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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020172253
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063886
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3142417(JP,U)
【文献】特開2013-083548(JP,A)
【文献】特開平03-170826(JP,A)
【文献】特開2020-046392(JP,A)
【文献】特開2008-292410(JP,A)
【文献】特開2020-016549(JP,A)
【文献】特開2003-106912(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106197772(CN,A)
【文献】特開平01-302622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電材と、
前記導電材の両端に当接する電極としての一対の金属板と、を有し、荷重の印加により前記導電材が圧縮されて変化する出力に基づき前記荷重を計測する圧力センサであって、
前記導電材の周囲の外方に位置する少なくとも一方の前記金属板の内面に設けられた絶縁膜と、
を有し、
前記金属板と前記導電材とは接着されず直接接しており、
前記導電材の周囲の外方に位置する前記一対の金属板の間が、前記絶縁膜を介してシール部材により固定されている、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記導電材は、前記絶縁膜よりも厚く形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記導電材は、カーボンペーストが塗布された基布であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記金属板は、ステンレス鋼板で形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記金属板の一方は、他方に比べて小さい面積で形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高荷重測定が可能な、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷重の計測には、例えば、ロードセルが用いられている。ロードセルでは、広範囲での荷重測定を可能とするが、装置が大きく、一般的に、測定機器に設置されるため、計測対象物を、測定機器まで運び、計測することが必要であった。このように、ロードセルでは、小型・薄型化が困難であり、計測に制約が生じ、また、高価という課題があった。
【0003】
これに対し、下記の特許文献1には、荷重測定が可能な、布状の圧力センサが開示されている。特許文献1に示す圧力センサは、布に導電ゴムを含有させて構成される。また、下記の特許文献2には、特に、低荷重時の繰り返し特性を改善したシート状の圧力センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-224948号公報
【文献】特開2020-46392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の薄型圧力センサは、基材となるPETフィルムなどの有機材料フィルムの表面に電極としての金属膜が塗布されており、金属膜の表面に、特許文献1に開示の導電ゴムなどが設置されている。
【0006】
しかしながら、従来の薄型圧力センサでは、荷重を高くしていくと、有機材料フィルムの耐性が低いため、凹みや破損が生じ、それに伴い、有機材料フィルムに塗布された金属膜の破損等が生じやすく、高荷重領域を再現性良く計測することが困難であった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に、高荷重を安定して繰り返し計測できる圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧力センサは、電材と、前記導電材の両端に当接する電極としての一対の金属板と、を有し、荷重の印加により前記導電材が圧縮されて変化する出力に基づき前記荷重を計測する圧力センサであって、前記導電材の周囲の外方に位置する少なくとも一方の前記金属板の内面に設けられた絶縁膜と、を有し、前記金属板と前記導電材とは接着されず直接接しており、前記導電材の周囲の外方に位置する前記一対の金属板の間が、前記絶縁膜を介してシール部材により固定されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明では、前記導電材は、前記絶縁膜よりも厚く形成されることが好ましい。