(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両用ランプの制御装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240611BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240611BHJP
B60Q 1/38 20060101ALI20240611BHJP
B60Q 1/28 20060101ALI20240611BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20240611BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20240611BHJP
F21S 41/657 20180101ALI20240611BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240611BHJP
F21S 45/70 20180101ALI20240611BHJP
F21W 102/145 20180101ALN20240611BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20240611BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240611BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20240611BHJP
F21W 105/00 20180101ALN20240611BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240611BHJP
【FI】
B60Q1/00 C
B60Q1/04 E
B60Q1/38 B
B60Q1/28
F21S41/153
F21S41/663
F21S41/657
F21S43/14
F21S45/70
F21W102:145
F21W103:10
F21W103:20
F21W103:55
F21W105:00
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020173635
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】桂田 善弘
(72)【発明者】
【氏名】片岡 拓弥
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-178576(JP,A)
【文献】特開2013-243000(JP,A)
【文献】特開2019-194940(JP,A)
【文献】特開2001-001832(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106218533(CN,A)
【文献】特開2019-167011(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
B60Q 1/04
B60Q 1/38
B60Q 1/28
F21S 41/153
F21S 41/663
F21S 41/657
F21S 43/14
F21S 45/70
F21W 102/145
F21W 103/10
F21W 103/20
F21W 103/55
F21W 105/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプユニットとランプカメラを備える車両用ランプにおいて、前記ランプユニットの点灯を制御するランプ制御部と、前記ランプカメラで撮像した撮像信号に基づいて対象物を検出する対象物検出部と、前記ランプカメラの撮像動作を制御するカメラ制御部を備え、前記カメラ制御部は、前記ランプユニットの光が前記ランプカメラに漏光したことによる前記対象物検出部での対象物検出の障害を抑止するための障害抑止制御を行なう構成
であり、
前記ランプ制御部は前記ランプユニットを周期的に点滅し、前記カメラ制御部は前記ランプユニットが点灯されたタイミングで前記障害抑止制御を行ない、
前記カメラ制御部の障害抑止制御は、前記ランプカメラの撮像を停止する制御であり、
さらに、前記ランプカメラ又は前記ランプユニットから離れた位置に配設された第2のカメラを備え、前記カメラ制御部の障害抑止制御は、前記ランプユニットの点灯時に前記第2のカメラの撮像信号を前記対象物検出部に出力する制御である車両用ランプの制御装置。
【請求項2】
ランプユニットとランプカメラを備える車両用ランプにおいて、前記ランプユニットの点灯を制御するランプ制御部と、前記ランプカメラで撮像した撮像信号に基づいて対象物を検出する対象物検出部と、前記ランプカメラの撮像動作を制御するカメラ制御部を備え、前記カメラ制御部は、前記ランプユニットの光が前記ランプカメラに漏光したことによる前記対象物検出部での対象物検出の障害を抑止するための障害抑止制御を行なう構成であり、
前記ランプ制御部は前記ランプユニットを周期的に点滅し、前記カメラ制御部は前記ランプユニットが点灯されたタイミングで前記障害抑止制御を行ない、
前記カメラ制御部の障害抑止制御は、前記ランプカメラで撮像した撮像信号が前記対象物検出部に出力しないように遮断する制御であり、
