(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】発泡構造体の製造方法および発泡構造体
(51)【国際特許分類】
B29C 44/18 20060101AFI20240611BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B29C44/18
B29C44/00 A
(21)【出願番号】P 2020034229
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】牧井 恵
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-175112(JP,A)
【文献】特開2000-246742(JP,A)
【文献】特開平04-027510(JP,A)
【文献】特公平04-015091(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 39/00-39/24;39/38-39/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と表皮材と
のシール面同士を合わせ
ることで前記基材と表皮材との間に形成した発泡成形空間内に発泡樹脂材料を注入して前記基材と表皮材との間に発泡体が形成される発泡構造体を製造する発泡構造体の製造方法において、
前記基材および表皮材の少なくともいずれか一方の
前記シール面に複数の線状突起を形成する工程を備え
、前記表皮材または基材の
前記シール面と前
記複数の線状突起とが互いに圧着して前記発泡成形空間の内外を連通させ
る前記複数のエア逃し孔及び隣接するエア逃し孔同士を連通する複数の樹脂連通孔
を形成し、
前記
基材と表皮材との間に前記発泡成形空間を形成した状態で、前記複数のエア逃し孔から前記発泡成形空間内のエアを逃しながら前記発泡成形空間内に発泡樹脂材料を充填し、当該充填された発泡樹脂材料の反応固化により発泡樹脂材料
を前記複数のエア逃し孔及び複数の樹脂連通孔内に留めるよう
にしたことを特徴とする発泡構造体の製造方法。
【請求項2】
基材と、表皮材と、
前記基材と前記表皮材とのシール面同士を合わせることで前記基材と前記表皮材との間に
形成された発泡形成空間内に発泡樹脂材料を充填して形成される発泡体と、を有する発泡構造体において、
前記基材および表皮材は、少なくともいずれか一方の
前記シール面に形成された複数の線状突起を備え、前記表皮材または基材の
前記シール面と前
記複数の線状突起は、互いに圧着すること
で前記発泡成形空間の内外を連通させ
る前記複数のエア逃し孔及び隣接するエア逃し孔同士を連通する複数の樹脂連通孔を形成し、前記充填された発泡樹脂材料が
、前記複数のエア逃し孔及び複数の樹脂連通孔内に留まるよう構成したことを特徴とする発泡構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂材料からなる発泡体を含む発泡構造体の製造方法および発泡構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリウレタン等の発泡樹脂材料からなる発泡体を含む発泡構造体の一例として、自動車のインストルメントパネルがある。インストルメントパネルは、所定の形状に成形された板状の基材と、基材とともに発泡体の成形空間(以下「発泡成形空間」という。)を形成する表皮材と、発泡成形空間に注入された発泡樹脂材料により形成された発泡体とを有する。すなわち、インストルメントパネルは、基材と表皮材との間に発泡体からなる発泡層を介在させ、概略的に基材、発泡体、および表皮材による3層構造をなす。
【0003】
このような発泡構造体を構成する発泡体は、一般に発泡成形型を用いた発泡成形法により成形される。発泡成形法においては、例えば発泡成形型の上型に基材が、下型に表皮材がそれぞれセットされ、型閉めが行われることで、基材と表皮材との間に発泡成形空間が形成される。そして、所定の注入ヘッドから例えば基材に形成された注入口を介して発泡成形空間に発泡樹脂材料が注入され、注入された発泡樹脂材料が反応して発泡し固化することで、発泡体が形成される。発泡体が形成された後、発泡成形型の型開きおよび脱型が行われることで、発泡体を有する発泡構造体、つまり上記の例ではインストルメントパネルが得られる。
【0004】
発泡体の成形においては、発泡成形型の型閉め状態で形成される発泡成形空間を密閉するため、発泡成形空間の周縁部外側において、基材と表皮材を互いに圧着させたシール部が形成される。シール部においては、基材と表皮材の互いのシール面同士が密着した状態となる。一方で、発泡成形空間内に発泡樹脂材料が注入され充填される過程において、流動する発泡樹脂材料の発泡の先端部は曲面状であること等から、発泡成形空間の隅部分にエアが溜まることになる。発泡成形空間内にエアが残存することは、発泡体においてボイドや欠肉を生じさせ、品質不良の原因となる。そこで、発泡成形空間内のエアを発泡成形空間の外に逃がす必要がある。つまり、発泡樹脂材料の発泡時においては発泡成形空間内からエア逃し(ガス抜き)を行う必要がある。
【0005】
そこで、従来、発泡成形空間内のエアを発泡成形空間の外に逃がすための技術が種々提案されている。しかし、当該エアを外に逃がす際に、当該エアとともに発泡樹脂材料も発泡成形空間の外に漏れ出る場合があり、発泡成形空間の外に漏れ出た発泡樹脂材料は、例えば基材と表皮材のシール部から外側に漏れ出ることで、発泡成形型に付着することになる。
【0006】
かかる従来の問題点の改良技術として、基材と表皮材とで形成される発泡成形空間の接合部であるシール部の隅部分に、エア逃し通路を設ける技術がある(例えば、特許文献1)。
【0007】
すなわち、当該エア逃し通路は、基材と表皮材のシール部において発泡成形空間の内外を平面視略Z字状に互いに連通させるように設けられ、発泡樹脂材料の発泡時において発泡成形空間の周縁に押しやられたエアが、発泡樹脂材料によりエア逃し通路から発泡成形空間の外に押し出されて逃がされる際に、適切にエアを外部に逃がすとともに、当該エア逃し通路から発泡樹脂材料が発泡成形空間の外に漏れ出ることのないよう構成している。
【0008】
また、表皮材と基材との間に発泡体が介在した一体型発泡成形体を型によって成形するにあたり、表皮材と基材が互いに圧着する全周縁部をバリの発生がないようにシールしながら、型内のガス抜きを行なう技術がある。(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
すなわち、表皮材及び基材の相対する周縁部のうち上記樹脂原料がその発泡によって最後に行き渡る部分については当該表皮材及び基材のうちの少なくとも一方に通気性シール材を配置し、残りの部分については上型または下型にシール用エアチューブを配置し、または基材にシール部を設けておき、上記樹脂原料の注入後、型を閉じて上記樹脂原料が最後に行き渡る部分を通気性シール材によってシールし、上記残りの部分をエアチューブまたは基材のシール部でシールし、型内の空気およびガスを上記通気性シール材によって逃がすように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-144455号公報
【文献】特開平9-011247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された上述したような従来のエア逃し通路を設けることによりエア逃しを行うための技術によれば、発泡樹脂材料がエア逃し通路から発泡成形空間の外に漏れ出ることを防止することができる。
しかし、発泡樹脂材料の発泡時、つまり発泡体の成形過程において、発泡成形空間内のエアを外部へ逃がすための最適な位置にエア逃し通路を設定する必要があり、このエア逃し通路を設定する位置は、発泡体の流れ方を確認するトライで決定し、最終的には基材の型の溶接で設定することになるため、時間と手間を要し、溶接作業などにも同様に手数を要するという問題がある。
【0012】
特許文献2に記載された技術によれば、この技術は、上型または下型にシール用エアチューブを配置し、あるいは基材にシール部を設けるものであるため、上型または下型をくりぬいてエアチューブを配置する加工が必要となる。
また、当該エアチューブに空気の圧入または排気を行うためのエア管が必要になるなど、構造が複雑になるという問題がある。
