(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理システム、及び、医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240611BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240611BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
A61B6/03 560G
A61B6/03 570F
A61B6/50 500B
A61B6/50 511E
(21)【出願番号】P 2020153231
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀明
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202020101691(DE,U1)
【文献】特開2011-139821(JP,A)
【文献】特表2013-534154(JP,A)
【文献】特開2014-128651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の大動脈及び前記大動脈より分岐する対象血管を含む医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成する生成部と、
前記医用画像データに基づいて、前記大動脈から前記対象血管が伸びる起始部を基準位置として特定する特定部と、
前記解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する解析部と、
前記基準位置における前記流体パラメータと前記流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出する導出部と、
前記流体解析結果を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え
、
前記特定部は、前記被検体の血管領域を前記医用画像データから抽出し、前記血管領域の医用画像データにおける前記流体パラメータの分布に基づいて、前記起始部を特定する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記導出部は、前記対象血管上に任意位置を指定し、前記基準位置における前記流体パラメータと前記任意位置における前記流体パラメータとに基づく値を前記流体解析結果として導出する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記解析モデルにおいて、前記起始部に対応する位置を、前記基準位置として特定する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記起始部を特定する複数の起始部特定方法のうちの1つの起始部特定方法を使用した結果、前記解析モデル内に前記起始部に対応する基準位置が存在しない場合、使用する起始部特定方法を前記1つの起始部特定方法から他の1つの起始部特定方法に切り替える、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記解析モデル内に前記起始部に対応する前記基準位置が存在しない場合、前記起始部が開始位置となる前記解析モデルを再生成し、
前記解析部は、前記再生成された解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記解析モデル内に前記起始部に対応する前記基準位置が存在しない場合、エラーを前記表示部に表示させる、
請求項3
~5のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記起始部が前記基準位置として開始位置となる前記解析モデルを生成し、
前記解析部は、前記起始部が前記基準位置として開始位置となる前記解析モデルを使用して前記流体解析を行う、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記特定部は、前記医用画像データの輝度値分布を用いて、前記大動脈の領域を検出し、前記検出した領域の外郭が枝分かれした部分を、前記起始部として特定する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記特定部は、前記医用画像データの輝度値分布を用いて、前記大動脈の領域と、前記対象血管の輪郭及び芯線と検出し、前記検出した領域の外郭と前記対象血管の芯線とが交差する位置を、前記起始部として特定する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記特定部は、前記被検体の血管領域を前記医用画像データから抽出し、前記血管領域の医用画像データにおいて、前記被検体の血管に挿入されるデバイスにより観測される血圧のパラメータの変化に基づいて、前記起始部を特定する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記特定部は、造影下で時系列に沿って生成された前記医用画像データの造影剤の濃度分布に基づいて、前記起始部を特定する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記特定部は、造影下で時系列に沿って生成された複数の前記医用画像データにおける造影剤の時間変化に基づいて、前記起始部を特定する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記特定部は、前記医用画像データにおいて、ユーザが前記起始部の位置を指定することによって前記起始部を特定する、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記表示制御部は、前記流体解析結果を表す画面において、前記流体パラメータと前記被検体の血管の位置とを対応付ける情報を前記表示部に表示させる、
請求項1~
13のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
前記表示制御部は、前記流体パラメータを前記基準位置から表示させる、
請求項14に記載の医用画像処理装置。
【請求項16】
前記対象血管は、前記被検体の内頚動脈、冠動脈、肝動脈、及び、腎動脈のいずれかである、
請求項1~15のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項17】
