(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】イオナイザーおよび除電システム
(51)【国際特許分類】
H05F 3/06 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H05F3/06
(21)【出願番号】P 2020066651
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236160
【氏名又は名称】株式会社テクノ菱和
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政典
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 信雄
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084746(JP,A)
【文献】特開2003-112085(JP,A)
【文献】特表2010-527023(JP,A)
【文献】特開2004-253192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内にイオン搬送ガスを供給するエア供給路と、
前記チャンバの内部に水の微粒子を生成するように配置された超音波式霧化装置と、
前記チャンバの内部に軟X線を照射するように配置された軟X線発生装置と、
前記チャンバ内にて生成されたイオン化気流を搬送する搬送路と、を有
し、
前記超音波式霧化装置が超音波アトマイザであり、
前記超音波アトマイザは、ノズルヘッドが前記チャンバの内部に突出するように設けられ、
前記ノズルヘッドの周囲には保護円筒が設けられ、
前記保護円筒は、前記ノズルヘッドの端部が、前記保護円筒内部に位置するように形成されるイオナイザー。
【請求項2】
チャンバと、
前記チャンバ内にイオン搬送ガスを供給するエア供給路と、
前記チャンバの内部に水の微粒子を生成するように配置された超音波式霧化装置と、
前記チャンバの内部に軟X線を照射するように配置された軟X線発生装置と、
前記チャンバ内にて生成されたイオン化気流を搬送する搬送路と、を有
し、
前記超音波式霧化装置が底部に超音波振動子が取り付けられた容器であり、
前記超音波振動子はセラミックス製の振動板、または、有機物または無機物でコーティングされた金属製の振動板、であり、
前記容器の内面が樹脂であるイオナイザー。
【請求項3】
前記超音波式霧化装置と、前記軟X線発生装置とが、前記チャンバの対向する2つの側面に配置され、
前記超音波式霧化装置が生成した水の微粒子に対して、軟X線が直接照射される請求項1
又は2記載のイオナイザー。
【請求項4】
前記チャンバは、
微粒子発生チャンバと、
前記微粒子発生チャンバの下流側に接続された軟X線照射チャンバと、を含み、
前記微粒子発生チャンバには、前記エア供給路と前記超音波式霧化装置が設けられ、
前記軟X線照射チャンバには、前記軟X線発生装置と前記搬送路が設けられている請求項1
又は2記載のイオナイザー。
【請求項5】
前記搬送路には、前記搬送路を流れる前記イオン化気流に含まれる水の微粒子の粒径を計測するパーティクルカウンターが設けられている請求項1~
4いずれか一項記載のイオナイザー。
【請求項6】
前記チャンバは、開口を有し、
前記開口には、前記軟X線を透過させる照射窓が設けられ、
前記軟X線発生装置は、前記照射窓を介して、前記チャンバの内部に前記軟X線を照射するように構成されている請求項1~
5いずれか一項記載のイオナイザー。
【請求項7】
前記保護円筒は、前記ノズルヘッドの端部から前記保護円筒の端部までの距離をLとし、前記保護円筒の内径をdとした場合、L≧dとなるように構成される請求項
1記載のイオナイザー。
【請求項8】
前記チャンバの底部に貯まった水が排出される開口が、前記チャンバの下面に設けられている請求項
1又は7記載のイオナイザー。
【請求項9】
イオナイザーと、前記イオナイザーに接続された制御装置と、を有する除電システムで
あって、
前記イオナイザーは、
チャンバと、
前記チャンバ内にイオン搬送ガスを供給するエア供給路と、
前記チャンバの内部に水の微粒子を生成するように配置された超音波式霧化装置と、
前記チャンバの内部に軟X線を照射するように配置された軟X線発生装置と、
前記チャンバ内にて生成されたイオン化気流を搬送する搬送路と、を有し、
前記搬送路には、前記搬送路を流れる前記イオン化気流に含まれる水の微粒子の粒径を計測するパーティクルカウンターが設けられ、
前記制御装置は、
前記パーティクルカウンターが計測した水の微粒子の粒径に基づいて、前記超音波式霧化装置の発振器の周波数を制御する除電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン化された気体を搬送して除電対象となる帯電体を除電するイオナイザーおよび除電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体や薄型表示パネル(FPD)などの生産環境では帯電体となる製品から静電気を除去することが重要である。このため、除電装置としてイオナイザーが広く使用されている。例えば、コロナ放電式のイオナイザーは、電極に高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、電極付近の空気をイオン化させるものであり、このイオンを除電対象となる帯電体に送って、帯電体上の電荷を逆極性のイオンで中和するようになっている。
【0003】
