(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240611BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240611BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240611BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240611BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L9/00
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020105626
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】矢部 雄大
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 悟司
(72)【発明者】
【氏名】石橋 健太
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031417(JP,A)
【文献】特開2014-043516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ブタジエンゴム及び
該変性ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムを含有するゴム成分と、カーボンナノチューブとを含み、
前記変性
ブタジエンゴムが、少なくともシリル基及びアミノ基のうちの少なくとも1つを有し、
前記ゴム成分中の前記変性
ブタジエンゴムの含有率が、50質量%以上
100質量%未満であることを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項2】
さらに、カーボンブラックを含むことを特徴とする、請求項
1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
さらに、シリカを含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに用いられるゴム組成物については、補強のための充填剤(補強性充填剤)として、カーボンブラックや、シリカを配合したものが一般的に用いられている。
また近年、カーボンブラックやシリカ以外の補強性充填剤として、熱伝導性の高いカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバー(CNF)を配合したタイヤ用ゴム組成物が提案されている。CNTやCNFをゴム組成物中に含有させることで、ゴムの補強性をより高めることができ、ゴムに導電性を付与できるという利点もある。
【0003】
ゴム組成物にCNTを配合した技術として、例えば特許文献1には、ゴム成分を構成する2種以上のジエン系ゴムのうち、最も体積比率が大きい主ジエン系ゴムに導電性物質としてカーボンナノチューブを添加混合し、得られた混合物に、他のジエン系ゴムと補強性充填剤を混合することで、ゴム組成物の導電性を改善する技術が、開示されている。
また、特許文献2には、ジエン系ゴム成分に対して、平均外径4~50nm、平均アスペクト比10~3000のカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーを、配合することで、弾性率及び耐熱性の改善を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-204009号公報
【文献】特開2009-46547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のカーボンナノチューブを含んだゴム組成物は、ゴム中のカーボンナノチューブを良好に分散させることが難しいという問題があった。そのため、カーボンナノチューブ自体の熱伝導性が高くても、ゴム組成物の低発熱性は悪化し、転がり抵抗の悪化を招くことが考えられた。
については、
【0006】
そこで、本発明は、カーボンナノチューブの分散性を高め、低発熱性に優れたゴム組成物、及び、転がり抵抗が低減されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明のゴム組成物は、変性ポリマーを含有するゴム成分と、カーボンナノチューブとを含み、前記変性ポリマーが、シリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする。
上記構成を具えることで、カーボンナノチューブの分散性を高め、低発熱性を改善することができる。
【0008】
本発明のゴム組成物では、前記変性ポリマーが、少なくともシリル基及びアミノ基を有することが好ましい。この場合、カーボンナノチューブの分散性をより高め、より優れた低発熱性を得ることができる。
【0009】
本発明のゴム組成物では、前記変性ポリマーが、変性ブタジエンゴムであることが好ましい。この場合、他の物性を低下させることなく、カーボンナノチューブの分散性を高め、低発熱性を改善することができる。
【0010】
本発明のゴム組成物では、さらに、カーボンブラックを含むことが好ましい。この場合、ゴム組成物の耐摩耗性や耐久性をより向上できる。
【0011】
本発明のゴム組成物では、さらに、シリカを含むことが好ましい。この場合、ゴム組成物の耐摩耗性や低発熱性をより改善できる。
【0012】
本発明のゴム組成物では、前記ゴム成分中の前記変性ポリマーの含有率が、50質量%以上であることが好ましい。この場合、ゴム組成物の低発熱性の改善効果をより確実に実現できる。
【0013】
また、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をトレッド部へ用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることで、本発明のタイヤは、転がり抵抗を改善できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カーボンナノチューブの分散性を高め、低発熱性に優れたゴム組成物、及び、転がり抵抗が低減されたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明のゴム組成物及びタイヤの一実施形態について、例示説明する。
【0016】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、変性ポリマーを含有するゴム成分と、カーボンナノチューブ(CNT)とを含む。
そして、本発明は、前記変性ポリマーが、シリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする。
【0017】
前記ゴム成分として、シリル基、アミノ基及びスズ元素変性ポリマーを用いることで、ゴム組成物中に配合されたCNTとの反応性が高まり、前記CNTの分散性を向上できる結果、優れた低発熱性を実現できる。