被検体の大動脈及び前記大動脈より分岐する対象血管を含む医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成する生成部と、
前記医用画像データに基づいて、前記大動脈から前記対象血管が伸びる起始部を基準位置として特定する特定部と、
前記解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する解析部と、
前記基準位置における前記流体パラメータと前記流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出する導出部と、
前記流体解析結果を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え
、
前記特定部は、前記被検体の血管領域を前記医用画像データから抽出し、前記血管領域の医用画像データにおける前記流体パラメータの分布に基づいて、前記起始部を特定する、
医用画像処理システム。
【請求項18】
被検体の大動脈及び前記大動脈より分岐する対象血管を含む医用画像データを取得し、
前記医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成し、
前記医用画像データに基づいて、前記大動脈から前記対象血管が伸びる起始部を基準位置として特定し、
前記解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得し、
前記基準位置における前記流体パラメータと前記流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出し、
前記流体解析結果を表示部に表示させる、
ことを含み、
前記起始部の特定は、前記被検体の血管領域を前記医用画像データから抽出し、前記血管領域の医用画像データにおける前記流体パラメータの分布に基づいて、前記起始部を特定する、
ことを含む医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理システム、及び、医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内の血流評価を行う際に、血管の入口である起始部と、当該血管上の任意の位置である遠位部との血流の差を比較することで、遠位部の血流の落ち込みを評価することができる。例えば、医用画像データによる流体解析において、血管の上流から下流に向かって流体解析を行う場合を考える。この場合、流体解析の解析を行う範囲の始点、つまり解析範囲のうち最も上流となる位置を基準位置として、遠位部との血流の差を比較することができる。しかし、基準位置と解剖学的な血管の起始部の位置とが一致するとは限らない。基準位置と解剖学的な血管の起始部の位置とが一致していない場合、血管内の血流評価が正確に行われない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、血管内の血流評価を正確に行うことである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、生成部と、特定部と、解析部と、導出部と、表示制御部と、を備える。前記取得部は、被検体の大動脈及び前記大動脈より分岐する対象血管を含む医用画像データを取得する。前記生成部は、前記医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成する。前記特定部は、前記医用画像データに基づいて、前記大動脈から前記対象血管が伸びる起始部を基準位置として特定する。前記解析部は、前記解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する。前記導出部は、前記基準位置における前記流体パラメータと前記流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出する。前記表示制御部は、前記流体解析結果を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る医用画像処理装置を含む医用画像処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る医用画像処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る医用画像処理装置の処理を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る医用画像処理装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、ディスプレイに表示される画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る医用画像処理装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の適用例における医用画像処理装置の処理を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2の適用例における医用画像処理装置の処理を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第3の適用例における医用画像処理装置の処理を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第4の適用例における医用画像処理装置の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、医用画像処理装置、医用画像処理システム、及び、医用画像処理方法の実施形態について詳細に説明する。なお、以下、医用画像処理装置を含む医用画像処理システムを例に挙げて説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る医用画像処理装置100を含む医用画像処理システム1の構成の一例を示す図である。
図1に示す医用画像処理システム1は、医用画像処理装置100と、医用画像診断装置200と、画像保管装置300とを備える。医用画像処理装置100は、医用画像診断装置200及び画像保管装置300と、例えば、病院内に設置された院内LAN(Local Area Network)などのネットワーク2により接続される。ここで、各装置は、直接的、又は間接的に相互に通信可能な状態となっており、例えば、医用画像処理システム1にPACS(Picture Archiving and Communication System)が導入されている場合、各装置は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則って、医用画像等を相互に送受信する。
