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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】鉄道車両の床下フサギ板
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/00 20060101AFI20240611BHJP
   F16B 1/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B61D17/00 B
F16B1/02 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158093
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022051992
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】梅田 啓
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義博
(72)【発明者】
【氏名】雙木 貴之
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-030412(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0009173(KR,U)
【文献】特開平06-029673(JP,A)
【文献】特開2003-321961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
F16B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺に掛金錠が設けられ、反対側の辺にヒンジが設けられた本体プレートを有し、鉄道車両の床下を覆うように車体の下部に取り付けられる床下フサギ板であって、
前記掛金錠は、
下端に回転操作部が設けられ、下端よりも高い位置に端部が周面により僅かに突出したガイドピンが設けられた施錠軸と、
前記ガイドピンの端部が嵌合するカム溝が形成されたスリーブおよび前記施錠軸を常時下方へ付勢するバネを内蔵し、前記施錠軸が貫通するように配設され前記本体プレートに固定されるベース部と、を備えており、
前記本体プレートの掛金錠が設けられる辺には、前記車体に設けられているフサギ板受部材に固着されたラッチ受金の水平片に下方から接触する当接部材が設けられ、
前記掛金錠の施錠軸の上端には、板状をなし前記施錠軸から半径方向外側へ延びるように設置され前記ラッチ受金の水平片の上面に接触可能な主ラッチ掛金と、板状をなし前記主ラッチ掛金と所定の間隔を有してその上方に当該主ラッチ掛金と並行して前記施錠軸から半径方向外側へ延びるように配設された補助ラッチ掛金とが設けられていることを特徴とする鉄道車両の床下フサギ板。
【請求項2】
前記補助ラッチ掛金は、先端が前記主ラッチ掛金の先端よりも前方に位置するように長さが設定されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の床下フサギ板。
【請求項3】
前記回転操作部は、水平姿勢と垂直姿勢とに変換可能なラッチ式平面ハンドルであることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両の床下フサギ板。
【請求項4】
前記本体プレートは矩形状の合成樹脂板であり、
前記本体プレートを保持するための枠体を備え、前記枠体の一の辺にヒンジが設けられ、前記枠体の前記一の辺に対向する他の辺に前記掛金錠が設けられ、
前記本体プレートの周端部が前記枠体に弾性保持体を介して保持されるように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の鉄道車両の床下フサギ板。
【請求項5】
