(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240611BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2020071799
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】文後 卓也
(72)【発明者】
【氏名】坂井 耐事
(72)【発明者】
【氏名】大久保 厚
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-190515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿状の凹部(2)をもつケーシング(1)と、
前記ケーシング(1)の凹部(2)の開口を閉塞する平板状の天板(3)と、
前記天板(3)の一方の面(3a)に接合されるコア(4)と、
前記天板(3)の他方の面(3b)に接合される熱交換対象物(20)と、を具備し、
前記コア(4)が前記凹部(2)に収納され、その凹部(2)内に導かれる流体(10)と、熱交換対象物(20)との間に前記コア(4)を介して熱交換が行われる熱交換器において、
前記コア(4)は、多数のスリット(6)が設けられた複数のプレート(5)の積層体からなり、
隣接するプレート(5)のスリット(6)が連通し、流体(10)がプレート(5)の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路(11)が形成され、
前記コア(4)は、プレート(5)の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート(5c)が前記天板(3)と接合され
、
前記コア(4)は、プレート(5)の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート(5d)と前記凹部(2)を構成する底部(2a)との間に、前記流体流路(11)よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域(12)を有し、
前記他方側に位置するコア端部プレート(5d)に、スリット(6)のないエンドプレート(7)が接続されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記エンドプレート(7)の外周が、積層された各プレート(5)の外周と略同一の大きさに形成された請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記凹部(2)は、前記流体(10)が流入する流入側ヘッダ部(8)と、コア(4)を介して対向する前記流体(10)が流出する流出側ヘッダ部(9)を有し、
前記エンドプレート(7)の前記流入側ヘッダ部(8)側の端部(7c)が、前記流入側ヘッダ部(8)の方向に向けて延長された請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記エンドプレート(7)が、前記流体(10)の流通方向に向かって凸部(7a)及び凹部(7b)が交互に現れる波形に形成されている請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記底部(2a)には、前記エンドプレート(7)の外周より大きい第2凹部(13)が形成されており、その第2凹部(13)により、低流通抵抗領域(12)の流通抵抗を増加し、流体(10)を前記コア(4)の流体流路(11)に導く請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記底部(2a)に、前記流体(10)の流通方向に向かって交互に凹凸が現れる凹凸部(15)を有し、その凹凸部(15)により、低流通抵抗領域(12)の流通抵抗を増加し、流体(10)を前記コア(4)の流体流路(11)に導く請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
皿状の凹部(2)をもつケーシング(1)と、
前記ケーシング(1)の凹部(2)の開口を閉塞する平板状の天板(3)と、
前記天板(3)の一方の面(3a)に接合されるコア(4)と、
前記天板(3)の他方の面(3b)に接合される熱交換対象物(20)と、を具備し、
前記コア(4)が前記凹部(2)に収納され、その凹部(2)内に導かれる流体(10)と、熱交換対象物(20)との間に前記コア(4)を介して熱交換が行われる熱交換器において、
前記コア(4)は、多数のスリット(6)が設けられた複数のプレート(5)の積層体からなり、
隣接するプレート(5)のスリット(6)が連通し、流体(10)がプレート(5)の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路(11)が形成され、