【0009】
医用画像診断装置200は、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT-CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET-CT装置、又はこれらの装置群等である。医用画像診断装置200は、2次元の医用画像データや、3次元の医用画像データ(ボリュームデータ)、時系列に沿った2次元医用画像データ、時系列に沿った3次元医用画像データを生成可能である。
【0010】
ここで、医用画像診断装置100は、被検体を撮影することにより医用画像データを収集する。例えば、医用画像診断装置100であるX線CT装置は、造影剤を投与した被検体にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置は、収集した投影データに基づいて、2次元のCT画像データ、3次元のCT画像データ(ボリュームデータ)、時系列に沿った2次元のCT画像データ、時系列に沿った3次元のCT画像データを生成する。
【0011】
医用画像診断装置200は、生成した医用画像データを画像保管装置300に送信する。なお、医用画像診断装置200は、医用画像データを画像保管装置300に送信する際に、付帯情報として、例えば、患者を識別する患者ID、検査を識別する検査ID、医用画像診断装置200を識別する装置ID、医用画像診断装置200による1回の撮影を識別するシリーズID等を送信する。
【0012】
画像保管装置300は、医用画像を保管するデータベースである。具体的には、画像保管装置300は、記憶回路を備え、医用画像診断装置200から送信された医用画像データを当該記憶回路に格納することにより、当該医用画像データを保管する。画像保管装置300の記憶回路は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置である。なお、画像保管装置300に保管された医用画像データは、患者ID、検査ID、装置ID、シリーズID等と対応付けて保管される。このため、医用画像処理装置100は、患者ID、検査ID、装置ID、シリーズID等を用いた検索を行なうことで、必要な医用画像データを画像保管装置300から取得することができる。
【0013】
医用画像処理装置100は、医用画像に対して画像処理を行なう画像処理装置であり、例えば、ワークステーション、PACS(Picture Archiving and Communication System)の画像サーバやビューワ、電子カルテシステムの各種装置などである。医用画像処理装置100は、医用画像診断装置200又は画像保管装置300から取得した医用画像データに対して種々の処理を行う。
【0014】
図2は、本実施形態に係る医用画像処理装置100の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、医用画像処理装置100は、入力インターフェース110と、ディスプレイ120、123と、通信インターフェース130と、記憶回路140と、処理回路150とを有する。
【0015】
入力インターフェース110は、マウス等のポインティングデバイス、キーボード等を有し、医用画像処理装置100に対する各種操作の入力をユーザから受け付け、ユーザから受け付けた指示や設定の情報を処理回路150に転送する。
【0016】
ディスプレイ120は、ユーザによって参照されるモニタであり、処理回路150による制御のもと、画像データをユーザに表示したり、入力インターフェース110を介してユーザから各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。通信インターフェース130は、NIC(Network Interface Card)等であり、他の装置との間で通信を行う。ディスプレイ120は、表示部の一例である。記憶回路140は、例えば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置である。
【0017】
処理回路150は、医用画像処理装置100の構成要素を制御する。例えば、処理回路150は、
図2に示すように、取得機能151、生成機能152、特定機能153、解析機能154、導出機能155、及び、表示制御機能156を実行する。ここで、例えば、処理回路150の構成要素である取得機能151、生成機能152、特定機能153、解析機能154、導出機能155、及び、表示制御機能156が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路140に記録されている。処理回路150は、各プログラムを記憶回路140から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図2の処理回路150内に示された各機能を有することとなる。なお、取得機能151、生成機能152、特定機能153、解析機能154、導出機能155、及び、表示制御機能156は、それぞれ、取得部、生成部、特定部、解析部、導出部、及び、表示制御部の一例である。
【0018】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路140に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路140にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0019】
以上、本実施形態に係る医用画像処理装置100を含む医用画像処理システム1の全体構成について説明した。このような構成のもと、医用画像処理装置100は、血管内の血流評価の支援を行うため、医用画像データを用いた流体解析を行なう。
【0020】
ここで、血管内の血流評価を行う際に、血管の入口である起始部と、当該血管上の任意の位置である遠位部との血流の差を比較することで、遠位部の血流の落ち込みを評価することができる。例えば、医用画像データによる流体解析では、流体解析の開始位置を基準位置として、遠位部との血流の差を比較することができる。しかし、基準位置と解剖学的な血管の起始部の位置とが一致するとは限らない。
【0021】
血管内の血流評価を行う際に、医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成し、例えば、解析モデル内の圧力分布から、解析モデルにおける圧較差の値を計算する。例えば、解析モデルの血管の起始部の圧力と、当該血管上の任意の位置である遠位部の圧力とに基づいて、圧較差の値を計算する。ここで、