また、静電気除電は、半導体洗浄装置等の狭所において行われることも多い。このような場合には、半導体洗浄装置等の外部に、イオン発生チャンバを設け、チャンバ内で発生させた正負イオンを、細い搬送チューブを用いて半導体洗浄装置内部の除電対象箇所に供給するイオン搬送式のイオナイザーを用いる。イオン搬送式イオナイザーでは、例えば、エアと純水を用いて微細ミストを発生させ、このミストに対して正負イオンを付着させ粗大荷電粒子を生成する方式を用いるものがある。このようなイオン搬送式のイオナイザーにおいても、コロナ放電は適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このコロナ放電を用いたイオナイザーでは、空気中の酸素がオゾンとなる反応が起き、帯電体表面を酸化させたり空気中の微量の不純物と反応して2次粒子が発生する可能性がある。また、放電電極自体の摩耗あるいは不純物の析出により放電電極から発塵が起きる、といった問題点が指摘されている。
【0006】
コロナ放電を用いた従来のイオン搬送式イオナイザーでは、エア搬送中に正負イオンの再結合が生じ、イオン量が著しく減少してしまう。また、静電拡散により、搬送チューブの内壁にイオンが付着することも考えられる。他にも微細ミストの発生には多量のエアが用いられることもあり、従来のイオン搬送式イオナイザーを用いて、半導体洗浄装置等の内部の除電対象箇所に対して、イオンを細い搬送チューブで搬送して供給することは困難であった。
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。その目的は、イオン搬送を用いた場合であっても除電性能を向上することができるイオナイザーおよび除電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のイオナイザーは、以下の特徴を有する。
(1)チャンバと、前記チャンバ内にイオン搬送ガスを供給するエア供給路と、前記チャンバの内部に水の微粒子を生成するように配置された超音波式霧化装置と、前記チャンバの内部に軟X線を照射するように配置された軟X線発生装置と、前記チャンバ内にて生成されたイオン化気流を搬送する搬送路と、を有し、前記超音波式霧化装置が超音波アトマイザであり、前記超音波アトマイザは、ノズルヘッドが前記チャンバの内部に突出するように設けられ、前記ノズルヘッドの周囲には保護円筒が設けられ、前記保護円筒は、前記ノズルヘッドの端部が、前記保護円筒内部に位置するように形成される。
(2)チャンバと、前記チャンバ内にイオン搬送ガスを供給するエア供給路と、前記チャンバの内部に水の微粒子を生成するように配置された超音波式霧化装置と、前記チャンバの内部に軟X線を照射するように配置された軟X線発生装置と、前記チャンバ内にて生成されたイオン化気流を搬送する搬送路と、を有し、前記超音波式霧化装置が底部に超音波振動子が取り付けられた容器であり、前記超音波振動子はセラミックス製の振動板、または、有機物または無機物でコーティングされた金属製の振動板、であり、前記容器の内面が樹脂である。
【0009】
(3)前記超音波式霧化装置と、前記軟X線発生装置とが、前記チャンバの対向する2つの側面に配置され、前記超音波式霧化装置が生成した水の微粒子に対して、軟X線が直接照射されていても良い。
【0010】
(4)前記チャンバは、微粒子発生チャンバと、前記微粒子発生チャンバの下流側に接続された軟X線照射チャンバと、を含み、前記微粒子発生チャンバには、前記エア供給路と前記超音波式霧化装置が設けられ、前記軟X線照射チャンバには、前記軟X線発生装置と前記搬送路が設けられていても良い。
【0011】
(5)前記搬送路には、前記搬送路を流れる前記イオン化気流に含まれる水の微粒子の粒径を計測するパーティクルカウンターが設けられていても良い。
【0012】
(6)前記チャンバは、開口を有し、前記開口には、前記軟X線を透過させる照射窓が設けられ、前記軟X線発生装置は、前記照射窓を介して、前記チャンバの内部に前記軟X線を照射するように構成されていても良い。
【0014】
(7)前記保護円筒は、前記ノズルヘッドの端部から前記保護円筒の端部までの距離をLとし、前記保護円筒の内径をdとした場合、L≧dとなるように構成されていても良い。
【0015】
(8)前記チャンバの底部に貯まった水が排出される開口が、前記チャンバの下面に設けられていても良い。
【0017】
なお、上記の各形態は、除電システムの発明としても捉えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、イオン搬送を用いた場合であっても除電性能を向上させることができるイオナイザーおよび除電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態にかかるイオナイザーの一例を示す構成図である。
【
図2】超音波アトマイザの保護円筒の構成を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態にかかるイオナイザーの変形例を示す構成図である。
【
図4】第2の実施形態にかかるイオナイザーの一例を示す構成図である。
【
図5】第2の実施形態にかかるイオナイザーの変形例を示す構成図である。
【
図6】除電性能確認実験に用いた実験装置の概要を示す構成図である。
【
図7】照射窓保護カバーの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
[構成]
本発明に係るイオナイザーAの実施形態について図面を参照しつつ説明する。イオナイザーAは、イオン化気流をワーク等の除電対象となる帯電体Eに対して供給し、帯電体Eを除電する装置である。以下の説明は、イオナイザーAの構成と、制御装置とを有する除電システムの説明として捉えることもできる。
【0021】
制御装置は、後述の通り、イオナイザーAの各構成要素に接続されている。制御装置は、CPUやメモリを含み所定のプログラムで動作するコンピューターや専用の電子回路で構成される。制御装置は、入力部および出力部を有してよく、オペレータは入力部を介して設定値の入力や変更を行うことが可能である。また、出力部は、設定値等をオペレータに確認または選択させる画面を表示しても良い。