前記コア(4)は、プレート(5)の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート(5c)が前記天板(3)と接合され、
前記コア(4)は、プレート(5)の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート(5d)と前記凹部(2)を構成する底部(2a)との間に、前記流体流路(11)よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域(12)を有し、
前記底部(2a)には、前記コア端部プレート(5d)の外周より大きい第2凹部(13)が形成されており、その第2凹部(13)により、低流通抵抗領域(12)の流通抵抗を増加し、流体(10)を前記コア(4)の流体流路(11)に導く
ことを特徴とする
熱交換器。
【請求項8】
皿状の凹部(2)をもつケーシング(1)と、
前記ケーシング(1)の凹部(2)の開口を閉塞する平板状の天板(3)と、
前記天板(3)の一方の面(3a)に接合されるコア(4)と、
前記天板(3)の他方の面(3b)に接合される熱交換対象物(20)と、を具備し、
前記コア(4)が前記凹部(2)に収納され、その凹部(2)内に導かれる流体(10)と、熱交換対象物(20)との間に前記コア(4)を介して熱交換が行われる熱交換器において、
前記コア(4)は、多数のスリット(6)が設けられた複数のプレート(5)の積層体からなり、
隣接するプレート(5)のスリット(6)が連通し、流体(10)がプレート(5)の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路(11)が形成され、
前記コア(4)は、プレート(5)の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート(5c)が前記天板(3)と接合され、
前記コア(4)は、プレート(5)の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート(5d)と前記凹部(2)を構成する底部(2a)との間に、前記流体流路(11)よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域(12)を有し、
前記底部(2a)に、前記流体(10)の流通方向に向かって交互に凹凸が現れる凹凸部(15)を有し、その凹凸部(15)により、低流通抵抗領域(12)の流通抵抗を増加し、流体(10)を前記コア(4)の流体流路(11)に導く
ことを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換対象物と流体との間に伝熱を行う熱交換器、特に、半導体素子等の被冷却体を冷却するヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の被冷却体を冷却するヒートシンクとして、
図15のようなヒートシンクがある。
このヒートシンク(熱交換器)は、皿状の凹部2をもつケーシング1と、その凹部2の開口を閉塞する平板状の天板3を有する。そして、天板3の一方の面3aには、コア4を形成する複数のピン形状のフィンが接合される。天板3の他方の面3bには、複数の半導体素子(熱交換対象物20)が接合される。
このコア4がケーシング1の凹部2に収納され、その凹部2内に導かれる冷媒(流体10)と、半導体素子(熱交換対象物20)との間にコア4を介して熱交換が行われる。
このヒートシンク(熱交換器)は、ケーシング1と天板3に取付けられたコア4とが別体構造となっており、天板3とケーシング1が着脱自在に取付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、
図15のようなピンフィン24は、ピンを天板3にろう付、若しくは溶接することにより、接合することはできるが、各ピンを天板3に取付ける作業に多くの時間を費やしていた。フィンを鍛造や切削により形成することもできるが、製作コストの増加につながる。
上記の製作手段では、コア4の製作性が悪い。
【0004】
また、
図15が示すように、コア4のピン形状のフィンの先端部とケーシング1の凹部2を構成する底部2aとの間には、低流通抵抗領域12である空間が形成されており、その低流通抵抗領域12は冷媒(流体10)の流通を阻害するものがないため、コア4のピン形状のフィンが形成する流体流路よりも流通抵抗が低い。
そのため、冷媒(流体10)は低流通抵抗領域12を流通しやすく、また、コア4の部分の流体流路に流通していても、冷媒(流体10)がコア4から低流通抵抗領域12へ流出する傾向にあり、伝熱性能が低くなる欠点がある。
【0005】
そこで、本発明はケーシング1とコア4が接続された天板3とが、着脱自在に取付けられる別体構造になっている熱交換器において、安価で製作性が良い熱交換器を提供することを課題とする。
また、簡単な構造で、伝熱性能の良い熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、皿状の凹部2をもつケーシング1と、
