(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】被加熱芳香カートリッジ用支持部材、及び、それを備えた被加熱芳香カートリッジ
(51)【国際特許分類】
A24F 40/42 20200101AFI20240611BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20240611BHJP
A24D 1/20 20200101ALI20240611BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/20
A24D1/20
(21)【出願番号】P 2020065073
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】721008039
【氏名又は名称】Future Technology株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-501610(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110881684(CN,A)
【文献】中国実用新案第208242852(CN,U)
【文献】特表2018-528765(JP,A)
【文献】特開2019-201634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
A24D 1/20、3/04、3/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱芳香カートリッジを喫煙者が吸引する際の気流の流れの方向を基準として、加熱されてエアロゾル及び芳香の成分となる揮発物を生成する被加熱芳香発生基材の集合体である被加熱芳香発生源を上流側に、少なくとも支持部材を備えたマウスピースを下流側に設け、長手方向に順に配設される被加熱芳香カートリッジにおいて、
前記支持部材が、少なくとも、前記被加熱芳香発生基材及び前記被加熱芳香発生源の移動を防止する支持部と、前記揮発物が通過する流路とを備え、
前記支持部材の外周が形成する前記被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の面積に対する、前記流路の外周が形成する前記被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の面積の割合を空孔率と定義したとき、
前記空孔率が異なる少なくとも二種類以上の流路を、それぞれ少なくとも一つ以上備えており、
前記流路は、前記支持部材の外周内と外周上に形成され、
前記外周内に形成された前記流路の断面の形状は円形状であり、前記外周上に形成された前記流路の断面の形状は三角形状、四角形状または多角形状であり、
前記支持部材の下流端に、前記二種類以上の流路から流出される前記揮発物が混合される空洞の合流流路が形成されている、
ことを特徴とする支持部材。
【請求項2】
前記空孔率が、
1~70%の範囲にある流路を備えていることを特徴とする請求項1に記載の支持部材。
【請求項3】
前記二種類以上の流路の最小空孔率と最大空孔率の差が、19~69%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持部材。
【請求項4】
前記流路の内壁表面積が、前記支持部材の長さ1mm当たり18~500mm2であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項5】
前記支持部材の材質が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、及び、エーテル基の少なくともいずれか一つを含有する親水性ポリマーであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の支持部材。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の支持部材が配設されている被加熱芳香カートリッジ。
【請求項7】
請求項
6に記載の被加熱芳香カートリッジにおいて、前記被加熱芳香発生源と前記マウスピースとが着脱可能であることを特徴とする被加熱芳香カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的に制御されるヒーター等の熱源を備えた加熱式芳香具に装着されて加熱されることによってエアロゾル及び芳香を生成する、エアロゾルフォーマ、芳香原材、及び、結合剤等を含有する被加熱芳香発生基材の集合体である被加熱芳香発生源と、その長手方向に支持部材、冷却部材、及び、フィルターの少なくともいずれか一つを備えるマウスピースとを連接した被加熱芳香カートリッジにおいて、マウスピースが必要とする機能に有する支持部材に関し、及び、その支持部材を備えた被加熱芳香カートリッジを提供するものである。
【0002】
特に、本発明は、マウスピースに求められる機能の中でも、被加熱芳香カートリッジの加熱式芳香具への装着時及び喫煙時における被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源を安定して支持する機能、加熱により被加熱芳香発生基材から発生するエアロゾルフォーマ及び芳香原材の揮発成分を冷却する機能、並びに、それらの揮発成分が抵抗なく通過する機能を備えた支持部材に関し、その支持部材を備えた被加熱芳香カートリッジを提供することができる。
【0003】
従来、上記「被加熱芳香発生基材」は、「エアロゾル形成基材」と呼称されてきた。しかし、加熱することによって、エアロゾルを生成するエアロゾルフォーマと共に、芳香原材や芳香剤の香り成分も揮発され、エアロゾルの煙と芳香原材や芳香剤の香りを喫煙によって楽しむことから、本発明においては、「被加熱芳香発生基材」と呼称する。これに基づき、従来の呼称である、「エアロゾル形成体」(エアロゾル形成基材の集合体)、「電子タバコカートリッジ」、及び、「加熱式喫煙具」を、それぞれ、「被加熱芳香発生源」、「被加熱芳香カートリッジ」、及び、「加熱式芳香具」と呼称する。