前記本体プレートは平板であり、透明な合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両の床下フサギ板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の床下を覆う床下フサギ板に関し、特に高速鉄道車両の車体や床下機器を異物等の衝撃から守ると共に落下防止機能および車両床下を平滑に保つことで走行抵抗を低減させる機能を有する床下フサギ板に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線(登録商標)などの高速鉄道車両においては、車体や床下機器を氷塊等の異物の衝撃から守るため床下フサギ板が設けられている。また、床下フサギ板は、走行中に落下することで軌道上の地上設備を損壊させるおそれがあるため、落下防止機能を備える必要がある。
高速鉄道車両における床下フサギ板は、点検頻度が多い機器を検査する箇所においては取付け取外しが容易な構造とされている。
従来、高速鉄道車両における取付け取外しが容易な床下フサギ板の構造として、図9に示すような、ラッチ式床下フサギ板がある。
【0003】
図9に示すラッチ式床下フサギ板は、一方の辺がヒンジ22により回動可能にされ、ヒンジ22と反対側の辺に一対の押圧掛金錠23が設けられており、車体側には、フサギ板21の端部を下面で受けるフサギ板受17と、該フサギ板受17の上方に所定の間隔を有して設けられラッチ掛金34を上面で受けるラッチ受金39とが設けられている。
押圧掛金錠23は、圧縮バネを内蔵し頭部(図では下端面)に六角穴が形成された押圧掛金錠の先端(図では上端)にラッチ掛金34が設けられており、押圧掛金錠23の頭部に専用の工具(六角レンチ)を差し込んで90度回すことで施錠と解錠が可能になっている。なお、かかる機能の押圧掛金錠は、例えば特許文献1に記載されている
【0004】
押圧掛金錠23は圧縮バネを内蔵しているため、図9(A)の施錠状態では軸が引き込まれて頭部がフサギ板と平滑になる構造であるので,錠の締め忘れの有無を目視で確認することができるとともに、ラッチ掛金をフサギ板受金に押し付けることで走行中におけるフサギ板のガタツキを防止することができる。図9(B)は押圧掛金錠を解錠してフサギ板を開いた状態を示す。
なお、上記従来のラッチ式床下フサギ板は、ステンレス製で、図9(C)に示すように、側方視で波形を呈するように形成されており、これにより異物等の衝突に対する強度を高めるとともに、異物の衝突で変形してもフサギ板の端部のずれが少なくなるようにして、フサギ板の端部がフサギ板受金からはずれて落下しにくくなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-310705号公報
【文献】特開平08-301106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のラッチ式床下フサギ板は、下方からの氷塊等の異物の衝突に伴う衝撃をラッチ掛金とラッチ受金とで受ける構造であるため、ラッチ掛金が破損するリスクがあるとともに、ラッチ掛金が破損すると、走行中に床下フサギ板が上下に大きく揺れてしまい、それによって、床下フサギ板が内部の床下機器に衝突したり、床下フサギ板が落失したりするおそれがあるという課題があることが明らかになった。
【0007】
また、床下フサギ板の落下防止に関する発明としては特許文献2に記載されているものがある。特許文献2に記載されている発明は、下部フサギ板受に貫通した上向きボルトと、そのボルトに螺合した車両内部の押さえ金とを備えた締付金具を配設する一方、下部ふさぎ板の対向する二辺の端縁に設けた切り込みを前記ボルトに係合させ、ボルトを車両外部から回すことにより、押さえ金を上下移動させ、下部ふさぎ板を着脱自在にした機構に付加した車両用下部フサギ板の脱落防止装置であって、下部ふさぎ板受に装着した下部ふさぎ板と係合可能な位置に、車両の外部から内部に挿脱可能な係合体(ピン)と、この係合体を車両の内部へ挿入する方向に押圧する押圧体(バネ)を設けたものである。
【0008】
しかし、特許文献2に記載されている下部フサギ板の落下防止装置は、下部フサギ板を車体に取り付けたり外したりする際に、下部フサギ板の4隅に対応して設けられている締付金具のボルトを回す必要があるため、内部の床下機器の点検作業に時間がかかるという課題がある。
本発明は、上記のような背景のもとになされたもので、車両走行中における下方からの氷塊等の異物の衝突に伴う衝撃によってラッチ掛金が破損するのを回避することができる鉄道車両の床下フサギ板を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、ラッチ掛金が破損したとしても走行中に床下フサギ板が落失するリスクを回避することができる鉄道車両の床下フサギ板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