前記ケーシング1の凹部2の開口を被嵌する平板状の天板3と、
前記天板3の一方の面3aに接合されるコア4と、
前記天板3の他方の面3bに接合される熱交換対象物20と、を具備し、
前記コア4が前記凹部2に収納され、その凹部2内に導かれる流体10と、熱交換対象物20との間に前記コア4を介して熱交換が行われる熱交換器において、
前記コア4は、多数のスリット6が設けられた複数のプレート5の積層体からなり、
隣接するプレート5のスリット6が連通し、流体10がプレート5の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路11が形成され、
前記コア4は、プレート5の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート5cが前記天板3と接合され、
前記コア4は、プレート5の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート5dと前記凹部2を構成する底部2aとの間に、前記流体流路11よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域12を有し、
前記他方側に位置するコア端部プレート5dに、スリット6のないエンドプレート7が接続されていることを特徴とする熱交換器である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、前記エンドプレート7の外周が、積層された各プレート5の外周と略同一の大きさに形成された請求項1に記載の熱交換器である。
請求項3に記載の本発明は、前記凹部2は前記流体10が流入する流入側ヘッダ部8と、コア4を介して対向する前記流体10が流出する流出側ヘッダ部9を有し、
前記エンドプレート7の前記流入側ヘッダ部8側の端部7cが、前記流入側ヘッダ部8の方向に向けて延長された請求項1に記載の熱交換器である。
請求項4に記載の本発明は、前記エンドプレート7が、前記流体10の流通方向に向かって凸部7a及び凹部7bが交互に現れる波形に形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱交換器である。
【0009】
請求項5に記載の本発明は、前記底部2aには、前記エンドプレート7の外周より大きい第2凹部13が形成されており、その第2凹部13により、低流通抵抗領域12の流通抵抗を増加し、流体10を前記コア4の流体流路11に導く請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱交換器である。
【0010】
請求項6に記載の本発明は、前記底部2aに、前記流体10の流通方向に向かって交互に凹凸が現れる凹凸部15を有し、その凹凸部15により、低流通抵抗領域12の流通抵抗を増加し、流体10を前記コア4の流体流路11に導く請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱交換器である。
【0011】
請求項7に記載の本発明は、皿状の凹部2をもつケーシング1と、前記ケーシング1の凹部2の開口を閉塞する平板状の天板3と、前記天板3の一方の面3aに接合されるコア4と、前記天板3の他方の面3bに接合される熱交換対象物20と、を具備し、前記コア4が前記凹部2に収納され、その凹部2内に導かれる流体10と、熱交換対象物20との間に前記コア4を介して熱交換が行われる熱交換器において、前記コア4は、多数のスリット6が設けられた複数のプレート5の積層体からなり、隣接するプレート5のスリット6が連通し、流体10がプレート5の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路11が形成され、前記コア4は、プレート5の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート5cが前記天板3と接合され、
前記コア4は、プレート5の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート5dと前記凹部2を構成する底部2aとの間に、前記流体流路11よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域12を有し、
前記底部2aには、前記コア端部プレート5dの外周より大きい第2凹部13が形成されており、その第2凹部13により、低流通抵抗領域12の流通抵抗を増加し、流体10を前記コア4の流体流路11に導くことを特徴とする熱交換器である。
【0012】
