(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240611BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240611BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 653C
H01L29/78 652D
H01L29/78 652J
H01L29/78 655Z
H01L29/78 301J
(21)【出願番号】P 2020157707
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-06-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 剛史
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】糸数 裕子
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102555(JP,A)
【文献】特開2007-266133(JP,A)
【文献】特開2017-045911(JP,A)
【文献】特開2010-283128(JP,A)
【文献】特開2019-021787(JP,A)
【文献】特開2010-050307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第2電極に電気的に接続された第2導電形の第2半導体層と、
前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第2電極に電気的に接続された前記第1導電形の第3半導体層と、
前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極に電気的に接続された前記第2導電形の第4半導体層と、
前記第3半導体層の表面から前記第1半導体層中に至る深さを有するトレンチの内部にぞれぞれ設けられ、前記第1半導体層と前記第2半導体層との境界に沿って並んだ複数の制御電極と、
前記複数の制御電極のそれぞれと前記第1半導体層との間、および、前記複数の制御電極のそれぞれと前記第2半導体層との間に設けられた第1絶縁膜と、
前記複数の制御電極のうちの隣合う第1制御電極と第2制御電極との間において、前記第1半導体層中に設けられた第1部分と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記第1部分および前記第2半導体層に電気的に接続された第2部分と、を含み、前記第1部分は前記第3半導体層と前記第4半導体層との間に位置する前記第2導電形の第5半導体層と、
を備え、
前記第1半導体層は、前記第5半導体層の前記第1部分と前記第1絶縁膜との間に位置する部分を含み、
前記第1半導体層は、前記第5半導体層の前記第2部分と前記第1絶縁膜との間に位置する部分を含む半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体層と前記第2電極との間
において、前記第3半導体層と並んで選択的に設けられた前記第2導電形の第6半導体層をさらに備え、
前記第5半導体層の前記第2部分は、
前記第1半導体層と
前記第6半導体層との間に位置し、
前記第6半導体層は、前記第2半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含み、
前記第2半導体層は、前記第6半導体層を介して前記第2電極に電気的に接続される請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第5半導体層は、前記第2半導体層の前記第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第5半導体層と前記第1絶縁膜との間に設けられ、前記第1半導体層の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む第7半導体層をさらに備えた請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた制御電極と、
前記第1半導体層と前記制御電極との間に設けられた第1絶縁膜と、
前記第1半導体層上に選択的に設けられ、前記第1絶縁膜を介して前記制御電極に向き合う部分を含む第2導電形の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に選択的に設けられ、前記第2半導体層の前記制御電極に向き合う前記部分に並ぶ、前記第1導電形の第3半導体層と、
前記第1半導体層上において、前記第2半導体層から離れた位置に設けられた前記第2導電形の第4半導体層と、
前記第2半導体層中において、前記第1半導体層と前記第3半導体層との間に設けられ、前記第2半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む前記第2導電形の第5半導体層と、