また、上型または下型の表皮材および基材の互いに圧着する周縁部に通気性シール材となるウレタン樹脂等を塗布する必要があり、作業工数が増加するという問題がある。
【0013】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、発泡体の成形過程でエア逃し通路を設けることにより発泡成形空間内からのエア逃しを行う技術において、
エア逃し通路を最適な位置に設定するためのトライや溶接作業などの時間と手間を削減するとともに、簡単な構成で、発泡樹脂材料が漏れ出して発泡成形型に付着することを防止することができる発泡構造体の製造方法および発泡構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る発泡構造体の製造方法は、基材と表皮材とを型合わせし、前記基材と表皮材との間に形成した発泡成形空間内に発泡樹脂材料を注入して前記基材と表皮材との間に前記発泡体が形成される発泡構造体を製造する発泡構造体の製造方法において、
前記基材および表皮材の少なくともいずれか一方の発泡成形空間をなす隅部分に前記発泡体の流動方向に沿って複数の微小な線状突起(以下、「発明の詳細な説明」において、「微小線状突起」という。)を形成する工程を備え、当該基材と表皮材とを型合わせした際に前記表皮材または基材のシール面と前記形成された複数の微小線状突起とが互いに圧着して前記発泡成形空間の内外を連通させる複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び隣接するエア逃し孔同士を連通する複数の樹脂連通孔を前記シール面の延設方向に沿って形成し、
前記型合わせした後に、前記複数のエア逃し孔から前記発泡成形空間内のエアを逃しながら前記発泡成形空間内に発泡樹脂材料を充填し、当該充填された発泡樹脂材料の反応固化により発泡樹脂材料を前記複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び複数の樹脂連通孔内に留めるよう構成したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明に係る発泡構造体は、基材と、表皮材と、前記基材と前記表皮材との間に発泡樹脂材料を充填して形成される発泡体と、を有する発泡構造体において、
前記基材および表皮材は、少なくともいずれか一方の発泡成形空間をなす面の隅部分に前記発泡体の流動方向に沿って形成された複数の微小線状突起を備え、前記表皮材または基材のシール面と前記形成された複数の微小線状突起は、互いに圧着することで前記シール面の延設方向に沿って前記発泡成形空間の内外を連通させる複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び隣接するエア逃し孔同士を連通する複数の樹脂連通孔を形成し、前記充填された発泡樹脂材料が、前記複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び複数の樹脂連通孔内に留まるよう構成したことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る発泡構造体の製造方法および発泡構造体において、前記複数の微小線状突起を形成する工程または複数の微小線状突起は、前記基材と表皮材との間に、断面略半円形に形成されたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る発泡構造体の製造方法において、前記複数の微小線状突起を形成する工程は、前記複数の微小線状突起を、ラインシボ加工により形成するよう構成したことを特徴とするものである。なお、「シボ加工」とは、表面を鏡面仕上げにするのではなく細かい凹凸模様をつける加工のことをいい、「ラインシボ加工」とは、一般に、表面に線状の模様をつける加工のことをいう。
【0018】
また、本発明に係る発泡構造体の製造方法において、前記表皮材は、当該表皮材の前記シール面の外側に、前記シール面の縁部に沿う所定の切除線により切除される被切除部を設けると共に、前記発泡体を形成する工程の後に、前記表皮材の前記被切除部を切除する工程を付加したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基材および表皮材とともに発泡構造体を構成する発泡体の成形過程で発泡成形空間内からエア逃しを行う技術において、前記複数の微小線状突起を設定するためのトライや溶接作業などの時間と手間を削減するとともに、簡単な構成で、発泡樹脂材料が漏れ出して発泡成形型に付着することを防止することができ、歩留りの向上、品質の向上、および生産性の向上を図ることができる。
【0020】
すなわち、請求項1の発明によれば、発泡成形空間の周縁部外側において、基材と表皮材を互いに圧着させたシール部の延設方向に沿って形成された複数の微小線状突起と、表皮材のシール面とにより形成される複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び隣接するエア逃し孔同士を連通する複数の樹脂連通孔を設けることにより、発泡成形空間内のエア逃しを行いながら、インストルメントパネルの製品形状の外への発泡樹脂材料の漏れを防止することができる。
【0021】
また、複数のエア逃し孔を設けた構成によれば、複数の微小線状突起の孔径および孔の形状を適切に設定することにより、前記複数の微小線状突起の設定のためのトライや溶接作業などに手数を要せず、簡単な構成で、発泡樹脂材料がその流動抵抗により反応固化しながら発泡成形空間内や当該複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び複数の樹脂連通孔の途中において留めることができ、発泡樹脂材料の発泡成形空間外への漏れをなくすることができる。これにより、発泡樹脂材料の歩留りを向上させることができる。
【0022】
また、基材または表皮材の厚みにばらつきがある場合において、基材のシール面または表皮材のシール面に形成された複数の微小線状突起が当該厚み部分に押しつぶされることによって緩衝作用を発揮し、厚みのばらつきを調整して発泡樹脂材料が外に漏れ出すことを防止することができる。
【0023】
また、前記複数のエア逃し孔は、前記基材と表皮材との間に形成される前記発泡成形空間内に注入された発泡材が流動する距離の遠い隅部分、すなわち、発泡材が最後に到達する位置に配設されるものであるため、確実に発泡成形空間内のエアを外に逃がすことができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、本実施形態による発泡構造体は、基材と、表皮材と、前記基材と前記表皮材との間に介在する発泡体とを有するものであって、
前記基材および前記表皮材の少なくともいずれか一方に前記発泡体の流動方向に沿った複数の微小線状突起を形成し、かつ、前記表皮または基材と当該複数の微小線状突起とを型合わせした際に、互いに圧着するシール面とで前記発泡成形空間の内外を連通させる複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び隣接するエア逃し孔同士を連通する複数の樹脂連通孔をなす部分を構成し、
前記複数の微小線状突起は、前記互いに圧着するシール面の延設方向に沿って形成されているものであるため、発泡成形空間内のエア逃しを行いながら、インストルメントパネルの製品表面への発泡樹脂材料の漏れを防止することができる。
【0025】
また、複数のエア逃し孔を設けた構成によれば、複数の微小線状突起の孔径および孔の形状を適切に設定することにより、前記複数の微小線状突起の設定のためのトライや溶接作業などに手数を要せず、簡単な構成で、発泡樹脂材料がその流動抵抗により反応固化しながら発泡成形空間内や当該複数のエア逃し孔又は前記複数のエア逃し孔及び複数の樹脂連通孔の途中に留めることができ、発泡樹脂材料の発泡成形空間外への漏れをなくすることができる。これにより、発泡樹脂材料の歩留りを向上させることができる。
【0026】
さらに、基材または表皮材の厚みにばらつきがある場合において、基材のシール面または表皮材のシール面に形成された複数の微小線状突起が当該厚み部分に押しつぶされることによって緩衝作用を発揮し、厚みのばらつきを調整して発泡樹脂材料が外に漏れ出すことを防止することができる。