【背景技術】
【0004】
近年、タバコの禁煙が、職場や飲食店等の人が集う空間に幅広く普及する傾向に従って、タバコを燃焼する火炎式喫煙の喫煙者数が減少するのに対し、エアロゾルを生成するエアロゾルフォーマ、ナス科タバコ属のタバコ植物を含む芳香原材を含有する、被加熱芳香発生基材の集合体である被加熱芳香発生源を備えた被加熱芳香カートリッジを、ヒーター等の熱源によって伝達された熱によって加熱する加熱式喫煙の喫煙者数が急激に増加している。
【0005】
従来の火炎式喫煙の場合、タバコの燃焼によって、喫煙者の視覚的欲求を満足させる煙、喫煙者がタバコに依存する根源となるニコチン、そして、無数の芳香成分を十分に発生するため、愛好者数は極めて多かった。しかし、少なくとも燃焼するための600℃を超える温度が必要であり、喫煙時には最高900℃に達することがあり、火炎式喫煙の有害物質の発生量は極めて多く、健康志向の現在においては、受動喫煙を問題視する非喫煙者だけでなく、愛好者自身からも火炎式喫煙を敬遠する傾向が極めて顕著となっている。
【0006】
これに対し、加熱式喫煙によれば、タバコの葉の熱分解が開始する程度の温度である200~350℃程度で喫煙できる上、タバコの葉以外の芳香原材が含まれているため、燃焼による有害物質の発生を防止できるばかりでなく、熱分解による有害物質の発生も低減される。そのため、加熱式喫煙を一層楽しむことを可能にする様々な技術開発が活発に行われている(例えば、特許文献1~11)。
【0007】
このような加熱式喫煙のメカニズムは、加熱式喫煙具、被加熱芳香カートリッジ等の形態によって異なるが、ヒーターであるブレードを熱源とする加熱式芳香具に加熱芳香カートリッジを装着して喫煙する典型的な例を用い説明する。
【0008】
被加熱芳香カートリッジは、熱源から長手方向に、被加熱芳香発生源とマウスピースとがこの順に連接され構成されている。このマウスピースは、支持部材、冷却部材、及び、フィルターから少なくとも一つが選択されるが、複数用いる場合には、熱源から長手方向に、支持部材、冷却部材、及び、フィルターがこの順に連接され形成されるのが一般的である(特許文献1~11)。
【0009】
被加熱芳香発生基材は、グリセリンやプロピレングリコール等のエアロゾルフォーマという沸点が約150~300℃の有機溶媒と、芳香成分を有するタバコ植物を含む各種非タバコ植物や芳香剤とを、多糖類等の結合剤で塊状物としたものを成形加工したものである。喫煙に際しては、芳香カートリッジが、加熱要素を備えた加熱式芳香具のチャンバーに装着されると同時に、この被加熱芳香発生源に加熱要素が挿入される。その後、電子的に制御された加熱源により約200~350℃に加熱されて、エアロゾルフォーマの揮発物(蒸気)並びにタバコ植物を含む各種非タバコ植物及び芳香剤の芳香成分の揮発物が生成される。
【0010】
マウスピースを構成する、支持部材、冷却部材、及び、フィルターには、それぞれ、次に示すような機能を有している(特許文献7~11)。
【0011】
支持部材は、芳香カートリッジを加熱式芳香具に装着する際に、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源を支持し、装着時及び喫煙時の被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損やマウスピース側への移動の防止を主たる役割も果たすと共に、被加熱芳香発生基材が加熱されて生成する揮発物の流路となっており、揮発物が支持部材を通過する際の煙(核)の発生に大きな影響を及ぼす冷却部材の役割も果たしている(特許文献11)。
【0012】
冷却部材は、被加熱芳香発生基材が加熱されて生成する揮発物を積極的に冷却するための流路であり、支持部材以上に、冷却効果が高いと考えられる、揮発物との接触面積が大きい多孔質体によって形成されていることが多い(特許文献7、9、10、及び、11)が、有害物質を吸着する能力を有するフィルターの役割も果たしている場合がある(特許文献9)。
【0013】
フィルターは、揮発物や煙に含まれる有害物質等を濾過することができるセルロースアセテート繊維の束から形成された紙巻きタバコ同様のフィルターや物質吸着能に優れた細孔構造を有する炭素材料等が用いられる(特許文献7~11)。
【0014】
このように、加熱式喫煙のメカニズムを要約すると、エアロゾルフォーマの揮発物が、支持部材や冷却部材を通過して冷却され生成する煙と、タバコ植物を含む各種非タバコ植物や芳香剤が揮発した芳香成分とを吸引して喫煙が楽しまれるのである。
【0015】
特に、エアロゾルフォーマの揮発物が冷却されて煙を生成する現象は、蒸気から液滴が形成される現象で、局所的な熱力学的相変化が現出する核生成現象の一つであることは興味深い。この核生成現象は、日常生活におけるコップや窓ガラスに付着する水滴、雲及び降雨の生成メカニズム、環境科学に関わる大気中におけるエアロゾル形成メカニズム、工場、病院等の蒸気を用いたプロセス、並びに、溶液から形成される結晶等において重要な意義があるため、古くから様々な理論的及び実験的研究が行われてきた(非特許文献1~8)。従って、被加熱芳香カートリッジを加熱式芳香具に装着して行う喫煙に関する開発は、核生成現象を利用したものであり、これまでの理論的及び実験的研究結果に基づいて行うことができるものと考えられる。
【0016】
この核生成現象と密接な関係にあるのが、エアロゾルフォーマの揮発物である蒸気が通過する流路となっているマウスピースである。特に、支持部材及び冷却部材は、核生成現象による煙を生成する場であり、蒸気が通過する流路でもあるため、支持部材及び冷却部材における煙の生成メカニズムは、核生成現象に流体力学に基づいた現象を合わせて考える必要がある(非特許文献8~11)。
【0017】