前記第2半導体層上に選択的に設けられ、前記第2半導体層の前記制御電極に向き合う前記部分および前記第3半導体層に並び、前記第5半導体層に電気的に接続された、前記第2導電形の第6半導体層と、
を備えた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ等の電力変換器に用いられる半導体装置には、例えば、ターンオフ時の電流集中に対する破壊耐量が大きいことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kazunori Kawamoto et al.,"A No-Snapback LDMOSFET With Automotive ESD Endurance", IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, Vol. 29, No. 11 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、破壊耐量を向上させた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、前記第1電極に対向する第2電極と、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、前記第2導電形の第5半導体層と、複数の制御電極と、第1絶縁膜と、を備える。前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられ、前記第2電極に電気的に接続される。前記第3半導体層は、前記第2半導体層と前記第2電極との間に選択的に設けられ、前記第2電極に電気的に接続される。前記第4半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極に電気的に接続される。前記複数の制御電極は、前記第3半導体層の表面から前記第1半導体層中に至る深さを有するトレンチの内部にぞれぞれ設けられ、前記第1半導体層と前記第2半導体層との境界に沿って並ぶ。前記第1絶縁膜は、前記複数の制御電極のそれぞれと前記第1半導体層との間、および、前記複数の制御電極のそれぞれと前記第2半導体層との間に設けられる。前記第5半導体層は、前記複数の制御電極のうちの隣合う第1制御電極と第2制御電極との間において、前記第1半導体層中に設けられた第1部分と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられ、前記第1部分および前記第2半導体層に電気的に接続された第2部分と、を含み、前記第1部分は前記第3半導体層と前記第4半導体層との間に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置の動作を表す模式断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体装置の特性を示すグラフである。
【
図4】第1実施形態に係る半導体装置の別の特性を示すグラフである。
【
図5】第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
【
図8】第1実施形態の変形例に係る半導体層を示す模式図である。
【
図9】第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
【
図10】第1実施形態の第5変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
【
図11】第1実施形態の第6変形例に係る半導体装置を示す模式図である。
【
図12】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0009】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1Aを示す模式断面図である。半導体装置1Aは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0011】
図1に表すように、半導体装置1Aは、半導体部10と、第1電極20と、第2電極30と、制御電極40と、を備える。第1電極20は、例えば、コレクタ電極である。第2電極30は、例えば、エミッタ電極である。制御電極40は、例えば、ゲート電極である。
【0012】
第1電極20と第2電極30とは対向する位置に設けられ、半導体部10は、第1電極20と第3電極30との間に設けられる。第1電極20は、例えば、半導体部10の裏面上に設けられる。第2電極30は、半導体部10の表面側に設けられる。半導体部10は、例えば、シリコンである。第1電極20および第2電極30は、例えば、アルミニウムを含む金属層である。
【0013】