本発明では、前記導電材は、カーボンペーストが塗布された基布であることが好ましい。本発明では、前記金属板は、ステンレス鋼板で形成されることが好ましい。本発明では、前記金属板の一方は、他方に比べて小さい面積で形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧力センサによれば、安定して、高荷重領域での繰り返し計測を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは、本実施形態の圧力センサの一例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示すA-A線に沿って切断し矢印方向から見た圧力センサの断面図である。
図2】別の実施形態の圧力センサの断面図である。
図3】別の実施形態の圧力センサの断面図である。
図4】荷重計測方法を説明するための模式図である。
図5】本実施例の圧力センサを用いて測定した荷重と抵抗値との関係を示すグラフである。
図6】実験で使用したステンレス鋼板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施形態の圧力センサの構成を説明する。図1Aは、本実施形態の圧力センサの一例を示す平面図である。図1Bは、図1Aに示すA-A線に沿って切断し矢印方向から見た圧力センサの断面図である。
【0014】
本実施の形態における圧力センサ1は、高荷重計測に優れた繰り返し特性を発揮する。なお、「繰り返し特性」とは、荷重を繰り返し印加した際の出力変化の再現性を指す。ここで、「高荷重」とは、1000N以上であると定義され、10000N以上であることがより好ましい。特に、本実施の形態の圧力センサ1は、薄いシート状であり、高荷重領域に対し優れた繰り返し特性を有しつつ、フレキシブル性も備え、平面のみならず曲面部分にも設置できるなど利便性に優れる。なお、本実施の形態の圧力センサ1は、100N~10000N程度の荷重に対しても良好な繰り返し特性を得ることができる。
【0015】
図1A図1Bに示すように、本実施の形態の圧力センサ1は、一対の金属板2、3と、金属板2、3の間に介在する導電材4と、を有して構成される。金属板2、3は電極として用いられる。この実施の形態では、圧力センサ1が円形状であるが、円形に限定されるものでなく、円形以外に、矩形状、多角形状、楕円形状等を例示できる。また複数の異なる形状を一体的に組み合わせた形状であってもよい。
【0016】
本実施の形態では、導電材4はシート状であり、また、金属板2、3も薄い板厚のシート状である。これにより、圧力センサ1の薄型化を実現できる。以下、圧力センサ1の構成部材を説明する。
【0017】
<金属板2、3>
金属板2、3は、導電材4の両端(図1Bに示す導電材4の上面及び下面)に、夫々配置されている。金属板2、3と導電材4は、当接している。すなわち、金属板2、3と導電材4との間は、導電接着剤等で接着されず直接接している。
【0018】
図1A図1Bに示すように、金属板2、3は、導電材4よりも広い面積で形成される。このため、金属板2、3には、導電材4の周囲の外方に位置する延出部2a、3aが設けられる。このように、金属板2、3が導電材4より広い面積で形成されているため、導電材4を金属板2、3の間に介在させたときに、導電材4を、金属板2、3の端面2c、3cよりも内側に、容易に且つ確実に、位置決めすることができる。なお、「面積」とは、平面視における表面の大きさを指す。
【0019】
金属板2、3は、フレキシブル性を備えた薄い板状或いはシート状である。金属板2、3は、所定の強度を有すれば、材質を問うものではないが、スチールであることが好ましく、特に、ステンレス鋼板(SUS)であることが好ましい。なお、ステンレス鋼板の種類は問わない。
【0020】