図3に示すように、大動脈400から対象血管410が伸びる起始部X1と、解析モデルの血管の開始位置X100とが一致していない場合がある。開始位置X100が起始部X1と一致していない場合、血管内の血流評価が正確に行われない可能性がある。
【0022】
そこで、本実施形態に係る医用画像処理装置100では、血管内の血流評価を正確に行うため、以下の処理を行う。本実施形態に係る医用画像処理装置100では、取得機能151と、生成機能152と、特定機能153と、解析機能154と、導出機能155と、表示制御機能156と、を備える。取得機能151は、被検体の大動脈400及び大動脈400より分岐する対象血管410を含む医用画像データを取得する。生成機能152は、医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成する。特定機能153は、医用画像データに基づいて、大動脈400から対象血管410が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。解析機能154は、解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する。導出機能155は、基準位置における流体パラメータと流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出する。表示制御機能156は、流体解析結果をディスプレイ120に表示させる。
【0023】
以下では、
図4を用いて、制御機能151及び提示機能152の各機能について説明する。
図4は、本実施形態に係る医用画像処理装置100による処理の手順を示すフローチャートである。
【0024】
図4のステップS101は、処理回路150が記憶回路150から取得機能151に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS101において、取得機能151は、ユーザによる入力インターフェース110の操作を受け付けて、医用画像診断装置200又は画像保管装置300から、被検体の大動脈400及び対象血管410などの血管を含む対象領域の医用画像データを取得する。ここで、被検体の血管を含む対象領域の医用画像データは、組織の形態が描出された形態画像データである。形態画像データとしては、血管造影下で生成された医用画像データが一例として挙げられる。例えば、以下で説明する医用画像データは、造影下で生成された3次元のCT(Computed Tomography)画像データが典型的である。ただし、本実施形態に適用できる医用画像データは、形態画像データでなくともよい。例えば、パワードプラ信号の分布は、血管内径にほぼ一致することから、被検体の血管を含む対象領域の医用画像データは、超音波診断装置のパワードプラスキャンにより生成された3次元画像データでもよい。
【0025】
図4のステップS102~S104は、処理回路150が記憶回路150から特定機能153に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。
【0026】
ステップS102において、特定機能153は、取得機能151により取得された医用画像データから被検体の大動脈400の領域を抽出する。ここで、大動脈400の領域の抽出は、既存の公知技術により実現できる。例えば、特定機能153は、医用画像データの画素値(輝度値)に基づく領域拡張法や、形状の解析などを行うことで、医用画像データの大動脈400の領域に対応する画素の位置を抽出する。
【0027】
ステップS103において、特定機能153は、取得機能151により取得された医用画像データにおいて造影剤が存在する領域(造影領域)を抽出する。本実施形態における造影領域とは、大動脈から延びる血管が存在する血管領域を指すものであり、大動脈400の領域とは別のものとして定義する。ここで、造影領域の抽出についても、既存の公知技術により実現できる。例えば、特定機能153は、造影剤のCT値に基づいて設定された閾値を用いた2値化処理により、造影領域を抽出する。なお、ステップS102およびステップS103における領域の抽出方法について後に詳述する。
【0028】
なお、パワードプラスキャンにより生成された3次元画像データを用いる場合、パワードプラ信号の3次元分布から、血管領域を抽出し、当該血管領域の形状解析から、大動脈400の領域を抽出する。
【0029】
ステップS104において、特定機能153は、取得機能151により取得された医用画像データに基づいて、大動脈400から対象血管410が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。ここで、起始部を特定する方法については後述する。
【0030】
図4のステップS105は、処理回路150が記憶回路150から生成機能152に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。ステップS105において、生成機能152は、医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成する。
【0031】
まず、生成機能152は、取得機能151により取得された医用画像データの輝度値分布を用いて、被検体の大動脈400及び対象血管410のセグメンテーション(輪郭・芯線抽出)を行う。生成機能152は、セグメンテーションが完了した場合、被検体の対象血管410の輪郭をトレースして、対象血管410を3次元でモデリングした3Dモデルを、解析モデルとして生成する。
【0032】
ここで、解析モデルは、血管の輪郭にメッシュを当てはめることで3Dモデルとして生成してもよいし、血管輪郭を短い領域ごとに区切って、各領域を後述する流体解析のために必要なパラメータが既知である既存の3Dモデル(直管や曲がり管、漏斗管など)に当てはめて、既存の3Dモデルをつぎはぎしたものとして生成してもよい。あるいは、芯線の3D空間中の位置と、その芯線における血管形状に関するパラメータをプロットしてゆくことで、疑似的に3Dモデルを表現してもよい。
【0033】
なお、生成機能152は、医用画像データと解析モデルとを対応付ける情報として、解析モデルの各位置に、当該位置と対応する医用画像データの位置の座標を保存する。
【0034】
図4のステップS106~S107は、処理回路150が記憶回路150から解析機能154に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。