そして、支持部材及び冷却部材における煙の生成メカニズムは、支持部材及び冷却部材設計上に大きな影響を及ぼすため、支持部材及び冷却部材における、エアロゾルフォーマの揮発物の核生成現象及び流れの状態について考える。
【0018】
まず、エアロゾルフォーマの揮発物の冷却による煙(核)生成、すなわち、エアロゾルの生成を、従来の熱力学に基づく核生成メカニズムから総合的に考えると、(1)気相中の均質凝縮核生成、及び、(2)壁面状の不均質凝縮核生成の二つの生成が考えられる(非特許文献1、4、及び、7)。
【0019】
また、壁面の濡れ性によって核生成メカニズムは異なるが、上記(2)壁面状の不均質凝縮核生成による一次核生成、及び、上記(1)気相中の均質凝縮核生成である二次核生成の二段階で核生成が生じているものと考えられる。
【0020】
特に、二次核生成の均質凝縮核は、一次核生成の不均質凝縮核よりも小さく、二次核生成数が、一次核生成数よりも多く、芳香カートリッジが生成する煙の量及び大きさと密接に係わるものと推測される。そして、この二次核生成数は、冷却速度が増加する程、また、蒸気の流れが乱流である程増加するので、それに伴い、核の平均粒子径が低下するため、芳香カートリッジが生成する煙の量及び大きさに大きな影響を与える。
【0021】
一方、一次核生成は、蒸気の壁面との濡れ性が高い程、核生成が生じやすく、芳香カートリッジの流路となる支持部材及び冷却部材の材質の影響を受けるものと考えられる。
【0022】
次いで、流体力学に基づいた現象については、連続の式、ベルヌーイの定理、レイノルズ数等から明らかなように、流路を形成する支持部材や冷却部材の構造によって流体である被加熱芳香発生基材の揮発物の流速、流れ方、及び、冷却速度等の影響を強く受ける。例えば、流路の形状は、揮発物の流速や流れ方に大きく影響し、細い管を流れる揮発物は、流速や冷却速度が大きく、乱流になりやすいため、核生成現象が生じやすいものと考えられる(非特許文献8~11)。
【0023】
このように、加熱式喫煙における煙の生成メカニズムを、核生成現象という熱力学的要素と流体の状態を示す流体力学的要素とから検討すると、その煙の生成に及ぼす支持部材及び冷却部材の構造及び材質が、煙の生成に大きな影響及ぼすことが分かる。
【0024】
しかし、従来技術のマウスピース、特に、支持部材及び冷却部材は、煙が核生成現象によって生成するものであるという熱力学及び気体の流路であるという流体力学に基づいた設計がなされていないため、構造が複雑で、喫煙者の好み及び操作に適した喫煙を可能とするものは提供されてこなかった(非特許文献8~10)。
【0025】
その結果として、被加熱芳香カートリッジを加熱式芳香具への装着時及び喫煙時における被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損や移動等を防止する機能を有する支持部材と、エアロゾルフォーマの揮発物からエアロゾルを生成する冷却部材とを、被加熱芳香カートリッジに分離して配設する必要があった(非特許文献8~10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】特表2008-518614号公報
【文献】特表2010-520764号公報
【文献】特表2013-519384号公報
【文献】特表2016-538848号公報
【文献】特許第6433626号公報
【文献】特許第6442110号公報
【文献】特許第5920744号公報
【文献】特許第6005735号公報
【文献】特許第5877618号公報
【文献】特表2017-518041号公報
【文献】特許第6280287号公報
【非特許文献】
【0027】
【文献】水渡英二,小林隆史,講座「沈殿生成に関する理論(I)-核生成理論-」,Japan Anaylst,1966(昭和41)年,Vol.15,pp.1406-1412
【文献】棚沢一郎,「滴状凝縮について」,日本舶用機関学会誌,昭和53(1978)年1月,第13巻、第1号,pp.27-34
【文献】笠原三紀夫,「大気中におけるエアロゾル粒子生成」,エアロゾル研究,1988(昭和63)年,Vol.3,Nо.1,pp.23-28
【文献】木村達人,学位論文「固液接触と核生成の分子動力学」,平成13(2001)年12月
【文献】河野明男,「エアロゾル生成初期過程としての均一蒸気-液体核生成の分子シミュレーション」,エアロゾル研究,2010(平成22)年,Vol.25,No.4,pp.299-308
【文献】島伸一郎,「雲の物理学入門」,物性研究・電子版,2014(平成26)年8月号,Vol.3,No.3,033210
【文献】徐東郁,「不均一核生成の分子動力学シミュレーション」,2015(平成27)年3月,Vol.113,No.1156,pp.150
【文献】一般社団法人日本空調衛生工事業協会,「蒸気・還水配管」,空衛,2018年,第72巻,10月号
【文献】鳩ぽっぽ,「初心者のための航空力学講座-連続の式」,[online],[2020(令和2)年3月15日検索],インターネット<URL: https://pigeon-poppo.com/continuity-equation>
【文献】鳩ぽっぽ,「初心者のための航空力学講座-連続の式」,[online],[2020(令和2)年3月15日検索],インターネット<URL:https://pigeon-poppo.com/bernoullis-theorem/>
【文献】鳩ぽっぽ,「初心者のための航空力学講座-連続の式」,[online],[2020(令和2)年3月15日検索],インターネット<URL:https://pigeon-poppo.com/reynolds-number>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