【0022】
図1に示す通り、イオナイザーAは、エア供給路10、チャンバ20、超音波アトマイザ30、軟X線発生装置40、搬送路50を有する。以下の説明では、気体が供給される側を上流側、気体が排出される側を下流側と表現する場合がある。また、イオン化気流とは、イオン化された気体と正負イオンにより荷電された微細ミスト(荷電粒子)を含む気体のことである。
【0023】
(エア供給路)
エア供給路10は、チャンバ20に対して気体を供給する気体供給管である。エア供給路10は、具体的にはパイプであっても良く、またチューブであることもできる。チャンバ20に対して供給される気体としては、空気、高純度N2ガス等の非反応性ガスがある。以下、チャンバ20に対して供給される気体を、イオン搬送ガスと表現する。
【0024】
エア供給路10には、上流側から、エアポンプ11、流量調整バルブ12、流量計13、およびフィルタ14が設けられている。そして、エア供給路10の最下流端は、チャンバ20のエア供給口21に接続されている。エアポンプ11は、イオン搬送ガスを下流側に排出してチャンバ20にイオン搬送ガスを供給するためのポンプである。エアポンプ11の代わりに、コンプレッサを用いても良い。流量調整バルブ12は、エアポンプ11によるイオン搬送化ガスの供給量を調整するための弁である。エアポンプ11と流量調整バルブ12は、不図示の制御装置に接続されており、この制御装置からの制御信号により、エアポンプ11の流量や流量調整バルブ12の開度が制御される。イオン搬送ガスの流量は、搬送路50の直径により異なるが、例えば搬送路50の内径を10mmとした場合には、60~80L/minとすると、帯電体Eを除電するために最適な荷電粒子量を搬送できると考えらえる。
【0025】
流量計13は、エア供給路10を流れるイオン搬送ガスの流量を測定する計測器である。流量計13も、不図示の制御装置に接続されてよく、この制御装置が流量計13の値を参照し、エアポンプ11の流量および流量調整バルブ12の開度を制御する構成とすることができる。エア供給路10を流れるイオン搬送ガスの流速は、チャンバ20内を流れるイオン搬送ガスの流速が5m/sec以下となるように調整することが好ましい。この流速とすることで、チャンバ20から排出されるイオン化気流を、数m先まで搬送することが可能となる。フィルタ14は、チャンバ20に供給される直前の気体から塵埃などを取り除き、イオン搬送ガスを清浄ガスとする気体濾過器である。
【0026】
(チャンバ)
チャンバ20は、荷電粒子の発生を行う立方体の室である。チャンバ20の形状は立方体に限定されず、筒状等、他の形状とすることができる。チャンバ20の一側面にはエア供給口21が設けられ、エア供給口21にエア供給路10が接続され、イオン搬送ガスがチャンバ20内に供給される。また、チャンバ20の他側面には、エア搬送口22が設けられている。
【0027】
そして、チャンバ20の下面には、開口23が設けられている。この開口23を介して、チャンバ20の下面には超音波アトマイザ30が設けられている。なお、開口23とは別に、チャンバ20の下面に排水用の開口を設け、チャンバ20の底部に貯まった水を排出する構成としても良い。また、チャンバ20の上面には、開口24が設けられている。この開口24を介して、チャンバ20の上面には軟X線発生装置40が設けられている。なお、開口24には、軟X線を透過させる照射窓24aが設けられている。軟X線を透過させる照射窓24aとしては、ベリリウム板やカプトン(ポリイミド)板がある。
【0028】
(超音波アトマイザ)
超音波アトマイザ30は、超音波式霧化装置であって、超音波により液体表面を振動させ、水の微粒子を発生させる噴霧装置である。本実施形態における微粒子とは、イオン搬送ガスが帯電体Eまでイオンにより荷電された水の微粒子を搬送する際に、途中で気化せず、また、落下もしない程度の粒径を有する粒子を意味する。例えば、搬送路50の長さを約3mとした場合には、0.01μmオーダーの微粒子は気化し、5μmを超える微粒子は落下すると考えられる。なお、
図1の例では、1つの超音波アトマイザ30が設けられているが、チャンバ20内に生成される水の微粒子の量を増大させるために、複数の超音波アトマイザ30を設ける構成としても良い。
【0029】
超音波アトマイザ30は、チャンバ20の下面に設けられた開口23から、チャンバ20の内部に超音波アトマイザ30のノズルヘッド部分が突出するように設けられている。この超音波アトマイザ30には、発振器31および純水供給路32が接続されている。発振器31は、超音波アトマイザ30が有する振動子を振動させるように所定の周波数にて振動を発する装置である。発振器31は、不図示の制御装置に接続され、この制御装置により周波数等が制御される。発振器31の周波数は、数100kHz~数MHzの間で条件に併せて設定すればよい。
【0030】
純水供給路32は、超音波アトマイザ30に対して純水を供給する液体供給管である。純水供給路32には、純水タンク33が接続されている。純水タンク33の代わりに、純水供給路32に純水生成装置を接続する構成としても良い。そして、純水供給路32には、ポンプ34および流量調整バルブ35が設けられている。本実施形態では純水が超音波アトマイザ30に供給される構成を一例として示すが、超音波アトマイザ30に供給される液体は、導電率が30~50μS/cm以下の水であればよい。
【0031】