半導体部10は、例えば、第1導電形の第1半導体層11と、第2導電形の第2半導体層13と、第1導電形の第3半導体層15と、第2導電形の第4半導体層19と、第2導電形の第5半導体層21と、を含む。以下、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明する。
【0014】
第1半導体層11は、例えば、n形ベース層である。第1半導体層11は、第1電極20と第2電極30との間に延在する。
【0015】
第2半導体層13は、例えば、p形ベース層である。第2半導体層13は、第1半導体層11と第2電極30との間に設けられる。第2半導体層13は、例えば、第2導電形の第6半導体層17を介して第2電極30に電気的に接続される。第6半導体層17は、例えば、p形エミッタ層であり、第2半導体層13の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。
【0016】
第3半導体層15は、例えば、n形エミッタ層である。第3半導体層15は、第2半導体層13と第2電極30との間に選択的に設けられる。第3半導体層15は、第2電極30に電気的に接続される。
【0017】
第4半導体層19は、例えば、p形コレクタ層である。第4半導体層19は、第1半導体層11と第1電極20との間に設けられる。第4半導体層19は、第1電極20に電気的に接続される。
【0018】
制御電極40は、半導体部10の表面側に設けられたトレンチGTの内部に配置される。トレンチGTは、第3半導体層17の表面(上面)から第1半導体層11中に至る深さを有する。
【0019】
制御電極40は、例えば、導電性のポリシリコンである。制御電極40は、第1絶縁膜43により、第1半導体層11、第2半導体層13、第3半導体層15および第6半導体層17から電気的に絶縁される。第1絶縁膜43は、例えば、ゲート絶縁膜である。第1絶縁膜43は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0020】
制御電極40は、半導体部10と第2電極30との間に設けられる。制御電極40は、第2絶縁膜45により第2電極30から電気的に絶縁される。第2絶縁膜45は、例えば、層間絶縁膜である。第2絶縁膜45は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0021】
制御電極40は、第1半導体層11中に位置する部分を含み、第1絶縁膜43を介して、第1半導体層11に向き合う。また、制御電極40は、第1絶縁膜43を介して、第2半導体層13に向き合う。すなわち、第1絶縁膜43は、第1半導体層11と制御電極40との間、第2半導体層13と制御電極40との間に設けられる。第3半導体層15は、第1絶縁膜43に接する。
【0022】
制御電極40は、複数設けられ、例えば、第1半導体層11と第2半導体層13との境界に沿った方向(例えば、X方向)に並ぶ。複数の制御電極40は、第1制御電極40aと第2制御電極40bとを含む。
【0023】
例えば、第3半導体層15は、第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間に設けられる。第5半導体層21も、第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間に設けられる。
【0024】
第5半導体層21は、第1半導体層11中に位置する。第5半導体層21は、例えば、第2半導体層13の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。第1半導体層11は、第2半導体層13と第5半導体層21との間に位置する部分、および、第5半導体層21と第1絶縁膜43との間に位置する部分を含む。
【0025】
図2(a)および(b)は、第1実施形態に係る半導体装置1Aの動作を表す模式断面図である。
図2(a)は、
図1に示す断面の一部を表す模式図である。
図2(b)は、
図2(a)中に示すA-A断面を表す模式図である。
【0026】
図2(a)は、半導体装置1Aのオン状態における電子および正孔の流れを示している。例えば、第1電極30と制御電極40との間に、制御電極40の閾値電圧よりも高いゲート電圧(オン電圧)を印加すると、第2半導体層13と第1絶縁膜43との界面に第1導電形の反転層が誘起される。これにより、第3半導体層15から反転層を介して第1半導体層11に電子が注入される。これに対応して、第4半導体層19から第1半導体層11に正孔が注入される。
【0027】
図2(b)に示すように、第2半導体層13は、第1半導体層11と第2電極30との間において、例えば、Y方向に延在する。第3半導体層15および第6半導体層17は、例えば、第2半導体層13の延在方向に交互に並ぶ。
【0028】