【0027】
本発明の他の態様によれば、複数のエア逃し孔を形成する微小線状突起の断面形状を略半円形としているため、エア逃し孔の断面形状を四角形、円形または三角形としたときと比べて等価直径が小さくなり管摩擦係数を大きくすることができる。さらに、当該半円形は、他の形状に比べて単位断面積当たりの周長が大きいため、基材および表皮材に接する表面積が大きくなり、発泡材の流動抵抗が大きくなる。また、これにより発泡樹脂材料の流動中における温度降下が大きくなり、早く冷却するために発泡樹脂材料の流動抵抗が大きくなって、より一層、外部に漏れにくくすることができる。
【0028】
本発明の他の態様によれば、ラインシボ加工により前記複数の微小線状突起を形成するものであるため、インストルメントパネルの基材または表皮材の表面部分のシボ加工を行う際に、同時に複数の微小線状突起を形成することができ、作業工程を削減できる。また、ラインシボ加工はエッチングによる化学的処理で行うため、エッチングにより生じる角部分を、丸みを帯びた形状にすることは容易である。したがって、微小線状突起20の断面形状を略半円形状に容易に形成することができる。
【0029】
本発明の他の態様によれば、前記表皮材は、当該表皮材のシール面の外側に、互いに圧着するシール面の縁部に沿う所定の切除線により切除される被切除部を設けることにより、前記発泡体を形成する工程の後に、前記表皮材の前記被切除部を切除して整形することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの層構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの製造についての説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの製造に用いられる装置構成についての概略断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る発泡体の成形過程を示す説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る発泡体の成形前の状態を示す説明図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る微小線状突起の構成例を示す
図8のD部分の拡大平面図及びG-G断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る微小線状突起の他の構成例を示す
図8のD部分の拡大平面図及びG-G断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る微小線状突起及び樹脂連通孔の構成例を示す
図8のD部分の拡大平面図及びG-G断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る微小線状突起及び樹脂連通孔の他の構成例を示す
図8のD部分の拡大平面図及びG-G断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る微小線状突起の構成を示す
図8のF-F断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る発泡構造体の成形途中を示す説明用平面図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る発泡構造体の成形途中を示す
図14のH-HおよびJ-J断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る発泡構造体の成形終了時の状態を示す説明用平面図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る発泡構造体の成形終了時の状態を示す
図16のK-KおよびL-L断面図である。
【
図18】従来の発泡構造体の表皮材の厚みのばらつきの吸収状態を示す断面図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る発泡構造体の表皮材の厚みのばらつきの吸収状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、基材および表皮材とともに発泡構造体を構成する発泡体の成形過程で、複数のエア逃し孔により発泡成形空間内からのエア逃しを行う技術において、
前記複数の微小線状突起を設定するためのトライや溶接作業などの時間と手間を削減するとともに、簡単な構成で、発泡樹脂材料の漏出による発泡成形型の汚れを防止し、歩留りの向上、品質の向上、および生産性の向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
本発明の実施の形態では、発泡構造体の一例として、自動車の内装構造であるインストルメントパネルを例にとって説明する。ただし、本発明は、自動車のインストルメントパネルに限定されることなく、自動車のドアトリムやコンソールリッド等の他の内装構造等、発泡体を含む発泡構造体として広く適用可能である。
【0033】
まず、本実施形態に係るインストルメントパネル1の構成について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るインストルメントパネル1は、いわゆるソフトインパネであり、所定の形状に成形された板状の基材2と、基材2とともに発泡体4の発泡成形空間13を形成する表皮材3と、基材2と表皮材3との間に介在する発泡体4とを有する。すなわち、インストルメントパネル1は、基材2と表皮材3との間に発泡体4からなる発泡層を介在させ、概略的に基材2、発泡体4、および表皮材3による3層構造をなす。
【0034】
基材2は、例えば、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂を素材として射出成形により形成された比較的硬質の成形部材である。基材2は、全体として所定の凹凸状をなす曲面形状を有する。基材2には、グローブボックス5やエアアウトレット6や空調操作パネルやオーディオ機器等を設置するための各種形状部が形成されている。基材2においては、その外部表面における上面部から前面部に至る所定の領域部分が、発泡体4および表皮材3の被着を受ける部分となる。基材2の板厚は、例えば3mm程度である。
【0035】
表皮材3は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)等の合成樹脂を素材としてスラッシュ成形や反応射出成形により形成された比較的軟質の成形部材である。表皮材3は、基材2に対する被着部分の形状に合致する凹凸状の曲面形状を有する。表皮材3は、その外表面によってインストルメントパネル1の意匠面を形成する。表皮材3の板厚は、例えば1mm程度である。
【0036】
発泡体4は、例えばポリウレタン等の発泡樹脂材料により、基材2と表皮材3との間で発泡成形されたウレタンフォームである。本実施形態では、発泡体4は、ポリオールとイソシアネートが反応することによって得られる高分子であるウレタン樹脂である。発泡体4は、基材2と表皮材3との間において、例えば5~10mm程度の層厚の発泡層として形成される。なお、発泡体4としては、ウレタンフォームのほか、ポリプロピレンフォームやポリエチレンフォーム等が例示される。
【0037】
発泡体4は、発泡成形型10において基材2および表皮材3を含む部材により形成される発泡成形空間13内に注入・充填されて発泡・固化する発泡樹脂材料により発泡形成される。したがって、発泡体4は、発泡成形型10において発泡成形空間13を形成する基材2および表皮材3に密着した状態で設けられる。
【0038】
次に、本実施形態に係るインストルメントパネル1の製造方法における発泡体4の成形、および発泡体4の成形に用いられる装置構成について、まず
図3から
図13を用いて説明する。
【0039】
図3は、インストルメントパネル1の製造についての説明図である。
図4は、
図3に示すインストルメントパネル1の
製造に用いられる装置構成の概略図であり、本図に示す断面図のインストルメントパネル1における断面位置は、
図3におけるA-A位置に対応する。
図5は、
図3におけるB部分拡大図である。
図6は、発泡体4の成形過程を示す説明図であり、
図5に示す部分と同様の部分を示す。なお、