一辺に掛金錠が設けられ、反対側の辺にヒンジが設けられた本体プレートを有し、鉄道車両の床下を覆うように車体の下部に取り付けられる床下フサギ板において、
前記掛金錠は、
下端に回転操作部が設けられ、下端よりも高い位置に端部が周面により僅かに突出したガイドピンが設けられた施錠軸と、
前記ガイドピンの端部が嵌合するカム溝が形成されたスリーブおよび前記施錠軸を常時下方へ付勢するバネを内蔵し、前記施錠軸が貫通するように配設され前記本体プレートに固定されるベース部と、を備えており、
前記本体プレートの掛金錠が設けられる辺には、前記車体に設けられているフサギ板受部材に固着されたラッチ受金の水平片に下方から接触する当接部材が設けられ、
前記掛金錠の施錠軸の上端には、板状をなし前記施錠軸から半径方向外側へ延びるように設置され前記ラッチ受金の水平片の上面に接触可能な主ラッチ掛金と、板状をなし前記主ラッチ掛金と所定の間隔を有してその上方に当該主ラッチ掛金と並行して前記施錠軸から半径方向外側へ延びるように配設された補助ラッチ掛金とが設けられているように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する床下フサギ板によれば、本体プレートの掛金錠側の端部には、ラッチ受金の水平片に下方から接触する当接部材が設けられているため、車両走行中に下方から氷塊等の異物が衝突したとしてもその衝撃を当接部材からラッチ受金の水平片へ伝え、主ラッチ掛金への衝撃力が緩和されるので、ラッチ掛金が破損するのを回避することができる。また、施錠軸の上端には主ラッチ掛金の上方に位置する補助ラッチ掛金が設けられているため、ラッチ掛金が破損したとしても補助ラッチ掛金がラッチ受金の水平片に当接することで、床下フサギ板が車体から落失するリスクを回避することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記補助ラッチ掛金は、先端が前記主ラッチ掛金の先端よりも前方に位置するように長さが設定されているように構成する。
ラッチ掛金が破損すると床下フサギ板が前後左右に若干移動するため、主ラッチ掛金よりも補助ラッチ掛金の方が短いと補助ラッチ掛金がラッチ受金から外れるおそれがあるが、上記のような構成によれば、床下フサギ板が多少移動しても補助ラッチ掛金がラッチ受金から外れることがないので、走行中に床下フサギ板が落失するリスクを確実に回避することができる。
【0012】
また、望ましくは、前記回転操作部は、水平姿勢と垂直姿勢とに変換可能なラッチ式平面ハンドル構成する。
かかる構成によれば、ラッチ式平面ハンドルを起こして回すことで施錠軸を回転させることができ、専用の工具を使用せずに掛金錠の施錠/解錠を行うことができるため、床下フサギ板を開いて内部の床下機器を点検する作業を容易かつ短時間に実行することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記本体プレートは矩形状の合成樹脂板であり、
前記本体プレートを保持するための枠体を備え、前記枠体の一の辺にヒンジが設けられ、前記枠体の前記一の辺に対向する他の辺に前記掛金錠が設けられ、
前記本体プレートの周端部が前記枠体に弾性保持体を介して保持されるように構成する。
ここで、本体プレートを保持する枠体は、矩形状の他、ヒンジおよび掛金錠のある対向する辺に枠を備えるもので良い。
【0014】
上記のような構成によれば、本体プレートが合成樹脂板で形成されているため、異物衝撃の際は合成樹脂部分が弾性変形することにより衝撃エネルギーを吸収するので塑性変形することがなく、ラッチ掛金がラッチ受金から外れるおそれが減少するとともに、軽量化が可能となり床下フサギ板の取り扱いが容易となる。また、車両の軽量化にも寄与することができる。さらに、本体プレートの周端部が弾性保持体を介して枠体に保持されるため、車両走行中における下方からの氷塊等の異物の衝突に伴う衝撃を弾性保持体で吸収することができるので、本体プレートの破損を防止することができる。
【0015】
また、望ましくは、 前記本体プレートは平板であり、透明な合成樹脂で形成されているように構成する。