ステンレス鋼板の破断荷重は、200N以上が好ましい。これより小さいと、十分な強度を得ることができず、高荷重計測時、安定した繰り返し特性を得ることができない。ステンレス鋼板の破断強度は、200N以上であることが、安定した繰り返し特性を得ることができ好適である。また、ステンレス鋼板の破断荷重は、450N以上であることがより好ましい。これにより、高荷重計測時、より安定した繰り返し特性を得ることができる。また、ステンレス鋼板の破断荷重を更に大きくすることで、更に高い強度を得ることができるものの、コストや圧力センサ1のフレキシブル性を考慮すると、ステンレス鋼板の破断荷重は、5000N以下であることが好ましく、2000N以下であることがより好ましい。
【0021】
金属板2、3は、ともに同じ厚みであってもよいし、異なっていてもよい。また、金属板2、3の板厚は、部分的に異なってもよい。すなわち、導電材4と接する箇所は高い荷重が印加される部分であり、強度を高めるために厚い板厚であることが好ましく、それ以外の部分は、導電材4と接触する部分よりも薄くすることでフレキシブル性を高めることができる。
【0022】
例えば、導電材4と接する箇所の金属板2、3の板厚を他の箇所より厚くするために、導電材4と接する箇所にだけ金属板を重ねる等してもよい。
【0023】
図1A図1Bに示すように、金属板2は、金属板3よりも小さい面積で形成される。よって、面積は、図1A図1Bに示すように、導電材4<金属板2<金属板3の順になっている。金属板2の外面2dが押圧面(荷重が印加される面)であるが、押圧面を有する金属板2の面積を、他方の金属板3の面積より小さいすることが好ましい。これにより、金属板2が押圧されて、金属板2の端面2cが金属板3に近づいても、該端面2cは、金属板3に形成された、後述する絶縁膜5に接触するだけで、金属板2、3同士が導通するのを防止することができる。
【0024】
<導電材4>
一対の金属板2、3の間に介在する導電材4は、圧力に感応するセンサ部である。具体的には、導電材4は、基布にカーボンペーストを塗布して構成される導電シートであることが好ましい。カーボンペーストを用いることで、例えば、特許文献1のように、導電ゴムを用いる場合に比べて、繰り返し印加した際の出力変化の再現性(繰り返し特性)を、高荷重計測時において、良好なものに出来る。すなわち、導電ゴムでは、導電層が基布表面に偏在し、再現性が低下すると考えられるが、カーボンペーストを用いると、基布表面への偏在を抑制でき、再現性を向上させることが可能になる。また、カーボンペーストのほうが、導電ゴムよりも粘度が低いため、カーボンの分散性が良好になる。
【0025】
例えば、本実施の形態では、繊維から成る基布を用いることができる。繊維からなる基布の構成は、特に限定されるものではないが、例えば、複数本の繊維からなる繊維束を編み込んだシート状の布である。横方向の繊維束と縦方向の繊維束とを編み込むことで、繊維束の間に、複数の微小な空隙が設けられると考えられる。そして、各空隙内に、カーボンペーストを構成する複数のカーボン粒子が入り込むと考えられる。なお、基布に、カーボンペーストを塗布した後、適度な熱処理を施すことで、カーボンペーストの溶媒は除去される。この結果、カーボン粒子が繊維束の間の空隙に残りやすいと考えられる。なお、バインダー樹脂が、カーボン粒子と共に、繊維束間の空隙内に存在していてもよい。
【0026】
限定するものでないが、繊維束間の空隙の大きさは、例えば、1μm~100μm程度である。このように、空隙は微小空間であり、基布に塗布されたカーボンペーストは、導電ゴムよりも粘度が低く、適切に、空隙に入り込むと考えられる。
【0027】
また、特に限定するものでないが、カーボンペーストに含まれるカーボン粒子の粒径は、0.25μm~1μm程度である。カーボン粒子の粒径は、繊維束間の空隙よりも小さいと考えられる。そのため、カーボンペーストを基布に塗布すると、カーボンペーストは、繊維束間の空隙内に侵入し、カーボン粒子が、空隙内に保持されると考えられる。
【0028】
また、カーボン粒子を特に限定するものではないが、アセチレンブラックやケッチェンブラック等に代表されるカーボンブラックや、黒鉛、活性炭、ソフトカーボン、ハードカーボン等を例示できる。このうち、カーボン粒子は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0029】
また、カーボンペーストに含まれるバインダー樹脂を特に限定するものでないが、例えば、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン系共重合体、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を例示することができる。
【0030】
