表示する表示欄22と、検索した治験情報の中から1つの治験情報を選択する選択ボタン23とを含む。
【0035】
例えば、検索機能152によって、患者ID「A001」を含む患者情報にマッチングする治験情報として、治験ID「C001」、「C002」、「C003」を含む治験情報が検索されたものとする。例えば、検索機能152は、患者情報に含まれる年齢、性別、病歴、疾病名、検査情報等と、治験の治験薬を投与する際の条件(「適格基準」、「除外基準」)とに基づいて、治験ID「C001」、「C002」、「C003」を含む治験情報を検索する。ここで、治験ID「C001」、「C002」の治験においては、患者情報に含まれる年齢、性別、病歴、疾病名、検査情報等と、当該治験の治験薬を投与する際の条件(「適格基準」、「除外基準」)とが、患者ID「A001」を含む患者情報に、高い確率でマッチングしたものとする。このとき、治験情報のマッチング率は、治験ID「C001」、「C002」、「C003」に対して、それぞれ、「75%」、「70%」、「35%」であるものとする。この場合、病院の端末300のディスプレイにおいて、検索結果画面20の表示欄22には、治験ID「C001」、「C002」、「C003」を含む治験情報がマッチング率の高い順に表示される。すなわち、表示欄22には、治験ID「C001」、「C002」、「C003」に対して、それぞれ、マッチング率「75%」、「70%」、「35%」が表示される。また、表示欄22には、治験ID「C001」、「C002」、「C003」に対して、それぞれ、マッチング率が高い順に、選択ボタン23「1」、「2」、「3」が表示される。
【0036】
上述のように、治験ID「C001」、「C002」、「C003」の治験のうち、患者ID「A001」を含む患者情報に最もマッチングする治験は、治験ID「C001」の治験である。そこで、病院の端末300のディスプレイに検索結果画面20が表示されているときに、例えば、病院のスタッフが検索結果画面20上の選択ボタン23「1」を操作して、治験ID「C001」を含む治験情報を選択したものとする。この場合、当該端末300は、治験ID「C001」を含む治験情報を選択した旨を選択情報として治験マッチング装置100に送信する。出力処理機能153は、選択情報に応じて、治験ID「C001」を含む治験情報を治験マッチング装置100にアップロードした製薬会社の端末200に、患者ID「A001」、患者名「患者A」、年齢「70」、性別「M(男性)」等の患者情報を通知する。すなわち、当該製薬会社に、患者ID「A001」の患者を治験者として紹介する。また、病院では、患者ID「A001」の患者に対して、選択した治験情報として、治験ID「C001」の治験を実施する。
【0037】
次に、収集機能154が実行する処理について説明する。上述のように、収集機能154は、検索した治験を患者ID「A001」の患者に実施したときに得られた治験結果と当該患者の臨床情報とを収集して、記憶回路140の治験情報テーブル142に記憶させる。
【0038】
具体的には、治験結果と患者の臨床情報は、匿名化された患者情報と共に、治験ID「C001」の治験を実施する病院の端末300からアップロードされる。すなわち、治験結果と患者の臨床情報は、匿名化された患者情報と共に、治験マッチング装置100にフィードバックされる。収集機能154は、治験ID「C001」の治験を実施する病院の端末300からアップロードされた治験結果と患者の臨床情報とを収集して、記憶回路140の治験情報テーブル142に記憶させる。
【0039】
図3に示すように、例えば、治験情報テーブル142には、治験ID「C001」に対応付けて、治験結果が登録される。当該治験結果は、治験薬が顕著に効いたことを表す「OK」、治験薬が効かなかったことを表す「NG」、どちらともいえないことを表す「Soso」のいずれかの情報を含む。治験結果が「NG」の患者の一例として、例えば、ある治験の治験薬を患者に投与した結果、その患者に非常に強い副作用が出てしまったため、これ以上は続けられない等の理由により、当該治験の実施を中止する場合などが挙げられる。治験結果が「Soso」の患者の一例として、例えば、ある治験の治験薬を患者に投与した結果、その治験薬が効いているが、効果が持続しない場合などが挙げられる。このように、治験プロトコルに設定された条件を満たしていても、治験薬が全く効かなかった患者もいれば、薬効が顕著に表れる患者もいる。本実施形態では、治験結果を治験マッチング装置100にフィードバックすることによって、患者と治験とのマッチングをより適切に行うことが可能になる。