前記ランプカメラ又は前記ランプユニットから離れた位置に配設された第2のカメラを備え、前記カメラ制御部の障害抑止制御は、前記ランプユニットの点灯時に前記第2のカメラの撮像信号を前記対象物検出部に出力する制御である車両用ランプの制御装置。
【請求項3】
前記ランプ制御部は前記ランプユニットの点灯を制御するランプ制御信号を出力し、前記カメラ制御部は前記ランプ制御信号に基づいて前記ランプカメラの障害抑止制御を行なう請求項
1または2に記載の車両用ランプの制御装置。
【請求項4】
前記ランプユニットは標識用のランプユニットであり、この標識用ランプユニットとは別の照明用ランプユニットを備え、前記ランプ制御部は前記対象物検出部で検出された対象物の位置情報に基づいて当該照明用ランプユニットの配光パターンと照射光軸方向の少なくとも一方を制御する請求項
3に記載の車両用ランプの制御装置。
【請求項5】
前記ランプカメラは、前記標識用ランプユニット及び照明用ランプユニットの各光が漏光することを防止するための遮光フードを備える請求項
4に記載の車両用ランプの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両のヘッドランプに適用される車両用ランプの配光を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車用ヘッドランプは、先行車や対向車あるいは歩行者(以下、対象物と称する)に対する眩惑を防止する一方で、自動車の前方領域の照明効果を高めたADB(Adaptive Driving Beam:配光可変)制御が採用されている。特許文献1では、カメラで撮像した画像から対象物が検出されたときに、当該対象物の位置を検出し、この検出した位置に基づいてランプユニットの照射領域を制御するADB制御が行なわれている。
【0003】
このようなADB制御を行なうヘッドランプでは、対象物を撮像するカメラをランプユニットに近接配置する構成がとられることがある。例えば、特許文献2には、ランプハウジングにランプユニットとカメラを内装したヘッドランプが提案されている。このようなカメラ(以下、ランプカメラと称する)をランプハウジングに内装することにより、ランプユニットの光を照射する照射光軸と、ランプカメラの撮像光軸をほぼ同じ高さ位置に設定することができる。これにより、対象物に対する各光軸の視角をほぼ同一にすることができ、ADB制御を容易することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/135356号公報
【文献】特開2019-194940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ランプユニットとランプカメラを近接配置すると、ランプユニットで発光した光の一部がランプカメラの撮像領域内に漏光されることがある。特に、ランプカメラはランプユニットと共に一つのランプハウジングに内装されているので、この種の漏光が生じ易い。このような漏光が生じると、ランプカメラで撮像する画像にいわゆるホワイトアウトとも称するカブリが生じて不鮮明なものとなり、対象物の検出性能が低下される。特許文献2では、ランプハウジングに内装されたカメラにレンズフード等の遮光構造を付設し、あるいはランプハウジングの一部に光がランプカメラ内に漏光しないようにした遮光構造を設けている。
【0006】
しかし、これらの遮光構造では漏光を完全に防止することは難しい。特に、標識用ランプのような広い範囲に向けて光を照射するランプユニット、例えばターンシグナルランプユニットを内装しているヘッドランプは、ハイビームランプユニットやロービームランプユニットに比較して自動車の左右の広い領域に向けて光を照射する構成であるためランプカメラに漏光され易い。このような漏光が生じると、ターンシグナルランプの点灯時におけるランプカメラを利用しての対象物の検出が困難になり、ヘッドランプの配光制御を好適に行なうことが難しくなる。
【0007】
本発明の目的は、ランプカメラとランプユニットを備える車両用ランプにおいて、ランプカメラにおける漏光の影響を抑止し、例えば配光制御に際して行なわれる対象物の検出を高い精度で行なうことを可能にした車両用ランプの制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用ランプの制御装置は、ランプユニットとランプカメラを備える車両用ランプにおいて、ランプユニットの点灯を制御するランプ制御部と、ランプカメラで撮像した撮像信号に基づいて対象物を検出する対象物検出部と、ランプカメラの撮像動作を制御するカメラ制御部を備える。その上で、カメラ制御部は、ランプユニットの光がランプカメラに漏光したことによる対象物検出部での対象物検出の障害を抑止するための障害抑止制御を行なうことを特徴とする。ここで、ランプ制御部はランプユニットを周期的に点滅し、カメラ制御部はランプユニットが点灯されたタイミングで防止制御を行なう形態がある。
【0009】
この障害抑止制御の形態として次の形態がある。
(1)第1の障害抑止制御の形態は、ランプカメラの撮像を停止する制御である。
(2)第2の障害抑止制御の形態は、ランプカメラで撮像した撮像信号が対象物検出部に出力しないように遮断する制御である。
(3)第3の障害抑止制御の形態は、ランプカメラで撮像した撮像信号の信号レベルを低減する制御である。