また、繊維束を構成する繊維は、特に限定されるものではないが、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ガラス繊維等を例示できる。この中でも、ポリエステル繊維が好ましい。
【0031】
また、本実施の形態の圧力センサ1では、カーボンペーストを基布に塗布する方法を限定するものでなく、印刷やディップ等を提示できる。このうち、カーボンペーストを基布に印刷することが好ましい。本実施形態では、印刷方法は特に限定されるものでなく、スクリーン印刷、及び、オフセット印刷等の既存の印刷方法を使用することができる。
【0032】
本実施の形態の導電材4の作製方法として印刷法を用いる場合、まず印刷機に印刷版をセットする。続いて、基布を、印刷機に固定する。次に、カーボンペーストを基布に印刷する。そして、印刷したカーボンペーストに適度な熱処理を施し、カーボンペースト中の溶剤を除去し、カーボンペーストを硬化させる。
【0033】
<絶縁膜5>
図1Bに示すように、導電材4の周囲に延出する金属板3の延出部3aの内面3bには、絶縁膜5が形成されている。「内面」とは、金属板2の延出部2aと対向する側の面を指す。絶縁膜5は、塗布、印刷、蒸着等で形成される。また、絶縁膜5は不働態膜であってもよい。ただし、不働態膜の場合は、絶縁膜5を塗布などで形成するよりも、高荷重印加時における絶縁安定性に劣るため、絶縁膜5を塗布、印刷、蒸着、テープ等で別途形成することが好適である。
【0034】
このように、絶縁膜5は、導電材4が金属板3に当接する領域以外の表面に形成される。絶縁膜5は、圧力センサ1に荷重が印加され、導電材4が圧縮された際に、金属板2、3同士が導通接触するのを防止するための「接触防止手段」である。図2に示すように、絶縁膜5は、金属板3の延出部3aの内面3bのみならず、金属板2の延出部2aの内面2bにも形成されることが、より確実に、金属板2、3同士の導通接触を防止することができ好適である。
【0035】
なお、図1Bのように、一方の金属板3にのみ絶縁膜5を設ける構成では、荷重が印加される押圧面を有さない側の金属板3に絶縁膜5を形成することが好ましい。押圧面を有する側である図1Bの金属板2は、外面2dが押圧されると、それによりフレキシブル性を有する金属板2は金属板3に近づく。このとき、絶縁膜5が金属板3の内面3bに形成されていない構成では、金属板2が撓って、端面2cが金属板3の内面3bに接触し導通する可能性がある。よって、少なくとも、荷重が印加される押圧面を有しない側の金属板3の内面3bに絶縁膜5を形成することが好ましい。
【0036】
また、図1Bにおいて、絶縁膜5は、延出部3aの内面3bのみならず、金属板3の端面3cや外面3dに形成されてもよい。ここで、電気絶縁性を高めるには、絶縁膜5は、内面3bから端面3cにかけて形成されることが好ましいが、端面3cにまで絶縁膜5を適切に形成することは難しい。例えば、金属板3の表面全体に絶縁膜5を成膜した後、金属板3を所定形状にカットする工程を有する場合、端面3cは、金属板3を所定形状に加工する際の切断面であり、絶縁膜5を端面3cに後付けする工程が必要となる。このため、端面3cにまで絶縁膜5を形成する場合、製造工程が煩雑化したり、コスト高になる。そこで、本実施の形態では、金属板2、3同士の端面2c、3cでの導通接触を防止するために、上記したように、金属板2を、金属板3よりも小さい面積で形成している。これにより、金属板2、3の端面2c、3cに絶縁膜5が形成されていなくても、金属板2、3の端面2c、3c間での導通接触を効果的に防止することができる。なお、上記したように、小さい面積で形成する金属板2は、押圧面を有する側であることが好ましい。このとき、絶縁膜5は、金属板2の外面2dにも形成されることが好ましい。計測対象物が金属である場合、導通することを防止するためである。
【0037】
図1B図2に示すように、絶縁膜5の厚みは、導電材4の厚みより薄いことが好ましい。これにより、圧力センサ1に荷重が印加された際に、導電材4の圧縮による厚みの変動域を広くでき、特に、高荷重計測での繰り返し特性を向上させることができる。ここで、図2のように、絶縁膜5が、金属板2、3の内面2b、3bの両方に形成される場合は、両方の絶縁膜5を足した合計厚が、絶縁膜5の厚みより小さく形成される。
【0038】
絶縁膜5の厚みは、導電材4の厚みの半分以下、好ましくは1/3以下、より好ましくは1/5以下、更に好ましくは1/10以下である。具体的には、絶縁膜5の厚みは、数nm~10nm程度であることが好ましい。また、絶縁膜5の材質を問うものではなく、無機絶縁材料或いは有機絶縁材料のどちらであってもよい。