【0018】
以下、本発明のゴム組成物を構成する各成分について説明する。
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物は、上述したように、シリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを有する変性ポリマーを含有するゴム成分を含む。
前記変性ポリマーが反応サイトとして、シリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを有することで、前記CNTとの反応性が高まるため、従来の技術に比べて、ゴム組成物中の前記CNTの分散性を高めることができる。
【0019】
また、前記変性ポリマーは、前記CNTの分散性をより向上させ、より優れた低発熱性が得られるという観点から、少なくともシリル基及びアミノ基の両方を有することが好ましい。
【0020】
なお、前記変性ポリマーが、シリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを含んでおらず、別の官能基をのみ有する場合には、前記CNTの分散性を十分に得ることができず、所望の低発熱性を実現できない。
また、前記変性ポリマーは、シリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを有していればよく、例えば他の充填剤の分散性を高める等の要求される性能に応じて、他の官能基をさらに有することもできる。
【0021】
さらに、前記変性ポリマーのポリマー成分については、特に限定はされず、要求される性能に応じて、適宜選択することが可能である。
例えば、前記変性ポリマーとして、変性天然ゴム、変性ブタジエンゴム、変性スチレンブタジエンゴム等の変性ゴムを用いることもできるし、変性フェノール樹脂、変性テルペン樹脂等の変性樹脂を用いることもできる。これらの中でも、他の物性を低下させることなく、カーボンナノチューブの分散性を高め、低発熱性を改善することができる観点からは、変性ブタジエンゴム又は変性スチレンブタジエンゴムであることが好ましく、変性ブタジエンゴムであることがより好ましい。
【0022】
ここで、前記変性ポリマーを変性するための変性剤については、変性官能基の種類や、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
例えば、前記変性ポリマーに、より確実にシリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを付与できる観点からは、以下の一般式(I)~(X)で示される化合物の少なくとも一種を有する変性剤が挙げられる。
【0023】
【化1】
前記一般(I)式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、aは0~2の整数であり、OR
2が複数ある場合、複数のOR
2は互いに同一でも異なっていても良く、また分子中には活性プロトンは含まれない。
【0024】
ここで、前記一般式(I)で表される化合物(アルコキシシラン化合物)の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等を挙げることができるが、これらの中で、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン及びジメチルジエトキシシランが好適である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせても用いてもよい。
【0025】
【化2】
前記一般式(II)中、A
1はエポキシ、イソシアネート、イミン、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、シラザン及ジスルフィドからなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、R
3は単結合又は二価の炭化水素基であり、R
4及びR
5は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、bは0~2の整数であり、OR
5が複数ある場合、複数のOR
5は互いに同一であっても異なっていても良く、また分子中には活性プロトンは含まれない。
【0026】
上記一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物、例えば、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン等を挙げることができる。これらの中で、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
【0027】
【化3】
前記一般式(III)中、n1+n2+n3+n4=4(但し、n1、n2、n3及びn4は0~4の整数であり、且つn1+n2=1以上の整数)であり、A
1は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基(イソシアナート基又はチオイソシアナート基を示す。以下、同様。)、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、並びに、加水分解性基を有する第一若しくは第二アミノ基又はメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、R
21は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、n1が2以上の場合には同一でも異なっていても良く、R
23は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基又はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、n3が2以上の場合には同一でも異なっていても良く、R
22は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、いずれも窒素原子及び/又はケイ素原子を含有していても良く、n2が2以上の場合には、互いに同一若しくは異なっていても良く、或いは、一緒になって環を形成しており、R
24は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、n4が2以上の場合には同一でも異なっていても良い。
前記加水分解性基を有する第一若しくは第二アミノ基又は前記加水分解性基を有するメルカプト基における加水分解性基としては、トリメチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
なお、本発明において、「炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基」とは、「炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基若しくは炭素数3~20の一価の脂環式炭化水素基」をいう。二価の炭化水素基の場合も同様である。
