(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】積載重量計測装置及び車両管理システム
(51)【国際特許分類】
G01G 19/12 20060101AFI20240611BHJP
G01G 19/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01G19/12 Z
G01G19/02 E
(21)【出願番号】P 2020128615
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼森 徹示
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-297172(JP,A)
【文献】実開平02-080030(JP,U)
【文献】特開2010-078555(JP,A)
【文献】特開2010-091274(JP,A)
【文献】特開平11-283172(JP,A)
【文献】特開2009-129262(JP,A)
【文献】特開平08-030829(JP,A)
【文献】特開2016-166093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0033381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/02-19/12
B60J 7/08
B65G 61/00
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に加わる荷重に相当する荷重信号を出力する荷重センサからの入力を受け付けるセンサ入力部と、
前記車両の荷台に設けられたウイングの開閉状態を検出する開閉状態検出部と、
前記ウイングが開いた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測開始タイミングを特定し、前記計測開始タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、重量値を算出する制御部と、
前記重量値を記録する記録部と、を備え
、
前記制御部は、
前記計測開始タイミングとして、前記ウイングが開いた時点の前後における、第1時点、第2時点、及び、第3時点のうちいずれか一の時点の設定の入力を事前に受け付け、
前記第1時点が設定されている場合、前記ウイングが開いた時点から第1時間前までの間に、前記荷重信号の変動開始を検出したことに基づいて、当該変動が開始した時点を、前記計測開始タイミングと特定し、
前記第2時点が設定されている場合、前記ウイングが開いた時点から第2時間後までの間に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出したことに基づいて、当該変動が収束した時点を、前記計測開始タイミングと特定し、
前記第3時点が設定されている場合、前記ウイングが開いた時点から前記第2時間より長い第3時間後以降に、前記荷重信号の変動開始を検出したことに基づいて、当該変動が開始した時点を、前記計測開始タイミングと特定する、
積載重量計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ウイングが閉じた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測終了タイミングを特定し、前記計測終了タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、計測終了時の重量値を算出し、
前記記録部は、前記計測終了時の重量値を記録
し、
前記制御部は、
前記計測終了タイミングとして、前記ウイングが閉じた時点の前後における、第4時点、第5時点、及び、第6時点のうちいずれか一の時点の設定の入力を事前に受け付け、
前記第4時点が設定されている場合、前記ウイングが閉じた時点から第4時間後までの間に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出したことに基づいて、当該変動が収束した時点を、前記計測終了タイミングと特定し、
前記第5時点が設定されている場合、前記ウイングが閉じた時点から第5時間前までの間に、前記荷重信号の変動開始を検出したことに基づいて、当該変動が開始した時点を、前記計測終了タイミングと特定し、
前記第6時点が設定されている場合、前記ウイングが閉じた時点から前記第5時間より長い第6時間前以前に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出したことに基づいて、当該変動が収束した時点を、前記計測終了タイミングと特定する、
請求項1に記載の積載重量計測装置。
【請求項3】
前記開閉状態検出部は、前記ウイングの開閉状態を示す開閉信号を出力する開閉検出スイッチからの入力を受け付けることで、前記開閉状態を検出し、
前記制御部は、前記開閉信号のうち、前記ウイングが開いた状態であることを示す開信号の入力をトリガとして、動作を開始する、
請求項1又は2に記載の積載重量計測装置。
【請求項4】
複数の車両の運行を管理する管理装置と、
前記複数の車両のそれぞれに搭載された
積載重量計測装置と、
を備えた車両管理システムであって、
前記積載重量計測装置は、
車両に加わる荷重に相当する荷重信号を出力する荷重センサからの入力を受け付けるセンサ入力部と、
前記車両の荷台に設けられたウイングの開閉状態を検出する開閉状態検出部と、
前記ウイングが開いた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測開始タイミングを特定し、前記計測開始タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、重量値を算出する制御部と、
前記重量値を記録する記録部と、を備え、
前記管理装置は、複数の前記積載重量計測装置から、前記ウイングが開いた時点と前記計測開始タイミングとの差分を示す情報を取得及び蓄積して、車種別に管理し、前記車種別に最適化した前記計測開始タイミングを、同種の車両に搭載された前記積載重量計測装置に対して指示する、
車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積載重量計測装置及び車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を輸送するトラック等の車両には、荷物の積載量を適正化して安全かつ効率の良い輸送を行うために、積載重量計測装置(自重計)が搭載されたものがあり、積載重量計測装置の測定精度や利便性の向上に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1~4参照。)。特許文献1では、ダンプ車両等の傾斜荷台付車両において、二つの重量センサにて重量を計測するシステムが提案されている。特許文献2では、被計量物の重量を計測するための荷重センサの出力信号をフィルタ処理する際のフィルタ特性や、測定重量算出条件の設定を、テストモードを用いて行う重量指示計が提案されている。特許文献3及び4では、車両が停車してから走行開始するまでの計測区間に積載した区間積載量を計測する積載量計測装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-96663号公報