かかる構成によれば、床下フサギ板を開けることなく内部の床下機器を点検したり監視カメラ等で異常を検出したりすることができるため、点検作業の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄道車両の床下フサギ板によれば、車両走行中における下方からの氷塊等の異物の衝突に伴う衝撃によってラッチ掛金が破損するのを回避することができる。また、ラッチ掛金が破損したとしても走行中に床下フサギ板が落失するリスクを回避することができる。さらに、本発明によれば、床下フサギ板を開いて内部の床下機器を点検する作業を容易かつ短時間に実行することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の床下フサギ板が取り付けられる鉄道車両の車体下部の構造を示す拡大斜視図である。
図2】本発明に係る床下フサギ板の一実施形態を示す断面図である。
図3】実施形態の床下フサギ板の施錠部の構造の詳細を示すもので、(A)は正常な施錠状態を示す図、(B)は主ラッチ掛金が破損した直後の状態を示す図である。
図4】(A)は主ラッチ掛金が破損した直後の状態を示す図、(B)は実施形態の床下フサギ板の変形例を示す断面図である。
図5】(A)は実施形態の床下フサギ板を開いた状態を示す断面図、(B)はヒンジ部の構造の詳細を示す拡大図である。
図6】本発明に係る床下フサギ板の第2の実施形態を示す平面図である。
図7】実施形態の床下フサギ板の施錠部の変形例を示す拡大図である。
図8】(A)~(C)は第2の実施形態の床下フサギ板の構成例を示す拡大断面図である。
図9】従来の床下フサギ板の施錠部の構造の一例を示すもので、(A)は施錠状態を示す図、(B)は床下フサギ板を開いた状態を示す図、(C)は主床下フサギ板のパネルの形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る鉄道車両の床下フサギ板の実施形態について説明する。図1には、本発明の床下フサギ板が取り付けられる鉄道車両の一例としての高速鉄道車両の車体下部の構造が示されている。
図1に示されているように、車体下部には車体の長手方向と直交する方向(幅方向)に横梁11が配設されており、この横梁11の端部にハニカム構造の側部フレーム12が固設され、該側部フレーム12の下方に側カバー13が配設されている。
【0019】
また、側カバー13の内側には横梁11から垂下するように支持枠14が設けられ、横梁11と支持枠14とに囲まれた空間に床下機器が配設されるとともに、支持枠14の下部に上記側カバー13の下端が固定板15を介して結合されている。そして、支持枠14の水平枠14Aに、フサギ板取付けプレート16が接合されている。さらに、フサギ板取付けプレート16と所定の間隔をおいてフサギ板受17が配設されており、フサギ板取付けプレート16とフサギ板受17との開口部を覆うように本発明に係る床下フサギ板が取り付けられる。なお、床下フサギ板は、車体の幅方向に複数に分割されて取り付けられるのが一般的である。符号18が付されているのは、支持枠14の補強部材である。
【0020】
図2には、第1の実施形態に係る床下フサギ板の構成が示されている。
本実施形態に係る床下フサギ板20は、本体プレート21と、該本体プレート21の一方の辺(図では右辺)に設けられた一対のヒンジ22A(22B)と、該本体プレート21の他方の辺(図では左辺)に設けられた一対の掛金錠23A(23B)とを備えている。本体プレート21は、図9(C)示すような波形でも良いし、平板でも良い。なお、図2においては、ヒンジ22A(22B)と掛金錠23A(23B)がそれぞれ重なっているため、1つだけ表われている。以下の説明では、単にヒンジ22、掛金錠23と記す。
【0021】
掛金錠23は、箱状のベース部31と、該ベース部31を貫通する施錠軸32と、施錠軸32の先端(図では上端)側にナット33A,33Bによって挟持されるようにして固定された主ラッチ掛金34と、施錠軸32のさらに先端側にナット33Cによって固定された補助ラッチ掛金35とを備える。
掛金錠23には、前述の特開平09-310705号公報に記載されている防護板取付用錠装置と類似の構造を備えたものが使用されている。具体的には、施錠軸32のベース部31に対応する部位に径方向に貫通し端部が周面により僅かに突出したガイドピンが設けられ、ベース部31内には前記ガイドピンの端部が嵌合するカム溝が形成されたスリーブ(カム体)が内蔵されており、施錠軸32を回転させると施錠軸32が軸方向へ移動するように構成されている。