【0040】
また、図3に示すように、例えば、治験情報テーブル142には、治験ID「C001」に対応付けて、患者の臨床情報が登録される。患者の臨床情報は、例えば、患者のバイタルなどの数値化が可能な定量的臨床情報と、数値化が困難な定性的臨床情報とを含む。定量的臨床情報や定性的臨床情報についての詳細は後述する。
【0041】
次に、更新機能155が実行する処理について説明する。上述のように、更新機能155は、収集機能154が収集した患者の臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在する場合、当該臨床情報に基づいて、検索機能152が検索した治験の条件を更新する。
【0042】
具体的には、更新機能155が実行する処理は、例えば、治験ID「C001」の治験による治験結果の数が設定数を超えている場合に実施される。ここで、治験ID「C001」の治験による治験結果の数が設定数を超えているものとする。
【0043】
この場合、まず、更新機能155は、治験情報テーブル142に登録された治験ID「C001」の治験による治験結果と患者の臨床情報とを解析する。図7は、更新機能155が実行する処理を説明するための図である。図7では、治験ID「C001」の治験において、当該治験に設定された条件「条件A1」と、治験マッチング装置100にフィードバックされた情報として、匿名化された患者情報、治験結果及び患者の臨床情報との関係を示している。
【0044】
例えば、図7において、匿名化された患者情報は、患者の年齢、性別などを含む。なお、図7では、説明の都合上、治験結果「NG」、「Soso」、「OK」に対して、年齢を平均値で表しているが、例えば、年齢を横軸とし、患者の数を縦軸とした分布図で表してもよい。
【0045】
例えば、図7において、条件「条件A1」は、「適格基準」として、「EGFR変異あり」、「T790変異あり」、「ファーストラインでEGFR TKI(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)処方済」等の項目が設定されている。また、「除外基準」として、「脳転移あり」、「胃腸切除等の既往歴あり」、「間質性肺疾患あり」等の項目が設定されている。
【0046】
例えば、図7において、患者の臨床情報は、定量的臨床情報として、血液検査の結果の情報などを含む。血液検査の結果としては、蛋白に関する情報、血糖に関する情報、遺伝子に関する情報などが挙げられる。蛋白に関する情報としては、「Protein A値(μg/ml)」、「Protein B値(μg/ml)」などが挙げられる。血糖に関する情報としては、「HbA1c値(%)」などが挙げられる。遺伝子に関する情報としては、「遺伝子変異量(TMB)」などが挙げられる。なお、図7では、説明の都合上、治験結果「NG」、「Soso」、「OK」に対して、血液検査の結果を平均値で表しているが、例えば、血液検査の結果を横軸とし、患者の数を縦軸とした分布図で表してもよい。
【0047】
例えば、図7において、患者の臨床情報は、定性的臨床情報として、QOL(Quality Of Life)に関する情報などを含む。QOLに関する情報としては、例えば、投薬により、「だるい」、「息が切れる」、「寝起きが悪い」、「体が痛いような気がする」、「手がしびれる」、「動悸がする」などの症状が挙げられる。具体的には、これらの症状は、疾病の問題ではないが、主観的によるものであったり、回復期にあたるときに起こるものであったりする。
【0048】
ここで、図7において、各項目には重み付けが設定される。重み付けは0~1の範囲を表す係数である。例えば、重み付けは、治験ID「C001」の治験の治験薬を投与する際の条件として用いられ、条件「条件A1」の「適格基準」及び「除外基準」に対して、重み付け「1」が設定される。また、患者の年齢、性別に対して、重み付け「1」が設定される。なお、重み付けに限定されず、フラグでもよい。
【0049】
次に、更新機能155は、治験ID「C001」の治験による治験結果と患者の臨床情報(定量的臨床情報、定性的臨床情報)とを解析する際、治験ID「C001」の治験による定量的臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報が存在するか否かを判定する。ここで、定量的臨床情報として、血液検査の結果を例に挙げて説明する。
【0050】