【文献】特開2016-24075号公報
【文献】特開2010-78555号公報
【文献】特開2010-91274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、荷台にウイングが設けられた車両に搭載された荷重センサの出力に基づいて重量計測を行う際、荷台へ荷物を積み卸しするためにウイングを開閉すると、車両が振動し、荷重センサの出力が変動する。このため、荷重センサの出力に基づく重量計測値に誤差が含まれる場合がある。特許文献1~4の提案によれば、車両における積載重量計測の精度や利便性が向上し得るが、いずれの特許文献1~4においても、荷台用のウイングが設けられた車両における上記計測誤差については検討されていない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷台用のウイングが設けられた車両での重量計測において、計測誤差を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る積載重量計測装置及び車両管理システムは、下記(1)~(4)を特徴としている。
(1)車両に加わる荷重に相当する荷重信号を出力する荷重センサからの入力を受け付けるセンサ入力部と、
前記車両の荷台に設けられたウイングの開閉状態を検出する開閉状態検出部と、
前記ウイングが開いた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測開始タイミングを特定し、前記計測開始タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、重量値を算出する制御部と、
前記重量値を記録する記録部と、を備え、
前記制御部は、
前記計測開始タイミングとして、前記ウイングが開いた時点の前後における、第1時点、第2時点、及び、第3時点のうちいずれか一の時点の設定の入力を事前に受け付け、
前記第1時点が設定されている場合、前記ウイングが開いた時点から第1時間前までの間に、前記荷重信号の変動開始を検出したことに基づいて、当該変動が開始した時点を、前記計測開始タイミングと特定し、
前記第2時点が設定されている場合、前記ウイングが開いた時点から第2時間後までの間に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出したことに基づいて、当該変動が収束した時点を、前記計測開始タイミングと特定し、
前記第3時点が設定されている場合、前記ウイングが開いた時点から前記第2時間より長い第3時間後以降に、前記荷重信号の変動開始を検出したことに基づいて、当該変動が開始した時点を、前記計測開始タイミングと特定する、
積載重量計測装置。
(2)前記制御部は、前記ウイングが閉じた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測終了タイミングを特定し、前記計測終了タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、計測終了時の重量値を算出し、
前記記録部は、前記計測終了時の重量値を記録し、
前記制御部は、
前記計測終了タイミングとして、前記ウイングが閉じた時点の前後における、第4時点、第5時点、及び、第6時点のうちいずれか一の時点の設定の入力を事前に受け付け、
前記第4時点が設定されている場合、前記ウイングが閉じた時点から第4時間後までの間に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出したことに基づいて、当該変動が収束した時点を、前記計測終了タイミングと特定し、
前記第5時点が設定されている場合、前記ウイングが閉じた時点から第5時間前までの間に、前記荷重信号の変動開始を検出したことに基づいて、当該変動が開始した時点を、前記計測終了タイミングと特定し、
前記第6時点が設定されている場合、前記ウイングが閉じた時点から前記第5時間より長い第6時間前以前に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出したことに基づいて、当該変動が収束した時点を、前記計測終了タイミングと特定する、
上記(1)に記載の積載重量計測装置。
(3)前記開閉状態検出部は、前記ウイングの開閉状態を示す開閉信号を出力する開閉検出スイッチからの入力を受け付けることで、前記開閉状態を検出し、
前記制御部は、前記開閉信号のうち、前記ウイングが開いた状態であることを示す開信号の入力をトリガとして、動作を開始する、
上記(1)又は(2)に記載の積載重量計測装置。
(4)複数の車両の運行を管理する管理装置と、
前記複数の車両のそれぞれに搭載された積載重量計測装置と、
を備えた車両管理システムであって、
前記積載重量計測装置は、
車両に加わる荷重に相当する荷重信号を出力する荷重センサからの入力を受け付けるセンサ入力部と、
前記車両の荷台に設けられたウイングの開閉状態を検出する開閉状態検出部と、
前記ウイングが開いた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測開始タイミングを特定し、前記計測開始タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、重量値を算出する制御部と、
前記重量値を記録する記録部と、を備え、
前記管理装置は、複数の前記積載重量計測装置から、前記ウイングが開いた時点と前記計測開始タイミングとの差分を示す情報を取得及び蓄積して、車種別に管理し、前記車種別に最適化した前記計測開始タイミングを、同種の車両に搭載された前記積載重量計測装置に対して指示する、
車両管理システム。
【0007】
上記(1)の構成の積載重量計測装置によれば、ウイングが開く際の荷重信号の変動状態に基づくタイミングで重量計測を開始することにより、ウイングが開くことに伴って発生する車両の振動による計測誤差を低減した重量計測が可能となる。
【0008】
上記(2)の構成の積載重量計測装置によれば、ウイングが閉じる際の荷重信号の変動状態に基づくタイミングで重量計測を終了することにより、ウイングが閉じることに伴って発生する車両の振動による計測誤差を低減した重量計測が可能となる。
【0009】
上記(3)の構成の積載重量計測装置によれば、制御部が開信号の入力をトリガとして動作を開始することで、自動で重量計測を行うことができるため、計測を開始するための開始ボタンを作業者が操作し忘れたことによる計測忘れを防止できる。