【0022】
また、施錠軸32の後端(図では下端)には、水平姿勢と垂直姿勢とに変換可能なラッチ式平面ハンドル36が設けられており、図2に破線Hで示すように、ハンドル36aを垂直に起こした状態にすることで施錠軸32を回転させて施錠したり解錠したりすることが可能に構成されている。ハンドル36aはT字形をなしており、片手で簡単に回転させることができるようになっている。これにより、専用の工具等を用いることなく、掛金錠23の施錠/解錠操作を行うことができるようになる。
【0023】
床下フサギ板20の本体プレート21は、図3(A)に拡大して示すように、断面がJ形をなす当接部材24にボルト38A,38Bによって結合されている。当接部材24の上部折返し片は、断面が鉤形をなすラッチ受金39の水平片39aに下面に接触するように配設されている。
ラッチ受金39は、図1に示されている車体側のフサギ板受17に溶接等によって固着される。主ラッチ掛金34は、先端が基部よりも下方に位置するように折曲され、先端部の下面がラッチ受金39の水平片39aに上から接触するように構成されている。
【0024】
図9(A),(B)に示す従来の床下フサギ板は、下方からの衝撃をラッチ掛金34とラッチ受金39とで受ける構成であったためラッチ掛金が破損するリスクがあったが、上記のような構成を有する本実施形態の床下フサギ板においては、車両の走行中に氷塊等の異物が下方から本体プレート21に衝突した際の衝撃が、当接部材24からラッチ受金39へ伝達されて吸収されることによって、主ラッチ掛金34を衝撃から保護することができ、主ラッチ掛金34の破損を低減することができる。
【0025】
また、本実施形態の床下フサギ板20は、主ラッチ掛金34の上方に補助ラッチ掛金35が設けられているため、図3(B)に示すように、主ラッチ掛金34が破損したとしても補助ラッチ掛金35がラッチ受金39の上に接触することで、床下フサギ板20の落失を防止することができる。
なお、掛金錠23を解錠させる際には、ハンドル36aを垂直に起こして施錠軸32を90度回転させると、主ラッチ掛金34と補助ラッチ掛金35が一緒に回転して、ラッチ受金39の上方から移動することで、床下フサギ板を下方へ開くことができる。
【0026】
また、掛金錠23として内部にバネを内蔵したものを使用して、施錠軸32を常時下方へ付勢するように構成されている。このような掛金錠を使用することで、主ラッチ掛金34が破損した際に、図4(A)に示すように、バネ力で補助ラッチ掛金35をラッチ受金39の上面に押圧させることで、本体プレート21が傾いたり、床下フサギ板が上下に揺動したりするのを防止して、床下機器に当たって損傷したり騒音が発生したりするのを回避することができる。なお、施錠は、ハンドル36aを上方へ押し上げながら施錠軸32を回転させることで、主ラッチ掛金34をラッチ受金39の上に移動させることで行う。
【0027】
図4(B)には、上記実施形態の床下フサギ板20の変形例が示されている。
図4(B)に示す変形例は、主ラッチ掛金34の形状を平板状とし、補助ラッチ掛金35を上方へ折曲させるように形成したものである。このような構成の場合にも、主ラッチ掛金34が破損した際に、バネ力で補助ラッチ掛金35をラッチ受金39の上面に押圧することで、床下フサギ板20のガタツキを押さえ、それによって床下フサギ板20の落失を防止することができる。
【0028】
次に、図5を用いて、ヒンジ22の構成について説明する。
ヒンジ22は、図5(A)に示すように、本体プレート21の一方の辺(図では右辺)にボルト41等により結合された断面が鉤形をなす取付けブラケット42と、該取付けブラケット42の側面に固着されたヒンジ受金43を備えている。ヒンジ受金43には切欠き43aが設けられており、切欠き43aに車体側のフサギ板取付けプレート16に固着された支持片19の先端のヒンジ軸19aが挿入されることで、本体プレート21が回動可能に構成されている。
【0029】
