(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】軟骨伝導イヤホン及び聴取機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20240611BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240611BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20240611BHJP
H04R 25/02 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R1/10 104A
H04R1/10 104B
H04R25/00 F
H04R25/02 B
(21)【出願番号】P 2020080235
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】阪上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】深渡瀬 智史
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164263(JP,A)
【文献】特開2017-011551(JP,A)
【文献】国際公開第2008/029515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/10
H04R 25/00
H04R 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体と、外耳道に挿入して当該外耳道に保持される保持体とを含んで構成され、
前記機器本体は、
電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動するとともに珠間切痕に収まる筐体部と、
前記筐体部と前記保持体とを接続するとともに弾性を有する弾性部と、
前記弾性部の一端に設けられ、前記保持体の外周部に嵌合するよう構成される取り付け部と、を備えることを特徴とする軟骨伝導イヤホン。
【請求項2】
機器本体と、外耳道に挿入して当該外耳道に保持される保持体とを含んで構成され、
前記機器本体は、
電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動するとともに珠間切痕に収まる筐体部と、
前記筐体部と前記保持体とを接続するとともに弾性を有する弾性部と、
前記弾性部の一端に設けられ、前記保持体に設けた凹部又は孔部に嵌合する取り付け部と、を備えることを特徴とする軟骨伝導イヤホン。
【請求項3】
前記保持体は、外界と外耳道とを連通させる開口部を備えることを特徴とする請求項1
又は2に記載の軟骨伝導イヤホン。
【請求項4】
前記保持体は、外耳道を閉鎖する中実構造であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の軟骨伝導イヤホン。
【請求項5】
前記保持体は、気導音を発生させるイヤホンを備えることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載の軟骨伝導イヤホン。
【請求項6】
請求項1~
5の何れか一項に記載の軟骨伝導イヤホンを備えることを特徴とする聴取機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気信号に基づく振動を耳軟骨に伝達させる軟骨伝導イヤホン、及びこの軟骨伝導イヤホンを使用した聴取機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気信号に基づく振動を耳軟骨に伝導させて装用者に音を伝える軟骨伝導イヤホン、及びこの軟骨伝導イヤホンを使用した聴取機器の開発が進められている。
【0003】
このような聴取機器に関して特許文献1には、耳甲介に装着するイヤモールドに振動デバイスが取り付けられた軟骨伝導補聴器が示されている。また特許文献2には、電気機械変換器によって振動するとともに突起部が一体的に設けられる本体部と、突起部に対して着脱可能なアタッチメントを備える軟骨伝導補聴器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6427701号公報