図6においては表皮材3の図示を省略している。
図7は、
図6におけるC-C断面図である。
図8は、発泡体4の成形前の状態を示す説明図であり、
図5に示す部分と同様の部分を示す。なお、本図では説明の便宜上表皮材3を外してある。
図9(a)および
図10(a)は、
図8のD部分の拡大平面図である。
図9(b)は、
図9(a)のG-G断面図であり、
図10(b)は、
図10(a)のG-G断面図である。
図13は、
図9(a)のF-F断面図である。
図11は、
図9において、樹脂連通孔を設けた場合の他の構成例を示す
図8のD部分の拡大平面図およびG-G断面図である。
図12は、微小線状突起及び樹脂連通孔の他の構成例を示す
図8のD部分の拡大平面図およびG-G断面図である。
【0040】
図4に示すように、インストルメントパネル1を構成する発泡体4は、発泡成形型10を用いた発泡成形法により成形される。発泡成形型10は、第1の型である上型11と、第2の型である下型12とを有する。発泡成形型10には、予め成形された基材2および表皮材3がセットされる。
【0041】
上型11および下型12は、それぞれ部材がセットされるセット面11a、12aを有し、発泡成形型10の型閉じ状態において、セット面11a、12aを互いに対向させる。上型11のセット面11aには、基材2がセットされ、下型12のセット面12aには、表皮材3がセットされる。基材2および表皮材3は、それぞれ型にセットされた状態で、発泡体4の発泡成形空間13を形成する内面2a、3a同士を互いに対向させる。
【0042】
上型11および下型12に各部材がセットされた後、発泡成形型10の型閉めが行われる。発泡成形型10の型閉めが行われることで、基材2と表皮材3との間に、発泡体4の発泡成形空間13が形成される。発泡成形空間13は、発泡体4を形成する発泡樹脂材料14が充填され発泡する空間であり、発泡体4と同一形状の空間である。
【0043】
図4に示すように、発泡成形空間13には、上型11に設けられた注入ヘッド15により、発泡樹脂材料14をなすポリオールとイソシアネートが攪拌されながら射出される。注入ヘッド15は、上型11において吐出口をセット面11aに臨ませるように設けられている。基材2には、注入ヘッド15の吐出口と発泡成形空間13内とを連通させるように注入口2bが貫通形成されている。これにより、注入ヘッド15の吐出口から吐出される材料は、注入口2bを介して発泡成形空間13内に注入される(矢印D1参照)。注入口2bは、例えば基材2の中央部に設けられる。
【0044】
発泡成形空間13内に注入された発泡樹脂材料14は、基材2の注入口2bから放射状に拡がりながら発泡成形空間13内に充填され(
図3、破線矢印参照)、発泡成形空間13内で反応して発泡し固化することで、発泡体4を形成する。なお、注入ヘッド15は、下型12側、つまり表皮材3側に設けられてもよい。この場合、例えば、表皮材3における注入ヘッド15の吐出口に対応する部位に、注入口が貫通形成される。
【0045】
そして、発泡成形空間13において発泡樹脂材料14により発泡体4が形成された後、発泡成形型10の型開きおよび脱型が行われる。これにより、発泡体4を有するインストルメントパネル1が得られる。インストルメントパネル1において、発泡体4は、基材2の内面2aおよび表皮材3の内面3aに密着した状態で設けられ、基材2と表皮材3とを一体化させる接着材となる。
【0046】
以上のような発泡体4の成形においては、発泡成形型10の型閉め状態で形成される発泡成形空間13を密閉するため、発泡成形空間13の周縁部外側において、基材2と表皮材3を互いに圧着させたシール部7が形成される。シール部7においては、
図7に示すように、基材2と表皮材3のシール面2c、3c同士が密着した状態となる。表皮材3の周縁部には、平面状のシール面3cをなす部分が設けられており、基材2においては、表皮材3のシール面3cに対する合わせ面として、平面状のシール面2cが設けられている。
【0047】
ここで、表皮材3は、シール面3cをなす部分として、フランジ部3dを有する(
図7参照)。すなわち、表皮材3は、基材2の内面2aとともに発泡成形空間13を形成する本体部分において本体上面部3eと本体側面部3fとを有し、本体側面部3fの本体上面部3e側と反対側の縁部から外側にフランジ部3dが設けられている。シール部7(シール面2c、3c)は、例えば約5~10mmの幅を有するように設けられる。
【0048】
一方で、
図6および
図7に示すように、発泡成形空間13内に発泡樹脂材料14が注入され充填される過程において、流動する発泡樹脂材料14の発泡の先端部14aは曲面状であること等から、発泡成形空間13の隅部分13aにエアが溜まることになる。つまり、発泡成形空間13の中央部分から発泡樹脂材料14が注入されることで、発泡成形空間13内のエアが発泡樹脂材料14により発泡成形空間13の隅部分13aに追いやられる。
【0049】
発泡成形空間13の隅部分13a等にエアが残存した状態のまま発泡体4の成形が行われると、発泡体4においてボイドや欠肉が生じ、品質不良が生じることになる。このため、発泡体4の成形においては、発泡成形空間13内のエアを発泡成形空間13の外に逃がす必要がある。つまり、発泡樹脂材料14の発泡時においては発泡成形空間13内からエア逃し(ガス抜き)を行う必要がある。
【0050】
そこで、本実施形態に係るインストルメントパネル1は、発泡成形空間13内からのエア逃しを行うための構成として、基材2と表皮材3のシール部7に、複数のエア逃し孔30を有する。複数のエア逃し孔30は、基材2と表皮材3のシール部7において発泡成形空間13の内外を互いに連通させるように設けられている。
【0051】
当該複数のエア逃し孔30を形成するために、
図8に示すように、複数の微小線状突起20が基材2のシール面2cの延設方向に沿って形成され、かつ横方向に配設されている。そして、前記基材2のシール面2c上に形成された当該複数の微小線状突起20をなす部分が、表皮材3のシール面3cにより覆われることで、当該複数の微小線状突起20の突起部分と突起部分の間に形成される溝部21(後述する
図9(b)、
図10(b)参照)の両側面と当該表皮材3のシール面3cとの間に複数のエア逃し孔30を形成する。
【0052】
この複数のエア逃し孔30は、インストルメントパネル1のシール部7において、上述のとおりエアが溜まる発泡成形空間13の隅部分(例えば
図6に示す隅部分13a)に設けられる。具体的には、例えば
図3において符号B1、B2、B3、B4およびB5で示す部位において、発泡成形空間13の隅部分13aに連通するように、シール部7に複数のエア逃し孔30が設けられる。
【0053】
当該複数のエア逃し孔30は、以上のように形成されることにより発泡成形空間13の内外を連通させる。
そして、発泡樹脂材料14の発泡時において発泡成形空間13の周縁に押しやられたエアは、後述する
図15(b)の矢印に示すように、発泡樹脂材料14により複数のエア逃し孔30から発泡成形空間13の外に押し出されてエア逃し(ガス抜き)がされる。
【0054】
すなわち、基材2のシール面2cに溝部21として形成されたエア逃し用の複数の微小線状突起20が、表皮材3の平面状をなすシール面3cにより塞がれることで、発泡成形空間13と外部とを互いに連通させるエアの通路として、複数のエア逃し孔30が形成される。
【0055】
なお、本実施形態では、基材2のシール面2c側のみに複数の微小線状突起20を設けて、表皮材3の平面状のシール面3cが前記基材2のシール面2cに形成された複数の微小線状突起20を圧着して覆うことで複数のエア逃し孔30を形成するように構成したが、表皮材3のシール面3c側に複数の微小線状突起20を設けて、基材2の平面状のシール面2cが前記表皮材3のシール面3cに形成された複数の微小線状突起20を圧着して覆うことで複数のエア逃し孔30を形成するように構成してもよい。また、基材2の平面状のシール面2cおよび表皮材3のシール面3cの双方に複数の微小線状突起20を形成し、両者を圧着して覆うことで複数のエア逃し孔30を形成するように構成してもよい。
【0056】
また、双方に複数の微小線状突起20を形成し、両者を圧着して当該突起部同士を合わせるよう構成することにより、断面形状が円形や菱型のエア逃し孔30を形成することもできる。
【0057】
