(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2020098088
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】濱田 健斗
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第212569297(CN,U)
【文献】国際公開第2017/090464(WO,A1)
【文献】特開2017-030737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B27/00-30/60
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面に画像を表示するための画像表示部と、表示された画像の画像光を車両のウインドシールドに投射する光学系を備え、当該ウインドシールドで反射された光により前記画像の虚像を視認できるようにした車両用表示装置であって、前記画像表示部は第1画像表示手段と第2画像表示手段を備え、前記光学系は第1画像表示手段の画像光を透過し第2画像表示手段の画像光を反射するハーフミラーを備え、さらに前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段の画像表示を独立して制御する表示制御手段を備え、前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段の各画像表示面はそれぞれの画像光の出射方向に対して異なる角度で傾斜されており、前記第1画像表示手段による虚像と前記第2画像表示手段による虚像が同じ位置に視認される構成であることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段を排他的に、又は前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段を同時に画像表示する請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段の画像表示面は前記ハーフミラーまでの距離が同じ又は相違する請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記画像表示部は第3画像表示手段を備え、前記光学系は第2のハーフミラーを備え、当該第2のハーフミラーは前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段の画像光と前記第3画像表示手段の画像光の一方を透過し、他方を反射する構
成である請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段と前記第3画像表示手段の1つまたは2つの画像表示手段を他の画像表示手段に対して排他的に、又は前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段と前記第3画像表示手段を同時に画像表示する請求項4に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記第1画像表示手段と前記第2画像表示手段と前記第3画像表示手段のうちいずれか1つ又は2つの画像表示面はその画像光の出射方向に対して垂直であり、他の画像表示面はその画像光の出射方向に対して傾斜されている請求項4又は5に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記画像表示手段は、液晶装置、DMD、マスク表示装置、有機EL装置のいずれか又はこれらの組み合わせで構成される請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に装備される表示装置に関し、特にヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
HUD装置として、自動車のフロントガラスに画像を構成する光を投射し、その反射光により運転者等の乗員が当該画像の虚像を視認できるようにしたものが提案されている。なお、以降において虚像を視認できるようにすることを、画像を表示するとも言う。また、1つのHUD装置で複数の画像を表示できるようにしたHUD装置も提案されている。例えば、特許文献1,2には、それぞれ液晶ディスプレイ等で構成された2つの画像表示部を備え、これら画像表示部に表示された複数の画像をそれぞれ表示する構成のHUD装置が提案されている。
