(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】炎検知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G08B17/00 C
(21)【出願番号】P 2020063053
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博明
(72)【発明者】
【氏名】脇野 陽介
(72)【発明者】
【氏名】狩山 則之
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-197555(JP,A)
【文献】特開平10-172077(JP,A)
【文献】特開2018-116538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-17/12
23/00-31/00
H04N5/76-5/775
5/80-5/907
7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、
前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、
どの時刻に天球上のどの位置に太陽があるかを示すデータと、前記トンネルの地球上の位置を示すデータと、前記トンネルの形状を示すデータと、前記トンネルの出入口周辺の地形を示すデータと、前記トンネル内における前記センサの設置位置と監視方向を示すデータとに基づいて、前記センサに太陽光が照射されている期間である照射期間を
特定する
照射期間特定部と、
前記照射期間
特定部が
特定した照射期間中、前記判定部による判定を無効化する無効化部と
を備える炎検知システム。
【請求項2】
トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、
前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、
前記トンネル内における前記センサの設置位置と監視方向を示すデータと、前記トンネルの位置における天気情報とに基づいて、前記センサに太陽光が照射されている期間である照射期間を特定する照射期間特定部と、
前記照射期間特定部が特定した照射期間中、前記判定部による判定を無効化する無効化部と
を備える炎検知システム。
【請求項3】
トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、
前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、
前記センサが過去に出力した信号の振幅値に基づき、1日のうち当該振幅値が所定の閾値以上である状態が所定の時間長以上継続している時間帯を、前記センサに太陽光が照射される期間である照射期間と特定する照射期間特定部と、
前記照射期間特定部が特定した照射期間中、前記判定部による判定を無効化する無効化部と
を備える炎検知システム。
【請求項4】
トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、
前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、
どの時刻に天球上のどの位置に太陽があるかを示すデータと、前記トンネルの地球上の位置を示すデータと、前記トンネルの形状を示すデータと、前記トンネルの出入口周辺の地形を示すデータと、前記トンネル内における前記センサの設置位置と監視方向を示すデータとに基づいて、前記センサに太陽光が照射されている期間である照射期間を
特定する
照射期間特定部と、
前記照射期間
特定部が
特定した照射期間中、当該照射期間外よりも前記センサの感度を下げる感度変更部と
を備える炎検知システム。
【請求項5】
トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、
前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、
前記トンネル内における前記センサの設置位置と監視方向を示すデータと、前記トンネルの位置における天気情報とに基づいて、前記センサに太陽光が照射されている期間である照射期間を特定する照射期間特定部と、
前記照射期間特定部が特定した照射期間中、当該照射期間外よりも前記センサの感度を下げる感度変更部と
を備える炎検知システム。
【請求項6】
トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、
前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、
前記センサが過去に出力した信号の振幅値に基づき、1日のうち当該振幅値が所定の閾値以上である状態が所定の時間長以上継続している時間帯を、前記センサに太陽光が照射される期間である照射期間と特定する照射期間特定部と、
前記照射期間特定部が特定した照射期間中、当該照射期間外よりも前記センサの感度を下げる感度変更部と
を備える炎検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内の炎を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのトンネルには、トンネル内で車両の事故等により発生する炎を速やかに検知するための炎検知システムが導入されている。炎検知システムは、車両の走行方向に概ね等間隔に複数の炎検知器を配置し、それらの炎検知器によりトンネル内の各区画における炎の発生を監視する。
【0003】