請求項8に記載の本発明は、皿状の凹部2をもつケーシング1と、前記ケーシング1の凹部2の開口を閉塞する平板状の天板3と、前記天板3の一方の面3aに接合されるコア4と、前記天板3の他方の面3bに接合される熱交換対象物20と、を具備し、前記コア4が前記凹部2に収納され、その凹部2内に導かれる流体10と、熱交換対象物20との間に前記コア4を介して熱交換が行われる熱交換器において、前記コア4は、多数のスリット6が設けられた複数のプレート5の積層体からなり、隣接するプレート5のスリット6が連通し、流体10がプレート5の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路11が形成され、前記コア4は、プレート5の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート5cが前記天板3と接合され、
前記コア4は、プレート5の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート5dと前記凹部2を構成する底部2aとの間に、前記流体流路11よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域12を有し、
前記底部2aに、前記流体10の流通方向に向かって交互に凹凸が現れる凹凸部15を有し、その凹凸部15により、低流通抵抗領域12の流通抵抗を増加し、流体10を前記コア4の流体流路11に導くことを特徴とする熱交換器である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は、コア4は、多数のスリット6が設けられた複数のプレート5の積層体からなり、隣接するプレート5のスリット6が連通し、流体10がプレート5の積層方向に蛇行しながら流通する流体流路11が形成され、プレート5の積層方向の一方側に位置するコア端部プレート5cがケーシング1の凹部2の開口を被嵌する天板3と接合されているものである。
この構造により、従来の天板3にピン形状の柱状突起物を突設させた形状のコア4を設ける製作手段、例えば鋳造や鍛造による天板3との一体成形や大きなブロックからの切削加工、天板3に多数のピンフィン部品をろう付や溶接接合加工する必要がなくなり、安価で製作性が高い熱交換器を提供することができる。
【0014】
また、請求項1に記載の発明は、コア4のプレート5の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート5dと凹部2を構成する底部2aとの間に、流体流路11よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域12を有し、前記他方側に位置するコア端部プレート5dに、スリット6のないエンドプレート7が接続されているものである。
スリット6が形成されていないエンドプレート7をコア端部プレート5dに接合することにより、コア4内の流体流路11に流入した流体10が、コア端部プレート5dのスリット6の部分からコア4外へ流出することを防止できるため伝熱性能が向上する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1の熱交換器において、エンドプレート7の外周が、積層された各プレート5の外周と略同一の大きさに形成されているので、コア4の組立時に積層したプレート5の外縁をそろえて各プレート5の位置決めができる。そのため、コア4の組立が容易に行える。
請求項3に記載の発明は、請求項1の熱交換器において、エンドプレート7の流体10の流入側ヘッダ部8側の端部7cが、流入側ヘッダ部8の方向に向けて延長されていることにより、流体10が低流通抵抗領域12へ流れようとすることを防止して、流体10をコア4内に導くことができ、コア4の流体流路11内の流体流量が増えることで伝熱性能が向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの熱交換器において、エンドプレート7が、流体10の流通方向に向かって凸部7a及び凹部7bが交互に現れる波形に形成されているものである。
この構造により、エンドプレート7と底部2aとの間の低流通抵抗領域12の流路断面積が拡縮され、そこを流れる流体10の流通抵抗が増えることで低流通抵抗領域12の流体10の流量が減少する。それ故、コア4内に流体10が優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【0017】
請求項5、請求項6に記載の発明のように、ケーシング1の底部2aに凹凸を設けることにより、エンドプレート7と底部2aとの間の低流通抵抗領域12の流路断面積を拡縮し、そこを流れる流体10の流通抵抗を増加することができる。この場合も、コア4内に流体10が優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【0018】
また、請求項7、請求項8に記載の発明のように、コア4にエンドプレート7を接続しない場合であっても、底部2aに凹凸を設けることにより、プレート5の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート5dと底部2aとの間の低流通抵抗領域12の流路断面積を拡縮し、そこを流れる流体10の流通抵抗を増加することができる。この場合も、コア4内に流体10が優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の熱交換器の第1実施例を示す分解斜視図。
