(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
B05D 3/04 20060101AFI20240611BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240611BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240611BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20240611BHJP
B05C 11/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B05D3/04 Z
B05D3/02 Z
B05C5/02
B05C9/14
B05C11/06
(21)【出願番号】P 2020137833
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸一
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185533(WO,A1)
【文献】特開2019-076817(JP,A)
【文献】特開2014-036171(JP,A)
【文献】特開2012-173563(JP,A)
【文献】特開2014-104385(JP,A)
【文献】特開昭62-174916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 1/00-21/00
H01L 21/30-21/46
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布工程と、
前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理を前記塗膜の端部にのみ施すことにより、前記部分硬化処理を受けた端部を前記塗膜のうち前記部分硬化処理を受けていない非硬化領域よりも硬化させる部分硬化工程と、
前記部分硬化工程を受けた端部を含め前記塗膜全体を乾燥させる乾燥工程と、
を備え、
前記塗布工程は、前記基板の表面に向けて前記塗布液を吐出するノズルを前記基板に対して第1方向に相対移動させて前記第1方向に延びる前記塗膜を形成する工程であり、
前記部分硬化工程は、前記第1方向と直交する第2方向における前記塗膜の端部のみを硬化させる工程であり、
前記部分硬化工程は、前記光、気流および熱のうちの少なくとも1つを前記端部に向けて出力する出力部を前記基板に対して前記第1方向に相対移動させて前記部分硬化処理を受けた端部を前記第1方向に形成する工程であり、
前記部分硬化工程は、前記出力部から出力される気流を前記塗膜の端部に付与して前記部分硬化処理を実行する工程と、前記気流が付与された端部の周囲を排気する工程とを有する
ことを特徴とする、基板処理方法。
【請求項2】
基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布工程と、
前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理を前記塗膜の端部にのみ施すことにより、前記部分硬化処理を受けた端部を前記塗膜のうち前記部分硬化処理を受けていない非硬化領域よりも硬化させる部分硬化工程と、
前記部分硬化工程を受けた端部を含め前記塗膜全体を乾燥させる乾燥工程と、を備え
、
前記乾燥工程は、前記部分硬化工程を受けた前記基板を減圧雰囲気で乾燥する減圧乾燥工程である
ことを特徴とする、基板処理方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の基板処理方法であって、
前記塗布工程は、前記基板の表面に向けて前記塗布液を吐出するノズルを前記基板に対して第1方向に相対移動させて前記第1方向に延びる前記塗膜を形成する工程であり、
前記部分硬化工程は、前記第1方向と直交する第2方向における前記塗膜の端部のみを硬化させる工程である、基板処理方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の基板処理方法であって、
前記部分硬化工程は、前記光、気流および熱のうちの少なくとも1つを前記端部に向けて出力する出力部を前記基板に対して前記第1方向に相対移動させて前記部分硬化処理を受けた端部を前記第1方向に形成する工程である、基板処理方法。
【請求項5】