トンネル内に配置される炎検知器には、自装置から見て右側の区画を監視する右側炎検知部と、左側の区画を監視する左側炎検知部を備える構成のものがある。以下、そのような構成の炎検知器を「二眼型炎検知器」と呼ぶ。二眼型炎検知器によりトンネルが監視される場合、通常、トンネル内の各区画は、その区画の両側に設置されている2つの炎検知器の一方の右側炎検知部と、他方の左側炎検知部とにより重複監視される。
【0004】
図9は、二眼型炎検知器によりトンネル内の各区画が重複監視される様子を説明するための図である。
図9の例において、トンネルTNには、二眼型炎検知器である炎検知器10(1)、10(2)、・・・、10(n)が車両の走行方向(
図9の左右方向)に概ね等間隔に配置されている。以下、これらの炎検知器を互いに区別しない場合、「炎検知器10」と総称する。
【0005】
トンネルTNは、車両の走行方向における炎検知器10の設置位置を境界とする複数の区画、すなわち、区画A(1)、A(2)、・・・、A(n-1)に区分されている。以下、これらの区画を互いに区別しない場合、「区画A」と総称する。
【0006】
区画A(1)は、炎検知器10(1)の左側炎検知部と、炎検知器10(2)の右側炎検知部により重複監視される。同様に、区画A(i)(ただし、iは2≦i≦n-1である自然数)は炎検知器10(i)の左側炎検知部と、炎検知器10(i+1)の右側炎検知部により重複監視される。
【0007】
ところで、トンネルの出入口から近い位置に配置されている二眼型炎検知器が備える2つの炎検知部のうち、出入口側の区画を監視する炎検知部は、日中、トンネル内に差し込む太陽光の影響で正しく炎を検知できない場合がある。
図9の例における場合、炎検知器10(1)の右側炎検知部、炎検知器10(2)の右側炎検知部等は、
図9の左側から右方向に差し込む太陽光の影響で正しく炎を検知できない場合がある。また、炎検知器10(n)の左側炎検知部、炎検知器10(n-1)の左側炎検知部等は、
図9の右側から左方向に差し込む太陽光の影響で正しく炎を検知できない場合がある。
【0008】
そこで、太陽光の影響により正しく炎を検知できないおそれのある炎検知部には、通常、炎検知部のセンサに対し外界からの光を透過する窓を塞ぐように遮光カバーが取り付けられ、実質的にその監視機能が無効化されている。例えば、炎検知器10(2)の右側炎検知部の窓が遮光カバーで覆われている場合、区画(1)は炎検知器10(1)の左側炎検知部のみで単独監視される。
【0009】
上記のように、二眼型炎検知器の片側の炎検知部の窓を遮光カバーで塞いで炎の誤検知を回避する方法について記載している文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、遮光カバーの使用に伴い窓の清掃に手間がかかる、という問題を解消するための技術として、防災監視盤から火災検知器に対し監視機能の無効化を指示し、火災検知器がその指示に従い自装置の片側の検知機能を無効化する、という仕組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の仕組みによれば、太陽光の影響を受けて正しく炎の検知ができないおそれのある炎検知部の機能が無効化されるため、その炎検知部が炎の誤検知を行うことは防止される。ただし、特許文献1に記載の仕組みによる場合、遮光カバーで窓を覆う場合と同様に、昼夜問わず、無効化された炎検知部の監視対象の区画は常時、単独監視となり、仮にその区画を監視している他の炎検知部が故障すると、その区画の監視が途絶えてしまう、という不都合が生じる。
【0012】
このような事情に鑑みて、本発明は、日中、太陽光の影響を受けて正しく炎の検知ができないおそれのある炎検知部の監視対象の区画が単独監視となる時間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明は、トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、前記センサに太陽光が照射されている期間である照射期間を示す照射期間データを取得する取得部と、前記照射期間データが示す照射期間中、前記判定部による判定を無効化する無効化部とを備える炎検知システムを第1の態様として提供する。
【0014】
第1の態様に係る炎検知システムによれば、センサに太陽光が照射されている期間には炎検知機能が無効化されるため、太陽光に起因する誤報が防止される。
【0015】
また、本発明は、トンネル内に配置され、炎が発する波長帯の光の強度に応じた振幅値の信号を出力するセンサと、前記センサが出力する信号の振幅値に基づき炎の有無を判定する判定部と、前記センサに太陽光が照射されている期間である照射期間を示す照射期間データを取得する取得部と、前記照射期間データが示す照射期間中に当該照射期間外よりも前記センサの感度を下げる感度変更部とを備える炎検知システムを第2の態様として提供する。
【0016】
第2の態様に係る炎検知システムによれば、太陽光が照射されている期間には炎検知用のセンサの感度が低下されるため、太陽光に起因する誤報が防止される。
【0017】
第1又は第2の態様に係る炎検知システムにおいて、前記照射期間データは1日のうちの所定の時間帯を示す、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0018】
第3の態様に係る炎検知システムによれば、太陽光がトンネルに差し込む日中の時間帯に炎検知機能が無効化、又は、炎検知用のセンサの感度が低下されるため、太陽光に起因する誤報が防止される。
【0019】
第3の態様に係る炎検知システムにおいて、前記照射期間データは1年のうちの現在の日付に基づき調整された時間帯を示す、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0020】