【0035】
ステップS106において、解析機能154は、生成機能152により生成された解析モデルを使用して、血管における血流に関する指標についての流体解析を実施する。例えば、解析機能154は、ユーザによる入力インターフェース110の操作により、血管内の血流に関する指標を流体解析によってシミュレートするための各種条件(例えば、血液の質量、粘性及び流速や、血管のヤング率など)の入力を受け付ける。解析機能154は、生成機能152により生成された解析モデルに対して、受け付けた各種条件を用いた流体解析を行なうことで、解析モデル内の圧力分布を算出する。
【0036】
そして、ステップS107において、解析機能154は、算出した解析モデル内の圧力分布を示す圧力マッピングを生成することで、対象血管410内の圧力の分布を取得する。対象血管410内の圧力は、流体パラメータの一例である。
【0037】
図4のステップS108は、処理回路150が記憶回路150から特定機能153に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。
【0038】
ステップS108では、特定機能153は、解析モデルにおいて、起始部X1に対応する位置を、基準位置として特定する。例えば、特定機能153は、医用画像データにおける起始部X1の位置の座標に最も近い座標が対応付けられた解析モデルの位置(芯線を構成する芯点)を、基準位置として特定する。
【0039】
図4のステップS109は、処理回路150が記憶回路150から導出機能155に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。
【0040】
ステップS109において、導出機能155は、基準位置における対象血管410内の圧力と対象血管410内の圧力の分布とに基づいて流体解析結果を導出する。具体的には、導出機能155は、対象血管410上に任意の位置である遠位部の圧力と、基準位置の圧力とに基づく値を流体解析結果として導出する。例えば、導出機能155は、基準位置における対象血管410内の圧力と、遠位部における対象血管410内の圧力とに基づいて、圧較差の値を、流体解析結果として計算する。
【0041】
図4のステップS110は、処理回路150が記憶回路150から表示制御機能156に対応するプログラムを呼び出して実行されるステップである。
【0042】
ステップS110において、表示制御機能156は、流体解析結果として、圧較差の値をディスプレイ120に表示させる。例えば、表示制御機能156は、流体解析結果を表す画面において、対象血管410内の圧力と、被検体の血管の位置とを対応付ける情報をディスプレイ120に表示させる。例えば、
図5に示すように、縦軸に対象血管410内の圧力を示し、横軸に対象血管410の位置(芯線上の位置)を示すグラフをディスプレイ120に表示させる。また、表示制御機能156は、流体解析結果を表す画面において、対象血管410内の圧力をカラーマップした血管のSPR(Stretched Curved Planar Reconstruction)画像をディスプレイ120に表示させる。
【0043】
ここで、表示制御機能156は、対象血管410内の圧力あるいは圧較差を示すグラフや、SPR画像を、基準位置から表示させる。例えば、
図5では、基準位置に対応する位置Y2より上流側の位置Y1から流体解析結果が存在している場合を示している。しかし、起始部と遠位部との比率である圧較差の値の観察においては、基準位置、すなわち血管起始部よりも上流位置にある圧較差の値は不要である。このような場合、表示制御機能156は、グラフの表示開始位置を、基準位置に対応する位置Y2とする。このように、グラフやSPR画像の表示開始位置を、基準位置に対応する位置Y2とすることにより、診断に不要な領域の表示を省く。
【0044】
このように、本実施形態に係る医用画像処理装置100では、取得機能151は、被検体の大動脈400及び大動脈400より分岐する対象血管410などの血管を含む対象領域の医用画像データを取得する。生成機能152は、医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成し、解析機能154は、解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する。また、特定機能153は、医用画像データに基づいて、大動脈400から対象血管410が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。導出機能155は、基準位置における流体パラメータと流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出し、表示制御機能156は、流体解析結果をディスプレイ120に表示させる。これにより、基準位置と、解析モデルの血管の起始部の位置とが一致するため、医用画像処理装置100は、血管内の血流評価を正確に行うことができる。
【0045】
ここで、上述したように、ステップS104では、特定機能153は、取得機能151により取得された医用画像データに基づいて、大動脈400から対象血管410が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。以下、ステップS104における起始部の特定方法について説明する。起始部の特定方法としては、以下の第1~第9の起始部特定方法が考えられる。
【0046】
第1の起始部特定方法では、特定機能153は、医用画像データの輝度値分布を用いて、大動脈400の領域を検出し、検出した領域の外郭が枝分かれした部分を起始部X1として特定する。具体的には、特定機能153は、医用画像データにおいて、輝度値を基準にセグメンテーションすることにより、大動脈400の内部の領域を検出し、大動脈400の内部の外郭を内壁とみなすことで、内壁の3次元形状を検出しておく。特定機能153は、大動脈400の内壁の形状を探索してゆき、内壁輪郭が枝分かれした部分を、起始部X1として特定する。例えば、特定機能153は、形状の径が急に狭まる部分、あるいは内壁輪郭の角度が急に変化する部分を特定する。具体的には、特定機能153は、形状の径の縮小率が所定の閾値以上となった部分を、形状の径が急に狭まる部分として特定する。例えば、内壁の内側の領域に種々の大きさの球体を、位置を変えながら配置してゆき、内壁の外側にはみ出すことがないように球形の最大内径を調整した場合の、最大内径を各位置について求めてゆく。最大内径が急激に変化する部分を「形状の径が急に狭まる部分」とみなすことができる。また、特定機能153は、内壁輪郭を構成する点を結ぶ線分同士の角度が、所定の角度以下となった部分を、内壁輪郭の角度が急に変化する部分として特定してもよい。特定機能153は、枝分かれ部分を特定したら、枝分かれ部分の開始位置の面を特定し、面の重心位置を、起始部X1として特定する。