請求項
1または4に記載の基板処理方法であって、
前記塗布工程は、前記第1方向の一方側に前記ノズルを前記基板に対して相対移動させて前記塗膜を形成する工程であり、
前記部分硬化工程は、前記ノズルに対して前記出力部を前記第1方向の他方側に配置しながら前記ノズルの相対移動に連動して前記出力部を相対移動させる工程である、基板処理方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の基板処理方法であって、
前記部分硬化工程は前記出力部を前記ノズルに取り付けられて行われる、基板処理方法。
【請求項7】
請求項1、4ないし6のいずれか一項に記載の基板処理方法であって、
前記部分硬化工程は、前記出力部から出力される気流を前記塗膜の端部に付与して前記部分硬化処理を実行する工程と、前記気流が付与された端部の周囲を排気する工程とを有する、基板処理方法。
【請求項8】
基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布部と、
前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理部と、
前記塗膜を乾燥させる乾燥部と、を備え、
前記部分硬化処理部は、前記基板の表面に形成された前記塗膜の端部のみを硬化させて前記塗膜のうち前記部分硬化処理部により硬化されていない非硬化領域よりも硬化し、
前記乾燥部は、前記部分硬化処理部により硬化された端部を含め前記塗膜全体を乾燥させ、
前記塗布部は、前記基板の表面に向けて前記塗布液を吐出するノズルを前記基板に対して第1方向に相対移動させて前記第1方向に延びる前記塗膜を形成し、
前記部分硬化部は、前記第1方向と直交する第2方向における前記塗膜の端部のみを硬化させ、
前記部分硬化部は、前記光、気流および熱のうちの少なくとも1つを前記端部に向けて出力する出力部を前記基板に対して前記第1方向に相対移動させて前記部分硬化処理を受けた端部を前記第1方向に形成し、
前記部分硬化部は、前記出力部から出力される気流を前記塗膜の端部に付与して前記部分硬化処理を実行し、前記気流が付与された端部の周囲を排気する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布部と、
前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理部と、
前記塗膜を乾燥させる乾燥部と、を備え、
前記部分硬化処理部は、前記基板の表面に形成された前記塗膜の端部のみを硬化させて前記塗膜のうち前記部分硬化処理部により硬化されていない非硬化領域よりも硬化し、
前記乾燥部は、前記部分硬化処理部により硬化された端部を含め前記塗膜全体を
減圧雰囲気で乾燥させる減圧乾燥部である
ことを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板表面への塗膜の形成および当該塗膜の乾燥を行う基板処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、有機EL表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルタ用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板、電子ペーパー用基板などの精密電子装置用基板(以下、単に「基板」という)の製造工程では、基板表面にレジスト膜などが形成される。例えば、特許文献1に記載の装置では、塗布部および減圧乾燥部が装備されている。塗布部により表面にレジスト液の塗膜が形成された基板が減圧乾燥部に搬送される。そして、減圧乾燥部が基板表面上の塗膜に含まれる溶媒を減圧により蒸発させて塗膜全体を乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗布部により基板の表面に形成された塗膜は全体的に流動性を有している。このため、減圧乾燥部による減圧乾燥工程の進行に伴って塗膜を構成する塗布液が流動する。特に、塗膜の端部における塗膜形状は不安定である。より具体的には、塗膜の端部から一定距離、例えば数mm程度の範囲においては、乾燥処理後の塗膜の膜厚が不均一になることがあった。この点を考慮し、従来においては、上記範囲を除いて有効エリアが設定される。