【
図2】同熱交換器に取付けられる天板一体型コア4の分解斜視図。
【
図4】
図3のIV-IV矢視断面図(A)、
図4(A)のB部拡大図(B)。
【
図5】本発明の熱交換器の第2実施例を示す断面図。
【
図6】本発明の熱交換器の第3実施例を示す断面図。
【
図7】本発明の熱交換器の第4実施例を示す断面図。
【
図8】本発明の熱交換器の第5実施例を示す断面図。
【
図9】本発明の熱交換器の第6実施例を示す断面図。
【
図10】本発明の熱交換器の第7実施例を示す断面図。
【
図11】本発明の熱交換器の第8実施例を示す断面図。
【
図12】本発明の熱交換器の第9実施例を示す断面図。
【
図13】本発明の熱交換器の第10実施例を示す断面図。
【
図14】本発明の天板一体型コア4に用いるプレート5の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面に基づいて、本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の熱交換器の第1実施例を示す分解斜視図であり、
図2は同熱交換器に取付けられる天板一体型コア4の分解斜視図であり、
図3は同熱交換器の組立て斜視図であり、
図4(A)は
図3のIV-IV矢視断面図、
図4(B)は
図4(A)のB部拡大図である。
【0021】
この熱交換器は、ケーシング1と天板3とコア4とからなる。
ケーシング1は、
図1に示す如く、方形の筐体の上面の中央部に、周縁部1aに対し凹陥した皿状の凹部2が形成され、その周縁にシール溝1bが形成されている。そのシール溝1bの外周には、締結孔1cが設けられている。シール溝1bには、シールリング21が配置される。この例では、凹部2は、底部2aと側部2bを有する長方形型に凹陥している。
天板3は、平板状に形成されており、ケーシング1の凹部2の開口を閉塞する大きさを有している。その天板3には、一方の面3aにコア4が接合されており、他方の面3bに熱交換対象物20である半導体素子等の発熱体が接合されている。
コア4はケーシング1の凹部2に収納され、天板3の外周部に設けられた締結孔3cとケーシング1の締結孔1cとが整合するように、天板3がケーシング1の凹部2の開口を閉塞し、
図3のように、締結具23により、天板3がケーシング1に着脱自在に取付けられる。
【0022】
この例では、ケーシング1の外周部には一対のパイプ22が設けられており、一方のパイプ22は凹部2の流入側ヘッダ部8に連通し、他方のパイプ22は凹部2の流出側ヘッダ部9に連通している。一方のパイプ22から冷媒等の流体10が流入し、凹部2の流入側ヘッダ部8内に導かれる。
コア4は、流入側ヘッダ部8と流出側ヘッダ部9との間に配置される。
発熱体等の熱交換対象物20から生じる熱は、コア4に流入する流体10により、冷却され、熱交換対象物20と流体10との間で熱交換が行われる。
【0023】
図2に示す如く、この熱交換器のコア4は、それぞれ多数のスリット6が穿設された平坦な方形のプレート5(第1プレート5a、第2プレート5b)が積層されてコア4を構成する。
この例では、各プレート5a、5bには、互いに平行に並列して配置された縦リブ6aと、隣接する縦リブ6a間を複数の個所で連結する横リブ6bとを有し、それらのリブ6a,6b間に同一形状の長方形の小孔からなるスリット6が穿設されている。
積層方向に隣接する各プレート5a,5bの縦リブ6aは整合して接触し、各プレート5a,5bのスリット6は、
図4に示す如く、流体10の流通方向に平面的に位置ずれしている。即ち、一方のプレートのスリット6内に、他方のプレートの横リブ6bが位置する。これにより、隣接するプレート5a,5bのスリット6が連通し、流体流路11が形成される。流体10は、流体流路11をプレート5の積層方向に蛇行しながら流通する。
【0024】
上述のコア4は、
図2に示す如く、プレート5の積層方向の一方側(
図2において上方)に位置するコア端部プレート5cが天板3と接合されている。
このコア4は、各プレート5a,5bをプレス加工により容易に形成できる。そして、天板3とコア4は、高温の炉内で一体的にろう付固定できるため、ピンフィンからなるコアよりも、製造がし易く、加工コストを安価にすることができる。
各プレート5a,5bには、ろう材を被覆しておくことが好ましい。
【0025】
この熱交換器は、凹部2の開口から底部2aまでの深さT1よりコア4の厚みT2が小さい場合、コア4のプレート5の積層方向の他方側に位置するコア端部プレート5dと、凹部2の底部2aとの間には、コア4の流体流路11の流通抵抗よりも流通抵抗が低い低流通抵抗領域12である空間が形成される。
プレートの積層体からなるコア4であっても、各プレートにはスリット6が設けられているため、コア4内の流体流路11に流入した流体10が、コア端部プレート5dのスリット6の部分からコア4外へ流出し、伝熱性能が低下することが考えられる。