【文献】特許第6625776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1のイヤモールドは、装着時に耳甲介艇、前珠痕、及び対珠で保持されるものであるため耳介に安定して保持することができる一方、耳介の形状や大きさは装用者毎に異なるため、これを形成するにあたっては一般に装用者の耳型を採取して形状データを取得しなければならず、納期を要するとともにコストの上昇につながっている。また特許文献2の補聴器は、アタッチメントが耳珠及び対耳珠のうち少なくとも1つに当接していて、通常時は安定的に耳介に保持できるものの、体を激しく動かすと位置がずれるおそれがある。
【0006】
このような点に鑑み、本発明は、従来に比して、汎用性があって納期やコストを削減することができ、また激しく体を動かす際も位置ずれが生じにくい軟骨伝導イヤホン及び聴取機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の軟骨伝導イヤホンは、機器本体と、外耳道に挿入して当該外耳道に保持される保持体とを含んで構成され、前記機器本体は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動するとともに珠間切痕に収まる筐体部と、前記筐体部と前記保持体とを接続するとともに弾性を有する弾性部と、前記弾性部の一端に設けられ、前記保持体の外周部に嵌合するよう構成される取り付け部と、を備えることを特徴とする。
また本発明の軟骨伝導イヤホンは、機器本体と、外耳道に挿入して当該外耳道に保持される保持体とを含んで構成され、前記機器本体は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動するとともに珠間切痕に収まる筐体部と、前記筐体部と前記保持体とを接続するとともに弾性を有する弾性部と、前記弾性部の一端に設けられ、前記保持体に設けた凹部又は孔部に嵌合する取り付け部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような軟骨伝導イヤホンにおいて、前記保持体は、外界と外耳道とを連通させる開口部を備えることが好ましい。
【0009】
また前記保持体は、外耳道を閉鎖する中実構造であってもよい。
【0012】
そして前記保持体は、気導音を発生させるイヤホンを備えることが好ましい。
【0013】
また本発明は、上述した軟骨伝導イヤホンの何れかを備える聴取機器でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の軟骨伝導イヤホン及び聴取機器は、機器本体と外耳道に挿入される保持体とを含んで構成されていて、機器本体は、電気機械変換器によって振動するとともに珠間切痕に収まる筐体部と、外耳道に取り付けられる取り付け部と、筐体部と取り付け部とを接続するとともに弾性を有する弾性部と、を備えている。すなわち軟骨伝導イヤホンを耳介に装着した状態において、筐体部を、弾性部の弾性力でもって珠間切痕の内面に軽く押し当てることができるため、激しく体を動かす際も位置ずれが生じにくくなる。また、耳介の形や大きさは装用者毎に異なるものの、装着時に弾性部が撓むことによってこれらの違いを吸収することができる。従って本発明の軟骨伝導イヤホン及び聴取機器によれば、弾性体等の形状や大きさを装用者毎に変更せずとも耳介に安定的に保持させることができ、汎用性があるため、耳型の採取が必要であった従来のものに比して納期やコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明を具現化した軟骨伝導イヤホン及び聴取機器の第1実施形態を示した図である。
【
図2】第1実施形態の軟骨伝導イヤホンに関し、(a)は組み立て手順の一例を示した図であり、(b)は保持体の変形例について示した図である。
【
図3】第1実施形態の軟骨伝導イヤホンを耳介に装着した状態について示した図である。
【
図4】第1実施形態の弾性部の変形例を示した図である。
【
図5】本発明を具現化した軟骨伝導イヤホン及び聴取機器の第2実施形態に関し、(a)は軟骨伝導イヤホンの斜視図であり、(b)は組み立て手順の一例を示した図であり、(c)は保持体の変形例について示した図である。
【
図6】本発明を具現化した軟骨伝導イヤホン及び聴取機器の第3実施形態に関し、組み立て手順の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明を具現化した軟骨伝導イヤホン及び聴取機器について説明する。