このように従来では、塗膜乾燥時における塗布液の流動に起因して有効エリアの拡張に一定の限界があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、塗膜の端部近傍での塗布液の流動を抑制して塗膜の有効エリアを拡張することができる基板処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様は、基板処理方法であって、基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布工程と、前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理を前記塗膜の端部にのみ施すことにより、前記部分硬化処理を受けた端部を前記塗膜のうち前記部分硬化処理を受けていない非硬化領域よりも硬化させる部分硬化工程と、前記部分硬化工程を受けた端部を含め前記塗膜全体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、前記塗布工程は、前記基板の表面に向けて前記塗布液を吐出するノズルを前記基板に対して第1方向に相対移動させて前記第1方向に延びる前記塗膜を形成する工程であり、前記部分硬化工程は、前記第1方向と直交する第2方向における前記塗膜の端部のみを硬化させる工程であり、前記部分硬化工程は、前記光、気流および熱のうちの少なくとも1つを前記端部に向けて出力する出力部を前記基板に対して前記第1方向に相対移動させて前記部分硬化処理を受けた端部を前記第1方向に形成する工程であり、前記部分硬化工程は、前記出力部から出力される気流を前記塗膜の端部に付与して前記部分硬化処理を実行する工程と、前記気流が付与された端部の周囲を排気する工程とを有することを特徴としている。
また、発明の第2の態様は、基板処理方法であって、基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布工程と、前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理を前記塗膜の端部にのみ施すことにより、前記部分硬化処理を受けた端部を前記塗膜のうち前記部分硬化処理を受けていない非硬化領域よりも硬化させる部分硬化工程と、前記部分硬化工程を受けた端部を含め前記塗膜全体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、前記乾燥工程は、前記部分硬化工程を受けた前記基板を減圧雰囲気で乾燥する減圧乾燥工程であることを特徴としている。
【0007】
また、この発明の第3の態様は、基板処理装置であって、基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布部と、前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理部と、前記塗膜を乾燥させる乾燥部と、を備え、前記部分硬化処理部は、前記基板の表面に形成された前記塗膜の端部のみを硬化させて前記塗膜のうち前記部分硬化処理部により硬化されていない非硬化領域よりも硬化し、前記乾燥部は、前記部分硬化処理部により硬化された端部を含め前記塗膜全体を乾燥させ、前記塗布部は、前記基板の表面に向けて前記塗布液を吐出するノズルを前記基板に対して第1方向に相対移動させて前記第1方向に延びる前記塗膜を形成し、 前記部分硬化部は、前記第1方向と直交する第2方向における前記塗膜の端部のみを硬化させ、前記部分硬化部は、前記光、気流および熱のうちの少なくとも1つを前記端部に向けて出力する出力部を前記基板に対して前記第1方向に相対移動させて前記部分硬化処理を受けた端部を前記第1方向に形成し、前記部分硬化部は、前記出力部から出力される気流を前記塗膜の端部に付与して前記部分硬化処理を実行し、前記気流が付与された端部の周囲を排気することを特徴としている。
また、発明の第4の態様は、基板処理装置であって、基板の表面に塗布液の塗膜を形成する塗布部と、前記基板の表面に形成された塗膜に対して光、気流および熱のうちの少なくとも1つを部分的に付与して硬化させる部分硬化処理部と、前記塗膜を乾燥させる乾燥部と、を備え、前記部分硬化処理部は、前記基板の表面に形成された前記塗膜の端部のみを硬化させて前記塗膜のうち前記部分硬化処理部により硬化されていない非硬化領域よりも硬化し、前記乾燥部は、前記部分硬化処理部により硬化された端部を含め前記塗膜全体を減圧雰囲気で乾燥させる減圧乾燥部であることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、基板の表面に形成された塗膜の端部に対して部分硬化処理が施される。