【0003】
これら特許文献1,2の技術は、いずれも2つの画像表示部の間にハーフミラーを配設し、当該ハーフミラーで一方の画像表示部の画像光を反射し、他方の画像表示部の画像光を透過させ、これらの画像光をHUD装置の光学系によりフロントガラスに投射させる構成がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-264529公報
【文献】特開2019-95690公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は奥行感のある画像となるように、2つの画像を異なる位置に同時に表示する技術であるが、乗員から見て2つの画像が重なって視認されると、各画像を明確に認識することが難しいことがある。特許文献2は立体感のある画像となるように、2つの画像を異なる傾きで表示する技術であるが、この場合にも2つの画像が重なっている部分については各画像を明確に認識することが難しいことがある。
【0006】
また、特許文献1,2はいずれも画像表示部として液晶パネル(液晶ディスプレイ)を用いており、表示される2つの画像はいずれも液晶パネルに表示された画像で構成される。そのため、2つの画像の表示に特異性を持たせたい場合、例えば一方の画像をメイン画像とし、他方をサブ画像として表示させるために、2つの画像の鮮鋭度、明るさ、コントラスト等を相違させることが難しく、表示効果の高い画像を表示することが難しい。
【0007】
本発明の目的は、表示した画像を明確に認識することが可能であり、また複数の画像に特異性を持たせた表示効果の高いHUD装置を含む車両用表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像表示面に画像を表示するための画像表示部と、表示された画像の画像光を車両のウインドシールドに投射する光学系を備え、当該ウインドシールドで反射された光により画像の虚像を視認できるようにした車両用表示装置であって、画像表示部は第1画像表示手段と第2画像表示手段を備え、光学系は第1画像表示手段の画像光を透過し第2画像表示手段の画像光を反射するハーフミラーを備えており、その上で、第1画像表示手段と第2画像表示手段の各画像表示面はそれぞれの画像光の出射方向に対して異なる角度で傾斜されており、第1画像表示手段による虚像と第2画像表示手段による虚像が同じ位置に視認される構成である。さらに、第1画像表示手段と第2画像表示手段の画像表示を独立して制御する表示制御手段を備える。
【0009】
本発明において、表示制御手段は第1画像表示手段と第2画像表示手段を排他的に、又は第1画像表示手段と第2画像表示手段を同時に画像表示する。また、本発明において、第1画像表示手段と第2画像表示手段の各画像表示面はそれぞれの画像光の出射方向に対して異なる角度で傾斜されることが好ましい。さらに、第1画像表示手段と第2画像表示手段の画像表示面はハーフミラーまでの距離が同じ又は相違されることが好ましい。
【0010】
本発明は、さらに画像表示部は第3画像表示手段を備え、光学系はさらに第2のハーフミラーを備える。第2のハーフミラーは第1画像表示手段と第2画像表示手段の画像光と、第3画像表示手段の画像光の一方を透過し、他方を反射する。その上で、表示制御手段は、第1画像表示手段と第2画像表示手段と第3画像表示手段の1つまたは2つの画像表示手段を他の画像表示手段に対して排他的に、又は第1画像表示手段と第2画像表示手段と第3画像表示手段を同時に画像表示する構成とすることが好ましい。
【0011】
本発明における画像表示手段は、液晶装置、DMD、マスク表示装置、有機EL装置のいずれか又はこれらの組み合わせで構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の画像表示手段を選択的にあるいは全てを表示させ、ウインドシールドを透してこれらの表示された画像の虚像を視認することができるので、所望とする画像を選択的に表示することが可能であり、表示された画像を明確に認識することが可能な車両用表示装置が提供される。また、複数の画像表示手段を液晶装置、DMD、マスク表示装置、有機EL装置の組み合わせで構成することにより、各装置における表示の特異性を活かした表示効果の高い車両用表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態1のHUD装置を側面方向から見た模式的な構成図。
【
図4】実施形態1の表示動作を説明する模式的な斜視図。