【0012】
上記(4)の構成の車両管理システムによれば、車種別に最適化した計測開始タイミングを同種の車両に搭載された積載重量計測装置に対して指示することにより、新規車両の初回運用時から、精度の高い計測が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、荷台用のウイングが設けられた車両での重量計測において、計測誤差を低減できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態の車両管理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、荷重センサの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、積載重量計測装置を搭載した車両の構成例を表す図であり、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、及び
図3(d)は、それぞれ正面図、右側面図、底面図、及びウイングが開いた状態を示す右側面図である。
【
図4】
図4は、積載重量計測装置の初期設定動作例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、ウイング開閉検出スイッチからの入力及び荷重センサの出力を示すイメージ図であり、
図5(a)は計測開始タイミングに関し、
図5(b)は計測終了タイミングに関する。
【
図6】
図6は、積載重量計測装置の計測開始から重量計測までの動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、積載重量計測装置の重量計測継続から計測終了までの動作例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、事務所PC内に蓄積される情報の一例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、荷台用のウイング(荷台ウイング、車両ウイング)が設けられた車両に搭載された積載重量計測装置の例を示す。積載重量計測装置は、荷台に荷物が積み卸しされる際にウイングの開閉状態を検出し、荷重センサから出力される荷重信号の変動状態を基に、積載重量の計測を開始/終了する計測開始タイミング/計測終了タイミングを特定して、各時点における重量値を算出する。
【0017】
図1は、本実施形態の車両管理システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示す車両管理システムは、トラック車両(以下「車両」と称する。)41(
図3参照)に搭載された積載重量計測装置1と、車両41の運行を管理する事務所PC28(管理装置、サーバー)と、を備えている。積載重量計測装置1は、電子制御装置10と、電子制御装置10に接続された4つの荷重センサ25A~25D、外部信号入力部22、及び無線通信部24と、を含む。電子制御装置10には、さらに、記録カード21(記録部)、車両電源23、および設定用パソコン27が接続されている。
【0018】
また、電子制御装置10は、本体メモリ12(記録部)、外部入出力I/F(インタフェース)13(開閉状態検出部)、警報出力部14、表示部15、制御部16(重量演算部)、電源部17、及び入出力I/F18(センサ入力部)を備えている。
【0019】
記録カード21は、電子制御装置10に対して着脱自在な不揮発性のメモリカードであり、運転者(乗務員)毎に個別に用意される。この記録カード21は、荷物を輸送する車両41の運行記録情報を記録するために利用できる。運行記録情報は、車両41の現在位置、時刻、車速、各車輪位置の荷重、後述する計測開始タイミング/計測終了タイミングに関する設定情報、各タイミングにおける重量値などの情報を含む。
【0020】
外部信号入力部22は、ウイング開閉検出スイッチ46A、46B(
図3(b)、
図3(d)参照)から出力された開閉信号の入力を受け付ける。
車両電源23は、車両41に搭載されているバッテリーなどの電源であり、電子制御装置10等の車載器に対して所定の直流電力を供給することができる。
【0021】
無線通信部24は、無線基地局を介して、インターネット等の通信ネットワークに接続した事務所PC28と無線通信を行う。事務所PC28は、車両41の運行を管理する企業等の事務所内に設置され、車両41の運行管理や各運転者の労務管理、安全管理などの用途で使用される。また、事務所PC28は、後述する、「各タイミング時間情報」を蓄積・管理し、表示する。
【0022】
荷重センサ25A、25B、25C、および25Dは、それぞれ、前方左側(FL)、前方右側(FR)、後方左側(RL)、および後方右側(RR)の各位置の車輪を支持するサスペンションに加わる荷重の大きさを計測できるように設置されている。荷重センサ25A、25B、25C、および25Dは、車両41に加わる荷重に相当する荷重信号を出力する。
【0023】
設定用パソコン27は、電子制御装置10に対して接続可能な汎用コンピュータであり、電子制御装置10に対して、後述する、「計測開始タイミング」及び「計測終了タイミング」を含む設定情報を設定するためのものである。
【0024】
本体メモリ12は、事前に定めた各種定数データや電子制御装置10の動作に必要なプログラムが書き込まれた不揮発性メモリ(EEPROMなど)と、各種測定データを含む一時データを保持するためのメモリ(RAM)とを備えている。測定データは、計測開始タイミング/計測終了タイミングに関する設定情報、各タイミングにおける重量値を含む。
【0025】
外部入出力I/F13は、制御部16が記録カード21のデータにアクセスするための信号処理と、外部信号入力部22からの信号入力のための制御を実施する。外部入出力I/F13は、車両41の荷室42に設けられたウイング45A、45Bの開閉状態を検出する。
警報出力部14は、電子制御装置10に内蔵された警報ランプやブザーなどを用いて、異常の発生を運転者に報知するために利用される。
【0026】
表示部15は、自車両の運転者の位置から視認が容易な状態で配置された平面ディスプレイを備えている。この平面ディスプレイの二次元画面に、カラー画像や文字情報などを必要に応じて表示できる。表示部15は、例えば、本体メモリ12に記録された設定情報や、各種測定データを表示できる。
【0027】