これにより、部分硬化処理を受けた端部は塗膜のうち部分硬化処理を受けていない非硬化領域よりも硬化する。その結果、塗膜全体を乾燥させている際に、既に部分硬化されている端部での塗布液の流動が抑制され、端部近傍での塗膜の膜厚を安定化させることができる。その結果、乾燥後の塗膜の膜厚が均一なエリア、つまり有効エリアが従来技術よりも拡張される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、塗膜の端部近傍での塗布液の流動を抑制して塗膜の有効エリアを拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】基板処理装置に装備された塗布部の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す塗布部を模式的に示す側面図である。
【
図4B】塗布工程と並行して実行される部分硬化工程を示す図である。
【
図5】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態に装備される塗布部の一部を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す塗布部をY2側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す図である。本実施形態の基板処理装置100は、本発明の「基板」の一例である液晶表示装置用ガラス基板G(以下、「基板G」と称する)に対して、レジスト膜を形成する装置である。基板処理装置100は、複数の処理ユニット、具体的には搬入部1、洗浄部2、デハイドベーク部3、塗布部4、減圧乾燥部5、プリベーク部6および搬出部7を備えている。これらの処理ユニットは上記の順に互いに隣接して配置され、制御部8により制御される。これにより、図示を省略する搬送部によって破線矢印で示す順序で搬送される基板Gに対して種々の処理が施される。
【0012】
搬入部1は、基板処理装置100において処理される基板Gを、基板処理装置100内に搬入する。洗浄部2は、搬入部1へ搬入された基板Gを洗浄し、微細なパーティクルをはじめ、有機汚染や金属汚染、油脂、自然酸化膜等を除去する。デハイドベーク部3は、基板Gを加熱し、洗浄部2において基板Gに付着した洗浄液を気化させることによって、基板Gを乾燥させる。
【0013】
塗布部4は、デハイドベーク部3で乾燥処理を行った後の基板Gをステージの上面で吸着保持しながら基板Gの表面にレジスト液を塗布液として塗布して塗膜(後で説明する
図2、
図3、
図4A、
図4B中の符号CF)を形成する。また、塗布部4は、本発明の「塗布部」としての機能のみならず、本発明の「部分硬化処理部」としての機能も兼ね備えている。なお、このような部分硬化処理機能付きの塗布部4の構成ならびにそれらの動作については、後で
図2、
図3、
図4Aおよび
図4Bを参照しつつ詳述する。
【0014】
減圧乾燥部5は、本発明の「乾燥部」の一例に相当し、減圧雰囲気に基板Gの表面を晒すことで上記塗膜中の溶媒を蒸発させる工程(減圧乾燥工程)を実行して塗膜を乾燥させる。この減圧乾燥部5による減圧乾燥工程を受けた基板Gはプリベーク部6に搬送され、加熱処理される。このプリベーク部6は基板Gを加熱し、基板Gの表面Gaのレジスト成分を固化させる加熱処理ユニットである。これにより、基板Gの表面に塗布液の薄膜、すなわちレジスト膜が形成される。このようにして基板処理装置100の各処理ユニットにおいて処理が施された基板Gは、搬出部7へ搬送される。そして、搬出部7から基板Gが基板処理装置100の外部へ搬出される。
【0015】
図2は基板処理装置に装備された塗布部の一例を示す斜視図である。
図3は
図2に示す塗布部を模式的に示す側面図である。
図4Aおよび
図4Bは塗布液の塗布工程および部分硬化工程を模式的に示す図である。なお、
図2および
図2以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付する。Z方向の矢印Z1は鉛直上方を向いており、Z方向の矢印Z2は鉛直下方を向いている。Y方向の矢印Y1は基板Gの長手方向の一方側を向いており、Y方向の矢印Y2は長手方向の他方側を向いている。X方向の矢印X1は基板Gの幅方向の一方側を向いており、X方向の矢印X2は基板Gの幅方向の他方側を向いている。また、各図では、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、