【
図5】実施形態1の表示形態を説明する簡略の斜視図。
【
図9】実施形態5の表示動作を説明する模式的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は自動車に適用した実施形態1のHUD装置1の概念構成図である。自動車のダッシュボードDB内にHUD装置1が配設されており、当該HUD装置1から出射した画像光Lを、当該ダッシュボードの上面開口Hを通して自動車のフロントガラス(ウインドシールドと称する)WSに投射させる。投射された画像光LはウインドシールドWSで反射されて自動車の運転者等の乗員Mに向けられる。この画像光Lが乗員Mの眼に入ることにより、当該乗員MはウインドシールドWSを透して自動車の前方位置に画像光による虚像Iを視認することができ、当該画像の表示が行われる。
【0015】
前記HUD装置1は、生成した画像を画像表示面に表示する画像表示部2と、この画像表示部2に表示された画像をウインドシールドWSに投射する光学系3を備えている。この画像表示部2はそれぞれ独立して画像を表示する2つの第1画像表示手段21と第2画像表示手段22で構成されている。また、光学系3はこれら2つの画像表示手段21,22で表示された画像の画像光L1,L2をそれぞれウインドシールドWSに投射させるようになっている。これにより、ウインドシールドにおいて反射された2つの画像光L1,L2がそれぞれ乗員Mの眼に入ることになり、乗員Mは2つの虚像、すなわち第1虚像I1と第2虚像I2を視認することが可能になる。なお、この画像光Lの光路の中心軸は光学系3の主光軸となる。
【0016】
図2に前記HUD装置1を側面方向から見た模式構成図を示す。前記第1画像表示手段21と第2画像表示手段22はそれぞれ液晶パネルを備えた液晶装置で構成されており、第1液晶装置21と第2液晶装置22として構成されている。これらの詳細については後述するが、第1液晶装置21は液晶パネルに第1画像を表示し、表示した第1画像の第1画像光L1を出射することが可能に構成されている。同様に、第2液晶装置22は液晶パネルに第2画像を表示し、表示した第2画像の第2画像光L2を出射することが可能に構成されている。これら第1画像光L1と第2画像光L1は所定の位置で交差するようにそれぞれの姿勢が設定されている。
【0017】
前記光学系3は、第1画像光L1と第2画像光L2が交差する位置に配置されて第1画像光L1を透過し第2画像光L2を反射するハーフミラー30と、このハーフミラー30で透過又は反射された画像光を反射する第1反射部31と、この第1反射部31で反射された光を更に反射してウインドシールドWSに投射する第2反射部32を備えている。このハーフミラー30は透過された第1画像光L1と、反射された第2画像光L2の光路が同一方向に向けられるように第1液晶装置21と第2液晶装置22に対する面角度が設定されている。
【0018】
前記第1反射部31は凸面鏡又は平面鏡で構成されるが、ここでは平面鏡31で構成されている。第2反射部32は凹面鏡で構成されており、この凹面鏡32は所要の焦点距離となる曲率の球面または非球面で構成されている。前記平面鏡31は凹面鏡32の焦点距離を実質的に延長させるために設けられている。そして、画像表示部2において表示された画像が凹面鏡32の焦点距離内に配置されるようにHUD装置1を構成することにより、第1液晶装置21と第2液晶装置22で表示された各画像による第1虚像I1と第2虚像I2を乗員Mが視認することができる。
【0019】
また、これら第1液晶装置21と第2液晶装置22は表示制御装置4に接続されており、この表示制御装置4によって各液晶装置21,22での画像表示が制御される。この表示制御装置4には設定部5が接続されており、乗員M等による設定部5での設定により第1液晶装置21と第2液晶装置22をそれぞれ個別に画像を表示制御し、あるいは両液晶装置21,22において同時に画像を表示制御することができるように構成されている。
【0020】
図3は前記HUD装置1の具体的な構成を示す図である。画像表示部2の第1液晶装置21はヒートシンクを兼ねたケース210を備えており、このケース210の開口部に第1画像を表示することが可能な液晶パネル211が配設されている。ここではカラー画像を表示する液晶パネルで構成されている。また、ケース210の内底面にバックライト用のLED(発光ダイオード)212を搭載した光源基板213が配設されている。このLED212は発光面が液晶パネル211に対面するように配設されており、LED212から出射された光はケース210の内面で反射されて集光された光束として、あるいは平行光束として液晶パネル211に照射され、液晶パネル211を透過して第1画像光L1として出射される。この液晶パネル211は第1画像光L1の光束中心軸、すなわち第1光軸に対して直交する方向に向けられているので、第1画像は当該第1光軸に垂直な面状の画像として表示されることになる。また、液晶パネル211の中心はほぼ第1光軸に一致されている。