【0028】
【化4】
前記一般式(IV)中、p1+p2+p3=2(但し、p1、p2、p3は0~2の整数であり、且つp1+p2=1以上の整数)であり、A
2は、NRa(Raは、一価の炭化水素基、加水分解性基又は含窒素有機基である。加水分解性基として、トリメチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。)、或いは、硫黄であり、R
25は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、p1が2の場合には、互いに同一若しくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、R
27は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基又はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、R
26は、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基又は含窒素有機基であり、いずれも窒素原子及び/又はケイ素原子を含有していても良く、p2が2の場合には、互いに同一若しくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、R
28は、炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
【0029】
【化5】
前記一般式(V)中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である)であり、R
31は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
32及びR
33はそれぞれ独立して加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
34は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていても良く、R
35は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていても良い。
【0030】
【化6】
前記一般式(VI)中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である)であり、R
36は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
37はジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていても良く、R
38は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていても良い。
【0031】
【化7】
前記一般式(VII)中、TMSはトリメチルシリル基であり、R
40はトリメチルシリル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
41は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R
42は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
【0032】
【化8】
前記一般式(VIII)中、TMSはトリメチルシリル基であり、R
43及びR
44はそれぞれ独立して炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
45は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、複数のR
45は、同一でも異なっていても良い。
【0033】
【化9】
前記一般式(IX)中、r1+r2=3(但し、r1は0~2の整数であり、r2は1~3の整数である。)であり、TMSはトリメチルシリル基であり、R
46は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
47及びR
48はそれぞれ独立して炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、複数のR
47又はR
48は、同一でも異なっていても良い。
【0034】
【化10】
前記一般式(X)中、Xはハロゲン原子であり、R
49は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R
50及びR
51はそれぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であるか、或いは、R
50及びR
51は結合して二価の有機基を形成しており、R
52及びR
53はそれぞれ独立してハロゲン原子、ヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。R
50及びR
51としては、加水分解性基であることが好ましく、加水分解性基として、トリメチルシリル基又はtert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0035】
なお、上記一般式(III)~(X)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物については、アルコキシシラン化合物であることが好ましい。
また、上述した式(I)~(X)で示される化合物の中でも、テトラオキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及び、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロピルアミンのうちから選択される少なくとも一種がより好ましく、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシランであることが特に好ましい。
【0036】
また、前記変性ポリマーの変性については、例えば以下に示すカップリング剤を用い、錫-炭素結合又はケイ素-炭素結合を形成することができる。
(R3)aZXb
(ここで、Zは錫又はケイ素であり、R3は1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、及び、7~20個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、Xは、塩素又は臭素であり、aは0~3の整数であり、bは1~4の整数であり、a+b=4である。]
例えば、前記変性ポリマーに、より確実にシリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを付与できる観点からは、以下の一般式(I)~(X)で示される化合物の少なくとも一種を有する変性剤が挙げられる。
【0037】
前記カップリング剤のうち、例えば、R3としては、メチル、エチル、n-ブチル、ネオ