(4)第4の形態は、ランプカメラ又はランプユニットから離れた位置に配設された第2のカメラを備え、障害抑止制御はランプユニットの点灯時に第2のカメラの撮像信号を対象物検出部に出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ランプの制御装置によれば、ランプカメラとランプユニットを備える車両用ランプにおいて、ランプカメラでの漏光による対象物検出の障害を抑止することができる。特に、ランプの配光制御に際して対象物を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両用ランプとその制御装置の実施形態の概念構成図。
【
図5】Lo配光パターンとAHi配光パターンのパターン図。
【
図7】フロントカメラとランプカメラで撮像した画像の模式図。
【
図10】ランプカメラの一形態の動作タイミング図。
【
図11】ランプカメラの他の形態の動作タイミング図。
【
図12】ランプカメラのさらに他の形態の動作タイミング図。
【
図13】変形例のAHi配光パターンのパターン図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車のヘッドランプに適用した車両用ランプとその制御装置の実施形態の概念構成図である。同図において自動車CARの車体前部の左右にそれぞれヘッドランプL-HL,R-HLが装備されている。これら左右のヘッドランプL-HL,R-HLは左右が対称の構成である。なお、以降において左右のヘッドランプを合せてヘッドランプHLと総称することもある。
【0013】
図1において、自動車CARのフロントウインドFWの内側にはフロントカメラFCAMが装備されており、自動車CARの前方の所要領域を所要のフレームレートで、かつ所要の解像度で撮像することが可能である。ここでは、フロントカメラFCAMは所定の焦点距離の撮像レンズを備えており、またその撮像素子は可視光領域から赤外光領域にわたる受光感度を備えており、昼間時や夜間時に対象物を高解像度で撮像することが可能である。
【0014】
前記フロントカメラFCAMは自動車の車両ECU(電子制御ユニット)100に接続されている。この車両ECU100は本発明における制御手段として構成されており、対象物検出部101とランプ制御部102とカメラ制御部103を備えている。対象物検出部101は、フロントカメラFCAMで撮像した画像を画像解析して対象物を検出する。また、後述するランプカメラLCAMで撮像した画像を画像解析して対象物を検出することも可能である。
【0015】
ランプ制御部102は検出された対象物に基づいて前記ヘッドランプHLの点灯と配光を制御するためのランプ制御信号を生成してヘッドランプHLに出力する。なお、車両ECU100は対象物検出部101において検出した対象物に基づいて自動車CARの車速や操舵、さらには運転補助を行なうための他の制御部を備えているが、これらの制御部は本発明との関連が少ないので、その説明は省略する。カメラ制御部103は後述するように前記フロントカメラFCAMと、ランプカメラLCAMを制御する。
【0016】
前記ヘッドランプHLは、
図1に左ヘッドランプL-HLで代表して示すように、ロービームランプユニット(以下、Loランプユニット)LoLUと、ADB制御が可能なハイビームランプユニット(以下、AHiランプユニット)AHiLUと、ターンシグナルランプユニット(以下、TSランプユニット)TSLUと、クリアランスランプを兼ねるデイタイムランニングランプユニット(以下、DRランプユニット)DRLUとを含み、これらのランプユニットが一つのランプハウジング1に内装された複合型ヘッドランプとして構成されている。
【0017】
また、このランプハウジング1には、前記フロントカメラFCAMよりも高速のフレームレートで撮像を行なうランプカメラLCAMが内装されており、自動車CAMの前方領域、特にフロントカメラFCAMの撮像領域とほぼ同じ領域を撮像することが可能とされている。さらに、ランプハウジング1には、前記ランプ制御信号に基づいて前記各ランプユニットの発光(点灯)を駆動するランプ駆動モジュールLDMが内装されている。これらランプカメラLCAMとランプ駆動モジュールLDMは前記車両ECU100に接続されている。
【0018】
詳細な図示は省略するが、TSランプユニットTSLUとDRランプユニットDRLUはランプハウジング1に固定的に取り付けられている。一方、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMは、ランプハウジング1内においてそれぞれの光軸、すなわち照射光軸と撮像光軸の方向が適宜に調整可能な状態で取り付けられている。
【0019】
図2と
図3はLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMの各光軸方向を調整するための構成を示す図であり、
図2は左ヘッドランプL-HLの縦断面図、
図3は概略斜視図である。これらの図において、ランプハウジング1は、前方を開口した容器状のランプボディ11と、このランプボディ11の開口に取り付けられた透光カバー12とを備えた構成である。そして、このランプボディ11に前記したようにTSランプユニットTSLUとDRランプユニットDRLUが固定的に取り付けられており、点灯したときに透光カバー12を透して光照射を行なうように構成されている。
【0020】