【0026】
上記の問題点を解決するため、この例では、
図2に示す如く、プレート5の積層方向の他方側(
図2において下方)に位置するコア端部プレート5dには、スリット6が形成されていないエンドプレート7が接合されている。この例のエンドプレート7は、
図2、
図4に示す如く、コア端部プレート5dの外形よりもわずかに大きく形成されている。
このエンドプレート7にはスリット6が形成されていないので、コア4内の流体流路11に流入した流体10が、コア端部プレート5dのスリット6の部分からコア4外の低流通抵抗領域12へ流出することを防止でき、それにより伝熱性能が向上する。
【0027】
第1実施例で示したエンドプレート7は、その形状を変更することができる。
図5は、本発明の熱交換器の第2実施例を示す断面図である。
この例のエンドプレート7は、その外周が積層された各プレート5の外周と略同一の大きさに形成されている。この構成により、コア4の組立時に積層したプレート5とエンドプレート7の外縁をそろえて各プレート5の位置決めができる。そのため、コア4の組立を容易に行うことができる。
【0028】
図6は、本発明の熱交換器の第3実施例を示す断面図である。
この例のエンドプレート7は、同図に示す如く、エンドプレート7の流体10の流入側ヘッダ部8側の端部7cが、その流入側ヘッダ部8の方向に向けて延長されている。
この構造により、流体10が低流通抵抗領域12へ流れようとすることを防止して、流体10をコア4内に優先的に導くことができる。その結果、コア4の流体流路11内の流体流量が増えることで伝熱性能が向上する。
【0029】
図7(A)は本発明の熱交換器の第4実施例を示す断面図であり、
図7(B)はその熱交換器に用いられるエンドプレート7の斜視図である。
この例のエンドプレート7は、コア端部プレート5dと接合される面は平坦に形成されており、その面と反対側(低流通抵抗領域12側)の面には、流体10の流通方向に向かって凸部7a及び凹部7bが交互に現れる波形に形成されている。この例の並列した各凸部7aは、コア4の長手方向に平行な凸条として形成されている。
この構造により、エンドプレート7と底部2aとの間の低流通抵抗領域12の流路断面積が拡縮され、そこを流れる流体10の流通抵抗が増えることで低流通抵抗領域12の流体10の流量が減少する。それ故、コア4内に流体10が優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【0030】
図8(A)は本発明の熱交換器の第5実施例を示す断面図であり、
図8(B)はその熱交換器に用いられるエンドプレート7の斜視図である。この例は、
図7(B)のエンドプレート7の変形例であり、凸部7a及び凹部7bの形状が異なる。
この例のエンドプレート7は、
図8(B)に示す如く、滑らかな凸部7a及び凹部7bが連続した波形で形成されている。凹部7bの頂部がコア端部プレート5dと接合される。このように形成されたエンドプレート7でも、
図7のエンドプレート7と同様の効果を得ることができる。
【0031】
図9(A)は本発明の熱交換器の第6実施例を示す断面図であり、
図9(B)はその熱交換器に用いられるエンドプレート7の斜視図である。この例は、
図8(B)のエンドプレート7の変形例である。
この例のエンドプレート7は、
図9(B)に示す如く、凸部7a及び凹部7bが矩形波の形状に連続している。この例でも、
図8の例と同様、凹部7bの頂部がコア端部プレート5dと接合される。
【0032】
図10は、本発明の熱交換器の第7実施例を示す断面図である。
この例の熱交換器も、コア端部プレート5dにエンドプレート7が接合されている。
そして、凹部2の底部2aには、エンドプレート7の外周より大きい面積の第2凹部13が形成されている。この第2凹部13は、流入側ヘッダ部8と流出側ヘッダ部9との間に位置している。そして、凹部2の開口から第2凹部13までの深さT3は、凹部2の開口から底部2aまでの深さT1より深く形成される。
この例のように、コア4の厚みT2と凹部2の開口から底部2aの深さT1とを略整合させ、エンドプレート7を第2凹部13内に位置させるとよい。この場合、流体10がコア4内に優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【0033】
図11は、本発明の熱交換器の第8実施例を示す断面図である。この例は、
図10の第2凹部13の他の例である。この例の第2凹部13は次のように形成されている。
底部2aの流体10が流入側ヘッダ部8からコア4へ流入する間の位置、及びコア4から流出側ヘッダ部9へ流出する間の位置で、流体流通方向と直交する方向に向けて連続して底部2aから突出する凸条14が形成され、それらの凸条14の間に第2凹部13が形成される。すなわち、この例では、凹部2の開口から底部2aの深さT1と凹部2の開口から第2凹部13の深さT3とが一致している。