図3では、ノズル支持体等の一部の構成を省略している。
【0016】
塗布部4は、スリットノズル41を用いて基板Gの表面Gaに塗布液を塗布して塗膜CFを形成するスリットコータと呼ばれる装置である。本実施形態では、塗布部4は塗布液として紫外線硬化タイプのフォトレジスト液を基板Gに塗布するが、これら以外の塗布液、例えば半導体パッケージのめっき用レジスト液、感光性樹脂、感光性ポリイミド前駆体、シリコン、ナノメタルインクまたは導電性材料を含むスラリー(ペースト)等、種々の塗布液を塗布可能である。なお、本明細書中で、「基板Gの表面Ga」とは基板Gの両主面のうち塗布液が塗布される側の主面を意味する。
【0017】
塗布部4は、基板Gを水平姿勢で吸着保持可能なステージ42と、ステージ42に保持される基板Gに対してスリットノズル41をY方向に移動させるノズル移動機構43と、塗布処理に先立ってスリットノズル41に対してクリーニング処理を施すクリーニング機構44とを備えている。
【0018】
スリットノズル41はX方向に延びる長尺スリット状の開口部である吐出口411を有している。吐出口411はX方向においてスリットノズル41の全長より短く、スリットノズル41のX方向の両端では吐出口411が開口しない。このスリットノズル41はステージ42に保持された基板Gの表面Gaに向けて吐出口411から塗布液を吐出可能な構成を有している。スリットノズル41では、図外の供給機構より塗布液が供給されると、塗布液はスリットノズル41の内部流路(図示省略)を通じてスリットノズル41の長手方向(X方向)に均等に拡幅されて送液され、吐出口411より下方に向けて吐出される。このようにスリットノズル41の吐出口411から塗布液を吐出しつつ基板Gに対する塗布動作を実行すると、スリットノズル41の吐出口411の周囲部分に塗布液が付着することがある。付着した塗布液は、乾燥して残渣となり、これを放置すると、良好な吐出の妨げや、基板Gに形成される膜の汚れの原因になる。そこで、塗布部4ではこの付着物を除去するクリーニング処理をクリーニング機構44により行う。
【0019】
ステージ42は略直方体の形状を有する花崗岩等の石材で構成されており、その上面(Z1側)のうちY1側には、略水平な平坦面に加工されて基板Gを保持する保持面421を備える。保持面421には図示しない多数の真空吸着口が分散して形成されている。これらの真空吸着口により基板Gが吸着されることで、塗布処理の際に基板Gが所定の位置に略水平状態に保持される。なお、基板Gの保持態様はこれに限定されるものではなく、例えば機械的に基板Gを保持するように構成してもよい。
【0020】
また、ステージ42において保持面421の占有する領域よりY2側にはノズル調整エリアAR1が設けられており、このノズル調整エリアAR1にクリーニング機構44が配置されている。
【0021】
ノズル移動機構43は保持面421の上方とノズル調整エリアAR1の上方との間でスリットノズル41を往復移動させる。そして、スリットノズル41がノズル調整エリアAR1の上方に移動している期間、すなわち、ステージ42において保持面421の占有する領域の上方にスリットノズル41がない期間に、塗布処理後の先行基板Gの搬出と塗布処理前の後続基板Gの搬入とがステージ42上で行なわれる。一方、スリットノズル41が保持面421の上方を移動している間に当該保持面421上の基板Gの表面Gaに塗布液が塗布される。
【0022】
ノズル移動機構43は、主としてステージ42の上方をX方向に横断しスリットノズル41を支持するノズル支持体431を有している。ノズル支持体431は、スリットノズル41を固定する固定部材431aと、固定部材431aを支持するとともに昇降させる2つの昇降機構431bとを有している。なお、固定部材431aは、X方向を長手方向とするカーボンファイバ補強樹脂等の断面矩形の棒状部材で構成される。また、本実施形態では、ノズル支持体431はスリットノズル41のみならず部分硬化処理を行う紫外線照射ランプも支持するが、この点については後で詳述する。
【0023】
