(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240611BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20240611BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H9/02 331Z
F16F15/023 A
F16F15/04 P
(21)【出願番号】P 2020173036
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】前田 達彦
(72)【発明者】
【氏名】佐分利 和宏
(72)【発明者】
【氏名】増田 寛之
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-213099(JP,A)
【文献】特開2005-256325(JP,A)
【文献】特開2010-203192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
F16F 15/00 -15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して建てられる複数の建物が減衰装置にて連結される制振構造であって、
複数の前記建物が、高さ位置の異なる複数の免震層を有して当該免震層にて高さ方向で複数の建物ブロックに区分される免震建物として構成され、
一つの前記建物の複数の前記建物ブロックと他の前記建物の複数の前記建物ブロックとが前記減衰装置にて夫々連結される制振構造。
【請求項2】
水平方向で隣接して配置される前記建物ブロックの高さ寸法が異なるように前記免震層が複数の前記建物に配置され、
水平方向に隣接して配置される前記建物ブロックどうしが前記減衰装置にて略水平方向に連結される状態で、一つの前記建物の複数の前記建物ブロックと他の前記建物の複数の前記建物ブロックとが前記減衰装置にて夫々連結される請求項1記載の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接して建てられる複数の建物が減衰装置にて連結される制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制振構造は、隣接して建てられる複数の建物の固有周期の差を利用し、複数の建物の間に配置されるダンパー等の減衰装置にて減衰力を付与するものである。
特許文献1には、このような制振構造として、隣接して建てられる高さの異なる二棟の建物が、基礎部分に一つの免震層を有する免震建物として構成され、当該二棟の建物の上部側が減衰装置にて連結される制振構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の制振構造では、基礎部分に備えられる免震層により各建物に入力される地震力を低減させながら、高さの異なる二棟の建物の間に配置される減衰装置で減衰力を付与して二棟の建物の振動を抑制することができる。しかしながら、隣接して建てられる複数の建物の振動を更に効率良く抑制することが望まれている。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、隣接して建てられる複数の建物の振動を効率良く抑制することのできる制振構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、隣接して建てられる複数の建物が減衰装置にて連結される制振構造であって、
複数の前記建物が、高さ位置の異なる複数の免震層を有して当該免震層にて高さ方向で複数の建物ブロックに区分される免震建物として構成され、
一つの前記建物の複数の前記建物ブロックと他の前記建物の複数の前記建物ブロックとが前記減衰装置にて夫々連結される点にある。
【0006】
本構成によれば、建物における複数の建物ブロックに入力される地震力を複数の免震層の夫々で低減させる状態で各建物に入力される地震力を低減させることができる。そして、一つの建物の少なくとも複数の建物ブロックと、他の建物の少なくとも複数の建物ブロックとの間の夫々で減衰装置にて振動を減衰することができる。よって、隣接して建てられる複数の建物の振動を効率良く抑制することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、水平方向で隣接して配置される前記建物ブロックの高さ寸法が異なるように前記免震層が複数の前記建物に配置され、
水平方向に隣接して配置される前記建物ブロックどうしが前記減衰装置にて略水平方向に連結される状態で、一つの前記建物の複数の前記建物ブロックと他の前記建物の複数の前記建物ブロックとが前記減衰装置にて夫々連結される点にある。
【0008】
本構成によれば、複数の建物の間において水平方向に隣接して配置される建物ブロックどうしの高さ寸法を異ならせることで、水平方向に隣接して配置される建物ブロックどうしを固有周期の異なるものとすることができる。そして、その固有周期の異なる建物ブロックどうしを減衰装置にて水平方向に連結することで、減衰装置を連結長さの短いシンプルな構成としながら水平方向で隣接する建物ブロック間の夫々において減衰装置にて振動を減衰することができる。よって、隣接して建てられる複数の建物の振動を一層効率良く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の制振構造の別実施形態を模式的に示す側面図
【
図3】本発明の制振構造の別実施形態を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の制振構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この制振構造は、二つ(二棟、複数の一例)の建物1,2が間隔を空けて隣接して建てられ、それら隣接する建物1,2が減衰装置3にて連結されるものである。減衰装置3としては、オイルダンパ3Aを好適に用いることができるが、粘性ダンパや鋼材ダンパ等の各種の減衰装置を用いることができる。
【0011】
建物1,2は、鉄筋コンクリート造等で構成され、高さ位置の異なる複数の免震層4を有して当該免震層4にて高さ方向で複数の建物ブロックBに区分される免震建物として構成される。免震層4は、建物1,2の下端部や上方側の建物ブロックBと下方側の建物ブロックBの間に積層ゴム支承等の複数の免震支承4Aを介在させて構成される。各建物ブロックBは、建物1,2の一又は複数の階層にて構成される。図示例では、建物1が、高さ位置の異なる二つの免震層4にて三つの建物ブロック1A~1Cに区分され、建物2が、高さ位置の異なる二つの免震層4にて三つの建物ブロック2A~2Cに区分される場合を例示している。