第5半導体層21は、第1部分21aと、第2部分21bと、を含む。第1部分21aは、第3半導体層15の下方に設けられる。また、第1部分21aは、第1半導体層11中に設けられ、第3半導体層15と第4半導体層19との間に位置する。第1半導体層11は、第2半導体層と第1部分21aとの間に位置する部分を含む。
【0029】
一方、第2部分21bは、第6半導体層17の下方に設けられる。第2部分21bは、第1半導体層11と第6半導体層17との間に設けられる。また、第2部分21bは、第1半導体層11と第2半導体層13との間に設けられ、第2半導体層13に電気的に接続される。
【0030】
第1部分21aは、第2部分21bにつながるように設けられる。すなわち、第1部分21aは、第2部分21bを介して、第2半導体層13に電気的に接続される。
【0031】
図2(b)は、半導体装置1Aのターンオフ時における電子および正孔の流れを表している。例えば、第1電極30と制御電極40との間に印加されたゲート電圧を制御電極40の閾値電圧よりも低いオフ電圧に低下させると、第2半導体層13と第1絶縁膜43との界面に誘起された反転層が消える。
【0032】
反転層を介した第3半導体層15から第1半導体層11への電子注入が停止されると、半導体装置1Aのターンオフ過程が開始される。第1半導体層11への電子注入の停止に伴い、第4半導体層19から第1半導体層11への正孔注入も停止される。このため、第1電極20と第2電極30との間の電圧が上昇し、第1半導体層11は空乏化される。第1半導体層11中の電子は、第4半導体層19を介して第1電極20へ排出される。第1半導体層11中の正孔は、第2半導体層13および第6半導体層17を介して第2電極30へ排出される。
【0033】
半導体装置1Aでは、第1半導体層11と第2半導体層13との間に第5半導体層21が設けられているため、第2電極30への正孔の排出が促進される。
【0034】
図2(b)に示すように、第1半導体層11中の電子は、第4半導体層19を介して第1電極20へ排出される。一方、第1半導体層11中の正孔は、第5半導体層21の第2部分21b、第2半導体層13および第6半導体層17を介して、第2電極30へ排出される。また、第1半導体層11中の正孔は、第5半導体層21の第1部分21aから第2部分21bへ移動し、第2半導体層13および第6半導体層17を介する経路でも排出される。これにより、第1半導体層11中の電子および正孔を、第1電極20および第2電極30へ効率良く排出し、第1半導体層11を空乏化することができる。
【0035】
さらに、第2半導体層13の第1半導体層11と第3半導体層15との間に位置する部分への正孔注入を、第5半導体層21の第1部分21bにより第6半導体層17へ迂回させ、さらに第5半導体層21の第1部分21aにより抑制することができる。第1部分21aは、第1半導体層11よりも不純物濃度が高くても良い。これにより、第1半導体層11、第2半導体層13および第3半導体層15により構成される寄生npnトランジスタのターンオンの影響を軽減することができる。
【0036】
図3(a)および(b)は、第1実施形態に係る半導体装置1Aの特性を示すグラフである。
図3(a)は、オン状態における第1電極20と第2電極30との間の電圧Vceおよび電流Icの関係を表している。
図3(b)は、ターンオフ過程における第1電極20と第2電極30との間の電流Icおよび電圧Vceの時間変化を表している。各図には、半導体装置1Aおよび比較例に係る半導体装置CEの特性を示している。半導体装置CEは、第5半導体層21を有しない点で、半導体装置1Aとは異なる。
【0037】
図3(a)に示すように、半導体装置1Aのオン電流は、半導体装置CEのオン電流よりも小さくなる。これは、第5半導体層21の第1部分21aを設けることにより、電子電流の経路が狭くなり(
図2(a)参照)、オン抵抗が大きくなることを反映している。
【0038】
一方、時間t1において、ゲート電圧を制御電極40の閾値電圧以下とした場合、
図3(b)に示すように、半導体装置1Aの電圧Vceは、半導体装置CEのVceよりも早く立ち上る。また、半導体装置1Aの電流Icは、半導体装置CEのIcよりも早く減少する。このように、第5半導体層21を設けることによりターンオフ時間を短縮し、スイッチング損失を低減することができる。
【0039】
図4は、第1実施形態に係る半導体装置の別の特性を示すグラフである。同図中には、半導体装置1Aおよび比較例に係る半導体装置CEの特性を示している。
【0040】
例えば、ターンオフ過程において、寄生npnトランジスタがターンオンすると、電流Icが増加すると共に、電圧Vceが減少する、所謂、スナップバック現象が生じる。
図4に示すように、電流Icが増えると共に、電圧Vceが低くなり、その後、電圧Vceは、上昇に転ずる。この過程における電圧Vceの低下量が大きい程、寄生npnトランジスタを介した電流集中が生じ易く、半導体装置の破壊耐量が低くなる。
【0041】