2つの昇降機構431bは固定部材431aの長手方向の両端部に連結されており、それぞれACサーボモータおよび及びボールネジ等を有している。これらの昇降機構431bにより、固定部材431aおよびそれに固定されたスリットノズル41が鉛直方向(Z方向)に昇降され、スリットノズル41の吐出口411と基板Gとの間隔、すなわち、基板Gに対する吐出口411の相対的な高さが調整される。なお、固定部材431aの鉛直方向の位置は、例えば、図示を省略しているが、昇降機構431bの側面に設けられたスケール部と、当該スケール部に対向してスリットノズル41の側面等に設けられた検出センサとで構成されるリニアエンコーダにより検出できる。
【0024】
このように構成されたノズル支持体431は、
図2に示すように、ステージ42の左右両端部をX方向に沿って掛け渡し、保持面421を跨ぐ架橋構造を有している。ノズル移動機構43は、この架橋構造体としてのノズル支持体431とそれに固定保持されたスリットノズル41とを、ステージ42上に保持される基板Gに対してY方向に沿って相対移動させる相対移動手段として機能する。具体的には、ノズル移動機構43は、X1側およびX2側のそれぞれにおいて、スリットノズル41の移動をY方向に案内するガイドレール432と、駆動源であるリニアモータ433と、スリットノズル41の吐出口の位置を検出するためのリニアエンコーダ434とを有している。
【0025】
2つのガイドレール432はそれぞれ
図3に示すように、ステージ42のX方向の両端部にY方向に沿ってノズル洗浄位置(クリーニング機構44の配設位置)から塗布終了位置(保持面421のY1側端部位置)までの区間を含むように延設されている。そのため、ノズル移動機構43によって2つの昇降機構431bの下端部が上記2つのガイドレール432に沿って案内されることで、スリットノズル41はノズル洗浄位置とステージ42上に保持される基板Gに対向する位置との間を移動する。
【0026】
また、各リニアモータ433は、固定子433aと移動子433bとを有するACコアレスリニアモータである。固定子433aは、ステージ42のX方向の両側面にY方向に沿って設けられている。一方、移動子433bは、昇降機構431bの外側に固設されている。リニアモータ433は、これら固定子433aと移動子433bとの間に生じる磁力によってノズル移動機構43の駆動源として機能する。
【0027】
また、各リニアエンコーダ434はそれぞれ、スケール部434aと検出部434bとを有している。スケール部434aはステージ42に固設されたリニアモータ433の固定子433aの下部にY方向に沿って設けられている。一方、検出部434bは、昇降機構431bに固設されたリニアモータ433の移動子433bのさらに外側に固設され、スケール部434aに対向配置される。リニアエンコーダ434は、スケール部434aと検出部434bとの相対的な位置関係に基づいて、Y方向におけるスリットノズル41の吐出口411の位置を検出する。したがって、制御部8が検出部434bの検出結果に基づきリニアモータ433を制御することでスリットノズル41がY方向に往復移動させられる。
【0028】
以上のような構成によって、スリットノズル41は、基板Gが保持される保持面421の上部空間を、保持面421に対して相対的に略水平なY方向へ移動可能となっている。そして、塗布部4は、スリットノズル41の吐出口411から塗布液を吐出しながらスリットノズル41を相対移動させることで、保持面421で保持した基板Gの表面Gaに塗膜を形成する。なお、基板Gの各辺の端部から所定の幅の領域(額縁状の領域)は、塗布液の塗布対象とならない非塗布領域となっている。そして、基板Gのうち、この非塗布領域を除いた矩形領域が、塗布液を塗布すべき塗布領域RTとなっている。さらに、塗布領域RTのうち、X1側端部およびX2側端部が次に説明する部分硬化処理部9により硬化される非有効エリアNAとなり、これらに挟まれた範囲が半導体デバイスなどの製造に用いられる有効エリアEAとなる。
【0029】
部分硬化処理部9はノズル支持体431の固定部材431aに固定された2つの紫外線照射ランプ(以下「UVランプ」という)91、91を有している。これらのUVランプ91、91は、
図2および
図3に示すように、ノズル支持体431のY2側で、それぞれ固定部材431aのX1側端部およびX2側端部に取り付けられている。このため、スリットノズル41のY方向移動と一緒にUVランプ91、91はそれぞれX1側の非有効エリアNAおよびX2側の非有効エリアNAの上方を通過する。
【0030】
UVランプ91、91は、
図3に示すように、ランプ駆動機構92と電気的に接続されている。このため、制御部8からの指令に応じてランプ駆動機構92がUVランプ91、91を点灯および消灯させる。より具体的には、例えば