図1は、聴取機器の一例である耳かけ型軟骨伝導補聴器(右耳用)の第1実施形態を示した図である。本実施形態の軟骨伝導補聴器1は、補聴器本体2と、コード3と、軟骨伝導イヤホン4とにより構成されている。また軟骨伝導イヤホン4は、機器本体5と保持体10により構成されている。なお、
図1に示した「内側」、「外側」とは、軟骨伝導補聴器1を耳介に装着した際の向きであって、便宜上、頭側(外耳道の奥側)を内側とし、以下の説明においてもこの「内側」、「外側」を使うこととする。
【0017】
補聴器本体2は、耳介の裏側の付け根の上に載置して使用されるものであって、全体的に緩やかに湾曲した形態となる筐体を備えている。筐体の内部には、音を電気信号に変換するマイクロホンや、マイクロホンから出力される電気信号を装着者の聴力に適合するように処理する補聴処理手段の他、補聴器を構成する各部に電力を供給する電池等が収められている。
【0018】
コード3は、補聴器本体2と後述する電気機械変換器とを電気的に接続するものである。本実施形態のコード3は、補聴器本体2からの電気信号を電気機械変換器に伝える比較的細径の電線と、柔軟性を有する高分子材料(例えば熱可塑性エラストマーやナイロンなど)で形成されて電線の外側を覆う被覆材とにより構成されている。
【0019】
そして軟骨伝導イヤホン4に設けられた機器本体5は、筐体部6と、電気機械変換器7と、取り付け部8と、弾性部9とを備えている。
【0020】
筐体部6は、本実施形態では軽量で比較的硬質の素材(例えばABS樹脂等の合成樹脂)を使用して球殻状に形成されている。筐体部6にはコード3を導入する孔が設けられていて、その内部にはコード3に接続された電気機械変換器7が収容されている。なお、内部に電気機械変換器7を収容するため、筐体部6は、分割した複数の部材を組み合わせることによってその形状になるように(例えば、半球殻状になる2つの部材を組み合わせることによって筐体部6となるように)構成されている。
【0021】
電気機械変換器7は、コード3を介して伝えられる補聴器本体2の電気信号に基づいて振動するものであって、例えば電磁型(バネの復元力を利用したバランスド・アーマチュア型)、動電型、圧電型と称されるものが使用される。本実施形態の電気機械変換器7はバランスド・アーマチュア型であって、磁石やヨーク、コイル等で構成されて全体的に直方体状になる構造部7aと、構造部7aの内部空間を貫くアーマチュア7bとを備えていて、電気機械変換器7に電気信号が印加されると、構造部7aとアーマチュア7bとの間に駆動力が発生し、電気信号に応じた機械振動がアーマチュア7bに生じるように構成されている。また電気機械変換器7は、アーマチュア7bの両端部が筐体部6に支持されている。従って、コード3を介して補聴器本体2の電気信号が印加されると、アーマチュア7bに生じる機械振動が筐体部6に伝わって、筐体部6を振動させることができる。本実施形態の筐体部6は、上記のように軽量で比較的硬質の素材で形成されていて振動伝達率が高いため、アーマチュア7bの機械振動によってこれを効率よく振動させることができる。なお本実施形態の電気機械変換器7は、
図1の部分拡大図において矢印で示す方向(内外方向)に振動する向きで筐体部6に支持されている。
【0022】
取り付け部8は、保持体10に取り付けられるものである。本実施形態の取り付け部8は円環状であって、保持体10の外周部(詳細には後述する外周部の溝部)に嵌合するように形成されている。また取り付け部8は、本実施形態においては筐体部6と同一の素材で形成されている。
【0023】
弾性部9は、弾性を有するとともに、筐体部6と取り付け部8を接続するものである。
図1に示すように本実施形態の弾性部9は、内側から外側に向かって延在した後に湾曲し、その後は外側から内側に向かって延在する、例えば太さ2~4mm、厚み0.8~2mm、伸ばした長さ10~20mmの、U字状になるものであって、端部同士が近づくように力を加えると、これに反発するように弾性力を発生する。また弾性部9は、一端部が筐体部6の外面に一体的に連結し、他端部は取り付け部8の端面に一体的に連結していて、取り付け部8と同様に、筐体部6と同一の素材で形成されている。
【0024】
保持体10は、本実施形態では比較的軟質の素材(例えば熱可塑性エラストマーやシリコーンゴム等)を使用して、