図4示す例では、半導体装置CEに比べて、半導体装置1Aの電圧Vceの低下が抑制されている。これは、寄生npnトランジスタのターンオン時に流れる電流が低減されていること表している。すなわち、半導体装置1Aでは、第5半導体層21を設けることにより、ターンオフ時の破壊耐量を向上させることができる。
【0042】
図5(a)~(c)は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置1Bを示す模式図である。
図5(a)は、隣り合う第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間(
図1参照)の第1半導体層11、第2半導体層13、第3半導体層15および第6半導体層17を示す斜視図である。
図5(b)は、第5半導体層21を示す斜視図であり、
図5(c)は、第5半導体層21のY-Z面に沿った断面図である。
【0043】
図5(a)~(c)に示すように、第5半導体層21は、第1部分21aと、第2部分21bと、第3部分21cと、を含む。第3部分21cは、第1部分21aと第2部分21bとをつなぐように設けられる。
【0044】
第1部分21aは、第3部分21cを介して第2部分21bに電気的に接続される。第1部分21aは、第3半導体層15の下方から第6半導体層17の下方に延在するように設けられる。
【0045】
図5(a)に示すように、第2部分21bは、図示しない第1絶縁膜43を介して制御電極40に向き合うように設けられる。すなわち、第2部分21bのX方向の幅を広くすることにより、第1半導体層11から第2電極30への正孔の排出抵抗を低減する。一方、第3半導体層15から第1半導体層11へ流れる電子電流の経路は、第2部分21bが設けられない領域に限定される。
【0046】
図6(a)~(c)は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置1Cを示す模式図である。
図6(a)は、隣り合う第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間(
図1参照)の第1半導体層11、第2半導体層13、第3半導体層15および第6半導体層17を示す斜視図である。
図6(b)は、第5半導体層21を示す斜視図であり、
図6(c)は、第5半導体層21のY-Z面に沿った断面図である。
【0047】
図6(a)~(c)に示すように、第5半導体層21は、第1部分21aと、第2部分21bと、第3部分21cと、を含む。第3部分21cは、第1部分21aと第2部分21bとをつなぐように設けられる。
【0048】
第1部分21aは、第3部分21cを介して第2部分21bに電気的に接続される。第1部分21aは、第3半導体層15の下方から第6半導体層17の下方に延在するように設けられる。この例では、第2部分21bのX方向の幅WBは、第1部分21aのX方向の幅WAと略同一である。
【0049】
第1半導体層11は、第5半導体層21の第2部分21bと第1絶縁膜43(図示しない)との間に位置する部分を含む。これにより、第3半導体層15から第1半導体層11へ流れる電子電流の経路は、第1半導体層11と第6半導体層17との間に位置する領域にも広がる。すなわち、半導体装置1Cでは、オン抵抗を低減することができる。
【0050】
図7(a)および(b)は、第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置1Dを示す模式図である。
図7(a)は、隣り合う第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間(
図1参照)の第1半導体層11、第2半導体層13、第3半導体層15および第6半導体層17を示す斜視図である。
図7(b)は、第5半導体層21を示す斜視図である。
【0051】
この例では、第5半導体層21は、2つの第1部分21aと、第2部分21bと、を含む。2つの第1部分21aは、例えば、X方向に並ぶ。第1半導体層11は、2つの第1部分21aの間に位置する部分と、第1部分21aと第1絶縁膜43との間に位置する部分と、を含む。これにより、第3半導体層15から反転層を介して第1半導体層11へ流れる電子電流の経路を広くすることができる。
【0052】
図7(a)に示すように、第2部分21bは、図示しない第1絶縁膜43を介して制御電極40に向き合うように設けられる。すなわち、第2部分21bのX方向の幅を広くすることにより、第1半導体層11から第2電極30への正孔の排出抵抗を低減する。
【0053】
図8(a)~(c)は、第1実施形態の変形例に係る第5半導体層21を例示する模式図である。
図8(a)および(c)は、斜視図であり、
図8(b)は、Y-Z断面図である。いずれの例でも、第5半導体層21は、第1部分21aと第2部分21bとを含み、第1部分21aは、第2部分21bに電気的に接続される。
【0054】
図8(a)に示す例では、第1部分21aは、第2部分21bの側面から-Y方向(Y方向の逆方向)に突き出すように設けられる。
【0055】