制御部16は、マイクロコンピュータを主体とする電子回路により構成され、事前に用意されたプログラムを実行することにより、電子制御装置10に必要とされる各種の制御機能を実現する。制御部16は、ウイング45A、45Bが開いた時点の前後において荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動状態を基に、計測開始タイミング/計測終了タイミングを特定する。計測とは、制御部16が、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号を演算し、重量値を算出することである。制御部16は、計測開始タイミングから計測終了タイミングまでの期間において、荷重センサ25A~25Dから時系列的に出力される荷重信号に基づいて重量値を逐次算出し、算出結果を本体メモリ12及び/又は記録カード21に記録する。すなわち、制御部16は、計測開始タイミング/計測終了タイミングにおける各荷重信号に基づいて、計測開始時の重量値及び計測終了時の重量値を算出する。制御部16は、計測開始時の重量値と計測終了時の重量値との差分を、積卸重量として算出できる。
【0028】
電源部17は、車両電源23から供給される電力に基づいて、安定した直流電力を生成し、この直流電力を電子制御装置10内部の各回路と、荷重センサ25A~25Dへ電源として供給する。
入出力I/F18は、無線通信部24、荷重センサ25A~25D等の各信号を制御部16に入力するための信号処理を実施する。入出力I/F18は、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の入力を受け付ける。
【0029】
図2は、荷重センサ25の構成例を示すブロック図である。
図1中に示した荷重センサ25A~25Dのそれぞれが
図2の荷重センサ25に相当する。
【0030】
図2に示すように、この荷重センサ25は歪み検出素子31、専用IC(ASIC)32、V/F変換回路33、MCU(マイクロコントローラ)34、入出力I/F35、および電源回路36を内蔵している。
【0031】
歪み検出素子31は、これが設置されている箇所に加わる荷重により生じる歪み量を検出する。専用IC32は、歪み検出素子31が検出した歪み量、すなわち荷重に相当する電圧(V)の電気信号を生成する。V/F変換回路33は、専用IC32が出力する信号の電圧変化を周波数(F)の変化に変換する。具体的には、V/F変換回路33が出力するパルス信号の周波数が、歪み検出素子31に加わった荷重に相当する。
【0032】
MCU34は、V/F変換回路33が出力するパルス信号の周波数に基づいて、検出された荷重の大きさを表すデータである荷重信号を生成する。MCU34が生成した荷重信号は、入出力I/F35を経由して電子制御装置10に入力される。電源回路36は、電源部17から供給される直流電力を変換して荷重センサ25内の各部に供給する。
【0033】
図3は、積載重量計測装置を搭載した車両の構成例を表す図であり、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)、及び
図3(d)は、それぞれ正面図、右側面図、底面図、及びウイングが開いた状態を示す右側面図である。
【0034】
図3(a)に示した例では、車両41の運転席の近傍に電子制御装置10および無線通信部24が設置されている。電子制御装置10に接続された4つの荷重センサ25A、25B、25C、および25Dは、
図3(b)~(d)に示すように、それぞれ、左前方の車輪44A、右前方の車輪44B、左後方の車輪44C、および右後方の車輪44Dの近傍に設置されている。荷物の積載状況に応じて、各車輪44C、44D等の位置における荷重が変動する。制御部16は、荷重センサ25A~25Dから時系列的に出力される荷重信号に基づいて、車両41に加わる荷重を計測し、荷室42に積み卸しされた荷物の重量値を算出する。
【0035】
車両41の荷室42は、荷台、車両41前方側の前部パネル47、車両41後方側の後部ドア48、並びに、前部パネル47から後部ドア48まで延び荷室42の側方及び上方を覆うウイング45A、45Bによって画成される。ウイング45A、45Bは車両41の左右側にそれぞれ設けられる。ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bは、例えば前部パネル47又は後部ドア48の上方等に取り付けられた押圧スイッチ等である。ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bは、例えば、各ウイング45A、45Bによって押圧された状態において、閉状態(
図3(b))を示す閉信号(CLOSE信号)をそれぞれ出力する。ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bは、例えば、各ウイング45A、45Bによる押圧が解除された状態において、開状態(
図3(d))を示す開信号(OPEN信号)を出力する。ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bから出力された開閉信号(OPEN信号/CLOSE信号)は、積載重量計測装置1の外部信号入力部22へ入力され、電子制御装置10の外部入出力I/F13を介して制御部16へ入力される。
【0036】
図4及び
図5を参照して、積載重量計測装置1に、計測開始タイミング及び計測終了タイミングを設定する動作について説明する。
図4は、積載重量計測装置1の初期設定動作例を示すフローチャートである。
図5は、ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bからの入力及び荷重センサ25A~25Dの出力を示すイメージ図であり、
図5(a)は計測開始タイミングに関し、
図5(b)は計測終了タイミングに関する。電子制御装置10に対して、(1)設定用パソコン27を接続、(2)記録カード21によるローディング、又は、(3)事務所PC28との無線通信部24を介した通信、のいずれかを実施することにより、計測開始タイミング及び計測終了タイミングの設定に必要な各種情報が制御部16に読み込まれる。そして、各種情報が本体メモリ12に記憶される。
【0037】
制御部16は、設定用パソコン27、記録カード21又は事務所PC28から、計測開始タイミングの設定に必要な各種情報を読み込んで、本体メモリ12に設定する(ステップS1)。計測開始タイミングとして、ウイング45A、45Bが開いた時点の前後における開始A、開始C及び開始Dのうちいずれか一の時点が設定される。ウイング45A、45Bが開いた時点は、
図5(a)に示すように、ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bから開信号が入力された時点T
Oである。
【0038】
計測開始タイミングが開始Aに設定された場合、制御部16は、開信号が入力された時点TOからt1秒前以内に、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動開始を検出すると、変動が開始した時点に遡って、計測を開始する。
【0039】