第4の態様に係る炎検知システムによれば、季節により変化する太陽の位置に応じて炎検知機能が無効化、又は、炎検知用のセンサの感度が低下される時間帯が決定されるため、通常監視の期間を長くすることができる。
【0021】
第1乃至第4のいずれかの態様に係る炎検知システムにおいて、前記照射期間データは、前記トンネル内における前記センサの位置、前記センサの監視方向と前記トンネルの出入口の位置関係、前記トンネルの出入口周辺の地形、及び、前記トンネルの位置に関する天気情報の少なくとも1つに基づき調整された時間帯を示す、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0022】
第5の態様に係る炎検知システムによれば、センサ又はトンネルの置かれている環境に応じて炎検知機能が無効化、又は、炎検知用のセンサの感度が低下される時間帯が決定されるため、通常監視の期間を長くすることができる。
【0023】
第1又は第2の態様に係る炎検知システムにおいて、前記センサが出力する信号の振幅値が所定の閾値以上である状態が所定の時間長以上継続している期間を照射期間と特定する照射期間特定部を備え、前記取得部は前記照射期間特定部が特定した照射期間を示す照射期間データを取得する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0024】
第6の態様に係る炎検知システムによれば、センサの出力によりセンサに太陽光が照射されている期間が推定されるため、新たなセンサ等を要することなく、太陽光に起因する誤報が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に係る炎検知システムの全体構成を模式的に示した図。
【
図2】一実施形態に係る炎検知器のハードウェアの構成を模式的に示した図。
【
図3】一実施形態に係る判定装置の構成を模式的に示した図。
【
図4】一実施形態に係る防災受信盤のハードウェア構成を模式的に示した図。
【
図5】一実施形態に係る炎報知装置の機能構成を模式的に示した図。
【
図6】一実施形態に係る照射期間テーブルの構成を例示した図。
【
図7】一変形例に係る判定装置の構成を模式的に示した図。
【
図8】一変形例に係る照射期間特定部が照射期間を特定する方法を説明するためのグラフ。
【
図9】炎検知器によりトンネル内の各区画が重複監視される様子を説明するための図。
【0026】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る炎検知システム1を説明する。
図1は炎検知システム1の全体構成を模式的に示した図である。炎検知システム1はトンネルTNで発生する炎を検知するためのシステムである。
【0027】
炎検知システム1は、トンネルTNの内部に車両の走行方向に沿って概ね等間隔に設置されているn個の二眼型炎検知器、すなわち、炎検知器11(1)、11(2)、11(3)、・・・、11(n)と、これらの炎検知器と通信接続された防災受信盤12と、防災受信盤12と通信接続可能な端末装置13を備える。端末装置13は炎検知システム1の管理者が使用する端末装置である。
【0028】
炎検知器11(1)は自装置の右側の区画を監視する右側炎検知部111(1)と、自装置の左側の区画を監視する左側炎検知部112(1)を備える。同様に、炎検知器11(i)(ただし、iは2≦i≦nである自然数)は自装置の右側の区画を監視する右側炎検知部111(i)と、自装置の左側の区画を監視する左側炎検知部112(i)を備える。
【0029】
以下、炎検知器11(1)、11(2)、11(3)、・・・、11(n)を互いに区別しない場合、炎検知器11と総称する。また、右側炎検知部111(1)、111(2)、111(3)、・・・、111(n)を互いに区別しない場合、右側炎検知部111と総称する。また、左側炎検知部112(1)、112(2)、112(3)、・・・、112(n)を互いに区別しない場合、左側炎検知部112と総称する。また、右側炎検知部111と左側炎検知部112を互いに区別しない場合、単に「炎検知部」という。
【0030】
トンネルTNは車両の走行方向において炎検知器11が設置されている位置を境界とする複数の区画、すなわち、区画A(1)、区画A(2)、・・・、区画A(n-1)に区分されている。以下、これらの区画を互いに区別しない場合、区画Aと総称する。
【0031】
区画A(1)は、炎検知器11(1)の左側炎検知部112と、炎検知器11(2)の右側炎検知部111により重複監視される。同様に、区画A(i)(ただし、iは2≦i≦n-1である自然数)は炎検知器11(i)の左側炎検知部112と、炎検知器11(i+1)の右側炎検知部111により重複監視される。
【0032】
図1において、炎検知部の各々に関し描かれている矢印は、それらの炎検知部の監視方向を示している。監視方向とは、例えば、炎検知部の水平方向における監視可能な領域の中心方向を意味する。
【0033】
図2は、炎検知器11のハードウェアの構成を模式的に示した図である。炎検知器11は、まず、炎検知器11の各種制御を行うコンピュータ101を備える。コンピュータ101は、プログラムに従いデータ処理を行うプロセッサ1011と、プログラムを含む各種データを記憶するメモリ1012と、炎検知器11が備える炎検知用の4つのセンサ等との間で信号の受け渡しを行う入出力インタフェース1013と、防災受信盤12との間でデータ通信を行う通信インタフェース1014を備える。
【0034】
炎検知器11は、コンピュータ101に加え、コンピュータ101に接続された炎検知用のセンサであるセンサ102R、センサ103R、センサ102L、センサ103Lと、と、4つのセンサの各々に応じた4つのアンプ、すなわち、アンプ104R、アンプ105R、アンプ104L、アンプ105Lを備える。