図8(b)に示す例では、第1部分21aは、第2部分21bの側面から斜め下方に突き出すように設けられる。第1部分21aは、Z方向において第2半導体層13からより離れた位置に設けられる。これにより、第1部分21aを介して、第1半導体層11から効率的に正孔を排出することができる。
【0056】
図8(c)に示す例では、2つの第1部分21aが設けられる。2つの第1部分21aは、例えば、X方向に並び、第2部分21bから離れるにしたがって、2つの第1部分21a間の間隔が狭くなるように設けられる。これにより、第3半導体層15から反転層を介して第1半導体層11へ流れる電子電流の経路を広くすると共に、第1半導体層11から効率的に正孔を排出することができる。
【0057】
図9(a)および(b)は、第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置2Aを示す模式図である。
図9(a)は、隣り合う第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間(
図1参照)の第1半導体層11、第2半導体層13、第3半導体層15および第6半導体層17を示す斜視図である。
図9(b)は、第5半導体層21のY-Z面に沿った断面図である。
【0058】
図9(a)に示すように、第5半導体層21は、第4部分21dをさらに含む。第4部分21dは、第1部分21aの下方に設けられる。第4部分21dのX方向の幅WDは、第1部分21aのX方向の幅WA(
図6(b)参照)よりも狭い。また、第2部分21bは、図示しない第1絶縁膜43を介して制御電極40に向き合うように設けられる。
【0059】
図9(b)に示すように、第1部分21aは、第2部分21bと第4部分21dとの間に位置する。第4部分21dは、第3部分21cを介して、第1部分21aに電気的に接続される。また、第1部分21aは、第3部分21cを介して、第2部分21bに電気的に接続される。
【0060】
第4部分21dは、第3半導体層13の下方から第6半導体層17の下方に延在するように設けられる。この例では、第4部分21dを加えることにより、第1半導体層11の正孔をより効率的に排出することができる。
【0061】
図10(a)および(b)は、第1実施形態の第5変形例に係る半導体装置2Bおよび2Cを示す模式図である。
図10(a)および(b)は、隣り合う第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間(
図1参照)の第1半導体層11、第2半導体層13、第3半導体層15および第6半導体層17を示す斜視図である。
【0062】
図10(a)に示す半導体装置2Bでは、第5半導体層21は、Z方向に並ぶ2つの第4部分21dを含む。2つの第4部分21dは、図示しない第3部分21cを介して、相互に電気的に接続され、第1部分21aに電気的に接続される(
図9(b)参照)。
【0063】
図10(b)に示す半導体装置2Cでは、第5半導体層21は、Z方向に並ぶ3つの第4部分21dを含む。3つの第4部分21dは、図示しない第3部分21cを介して、相互に電気的に接続され、第1部分21aに電気的に接続される(
図9(b)参照)。
【0064】
このように、複数の第4部分21dをZ方向に並べて配置することにより、第1半導体層11の正孔をより効率的に排出することができる。
【0065】
図11(a)および(b)は、第1実施形態の第6変形例に係る半導体装置3Aおよび3Bを示す模式図である。
図11(a)および(b)は、隣り合う第1制御電極40aと第2制御電極40bとの間(
図1参照)の第1半導体層11、第2半導体層13、第3半導体層15および第6半導体層17を示す斜視図である。
【0066】
図11(a)に示す半導体装置3Aでは、第5半導体層21の第1部分21aは、第3半導体層15の下方において、Z方向に延伸するように設けられる。また、第1部分21aは、Y方向にさらに延在し、第6半導体層17の下方において、第2部分21bに電気的に接続される。また、第2部分21bは、図示しない第1絶縁膜43を介して制御電極40に向き合うように設けられる。
【0067】
この例では、第1部分21aと第1絶縁膜43との間に、第1導電形の第7半導体層23をさらに設ける。第7半導体層23は、第1絶縁膜43に沿って、例えば、Y方向およびZ方向に延在するように設けられる。第7半導体層23は、第1半導体層11の第1導電形不純物よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。
【0068】
第1半導体層11は、第5半導体層21の第1部分21aと第7半導体層23との間に位置する部分を含む。
【0069】
この例では、第5半導体層21の第1部分21aをZ方向に延在させることにより、第1半導体層11中の正孔を効率良く排出することができる。さらに、第7半導体層23を設けることにより、第3半導体層15から反転層を介して第1半導体層11に至る電子電流の経路の電気抵抗を低減することができる。これにより、半導体装置3Aのオン抵抗を低減することができる。