例えば、図7において、定量的臨床情報である「Protein A値」は、治験結果が「NG」の患者の場合では「30」であり、治験結果が「Soso」の患者の場合では「40」であり、治験結果が「OK」の患者の場合では「35」であるものとする。ここで、治験結果が「OK」の患者の場合では、それ以外の場合と比べて、有意差は見られない。この場合、更新機能155は、「Protein A値」に関しては、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報ではないと判定する。
【0051】
例えば、図7において、定量的臨床情報である「Protein B値」は、治験結果が「NG」の患者の場合では「1」であり、治験結果が「Soso」の患者の場合では「5」であり、治験結果が「OK」の患者の場合では「50」であるものとする。ここで、治験結果が「OK」の患者の場合では、それ以外の場合と比べて、10倍以上の差があり、統計的にも有意差が確認できたとする。この場合、更新機能155は、「Protein B値」に関しては、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報であると判定する。
【0052】
例えば、図7において、定量的臨床情報である「HbA1c値」は、治験結果が「NG」の患者の場合では「6」であり、治験結果が「Soso」の患者の場合では「6」であり、治験結果が「OK」の患者の場合では「6」であるものとする。ここで、治験結果が「OK」の患者の場合では、それ以外の場合と比べて、有意差は見られない。この場合、更新機能155は、「HbA1c値」に関しては、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報ではないと判定する。
【0053】
例えば、図7において、定量的臨床情報である「遺伝子変異量」は、治験結果が「NG」の患者の場合では「50」であり、治験結果が「Soso」の患者の場合では「50」であり、治験結果が「OK」の患者の場合では「200」であるものとする。ここで、治験結果が「OK」の患者の場合では、それ以外の場合と比べて、4倍差があり、統計的にも有意差が確認できたとする。この場合、更新機能155は、「遺伝子変異量」に関しては、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報であると判定する。
【0054】
判定の結果、治験ID「C001」の治験による定量的臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報が存在する。この場合、更新機能155は、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報に基づいて、治験ID「C001」の治験の治験薬を投与する際の条件を更新する。
【0055】
具体的には、薬効の有意差を確認できる定量的臨床情報が、「Protein B値」、「遺伝子変異量」である。この場合、図8に示すように、更新機能155は、治験ID「C001」の治験の治験薬を投与する際の条件として、定量的臨床情報「Protein B値」、「遺伝子変異量」に対して、重み付け「1」を設定する。すなわち、更新機能155は、定量的臨床情報「Protein B値」、「遺伝子変異量」を追加の条件として、治験ID「C001」の治験の治験薬を投与する際の条件を更新する。
【0056】
ここで、更新機能155は、判定した定量的臨床情報「Protein B値」、「遺伝子変異量」に対して、重み付けとして「1」を設定しているが、これに限定されず、例えば、更新機能155は、統計的有意差検定を行い、薬効の有意差の信頼度に応じて重み付けを設定してもよい。例えば、更新機能155は、判定した定量的臨床情報「Protein B値」、「遺伝子変異量」の信頼度を求め、求めた信頼度が90~100%の範囲で薬効の有意差を表す場合、重み付けとして「1」を設定する。例えば、更新機能155は、求めた信頼度が75~90%の範囲で薬効の有意差を表す場合、重み付けとして「0.8」を設定する。例えば、更新機能155は、求めた信頼度が50~75%の範囲で薬効の有意差を表す場合、重み付けとして「0.5」を設定する。このように、更新機能155は、定量的臨床情報「Protein B値」、「遺伝子変異量」を追加の条件として、治験ID「C001」の治験の治験薬を投与する際の条件を更新する。
【0057】
次に、治験ID「C001」の治験の治験薬を投与する際の条件が更新された後の処理について説明する。
【0058】