【0021】
第2液晶装置22も同様の構成であり、ケース220にカラー画像の第2画像を表示することが可能な液晶パネル221が配設されている。基板223に搭載されているLED222から出射された光は液晶パネル221に照射され、当該液晶パネル221を透過して第2画像光L2として出射される。しかし、この液晶パネル221は第2画像を表示する画像表示面がLED222から出射される第2画像光L2の光束中心軸である第2光軸に対して所要の角度で傾斜した方向に向けられている。したがって、第2画像は第2光軸に角度で傾斜した面状の画像として表示されることになる。また、液晶パネル221の中心はほぼ第2光軸に一致されている。
【0022】
ここで、図示は省略するが、第1液晶装置21においては、液晶パネル211とLED212との間にミラーを配設し、LED212の光をミラーで反射して液晶パネル211に照射するようにしてもよい。このようにすることで、液晶パネル211とLED212の相対位置関係を変更し、ケース210の形状の設計の自由度が向上される。第2液晶装置22についても同様である。
【0023】
前記した第1液晶装置21と第2液晶装置22は、それぞれの画像が表示される画像表示面となる各液晶パネル211,221から前記ハーフミラー30までの距離はそれぞれ任意に設定されてもよいが、ここでは両者の距離は略等しくされている。すなわち、第1液晶装置21の液晶パネル211からハーフミラー30までの距離と、第2液晶装置22の液晶パネル221からハーフミラー30までの距離が等しくされている。
【0024】
前記表示制御装置4は、第1液晶装置21の画像表示を制御する第1制御部41と、第2液晶装置22の画像表示を制御する第2制御部42を備えている。これら第1制御部41と第2制御部42は、乗員M等が設定部5において設定を行うことにより、第1液晶装置21と第2液晶装置22において表示する画像を任意に設定することが可能とされている。また、当該設定部5での設定により、前記したように第1液晶装置21と第2液晶装置22における画像表示をそれぞれ個別に制御し、あるいは両装置21,22を同時に制御することができる。
【0025】
以上の構成のHUD装置1では、設定部5での設定に基づいて表示制御装置4の第1制御部41により第1液晶装置21の液晶パネル211に第1画像が表示され、かつLED212が発光されて液晶パネル211にバックライト光が照射されると、液晶パネル211を透過した光は第1画像光L1として出射される。この第1画像光L1はハーフミラー30に投射され、当該ハーフミラー30を透過される。この透過された第1画像光L1は平面鏡31において反射され、さらに凹面鏡32において反射されてウインドシールドWSに投射される。
【0026】
この第1画像光L1はウインドシールドWSで反射され、乗員Mの眼に入ることにより、
図4(a)に示すように、乗員Mは自動車の前方位置に第1画像光による第1虚像I1を視認することができ、第1画像の表示が行われる。第1液晶装置21の液晶パネル211は画像表示面が第1光軸に垂直に向けられているので、視認される第1虚像I1は光学系3の主光軸に垂直な虚像、すなわち乗員Mから見て鉛直方向の虚像として観察される。この例では、第1画像はスピードメータ画像であり、速度目盛と速度数値で構成されており、乗員の前方の所定位置においてほぼ垂直に正立した第1虚像I1として視認される。
【0027】
また、表示制御装置4の第2制御部42により第2液晶装置22の液晶パネル221に第2画像が表示され、LED222が発光されると第2画像光L2が出射され、この第2画像光L2はハーフミラー30に投射され、当該ハーフミラー30で反射される。この反射された第2画像光L2は平面鏡31において反射され、さらに凹面鏡32において反射されてウインドシールドWSに投射され、乗員Mは自動車の前方位置に第2画像光L2による第2虚像I2を視認することができ、第2画像の表示が行われる。
【0028】
第2液晶装置22の液晶パネル221は画像表示面が第2光軸に対して所要の角度で傾斜されているので、