図2(a)に示す如き形状で形成されている。具体的に説明すると、保持体10は、概略円筒状になる保持体本体部10aと、保持体本体部10aの外周部から径方向外側に向けて延在する環状の板状部10bと、保持体本体部10aの外周部から径方向内側に向けて凹む溝部10cとを備えている。ここで、保持体本体部10aの中央部を貫く孔を開口部10dと称することとする。
【0025】
このような筐体部6、電気機械変換器7、取り付け部8、及び弾性部9で構成される機器本体5と保持体10は、
図2(a)に示すように、保持体10に取り付け部8を挿入して取り付け部8を溝部10cに嵌合させて、軟骨伝導イヤホン4として組み立てられる。
【0026】
組み立てられた軟骨伝導イヤホン4を備える軟骨伝導補聴器1は、
図3に示すようにして装用者の耳介100に装着される。詳細に説明すると、筐体部6が保持体10に近づくように弾性部9を撓ませつつ、筐体部6が珠間切痕101に収まるようにして保持体10を外耳道に挿入する。なお図示は省略するが、補聴器本体2は、コード3が耳介100の付け根の前方を回り込むようにしつつ、耳介100の裏側の付け根の上に載置される。
【0027】
このようにして軟骨伝導補聴器1を耳介100に装着した際、弾性部9は
図3において矢印で示した向きに復元するため、筐体部6は、弾性部9の弾性力によって珠間切痕101の内面に軽く押し当たって安定的に保持される。このため、電気機械変換器7によって生じる筐体部6の振動を効率よく耳軟骨に伝達させ音を聴取することができるうえ、装着時に激しく体を動かすことがあっても、筐体部6と耳介100との位置ずれが生じにくくなる。また耳介100の形や大きさは装用者毎に異なるものの、装着時に弾性部9が撓むことによってこれらの違いを吸収することができる。すなわち、装用者毎に弾性部9等の形状や大きさを変えずとも(或いは弾性部9等の形状や大きさを変えた機器本体5を何通りか準備する程度で)耳介に安定的に保持させることができ、汎用性があるため、耳型の採取が必要であった従来のものに比して納期やコストを削減することができる。
【0028】
また、保持体10に設けた板状部10bは薄肉であり、且つ保持体10は比較的軟質の素材で形成されているため、保持体10を外耳道に挿入した際、板状部10bは外耳道の形に合わせて容易に変形する。このため、保持体10を外耳道に挿入した際に軽快な装用感及び外界との十分な通気性が得られるうえ、これを外耳道内で安定的に保持することができる。また保持体10は中空状であって、開口部10dを通して外界と外耳道内が連通しているため、保持体10を外耳道に挿入した状態でも開放感を得ることができる。さらに、外界の音は開口部10dの伝達特性を持って耳道内に伝わるため、筐体部6の振動により耳軟骨に伝達された音と開口部10dを経て外耳道内に入った音とを合わせて聴取することができる。
【0029】
なお、開口部10dが塞がっていて保持体10が中実構造になっていると、音量感を高めることができる。このため、開放感よりも音量感が得られることを重視する場合は、例えば別パーツを開口部10dに挿入してこれを閉鎖する、或いは保持体10を中実状に形成してもよい。さらに別パーツは完全に開口部を閉鎖せず、開口部10dよりも小さい開口面積になるように一部分を塞ぐ物でも良い。またその様な開口面積の大きさの異なる別パーツを複数用意しても良いし、開口面積を可変できるような機構を備える一つの物でも良く、開口部10dを通って耳道内に伝わる音の伝達特性を、開口面積を変えることで調整することもできる。
【0030】
保持体10の構成は適宜変更可能であって、例えば
図2(a)に示した板状部10bに替えて、
図2(b)に示すように、保持体本体部10aの先端部に薄肉の傘状部10eを設けてもよい。なお、筐体部6や取り付け部8の形状等も適宜変更可能である。例えば筐体部6は、外面が球状になるものに限られず楕円体状や卵形状になるものでもよい。また取り付け部8は、円環状になるものに限られず、途中が切り欠かれてC字状になるものでもよい。
【0031】
本発明の軟骨伝導イヤホン及び聴取機器は、上述した実施形態に限られるものではなく、例えば
図4~
図6に示す実施形態で具現化することも可能である。なお、以下の実施形態において、先に説明した部分と基本機能が共通する部分については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
図4は、第1実施形態における弾性部9の変形例を示している。