例えば、受付機能151は、病院の端末300から治験マッチング装置100にアップロードされ、かつ、患者ID「A010」を含む患者情報を受け付ける。そして、受付機能151は、受け付けた患者情報を記憶回路140の患者情報テーブル141に記憶させる。この場合、出力処理機能153は、患者ID「A010」を含む患者情報を受け付けた旨を受付情報として、当該病院の端末300に送信する。端末300は、当該受付情報を受信し、受信した受付情報として、図9に示す受付画面30を当該端末300のディスプレイに表示させる。例えば、受付画面30は、患者ID「A010」、疾病ID「B001」を表示する表示欄31と、病院のスタッフが後述の検索要求を行うときに操作する検索ボタン32とを含む。
【0059】
当該病院の端末300のディスプレイに受付画面30が表示されているときに、例えば、病院のスタッフが受付画面30上の検索ボタン32を操作したものとする。この場合、当該端末300は、検索要求を治験マッチング装置100に送信する。検索機能152は、検索要求に応じて、記憶回路140の治験情報テーブル142に記憶された複数の治験情報の中から、患者ID「A010」を含む患者情報にマッチングする治験情報を検索する。このとき、出力処理機能153は、検索した治験情報を当該病院の端末300に送信する。端末300は、当該治験情報を受信し、受信した治験情報として、図10に示す検索結果画面40を当該端末300のディスプレイに表示させる。例えば、検索結果画面40は、患者ID「A010」、疾病ID「B001」を表示する表示欄41と、検索した治験情報を表示する表示欄42と、検索した治験情報の中から1つの治験情報を選択する選択ボタン43と、検索した治験情報の付帯情報として定性的臨床情報(QOLに関する情報)を表示する表示欄44とを含む。
【0060】
例えば、検索機能152によって、患者ID「A010」を含む患者情報にマッチングする治験情報として、治験ID「C001」、「C002」、「C003」を含む治験情報が検索されたものとする。例えば、治験ID「C001」の治験においては、当該治験の治験薬を投与する際の条件(「適格基準」、「除外基準」、「Protein B値」、「遺伝子変異量」)が、患者ID「A010」を含む患者情報に、高い確率でマッチングしたものとする。すなわち、更新された条件が、患者ID「A010」を含む患者情報に、高い確率でマッチングしたものとする。このとき、治験情報のマッチング率は、治験ID「C001」、「C002」、「C003」に対して、それぞれ、「85%」、「70%」、「35%」であるものとする。この場合、病院の端末300のディスプレイにおいて、検索結果画面40の表示欄42には、治験ID「C001」、「C002」、「C003」を含む治験情報がマッチング率の高い順に表示される。すなわち、表示欄42には、治験ID「C001」、「C002」、「C003」に対して、それぞれ、マッチング率「85%」、「70%」、「35%」が表示される。また、表示欄42には、治験ID「C001」、「C002」、「C003」に対して、それぞれ、マッチング率が高い順に、選択ボタン23「1」、「2」、「3」が表示される。
【0061】
なお、治験ID「C001」の治験においては、投薬により、「だるい」などの症状が挙げられているものとする。この場合、病院の端末300のディスプレイにおいて、検索結果画面40の表示欄44には、治験ID「C001」に対して、「だるい」などの症状が表示される。
【0062】
上述のように、治験ID「C001」、「C002」、「C003」の治験のうち、患者ID「A010」を含む患者情報に最もマッチングする治験は、治験ID「C001」の治験である。ここで、患者ID「A010」の患者が、薬効が顕著に表れることを期待して、当該患者に対して1番目にマッチングする治験を希望する場合がある。一方、患者ID「A010」の患者が、薬効を期待しているが、「だるい」などの症状を避けたいので、当該患者に対して2番目にマッチングする治験を希望する場合もある。
【0063】
まず、患者ID「A010」の患者が、薬効が顕著に表れることを期待して、当該患者に対して1番目にマッチングする治験を希望する場合について説明する。
【0064】