フィル、シクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル等が含まれる。
また、より好ましいカップリング剤としては、四塩化錫、(R3)SnCl3、(R3)2SnCl2、(R3)3SnClなどが挙げられ、四塩化錫が特に好ましい。
【0038】
なお、前記ゴム成分は、前記変性ポリマー100%から構成することもできるが、本発明の目的を損なわない範囲であれば、前記変性ポリマー以外のゴムを含有することもできる。
ここで、前記ゴム成分における前記変性ポリマーの含有率は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。前記変性ポリマーの含有率が40質量%以上であることで、前記CNTの分散性を確実に高めることができ、ゴム組成物の低発熱性の改善効果を、より確実に実現できるためである。
【0039】
前記変性ポリマー以外のゴム成分の種類については、特に限定されず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)(なお、BRについては、1,3-ブタジエンの重合体であるポリブタジエンのことを意味し、ブタジエンと他のポリマーとの共重合体等は含まない。)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの中から、ジエン系ゴムを含む1種又は2種以上を適宜選択し、使用することができる。
【0040】
なお、前記変性ポリマー以外のゴム成分については、未変性のゴムであっても、変性されたゴムであっても構わない。例えば、前記変性ゴムを用いることで、前記変性ポリマーでは相互作用が得られにくい補強性充填剤(例えば、カーボンブラック等)や、その他の充填剤(補強性充填剤以外の充填剤)との相互作用が高くなるように変性されたゴムを用いることによって、多くの充填剤について分散性を高め、より優れた低発熱性や耐摩耗性を実現できる。
本発明では、前記「変性ポリマー」については、シリル基、アミノ基及びスズ元素のうちの少なくとも1つを有するポリマーのことを指しており、その他の官能基を有するゴム(上述した変性ポリマーに該当しない変性されたゴム)については、「変性ゴム」又は「変性されたゴム」と呼んでいる。
【0041】
(カーボンナノチューブ)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、カーボンナノチューブ(CNT)を含む。
前記CNTを含むことによって、ゴム組成物の耐摩耗性や、導電性を高めることが可能となる。
【0042】
ここで、前記カーボンナノチューブについては、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質のことである。本発明では、前記カーボンナノチューブとして、単層構造のシングルウォールナノチューブ(SWNT)、複層の同軸管状なすマルチウォールナノチューブ(MWNT)、複層構造の中でも特に2層のものはダブルウォールナノチューブ(DWNT)と称されているが、それらのいずれであってもよい。
また、前記CNTの合成方法としては、例えば、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学的気相成長法(CVD法)等が挙げられるが、いずれにより合成されたものであってもよく、特に限定されない。
【0043】
さらに、カーボンナノチューブの直径(平均径)についても、特に限定されず、要求される性能に応じて適宜変更することができる。例えば、前記カーボンナノチューブの直径を、0.1~200nmとすることができ、好ましくは1~20nmである。また、前記カーボンナノチューブの長さ(平均長)は、50nm~100μm程度であることが好ましく、より好ましくは0.5~10μmである。
なお、前記CNTの平均径及び平均長は、例えば、走査型電子顕微鏡観察(SEM)により測定できる。撮影画像のうち、導電性炭素繊維10個を無作為に選択し、その直径の平均を算出することで平均径が得られ、長さの平均を算出することで平均長が得られる。
【0044】
また、前記CNTの含有量についても、特に限定されず、CNTの種類や、要求される性能に応じて適宜変更することができる。
例えば、前記CNTが、シングルウォールナノチューブの場合には、前記ゴム成分100質量部に対して0.01~30質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。前記CNTの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上であることで、ゴム組成物の補強性向上効果や耐摩耗性向上効果をより確実に得ることができ、10質量部以下であることで、低発熱性の悪化をより確実に抑えることができる。
また、前記CNTが、マルチウォールナノチューブの場合には、前記ゴム成分100質量部に対して0.1~50質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましい。前記ゴム成分100質量部に対して1質量部以上であることで、ゴム組成物の補強性向上効果や耐摩耗性向上効果をより確実に得ることができ、30質量部以下であることで、低発熱性の悪化をより確実に抑えることができる。
【0045】
(その他の補強性充填剤)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分及びカーボンナノチューブに加えて、前記カーボンナノチューブ以外の補強性充填剤(以下、「その他の補強性充填剤」という。)。
前記その他の補強性充填剤を含むことによって、ゴム組成物の耐摩耗性や、補強性をより高めることが可能となる。
ここで、前記補強性充填材については、ゴム分野で通常用いられる補強性充填材であればよく、例えば、カーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。これらの中でも、ゴム組成物の耐摩耗性や、補強性をより高めることができる観点からは、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることが好ましい。
【0046】
前記カーボンブラックの種類については、特に限定はされない。例えば、オイルファーネス法により製造された任意のハードカーボン及びソフトカーボンを用いることができる。これらの中でも、より優れた低ロス性及び耐摩耗性を実現する観点からは、例えば、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレードのカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0047】
また、前記カーボンブラックの含有量についても、特に限定はされない。例えば、前記ゴム成分100質量部に対して、25~100質量部であることが好ましく、30~80質量部であることがより好ましく、40~70質量部であることが特に好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して、25質量部以上とすることで、より優れた耐摩耗性を得ることができ、70質量部以下とすることで、低発熱性の悪化をより確実に抑えることができる。