【0035】
なお、炎検知器11は、
図2に示す構成部に加え、炎検知器11の電力を消費する構成部に電力を供給する電源ユニット、4つのセンサが出力しそれらに応じたアンプが増幅したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器等の構成部を備えるが、それらは本発明の特徴と無関係であるため、
図2において省略されており、以下の説明においてもそれらの説明は省略する。
【0036】
センサ102Rとセンサ102Lは、炎(熱源)が発する長波長側の波長帯に高い感度で応答する長波長側光センサである。センサ102Rとセンサ102Lとしては、例えば、焦電素子を用いた光センサが採用される。以下、センサ102Rとセンサ102Lをセンサ102と総称する。
【0037】
センサ103Rとセンサ103Lは、炎(熱源)が発する短波長側の波長帯に高い感度で応答する短波長側光センサである。センサ103Rとセンサ103Lとしては、例えば、フォトダイオードを用いた光センサが採用される。以下、センサ103Rとセンサ103Lをセンサ103と総称する。
【0038】
センサ102Rとセンサ103Rは、炎検知器11から見て右側の区画Aにおいて発生する炎を検知するためのセンサである。センサ102Lとセンサ103Lは、炎検知器11から見て左側の区画Aにおいて発生する炎を検知するためのセンサである。
【0039】
アンプ104Rはコンピュータ101とセンサ102Rの間に接続され、センサ102Rが光に感応して生成する信号を増幅する。アンプ105Rはコンピュータ101とセンサ103Rの間に接続され、センサ103Rが光に感応して生成する信号を増幅する。アンプ104Lはコンピュータ101とセンサ102Lの間に接続され、センサ102Lが光に感応して生成する信号を増幅する。アンプ105Lはコンピュータ101とセンサ103Lの間に接続され、センサ103Lが光に感応して生成する信号を増幅する。
【0040】
以下、アンプ104Rとアンプ104Lをアンプ104と総称し、アンプ105Rとアンプ105Lをアンプ105と総称する。また、以下の説明において、センサ102又はセンサ103から出力された信号、という場合、特に断らない限り、センサ102又はセンサ103から出力され、アンプ104又はアンプ105により増幅された信号を意味する。
【0041】
コンピュータ101は、プロセッサ1011によりメモリ1012に記憶されているプログラムに従う各種データ処理を行うことにより、センサ102Rとセンサ103Rが出力する信号に基づき炎の有無を判定する右側炎検知部111の判定装置と、センサ102Lとセンサ103Lが出力する信号に基づき炎の有無を判定する左側炎検知部112の判定装置として機能する。これら2つの判定装置の構成は同じである。以下にそれらの判定装置の構成を説明する。
【0042】
図3は、コンピュータ101により実現される炎検知のための判定装置106の構成を模式的に示した図である。判定装置106は、記憶部1061、取得部1062、計時部1063、炎判定部1064、送信部1065、受信部1066、無効化部1067を備える。
【0043】
記憶部1061はプロセッサ1011の制御下で動作するメモリ1012により実現される。記憶部1061は各種データを記憶する。
【0044】
取得部1062はプロセッサ1011の制御下で動作する入出力インタフェース1013により実現される。取得部1062は、センサ102から出力される信号と、センサ103から出力される信号を継続的に取得する。取得部1062により取得されたそれらの信号の振幅値は、その時点における時刻と共に記憶部1061に記憶される。
【0045】
計時部1063はプロセッサ1011により実現される。計時部1063は基準時刻からの経過時間を継続的に計測し、現在時刻を特定し、特定した現在時刻を示す時刻信号を生成する。計時部1063が用いる基準時刻は、受信部1066が防災受信盤12から受信する基準時刻データに基づき校正される。その結果、計時部1063が測定する時刻は、防災受信盤12が備える計時部が測定する時刻と同期される。
【0046】
炎判定部1064はプロセッサ1011により実現される。炎判定部1064は、記憶部1061に記憶されている、センサ102から出力された信号の振幅値と、センサ103から出力された信号の振幅値とが所定の条件を満たすと判定した場合、炎が検知されていることを示す炎検知データを記憶部1061に記憶させる。また、炎判定部1064は、その条件が満たされないと判定した場合、炎検知データに代えて、炎が検知されていないことを示す炎非検知データを記憶部1061に記憶させる。
【0047】
炎判定部1064が炎検知の判定のために用いる条件の例を以下に示す。
(条件1)センサ102から出力された信号の振幅値が閾値T1以上である。
(条件2)センサ103から出力された信号の振幅値が閾値T2以上である。
(条件3)センサ103から出力された信号の振幅値に対するセンサ102から出力された信号の振幅値の比率が閾値T3以上、かつ、閾値T4以下(ただし、T3<T4)である。
【0048】
炎判定部1064は、上記の条件1~3の全てが、過去の所定時間長(例えば10秒間)の期間内に所定回数以上、満たされた場合、炎が発生していると判定する。
【0049】
送信部1065はプロセッサ1011の制御下で動作する通信インタフェース1014により実現される。送信部1065は、記憶部1061に炎検知データが格納されている間、防災受信盤12に対し、炎検知信号を継続的に送信する。
【0050】