病院の端末300のディスプレイに検索結果画面40が表示されているときに、例えば、病院のスタッフは、患者ID「A010」の患者に確認した上で、検索結果画面40上の選択ボタン23「1」を操作して、治験ID「C001」を含む治験情報を選択したものとする。この場合、当該端末300は、治験ID「C001」を含む治験情報を選択した旨を選択情報として治験マッチング装置100に送信する。出力処理機能153は、選択情報に応じて、治験ID「C001」を含む治験情報を治験マッチング装置100にアップロードした製薬会社の端末200に、患者ID「A010」等の患者情報を通知する。すなわち、当該製薬会社に、患者ID「A010」の患者を治験者として紹介する。また、病院では、患者ID「A010」の患者に対して、選択した治験情報として、治験ID「C001」の治験を実施する。このように、本実施形態では、治験結果と患者の臨床情報とを治験マッチング装置100にフィードバックすることによって、患者と治験とのマッチングをより適切に行うことができる。その結果、治験結果を基にさらに層別化された患者をリクルートして治験を実施することにより、治験成績が向上する。
【0065】
次に、患者ID「A010」の患者が、薬効を期待しているが、「だるい」などの症状を避けたいので、当該患者に対して2番目にマッチングする治験を希望する場合について説明する。
【0066】
病院の端末300のディスプレイに検索結果画面40が表示されているときに、例えば、病院のスタッフは、患者ID「A010」の患者に確認した上で、検索結果画面40上の選択ボタン23「2」を操作して、治験ID「C002」を含む治験情報を選択したものとする。この場合、当該端末300は、治験ID「C002」を含む治験情報を選択した旨を選択情報として治験マッチング装置100に送信する。出力処理機能153は、選択情報に応じて、治験ID「C002」を含む治験情報を治験マッチング装置100にアップロードした製薬会社の端末200に、患者ID「A010」等の患者情報を通知する。すなわち、当該製薬会社に、患者ID「A010」の患者を治験者として紹介する。また、病院では、患者ID「A010」の患者に対して、選択した治験情報として、治験ID「C002」の治験を実施する。このように、本実施形態では、治験結果と患者の臨床情報とを治験マッチング装置100にフィードバックすることによって、患者が希望する治験を選択することができる。その結果、患者に合う治験を実施することにより、治験成績が向上する。
【0067】
図11は、本実施形態に係る治験マッチング装置100を含む治験マッチングシステム1による処理の手順を示すフローチャートである。
【0068】
患者の情報(患者情報)が、病院の端末300から治験マッチング装置100に送信される(ステップS101)。治験マッチング装置100の受付機能151は、その患者情報を受け付ける(ステップS102)。
【0069】
次に、治験マッチング装置100の検索機能152は、記憶回路140の治験情報テーブル142を参照し、治験薬を投与する際の条件が設定された複数の治験の中から、患者情報を受け付けた患者にマッチングする治験を検索する(ステップS103)。このとき、出力処理機能153は、検索した治験を病院の端末300に提示する(ステップS104)。病院の端末300には、検索した治験の情報がマッチング率の高い順に表示される。
【0070】
病院の端末300により、提示された治験の中から1つの治験が選択される(ステップS105)。このとき、治験マッチング装置100の出力処理機能153は、選択された治験の情報をアップロードした製薬会社の端末200に、患者情報を通知する。すなわち、患者情報を受け付けた患者を治験者として当該製薬会社に紹介する(ステップS106)。
【0071】
治験を選択した病院により、当該治験が患者に実施される(ステップS107)。実施された治験による治験結果と患者の臨床情報とが、匿名化された患者情報と共に、病院の端末300から治験マッチング装置100にフィードバックされる(ステップS108)。治験マッチング装置100の収集機能154は、治験結果と患者の臨床情報とを、匿名化された患者情報と共に、病院の端末300から収集して、記憶回路140の治験情報テーブル142に記憶させる(ステップS109)。
【0072】
治験マッチング装置100の更新機能155は、患者の臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在するか否かを判定する(ステップS110)。薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在すると更新機能155が判定した場合(ステップS110;Yes)、更新機能155は、当該臨床情報に基づいて、治験ID「C001」の治験の治験薬を投与する際の条件を更新する(ステップS111)。一方、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在しないと更新機能155が判定した場合(ステップS110;No)、ステップS111がスキップされ、処理は終了する。