【0048】
前記シリカの種類についても、特に限定はされない。例えば、湿式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
上述した中でも、前記シリカは、湿式シリカであることが好ましく、沈降シリカであることがより好ましい。これらのシリカは、分散性が高く、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性をより向上できるためである。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
【0049】
ここで、前記シリカのCTAB比表面積(セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積)は、70m2/g以上であることが好ましく、150m2/g以上であることがより好ましく、180m2/g以上であることがさらに好ましい。シリカ表面を分散に有利な表面状態とするべく、表面積は大きいほど良く、CTAB比表面積を70m2/g以上とすることで、より優れた耐摩耗性及び低ロス性を得ることができ、未加硫粘度についても低減できるためである。
なお、前記CTAB比表面積は、ASTM D3765-92に準拠して測定された値を意味する。ただし、シリカ表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミド1分子当たりの吸着断面積を0.35nm2として、CTABの吸着量から算出される比表面積(m2/g)をCTAB比表面積とする。
【0050】
また、前記シリカのBET比表面積は、150m2/g以上であることが好ましく、190m2/g以上であることがより好ましい。シリカ表面を分散に有利な表面状態とするべく、表面積は大きいほど良く、BET比表面積を150m2/g以上とすることで、未加硫粘度を低減できるとともに、より優れた耐摩耗性及び低ロス性を実現できる。
なお、前記BET比表面積は、BET法により求めた比表面積のことであり、本発明では、ASTM D4820-93に準拠して測定することができる。
【0051】
さらに、前記シリカの含有量についても、特に限定はされない。例えば、前記ゴム成分100質量部に対して40~100質量部であることが好ましく、50~90質量部であることがより好ましく、60~80質量部であることが特に好ましい。前記シリカの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上とすることで、より優れた補強性や耐摩耗性を得ることができ、80質量部以下とすることで、加工性の悪化をより確実に抑えることができる。
【0052】
(その他の成分)
また、本発明のゴム組成物は、ゴム組成物に通常配合される添加剤(その他の成分)を、発明の効果を損なわない程度に含むことができる。例えば、ゴム工業で通常使用されている、老化防止剤、架橋促進剤、架橋剤、架橋促進助剤、シランカップリング剤、軟化剤、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤、界面活性剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0053】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0054】
前記架橋促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0055】
前記架橋剤についても、特に制限はされない。例えば、硫黄、ビスマレイミド化合物等が挙げられる。
前記ビスマレイミド化合物の種類については、例えば、N,N’-o-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンなどを例示することができる。本発明では、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド及びN,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等を好適に用いることができる。
【0056】
前記架橋促進助剤については、例えば、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸としては、飽和若しくは不飽和、直鎖状若しくは分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数も特に制限されないが、例えば炭素数1~30、好ましくは15~30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸;ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸;メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。
【0057】
前記シランカップリング剤については、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール(エボニック・デグッサ社製の商品名「Si363」)等が挙げられる。なお、これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、本発明のゴム組成物は、優れた低ロス性及び耐摩耗性を実現する観点から、軟化剤をさらに含むことが好ましい。前記軟化剤としては、例えば、ナフテン系ベースオイル、パラフィン系ベースオイル、アロマ系ベースオイル等が挙げられる。ここで、前記軟化剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対し、2~30質量部配合することが好ましい。前記軟化剤の含有量がゴム成分100質量部に対して30質量部を超える場合、軟化剤がゴム製品の表面に滲み出るおそれや、耐摩耗性が低下したりするおそれがある。また、変性したゴム成分中のテトラジン部位と相互作用し、遮蔽してしまうため反応性が落ち、低ロス性能や耐摩耗性が低下するおそれもある。
さらに、上述した軟化剤の中でも、ナフテン系ベースオイル又はパラフィン系ベースオイルを用いることが好ましく、ナフテン系ベースオイルを用いることが最も好ましい。アロマオイルは、芳香族成分が多いため、芳香族化合物である当該薬品との親和性が高く、ポリマーとの反応をより阻害するため好ましくないためである。一方で、ナフテン系ベースオイルやパラフィン系ベースオイルは、ポリマー中に拡散し反応することを助ける効果があり、流動点が低いオイルの方がよくポリマー中に拡散するためである。
なお、前記ナフテン系ベースオイル、前記パラフィン系ベースオイル、前記アロマ系ベースオイルという分類については、CA値、CP値、CN値により決定される。例えば、前記ナフテン系ベースオイル前記分類されるのは、TDAE、SRAE、RAE、Black Oil等である。また、前記パラフィン系ベースオイルとして分類されるのは、スピンドルオイルヤパラフィンオイルである。