図4Aに示す塗布工程の初期段階(塗膜形成の開始直後)では、UVランプ91、91は、塗布液の塗膜CFから離れて位置しているため、消灯されている。そして、塗膜形成の進行に伴ってUVランプ91、91が塗膜CFのY2側端部に近づくと、UVランプ91、91の点灯が開始される。さらに塗布工程が進行すると、例えば
図4Bに示すように、点灯状態のUVランプ91、91がそれぞれX1側の非有効エリアNAおよびX2側の非有効エリアNAの上方を通過する。このとき、塗膜CFの形成直後に紫外線光Lが非有効エリアNAにのみ付与され、非有効エリアNAの塗膜CF(参考のためハッチングが付されている部位)のみが硬化される(部分硬化工程)。
【0031】
この部分硬化工程は、スリットノズル41が基板Gの上方を通過して塗布工程の終了後も一定期間だけ継続される。より具体的には、UVランプ91、91が基板Gの表面Gaに形成された塗膜CFの上方を通過するまで継続される。そして、UVランプ91、91の塗膜上方の通過後に、UVランプ91、91は消灯される。
【0032】
以上のように、第1実施形態では、塗布部4において、塗布液の塗布(塗膜形成)と並行して塗膜CFのX1側端部およびX2側端部に対して部分硬化処理を施している。これにより、部分硬化処理を受けた端部(非有効エリアNA)は、塗膜CFのうち部分硬化処理を受けていない非硬化領域(有効エリアEA)よりも硬化する。その結果、塗布部4による塗布工程に続いて減圧乾燥部5による塗膜CFの乾燥時において既に部分硬化している端部での塗布液の流動を抑制することができ、当該端部近傍での塗膜CFの膜厚を安定化させることができる。よって、従来技術のような問題(端部での塗布液の流動)による影響を考慮することなく、有効エリアEAを設定することができる。つまり、上記問題が解消された分だけ、従来技術よりも有効エリアEAを拡張することができる。
【0033】
なお、第1実施形態では、紫外線硬化タイプのフォトレジスト液を塗布液として用いることに対応して塗布液を紫外線光Lで硬化している。このため、部分硬化処理部9としてUVランプ91を用いているが、その他の波長域の光により塗布液が硬化する場合には上記光を出射するランプ91、91を用いればよい。
【0034】
また、塗布液が熱硬化特性を有する場合には、UVランプに代えて赤外線ランプ、加熱ヒータおよびレーザ照射などの加熱手段により部分硬化処理部9を構成してもよい。つまり、塗膜CFのうち非有効エリアNAに対して熱やレーザ光を付与して熱硬化特性を有する塗膜CFを部分的に硬化させてもよい。また、光や熱以外に、窒素ガスなどの不活性ガスおよび空気などの気体の流れ、つまり気流を非有効エリアNAに付与して溶媒成分を除去して塗膜CFを部分的に硬化させてもよい(第2実施形態)。
【0035】
図5は本発明に係る基板処理装置の第2実施形態に装備される塗布部の一部を示す斜視図である。
図6は
図5に示す塗布部をY2側から見た側面図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、部分硬化処理部9の構成である。その他の構成は基本的に第1実施形態と同一であるため、以下においては相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
第2実施形態では、
図5に示すように、部分硬化処理部9はノズル支持体431のY2側に配置された2組のノズル対93、93を有している。一方のノズル対93は固定部材431aのX1側端部に取り付けられている。このノズル対93は、ガス吐出ノズル94と、ガス吐出ノズル94のX1側に隣接するガス吸引ノズル95とで構成されている。また、他方のノズル対93は固定部材431aのX2側端部に取り付けられている。このノズル対93は、ガス吐出ノズル94と、ガス吐出ノズル94のX2側に隣接するガス吸引ノズル95とで構成されている。このように本実施形態では、いずれのノズル対93もガス吸引ノズル95がX方向においてガス吐出ノズル94に対して外側に配置されている。
【0037】
ガス吐出ノズル94およびガス吸引ノズル95は、開口(図示省略)を鉛直下方に向けた状態で、それぞれ圧送機構96および排気機構97と接続されている。このため、塗膜形成の進行中に、制御部8から圧送機構96および排気機構97に動作指令が与えられると、圧送機構96から窒素ガスなどの気体がガス吐出ノズル94の開口から塗膜CFの非有効エリアNAに向けて吐出される。また、ガス吐出ノズル94の開口に隣接して位置するガス吸引ノズル95の開口から気体が吸引される。これにより、当該気体が非有効エリアNAの周囲から排気され、排気機構97に回収される。このような気体の吐出吸引により各ノズル対93の下方位置で非有効エリアNAに限定的に気流AFが付与される。その結果、