【0073】
以上、説明したとおり、本実施形態に係る治験マッチング装置100では、受付機能151は、患者の情報(患者情報)を受け付ける。検索機能152は、投薬する際の条件が設定された治験と当該治験による治験結果とを対応付けるデータを複数の治験について記憶する記憶回路140を参照して、複数の治験の中から、患者情報を受け付けた患者にマッチングする治験を検索する。出力処理機能153は、検索した治験の情報を提示する。収集機能154は、検索した治験を、患者情報を受け付けた患者に実施したときに得られた治験結果と当該患者の臨床情報とを収集して、記憶回路140に記憶させる。更新機能155は、収集した臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在する場合、当該臨床情報に基づいて、検索した治験の上記条件を更新する。このように、本実施形態では、治験結果と患者の臨床情報とを治験マッチング装置100にフィードバックすることによって、患者と治験とのマッチングをより適切に行うことができる。その結果、患者に合う治験を実施することにより、治験成績が向上する。
【0074】
(その他の変形例)
本実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0075】
本実施形態では、疾病として「肺癌」を例にして、各機能が実行する処理を説明したが、これに限定されず、他の疾病についても同様の処理が実行される。
【0076】
本実施形態では、更新機能155が実行する処理は、例えば、治験ID「C001」の治験による治験結果の数が設定数を超えている場合に、収集機能154が治験結果と患者の臨床情報とを収集する度に実施されていたが、これに限定されない。例えば、本実施形態の変形例として、更新機能155が実行する処理は、例えば、治験ID「C001」の治験による治験結果の数が設定数を超えている場合、設定時間が経過する度に、定期的に実施されてもよい。
【0077】
本実施形態では、治験マッチング装置100は、例えば、患者に合う治験を探すときに用いられるが、これに限定されない。例えば、本実施形態の変形例として、治験マッチング装置100は、治験に合う患者を探すときに用いられてもよい。
【0078】
例えば、受付機能151は、実施する治験の情報(治験情報)を受け付ける。検索機能152は、投薬する際の条件が設定された治験と当該治験による治験結果とを対応付けるデータを複数の治験について記憶する記憶回路140を参照して、複数の患者の中から、治験情報に基づいて実施する治験にマッチングする患者を検索する。出力処理機能153は、検索した患者の情報を提示する。収集機能154は、検索した患者に対して実施する治験により得られた治験結果と当該患者の臨床情報とを収集して、記憶回路140に記憶させる。更新機能155は、収集した臨床情報の中に、薬効の有意差を確認できる臨床情報が存在する場合、当該臨床情報に基づいて、実施する治験の上記条件を更新する。この場合でも、本実施形態の変形例では、治験結果と患者の臨床情報とを治験マッチング装置100にフィードバックすることによって、患者と治験とのマッチングをより適切に行うことができる。その結果、治験成績が向上する。
【0079】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0080】
また、上述した実施形態で説明した方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0081】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、治験成績を向上させることができる。また、治験以外に、上市済みの治療薬の薬効評価にも適用し、治療薬の用法・用量の最適化に利用することもできる。
【0082】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 治験マッチングシステム
100 治験マッチング装置
151 受付機能
152 検索機能
153 出力処理機能
154 収集機能
155 更新機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11