図4(b)に示すように、視認される第2虚像I2は光学系3の主光軸に対して傾斜された虚像として観察される。この例では、第2画像は走行先を案内するナビゲーション画像であり、自動車の走行先を示す矢印画像で構成されており、乗員の前方の所定位置を含む前後方向に所要の角度で、例えば水平に近い角度で延びる第2虚像I2として視認される。
【0029】
一方、表示制御装置4により第1液晶装置21と第2液晶装置22を同時に制御することにより、第1画像と第2画像の各虚像I1,I2が同時に視認される。
図4(c)のように、鉛直方向に向けられた第1虚像I1のスピードメータ画像と、水平に近い角度の第2虚像I2のナビゲーション画像がほぼ同じ位置において同時に視認されるようになる。
【0030】
このように、乗員Mが設定部5において設定を行うことにより、表示制御装置4の制御によって第1液晶装置21による第1画像と第2液晶装置22による第2画像のいずれか一方を選択的に表示させ、あるいは両画像を同時に表示させることができる。この例では、スピードメータ画像I1とナビゲーション画像I2のいずれか一方のみ、あるいは両画像を同時に表示させることができる。したがって、乗員Mが必要とする画像のみを表示させることにより、両画像が重なって表示されることが回避でき、各画像を明確に認識することができるようになる。また、両画像を同時に表示させることにより両画像による情報を同時に認識することができる。
【0031】
ここで、実施形態1では、第1液晶装置21の液晶パネル211と第2液晶装置22の液晶パネル221がそれぞれハーフミラー30に対して同じ距離に配置され、かつ各液晶パネル211,221の第1光軸、第2光軸が主光軸に一致されているので、
図5(a)のように、第1虚像I1と第2虚像I2はそれぞれのほぼ中央位置において交差する形態で視認される。この形態では、第1虚像I1と第2虚像I2の中心が一致されるので、乗員Mが両虚像を視認する際の視点位置(焦点位置)が同じになり、視認性が向上される。
【0032】
一方、図示は省略するが、第1液晶装置21の液晶パネル211と第2液晶装置22の液晶パネル221の各中心を第1光軸又は第2光軸に対して変位させるように構成してもよい。例えば、第1液晶装置21の液晶パネル211を第1光軸に対して変位させ、当該液晶パネル211の端部を第1光軸に位置させるようにすれば、
図5(b)のように、第1虚像I1と第2虚像I2を交差させない表示形態とすることができる。
【0033】
また、第1液晶装置21の液晶パネル211の端部を第1光軸に位置させるとともに、第1液晶装置21の液晶パネル211と第2液晶装置22の液晶パネル221のハーフミラー30までの距離を互いに相違させるようにしてもよい。換言すれば凹面鏡32までの距離を相違させるようにする。このようにすれば、
図5(c)のように、第1虚像I1と第2虚像I2を交差させず、しかも両虚像の位置を相違させることができる。この例では第1液晶装置21の液晶パネル211からハーフミラー30までの距離を第2液晶装置22の液晶パネル221における距離よりも短くしているので、乗員Mからみると第1虚像I1はより近くに視認される。
【0034】
このように、HUD装置1における画像表示部2と光学系3の構成、特に第1液晶装置21と第2液晶装置22及びハーフミラー30の配設位置と姿勢を適宜に設定することにより、第1画像(第1虚像I1)と第2画像(第2虚像I2)を任意の形態で表示することが可能になり、各画像の視認性が高められ、各画像を明確に認識することができる。
【0035】
(実施形態2)
図6は実施形態2のHUD装置1Aの具体的な構成図を示す。実施形態2では、2つの画像表示手段は、第1画像表示手段としての液晶装置21と、第2画像表示手段としてのDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)装置23で構成されている。液晶装置21は実施形態1の第1液晶装置21と同じ構成であり、液晶パネル211に第1画像を表示し、表示した第1画像の第1画像光L1を出射することが可能に構成されている。
【0036】