受信部1066はプロセッサ1011の制御下で動作する通信インタフェース1014により実現される。受信部1066は、防災受信盤12から送信されてくる基準時刻データと、照射期間データを受信する。なお、照射期間データを受信する受信部1066は、照射期間データを取得する取得部の一例である。
【0051】
基準時刻データは、計時部1063が現在時刻を計測するために用いる基準時刻を校正するためのデータである。照射期間データは、1日のうち、センサ102及びセンサ103に太陽光が照射されていると推定される期間である照射期間を示すデータである。受信部1066が受信した基準時刻データ及び照射期間データは記憶部1061に記憶される。
【0052】
無効化部1067はプロセッサ1011により実現される。無効化部1067は、記憶部1061に記憶されている照射期間データが示す照射期間中、炎判定部1064による判定を無効化する。具体的には、無効化部1067は、計時部1063が測定している現在時刻が照射期間の開始時刻に到達した時点で、炎判定部1064に対し動作の停止を指示する。炎判定部1064はこの指示に従い、その時点で記憶部1061に記憶されている炎検知データ又は炎非検知データを消去した後、無効化部1067から動作の再開の指示を受けるまで、上述した炎検知のための判定を行わない。そして、無効化部1067は、計時部1063が測定している現在時刻が照射期間の終了時刻に到達した時点で、炎判定部1064に対し動作の再開を指示する。炎判定部1064はこの指示に従い、上述した炎検知のための判定を再開する。
【0053】
以上が炎検知器11の説明である。続いて、炎検知システム1(
図1)を構成する防災受信盤12を説明する。防災受信盤12は、トンネルTN内に設置され、炎検知器11から炎検知信号を受信した場合、表示や発音により周りの人々に警報を行う装置である。
【0054】
図4は、防災受信盤12のハードウェア構成を模式的に示した図である。防災受信盤12はコンピュータ201と、コンピュータ201に接続されたディスプレイ121、操作ユニット122及びスピーカ123を備える。
【0055】
コンピュータ201は、プログラムに従いデータ処理を行うプロセッサ2011と、プログラムを含む各種データを記憶するメモリ2012と、ディスプレイ121及び操作ユニット122との間で信号の入出力を行う入出力インタフェース2013と、n個の炎検知器11との間でデータ通信を行う通信インタフェース2014を備える。
【0056】
図5は、防災受信盤12により実現される炎報知装置の機能構成を模式的に示した図である。すなわち、コンピュータ201のプロセッサ2011がプログラムに従う処理を実行することにより、
図5に符号124で示される炎報知装置が実現される。以下、炎報知装置124の機能構成を説明する。
【0057】
炎報知装置124は、記憶部1241、受信部1242、計時部1243、照射期間特定部1244、送信部1245、表示制御部1246、操作受付部1247、発音制御部1248を備える。
【0058】
記憶部1241はプロセッサ2011の制御下で動作するメモリ2012により実現され、各種データを記憶する。
【0059】
受信部1242はプロセッサ2011の制御下で動作する通信インタフェース2014により実現される。受信部1242はn個の炎検知器11の各々から炎検知信号を取得する。また、受信部1242は端末装置13から送信される各種データを受信する。
【0060】
計時部1243はプロセッサ2011により実現される。計時部1243は基準時刻からの経過時間を継続的に計測し、現在時刻を特定し、特定した現在時刻を示す時刻信号を生成する。
【0061】
照射期間特定部1244はプロセッサ2011により実現される。照射期間特定部1244は受信部1242が端末装置13から受信し、記憶部1241に記憶されている各種データに基づき、炎検知器11の各々に関し毎日の照射期間を推定する。
【0062】
照射期間特定部1244が照射期間の推定に用いるデータには、例えば以下が含まれる。
(a)1年における日付毎の太陽の天球上の移動スケジュール、すなわち、どの時刻に天球上のどの位置に太陽があるかを示すデータ
(b)トンネルTNの地球上の位置、より具体的には、トンネルTNが敷設されている領域を示す3次元座標群を示すデータ
(c)トンネルTNの形状を示すデータ
(d)トンネルTNの2つの出入口の各々に関し、その出入口周辺の地形を示すデータ
(e)トンネルTN内における各炎検知器11の設置位置及び監視方向を示すデータ
【0063】
照射期間特定部1244は、特定の時刻(例えば、2020年1月1日0時0分)において、トンネルTNのどの範囲に太陽光が差し込むかを、上記(a)~(d)のデータに基づき特定する。続いて、照射期間特定部1244は、上記(e)のデータに基づき、先に特定した太陽光が差し込む範囲内に設置されている炎検知器11の右側炎検知部111及び左側炎検知部112のうち、監視方向が太陽光の差し込む方向を向いているものを、太陽光が照射されている炎検知部として特定する。
【0064】
照射期間特定部1244は、上記のように、特定の時刻(例えば、2020年1月1日0時0分)における太陽光が照射されている炎検知部の特定を完了すると、その特定の時刻から所定時間長(例えば5分)が経過した時刻(例えば、2020年1月1日0時5分)において太陽光が照射されている炎検知部を特定する。その後、照射期間特定部1244は、太陽光が照射されている炎検知部を特定する処理を、2020年1月1日0時10分、2020年1月1日0時15分、・・・のように所定時間長の経過毎の時刻に関し繰り返す。
【0065】