加熱されてエアロゾル及び芳香の成分となる揮発物を生成する被加熱芳香発生基材の集合体である被加熱芳香発生源を上流側に、少なくとも支持部材を備えたマウスピースを下流側に配設して長手方向に連接される被加熱芳香カートリッジにおいて、従来のマウスピースを構成する支持部材及び冷却部材は、煙が核生成現象によって生成するものであるという熱力学及び気体の流路であるという流体力学に基づいた設計がなされていないため、構造が複雑で、喫煙者の好み及び操作に適した喫煙を可能とするものは提供されてこなかった。その結果として、被加熱芳香カートリッジを加熱式芳香具への装着時及び喫煙時における被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損や移動等を防止する支持部材と、エアロゾルフォーマの揮発物からエアロゾルを生成する冷却部材とを、被加熱芳香カートリッジに分離して配設する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0029】
そこで、本発明者は、このような加熱式タバコの煙の生成が、蒸気から液滴が形成される核生成現象であり、支持部材及び冷却部材の流路を流れる蒸気の流体力学的現象の影響を受けるという観点から、芳香カートリッジを構成するマウスピースを再検討した。その結果、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損や移動を防止し、喫煙者にとって心地よい煙及び芳香を味わうことができるためには、適切な構造の流路を有する支持部材が存在することを見出し、本発明の完成に至った。
【0030】
すなわち、本発明は、被加熱芳香カートリッジを喫煙者が吸引する際の気流の流れの方向を基準として、加熱されてエアロゾル及び芳香の成分となる揮発物を生成する被加熱芳香発生基材の集合体である被加熱芳香発生源を上流側に、少なくとも支持部材を備えたマウスピースを下流側に配設して長手方向に連接される被加熱芳香カートリッジにおいて、支持部材が、少なくとも、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損や移動等を防止する支持部と、揮発物を通過し冷却する流路とを備え、支持部材の外周が形成する被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の面積に対する、流路の外周が形成する被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の面積の割合を空孔率と定義したとき、空孔率が異なる少なくとも二つ以上の流路を備えていることを特徴とする支持部材である。
【0031】
そして、このような空孔率が、約1~70%の範囲にある流路を備えていることが好ましく、二つ以上の流路の最小空孔率と最大空孔率の差が、約19~69%であることがより好ましい。
【0032】
このような構成とすることによって、被加熱芳香発生基材の集合体である被加熱芳香発生源を面で支持することが可能な面積の支持部が形成されるため、被加熱芳香カートリッジをブレード型熱源等が備えられた加熱式芳香具に装着する際に、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損及び移動等を防止することができる。また、喫煙時における喫煙者の吸引においても、被加熱芳香発生源が支持部材から受ける応力が低減され、被加熱芳香発生源の破損及び移動等を防止することができる。
【0033】
このような被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損及び移動の原因は、被加熱芳香発生源を構成する被加熱芳香発生基材が、エアロゾルフォーマ、加熱により芳香成分が揮発するタバコ植物や各種植物、芳香剤、及び、これらを結着するための多糖類やセルロース繊維等の結合剤等の組成物から成形加工されるものであるという、加熱式喫煙のメカニズムを実現するための材料構成に由来している。このような組成物から成形加工された、角柱状、円柱状、及び、粒状等の被加熱芳香発生基材は、やや粘性を有し、塑性変形する塊状物で脆いため、僅かな応力によって破損してしまうのである。また、被加熱芳香発生源は、通常、被加熱芳香発生基材ラッピング部材で被加熱芳香発生基材が巻装されて成形されるが、このような物性の被加熱芳香発生基材を強く巻装すると、被加熱芳香発生基材が破壊されるという問題と共に、加熱時の揮発物の流路を閉塞するという問題があり、空隙を確保した巻装状態にあることも、上述した破損及び移動の原因となっている。
【0034】
従って、空孔率を約70%以上にすると、支持部の断面積が低減し、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源を面で支持することが困難となり、被加熱芳香カートリッジ装着時及び喫煙時におけるこれらの破損及び移動を防止することが困難となる。そのため、空孔率は、約50%以下であることがより好ましい。また、流路は、空孔率によって限定されるものであり、このような空孔率を有する流路の長手方向に垂直な断面の形状及び流路が形成される位置は、特に限定されるものではない。従って、断面の形状は、円形状、半円形状、楕円形状、三角形状、四角形状、多角形状、及び、星型形状等の様々な形状とすることができる。また、流路を形成する位置は、支持部材の外周内であっても、外周上であってもよく、支持部材の中心に対象的な位置関係にあることが好ましい。しかし、不規則な位置関係であってもよい。
【0035】
一方、加熱式喫煙において重要な要素の一つである煙は、エアロゾルフォーマの揮発物である蒸気が通過する流路となっているマウスピースで生成されるため、マウスピースの構成は、煙の生成に大きな影響を及ぼす。
【0036】
マウスピースは、支持部材、冷却部材、及び、フィルターから選択される一つ以上を備えているが、加熱された被加熱芳香発生基材から発生するエアロゾルフォーマの揮発物が通過する流路となる支持部材及び冷却部材が、凝縮という核生成現象による煙を生成する場として重要な役割を果たしている。
【0037】