この例の場合、エンドプレート7は第2凹部13内に位置させ、エンドプレート7とコア端部プレート5dとの接合面の位置を凸条14の頂部の位置と整合させるとよい。この場合も、第7実施例と同様、流体10がコア4内に優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【0034】
図12は、本発明の熱交換器の第9実施例を示す断面図である。
この例の熱交換器も、コア端部プレート5dにエンドプレート7が接合されている。
そして、凹部2の底部2aの流入側ヘッダ部8と流出側ヘッダ部9との間に、流体10の流通方向に向かって交互に凹凸が現れる凹凸部15を有する。この凹凸部15は滑らかな凸部と凹部が連続した波形で形成されている。各凸部は、底部2aからエンドプレート7側へ突出している。
この構成により、エンドプレート7と底部2aとの間の低流通抵抗領域12の流路断面積を拡縮し、そこを流れる流体10の流通抵抗を増加することができる。この場合も、コア4内に流体10が優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【0035】
図13は、本発明の熱交換器の第10実施例を示す断面図である。
この例は、
図12の凹凸部15の他の例である。この凹凸部15は矩形波状に凹凸が連続した波形で形成されている。そして、この例では、エンドプレート7は、
図7の形状に形成されており、底部2aに形成された凹凸とエンドプレート7に形成された凹凸とがかみ合うように形成されている。
この構成により、低流通抵抗領域12を流れる流体10の流通抵抗を増加することができる。そのため、コア4内に流体10が優先的に流入し、コア4の流体流路11内を流れる流体10の流量が増えることで、伝熱性能が向上する。
【0036】
図14(A)は本発明の天板一体型コア4の斜視図であり、同図(B)はそのコア4に用いるプレート5の平面図であり、同図(C)はプレート5の積層体の平面図である。
この実施例のコア4に用いるプレート5は、縦リブ6aが流体10の流通方向に沿って、ジグザグに傾斜している。
各プレート5a、5bには、ジグザグ状に形成された縦リブ6aが互いに平行に並列して配置され、隣接する縦リブ6a間を複数の個所で連結する横リブ6bを有し、それらのリブ6a,6b間に小孔からなるスリット6が穿設されている。ジグザグ状の縦リブ6aの各頂部には島部6cが形成されている。第1プレート5aと第2プレート5bの縦リブ6aのジグザグの向きは逆向きに形成される。
この各プレート5a,5bを複数積層して、コア4が形成される。
この例のコア4は、積層方向に隣接する各プレート5a,5bの横リブ6bと島部6cが整合して接触し、各プレート5a,5bのスリット6は、流体10の流通方向に平面的に位置ずれしている。
【0037】
各島部6cが積層された部分は、流体の流通方向に垂直な柱となり、従来技術のピンフィンと似た構造をプレート積層体のコア4で形成することができる。
隣接するプレート5a,5bのスリット6が連通し、流体流路11が形成される。流体10は、流体流路11をプレート5の積層方向に蛇行しながら流通する。この構造は、ピンフィンを採用するよりも、容易に製作でき、流体10の攪拌効率も向上するため、熱交換効率の良いコア4を形成することができる。
プレート5の積層方向の一方側(
図14において上方)に位置するコア端部プレート5cが天板3と接合される。
また、プレート5の積層方向の他方側(
図14において下方)に位置するコア端部プレート5dには、スリット6が形成されていないエンドプレート7を接合することができる。
【0038】
図10の第7実施例~
図13の第10実施例までの実施例は、コア4にエンドプレート7を接合した構成の熱交換器である。しかしながら、エンドプレート7を接合せずに、凹部2の底部2aのみを変えることによっても、低流通抵抗領域12を流れる流体10の流通抵抗を増加することができる。
例えば、底部2aにコア端部プレート5dの外周より大きい第2凹部13を形成し、その第2凹部13にコア端部プレート5dを位置させる。または、底部2aに、流体10の流通方向に向かって交互に凹凸が現れる凹凸部15を形成しておく。
【符号の説明】
【0039】
1 ケーシング
1a 周縁部
1b シール溝
1c 締結孔
2 凹部
2a 底部
2b 側部
3 天板
3a 一方の面
3b 他方の面
3c 締結孔
【0040】
4 コア
5 プレート
5a 第1プレート
5b 第2プレート
5c コア端部プレート
5d コア端部プレート
6 スリット
6a 縦リブ
6b 横リブ
6c 島部
【0041】
7 エンドプレート
7a 凸部
7b 凹部
7c 端部
8 流入側ヘッダ部
9 流出側ヘッダ部
10 流体
11 流体流路
12 低流通抵抗領域
13 第2凹部
14 凸条
15 凹凸部
【0042】
20 熱交換対象物
21 シールリング
22 パイプ
23 締結具
24 ピンフィン
T1 凹部2の開口から底部2aまでの深さ
T2 コア4の厚み
T3 凹部2の開口から第2凹部13までの深さ