【0047】
第2の起始部特定方法では、特定機能153は、医用画像データの輝度値分布を用いて、大動脈400の領域と、対象血管410の輪郭及び芯線と検出し、検出した領域の外郭と対象血管410の芯線とが交差する位置を起始部X1として特定する。具体的には、特定機能153は、第1の起始部特定方法と同様に、大動脈400の内壁の3次元形状を検出しておく。内壁の3次元形状を検出する際、大動脈400から分岐する対象血管410を内壁として検出しない処理が必要となる。大動脈400に比べて対象血管410の血管径(例えば3mm)が細いことを利用して、大動脈400の内側の領域のうち輝度値が等しい領域を検出してゆくものの、検出された領域の径が3mmを下回る領域は、大動脈400の内壁とはみなさず検出結果から取り除く。そして、取り除かれた(切り取られた)領域の境界面について、周辺の検出済みの内壁の曲面を滑らかにつなぐように曲面補間を行って内壁の境界面とする。このような処理によって、対象血管410を含まない、大動脈400の領域を検出することが可能である。また、特定機能153は、大動脈400から延びる対象血管410の形状・芯線を別に検出しておく。対象血管410の芯線と、大動脈400の内壁とが交差する位置を、起始部X1として特定する。なお、対象血管410の形状・芯線抽出は、対象血管410の内部と思われる点をユーザが1点指定することで、その点を起点に輝度値を使ってセグメンテーションすることで行うことができる。あるいは、先述した大動脈400の内壁の境界面から外側に一定距離離れた位置であって、かつ造影血管相当の画素値を持つ画素を探索し、その点を起点に輝度値を使ってセグメンテーションしてもよい。この場合、血管ではない微小領域を起点にセグメンテーションされる場合もあるため、セグメンテーションにより検出された芯線の長さが所定の長さ以下となった領域は検出誤りとして棄却する。
【0048】
第3の起始部特定方法では、被検体の血管に挿入されるデバイス(例えば、プレッシャーワイヤー)を使用する。特定機能153は、被検体の血管領域を医用画像データから抽出し、血管領域の医用画像データにおいて、デバイスにより観測される血圧のパラメータの変化に基づいて、起始部X1を特定する。血管径が太い大動脈400から枝分かれして対象血管410へ分岐してゆく箇所においては、圧力など血流パラメータが変化する。この場合、特定機能153は、事前に挿入するデバイスの空間上の位置と、血管のボリュームデータの位置との位置合わせをしておき、血圧のパラメータが急に変化した箇所を、起始部X1として特定する。具体的には、特定機能153は、血圧値の変化率が所定の閾値以上となった箇所を、起始部X1として特定する。
【0049】
第4の起始部特定方法では、特定機能153は、造影下で時系列に沿って生成された医用画像データの造影剤の濃度分布に基づいて、起始部X1を特定する。具体的には、特定機能153は、医用画像データにおいて、大動脈400の領域内に流れる造影剤の濃度を基準としたときに、造影剤の濃度が急に高まった箇所を、起始部X1として特定する。具体的には、特定機能153は、造影剤の濃度の変化率が所定の閾値以上となった箇所を、起始部X1として特定する。
【0050】
第5の起始部特定方法では、特定機能153は、医用画像データにおいて、大動脈400の領域内に流れる造影剤の速度を基準としたときに、造影剤の時間変化に基づいて起始部X1を特定する。具体的には、医用画像診断装置200が4Dの医用画像データを生成した場合、特定機能153は、4Dの医用画像データを撮像したときの造影剤の流れの時間変化を観察し、造影剤の流れの速度が急に変動する箇所を、起始部X1として特定する。具体的には、特定機能153は、造影剤の流れの変化率が所定の閾値以上となった箇所を、起始部X1として特定する。
【0051】
第6の起始部特定方法では、特定機能153は、被検体の血管領域を医用画像データから抽出し、血管領域の医用画像データにおいて、対象血管410内の圧力の分布に基づいて起始部X1を特定する。この場合、特定機能153は、事前に血管領域をボリュームデータから抽出しておき、血管領域に対する流体解析により血管領域内の流体分布を得ておく。そして、特定機能153は、対象血管410内の圧力の分布を参照して、圧力・流量が急に変化する箇所を、起始部X1として特定する。具体的には、特定機能153は、圧力・流量の変化率が所定の閾値以上となった箇所を、起始部X1として特定する。
【0052】
第7の起始部特定方法では、特定機能153は、医用画像データにおいて、ユーザが起始部の位置を指定することによって起始部X1を特定する。例えば、ユーザが目視により医用画像データ中の起始部の位置を指定することによって、特定機能153は、指定された位置を、起始部X1として特定する。
【0053】
第8の起始部特定方法では、特定機能153は、AI(Artificial Intelligence)を用いて、起始部X1を特定する。例えば、多数のボリュームデータにおいて、第1~第7の起始部特定方法のいずれかの方法で、起始部X1を特定しておき、これらのデータを用いた学習により、学習済みモデルを生成する。特定機能153は、学習済みモデルに医用画像データを入力することで、起始部X1を特定する。
【0054】
第9の起始部特定方法では、特定機能153は、第1~第8の起始部特定方法を組み合わせて、起始部X1を特定する。例えば、特定機能153は、第1の起始部特定方法で起始部X1の候補領域を特定した後に、特定した候補領域において第4の起始部特定方法の解析を行い、解析した候補領域の中から起始部X1を特定する。あるいは、第2の起始部特定方法と第7の起始部特定方法とで独立して起始部X1の位置を特定し、特定した両者の位置を任意に重みづけ加算して最終的な位置を起始部X1として特定する。
【0055】
上述したように、ステップS108では、特定機能153は、解析モデルにおいて、起始部X1に対応する位置を、基準位置として特定する。ここで、解析モデル内に起始部X1に対応する基準位置が存在しない場合、生成機能152は、起始部X1が開始位置となるように解析モデルを再生成する。
【0056】
例えば、ステップS108において、特定機能153は、解析デル内に起始部X1に対応する基準位置が存在するか否かをチェックする。例えば、解析モデル内に起始部X1に対応する基準位置が存在する場合、ステップS109以降が実行される。