従来は、支持部材が被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の移動を防止し、比表面積が大きい冷却部材で煙を生成するという考え方で、両者を備えた複雑な構造のマウスピースが設計されてきた。冷却部材は、流路が十分に確保された中空の円筒状であるものが代表例として挙げられる。一方、冷却部材は、揮発物との接触面積が大きくなるように、複雑な凹凸の激しい流路や多数の細い流路の集合体が用いられてきた。
【0038】
そのため、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源を受ける支持部材の支持部の断面積が小さく、揮発物は流れ易いが、被加熱芳香カートリッジの装着時及び喫煙時における被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損及び移動等を防止することが困難であった。一方、冷却部材は、揮発物との接触面積が大きく、煙の発生が多いが、セルロースアセテート繊維の束から形成された紙巻きタバコ同様のフィルターや物質吸着能に優れた細孔構造のように、有害物質と共に煙を付着してしまい、煙の生成量が不十分であるという問題があった。また、支持部材と冷却部材を設けるのは、マウスピースの構造を複雑にするという問題もあった。
【0039】
本発明の支持部材は、流路の空孔率が、約1~70%、より好ましくは、約1~50%の範囲にあって、異なる空孔率の流路を二つ以上、より好ましくは、三つ以上備え、流路の最小空孔率と最大空孔率の差が、約19~69%、より好ましくは、約19~49%である流路を備えていることを特徴としている。このような構造が、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源の破損及び移動の防止に効果的であることは上述した通りであるが、このような構造は、煙の生成にも好ましい。
【0040】
エアロゾルフォーマの揮発物の冷却による煙の生成は、気相中の均質凝縮核生成と壁面状の不均質凝縮核生成の二つの生成が考えられ、壁面状の不均質凝縮核生成による一次核生成に引き続き、気相中の均質凝縮核生成である二次核生成が生じているものと考えられる。ここで、特に、二次核生成の均質凝縮核は、一次核生成の不均質凝縮核よりも小さく、二次核生成数が、一次核生成数よりも多く、芳香カートリッジが生成する煙の量及び大きさと密接に係わっていることが実験的に分かった。そして、この二次核生成数は、冷却速度が増加する程、また、蒸気の流れが乱流である程増加するので、それに伴い、核の平均粒子径が低下するため、芳香カートリッジが生成する煙の量及び大きさに大きな影響を与えることになる。
【0041】
従って、空孔率が小さい流路においては、流路表面とエアロゾルフォーマの揮発物との接触面積が相対的に大きくなり、冷却速度が増加すると共に、冷却部材の流路を流体力学に基づいた、連続の式、ベルヌーイの定理、レイノルズ数から明らかなように、流速が大きくなり乱流を形成しやすいため、平均粒子径の小さな煙が多数生成する。一方、空孔率が大きい流路においては、その逆の現象から、平均粒子径の大きな煙が生成する。このように、空孔率の異なる流路を支持部材に形成することによって、喫煙に好ましい煙が生成されるのである。そして、種々実験を行った結果、流路の最小空孔率と最大空孔率の差は、約19~69%であることが好ましく、約19~49%であることがより好ましいことが明らかとなった。
【0042】
更に、煙の生成と流路の揮発物との接触表面積も重要な要素であり、支持部材の長さ1mm当たり18~500mm2であることが好ましく、18~300mm2であることがより好ましく、18~250mm2であることがより更に好ましい。このような観点から、流路の長手方向に垂直な断面の形状は、接触表面積に限定されるもので、特に限定されるものではなく、円形状、半円形状、楕円形状、三角形状、四角形状、多角形状、及び、星型状等の様々な形状とすることができる。また、流路を形成する位置は、支持部材の外周内であっても、外周上であってもよく、支持部材の中心に対象的な位置関係にあることが好ましいが、不規則な位置関係であってもよい。ただし、空孔率を一定にした場合、単位面積当たりの外周の長さが長い程接触面積が増加すること、及び、流路の形成が容易であることから、円形状よりも、四角形状、三角形状の方がより好ましい。また、流路内面に凹凸等を形成することも望ましい。
【0043】
このように、本発明の空孔率及び接触面積を有する支持部材は、煙の発生と密接な関係にあると共に、既に述べたように、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源を受ける支持部の面積を損なわないので、本発明の支持部材を用いることによって、支持部材と冷却部材を兼ね備えた、簡単な構造の被加熱芳香カートリッジを提供することができる。
【0044】
一方、一次核生成は、蒸気の壁面との濡れ性が高い程、核生成が生じやすいことも、実験的に確認され、支持部材の材質としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、及び、エーテル基を含有する親水性ポリマーであることが好ましい。このような親水性ポリマーの代表例としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、アクリルアミド共重合体、4級アンモニウム塩型共重合体、各種ナイロン、各種ポリエーテル等をあげることができる。
【0045】
このような支持部材によれば、空孔率の異なる流路から生成する平均粒子径の異なる煙を個別に吸引されることになるが、それぞれが混合されて吸引される場合と比較したところ、例えば、支持部材の下流側の端部付近に、二つ以上の流路から流出される揮発物が混合される合流流路を形成した方が、それぞれが個別に吸引されるよりも心地よい喫煙が行えることが分かった。
【0046】
また、心地よい喫煙を楽しめる煙に占める小さな平均粒子径の煙と大きな平均粒子径の煙の割合は、平均的には、1対1であることが好ましく、空孔率の小さな流路の総空孔率と空孔率の大きな流路の総空孔率は等しいことが好ましいが、個人差があり、これらの総空孔率の異なる支持部材の被加熱芳香カートリッジを異なる製品とすることができる。