ポンプ34は、純水を純水供給路32側に排出して超音波アトマイザ30に純水を供給するためのポンプである。流量調整バルブ35は、ポンプ34による純水の供給量を調整するための弁である。ポンプ34と流量調整バルブ35は、不図示の制御装置に接続されており、この制御装置からの制御信号により、ポンプ34の流量や流量調整バルブ35の開度が制御される。ポンプ34の流量は、30~100mL/hrとすると良い。以上の構成により、超音波アトマイザ30は、純水の微粒子をチャンバ20内に発生させる。
【0032】
本実施形態の超音波アトマイザ30のノズルヘッドの構成を、
図2を参照してさらに説明する。超音波アトマイザ30は、ノズルヘッドの周囲に保護円筒30aを有する。保護円筒30aは、超音波アトマイザ30の一部としてノズルヘッドに接続されていても良い。または、保護円筒30aは、チャンバ20の下面において、超音波アトマイザ30のノズルヘッドが突出する開口23の近傍に、チャンバ20から立ち上がるように構成されていても良い。
【0033】
保護円筒30aは、超音波アトマイザ30のノズルヘッドの端部が、保護円筒30a内部に位置するように形成される。具体的には、ノズルヘッドの開口23から突出している部分の高さよりも、保護円筒30aの高さが高くなるように構成されている。すなわち、超音波アトマイザ30のノズルヘッドは、保護円筒30aから突出しない。
【0034】
イオン搬送ガスの流速がおよそ5m/sec以上となるような高速気流中では、超音波アトマイザ30で霧化を行うことが困難となる。したがって、超音波アトマイザ30のノズルヘッドの端部が、保護円筒30a内部に位置するように配置することで、超音波アトマイザ30のノズルヘッドに高速気流が到達し霧化を阻害することが防止される。
【0035】
さらに、保護円筒30aは、超音波アトマイザ30のノズルヘッドの端部から保護円筒30aの端部までの距離をLとし、保護円筒30aの内径をdとした場合、L≧dとなるように構成されていることが好ましい。ただし、装置の構成により±1mm程度の誤差を含むと考えられる。すなわち、例えば、保護円筒30aの内径dが13.5mmである場合に、距離Lが13mmであった場合にも、L≧dと同様の効果が得られる。誤差内であればL≦dとなるように構成した場合であっても、保護円筒30a内に高速気流が流れ込んだとしても、超音波アトマイザ30のノズルヘッドに届くことを防止する。
【0036】
また、超音波アトマイザ30のノズルの接液部を、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、PEEK等の樹脂でコーティングしても良い。超音波アトマイザ30のノズルはステンレス等の金属で形成されている。そのため、純水に金属イオンが溶出し、金属汚染を引き起こす可能性がある。超音波アトマイザ30のノズル接液部を樹脂でコーティングすることにより、金属汚染が防止される。
【0037】
(軟X線発生装置)
軟X線発生装置40は、超音波アトマイザ30により生成された純水の微粒子の近傍に軟X線を照射して軟X線で発生した正負イオンを付着させ、純水の微粒子を粗大荷電粒子化するイオン化装置である。軟X線とは、3~9.5keV程度のエネルギーを有し、厚さ2mm程度の塩化ビニル板で容易に遮蔽できる程度の微弱なX線である。軟X線発生装置40は、チャンバ20の上面に設けられた開口24の上方に、チャンバ20の外部に突出するように配置されている。
【0038】
軟X線発生装置40は、開口24に設けられた照射窓24aを介して、軟X線をチャンバ20内に照射するように構成される。本実施形態では、超音波アトマイザ30と軟X線発生装置40が対向するように配置され、超音波アトマイザ30が生成した純水の微粒子に対して、軟X線が直接照射されるように構成されている。直接照射される、とは、生成直後の純水の微粒子の近傍のイオン搬送ガスに軟X線が照射され、瞬時に正負イオンが純水の微粒子に付着し、粗大荷電粒子が生成されることを意味する。軟X線により生成された正負イオンが付着して純水の微粒子は粗大荷電粒子化し、イオン化されたイオン搬送ガスにより搬送される粗大荷電粒子を含むイオン化気流となる。
【0039】
(搬送路)
搬送路50は、チャンバ20にて生成された粗大荷電粒子を含むイオン化気流を、帯電体Eに供給する気体搬送路である。搬送路50は、具体的にはチューブ状の搬送路であり、例えば、樹脂製のチューブを用いて良い。搬送路50の一端はチャンバ20の搬送口22が接続され、イオン化気流を搬送路50の他端側に位置する帯電体Eに供給する。搬送路50には、パーティクルカウンター51が設けられている。
【0040】
パーティクルカウンター51は、搬送路50を流れるイオン化気流に含まれる純水の微粒子の粒径を計測する光学式の計測器である。パーティクルカウンター51も、不図示の制御装置に接続されてよく、この制御装置がパーティクルカウンター51の値を参照し、超音波アトマイザ30の発振器31の周波数を制御する構成とすることができる。超音波アトマイザ30が生成する水の微粒子の粒径は、発振器31の周波数に依存する。そのため、粒径を検出してフィードバックし、発振器31の周波数を変更することで、所望の粒径の水の微粒子が得られる。
【0041】
[第1の実施形態の変形例]
上記第1の実施形態では、超音波アトマイザ30を用いて、チャンバ20内に水の微粒子を噴霧する構成とした。ただし、超音波式霧化装置としては、
図3に示す通り、チャンバ20の下面に設けられた容器60を用いることもできる。容器60は、有底の円筒形の金属または樹脂から形成された容器であり、その底部に超音波振動子61が取り付けられている。
【0042】
容器60の内周面は、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、シリコーン、ポリイミド、PEEK等により樹脂コーティングされている。樹脂コーティングの厚みは50~300μmとするとよい。なお、容器60を樹脂で形成した場合には、樹脂コーティングを施さなくともよい。すなわち、樹脂コーティングの有無を問わず、容器60の内面が樹脂であれば良い。また、容器60の開口部は、チャンバ20の下面に接続されている。