計測開始タイミングが開始Cに設定された場合、制御部16は、開信号が入力された時点TOからt2秒後以内に、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動収束を検出すると、変動が収束した時点から、計測を開始する。荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動収束の検出は、例えば、特開2010-78555号公報に開示された手法を用いることができる。すなわち、制御部16は、荷重センサ25A~25Dから時系列的に取得した荷重信号の振幅収束を、指数平滑平均又は移動平均収束拡散法(MACD、Moving Average Convergence and Divergence)に基づいて検出することができる。制御部16は、例えばMACDの所定計算式の数値が、実験結果等に基づいて定められた閾値よりも小さい場合に、荷重信号の変動収束を検出することができる。
【0040】
計測開始タイミングが開始Dに設定された場合、制御部16は、開信号が入力された時点TOからt3秒後以降において、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動開始を検出すると、変動が開始した時点から、計測を開始する。
【0041】
開信号が入力された時点TOを含む前後の時間における、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動は、ウイング45A、45Bを開いたことによる変動、すなわち、ウイング45A、45Bを開いたことによる車両41の振動を表すと考えられる。また、開信号が入力された時点TOから一定時間後に荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動は、荷物の積み卸しによる変動と考えられる。そこで、荷物の積み卸しがウイング45A、45Bを開いた直後に行われる運用が多い場合、計測開始タイミングを開始Aに設定することが好ましい。また、ウイング45A、45Bを開くことによって荷重センサ25A~25Dの出力(荷重信号)が大きく変動する車両の場合、計測開始タイミングを開始Cに設定することが好ましい。さらに、ウイング45A、45Bを開いてから、荷物の積み卸しを開始するまでの時間が長い運用の場合、計測開始タイミングを開始Dに設定することが好ましい。
【0042】
次に制御部16は、設定用パソコン27、記録カード21又は事務所PC28から、計測終了タイミングの設定に必要な各種情報を読み込んで、本体メモリ12に設定する(ステップS2)。計測終了タイミングとして、ウイング45A、45Bが閉じた時点の前後における終了a、終了c、及び終了dのうちいずれか一の時点が設定される。ウイング45A、45Bが閉じた時点が、
図5(b)に示すように、ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bから閉信号が入力された時点T
Cである。
【0043】
計測終了タイミングが終了aに設定された場合、制御部16は、閉信号が入力された時点TCからt4秒後以内に、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動収束を、上述のように検出すると、変動が収束した時点で、計測を終了する。
【0044】
計測終了タイミングが終了cに設定された場合、制御部16は、閉信号が入力された時点TCからt5秒前以内に、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動開始を検出すると、変動が開始した時点に遡って、計測を終了する。
【0045】
計測終了タイミングが終了dに設定された場合、制御部16は、閉信号が入力された時点TCからt6秒前以前において、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動収束を、上述のように検出すると、変動が収束した時点に遡って、計測を終了する。
【0046】
閉信号が入力された時点TCを含む前後の時間における、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動は、ウイング45A、45Bを閉じたことによる変動、すなわち、ウイング45A、45Bを閉じたことによる車両41の振動を表すと考えられる。また、閉信号が入力された時点TCから一定時間前に荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の変動は、荷物の積み卸しによる変動と考えられる。そこで、荷物の積み卸しがウイング45A、45Bを閉じる直前に行われる運用が多い場合、計測終了タイミングを終了aに設定することが好ましい。また、ウイング45A、45Bを閉じることによって荷重センサ25A~25Dの出力(荷重信号)が大きく変動する車両の場合、計測終了タイミングを終了cに設定することが好ましい。さらに、荷物の積み卸しを終了してからウイング45A、45Bを閉じるまでの時間が長い運用の場合、計測終了タイミングを終了dに設定することが好ましい。
【0047】
上述した開始A、開始C、及び開始Dのいずれかと、終了a、終了c、及び終了dのいずれかとは、任意に組み合わせて、計測開始タイミング及び計測終了タイミングを設定することができる。
【0048】
制御部16は、開始D及び終了dに関して、荷重信号の変動が、荷物の積み卸しによるものか外乱等によるものかを区別することができる。荷物の積み卸しによる変動は、例えば特開2010-91274号公報に開示された手法を用いて検出することができる。すなわち、制御部16は、荷重センサ25A~25Dから時系列的に取得した荷重信号の変化パターンを、予め実験等により定められ記憶された積載変化パターン情報と比較することによって、荷物の積み卸しによる変動を検出できる。このため、制御部16は、計測開始タイミングが開始Dと設定された場合に、開信号が入力された時点TOからt3秒後以降において、荷物の積み卸しによる荷重信号の変動が開始した時点から、計測を開始することができる。同様に制御部16は、計測終了タイミングが終了dと設定された場合に、閉信号が入力された時点TCからt6秒前以前において荷物の積み卸しによる荷重信号の変動が収束した時点に遡って、計測を終了することができる。
【0049】
図6及び
図7を参照して、積載重量計測装置1の運用時における動作について説明する。
図6は、積載重量計測装置1の計測開始から重量計測までの動作例を示すフローチャートであり、
図7は、積載重量計測装置1の重量計測継続から計測終了までの動作例を示すフローチャートである。積載重量計測装置1の制御部16は、電子制御装置10内の各部や外部信号入力部22、無線通信部24、荷重センサ25A~25D等と協同して、
図6~
図7に示す処理を実行する。
【0050】