【0057】
一方、解析モデル内に起始部X1に対応する基準位置が存在しない場合、表示制御機能156は、解析モデル内に起始部X1に対応する基準位置が存在しない旨を表すエラーをディスプレイ120に表示させる。また、生成機能152は、起始部X1が開始位置となるように解析モデルを再生成する。解析モデルの再生成にあたっては、血管や大動脈の輪郭が生成済みの解析モデルの入り口から基準位置まで存在している場合には、生成機能152は、基準位置から解析モデルの入り口までの領域の輪郭を解析モデルへ追加することで、延長した解析モデルを生成する。また、解析モデル内に起始部X1に対応する基準位置が存在しない場合に、特定機能153が使用する基準位置の検出方法を変更してもよい。例えば、第1の起始部特定方法を使用して基準位置が検出できなかった場合に、第7の起始部特定方法に切り替えることで、ユーザに起始部を特定することを促してもよい。
【0058】
逆に、輪郭が存在しない場合、すなわち、輪郭が検出できなかった場合には、生成機能152は、以下のように、解析モデルの延長処理を行う。
【0059】
例えば、生成機能152は、解析モデルの入り口周辺の径を計測し、その径の平均値と同じ長さの円筒を解析モデルにつぎ足すことによって、延長した解析モデルを生成する。そして、解析機能154は、再生成された解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータとして、対象血管410内の圧力の分布を取得する。ここで、特定機能153は、解析モデルのつぎ足しを多めに行う場合は、起始部X1の位置を特定する。その後、ステップS109以降が実行される。
【0060】
上述したように、
図4に示す処理では、ステップS102~S104と、ステップS105~S107とが並列に行われている。しかし、これに限定されない。例えば、
図6に示すように、ステップS102~S104の実行後に、ステップS105~S107が行われてもよい。この場合、
図4のステップS108が実行されない。
【0061】
例えば、ステップS104の実行後に、ステップS105において、生成機能152は、起始部X1が、基準位置として開始位置となる解析モデルを生成する。そして、解析機能154は、ステップS106において、起始部X1が開始位置となる解析モデルを使用して流体解析を行うことで、ステップS107において、流体パラメータの分布を取得する。その後、ステップS109以降が実行される。
【0062】
なお、
図6に示す処理では、起始部X1は、例えば、第1~第5、第7~第9の起始部特定方法により特定される。また、
図6に示す処理において、解析モデル内に起始部X1に対応する基準位置が存在しない場合、
図4に示す処理と同様に、解析モデルの延長処理が行われる。
【0063】
(適用例)
上述した実施形態において、例えば、第1の適用例として、対象領域は脳であり、対象血管として内頚動脈に適用可能である。
図7は、第1の適用例における医用画像処理装置100の処理を説明するための図である。第1の適用例において、
図4に示す処理、又は、
図6に示す処理が実行される。この場合、取得機能151は、被検体の大動脈401及び内頚動脈411などを含んで撮影された脳421の医用画像データを取得する。生成機能152は、脳421の医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成し、解析機能154は、解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する。また、特定機能153は、脳421の医用画像データに基づいて、大動脈401から内頚動脈411が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。起始部X1は、上述した起始部特定方法により特定される。例えば、第1の起始部特定方法では、特定機能153は、脳421の医用画像データにおいて、大動脈401の任意の点を起点にして輝度値を基準にセグメンテーションすることにより、大動脈401の内部の領域を検出し、大動脈401の内部の外郭を内壁とみなすことで、内壁の3次元形状を検出する。そして、特定機能153は、大動脈401の内壁の形状を探索してゆき、内壁輪郭が枝分かれした部分を、大動脈401から内頚動脈411が伸びる起始部X1として特定する。導出機能155は、基準位置における流体パラメータと流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出し、表示制御機能156は、流体解析結果をディスプレイ120に表示させる。第1の適用例における医用画像処理装置100によれば、基準位置と、解析モデルの内頚動脈411の起始部の位置とが一致するため、医用画像処理装置100は、内頚動脈411内の血流評価を正確に行うことができる。
【0064】
また、上述した実施形態において、例えば、第2の適用例として、対象領域は心臓であり、対象血管として冠動脈に適用可能である。
図8は、第2の適用例における医用画像処理装置100の処理を説明するための図である。第2の適用例において、
図4に示す処理、又は、
図6に示す処理が実行される。この場合、取得機能151は、被検体の大動脈402及び冠動脈412などを含んで撮影された心臓の医用画像データを取得する。生成機能152は、心臓の医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成し、解析機能154は、解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する。また、特定機能153は、心臓の医用画像データに基づいて、大動脈402から冠動脈412が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。起始部X1は、上述した起始部特定方法により特定される。例えば、第1の起始部特定方法では、特定機能153は、心臓の医用画像データにおいて、大動脈402のバルサルバ洞422を起点にして輝度値を基準にセグメンテーションすることにより、大動脈402の内部の領域を検出し、大動脈402の内部の外郭を内壁とみなすことで、内壁の3次元形状を検出する。そして、特定機能153は、大動脈402の内壁の形状を探索してゆき、内壁輪郭が枝分かれした部分を、大動脈402から冠動脈412が伸びる起始部X1として特定する。導出機能155は、基準位置における流体パラメータと流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出し、表示制御機能156は、流体解析結果をディスプレイ120に表示させる。第2の適用例における医用画像処理装置100によれば、基準位置と、解析モデルの冠動脈412の起始部の位置とが一致するため、医用画像処理装置100は、冠動脈412内の血流評価を正確に行うことができる。