【0043】
また、超音波振動子61は、セラミックス製の振動板である。なお、超音波振動子61としては、金属板の超音波振動子を無機物または有機物でコーティングしたものを用いても良い。コーティング材は、水と反応しにくく、絶縁性を有する材料が好ましい。例えば、コーティングに用いる無機物としては、アルミナ、AlN、Si3N4、Y2O3、Zr2O3、MgO・SiO2、3Al2O3・2SiO2、2MgO・2Al2O3・5SiO2、ダイヤモンドライクカーボンなどが挙げられる。また、コーティングに用いる有機物としては、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、シリコーン、ポリイミド、PEEK等が挙げられる。なお、コーティングした超音波振動子61の表面を、必要に応じて研磨して用いても良い。
【0044】
超音波振動子61には、発振器62および純水供給路63が接続されている。発振器62は、超音波振動子61を振動させるように所定の周波数にて振動を発する装置である。発振器62は、不図示の制御装置に接続され、この制御装置により周波数等が制御される。発振器31の周波数は、数100kHz~数MHzの間で条件に併せて設定すればよい。なお、チャンバ20内に生成される水の微粒子の量を増大させるために、複数の超音波振動子を容器60内に設けても良い。
【0045】
純水供給路63は、容器60に対して純水を供給する液体供給管である。純水供給路63には、不図示の純水タンクまたは純水生成装置を接続されている。純水供給路63には、ポンプ64および流量調整バルブ65が設けられている。ポンプ64および流量調整バルブ65は、上記実施形態のポンプ34および流量調整バルブ35と同様の構成を有している。本実施形態では純水が容器60に供給される構成を一例として示すが、容器60に供給される液体は、導電率が30~50μS/cm以下の水であればよい。
【0046】
第1の実施形態の変形例においては、容器60内に供給された水に、超音波振動子により振動を与えることで、指向性を持った音の放射圧により液柱が立ち上る。その液柱表面に表面波(キャピラリー波)が発生し、それによる水の衝突・引きちぎり合う力が水の表面張力に打ち勝って水が微粒化される。そして、容器60と対向するように配置された軟X線発生装置により、容器60から生成された純水の微粒子に対して、軟X線が直接照射されるように構成される。直接照射される、とは、生成直後の純水の微粒子の近傍のイオン搬送ガスに対して軟X線が照射され、瞬時に正負イオンが純水の微粒子に付着し、粗大荷電粒子が生成されることを意味する。
【0047】
[作用効果]
以上のような本実施形態のイオナイザーAの作用効果は、以下の通りである。
(1)チャンバ20と、チャンバ20内にイオン搬送ガスを供給するエア供給路10と、チャンバ20の内部に水の微粒子を生成するように配置された超音波式霧化装置と、チャンバ20の内部に軟X線を照射するように配置された軟X線発生装置40と、チャンバ20内にて生成されたイオン化気流を搬送する搬送路50と、を有する。
【0048】
上述の通り、コロナ放電を用いた従来のイオナイザーでは、オゾンの発生や、不純物の析出等の問題があった。しかし、本実施形態のイオナイザーAでは、軟X線を照射する軟X線発生装置40が設けられている。そのため、オゾンが発生することがなく、また、発塵も生じない。
【0049】
軟X線は、単位面積当たりのイオン濃度が非常に高い。そのため、超音波式霧化装置で生成した水の微粒子を、効率的に荷電することが可能である。また、水の微粒子に軟X線で生成した正負イオンを付着させ粗大化することにより、イオンの移動速度が低下する。そのため、正負の荷電粒子の再結合による荷電粒子量の減少が防止される。
【0050】
また、超音波式霧化装置で生成した水の微粒子を荷電した場合、大きな水の微粒子は、チャンバ20内で落下し、5μm以下の微粒子、特には1μm以下の微粒子が搬送路50に導入されると考えられる。チャンバ20および搬送路50内で気化する微粒子もあるが、例えば約3mの搬送路50を用いた場合でも、帯電体Eにイオン化気流を搬送することが可能となる。したがって、本実施形態のイオナイザーAによれば、イオン搬送を用いた場合であっても除電性能を向上させることができるイオナイザーおよび除電システムを提供することが可能となる。
【0051】
(2)超音波式霧化装置と、軟X線発生装置40とが、チャンバ20の対向する2つの側面に配置され、超音波式霧化装置が生成した水の微粒子に対して、軟X線が直接照射される。
【0052】
超音波式霧化装置と、軟X線発生装置40とを、チャンバ20の対向する側面にそれぞれ配置することで、荷電粒子を1つのチャンバ20内で生成することが可能となる。また、超音波式霧化装置が生成した水の微粒子に対して、軟X線発生装置40が軟X線を直接照射することにより、効率よく水の微粒子を荷電することが可能となる。
【0053】
(3)搬送路50には、搬送路50を流れるイオン化気流に含まれる水の微粒子の粒径を計測するパーティクルカウンター51が設けられている。
【0054】
搬送路50にパーティクルカウンター51を設け、搬送される水の微粒子の粒径を計測することで、制御装置がパーティクルカウンター51の値を参照し、超音波式霧化装置の発振器の周波数を制御することが可能となる。超音波式霧化装置が生成する水の微粒子の粒径は、発振器の周波数に依存するめ、粒径を検出してフィードバックし、発振器の周波数を変更することで、所望の粒径の水の微粒子が得られる。この構成により、超音波式霧化装置が帯電体Eまで搬送可能な粒径を有する水の微粒子を生成することが可能となり、除電性能がさらに向上する。
【0055】