図6に示すように、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが開いたか否かを判断する(ステップS11)。車両41のウイング45A、45Bが開く(開口する)と、ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bから、外部信号入力部22へ開信号が入力される。ステップS11において、制御部16は、外部信号入力部22及び外部入出力I/F13を介して、開信号が入力されるまで待機し、開信号の入力をトリガとして、重量計測に関わる動作を開始する。また、制御部16は、開信号が入力された時点T
Oの例えば現在時刻等の時刻情報を本体メモリ12に記録する。
【0051】
積載重量計測装置1は、本体メモリ12に記録された各種情報を参照して、予め設定された計測開始タイミングが「開始A」であるか否かを判断する(ステップS12)。計測開始タイミングが「開始A」に設定されている場合(ステップS12でYES(A))、積載重量計測装置1は、荷重センサ25A~25Dから入力された荷重信号が変動しているか否か(センサ変動有りか否か)を判断する(ステップS13)。ステップS13において、制御部16は、荷重センサ25A~25Dから入力され本体メモリ12に記録されている荷重信号の時系列データを参照して、荷重信号の変動状態を把握し、センサ変動の有無を判断する。
【0052】
荷重信号が変動している場合(ステップS13でYES)、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動開始が時点TOからt1秒前以内か、すなわち、時点TOのt1秒前から時点TOまでの期間に荷重信号の変動が開始したか否かを判断する(ステップS14)。ステップS14においてYESの場合、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動が開始した時点(センサ変動開始時)を計測開始タイミングと特定する(ステップS15)。
【0053】
積載重量計測装置1は、特定した計測開始タイミングの時間情報を本体メモリ12に記録し(ステップS16)、この計測開始タイミングにおいて入力された荷重信号を演算して、重量値を算出する(ステップS17)。算出された重量値は、本体メモリ12に記録される。
【0054】
ステップS13においてNOの場合、すなわち、荷重信号が変動していない場合、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが開いた時点、すなわち、開信号が入力された時点TOを計測開始タイミングと特定する(ステップS18)。また、ステップS14においてNOの場合、すなわち、荷重信号の変動開始が時点TOからt1秒前以内でない場合、積載重量計測装置1は、ステップS19の処理に移行する。積載重量計測装置1は、ステップS19において、ウイング45A、45Bが開いた時点(開信号が入力された時点TO)のt1秒前を計測開始タイミングと特定する。
【0055】
一方、ステップS12において、計測開始タイミングが「開始A」に設定されていない場合、積載重量計測装置1は、計測開始タイミングが「開始C」に設定されているか否かを判断する(ステップS20)。計測開始タイミングが「開始C」に設定されている場合(ステップS20でYES)、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが開いた時点(開信号が入力された時点TO)からt2秒経過したか否かを判断する(ステップS21)。ステップS21でNOの場合、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動が収束したか否かを判断する(ステップS22)。ステップS22でYESの場合、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動が収束した時点を、計測開始タイミングと特定する(ステップS23)。計測開始タイミングが「開始C」と設定されており、開信号が入力された時点TOで荷重信号が変動していない場合、積載重量計測装置1は、ステップS23において、時点TOで変動が収束したと判断して、時点TOを計測開始タイミングと特定する。
【0056】
また、ステップS21でYESの場合、すなわち、ウイング45A、45Bが開いた時点からt2秒経過した時点において荷重信号の変動が収束していない場合、積載重量計測装置1は、ステップS24の処理に移行する。ステップS24において、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが開いた時点(開信号が入力された時点TO)のt2秒後を、計測開始タイミングと特定する。
【0057】
各ステップS18、S19、S23、S24の処理後、積載重量計測装置1は、ステップS16の処理に移行し、特定した計測開始タイミングの時間情報を本体メモリ12に記録する。計測開始タイミングの時間情報として、例えば、ウイング45A、45Bが開いた時点(開信号が入力された時点T
O)と計測開始タイミングとして特定した時点との差分を示す情報(例えば、-4.0秒等)が記録される(
図8参照)。
【0058】
ステップS20でNOの場合、すなわち、計測開始タイミングが「開始D」の場合、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが開いた時点(開信号が入力された時点T
O)からt2秒経過するまで待機する(ステップS25)。t2秒経過した場合(S25でYES)、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動開始まで待機する(ステップS26)。荷重信号が変動開始した場合、積載重量計測装置1は、変動開始時点(
図5に示す例における時点T
Oのt3秒後)を、計測開始タイミングと特定する(ステップS27)。
【0059】
積載重量計測装置1は、ステップS27の処理後、ステップS17の処理に移行し、荷重信号の変動開始時点において入力された荷重信号を演算して重量値を算出し、算出した重量値を本体メモリ12に記録する。
【0060】
ステップS17の処理後、積載重量計測装置1は、
図7に示すステップS31の処理に移行する。ステップS31において、積載重量計測装置1は、荷重センサ25A~25Dから時系列的に入力される荷重信号を、逐次演算して重量値を算出(重量計測)する。積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが閉じるまで、重量計測を継続する。ウイング45A、45Bが閉じる(閉口する)と、ウイング開閉検出スイッチ46A、46Bから、外部信号入力部22へ閉信号が入力される。ステップS32において、制御部16は、外部信号入力部22及び外部入出力I/F13を介して、閉信号が入力されるまで待機する。また、制御部16は、閉信号が入力された時点T
Cの例えば時刻情報を本体メモリ12に記録する。