照射期間特定部1244は、上記の処理を、所定期間内(例えば1年間内)の時刻に関し完了すると、炎検知部の各々に関し、その所定期間内の日毎に、太陽光がその炎検知部を照射している期間、すなわち照射期間を特定する。例えば、照射期間特定部1244は、ある炎検知部に対し、2020年1月1日4時35分から2020年1月1日16時15分までの5分毎の時刻において太陽光が照射される、と特定した場合、その炎検知部の2020年1月1日における照射期間を4時35分から16時15分までと特定する。
【0066】
照射期間特定部1244は上記のように特定した照射期間を示す照射期間データを記憶部1241に記憶させる。
図6は、照射期間データを格納するために記憶部1241に記憶されている照射期間テーブルの構成を例示した図である。照射期間テーブルは炎検知部の各々に関し準備され、各照射期間テーブルには各日付の日に関する照射期間データが格納される。
【0067】
送信部1245(
図5)はプロセッサ2011の制御下で動作する通信インタフェース2014により実現される。送信部1245は、計時部1243が測定する現在時刻が1日の所定時刻(例えば0時)に達すると、炎検知器11の各々に関し、その炎検知器11の右側炎検知部111と左側炎検知部112のその日の照射時刻データを照射期間テーブルから読み出し、その炎検知器11に送信する。
【0068】
また、送信部1245は、例えば定期的に、計時部1243が測定している現在時刻を示すデータを、基準時刻データとして炎検知器11に送信する。炎検知器11のコンピュータ101は防災受信盤12から送信されてくる基準時刻データに基づき内部時計の基準時刻の校正を行う。その結果、コンピュータ101により実現される判定装置106の計時部1063の基準時刻が校正されることになる。
【0069】
表示制御部1246はプロセッサ2011により実現される。表示制御部1246はディスプレイ121に各種画像を表示させるための制御を行う。例えば、受信部1242がいずれかの炎検知器11からその炎検知器11の右側炎検知部111又は左側炎検知部112のいずれかが炎を検知したことを示す炎検知信号を受信すると、表示制御部1246は炎を検知した炎検知部が監視している区画Aを特定し、「炎検知 エリア##」という文字を表す画像データを生成し、ディスプレイ121にその画像データが表す画像を表示させる。ここで、「エリア##」は炎が検知された区画Aの識別情報である。
【0070】
操作受付部1247はプロセッサ2011の制御下で動作する入出力インタフェース2013により実現される。操作受付部1247はユーザが操作ユニット122に対し行う操作を受け付ける。なお、ユーザが操作ユニット122を用いて防災受信盤12に対し行う操作には、例えば、炎検知時に防災受信盤12が制御する消火装置の動作開始を指示するための操作等が含まれる。
【0071】
発音制御部1248はプロセッサ2011により実現される。発音制御部1248はスピーカ123に警報音を発音させるための制御を行う。例えば、受信部1242がいずれかの炎検知器11から炎検知信号を受信すると、発音制御部1248は、例えば記憶部1241に記憶されている波形データから警報音を生成し、その警報音をスピーカ123に出力して、スピーカ123に警報音を発音させる。
【0072】
以上が防災受信盤12の説明である。端末装置13は一般的な端末装置であるため、そのハードウェア構成及び機能構成の説明を省略する。なお、端末装置13は、管理者の操作により、上述の(a)~(e)のデータを防災受信盤12に送信する。
【0073】
上述した炎検知システム1が備える炎検知器11の右側炎検知部111及び左側炎検知部112の各々は、その監視方向にある太陽からの太陽光が照射されている期間中、炎検知を行わないが、それ以外の期間中は炎検知を行う。従って、炎検知システム1によれば、太陽光の照射を受ける炎検知部に遮光カバーを取り付けてその機能を常に無効化する従来技術に係る炎検知システムと比較し、信頼性の高い炎検知が実現される。
【0074】
また、炎検知システム1によれば、太陽光の照射を受ける炎検知部に遮光カバーを取り付ける必要がなく手間が省ける。
【0075】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0076】
(1)上述した実施形態においては、照射期間中に炎検知器11の炎検知部による炎検知のための判定を無効化する方法として、無効化部1067が炎判定部1064に対し判定処理の停止を指示し、炎判定部1064がその指示に従い判定処理を停止する、という方法が採用されている。照射期間中に炎検知器11の炎検知部による炎検知のための判定を無効化する方法はこれに限られない。例えば、無効化部1067がアンプ104及びアンプ105に対し出力の停止を指示し、アンプ104及びアンプ105が信号の出力を停止することで、炎検知のための判定が無効化されてもよい。また、無効化部1067が送信部1065に炎検知信号の送信の停止を指示し、送信部1065がその指示に従い、記憶部1061に炎検知データが記憶されていても防災受信盤12に対する炎検知信号の送信を行わないことで、炎検知のための判定が無効化されてもよい。
【0077】
また、防災受信盤12が無効化部1067を備え、防災受信盤12において炎検知のための判定が無効化されてもよい。その場合、防災受信盤12の無効化部1067は、いずれかの炎検知器11からその炎検知器11の右側炎検知部111又は左側炎検知部112が炎を検知したことを示す炎検知信号が送信されてきた場合、炎を検知した炎検知部に関する照射期間テーブルからその日の照射期間データを読み出し、現在時刻が読み出した照射期間データが示す照射期間内であれば、その炎検知信号を無視するように表示制御部1246及び発音制御部1248に指示する。この指示に従い、表示制御部1246は炎を検知したことを報知するための画像の表示をディスプレイ121に指示せず、また、発音制御部1248はスピーカ123に警報音の発音を指示しない。その結果、炎検知部により行われた炎検知のための判定が無効化される。