【0012】
免震層4は、隣接する建物1,2間において水平方向で隣接して配置される建物ブロックBの地震時の挙動が異なるように建物1,2に配置される。本実施形態では、免震層4は、建物1,2間において、水平方向で隣接して配置される建物ブロックBの固有周期を異ならせるべく、水平方向で隣接して配置される建物ブロックBの高さ寸法が異なるように建物1,2に配置される。
【0013】
例えば、免震層4は、建物1,2において、水平方向で隣接して配置される建物1の建物ブロック1Aと建物2の建物ブロック2Aの高さ寸法が異なり、水平方向で隣接して配置される建物1の建物ブロック1Bと建物2の建物ブロック2Bの高さ寸法が異なり、水平方向で隣接して配置される建物1の建物ブロック1Cと建物2の建物ブロック2Cの高さ寸法が異なるように配置される。ちなみに、本実施形態では、建物1,2の夫々においても複数の建物ブロックBの高さ寸法を異ならせている。
【0014】
そして、建物1の複数の建物ブロックBと、他の建物2の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて夫々連結される。本実施形態では、水平方向に隣接して配置される建物ブロックBどうしが減衰装置3にて連結長さの短い略水平方向に連結される状態で、一つの建物1の複数の建物ブロックBと他の建物2の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて夫々連結される。
【0015】
図示例では、建物1の建物ブロック1Aと建物2の建物ブロック2A、建物1の建物ブロック1Bと建物2の建物ブロック2B、建物1の建物ブロック1Cと建物2の建物ブロック2B、及び、建物1の建物ブロック1Cと建物2の建物ブロック2Cが、それぞれ減衰装置3にて略水平方向に連結される場合を例示している。
このように、建物1,2において、一方の建物側の一つの建物ブロックBと他方の建物側の一つの建物ブロックBとが減衰装置3にて連結されるだけでなく、一方の建物側の一つの建物ブロックBと他方の建物側の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて連結されてもよい。
【0016】
なお、図示は省略するが、免震層4の夫々にも、上方側の建物ブロックBと下方側の建物ブロックBの相対変位に減衰力を付与するように減衰装置3を設置することができる。
【0017】
以上説明したように、本発明の制振構造によれば、建物1,2における複数の建物ブロックBに入力される地震力を複数の免震層4の夫々で低減させる状態で各建物1,2に入力される地震力を低減させることができる。そして、一つの建物1の複数の建物ブロックBと、他の建物2の複数の建物ブロックBとの間の夫々で減衰装置3にて振動を減衰することができる。よって、隣接して建てられる複数の建物1,2の振動を効率良く抑制することができる。
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0018】
(1)前述の実施形態では、平面視で一列に並ぶ二つ(二棟)の建物1,2が減衰装置3にて連結される場合を例に示したが、例えば、
図2に示すように、平面視で一列に並ぶ三つ(三棟、三つ以上の一例)の建物11~13における隣接する建物どうしが減衰装置3にて連結されてもよい。
この場合は、隣接する建物11,12間において建物11の複数の建物ブロックBと建物12の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて連結され、隣接する建物12,13間において建物12の複数の建物ブロックBと建物13の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて連結される。
【0019】
ちなみに、図示例では、建物11,12は、二つの免震層4にて三つの建物ブロックBに区分され、建物13は、三つの免震層4にて四つの建物ブロックBに区分される場合を例示している。このように、隣接する建物間における建物ブロックBの数を同一としたり、異ならせたりすることができる。
【0020】
また、例えば、
図3に示すように、平面視で環状に並ぶ四つ(四棟、四つ以上の一例)の建物14~17における隣接する建物どうしが減衰装置3にて連結されてもよい。
この場合、隣接する建物14,15間において建物14の複数の建物ブロックBと建物15の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて連結され、隣接する建物15,16間において建物15の複数の建物ブロックBと建物16の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて連結される。更に、隣接する建物16,17間において建物16の複数の建物ブロックBと建物17の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて連結され、隣接する建物17,14間において建物17の複数の建物ブロックBと建物14の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて連結される。
【0021】
(2)前述の実施形態では、隣接する建物1,2間において建物ブロックBどうしが減衰装置3にて略水平方向に連結される状態で、一つの建物1の複数の建物ブロックBと他の建物2の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて夫々連結される場合を例に示した。
これに限らず、建物ブロックBどうしが減衰装置3にて略水平方向から上下に傾斜させた斜め方向に連結される状態で、一つの建物1の複数の建物ブロックBと他の建物2の複数の建物ブロックBとが減衰装置3にて夫々連結されてもよい。
この場合、減衰装置3の連結長さが長くなるものの、水平方向で隣接して配置される建物ブロックBの高さ寸法が同一となるように建物1,2に免震層4を配置する場合でも、建物ブロックBどうしを斜め方向に連結する減衰装置3にて振動を減衰することができる。
【0022】
(3)前述の実施形態では、一つの建物1の三つ全ての建物ブロックBと、他の建物2の三つ全ての建物ブロックBとが減衰装置3にて夫々連結される場合を例に示したが、本発明の制振構造は、一つの建物1の建物ブロックBのうちの少なくとも複数の建物ブロックBと、他の建物2の建物ブロックBのうちの少なくとも複数の建物ブロック2とが減衰装置3にて連結されていればよい。
【符号の説明】
【0023】
1,2 建物
11~13 建物
14~17 建物
3 減衰装置
4 免震層
B 建物ブロック
1A~1C 建物ブロック
2A~2C 建物ブロック