【0061】
積載重量計測装置1は、本体メモリ12に記録された各種情報を参照して、予め設定された計測終了タイミングが「終了a」であるか否かを判断する(ステップS33)。計測終了タイミングが「終了a」に設定されている場合(ステップS33でYES(a))、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが閉じた時点(閉信号が入力された時点TC)からt4秒経過したか否かを判断する(ステップS34)。ステップS34でNOの場合、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動(センサ変動)が収束したか否かを判断する(ステップS35)。ステップS35において、制御部16は、荷重センサ25A~25Dから入力され本体メモリ12に記録されている荷重信号の時系列データを参照して、荷重信号の変動状態を把握し、センサ変動の収束を判断する。荷重信号の変動が収束した場合(荷重信号が変動していない場合も含む)、積載重量計測装置1は、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動が収束した時点(センサ変動収束時)を、計測終了タイミングと特定する(ステップS36)。ステップS35でNOの場合、積載重量計測装置1は、ステップS34の処理に戻る。
【0062】
積載重量計測装置1は、特定した計測終了タイミングの時間情報を本体メモリ12に記録し(ステップS37)、この計測終了タイミングにおいて入力された荷重信号を演算して、重量値を算出する(ステップS38)。算出された重量値は、最終的な計測重量値として固定され、本体メモリ12に記録される。
【0063】
ステップS34でYESの場合、すなわち、ウイング45A、45Bが閉じた時点(閉信号が入力された時点TC)からt4秒経過した場合、積載重量計測装置1は、閉信号が入力された時点TCのt4秒後を、計測終了タイミングと特定する(ステップS39)。
【0064】
一方、ステップS33において、計測終了タイミングが「終了a」に設定されていない場合、積載重量計測装置1は、計測終了タイミングが「終了c」に設定されているか否かを判断する(ステップS40)。計測終了タイミングが「終了c」に設定されている場合(ステップS40でYES)、積載重量計測装置1は、荷重センサ25A~25Dから入力された荷重信号が変動しているか否か(センサ変動有りか否か)を判断する(ステップS41)。ステップS41でYESの場合、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動開始がt5秒前以内か、すなわち、時点TCのt5秒前から時点TCまでの期間に荷重信号の変動が開始したか否かを判断する(ステップS42)。ステップS42においてYESの場合、積載重量計測装置1は、荷重信号の変動が開始した時点(センサ変動開始時)を計測終了タイミングと特定する(ステップS43)。
【0065】
ステップS41においてNOの場合、すなわち、荷重信号が変動していない場合、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが閉じた時点、すなわち、閉信号が入力された時点TCを計測終了タイミングと特定する(ステップS44)。また、ステップS42においてNOの場合、すなわち、荷重信号の変動開始が時点TCからt5秒前以内でない場合、積載重量計測装置1は、ステップS45の処理に移行する。ステップS45において、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが開いた時点(開信号が入力された時点TO)のt5秒前を、計測終了タイミングと特定する。
【0066】
各ステップS39、S43、S44、S45の処理後、積載重量計測装置1は、ステップS37の処理に移行し、特定した計測終了タイミングの時間情報を本体メモリ12に記録する。計測終了タイミングの時間情報として、例えば、ウイング45A、45Bが閉じた時点(閉信号が入力された時点T
C)と計測終了タイミングとして特定した時点との差分を示す情報(例えば、-3.0秒等)が記録される(
図8参照)。
【0067】
また、ステップS40においてNOの場合、すなわち、計測終了タイミングが「終了d」の場合、積載重量計測装置1は、ステップS46の処理に移行する。ステップS46において、積載重量計測装置1は、ウイング45A、45Bが閉じた時点(閉信号が入力された時点T
C)のt5秒前以前における荷重信号の変動収束時点(
図5に示す例における時点T
Cのt6秒前)を、計測終了タイミングと特定する。
【0068】
積載重量計測装置1は、ステップS46の処理後、ステップS38の処理に移行し、荷重信号の変動収束時点において入力された荷重信号を演算して重量値を算出する。算出された重量値は、最終的な計測重量値として固定され、本体メモリ12に記録される。
【0069】
図6のステップS16及び
図7のステップS37において本体メモリ12に記録された、計測開始タイミング開始A、開始C及び計測終了タイミング終了a、終了cの各時間情報は、リアルタイムで、又は、事後に、無線通信部24を介して事務所PC28に送信され得る。または、これらの時間情報は、記録カード21に記録され、記録カード21が事務所PC28のカードリーダーに接続された時に、事務所PC28に読み取られてもよい。
【0070】
図8は、事務所PC28内に蓄積される情報の一例を示すイメージ図である。事務所PC28は、自身が管理する複数の車両41のそれぞれに搭載された積載重量計測装置1から、上述のように、計測開始タイミング及び計測終了タイミングに関する時間情報を収集(取得)し、車種別に蓄積・管理する。また、事務所PC28は、車種別に、計測開始タイミング及び計測終了タイミングを最適化して、同種の車両に搭載された積載重量計測装置1に対して、事前に指示する。
【0071】
図8に示す例では、事務所PC28は、各車両41から、計測開始タイミングの時間情報として、開信号が入力された時点T
Oと「開始A」及び「開始C」の場合における計測開始タイミングとして特定した時点との差分を示す情報を取得する。また、事務所PC28は、各車両41から、計測終了タイミングの時間情報として、閉信号が入力された時点T