前記複数の微小線状突起20の形状および複数のエア逃し孔30の詳細について、さらに図面に基づき説明する。
複数の微小線状突起20は、例えば、
図9(a)に示すように、平面視略長円形をしており、これらが基材2のシール面2cの延設方向に沿って形成され、かつ横方向に配設されている。また、そのG-G断面図は、
図9(b)に示すように、略半円形に形成されている。
【0058】
そして、複数の微小線状突起20の突起部分と突起部分との間に微小線状の溝21が形成される。また、そのF-F断面図は、
図13に示すように、複数の微小線状突起20の突起部分は表皮材3のシール面3cと圧着している。このように構成することにより、当該突起部分と突起部分および前記表皮材3のシール面3cとの間に複数のエア逃し孔30が形成される。
【0059】
図10(a)に示す例では、複数の微小線状突起20の形状は、平面視略直線状をしており、また、そのG-G断面図は、
図10(b)に示すように、略三角形に形成され、これらが横方向に並行して配設されている。
そして、複数の微小線状突起20の突起部分と突起部分との間に微小線状の溝21が形成される。また、そのF-F断面図は、
図13に示すように、複数の微小線状突起20の突起部分は表皮材3のシール面3cと圧着している。このように構成することにより、当該突起部分と突起部分と前記表皮材3のシール面3cとの間に複数のエア逃し孔30が形成される。
【0060】
図9(b)および
図10(b)に示すように、当該突起部分と突起部分との間隔をWとすると、当該Wの値は、例えば、0.7mmとすることが望ましい。また、当該突起部分の基材2のシール面2cの延設方向の長さをXとすると、当該Xの値は、例えば、3mmとすることが望ましい。また、当該突起部分と突起部分との谷間の幅をYとすると、当該Yの値は、例えば、0.08mmとすることが望ましい。さらに、当該突起部分の基材2のシール面2cからの高さをZとすると、当該Zの高さは、例えば、0.2mmとすることが望ましい。つまり、エア逃し孔30の孔の断面積は、エアは逃すが、発泡樹脂材料14は通過させない大きさに設定しなければならない。
【0061】
ただし、上記W、X、Y、Zの寸法は、前記インストルメントパネル1について発泡成形を行った場合における例示であって、発泡構造体の大きさや形状によって変えることを妨げるものではない。したがって、本発明の実施形態によっては、上記記載の寸法になんら限定されるものではない。
また、エア逃し孔30を形成するための複数の微小線状突起20の横断面形状は、半円形や三角形に特に限定されるものではなく、例えば、四角形や台形または円形等であってもよい。
【0062】
ここで、エア逃し孔30の各種横断面形状によって、発泡樹脂材料14がエア逃し孔30を流動する際の抵抗について説明する。
本発明の実施形態における上記抵抗の主たるものは、直管損失ΔPであると考えられる。この直管損失ΔPは、管と流体の摩擦による損失で、最も基本的、かつ影響の大きい損失である。円管の場合、Lを管長さ(本実施例では
図9(a)の長さX)、dを管径(本実施例では
図9(b)、
図10(b)のエア逃し孔30の等価直径De)、ρを密度(本実施例では発泡樹脂材料14の密度)とし、流速をv(本実施例ではエア逃し孔30内での発泡樹脂材料14の流速)とすると、これらの間には、(1)式の関係が成立する。
【0063】
【数1】
ここでλは管摩擦係数とよばれ、層流の場合、Reをレイノルズ数として(2)式で表される。
【0064】
【数2】
(2)式より、管摩擦係数λは、配管直径dに反比例し、動粘度νに比例する。すなわち、エア逃し孔30の配管直径dに反比例し、発泡樹脂材料14の動粘度νに比例する。
【0065】
ここで、エア逃し孔30の断面は、上記のとおり各種の形状をとり得る。このように、エア逃し孔30の断面が各種形状をとった場合の配管直径dを、等価直径Deで表現することで、各種形状のエア逃し孔30の管摩擦係数λを求めることができる。
この等価直径Deは、エア逃し孔30の断面積Sと、その周長Kとの比で
求めることができる。すなわち、等価直径Deは、(3)式で求められる。
【0066】
【数3】
(3)式により四角形、円形、三角形及び半円形の場合について求めた等価直径Deを[表1]に示す。ただし、本表では結果の煩雑さを避けるため、縦と横をいずれもWとした場合について計算している。したがって、これらは必ずしも
図9(b)、
図10(b)に示す例の形状と同一ではないが、等価直径Deは、つまるところエア逃し孔30の断面積Sとその周長Kとの比であるから、これら4つの形状の場合における比較という面から見れば、何ら大勢に影響を及ぼすものではない。
【0067】
【表1】
この表1から分かるように、円形の場合には、等価直径De=Wとなって、実際の直径Wと一致する。また、半円形の等価直径Deが、これらの中では一番小さい。したがって、半円形の管摩擦係数λがこれらの中で一番大きくなるため、最も発泡樹脂材料14が流れにくい。このため半円形の場合が、最も発泡樹脂材料14が外部に漏れにくい。
【0068】
しかも。断面積Sに比べてその周長Kが大きいため、エア逃し孔30内を流れる発泡樹脂材料14が基材2および表皮材3に接触する面積が大きい。このために、エア逃し孔30内を流れる発泡樹脂材料14の熱が急速に基材2および表皮材3に伝達され、温度が最も早く下がると考えられる。その結果、当該発泡樹脂材料14の動粘度νが大きくなり、さらに、発泡樹脂材料14がエア逃し孔30内を流れにくいという効果を奏する。
【0069】
次に、前記複数の微小線状突起20に加えて、さらに複数の樹脂連通孔31を設けた実施例について、図面に基づき説明する。
複数の微小線状突起20は、例えば、先述の
図9(a)に示すように、平面視略長円形をしており、そのG-G断面は、
図9(b)に示すように、略半円形に形成されている。
【0070】
図11は、
図9(a)に示す前記複数の微小線状突起20に、前記樹脂連通孔31を設けた場合の構成例の拡大平面図およびG-G断面図である。
図11(a)に示すように、複数の微小線状突起20は平面視略長円形に形成されて、これらが横方向に並行して配設されている。
そして、複数の微小線状突起20により形成された隣接するエア逃し孔30同士は、複数の微小線状突起20の頂部に前後互い違いに配設された樹脂連通孔31により連通している。
【0071】
すなわち、樹脂連通孔31は、
図11(c)に示すように、微小線状突起20の頂部に発泡樹脂材料14の流動方向に直交して設けられた流動方向に対する長さV、高さUの切欠きである。この樹脂連通孔31は、発泡樹脂材料14の流動方向に対してそれぞれ隣接する微小線状突起20の頂部に前後互い違いに配設して形成されている。つまり、ある微小線状突起20には発泡樹脂材料14の流動方向に対して手前側に樹脂連通孔31が形成され、その左右に隣接する微小線状突起20には、発泡樹脂材料14の流動方向に対して奥手側に樹脂連通孔31が形成される。
したがって、複数の微小線状突起20により形成される隣接する複数のエア逃し孔30同士は、複数の微小線状突起20の頂部に前後互い違いに配設された樹脂連通孔31により連通する。
【0072】
このように隣接するエア逃し孔30同士が樹脂連通孔31により連通するように構成することにより、隣接する複数のエア逃し孔30間において発泡樹脂材料14の流動化が起こり、発泡樹脂材料14の流動速度の減速化を図ることができる。
また、発泡樹脂材料14がその流動抵抗により反応固化しながら発泡成形空間13内や当該複数のエア逃し孔30又は前記複数のエア逃し孔30及び複数の樹脂連通孔31の途中に留めることができ、発泡樹脂材料14の発泡成形空間13外への漏れをなくすることができる。これにより、発泡樹脂材料14の歩留まりを向上させることができる。
【0073】
次に、複数の微小線状突起20に、前記樹脂連通孔31を設けた場合の他の構成例について
図12に基づき説明する。本図は、微小線状突起20及び樹脂連通孔31の他の構成例の拡大平面図およびG-G断面図である。
複数の微小線状突起20は、
図12(a)に示すように、平面視略長方形に形成され、その断面は
図12(b)に示すように、略四角形に形成されており、これらが横方向に並行して配設されている。
そして、複数の微小線状突起20により形成される隣接するエア逃し孔30同士は、複数の微小線状突起20の頂部に前後互い違いに配設された樹脂連通孔31により連通している。
【0074】
すなわち、樹脂連通孔31は、