(4)チャンバ20は、開口24を有し、開口24には、軟X線を透過させる照射窓24aが設けられ、軟X線発生装置40は、照射窓24aを介して、チャンバ20の内部に軟X線を照射するように構成されている。
【0056】
軟X線発生装置40は、それ自体が照射窓を有しており、この照射窓を介して軟X線を照射する構成となっている。したがって、例えばチャンバ20に開口を設け、この開口に直接軟X線発生装置40の照射窓を配置して、チャンバ20内部に軟X線を照射する構成とすることもできる。しかし、その場合には、超音波式霧化装置が生成した水の微粒子が、軟X線発生装置40の照射窓に付着し、軟X線照射装置40に不具合が生じるおそれがある。したがって、チャンバ20の開口24に照射窓24aを設けることにより、軟X線発生装置40を保護しつつ、チャンバ20内部に軟X線を照射することが可能となる。
【0057】
(5)超音波式霧化装置が超音波アトマイザ30であり、超音波アトマイザ30は、ノズルヘッドがチャンバ20の内部に突出するように設けられ、ノズルヘッドの周囲には保護円筒30aが設けられ、保護円筒30aは、ノズルヘッドの端部が、保護円筒30a内部に位置するように形成される。
【0058】
超音波アトマイザ30はコンパクトで霧化効率が良く、イオナイザーをシンプルな構成にできる。また、超音波アトマイザ30は、狙った位置に噴霧可能であるため、より確実に軟X線を照射でき、イオン化効率が高まる。超音波アトマイザ30のノズルヘッドの端部が、保護円筒30aの内部に位置するように保護円筒30aを形成することで、超音波アトマイザ30のノズルヘッドを高速気流から守り、高速気流による霧化の阻害を防止できる。したがって、超音波アトマイザ30が確実に水の微粒子を生成することが可能となる。
【0059】
(6)保護円筒30aは、ノズルヘッドの端部から保護円筒30aの端部までの距離をLとし、保護円筒30aの内径をdとした場合、L≧dとなるように構成される。
【0060】
L≧dとなるように構成することで、保護円筒30a内に高速気流が流れ込んだとしても、超音波アトマイザ30のノズルヘッドに届くことをより確実に防止できる。したがって、確実に霧化を行うことが可能となる。
【0061】
(7)超音波式霧化装置が底部に超音波振動子61が取り付けられた容器60であり、超音波振動子61はセラミックス製の振動板であり、容器60の内面が樹脂である。
【0062】
超音波式霧化装置を、底部に超音波振動子61が取り付けられた容器60とする場合には、超音波振動子61をセラミックス製の振動板とし、容器60の内面を樹脂とすることにより、容器60内の水等に金属イオンが溶出し、金属汚染を引き起こすことを防止できる。超音波振動子61をセラミックス製とし、容器60の内面を樹脂とすることは、超音波アトマイザ30のノズルを樹脂コーティングすることと比較すれば、技術的に容易である。したがって、より低コストで製造が容易なイオナイザーAを提供することが可能となる。
【0063】
また、以上のような本実施形態の除電システムの作用効果は、以下のとおりである。
(1)イオナイザーAと、イオナイザーAに接続された制御装置と、を有する除電システムであって、イオナイザーAは、チャンバ20と、チャンバ20内にイオン搬送ガスを供給するエア供給路10と、チャンバ20の内部に水の微粒子を生成する超音波式霧化装置と、チャンバ20の内部に軟X線を照射する軟X線発生装置40と、チャンバ20内にて生成されたイオン化気流を搬送する搬送路50と、を有し、搬送路50には、搬送路50を流れるイオン化気流に含まれる水の微粒子の粒径を計測するパーティクルカウンター51が設けられ、制御装置は、パーティクルカウンター51が計測した水の微粒子の粒径に基づいて、超音波式霧化装置の発振器の周波数を制御する。
【0064】
以上のような除電システムでは、イオナイザーAの搬送路50に設けられたパーティクルカウンター51で搬送される水の微粒子の粒径を計測し、制御装置がパーティクルカウンター51の値に基づいて、超音波式霧化装置の発振器の周波数を制御する。超音波式霧化装置が生成する水の微粒子の粒径は、発振器の周波数に依存するめ、粒径を検出してフィードバックし、発振器の周波数を変更することで、所望の粒径の水の微粒子が得られる。この構成により、超音波式霧化装置が帯電体Eまで搬送可能な粒径を有する水の微粒子を生成することが可能となり、除電性能がさらに向上する。
【0065】
[第2の実施形態]
[構成]
第2の実施形態のイオナイザーBの実施形態について
図4を参照しつつ説明する。第2の実施形態のイオナイザーBは、微粒子発生チャンバ20Aと、微粒子発生チャンバ20Aの下流側に接続された軟X線照射チャンバ20Bと、を含む。なお、以下の説明では、第1の実施形態のイオナイザーAと同じ部分については同一符号を示して説明は省略する。
【0066】
微粒子発生チャンバ20Aは、水の微粒子の発生を行う立方体の室であり、超音波アトマイザ30が設けられている。微粒子発生チャンバ20Aの形状は立方体に限定されず、筒状等、他の形状とすることができる。また、本実施形態では、微粒子発生チャンバ20Aにエア供給口21が設けられ、このエア供給口21にエア供給路10が接続されている。したがって、微粒子発生チャンバ20Aに、イオン搬送ガスが供給される。
【0067】
微粒子発生チャンバ20Aは、上面に開口23を有する。この開口23を介して、微粒子発生チャンバ20Aの上面には超音波アトマイザ30が設けられている。また、微粒子発生チャンバ20Aの下面には、開口25が設けられている。この開口25は排水口であり、微粒子発生チャンバ20Aの底部に貯まった水は、この開口25を介して微粒子発生チャンバ20Aの外部に排出される。開口25には、排水管25aが接続されてよい。また、排水管25aに、排水バルブ25bを設けて、排水バルブ25bが開かれたときに微粒子発生チャンバ20A内の排水が排出される構成とすることができる。