前記DMD装置23は、ケース230と、このケース230に設けられて前記表示制御装置4での制御によってマイクロミラーが選択的に駆動されるDMD231と、基板233に搭載されて当該DMD231に対して光を照射するLED232と、当該LED232の光を平行光束とするレンズ234と、スクリーン235を備えている。このDMD231はマイクロミラーの配列面がレンズ234の光軸(第2光軸と等価)に対して所要の角度で傾斜されている。このDMD装置23では、LED232の光をDMD231に投射し、同時にDMD231においてマイクロミラーの角度を選択的に制御することによりスクリーン235に画像が形成され、この画像により第2画像光L2が生成される。この画像が形成されたスクリーン235の表面が画像表示面となる。この第2画像光L2は第2光軸に沿ってハーフミラー30に投射され、ここで凹面鏡32に向けて反射される。
【0037】
実施形態2においても、
図1,2に示したと同様に第1画像表示手段としての液晶装置21による第1画像の虚像と、第2画像表示手段としてのDMD装置23による第2画像の虚像を視認することが可能である。また、表示制御装置4の制御によって第1画像と第2画像のいずれか一方を選択的に表示させ、あるいは両画像を同時に表示させることができる。したがって、乗員Mが必要とする画像のみを表示させることにより、両画像が重なって表示されることが回避でき、各画像を明確に認識することができるようになる。また、両画像を同時に表示させることにより両画像による情報を同時に認識することができる。
【0038】
また、実施形態2では、液晶装置21とDMD装置23は、それぞれにおいて表示する画像の精細度、明るさ、コントラスト等が相違されるので、第1虚像と第2虚像の見栄えも相違される。したがって、表示する画像の図柄に応じて液晶装置とDMD装置を使い分けることにより、それぞれの特異性を活かした表示を行うことができ、全体としての表示効果を高めることができる。
【0039】
本発明において、実施形態2のDMD装置はDMDのマイクロミラーを制御する回路部品や、LEDの発光を制御する回路部品等の電子素子が一体に形成されたMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)デバイスとして構成されてもよい。
【0040】
(実施形態3)
図7は実施形態3のHUD装置1Bの具体的な構成図を示す。実施形態3では、2つの画像表示手段は、第1画像表示手段としての液晶装置21と、第2画像表示手段としてのマスク表示装置24で構成されている。液晶装置21は実施形態1の第1液晶装置と同じ構成であり、第1画像の第1画像光L1を出射することが可能に構成されている。
【0041】
前記マスク表示装置24は、ケース240と、このケース240に設けられて所要の画像パターンの透光部が形成されているマスク241と、基板243に搭載されて当該マスク241に対して光を照射するLED242と、当該LED242の光を平行光束とするレンズ244とを備えている。このマスク表示装置24はLED242から出射された光をマスク241により選択的に透過させることにより、所要の画像の画像光を出射する構成であるのでここではマスク表示装置と称している。このマスク表示装置24ではマスク241の表面が画像表示面となる。
【0042】
実施形態3においても、
図1,2に示したと同様に第1画像表示手段としての第1液晶装置21による第1画像の虚像と、第2画像表示手段としてのマスク表示装置24による第2画像の虚像を視認することが可能である。また、表示制御装置4の制御によって第1画像と第2画像のいずれか一方を選択的に表示させ、あるいは両画像を同時に表示させることができ、各画像を明確に認識することができるようになる。また、両画像を同時に表示させることにより両画像による情報を同時に認識することができる。
【0043】
また、液晶装置21とマスク表示装置24は、それぞれにおいて表示する画像の精細度、明るさ、コントラスト等が相違されるので、第1虚像と第2虚像の見栄えも相違される。したがって、表示する画像の図柄に応じて液晶装置とマスク表示装置を使い分けることにより、それぞれの特異性を活かした表示を行うことができ、全体としての表示効果を高めることができる。
【0044】
(実施形態4)
本発明においては、図示は省略するが、実施形態4として、2つの画像表示手段の一方あるいは両方が有機EL装置で構成されてもよい。有機EL装置は有機ELパネルに所要の画像を形成して表示することができ、表示された画像の画像光が出射される。したがって、有機EL装置では有機ELパネルがそのまま画像表示面となる。
【0045】
これら実施形態2~4においては、第1画像表示手段がDMD装置、マスク表示装置、有機EL装置のいずれかで構成され、第2画像表示手段が液晶装置で構成されてもよい。あるいは、第1画像表示手段と第2画像表示手段の両方がDMD装置、マスク表示装置、有機EL装置で構成され、あるいは液晶装置を含めたこれらの組み合わせで構成されてもよい。このように第1と第2の画像表示手段が適宜に組み合わされることで、各装置による表示の特異性を活かして表示効果を高めることができる。