図12(c)に示すように、微小線状突起20の頂部に発泡樹脂材料14の流動方向に直交して設けられた流動方向に対する長さV、高さUの切欠きである。この樹脂連通孔31は、発泡樹脂材料14の流動方向に対してそれぞれ隣接する微小線状突起20の頂部に前後互い違いに配設して形成されている。つまり、ある微小線状突起20には発泡樹脂材料14の流動方向に対して手前側に樹脂連通孔31が形成され、その左右に隣接する微小線状突起20には、発泡樹脂材料14の流動方向に対して奥手側に樹脂連通孔31が形成される。
したがって、複数の微小線状突起20により形成される隣接する複数のエア逃し孔30同士は、複数の微小線状突起20の頂部に前後互い違いに配設された樹脂連通孔31により連通する。
なお、樹脂連通孔31を設けたことによる効果は、前記
図11の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0075】
次に、前記複数の微小線状突起20を形成する基材2のシール面2cについて以下に説明する。基材2のシール面2cは、表皮材3のシール面3cとともに、発泡体4の平面視外形に沿うように設けられたシール部7をなす部分であり、シール部7の延設形状に沿うように設けられている。そして、前記複数の微小線状突起20は、基材2のシール面2cの延設方向に沿って形成され、かつ横方向に並行して配設される。
【0076】
具体的には、例えば、
図5および
図6に示す部位(
図3におけるB部分)においては、シール部7をなす基材2のシール面2cは、平面視で略「コ」字状をなす3つの直線状の辺部分、即ち第1縦辺部41と、第1縦辺部41とともに発泡成形空間13の一方の(
図6において右側の)隅部分13aを形成する横辺部42と、横辺部42とともに他方の(
図6において左側の)隅部分13aを形成する第2縦辺部43とを有する。基材2のシール面2cの第1縦辺部41、横辺部42および第2縦辺部43のそれぞれに、複数のエア逃し孔30を形成する複数の微小線状突起20が設けられている。なお、表皮材3側において、シール面3cをなすフランジ部3dは、第1縦辺部41、横辺部42、および第2縦辺部43の各辺部に対応してシール部7をなす第1縦辺部51、横辺部52、および第2縦辺部53を有する(
図5参照)。
【0077】
そして、複数の微小線状突起20は、先述のとおり基材2のシール面2cの第1縦辺部41、横辺部42、および第2縦辺部43の延設方向に沿って形成され、かつ横方向に並行して設けられている。
【0078】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るインストルメントパネル1の製造方法(以下「インパネの製法」という。)について、以下に説明する。
本実施形態に係るインパネの製法は、基材2と表皮材3との間に形成した発泡成形空間13内に発泡樹脂材料14を注入して発泡体4を形成し、基材2と表皮材3との間に発泡体4を介在させたインストルメントパネル1を製造するものである。
【0079】
インパネの製法においては、まず、基材2および表皮材3の少なくともいずれか一方に、発泡成形空間13の内外を連通させる複数の微小線状突起20を形成する工程が行われる。本実施形態では、複数の微小線状突起20をなす部分を有する部材として、基材2が採用されている。
【0080】
すなわち、この工程では、エア逃し通路をなす部分を有する部材として、基材2のシール面2cが、表皮材3のシール面3cにより覆われることでエア逃し孔30を形成する複数の微小線状突起20が設けられる。
【0081】
具体的には、例えば、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂を素材とする基材2の射出成形において、成形型の成形面に、基材2の一部としてエア逃し孔30を形成するための複数の微小線状突起20が形成される。
または、射出成型後、基材2のシボ加工の際に化学的処理によりシール面2c上に複数の微小線状突起20である突条部分を形成する。
すなわち、当該複数の微小線状突起20である突条部分は、射出成型によって形成してもよいし、ラインシボ加工などの化学的処理を行うことにより形成してもよい。勿論切削加工によって形成してもよい。このように、複数の微小線状突起20を形成する加工方法は、いかなる方法を用いてもよい。
【0082】
以上のようにして、シール面2cに複数の微小線状突起20を有する基材2が形成される。また、表皮材3も、合成樹脂を素材とするスラッシュ成形や反応射出成形等により形成される。
【0083】
次に、
図4に示すように、発泡成形型10の一方の型である上型11に基材2をセットするとともに他方の型である下型12に表皮材3をセットした状態で発泡成形型10を型閉めすることで、基材2および表皮材3がそれぞれ周縁部に有するシール面2c、3c同士を密着させて発泡成形空間13を形成する工程が行われる。
【0084】
すなわち、発泡成形型10の型閉めにより、基材2と表皮材3のシール部7において互いのシール面2c、3c同士が密着するとともに、基材2の内面2aと表皮材3の内面3aとにより、発泡体4の発泡成形空間13が形成される。
同時に、基材2と表皮材3のシール部7において互いのシール面2c、3c同士が圧着することにより表皮材3のシール面3cが複数の微小線状突起20の突起部分を覆うこととなり、前記シール面3cと前記複数の微小線状突起20の微小線状の溝21の部分とで複数のエア逃し孔30が形成される。
また、先述の
図11及び
図12の実施例の場合においては、液体(流動物)である発泡樹脂材料14は、固化するまでに、その流動抵抗によってエア逃し孔30及び樹脂連通孔31の途中で留まることになることはいうまでもない。
【0085】
このようにして、発泡成形型10において発泡成形空間13が形成された後、発泡成形空間13内に発泡樹脂材料14の注入を開始し、複数のエア逃し孔30から発泡成形空間13内のエアを逃しながら発泡成形空間13内に発泡樹脂材料14を充填させ、発泡樹脂材料14の反応固化により発泡体4を形成する工程が行われる。
【0086】
すなわち、
図4に示すように、上型11に設けられた注入ヘッド15により、発泡樹脂材料14をなすポリオールとイソシアネートが攪拌されながら発泡成形空間13に射出される。発泡成形空間13内に注入された発泡樹脂材料14は、基材2の注入口2bから放射状に拡がりながら発泡成形空間13内の隅部分13aに向かって充填され(
図3、破線矢印参照)、発泡成形空間13内で反応して発泡し固化することで、発泡体4を形成する。また、これに伴って発泡成形空間13内のエアが複数のエア逃し孔30から外に逃がされる。
【0087】
次に、発泡構造体1の成形途中について説明する。
図14は、発泡構造体1の成形途中の状態を示す説明用平面図である。本図では説明の便宜上表皮材3を外してある。
図15は、発泡構造体1の成形途中の状態を示す断面図であり、
図15(a)は、
図14のH-H断面図、
図15(b)は、その部分拡大図、
図15(c)は、
図14のJ-J断面図である。
【0088】
このインパネの製法においては、複数の微小線状突起20が、基材2のシール面2cの延設方向に沿って設けられている。このため、発泡体4を形成する工程で、発泡成形空間13内に発泡樹脂材料14が充填されると発泡成形空間13内のエアが複数のエア逃し孔30から外に逃がされる。さらに充填が進み、
図15に示すように、発泡成形空間13内の隅部分13aまで充填されると、本図の矢印方向にエアの外への逃しが終わる。そして、さらに充填が進むと、後述する
図17(a)~(c)に示すように、発泡樹脂材料14の一部が複数のエア逃し孔30に流入してくる。しかし、発泡樹脂材料14は、その反応固化により複数のエア逃し孔30に留められる。
【0089】
具体的には次のとおりである。すなわち、発泡成形空間13内に発泡樹脂材料14が注入され充填される過程においては、上述のとおり発泡成形空間13の隅部分13aにエアが溜まることになる。この隅部分13aに溜まるエアが、複数の微小線状突起20と表皮材3のシール面3cとにより形成されたエア逃し孔30を介して、外部に逃がされる。つまり、隅部分13aに溜まるエアは、隅部分13aに対する発泡樹脂材料14の充填にともなって、複数のエア逃し孔30を介して発泡成形空間13の外に排出される。
【0090】