【0068】
また、微粒子発生チャンバ20Aには、側面に連絡口26が設けられている。連絡口26は、微粒子発生チャンバ20Aで発生した水の微粒子を含むイオン搬送ガスを排出する開口である。連絡口26には、連絡管27の一端が接続され、連絡口26から排出されたイオン搬送ガスは連絡管27を通り、軟X線照射チャンバ20B側に搬送される。連絡管27は、具体的にはチューブ状の搬送路であり、例えば、樹脂製のチューブを用いて良い。
【0069】
軟X線照射チャンバ20Bは、搬送されてきた水の微粒子を含むイオン搬送ガスに対して、軟X線を照射し、水の微粒子に軟X線で発生した正負イオンを付着させる室である。軟X線照射チャンバ20Bの上方には、軟X線発生装置40が設けられている。軟X線照射チャンバ20Bは、上流側に連絡口28が設けられている。連絡口28には、連絡管27の他端が接続され、微粒子発生チャンバ20Aで発生した水の微粒子を含むイオン搬送ガスが導入される。
【0070】
そして、軟X線照射チャンバ20Bに導入された水の微粒子を含むイオン搬送ガスに対して、軟X線発生装置40が軟X線を照射する。軟X線照射チャンバ20Bの下流側には搬送口22が設けられ、イオン化気流を、搬送路50を介して帯電体Eに供給する。
【0071】
[第2の実施形態の変形例]
上記第2の実施形態では、超音波アトマイザ30を用いて、微粒子発生チャンバ20A内に水の微粒子を噴霧する構成とした。ただし、超音波式霧化装置としては、
図5に示す通り、微粒子発生チャンバ20Aの下面に設けられた有底の円筒形の容器であり、その底部に超音波振動子61が取り付けられている容器60を用いることをもできる。
【0072】
[作用効果]
以上のような本実施形態のイオナイザーBの作用効果は、以下のとおりである。
(1)チャンバは、微粒子発生チャンバ20Aと、微粒子発生チャンバ20Aの下流側に接続された軟X線照射チャンバ20Bと、を含み、微粒子発生チャンバ20Aには、超音波式霧化装置が設けられ、軟X線照射チャンバ20Bには、軟X線発生装置40と搬送路50が設けられている。
【0073】
微粒子発生チャンバ20Aと軟X線照射チャンバ20Bの2つのチャンバを設け、微粒子発生チャンバ20Aで発生させた水の微粒子を、軟X線照射チャンバ20Bに導入する構成とした。そのため、超音波式霧化装置が微粒子発生チャンバ20Aの内部で生成した水の微粒子のうち、例えば5μmを超える粒径の大きな微粒子は、微粒子発生チャンバ20A内で落下する。そのため、軟X線照射チャンバ20Bには、イオン搬送ガスで搬送可能な比較的小さな水の微粒子が導入されることとなる。軟X線照射チャンバ20B導入前に、水の微粒子の粒径が整うため、イオン化効率が向上する。
【0074】
また、軟X線照射チャンバ20Bには大きな粒径の水の微粒子は導入されない。そのため、軟X線照射チャンバ20Bの照射窓24aに水滴が付着し、照射窓24aが濡れることが防止される。したがって、照射窓24aが濡れ、照射窓24aを透過する軟X線の強度が低下し、イオン発生量が低下する恐れを防止可能となる。したがって、より除電性能の高いイオナイザーおよび除電システムを提供することが可能となる。
【0075】
(2)チャンバの底部に貯まった水が排出される開口25が下面に設けられている。
【0076】
上記の通り、微粒子発生チャンバ20Aでは、大きな粒径の水の微粒子が落下する。そのため、チャンバの底部に落下した水が貯まる。この貯まった水を排出する構成を設けることで、イオナイザーをより長時間にわたり連続運転することが可能となる。
【0077】
[実験結果]
超音波式霧化装置を有するイオナイザーの除電性能確認実験の結果を以下に説明する。
図6に、実験装置の概要を示す。この実験では、超音波霧化を行わずに軟X線の照射のみを行った場合と、超音波霧化と軟X線の照射の双方を行った場合の除電性能を比較するものである。
【0078】
実験に用いた各構成要素は、以下の通りである。
・軟X線発生装置:浜松ホトニクス製 L6941
・超音波アトマイザ:Sonaer製 130k50T(ノズル外径6.4mm、長さ23mm)
・保護円筒(内径13.5mm、長さ26mm)
・ノズル端部から保護円筒端部までの距離:13.0mm
・搬送路:塩化ビニルチューブ(内径4mm、長さ約50cm)
・帯電体:帯電プレートモニタ Trek製 Model 158の金属プレート(150×150mm、20pF)
【0079】
測定時の各条件は以下の通りである。
・イオン搬送エアは、エアポンプで約90L/minの流量で供給した。
・超音波アトマイザの発振器の周波数は、129.3kHzとし、平均粒径11.8μmの水の微粒子を発生させた。
・純水タンクからの給水流量は、約0.5mL/minであった。
・搬送路先端から帯電体までの距離は約30mmであった。
【0080】
以上の実験装置と条件により、イオン搬送エアを帯電体に吹き付けて除電時間(±1kV→±0.9kV)を測定した。測定は、以下の2つの装置設定の時にそれぞれ行った。
(a)超音波霧化OFF:エアポンプでイオン搬送エアを供給し、軟X線発生装置をONとした。
(b)超音波霧化ON:エアポンプでイオン搬送エアを供給し、超音波アトマイザおよび軟X線発生装置をONとした。
【0081】
上記(a)および(b)の装置設定にて測定した、除電時間を表1に示す。
【表1】
【0082】
表1からも明らかなとおり、超音波霧化がONの場合は、軟X線照射のみの場合と比較して除電時間が短縮される。したがって、軟X線の照射に加え、超音波霧化を行うことにより、除電性能が向上することが確認できた。
【0083】
[その他の実施の形態]