Cと「終了a」及び「終了c」の場合における計測終了タイミングとして特定した時点との差分を示す情報を取得する。各情報(タイミング時間情報)は、車種別に管理され、車種別の平均値が算出されている。例えば、車番123、231、321の車両41は、いずれも同一車種であり、開始タイミングA、C、及び終了タイミングc、aの各平均値(秒)がこの車種の最適値として管理されている。事務所PC28が、この平均値(最適値)を、新規の同型(同種)車両に搭載された積載重量計測装置1に対して予め指示することにより、新規車両の初回運用時から、精度の高い計測が可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の積載重量計測装置1(電子制御装置10)によれば、ウイング45A、45Bが開く際の荷重信号の変動状態に基づくタイミングで重量計測を開始する。これにより、ウイング45A、45Bが開くことに伴って発生する車両41の振動による計測誤差を低減した重量計測が可能となる。また、本実施形態の積載重量計測装置1によれば、ウイング45A、45Bが閉じる際の荷重信号の変動状態に基づくタイミングで重量計測を終了する。これにより、ウイング45A、45Bが閉じることに伴って発生する車両41の振動による計測誤差を低減した重量計測が可能となる。
【0073】
また、本実施形態の積載重量計測装置1によれば、ウイング45A、45Bの開状態/閉状態の検出をトリガとして重量計測を開始/終了する。これにより、重量計測の開始/終了を自動化することができるため、重量計測を開始/終了するための開始ボタン/終了ボタンを作業者が操作し忘れたことによる計測忘れを防止が可能となる。
【0074】
また、本実施形態の積載重量計測装置1によれば、荷重センサ25A~25Dから出力される荷重信号の時系列データを分析することにより、ウイング45A、45Bの開閉によって車両41に発生する振動の減衰を検出・判定できる。これにより、車両41の振動による計測誤差の低減が可能となる。
【0075】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上記実施形態では、ウイング45A、45Bの開閉状態をウイング開閉検出スイッチ46A、46Bによって検出したが、センサ-等によりウイング45A、45Bの開閉状態を検出してもよい。また、上記実施形態では、積載重量計測装置1が計測開始/終了タイミングの双方を、ウイング45A、45B開閉時点の前後における荷重信号の変動状態に基づいて特定したが、計測終了タイミングは、作業終了ボタン押下の検知等により特定してもよい。また、車両管理システムにおける、各積載重量計測装置1から収集したタイミング時間情報の蓄積・管理及び同型車両への最適値の事前設定を、事務所PC28に代えて、積載重量計測装置1と直接又は事務所PC28を介して通信可能なサーバーが行ってもよい。
【0076】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る積載重量計測装置及び車両管理システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[8]に簡潔に纏めて列記する。
[1]車両(41)に加わる荷重に相当する荷重信号を出力する荷重センサ(25)からの入力を受け付けるセンサ入力部(入出力I/F18)と、
前記車両の荷台(荷室42)に設けられたウイング(45A、45B)の開閉状態を検出する開閉状態検出部(外部入出力I/F13)と、
前記ウイングが開いた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測開始タイミングを特定し(ステップS15、S19、S18、S23、S24、S27)、前記計測開始タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、重量値を算出する制御部(16)(ステップS17)と、
前記重量値を記録する記録部(本体メモリ12、記録カード21)と、を備える、
積載重量計測装置(電子制御装置10)。
[2]前記制御部は、前記ウイングが閉じた時点の前後における前記荷重信号の変動状態を基に計測終了タイミングを特定し、前記計測終了タイミングにおける前記荷重信号に基づいて、計測終了時の重量値を算出し、
前記記録部は、前記計測終了時の重量値を記録する、
上記[1]に記載の積載重量計測装置。
[3]前記開閉状態検出部は、前記ウイングの開閉状態を示す開閉信号を出力する開閉検出スイッチ(ウイング開閉検出スイッチ46A、46B)からの入力を受け付けることで、前記開閉状態を検出し、
前記制御部は、前記開閉信号のうち、前記ウイングが開いた状態であることを示す開信号の入力をトリガとして、動作を開始する、
上記[1]又は[2]に記載の積載重量計測装置。
[4]前記制御部は、前記荷重信号の変動が収束したことを検出し、前記変動が収束した時点を前記計測開始タイミングと特定する、
上記[1]から[3]のいずれか一に記載の積載重量計測装置。
[5]前記制御部は、前記荷台への荷物積み卸しによる、前記荷重信号の変動を加味して、前記計測開始タイミングを特定する、
上記[1]から[4]のいずれか一に記載の積載重量計測装置。
[6]複数の車両(41)の運行を管理する管理装置(事務所PC28)と、
前記複数の車両のそれぞれに搭載された、上記[1]から[5]のいずれか一に記載の積載重量計測装置(電子制御装置10)と、を備えた車両管理システムであって、
前記管理装置は、複数の前記積載重量計測装置から、前記ウイングが開いた時点と前記計測開始タイミングとの差分を示す情報を取得及び蓄積して、車種別に管理し、前記車種別に最適化した前記計測開始タイミングを、同種の車両に搭載された前記積載重量計測装置に対して指示する、
車両管理システム。
[7]前記制御部は、
前記ウイングが開いた時点から第一時間前までの間に、前記荷重信号の変動を検出した場合は、当該変動が開始した時点、
前記ウイングが開いた時点から第二時間後までの間に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出した場合は、当該変動が収束した時点、及び
前記ウイングが開いた時点から第三時間後以降に、前記荷重信号の変動を検出した場合は、当該変動が開始した時点、
のうち、予め設定されたいずれか一の時点を、前記計測開始タイミングと特定する、
上記[1]から[3]のいずれか一に記載の積載重量計測装置。
[8]前記制御部は、
前記ウイングが閉じた時点から第四時間後までの間に、前記荷重信号の変動が収束したことを検出した場合は、当該変動が収束した時点、
前記ウイングが閉じた時点から第五時間前までの間に、前記荷重信号の変動を検出した場合は、当該変動が開始した時点、及び
前記ウイングが閉じた時点から第六時間前以前に、前記荷重信号の変動を検出した場合は、当該変動が終了した時点、
のうち、予め設定されたいずれか一の時点を、前記計測終了タイミングと特定する、
上記[1]から[3]のいずれか一に記載の積載重量計測装置。
【符号の説明】
【0077】
1 積載重量計測装置
10 電子制御装置
12 本体メモリ
13 外部入出力I/F
14 警報出力部
15 表示部
16 制御部
17 電源部
21 記録カード
22 外部信号入力部
23 車両電源
24 無線通信部
25、25A~25D 荷重センサ
27 設定用パソコン
28 事務所PC
41 車両
42 荷室
45A、45B ウイング
46A、46B ウイング開閉検出スイッチ