複数のエア逃し孔30によるエア逃しにともない、発泡成形空間13内に充填された発泡樹脂材料14は、発泡成形空間13内に留まるか、または複数のエア逃し孔30内に流入することになる。しかし、複数の微小線状突起20と表皮材3のシール面3cとにより形成されたエア逃し孔30は、前記のように微小な径の孔であるために、エア逃し孔30内に流入した発泡樹脂材料14は、エア逃し孔30の途中で反応固化して留まることになる。すなわち、気体であるエアは、エア逃し孔30において留まることなく外部に逃がされる。一方、液体(流動物)である発泡樹脂材料14は、固化するまでに、その流動抵抗によってエア逃し孔30の途中で留まることになる。
また、先述の
図11及び
図12の実施例の場合においては、液体(流動物)である発泡樹脂材料14は、固化するまでに、その流動抵抗によってエア逃し孔30及び樹脂連通孔31の途中で留まることになることはいうまでもない。
【0091】
次に、発泡構造体1の成形終了時の状態について説明する。
図16は、発泡構造体1の成形終了時の状態を示す説明用平面図である。本図では説明の便宜上表皮材3を外してある。
図17は、発泡構造体1の成形終了時の状態を示す断面図であり、
図17(a)は、
図16のK-K断面図、
図17(b)は、その部分拡大図、
図17(c)は、
図16のL-L断面図である。また、
図17(d)は、漏出発泡体4aがエア逃し孔30を通過して外部にはみ出した状態を示す
図16のK-K断面図である。
【0092】
図16および
図17(a)、(b)、(c)の各図に示すように、最終的に発泡樹脂材料14が固化した状態においては、発泡成形空間13内に形成された発泡体4から複数の微小線状突起20と表皮材3のシール面3cとにより形成された複数のエア逃し孔30の形状に沿って伸びた線状の漏出発泡体4aが形成されることになる。本実施形態では、漏出発泡体4aは、エア逃し孔30において網目を付した部分となる。このように、本実施形態に係るインストルメントパネル1においては、複数の微小線状突起20と表皮材3のシール面3cとにより形成されたエア逃し孔30内に、発泡成形空間13から漏出して反応固化した漏出発泡体4aが存在する。
【0093】
また、
図17(d)に示すように、複数の微小線状突起20の間隔W、谷の幅Yおよび深さZが大きい場合または長さXが短い場合には、漏出発泡体4aは、複数の微小線状突起20すなわちエア逃し孔30を通過して外部にはみ出すことになる。これは、エア逃し孔30の孔の断面積を大きくし過ぎたことによるものである。したがって、前記のとおり、エア逃し孔30の孔の断面積は、エアは逃すが、発泡樹脂材料14は通過させない大きさに設定しなければならない。この数値は、前記のとおりであり、発泡構造体1の大きさ、形状および成形条件に応じて適切に設定すべきであることはいうまでもない。
【0094】
次に、複数のエア逃し孔30のさらなる効果について説明する。すなわち、基材2のシール面2c上に複数の微小線状突起20を形成し、当該複数の微小線状突起20に表皮材3のシール面3cを覆って密着させることにより形成された複数のエア逃し孔30は、さらに、次のような効果を有している。
図18(a)は、従来の発泡構造体の表皮材3の厚みのばらつきの吸収状態を示す断面図である。本図において、基材2のシール面2cと表皮材3のシール面3cを密着させて発泡成形空間13を形成する。
図18(b)は、
図18(a)のM-M視断面図である。表皮材3の厚みのばらつきにより、厚み部分3gが基材2のシール面2cに密着した場合において、密着が完全でない場合には、シール部7には、本図に示すようにシール部7に隙間7aが発生する。
【0095】
このようなシール部7に隙間7aが発生すると、エア逃しとともに、発泡樹脂材料14も漏れ出して外部に漏出発泡体4aを生じるおそれがある。
一方、
図19(a)は、本発明の一実施形態に係る発泡構造体1の表皮材3の厚みのばらつきの吸収状態を示す断面図である。本図において、基材2のシール面2cと表皮材3のシール面3cを密着させて発泡成形空間13を形成する。
図19(b)は、
図19(a)のN-N視断面図である。表皮材3の厚みのばらつきにより、厚み部分3gが基材2のシール面2cに密着した場合において、表皮材3の厚み部分3gは、基材2のシール面2cに形成された複数の微小線状突起20の密着部分を、厚みのばらつきに応じて押しつぶすため、本図に示すように、シール部7に隙間7aが発生することはない。
【0096】
したがって、エア逃し孔30が押しつぶされることによって、その断面積が小さくなったとしても、完全につぶされない限りエア逃しをすることができるとともに、外部に漏出発泡体4aを生じることを防止できる。
このことは、基材2に厚みのばらつきがある場合においても同様である。すなわち、基材2のシール面2cまたは表皮材3のシール面3cに形成された複数の微小線状突起20が緩衝作用を発揮し、厚みのばらつきを調整して発泡樹脂材料14が外に漏れ出すことを防止することができる。
【0097】
このようにシール部7の基材2または表皮材3のいずれかのシール面2c、3cに複数の微小線状突起20を設けることによって、表皮材3や基材2の厚みのばらつきを吸収して隙間7aの発生をなくし、発泡樹脂材料14が外に漏れ出すことを防止するとともに、発泡体4の成形工程において発泡樹脂材料14がエア逃し孔30の途中で留まって固化した状態となるよう構成されている。
なお、シール部7は、インストルメントパネル1において最終的な製品形状の表面部分となる。
【0098】
そして、発泡体4が形成された後、発泡成形型10の型開きおよび脱型が行われ、発泡体4を有するインストルメントパネル1が得られる。
【0099】
以上のような本実施形態に係るインパネの製法およびインストルメントパネル1によれば、発泡体4の成形過程で基材2のシール面2cに形成された複数の微小線状突起20が表皮材3のシール面3cにより密着して覆われることにより複数のエア逃し孔30が形成され、これにより発泡成形空間13内からのエア逃しを行う技術において、複数の微小線状突起20を設定するためのトライや溶接作業などの時間と手間を削減するとともに、簡単な構成で、発泡樹脂材料14が漏れ出して発泡成形型10に付着することを防止することができ、歩留りを低下させることなく、インストルメントパネル1の品質の向上および生産性の向上を図ることができる。
【0100】
また、インパネの製法においては、
図15(a)、(b)および
図17(a)、(b)、(d)に示すように、表皮材3が、そのシール面3cの外側に、シール面3cの縁部に沿う所定の切除線(トリミングライン)3Tにより切除される被切除部3xを有するものである場合がある。この場合、上述した発泡体4を形成する工程の後に、つまり発泡成形型10からの離型が行われた後に、表皮材3の被切除部3xを切除する工程(トリミング工程)が行われる。
【0101】
表皮材3において、被切除部3xを切除する際の切除線3Tは、インストルメントパネル1の製品として残る部分と被切除部3xとの境界となる。そして、切除線3Tは、被切除部3xの内側、つまり製品側に、シール部7をなすシール面3cの外縁に沿って形成される。
【0102】
このように表皮材3が被切除部3xを有し、発泡体4の成形工程の後に被切除部3xを切除するトリミング工程が行われる場合においては、上述したように複数のエア逃し孔30により発泡樹脂材料14の製品外への漏出が防止されるため、製品外に発泡体部分が存在しないことから、良好なトリミング作業を行うことが可能となる。
【0103】
すなわち、例えば、上述した
図17(d)に示すように、発泡樹脂材料14が製品外に漏れ出た漏出発泡体4aが存在する場合には、トリミング工程での切除部分に、表皮材3の被切除部3xと漏出発泡体4aとが入り混じるため切除加工が煩雑となる。この点、本実施形態の構成によれば、製品外に漏出発泡体4aが存在しないことで、表皮材3の被切除部3xのみが切除される部分となる。このため、例えば被切除部3xの切除用の設備が漏出発泡体4aの付着により汚れることを防止することができ、トリミング作業を円滑に行うことが可能となる。また、トリミング工程による切除部分に漏出発泡体4aによる発泡体部分が存在しないことから、製品側においてトリミング作業後の切除面を綺麗にすることができる。
【0104】