さらにまた、前記ナフテン系ベースオイルと前記ナフテン系アスファルトを混合した、A/O Mix(三共油化工業株式会社)等の混合油でもより好ましい効果が得られる。
これらの潤滑油を配合するタイミングについては特に限定はされず、例えば、前記ゴム成分の製造の段階で 油展させてもよいし、ゴム組成物を混錬する際に、添加させてもよい。
【0059】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として含むことで、充填剤としてカーボンナノチューブを含む場合であっても、転がり抵抗の上昇を抑えることができる。
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いること以外、特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0060】
また、本発明のタイヤでは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いるが、タイヤ部材の中でも、トレッドゴム、サイドウォールゴム、コード若しくは繊維被覆ゴム、ビードフィラー又はガムチェーファーに用いられることが好ましい。これらの部材に適用すれば、本発明のゴム組成物による優れた低ロス性及び耐摩耗性の効果による利益を十分に享受できるからである。
さらに、本発明のタイヤの種類については、特に限定はされないが、耐摩耗性の向上及び転がり抵抗の低減の両立をより効果的に発揮できる点からは、乗用車用タイヤ、スタッドレスタイヤ、ランフラットタイヤ又はトラック・バス用タイヤ等に用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(変性ポリマーAの作製)
窒素置換された5Lの撹拌機付き反応容器に、シクロヘキサン1.5kg、1,3-ブタジエン200g、スチレン50g及びテトラヒドロフラン3.15gを仕込み、反応容器内の温度が50℃となるように調整した後、n-ブチルリチウム0.08gを添加し重合を開始させた。その後、50℃において90分間重合を行った後、ビニルベンジルトリブチルスズ1.526gを添加し、10分間重合を継続させた後、四塩化スズ(SnCl4)を0.082g添加した。次に、この重合体含有液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール2.5gを添加後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、得られた固形物を100℃の熱ロールで乾燥させてスズ変性スチレンブタジエンゴム(変性ポリマーA)を得た。
【0063】
(変性ポリマーBの作製)
窒素置換された5Lオートクレーブに、シクロヘキサン1.4kg、1,3-ブタジエン250g、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン(0.285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn-ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行なった。1,3-ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液の一部を、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、変性前のポリブタジエンを得た。得られた変性前のポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果、ビニル結合量は30質量%であった。
上記のように得られたポリブタジエンを、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、第1級アミノ基が保護されたN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行った。
この後、縮合促進剤であるテトラキス(2-エチル-1,3-ヘキサンジオラト)チタン8.11gを加え、更に15分間攪拌した。
そして、反応後の重合体溶液に、金属ハロゲン化合物として四塩化ケイ素242mgを添加し、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された第1級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、第1級アミン変性ポリブタジエン(変性ポリマーB)を得た。
【0064】
<サンプル1~3>
配合成分をブラストミルで混練し、表1に示す配合処方で、実施例及び比較例に係るゴム組成物の各サンプルを調製した。
【0065】
<評価>
(1)tanδ(低発熱性)
各サンプルのゴム組成物を、160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、ARES(TA Instruments社製)を用いた動的粘弾性試験において、試験周波数:15Hz、試験温度:50℃で試験を実施し、動ひずみ10%の動的せん断貯蔵弾性率(10%G’)を測定した。
評価については、比較例であるサンプル1の10%G’を100としたときの指数で示し、指数値が小さい程、低発熱性に優れることを示す。評価結果を表1に示す。
【0066】
(2)耐摩耗性
各サンプルのゴム組成物を、160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムから、円板状(直径16.2mm×厚さ6mm)に切り抜いた試験片を用い、JIS-K6264-2:2005に準じて、室温でDIN摩耗試験を行い、摩耗量(mm3)を測定した。
得られた摩耗量の値はその逆数をとり、評価については、比較例であるサンプル1の摩耗量の逆数値を100としたときの指数として示した。指数値が大きい程摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。評価結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
*1 三菱商事株式会社製「デュロビーズ K-Nanos-100P」
*2 2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業(株)製「ノクラック224」
*3 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業(株)製「サンセラーCM」
【0069】
表1から、実施例に該当するゴム組成物の各サンプルは、耐摩耗性だけでなく、低発熱性についても優れた効果を示すことがわかる。これは、ゴム組成物中のカーボンナノチューブの分散性が高くなっていることに起因すると考えられる。また、比較例に該当するゴム組成物の各サンプルは、低発熱性且つ耐摩耗性が、実施例のサンプルに比べて劣る結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、カーボンナノチューブの分散性を高め、低発熱性に優れたゴム組成物、及び、転がり抵抗が低減されたタイヤを提供することができる。