【0046】
(実施形態5)
図8は実施形態5のHUD装置1Cの具体的な構成図を示す。この実施形態5では、画像表示部2は第1ないし第3の画像表示手段を備え、光学系3は第1と第2の2つのハーフミラーを備えている。すなわち、画像表示部2は、第1画像表示手段としての液晶装置21と、第2画像表示手段としてのDMD装置23と、第3画像表示手段としてのマスク表示装置24で構成されている。液晶装置21は実施形態1の第1液晶装置21と同じ構成であり、DMD装置23は実施形態2のDMD装置23と同じであり、マスク表示装置24は実施形態3のマスク表示装置24と同じである。
【0047】
光学系3の第1ハーフミラー30Aは液晶装置21からの第1画像光L1を透過し、DMD装置23からの第2画像光L2を反射する。第2ハーフミラー30Bは前記第1画像光L1と第2画像光L2を透過し、マスク表示装置24からの第3画像光L3を反射する。この第2ハーフミラー30Bを透過されあるいは反射された画像光L1~L3は平面鏡31で反射され、同図には表れない凹面鏡32で反射されてウインドシールドWSに投射される。
【0048】
この構成において、第1ハーフミラー30Aに対する液晶装置21とDMD装置23の位置関係は適宜に設定される。また、第1ハーフミラー30Aに対する第2ハーフミラー30Bの位置と、この第2ハーフミラー30Bに対するマスク表示装置24の位置についても適宜に設定される。ここでは、凹面鏡32に対し、液晶装置21とDMD装置23はほぼ同じ距離であり、マスク表示装置24はそれよりも短い距離に設定されている。
【0049】
さらに、第1ないし第3の画像表示手段は表示制御装置4によりそれぞれ独立して画像を表示することが可能とされている。すなわち、液晶装置21、DMD装置23、マスク表示装置24は、それぞれ表示制御装置4の第1制御部41、第2制御部42、第3制御部43により画像表示が制御される。したがって、これら3つの装置の画像のいずれか1つ、あるいはいずれか2つ、又は3つの画像を表示することが可能な表示装置として構成できる。
【0050】
図9はその一例であり、実施形態1と同様に、第1画像としてスピードメータ画像、第2画像としてナビゲーション画像、第3画像として警告画像をそれぞれ表示し、これらの虚像が視認されるように構成される。第1画像と第2画像を表示する液晶装置21とDMD装置23は制御により任意の画像を表示することが可能であるので、経時的に変化する画像を表示する場合に適用される。第3画像を表示するマスク表示装置24は固定的な画像を表示する場合に適用されることで、装置のコスト低減に有利になる。
【0051】
実施形態5では、第1と第2のハーフミラー30A,30Bと、液晶装置21、DMD装置23、マスク表示装置24の相互位置や姿勢を適宜に設定することにより、それぞれの画像の虚像が
図9に示した形態で視認されることが可能になる。この例では、スピードメータ画像とナビゲーション画像は実施形態1と同様な表示の形態となり、警告画像は乗員Mに最も近い位置に表示される。
【0052】
実施形態5においても、液晶装置21、DMD装置23、マスク表示装置24の各装置を選択してそれぞれの画像の表示を行うことにより、それぞれの虚像を明確に認識できるようになる。また、各装置における表示の特異性を活かすことにより、表示効果の高い表示が可能になる。
【0053】
本発明において、光学系の第1反射部は凸面鏡であってもよい。あるいは、第1反射部は設けなくてもよい。また、本発明におけるウインドシールドは実施形態に記載の自動車のフロントガラスに限定されるものではなく、車両に備えられる透光性のあるウインド等の車体の一部であってもよい。
【0054】
また、本発明において、光軸に対する第1画像と第2画像の角度は実施形態の記載に限定されるものではなく、第1画像と第2画像の角度に任意に設定できる。
【符号の説明】
【0055】
1 HUD装置
2 画像表示部
3 光学系
21 第1液晶装置(第1画像表示手段)
22 第2液晶装置(第2画像表示手段)
23 DMD装置(第2画像表示手段)
24 マスク表示装置(第2画像表示手段、第3画像表示手段)
30 ハーフミラー
30A 第1ハーフミラー
30B 第2ハーフミラー
31 第1反射部(平面鏡)
32 第2反射部(凹面鏡)
WS ウインドシールド
I(I1,I2,I3) 虚像