さらに、ヒンジ軸19aは、断面が矩形状の角棒により構成されているとともに、所定の角度傾斜するように配設されている。一方、ヒンジ受金43の切欠き43aは入り口が平行壁面をなし、かつ入り口の間隔が、ヒンジ軸19aの断面の短い方の辺の長さよりも大きく、長い方の辺の長さよりも小さくなるように形成されている。これにより、図5(B)に示すように、本体プレート21を、ヒンジ軸19aの角棒の傾斜角と同じ角度まで傾斜させることによって、ヒンジの係合を外すことができるように構成されている。つまり、この角度以外では本体プレート21を車体から外すことができないようになっている。
【0030】
また、床下フサギ板20を外す時の傾斜角は、ヒンジ軸19aの角棒の傾斜角を変えることによって、任意に設定することができる。さらに、図9に示す従来の床下フサギ板は、床下フサギ板を外す際には、本体プレート21の開閉側を上方へ持ち上げるようにする必要があったが、本実施形態の床下フサギ板においては、本体プレート21の開閉側を下方へ下げることで外すことができるため、床下フサギ板20の取り外し、取付け作業性が向上するという利点がある。
【0031】
次に、図6図8を用いて、本発明に係る床下フサギ板20の第2の実施形態を説明する。
第2の実施形態の床下フサギ板20は、本体プレート21として、ポリカーボネートのような合成樹脂板を用いたものである。ヒンジ22A,22Bと掛金錠23A,23Bは、第1の実施形態のものと同じであるので、重複する説明を省略する。合成樹脂板(21)は、不透明でも良いが、透明な材料を使用するのが良く、形状は平板としている。
【0032】
本実施形態の床下フサギ板20においては、合成樹脂板(21)を保持する上面視で矩形状であるが、ヒンジのある辺および掛金錠のある辺に枠を備えるものであっても良い。枠体25には、図7に示すように、内縁部に沿って当接部材24と所定の間隔を有する段差部25aが形成されており、当接部材24と段差部25aと間のスペースに合成樹脂板(21)の端部が挿入されている。
また、当接部材24と枠体25の段差部25aとにより形成される凹部の内壁と合成樹脂板(21)の縁部の表面との間にはゴム等の弾性材からなる弾性保持体26が装填されている。
【0033】
上記のように、弾性保持体26を介して金属製の枠体25が合成樹脂板(21)を保持する構成とすることによって、図8(A)に示すように、合成樹脂板(21)に下方から加わった衝撃を、周囲の枠体25に分散させることができ、それによって合成樹脂板(21)が割れたり変形したりするのを防止することができる。また、合成樹脂板(21)を透明なポリカーボネート等により構成した場合には、床下フサギ板を開けることなく目視で内部の床下機器の状態を確認したり、監視カメラやレーザー測定器を用いて異常の有無を検出したりすることができるという利点がある。
なお、弾性保持体26としては、図8(A)に示すような気密性を有するガスケットタイプのものの他、図8(B)に示すような波形防振ゴムや、図8(C)に示すような複数の球状もしくは丸棒状の弾性体等を使用するようにしても良い。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態での床下フサギ板では、掛金錠23としてラッチ式平面ハンドル36を備えたものを使用したが、図9に示す従来の床下フサギ板と同様な、六角レンチ等の工具を使用して施錠/解錠を行う掛金錠を使用した構成としても良い。
【0035】
また、上記実施形態では、ラッチ受金39の水平片39aに当接部材24を直接接触させているが、当接部材24のラッチ受金39との接触部に下方からの衝撃を吸収する弾性体を介在させるようにしても良い。
さらに、上記実施形態では、本発明を、鉄道車両の床下フサギ板に適用した場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものでなく、バスなどの車両の床下フサギ板にも利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
11 横梁
12 側部フレーム
13 側カバー
16 フサギ板取付けプレート
17 フサギ板受
20 床下フサギ板
21 本体プレート
22 ヒンジ
23 掛金錠
24 当接部材
25 枠体(サッシ)
26 弾性保持体
31 ベース部
32 施錠軸
34 主ラッチ掛金
35 補助ラッチ掛金
36 ラッチ式平面ハンドル
39 ラッチ受金
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9