【0070】
図11(b)に示す半導体装置3Bも、Z方向に延伸する第5半導体層21の第1部分21aと、第7半導体層23と、を備える。さらに、第5半導体層21の第2部分21bにおけるX方向の幅WBは、例えば、第1部分21aのX方向の幅WAと略同一に設けられる(
図6(b)参照)。これにより、第1半導体層11は、第2部分21bと第1絶縁膜43との間に位置する部分をさらに含む。このため、半導体装置3Bのオン抵抗をさらに低減することができる。
【0071】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る半導体装置4を示す模式断面図である。半導体装置4は、例えば、第1導電形の第1半導体層111と、第2導電形の第2半導体層113と、第1導電形の第3半導体層115と、第2導電形の第4半導体層119と、第2導電形の第5半導体層121と、第2導電形の第6半導体層117と、を備える。また、半導体装置4は、第1電極120と、第2電極130と、制御電極140と、第1絶縁膜143と、を備える。
【0072】
図12に示すように、制御電極140は、例えば、ゲート電極であり、第1半導体層111上に選択的に設けられる。第1半導体層111は、例えば、n形ベース層である。第1絶縁膜143は、第1半導体層111と制御電極140との間に設けられる。第1絶縁膜143は、例えば、ゲート絶縁膜である。すなわち、半導体装置4は、プレナーゲート構造を有するIGBTである。
【0073】
第2半導体層113は、例えば、p形ベース層である。第2半導体層113は、第1半導体層111上に選択的に設けられる。第2半導体層113は、第1半導体層111と第1絶縁膜143との間に位置する部分を含む。すなわち、第2半導体層113は、第1絶縁膜143を介して、制御電極140に向き合う部分を含む。
【0074】
第3半導体層115は、例えば、n形エミッタ層である。第3半導体層115は、第2半導体層113上に選択的に設けられる。第3半導体層115は、第2半導体層113の制御電極140に向き合う部分に並ぶ。
【0075】
第4半導体層119は、例えば、p形コレクタ層である。第4半導体層119は、第1半導体層111の上に選択的に設けられる。第4半導体層119は、第2半導体層113から離れた位置に設けられる。
【0076】
第5半導体層121は、第2半導体層113中に設けられる。第5半導体層121は、第1半導体層111と第3半導体層115との間に設けられる。第5半導体層121は、第2半導体層113の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。
【0077】
第6半導体層117は、例えば、p形エミッタ層である。第6半導体層117は、第2半導体層113上に選択的に設けられ、第2半導体層113の制御電極140に向き合う部分および第3半導体層115に並ぶ。
【0078】
第5半導体層121は、第1半導体層111と第3半導体層115との間に設けられる第1部分121aと、第6半導体層117に電気的に接続される第2部分121bと、を含む。第1部分121aは、第2部分121bを介して、第6半導体層117の電気的に接続される。
【0079】
第1電極120は、第4半導体層119に電気的に接続される。第2電極130は、第3半導体層115および第6半導体層117に電気的に接続される。
【0080】
半導体装置4のターンオフ過程において、第1半導体層111中の電子は、第4半導体層119を介して、第1電極120に排出される。第1半導体層111中の正孔は、第2半導体層113および第6半導体層117を介して、第2電極130に排出される。
【0081】
半導体装置4では、第5半導体層121が第2半導体層113中に設けられているため、第2半導体層113から第6半導体層117へ正孔を効率よく排出することができる。これにより、第2半導体層113、第3半導体層115および第6半導体層117により構成される寄生npnトランジスタのターンオンの影響を軽減し、半導体装置4の破壊耐量を向上させることができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1A~1D、2A~2C、3A、3B、4…半導体装置、 10…半導体部、 11、111…第1半導体層、 13、113…第2半導体層、 15、115…第3半導体層、 17、117…第6半導体層、 19、119…第4半導体層、 21、121…第5半導体層、 21a、121a…第1部分、 21b、121b…第2部分、 21c…第3部分、 21d…第4部分、 23…第7半導体層、 20、120…第1電極、 30、130…第2電極、 40、140…制御電極、 40a…第1制御電極、 40b…第2制御電極、 43、143…第1絶縁膜、 45…第2絶縁膜、 GT…トレンチ