【0047】
しかし、様々な味わいの煙を楽しむため、様々な支持部材を交換できるように、被加熱芳香発生源と支持部材を配設されるマウスピースとが着脱できるように、例えば、被加熱芳香発生基材の最外装材としてコネクティング部材を用いることが好ましい。そして、このようなコネクティング部材の材質は、特に限定されるものではないが、ネジ等で嵌合され、着脱に耐えうる円筒状のプラスチックであることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、EVA系樹脂、アクリル系樹脂等の汎用樹脂が好ましく用いられるが、自然環境保護の観点から、生分解性プラスチックであることがより好ましい。
【0048】
このように、本発明の支持部材は、従来の支持部材及び冷却部材以上の機能を有すると共に、被加熱芳香カートリッジの構造を簡略化でき、扱いやすく、喫煙を楽しめる被加熱芳香カートリッジを提供することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の支持部材は、被加熱芳香発生基材及び前記被加熱芳香発生源の破損や移動等を防止する支持部と、揮発物が通過する空孔率の異なる少なくとも二つ以上の流路を備えているので、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源が破損及び移動することなく受け止める面積を有する支持部が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】従来技術に係る、中空の気体流路を有する支持部材が配設されている被加熱芳香カートリッジを加熱式芳香具に装着し喫煙時の状態を示す、被加熱芳香カートリッジの中心を通り、XY面で切断した断面模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、空孔率の異なる二つの円柱状気体流路と被加熱芳香源支持部を備える第一支持部材の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、
図2に示す第一支持部材が配設されている被加熱芳香カートリッジを加熱式芳香具に装着し喫煙時の状態を示す、被加熱芳香カートリッジの中心を通り、XY面で切断した断面模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、空孔率の異なる二つの三角柱状気体流路と被加熱芳香源支持部を備える第二支持部材の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、空孔率の異なる二つの四角柱状気体流路と被加熱芳香源支持部を備える第三支持部材の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る、空孔率の異なる三つの円柱状気体流路と被加熱芳香源支持部を備える第四支持部材の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、空孔率の異なる二つの円柱気体流路、被加熱芳香源支持部、及び、二つの円柱状気体流路の円柱状合流流路を備える、第五支持部材の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、(a)被加熱芳香発生源を備えた被加熱芳香発生源コネクティング部材、(b)マウスピースコネクティング部材、及び、(c)これらが嵌合された被加熱芳香カートリッジコネクティング部材の斜視模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る、
図2に示す第一支持部材とフィルターが配設されたマウスピースコネクティング部材と被加熱芳香発生源が配設された被加熱芳香発生源コネクティング部材とが着脱可能に嵌合された被加熱芳香カートリッジのXY面で切断した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施形態を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0052】
本発明の実施例で使用した被加熱芳香発生基材及びその集合体である被加熱芳香発生源は、次のように製造したものを用いた。芳香成分を揮発する植物として、サフランの花、コンニャク、ペパーミントの葉及びアンズの果実の乾燥粉砕物を用い、所定量の純水/エタノールに溶解・混合した架橋PVP、β-シクロデキストリン、微結晶セルロース、及び、CMC-Naと混合した後、グリセリン、及び、プロピレングリコールと混合し、更に、コンニャク紛を分散したソルビン酸カリウム/安息香酸ナトリウム水溶液を添加して被加熱芳香発生基材組成物を製造した。
サフランの花 87質量部
アンズの果実 6質量部
ペパーミントの葉 6質量部
コンニャク 1質量部
グリセリン 24質量部
プロピレングリコール 24質量部
架橋PVP 16質量部
β-シクロデキストリン 1質量部
微結晶セルロース 16質量部
CMC-Na 3質量部
ソルビン酸カリウム 0.005質量部
安息香酸ナトリウム 0.005質量部
【0053】
この組成物は、3本ロールを用い、シートの厚さが、0.28±0.02mmとなるように成形された。そして、このように成形されたシートは、幅1.5±0.1mmとなるように細断された被加熱芳香発生基材310とし、所定量の充填率となるように被加熱芳香発生基材ラッピング部材320で巻装された。次いで、この巻装された被加熱芳香発生基材310は、長さ11.5~12.0mmとなるように断裁された後、水分量が18~20質量%となるまで乾燥され、被加熱芳香発生源300が製造された。
【0054】
一方、本発明の被加熱芳香カートリッジを構成するマウスピース400は、