図4(a)に示した弾性部11は、内外方向に対して直交する向きに沿って延在するものであって、中間部で折れ曲がってV字状になるように形成されている。また弾性部11は、その一端部が筐体部6の外面に一体的に連結し、他端部は取り付け部8の外周面に一体的に連結していて、筐体部6と同一の素材で形成されている。このような弾性部11も弾性部9と同様に、端部同士が近づくように力を加えると、これに反発するように弾性力が発生するため、
図3に示した耳介100に装着した際は、珠間切痕101の内面に筐体部6を軽く押し当てて振動を伝達することができる。
【0033】
図4(b)に示した弾性部12は、比較的硬質の素材で形成された筐体部6とは異なり、比較的軟質の素材(例えば熱可塑性エラストマー等)によって形成されている。弾性部12は直線状に延在するものであって、その一端部は筐体部6の外面に連結し、他端部は取り付け部13の外周面に一体的に連結している。取り付け部13は、先に説明した取り付け部8と同様に円環状に形成されて保持体10に嵌合する一方、比較的硬質の素材で形成された取り付け部8とは異なり、比較的軟質の弾性部12と同一の素材によって形成されている。なお弾性部12と筐体部6とを連結するにあたっては、筐体部6を複数の部材で構成してこれらの部材で弾性部12を挟持するように構成してもよいし、二色成形の技術を利用して弾性部12と筐体部6とを一体的に連結させてもよい。本実施形態の弾性部12は、
図3に示した耳介100に装着した際、筐体部6が珠間切痕101に収まるようにして保持体10を外耳道に挿入すると、直線状に延在していた状態から幅方向に屈曲、或いは厚み方向撓む状態になる長さで形成されている。このため、耳介100に装着した際、弾性部12の復元に伴って筐体部6を珠間切痕101の内面に軽く押し当てて振動を伝達することができる。
【0034】
図5は、本発明を具現化した軟骨伝導イヤホン及び聴取機器の第2実施形態を示している。聴取機器を具現化した本実施形態の軟骨伝導補聴器21は、先に説明した補聴器本体2(
図5では不図示)、及びコード3を備える一方、軟骨伝導イヤホン22を備えるものである。また軟骨伝導イヤホン22は、機器本体23と保持体25により構成されている。
【0035】
機器本体23は、先に説明した筐体部6、電気機械変換器7(
図5では不図示)、弾性部9を備える一方、取り付け部24を備えるものである。
図5(b)に示すように取り付け部24は、大径の円環状部分と小径の円筒状部分を直列状に連結した基部24aと、基部24aの円筒状部分に設けられた環状凸部24bと、基部24aの中心部を貫く貫通孔24cとを備えていて、基部24aにおける円環状部分の端面に弾性部9の端部が一体的に連結している。
【0036】
そして保持体25は、保持体10と同様に比較的軟質の素材によって形成されていて、
図5(b)に示すように、概略円筒状になる保持体本体部25aと、保持体本体部25aの外周部から径方向外側に向けて延在する環状の板状部25bと、保持体本体部25aの中心部を貫通する孔部25cとを備えている。なお孔部25cは、基部24aの円筒状部分を挿入した際、円筒状部分と環状凸部24bが孔部25cの内周面に嵌合するように形作られている。
【0037】
このような機器本体23と保持体25は、
図5(b)に示すように取り付け部24の基部24aを孔部25cに挿入して両者を嵌合させて、軟骨伝導イヤホン22として組み立てられる。なお、このようにして組み立てた際、取り付け部24の貫通孔24cと保持体25の孔部25cは連通している。
【0038】
組み立てられた軟骨伝導イヤホン22を備える軟骨伝導補聴器21も、先に説明した軟骨伝導補聴器1と同様に、
図3に示すようにして装用者の耳介100に装着した際、弾性部9の弾性力によって筐体部6を珠間切痕101の内面に軽く押し当てて振動を伝達することができる。従って軟骨伝導イヤホン22においても、軟骨伝導補聴器1と同様の効果を得ることができる。また貫通孔24cと孔部25cは連通しているため、保持体25を外耳道に挿入した状態でも外界と外耳道内とは通じていて、開放感を得ることができる。
【0039】
なお、保持体25の構成は適宜変更可能であって、例えば上述した板状部25bに替えて、
図5(c)に示すように、保持体本体部25aの先端部に薄肉の傘状部25dを設けてもよい。また、貫通孔24c、或いは孔部25cが閉じていてもよい。
【0040】
そして
図6は、本発明を具現化した軟骨伝導イヤホン及び聴取機器の第3実施形態を示している。聴取機器を具現化した本実施形態の軟骨伝導補聴器31は、先に説明した補聴器本体2、及びコード3を備える一方、