【0078】
(2)上述した実施形態においては、照射期間中に炎検知器11の炎検知部による炎検知のための判定が無効化される。これに代えて、照射期間中に、照射期間外よりもセンサ102及びセンサ103の感度を下げることにより、太陽光に起因する炎検知の誤報を防止する構成が採用されてもよい。
【0079】
図7は、この変形例に係る炎検知のための判定装置206の構成を模式的に示した図である。判定装置206は、上述した実施形態に係る判定装置106と比較し、無効化部1067に代えて感度変更部2067を備える点が異なっている。
【0080】
感度変更部2067はプロセッサ1011により実現される。感度変更部2067は、記憶部1061に記憶されている照射期間データが示す照射期間中、照射期間外よりもセンサ102及びセンサ103の感度を下げる。
【0081】
具体的には、感度変更部2067は、計時部1063が測定している現在時刻が照射期間の開始時刻に到達した時点で、アンプ104とアンプ105に対し信号の増幅率を所定比率だけ下げるように指示する。アンプ104とアンプ105はこの指示に従い、センサ102又はセンサ103から出力される信号を増幅する際の増幅率を、通常より所定比率だけ下げる。その結果、センサ102及びセンサ103の感度が低下し、太陽光に照射されても、判定装置106に出力される信号の振幅値が大きくならず、太陽光に起因する炎検知の誤報が防止される。
【0082】
その後、感度変更部2067は、計時部1063が測定している現在時刻が照射期間の終了時刻に到達した時点で、アンプ104及びアンプ105に対し信号の増幅率を通常の増幅率に戻すように指示する。アンプ104及びアンプ105はこの指示に従い、センサ102又はセンサ103から出力される信号を増幅する際の増幅率を通常の増幅率に戻す。
【0083】
この変形例に係る炎検知システム1によっても、太陽光に起因する炎検知部の炎の誤検知が防止されるとともに、太陽光が炎検知部に照射されない期間は炎検知部が通常の炎検知処理を行うため、信頼性の高い炎検知が実現される。また、この変形例に係る炎検知システム1によっても、太陽光の照射を受ける炎検知部に遮光カバーを取り付ける必要がなく手間が省ける。
【0084】
感度変更部2067が照射期間中にセンサ102及びセンサ103の感度を下げる方法は上述した方法に限られない。例えば、感度変更部2067がアンプ104及びアンプ105に信号の増幅率を下げるように指示する代わりに、炎判定部1064に炎検知のための判定に用いる閾値を所定比率だけ上げるように指示してもよい。この場合、炎判定部1064は感度変更部2067の指示に従い、上述した閾値T1~T4を所定比率だけ上げた後、それらの閾値を用いて炎検知のための判定を行う。その結果、センサ102及びセンサ103の感度が下がることになる。
【0085】
(3)上述した実施形態において、防災受信盤12の照射期間特定部1244は、以下の(a)~(e)に基づき照射期間を特定する。
(a)1年における日付毎の太陽の天球上の移動スケジュール、すなわち、どの時刻に天球上のどの位置に太陽があるかを示すデータ
(b)トンネルTNの地球上の位置、より具体的には、トンネルTNが敷設されている領域を示す3次元座標群を示すデータ
(c)トンネルTNの形状を示すデータ
(d)トンネルTNの2つの出入口の各々に関し、その出入口周辺の地形を示すデータ
(e)トンネルTN内における各炎検知器11の設置位置及び監視方向を示すデータ
【0086】
従って、照射期間特定部1244が生成する照射期間データは、1年のうちの現在の日付、トンネル内におけるセンサ102及びセンサ103の位置、センサ102及びセンサ103の監視方向とトンネルTNの出入口の位置関係、及び、トンネルTNの出入口周辺の地形に基づき調整された時間帯を示す。
【0087】
照射期間特定部1244が生成する照射期間データは、1年のうちの現在の日付、トンネル内におけるセンサ102及びセンサ103の位置、センサ102及びセンサ103の監視方向とトンネルTNの出入口の位置関係、及び、トンネルTNの出入口周辺の地形に基づき調整された時間帯の全てに基づき調整されなくてもよい。
【0088】
例えば、照射期間特定部1244が、トンネルTNの出入口周辺の地形を考慮せずに照射期間を特定し、その照射期間を示す照射期間データを生成してもよい。また、照射期間特定部1244が、一律にトンネルTNの出入口から所定個数(例えば、3個)の炎検知器11が備える炎検知部のうち監視方向が出入口の方向に向いているものに関し1年を通して固定された期間(例えば、19:00~3:00)を照射期間として特定し、その照射期間を示す照射期間データを生成してもよい。
【0089】
また、照射期間特定部1244が照射期間の特定において用いる情報は上記の(a)~(e)に限られない。例えば、防災受信盤12が、天気情報を配信するサーバ装置と通信可能な構成とし、そのサーバ装置から配信されるトンネルTNの位置における天気情報に基づき、照射期間特定部1244が照射期間を特定してもよい。この場合、照射期間特定部1244が生成する照射期間データは、トンネルTNの位置における天気情報に基づき調整された時間帯を示すことになる。天気情報に基づく場合、照射期間特定部1244は、例えば、晴天であれば太陽光が照射される炎検知部に関して曇天の期間を照射期間から除外することで、その炎検知部が通常の炎検知を行える期間を増やすことができる。
【0090】