また、本発明によれば、エア逃し孔30の孔径および孔の形状を適切に設定することにより漏出発泡体4aの発生をなくすることができるため、表皮材3の被切除部3x、つまり製品形状外の部分を必要最小限の大きさにすることができる。これにより、歩留りを向上させることができ、また、廃材量の低減、および廃材処理の手間の削減を実現することができる。
【0105】
以上説明したように、本発明によれば、基材2および表皮材3とともに発泡構造体1を構成する発泡体4の成形過程で複数のエア逃し孔30により発泡成形空間13内からのエア逃しを行う技術において、複数の微小線状突起20を設定するためのトライや溶接作業などの時間と手間を削減するとともに、簡単な構成で、発泡樹脂材料14が漏れ出して発泡成形型10に付着することを防止することができ、歩留りの向上、品質の向上、および生産性の向上を図ることができる。
【0106】
本実施形態に係るインストルメントパネル(発泡構造体)1によれば、上述したように、シール部7の延設方向に沿って形成された複数の微小線状突起20と、表皮材3のシール面3cとにより形成される複数のエア逃し孔30又は前記複数のエア逃し孔30及び隣接するエア逃し孔30同士を連通する複数の樹脂連通孔31を設けることにより、発泡成形空間13内のエア逃しを行いながら、インストルメントパネル1の製品形状の外への発泡樹脂材料14の漏れを防止することができる。
【0107】
また、複数のエア逃し孔30を設けた構成によれば、複数の微小線状突起20の孔径および孔の形状を適切に設定することにより、前記複数の微小線状突起20の設定のためのトライや溶接作業などに手数を要せず、簡単な構成で、発泡樹脂材料14がその流動抵抗により反応固化しながら発泡成形空間13内や当該複数のエア逃し孔30又は前記複数のエア逃し孔30及び複数の樹脂連通孔31の途中において留めることができ、発泡樹脂材料14の発泡成形空間13外への漏れをなくすることができる。これにより、発泡樹脂材料14の歩留りを向上させることができる。
【0108】
また、基材2または表皮材3の厚みにばらつきがある場合において、基材2のシール面2cまたは表皮材3のシール面3cに形成された複数の微小線状突起20が当該厚み部分3gに押しつぶされることによって緩衝作用を発揮し、厚みのばらつきを調整して発泡樹脂材料14が外に漏れ出すことを防止することができる。
【0109】
また、前記複数のエア逃し孔30は、前記基材2と表皮材3との間に形成される前記発泡成形空間13内に注入された発泡材が流動する距離の遠い隅部分13a、すなわち、発泡材が最後に到達する位置に配設されるものであるため、確実に発泡成形空間13内のエアを外に逃がすことができる。
【0110】
また、本実施形態による発泡構造体1は、基材2と、表皮材3と、前記基材2と前記表皮材3との間に介在する発泡体4とを有するものであって、
前記基材2および前記表皮材3の少なくともいずれか一方に前記発泡体4の流動方向に沿った複数の微小線状突起20を形成し、かつ、前記表皮3または基材2と当該複数の微小線状突起20とを型合わせした際に、互いに圧着するシール面2c、3cとで前記発泡成形空間13の内外を連通させる複数のエア逃し孔30又は前記複数のエア逃し孔30及び隣接するエア逃し孔30同士を連通する複数の樹脂連通孔31をなす部分を構成し、前記複数の微小線状突起20は、前記互いに圧着するシール面2c、3cの延設方向に沿って形成されているものであるため、発泡成形空間13内のエア逃しを行いながら、インストルメントパネル1の製品表面への発泡樹脂材料14の漏れを防止することができる。
【0111】
また、複数のエア逃し孔30を設けた構成によれば、前記複数の微小線状突起20の孔径および孔の形状を適切に設定することにより、前記複数の微小線状突起20のためのトライや溶接作業などに手数を要せず、簡単な構成で、発泡樹脂材料14がその流動抵抗により反応固化しながら発泡成形空間13内や当該複数のエア逃し孔30又は前記複数のエア逃し孔30及び複数の樹脂連通孔31の途中に留まることができ、発泡樹脂材料14の発泡成形空間13外への漏れをなくすることができる。これにより、発泡樹脂材料14の歩留りを向上させることができる。
【0112】
さらに、基材2または表皮材3の厚みにばらつきがある場合において、基材2のシール面2cまたは表皮材3のシール面3cに形成された複数の微小線状突起20が当該厚み部分3gに押しつぶされることによって緩衝作用を発揮し、厚みのばらつきを調整して発泡樹脂材料14が外に漏れ出すことを防止することができる。
【0113】
また、本実施形態では、複数のエア逃し孔30を形成する微小線状突起20の断面形状を略半円形としているため、エア逃し孔31の断面形状を四角形、円形または三角形としたときと比べて等価直径が小さくなり管摩擦係数を大きくすることができる。さらに、当該半円形は、他の形状に比べて単位断面積当たりの周長が大きいため、基材および表皮材に接する表面積が大きくなり、発泡樹脂材料14の流動抵抗が大きくなる。また、これにより発泡樹脂材料の流動中における温度降下が大きくなり、早く冷却するために発泡樹脂材料の流動抵抗が大きくなって、より一層、外部に漏れにくくすることができる。
【0114】
また、本実施形態では、ラインシボ加工により前記複数の微小線状突起20を形成するものであるため、インストルメントパネル1の基材2または表皮材3の表面部分のシボ加工を行う際に、同時に複数の微小線状突起を形成することができ、作業工程を削減できる。また、ラインシボ加工はエッチングによる化学的処理で行うため、エッチングにより生じる角部分を、丸みを帯びた形状にすることは容易である。したがって、微小線状突起20の断面形状を略半円形状に容易に形成することができる。
【0115】
また、本実施形態では、前記表皮材3は、当該表皮材3のシール面3cの外側に、互いに圧着するシール面2c、3cの縁部に沿う所定の切除線3Tにより切除される被切除部3xを設けることにより、前記発泡体4を形成する工程の後に、前記表皮材3の前記被切除部3xを切除して整形することもできる。
【0116】
以上のように実施形態について説明した本発明に係る発泡構造体1に関する技術は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0117】
上述した実施形態では、インストルメントパネル1を構成する基材2または表皮材3のいずれか一方に、複数の微小線状突起20をなす部分が設けられているが、かかる部分が基材2および表皮材3の両方に設けられてもよい。つまり、複数の微小線状突起20をなす部分は、基材2および表皮材3の少なくともいずれか一方に設けられればよい。
【0118】
また、シール部7をなす基材2のシール面2cに形成された複数の微小線状突起20は、
図16に示すように、第1縦辺部41と、横辺部42と、第2縦辺部43のそれぞれの全縁に備えた例について説明したが、各辺部41~43の中央部よりも各辺部41~43の隅部分13aに発泡樹脂材料14が遅れて到達するため、各辺部41~43の中央部には設けないで、各辺部41~43の隅部分13aに設けるように構成することができることはいうまでもない。
【0119】
以上の実施形態において説明した本発明に係る発泡構造体1の製造方法および発泡構造体1は、上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更した構成、公知発明および上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更した構成等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物にまで及ぶものである。
【符号の説明】
【0120】
1 インストルメントパネル( 発泡構造体)
2 基材
2a 内面
2b 注入口
2c シール面
3 表皮材
3a 内面
3c シール面
3d フランジ部
3e 本体上面部
3f 本体側面部
3g 厚み部分
3T 切除線(トリミングライン)
3x 被切除部
4 発泡体
4a 漏出発泡体
5 グローブボックス
6 エアアウトレット
7 シール部
7a 隙間
10 発泡成形型
11 上型
11a セット面
12 下型
12a セット面
13 成形空間(発泡成形空間)
13a 隅部分
14 発泡樹脂材料
15 注入ヘッド
20 複数の微小線状突起
21 微小線状の溝
30 エア逃し孔
31 樹脂連通孔
41 第1縦辺部
42 横辺部
43 第2縦辺部
51 シール部7をなす第1縦辺部
52 シール部7をなす横辺部
53 シール部7をなす第2縦辺部