図6(b)に示す軟骨伝導イヤホン32を備えるものである。また軟骨伝導イヤホン32は、保持体33と機器本体37により構成されている。
【0041】
保持体33は、コード3に接続されて気導音を発生させるレシーバ(スピーカ)を組み込んだイヤホン34と、イヤホン34の外側端部に取り付けられる接続パーツ35と、イヤホン34の内側端部に取り付けられる傘状部材36により構成されている。接続パーツ35の外面には、イヤホン34を介してコード3からの電気信号を取り出すための端子が設けられている。なお本実施形態のコード3には、イヤホン34に電気信号を伝えるための電線と、機器本体37に電気信号を伝えるための電線の両方が配設されていて、接続パーツ35の端子は、機器本体37に電気信号を伝えるための電線に対して電気的に接続されている。また傘状部材36は、比較的軟質の素材(例えば熱可塑性エラストマー等)によって形成されている。
【0042】
機器本体37は、先に説明した筐体部6、電気機械変換器7(
図6では不図示)を備える一方、弾性部38と取り付け部39を備えるものである。弾性部38は、図示したようにU字状に形成されていて、その内部には、電気機械変換器7と電気的につながるワイヤが設けられている。弾性部38の一端部は筐体部6に連結し、他端部は取り付け部39に連結している。そして取り付け部39は、本実施形態では円環状をなすものであって、その内面には、弾性部38のワイヤに接続された端子が設けられている。
【0043】
このような保持体33と機器本体37は、
図6(a)に示すように、イヤホン34に接続パーツ35を取り付けた後、
図6(b)に示すように、取り付け部39をイヤホン34に挿入する。
図6(c)に示すように取り付け部39は、接続パーツ35が取り付けられている部位でイヤホン34に保持されるように構成されている。また取り付け部39がイヤホン34に保持された際、接続パーツ35の外面に設けた端子と取り付け部39の内周面に設けた端子が接続されるように構成されている。すなわちコード3からの電気信号を、接続パーツ35、取り付け部39、及び弾性部38を介して電気機械変換器7に伝えることができる。その後は
図6(c)、(d)に示すように、傘状部材36をイヤホン34の内側端部に取り付けて、軟骨伝導イヤホン32として組み立てられる。
【0044】
このような軟骨伝導補聴器31を
図3に示す耳介100に装着する場合は、弾性部38の弾性力によって筐体部6を珠間切痕101の内面に軽く押し当てて振動を伝達することができるため、先に説明した軟骨伝導補聴器1と同様の効果を得ることができる。また外耳道に挿入される保持体33は、イヤホン34を備えていて気導音を発生させることができる。このため、外耳道を開放した状態の場合、イヤホン34からの気導音の1kHzより低い低周波数帯域の音が減衰しても、筐体部6から当該低周波数帯域の音を軟骨伝導により補うことで、十分な音量感を得ることができる。また、補聴器には、マイクロホン、外部入力端子、テレホンコイル、無線アンテナなどの入力部が備わるが、イヤホン34と筐体部6で異なる入力部からの信号を其々出力しても良い。
【0045】
以上、本発明を具現化した一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば各実施形態の構成は左耳用に右耳用とは対称となる形態で実施されても良いし、各実施形態の構成を他の実施形態に適用させてもよい。また上述した構成を、同じような機能となる他の構成に置き換えてもよい。すなわち、例えば
図5に示した実施形態において、機器本体23は保持体25を貫通させた孔部25cに嵌合されるように構成したが、孔部25cに替えて保持体25を貫通しない凹部を設け、この凹部に機器本体23が嵌合されるように構成してもよい。また、取り付け部8等を設けずに、弾性部9等と保持体10等とを直接連結させてもよい。また本発明の聴取機器は、上述した補聴器に限られず、集音器やオーディオ用機器でもよい。なお、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0046】
1、21、31:軟骨伝導補聴器(聴取機器)
4、22、32:軟骨伝導イヤホン
5、23、37:機器本体
6:筐体部
7:電気機械変換器
8、13、24、39:取り付け部
9、11、12、38:弾性部
10、25、33:保持体
10d:開口部
25c:孔部
100:耳介
101:珠間切痕