(1)上記第1の実施形態では、超音波アトマイザ30と、軟X線発生装置40とが、チャンバ20の対向する2つの側面に配置される構成を開示した。ただし、超音波アトマイザ30と軟X線発生装置40の配置はこれに限らず、例えばチャンバ20の側面に超音波アトマイザ30と軟X線発生装置40の双方を設けても良い。すなわち、超音波アトマイザ30が水の微粒子を噴霧した箇所に、軟X線発生装置40が軟X線を照射できればよい。
【0084】
(2)上記第2の実施形態では、微粒子発生チャンバ20Aと、微粒子発生チャンバ20Aの下流側に接続された軟X線照射チャンバ20Bと、の2つの独立したチャンバを設ける構成を開示した。ただし、イオン搬送ガスの搬送方向において長尺となる1つのチャンバを設け、チャンバの上流側に超音波式霧化装置を、下流側に軟X線照射装置を設けても良い。その場合には、上流側を微粒子発生チャンバ、下流側を軟X線照射チャンバと捉えることもできる。
【0085】
微粒子発生チャンバ20Aと軟X線照射チャンバ20Bとを1つのチャンバで構成した場合には、チャンバ内に旋回流が生じる恐れがある。微粒子発生チャンバ20Aと軟X線照射チャンバ20Bを2つの独立チャンバとすれば、旋回流は生じないため良い。ただし、1つのチャンバ内に整流板等を設けることで、旋回流を抑制できると考えられる。
【0086】
(3)超音波アトマイザ30や、超音波振動子61を複数用いた場合には、チャンバ20内の結露が増え、チャンバ20の照射窓24aに付着する水滴量が上昇することが考えられる。水滴量が過度となると、軟X線の強度が著しく低下しイオン発生量が低下する可能性が高い。その場合には、チャンバ20内に、照射窓24aの結露を防止する構成を設けると良い。
【0087】
図7に、結露防止構造の一例である、照射窓カバー70を示す。照射窓カバー70は、バッファ室70Aと、小チャンバ70Bを有する。バッファ室70Aは、常温エアを貯留するための立方体の室である。バッファ室70Aは、照射窓24aの近傍かつ、照射窓24aに対向しない位置に設けられている。すなわち、軟X線発生装置40は、バッファ室70Aの上方に位置しない。バッファ室70Aの上面には、開口71が設けられている。開口71には、不図示のフィルタ、流量計、バルブ、エアポンプ等が接続されており、この開口71を介してバッファ室70Aに常温エアが導入される。
【0088】
バッファ室70Aの一側面には、スリット72が設けられている。スリット72は、照射窓24aに常温エアを供給する噴射口である。スリット72は、バッファ室70Aの側面のうち、照射窓24aが配置されている側の一側面に配置された矩形の開口である。例えば、チャンバ20の長手方向の長さが130mmで、高さおよび幅が60mmの場合、バッファ室70Aの高さを25mm、幅約60mmとし、スリット72の高さを6mm、幅約60mmとすることができる。
【0089】
バッファ室70Aには、スリット72を介して、小チャンバ70Bが接続されている。小チャンバ70Bは、スリット72から噴射された常温エアが流れる空間を画定する室である。したがって、小チャンバ70Bは、スリット72を延長するように設けられた、バッファ室70Aより高さの低い立方体の室である。小チャンバ70Bは、例えば、スリット72の高さを6mmとした場合、高さ6mmの空間を画定する立方体の室である。
【0090】
小チャンバ70Bは、照射窓24aの下方に設けられている。すなわち、軟X線発生装置40は、小チャンバ70Bの上方に位置する。小チャンバ70Bには、流れてきた常温エアを放出する開口73が設けられている。開口73は、照射窓24aと同一寸法以上の大きさに形成されている。そのため、開口73による、照射窓24aを介して照射された軟X線の遮蔽が抑制される。
【0091】
以上の構成により、開口71を介してバッファ室70Aに供給された常温エアは、バッファ室70Aに貯留される。そして、貯留された常温エアは、スリット72を介してスリット流となり、小チャンバ70B側に供給され、照射窓24aに向かって噴射される。この常温エアの噴射により、照射窓24aの結露を抑制可能となるため、照射窓24aの結露により軟X線の強度が低下することを防止できる。バッファ室70Aからのスリット流をそのまま照射窓24aに噴射する構成とすると、チャンバ20内に渦流が生じる可能性がある。そのため、スリット形状を延長するように小チャンバ70Bを設け、小チャンバ70B内にスリット流を供給する構成とすることで、渦流の発生が防止できる。
【0092】
(4)第1の実施形態のチャンバ20についても、第2の実施形態の開口25を下面に設け、チャンバ20の底部に貯まった水をこの開口25を介してチャンバ20の外部に排出する構成としても良い。すなわち、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を適宜変形することができる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。例えば、上述の実施形態に示される構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよく、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0093】
A、B イオナイザー
E 帯電体
10 エア供給路
11 エアポンプ
12 流量調整バルブ
13 流量計
14 フィルタ
20 チャンバ
20A 微粒子発生チャンバ
20B 軟X線照射チャンバ
21 エア供給口
22 エア搬送口
23、24、25 開口
24a 照射窓
25a 排水管
25b 排水バルブ
26、28 連絡口
27 連絡管
30 超音波アトマイザ
30a 保護円筒
31、62 発振器
32、63 純水供給路
33 純水タンク
34、64 ポンプ
35、65 流量調整バルブ
40 軟X線発生装置
50 搬送路
51 パーティクルカウンター
60 容器
61 超音波振動子
70 照射窓カバー
70A バッファ室
70B 小チャンバ
71、73 開口
72 スリット