(4)照射期間は、炎検知部に太陽光が照射する期間であるが、本願における照射は直射日光の照射に限られない。太陽光の反射光が炎検知器を照射する場合も、その反射光が炎検知部に炎の誤検知をもたらす可能性がある限り、その照射は本願における照射に含まれる。従って、照射期間特定部1244は、例えば、上述の(a)~(d)のデータに加え、1年のうちの日付と時刻とに応じた直射日光の強さを示すデータと、入射角を基準とする様々な角度に関し照射される反射光の強度(直射日光の強度に対する減衰率)を示すデータとに基づき、炎検知器の各々に到達する反射光の強度を特定し、その強度が所定の閾値以上である期間を、その炎検知器の照射期間と特定してもよい。
【0091】
(5)上述した実施形態において、照射期間特定部1244は上述の(a)~(e)に例示のデータに基づき、トンネルTN内に太陽光が到達する範囲を特定することにより、各炎検知器の照射期間を特定する。これに代えて、照射期間特定部1244が、センサ102及びセンサ103の少なくとも一方が出力する信号の振幅値が所定の閾値以上である状態が所定の時間長以上継続している期間を照射期間と特定する構成が採用されてもよい。
【0092】
図8は、この変形例に係る照射期間特定部1244が照射期間を特定する方法を説明するためのグラフである。
図8のグラフの横軸は1日(24時間)における時刻を示し、縦軸は過去の所定日数(例えば5日間)の各時刻におけるセンサ102(又はセンサ103)から出力された信号の振幅値の平均値を示している。
【0093】
図8(A)は、炎検知器11(2)の右側炎検知部111のセンサ102(又はセンサ103)の振幅値(例えば直近の5日間の平均値)の1日における経時変化を模式的に示したグラフであり、
図8(B)は、炎検知器11(3)の右側炎検知部111のセンサ102(又はセンサ103)の振幅値(例えば直近の5日間の平均値)の1日における経時変化を模式的に示したグラフである。
【0094】
時刻t1は日の出に伴い朝日が直接、炎検知器を照射し始めた時刻を示している。時刻t2は太陽が上昇し、出入口から3番目の炎検知器に朝日が直接当たらなくなった時刻を示している。t3は太陽が上昇し、出入口から2番目の炎検知器に朝日が直接当たらなくなった時刻を示している。時刻t4は日の入に伴い太陽光の反射光が炎検知器を照射しなくなった時刻を示している。縦軸のVは、炎検知器に炎を誤検知させる可能性のある太陽光の強度に応じた振幅値の閾値である。
【0095】
この変形例に係る炎検知システム1において、炎検知器11はセンサ102(又はセンサ103)から出力された信号の振幅値にその時点の現在時刻を対応付けたデータ(以下、振幅値データという)を順次、防災受信盤12に送信し、防災受信盤12はそれらのデータを記憶する。そして、防災受信盤12の照射期間特定部1244は、炎検知器11(2)の右側炎検知部111に関する過去所定日数の振幅値データに基づき、炎検知器11(2)の右側炎検知部111の照射期間を、振幅値が閾値Vを超えているQ1と特定する。また、照射期間特定部1244は、炎検知器11(3)の右側炎検知部111に関する過去所定日数の振幅値データに基づき、炎検知器11(3)の右側炎検知部111の照射期間を、振幅値が閾値Vを超えているQ2と特定する。
【0096】
この変形例に係る炎検知システム1によっても、太陽光に起因する炎検知部の炎の誤検知が防止されるとともに、太陽光が炎検知部に照射されない期間は炎検知部が通常の炎検知処理を行うため、信頼性の高い炎検知が実現される。また、この変形例に係る炎検知システム1によっても、太陽光の照射を受ける炎検知部に遮光カバーを取り付ける必要がなく手間が省ける。
【0097】
(6)上述した実施形態において、防災受信盤12が行うものとした照射期間の特定の処理が、端末装置13又は防災受信盤12と通信可能な
図1に図示せぬサーバ装置等の、防災受信盤12以外の装置により行われてもよい。
【0098】
また、予め特定された照射期間を示す照射期間データを炎検知システム1の管理者等が操作ユニット122を用いて防災受信盤12に入力し、防災受信盤12が入力された照射期間データを用いてもよい。また、防災受信盤12が、予め特定された照射期間を示す照射期間データを、端末装置13又は防災受信盤12と通信可能な
図1に図示せぬサーバ装置等の、防災受信盤12以外の装置から受信して用いてもよい。
【0099】
(7)上述した実施形態において、照射期間特定部1244が照射期間を特定するために用いる上述の(a)~(e)のデータは端末装置13から防災受信盤12に送信されるものとしたが、これに代えて、それらのデータが、防災受信盤12と通信可能な
図1に図示せぬ装置から防災受信盤12に送信されてもよい。
【0100】
(8)上述した炎検知器11が備える炎検知器は二波長式炎検知器であるが、波長帯の数は1又は3以上であってもよい。
【0101】
(9)上述した炎検知システム1の説明において用いた炎検知のための条件は一例であって、様々に変更されてよい。
【符号の説明】
【0102】
1…炎検知システム、11…炎検知器、12…防災受信盤、13…端末装置、101…コンピュータ、102…センサ、103…センサ、104…アンプ、105…アンプ、106…判定装置、111…右側炎検知部、112…左側炎検知部、121…ディスプレイ、122…操作ユニット、123…スピーカ、124…炎報知装置、201…コンピュータ、206…判定装置、1011…プロセッサ、1012…メモリ、1013…入出力インタフェース、1014…通信インタフェース、1061…記憶部、1062…取得部、1063…計時部、1064…炎判定部、1065…送信部、1066…受信部、1067…無効化部、1241…記憶部、1242…受信部、1243…計時部、1244…照射期間特定部、1245…送信部、1246…表示制御部、1247…操作受付部、1248…発音制御部、2011…プロセッサ、2012…メモリ、2013…入出力インタフェース、2014…通信インタフェース、2067…感度変更部。