図3に示すように、上流側から支持部材510とセルロースアセテート繊維の束から形成されたフィルター700がこの順で連接され、マウスピースラッピング部材410で巻装され製造された。
【0055】
そして、このようにして製造された被加熱芳香発生源300とマウスピース400は、
図3に示すように、被加熱芳香カートリッジラッピング部材410でマウスピース400と連接され、被加熱芳香カートリッジ200が製造された。
【0056】
このようにして製造された種々の支持部材を配設した被加熱芳香カートリッジ200は、
図1及び3に示すように、ブレード型熱源130が本体110のチャンバー120の底に備えられた加熱式芳香具であるアイコス(登録商標)100を用いて評価した。
【0057】
本発明の支持部材及びそれを用いた被加熱芳香カートリッジ200を、従来の技術と比較するため、
図1には、被加熱芳香発生源300を、中空円筒状の支持部材500、空孔率が70%以上有する連続気泡の多孔質体で形成される冷却部材600、及び、セルロースアセテート繊維の束から形成されたフィルター700が、この順に連接された従来技術のマウスピース400Rと連接された従来技術の被加熱芳香カートリッジ200Rが、加熱式芳香具100に装着された状態を示している。
【0058】
図1は、被加熱芳香カートリッジ200Rの中心を通るXY面で切断した断面図であるが、図から第一に分かるのは、支持部材500の支持部502の長手方向に垂直なYZ面で切断した断面面積が円周部だけしかなく、被加熱芳香カートリッジ200Rを加熱式芳香具100に装着する際、及び、喫煙時に吸引する際、被加熱芳香発生基材310及び被加熱芳香発生源300が受ける応力が大きく、破損及び移動という問題が発生することである。第二に、被加熱芳香発生基材310が加熱されて生成する揮発物が、支持部材500の流路501を通過するが、流路501の内壁面積が小さく、揮発物が冷却され凝縮した煙の生成量は極めて少ないため、冷却部材600が必要となり、被加熱芳香カートリッジ200Rの構造が複雑になることである。
【0059】
本発明の支持部材は、約1~70%の空孔率の範囲にあり、空孔率の差が約19%~69%の異なる少なくとも二つ以上の流路を備えることによって、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源を受け止める面積が大きな支持部512~552が形成されると共に、支持部材510~550の流路5111~5512から平均粒子径の異なる煙が十分に生成し、上記した従来の被加熱芳香カートリッジ200Rの支持部材500及び冷却部材600の問題を解決することができた。
【0060】
図2は、本発明の一実施形態に係る、空孔率が約6%の円柱状気体流路5111と空孔率が約25%の円柱状気体流路5112と、被加熱芳香源支持部512を備える第一支持部材510の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【0061】
図3は、本発明の一実施形態に係る、
図2に示す第一支持部材510が配設されている被加熱芳香カートリッジ200を加熱式芳香具100に装着し喫煙時の状態を示す、被加熱芳香カートリッジの中心を通り、XY面で切断した断面模式図である。
【0062】
このような支持部材510を用いることによって、図から明らかなように、被加熱芳香源支持部512の断面積が確保され、特に、被加熱芳香カートリッジ200を加熱式芳香具100に装着する際の被加熱芳香発生基材310及び被加熱芳香発生源300の破損及び移動を確実に防止することができる。また、空孔率の小さな流路は、流速が大きいため乱流になるので、二次核生成による平均粒子径の小さな煙が大量に生成するのに対し、空孔率の大きな流路からは、平均粒子径の大きな煙が少量生成する。このように、空孔率の異なる二つの流路からは、異なる平均粒子径及び量の煙が生成することによって、心地よい喫煙を楽しめることが分かった。
【0063】
図4は、本発明の一実施形態に係る、空孔率が約6%の三角柱状気体流路5211と空孔率が約25%の三角柱状気体流路5212と、被加熱芳香源支持部522を備える第二支持部材520の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【0064】
図5は、本発明の一実施形態に係る、空孔率が約6%の四角柱状気体流路5311と空孔率が約25%の四角柱状気体流路5312と、被加熱芳香源支持部532を備える第三支持部材530の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【0065】
このように、空孔率は全く同じであるが、流路の断面形状が異なることによって、被加熱芳香発生基材310及び300の破損及び移動を防止する効果に変化はないが、断面形状が異なることによって、流路の外周が、円、四角、三角の順に長くなるため、この順で流路の内壁の揮発物との接触面積が大きくなる。それに伴って、冷却速度が大きくなり、特に、二次核生成速度が大きくなり、平均粒子径が小さな煙が大量に生成することになり、喫煙時の吸引する煙の感覚及び味わいに変化が生じる。この感覚及び味わいは、個人差があるため、製品のバリエーションを高める手段として有効である。
【0066】
図6は、本発明の一実施形態に係る、空孔率が約3%の円柱状気体流路5411、空孔率が約9%の円柱状気体流路5412、及び、空孔率が約18%の円柱状気体流路5413と、被加熱芳香源支持部542を備える第四支持部材540の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【0067】
この三つの異なる空孔率の総空孔率は約30%で、第一支持部材510、第二支持部材520、及び、第三支持部材530の総空孔率31%と大差ないが、揮発物との接触表面積が増加するため、全ての煙の生成量が多くなると共に、全ての煙の平均粒子径分布は更に広がり、喫煙の感覚及び味わいに変化がもたらされ、製品のバリエーションを高めることができる。
【0068】