【0039】
絶縁膜5の形成方法を限定するものではないが、例えば、絶縁膜を形成する金属板の表面(内面)に対し、導電材4を設置する領域にマスクを設けた状態で、絶縁膜5を印刷等する。これにより、導電材4を設置する部分には絶縁膜5は形成されず、導電材4を金属板に直接接触させることができるとともに、導電材4の周囲に絶縁膜5を設けることができる。
【0040】
<シール部材6>
図1B図2に示すように、導電材4の周囲に位置する金属板2、3の延出部2a、3aの内面2b、3b間は、シール部材6により接着されることが好ましい。シール部材6の材質を限定するものではないが、例えば、シール部材6は、電気絶縁性の両面接着テープである。
【0041】
上記したように、導電材4と金属板2、3との間は接着されていない。このため、シール部材6により、金属板2、3の間を接着することで、金属板2、3の間に内在する導電材4を固定することが可能になる。
【0042】
シール部材6は、図1Aに示すように、導電材4の全周にわたって形成されることが、導電材4をより確実に、金属板2、3間に固定することができ好適である。一方、導電材4を、金属板2、3の間に固定できれば、シール部材6は、導電材4の周囲に間欠的に形成されてもよい。シール部材6を間欠的に形成することで、間欠部分が空気の逃げ道になり、圧力センサ1に荷重が印加された際に、導電材4を適切に圧縮動作させることができ、高荷重計測に効果的である。
【0043】
図1B図2では、シール部材6の厚みを、導電材4の厚みから金属板2、3の内面2b、3bに形成される絶縁膜5の厚みを引いた値と同等としており、金属板2、3をほぼフラットな状態で維持した図面としたが、シール部材6の厚みは、導電材4を金属板2、3間に確実に固定するために、前記値より多少小さくすることが好適である。これにより、金属板2、3の延出部2a、3a間の間隔が、導電材4の厚みよりも多少縮まり、導電材4が横方向に移動するのを阻止して、導電材4を金属板2、3間に安定して固定配置できる。
【0044】
図1B図2では、シール部材6を、金属板2、3の内面2b、3bに設けたが、例えば、金属板2、3の外面2d、3d間をシールしてもよい。
【0045】
すなわち、図3に示すように、絶縁テープ等からなるシール部材7を、金属板2、3の外面2d、3dに配置し、金属板2、3の外周にてシール部材7、7同士を接着する。これにより、シール部材7内に金属板2、3及び導電材4を挟み込み固定することができる。この構成とすれば、押圧面である金属板2の外面2dの露出を防ぎ、計測対象物が金属である場合でも金属板2と導通するのを適切に防止することができる。なお、各シール部材7と各金属板2、3間も接着することが、より強固に固定できて好ましい。なお、シール部材7、7同士を密着させて張り合わせ、シール部材7、7同士の接着面間内部に空間がない状態であることが好ましい。
【0046】
本実施の形態における圧力センサ1に荷重が作用すると、金属板2、3間に挟まれた導電材4が圧縮される。この圧縮度合に基づいて出力が変化し、出力変化に基づいて荷重を計測することができる。
【0047】
従来の圧力センサでは、金属板2、3を電極として用いず、PETなどの有機材料フィルムの表面に、電極としての金属膜を形成した構成を採用していた。このような構成では、高荷重が印加されると、有機材料フィルムの耐性が低いために、有機材料フィルムが潰れるなどして、金属膜が損傷を受けやすく、高荷重領域を再現性良く計測することが困難であるとの問題があった。
【0048】
これに対し、本実施の形態では、導電材4の両端に、耐性の高い金属板2、3を配置したことで、高荷重が印加されても、金属板2、3の破損を防止でき、高荷重領域を再現性良く、安定して計測することができる。
【0049】
本実施の形態の圧力センサ1は、高荷重に対しより安定した繰り返し特性を得るために、金属板2、3は、ステンレス鋼板であることが好ましい。ステンレス鋼板を用いることで、少なくとも、1000N以上の高荷重に対し良好な耐性を得ることができる。上記したように、ステンレス鋼板の破断荷重は、200N以上であることが好ましい。
【0050】
また、本実施の形態では、金属板2、3は、導電材4より広い面積で形成されており、導電材4の周囲から外方に延出する金属板2、3の延出部2a、3aの少なくとも一方には、高荷重が印加されても、延出部2a、3a同士が導通接触するのを防止する絶縁膜が設けられている。この絶縁膜は、導電材4よりも薄く形成されており、これにより、高荷重が印加された際、適切に導電材4を圧縮させることができ、高荷重領域を再現性良く、安定して計測することができる。