【0065】
また、上述した実施形態において、例えば、第3の適用例として、対象領域は肝臓であり、対象血管として肝動脈に適用可能である。
図9は、第3の適用例における医用画像処理装置100の処理を説明するための図である。第3の適用例において、
図4に示す処理、又は、
図6に示す処理が実行される。この場合、取得機能151は、被検体の大動脈403及び肝動脈413などを含んで撮影された肝臓423の医用画像データを取得する。生成機能152は、肝臓423の医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成し、解析機能154は、解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する。また、特定機能153は、肝臓423の医用画像データに基づいて、大動脈403から肝動脈413が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。起始部X1は、上述した起始部特定方法により特定される。例えば、第1の起始部特定方法では、特定機能153は、肝臓423の医用画像データにおいて、大動脈403の任意の点を起点にして輝度値を基準にセグメンテーションすることにより、大動脈403の内部の領域を検出し、大動脈403の内部の外郭を内壁とみなすことで、内壁の3次元形状を検出する。そして、特定機能153は、大動脈403の内壁の形状を探索してゆき、内壁輪郭が枝分かれした部分を、大動脈403から肝動脈413が伸びる起始部X1として特定する。導出機能155は、基準位置における流体パラメータと流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出し、表示制御機能156は、流体解析結果をディスプレイ120に表示させる。第3の適用例における医用画像処理装置100によれば、基準位置と、解析モデルの肝動脈413の起始部の位置とが一致するため、医用画像処理装置100は、肝動脈413内の血流評価を正確に行うことができる。
【0066】
また、上述した実施形態において、例えば、第4の適用例として、対象領域は腎臓であり、対象血管として腎動脈に適用可能である。
図10は、第4の適用例における医用画像処理装置100の処理を説明するための図である。第4の適用例において、
図4に示す処理、又は、
図6に示す処理が実行される。この場合、取得機能151は、被検体の大動脈404及び腎動脈414などを含んで撮影された腎臓424の医用画像データを取得する。生成機能152は、腎臓424の医用画像データから流体解析のための解析モデルを生成し、解析機能154は、解析モデルを使用して流体解析を行うことで、流体パラメータの分布を取得する。また、特定機能153は、腎臓424の医用画像データに基づいて、大動脈404から腎動脈414が伸びる起始部X1を基準位置として特定する。起始部X1は、上述した起始部特定方法により特定される。例えば、第1の起始部特定方法では、特定機能153は、腎臓424の医用画像データにおいて、大動脈404の任意の点を起点にして輝度値を基準にセグメンテーションすることにより、大動脈404の内部の領域を検出し、大動脈404の内部の外郭を内壁とみなすことで、内壁の3次元形状を検出する。そして、特定機能153は、大動脈404の内壁の形状を探索してゆき、内壁輪郭が枝分かれした部分を、大動脈404から腎動脈414が伸びる起始部X1として特定する。導出機能155は、基準位置における流体パラメータと流体パラメータの分布とに基づいて流体解析結果を導出し、表示制御機能156は、流体解析結果をディスプレイ120に表示させる。第4の適用例における医用画像処理装置100によれば、基準位置と、解析モデルの腎動脈414の起始部の位置とが一致するため、医用画像処理装置100は、腎動脈414内の血流評価を正確に行うことができる。
【0067】
なお、上述した実施形態においては、血流に関する指標として、起始部と遠位部との圧力を比較する圧較差を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、血管内の血流評価として、血管の入口である起始部と、当該血管上の任意の位置である遠位部との血流の差を比較するものであれば、血流に関する指標は、流量、流速、WSS(Wall Shear Stress)などの流体パラメータでもよい。
【0068】
また、上述した実施形態においては、被検体の血管を含む対象領域の医用画像データは、CT画像データや、パワードプラ画像データに限られない。例えば、被検体の血管を含む対象領域の医用画像データは、X線診断装置がMRI装置により生成された医用画像データであってもよい。また、上述した実施形態においては、被検体の血管を含む対象領域の医用画像データは、単一の形態画像データに限られない。例えば、医用画像データは、複数時相の形態画像データの束であってもよいし、複数種類の医用画像データを接ぎ合わせたものであってもよいし、形態画像データと流体分布のデータの両方を含むデータの束であってもよい。あるいは、形態画像データは複数種類の画像データを合成あるいは組み合わせたものであってもよく、血管内超音波検査(IVUS:IntraVascular UltraSound)や光干渉断層法(OCT:Optical Coherence Tomography)などから得られた血管形状と、別に撮影して得たCT画像データとを比較整合することにより、後述する大動脈400の領域を抽出する方法をとってもよい。
【0069】
なお、本実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0070】
また、本実施形態で説明した方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0071】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、血管内の血流評価を正確に行うことができる。
【0072】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1 医用画像処理システム
100 医用画像処理装置
151 取得機能
152 生成機能
153 特定機能
154 解析機能
155 導出機能
156 表示制御機能
400 大動脈
410 対象血管