図7は、本発明の一実施形態に係る、空孔率が約6%の円柱状気体流路5511及び空孔率が約25%の円柱状気体流路5512、被加熱芳香源支持部552、並びに、これら空孔率が異なる二つの円柱状気体流路の円柱状合流流路553を備える、第五支持部材550の、(a)斜視模式図、(b)XY面で切断した断面模式図、(c)X軸左方向から見た側面図、(d)X軸右方向から見た側面図である。
【0069】
このような合流流路553は、支持部材の下流端に形成されるため、被加熱芳香発生基材310及び被加熱芳香発生源300の破損及び移動の防止、並びに、流路からの煙の生成に大きな変化をもたらすことはないが、平均粒子径の異なる煙が混合されて口腔内に吸引されるため、合流流路553のない場合とは異なった煙の感覚及び味わいとなることが分かった。
【0070】
以上のように、本発明の支持部材は、被加熱芳香カートリッジの装着時及び喫煙時の被加熱芳香発生基材310及び300の破損及び移動を防止できるだけでなく、空孔率の大きさ、流路の形状、流路の数、合流流路の形成等を制御することによって、同じ被加熱芳香発生基材から生成するエアロゾルフォーマ揮発物の冷却、凝縮により生成する煙の平均粒子径や量が異なり、異なった喫煙の感覚及び味わいを堪能することができる。
【0071】
そこで、このような本発明の支持部材の特徴を積極的に活用するため、
図8に示すような着脱可能な被加熱芳香カートリッジコネクティング部材220を使用することによって、同一の被加熱芳香発生基材の被加熱芳香カートリッジを様々な感覚及び味わいで喫煙を堪能することができる。
【0072】
図8は、本発明の一実施形態に係る、(a)被加熱芳香発生源を備えた被加熱芳香発生源コネクティング部材221、(b)マウスピースコネクティング部材222、及び、(c)これらが雌ねじ2211と雄ねじ2221とで嵌合された着脱可能な被加熱芳香カートリッジコネクティング部材220の斜視模式図である。そして、
図9は、本発明の一実施形態に係る、
図2に示す第一支持部材510とフィルター700が配設されたマウスピースコネクティング部材222と被加熱芳香発生源300が配設された被加熱芳香発生源コネクティング部材221とが着脱可能に嵌合された被加熱芳香カートリッジのXY面で切断した断面模式図である。
【0073】
このような被加熱芳香カートリッジコネクティング部材220を使用すると、種々の支持部材が配設されたマウスピースコネクティング部材222を準備すれば、一種類の被加熱芳香発生基材の集合体である被加熱芳香発生源330を配設した被加熱芳香発生源コネクティング部材で、何種類もの被加熱芳香カートリッジを楽しむことができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の支持部材を用いた被加熱芳香発生カートリッジは、熱力学的及び流体力学的現象の結果、空孔率の小さな流路からは、平均粒子径の小さな煙が多量に生成し、空孔率の大きな流路からは、平均粒子径の大きな煙を生成することが可能となるため、心地よい喫煙を楽しむことができる。このことを利用すれば、空孔率、流路の断面形状及び断面面積、流路の数等の異なる本発明の多種多様な支持部材を用意すれば、一種類の被加熱芳香発生源で多種多様な煙の感覚及び味わいを堪能することができる。更に、本発明の支持部材は、支持部材と冷却部材の機能を兼ね備え、構造が簡単な被加熱芳香発生カートリッジとすることができる。
【0075】
本発明のエアロゾル生成メカニズムの基礎となる熱力学的核生成現象及び流体力学的流れの諸現象を用いた、揮発したエアロゾルフォーマからのエアロゾル(煙)の生成技術は、被加熱芳香カートリッジを用いた加熱式喫煙ばかりでなく、煙や蒸気等の流体を扱う線香、焼香、抹香、塗香等や、アロマセラピー等に応用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0076】
100 加熱式芳香具
110 ボディ
120 チャンバー
130 ブレード型熱源
200R 従来技術の被加熱芳香カートリッジ
200 被加熱芳香カートリッジ
210 被加熱芳香カートリッジラッピング部材
220 被加熱芳香カートリッジコネクティング部材
221 被加熱芳香発生源コネクティング部材
2211 被加熱芳香発生源コネクティング部材雌ネジ部
222 マウスピースコネクティング部材
2221 マウスピースコネクティング部材雄ネジ部
223 被加熱芳香カートリッジコネクティング部
300 被加熱芳香発生源
310 被加熱芳香発生基材
320 被加熱芳香発生基材ラッピング部材
400R 従来技術のマウスピース
400 マウスピース
410 マウスピースラッピング部材
500 従来技術の支持部材
501 従来技術の支持部材の気体流路
502 従来技術の支持部材の被加熱芳香発生源支持部
510 本発明の第一支持部材
5111 本発明の第一支持部材の第一気体流路
5112 本発明の第一支持部材の第二気体流路
512 本発明の第一支持部材の被加熱芳香発生源支持部
520 本発明の第二支持部材
5211 本発明の第二支持部材の第一気体流路
5212 本発明の第二支持部材の第二気体流路
522 本発明の第二支持部材の被加熱芳香発生源支持部
530 本発明の第三支持部材
5311 本発明の第三支持部材の第一気体流路
5312 本発明の第三支持部材の第二気体流路
532 本発明の第三支持部材の被加熱芳香発生源支持部
540 本発明の第四支持部材
5411 本発明の第四支持部材の第一気体流路
5412 本発明の第四支持部材の第二気体流路
5413 本発明の第四支持部材の第三気体流路
542 本発明の第四支持部材の被加熱芳香発生源支持部
550 本発明の第五支持部材
5511 本発明の第五支持部材の第一気体流路
5512 本発明の第五支持部材の第二気体流路
552 本発明の第五支持部材の被加熱芳香発生源支持部
553 本発明の第五支持部材の合流流路
600 冷却部材
700 フィルター部材
X軸 被加熱芳香カートリッジの長手方向
Y軸 X軸に垂直で鉛直方向
Z軸 XY平面の垂直方向