【0051】
また、金属板2、3の一方は他方より小さい面積で形成されることが好ましい。これにより、高荷重が印加された際、金属板2、3の端部2c、3c同士が接触し導通することを防止することができる。
【0052】
本実施の形態の圧力センサ1の使用用途を限定するものではないが、例えば、圧力計、圧力計測装置等に使用することができる。また、本実施形態の圧力センサ1は、超薄型ロードセンサとして適用することができ、例えば、風圧用ロードセンサや、車両のタイヤ用ロードセンサ等して様々な荷重を計測することができる。
【0053】
また、本実施形態の圧力センサ1は、フレキシブル性を有しており、湾曲させて使用することもできる。
【実施例
【0054】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[圧力(荷重)の測定方法]
図4は、荷重計測システムを示す概念図である。図4に示すように、スタンド20上に、圧力(荷重)センサ1を設置した。そして、荷重機22を圧力センサ1の表面に押し当て、荷重をかけた際の電圧出力をデータロガー23で計測した。圧力センサ1には以下のサンプルを用いた。
【0056】
[サンプル]
図1A図1Bに示す圧力センサ1を製造した。導電材4としては、ポリエステル繊維からなる基布に、カーボンペーストを印刷した導電シート(導電材4)を作製し、導電シートの上下を、ステンレス鋼板で挟んだ。
【0057】
導電シートの厚みは100μm、金属板2、3の板厚は、夫々、50μmであった。金属板2、3の内面に形成された絶縁膜5の合計厚みは、50μmであった。そして、金属板2、3の延出部2a、3a間を両面接着テープによりシールした。
【0058】
実験では、上記サンプルを用いて、100N~10kNの荷重を繰り返し印加し、荷重と抵抗値との関係について測定した。その実験結果が図5に示されている。
【0059】
図5に示すように、100N以上の高荷重を印加した際に、安定した繰り返し特性が得られることがわかった。
【0060】
[ステンレス鋼板の破断荷重値の測定]
次に、板厚の異なるステンレス鋼板の破断荷重値を測定した。測定したステンレス鋼板の板厚は、0.005mm、0.01mm、0.03mm、0.05mm、0.1mm、0.3mm、0.4mmであった。
【0061】
図6に示すように、ステンレス鋼板の両端にタブを接着剤で装着し、万能試験機(ストログラフVG5E/(株)東洋精機製作所)にて、50mm/minの試験速度で引張試験を実施した。その実験結果を以下の表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
この実験結果から、ステンレス鋼板の板厚を厚くすることで破断荷重値を大きくすることができるとわかった。圧力センサに適応させるには、破断荷重が79.1N(板厚は0.005mm)では耐性が極めて低くなり、1000N以上の高荷重に対し破壊しやすく計測が困難になることがわかった。破断荷重が119.1N(板厚は0.01mm)でも耐性が十分でなく、1000N以上の高荷重に対する繰り返し特性に支障をきたすことがわかった。そこで、破断荷重は200N以上であることが好ましく、450N以上であることがより好ましく、500N以上であることが更に好ましく、700N以上であることが更により好ましいとした。
【0064】
また、破断荷重が6148.8N(板厚は0.4mm)であると、高荷重に対する繰り返し特性は良好であるが、曲げ剛性が大きすぎて、良好なフレキシブル性が得られないことがわかった。そこで、破断荷重は、5000N以下であることが好ましく、2000N以下であることがより好ましいとした。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の圧力センサによれば、繰り返し特性に優れ、特に、高荷重域において、安定した出力を得ることができる。本発明の圧力センサを、圧力計、圧力計測装置等に使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 圧力センサ
2、3 金属板
2a、3a 延出部
2b、3b 内面
2c、3c 端面
2d、3b 外面
4 導電材
5 絶縁膜
6、7 シール部材
20 スタンド
22 荷重機
23 データロガー
図1
図2
図3
図4
図5
図6