図5のハッチングで示すように、当該気流AFにより非有効エリアNAでの塗膜CFの部分的な硬化が進行する。なお、気体の吐出吸引および停止のタイミングは第1実施形態におけるUVランプ91の点灯および消灯のタイミングと基本的に同一である。
【0038】
以上のように、第2実施形態においても、塗布部4において、塗布液の塗布(塗膜形成)と並行して塗膜CFのX1側端部およびX2側端部に対して部分硬化処理が実行される。したがって、第1実施形態と同様の作用効果、つまり従来技術よりも有効エリアEAを拡張することができる。
【0039】
また、塗膜CFのX1側端部およびX2側端部に気流を付与するためにX1側ガス吐出ノズル94およびX2側ガス吐出ノズル94のみを設けても良い。ただし、この場合、塗膜CFのX1側端部およびX2側端部に付与された気体が有効エリアEAに流れ込可能性がある。これに対し、第2実施形態では、ガス吸引ノズル95を隣接配置しているため、有効エリアEAへの流れ込みを効果的に防止することができる。もちろん、ガス吐出ノズル94とガス吸引ノズル95との配置関係を逆転させてもよいことは言うまでもない。また、ガス吐出ノズル94のみを設ける場合には、各ガス吐出ノズル94の開口がX方向外側に向くようにガス吐出ノズル94を傾斜配置するのが望ましい。
【0040】
上記した実施形態において、UVランプ91およびガス吐出ノズル94が本発明の「出力部」の一例に相当している。また、減圧乾燥工程が本発明の「乾燥工程」の一例に相当している。また、Y方向およびX方向がそれぞれ本発明の「第1方向」および「第2方向」に相当している。さらに、Y1側およびY2側がそれぞれ本発明の「第1方向の一方側」および「第1方向の他方側」に相当している。
【0041】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、塗布部4に対して部分硬化処理部9を組み込んでいるが、塗布部4と減圧乾燥部5との間に部分硬化処理部9を独立して配置してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、塗膜に対してUV光、レーザ光、熱または気流を部分的に付与して硬化させているが、これらを複合的に付与して硬化させるように構成してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、スリットノズル41を基板Gに対して相対移動させるためにスリットノズル41を移動させているが、スリットノズル41を固定しながら基板GをY方向に移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。出力部(UVランプ91やガス吐出ノズル94)と基板Gとの相対移動についても、上記と同様である。
【0044】
また、上記実施形態では、塗膜CFのX1端部およびX2端部を硬化させているが、部分硬化させる端部はこれに限定されるものではなく、前記塗膜の端部の全部または一部を硬化させて有効エリアを拡張する発明全般に適用することができる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、基板Gの表面Ga上の塗膜全体を減圧乾燥部5により乾燥させる基板処理装置100に対して本発明を適用しているが、その適用範囲はこれに限定されない。すなわち、その他の乾燥方式で上記基板Gを乾燥させる基板処理技術に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明は、基板表面への塗膜の形成および当該塗膜の乾燥を行う基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
4…塗布部
5…減圧乾燥部(乾燥部)
9…部分硬化処理部
41…スリットノズル
91…紫外線照射ランプ(出力部)
94…ガス吐出ノズル(出力部)
100…基板処理装置
AF…気流
CF…塗膜
EA…有効エリア(部分硬化処理を受けていない非硬化領域)
G…基板
Ga…(基板の)表面
L…紫外線光
NA…非有効エリア(部分硬化処理を受けた端部)
RT…塗布領域
X…第2方向
Y…第1方向
Y1…(第1方向の)一方側
Y2…(第1方向の)他方側