ランプハウジング1内において、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMは傾動角の調整が可能なエイミングブラケット2に搭載されている。ただし、LoランプユニットLoLUとA-HiランプユニットAHiLUは、エイミングブラケット2とは別体に構成されたレベリングブラケット3に搭載されており、このレベリングブラケット3を介してエイミングブラケット2に支持されている。一方、ランプカメラLCAMはエイミングブラケット2に直接に搭載されており、このランプカメラLCAMの撮像光軸Acは当該エイミングブラケット2に対して所定の角度に向けられている。
【0021】
前記エイミングブラケット2は上下方向及び左右方向に傾動が可能なエイミング機構20によりランプボディ11に支持されている。このエイミング機構20では、エイミングブラケット2は一つの角部において支点部21によりランプボディ11に支持され、この支点部21の下方向の一部に上下エイミング調整部22が配設され、またこの支点部21の左方向の一部に左右エイミング調整部23が配設された構成とされている。支点部21と上下又は左右のエイミング調整部22,23は公知の構成が採用されているので詳細な説明は省略するが、例えばエイミングスクリューと、これに螺合されるエイミングナットで構成されている。このエイミングスクリューを治具等により操作することにより、エイミングブラケット2は支点部21を支点にして上下方向の前傾角度と水平方向の振れ角度が調整できる。
【0022】
前記レベリングブラケット3は、上下方向に傾動が可能なレベリング機構30により前記エイミングブラケット2に支持されている。このレベリング機構30では、レベリングブラケット3はその上縁部、ここでは上縁の左右2箇所においてそれぞれ支点部31,32によりエイミングブラケット2に支持されている。また、レベリングブラケット3の下縁の一部にはエイミングブラケット2に支持された前記レベリングアクチュエータLACTが連結されている。このレベリングアクチュエータLACTは、例えばレベリングスクリュー34を備える電気モータ33で構成されており、レベリングブラケット3の下縁の一部に取り付けられたレベリングナット35が螺合されている。レベリングアクチュエータLACTが回転駆動されたときにレベリングスクリュー34に螺合されているレベリングナット35が螺進され、これに伴ってレベリングブラケット3の下縁部が前後方向に移動されてその前傾角度が変化制御される。
【0023】
ここで、レベリング機構30の初期状態では、レベリングブラケット3のエイミングブラケット2に対する相対的な前傾角度は所定角度、例えば0度に設定されている。そして、この初期状態においては、レベリングブラケット3に搭載されているLoランプユニットLoLuとAHiランプユニットAHiLUの照射光軸Al,Aaは、それぞれランプカメラLCAMの撮像光軸Acと同一方向に向けられている。
【0024】
したがって、エイミング機構20によりエイミングブラケット2の傾動角度の調整を行なうことにより、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとランプカメラLCAMの各光軸Al,Aa,Acの方向を一括して調整することができる。また、レベリング機構30でレベリングブラケット3の前傾角度を変化させることにより、LoランプユニットLoLUとA-HiランプユニットAHiLUの光軸方向を同時に変化制御することができる。
【0025】
前記各ランプユニットについて簡単に説明する。
図4はヘッドランプHLの車幅方向外側の一部の概略水平断面図である。TSランプユニットTSLUはアンバー色の光を出射する構成であり、ランプハウジング1内における車幅方向の外側に向けられた領域、ここではランプカメラLCAMの隣に配設されている。このTSランプユニットTSLUは、光源としての白色光を発光するLED(発光ダイオード)71と、前記ランプボディ11に支持されたリフレクタ72と、このリフレクタ72の開口に取り付けられたアンバー色の透光性樹脂からなるインナーレンズ73を備えている。リフレクタ72の内面は例えばアルミニウム塗装により光反射面として構成されている。
【0026】
このTSランプユニットTSLUは、前記ランプ制御部103での制御によりLED71が周期的に発光され、点滅状態で点灯される。ここでは、TSランプユニットTSLUは1秒周期で点灯と消灯が交互に行なわれる。この発光によりLED71からの白色光はインナーレンズ73を透過する際にアンバー色光とされ、ヘッドランプHLから出射される。なお、TSランプユニットTSLUとして、光源がアンバー色の光を発光するLEDで構成され、インナーレンズは無色の透光性樹脂で構成されてアンバー色光を照射する構成とされてもよい。
【0027】
DRランプユニットDRLUは、
図2に一部を示したように、光源としての白色LED81と、透光性樹脂からなるライトガイド(導光体)82で構成されており、このライトガイド82はランプハウジング1内の上縁から内側縁に沿って車幅方向に延長配置されている。白色LED81はこのライトガイド82の長さ方向の端面に対向配置されており、この白色LED81からの光はライトガイド82の長さ方向に導光され、かつヘッドランプHLの正面方向に向けられたライトガイド82の側面82aを発光面として出射される構成である。
【0028】
LoランプユニットLoLUは、
図3に示したように、光源としての白色LED41の光をリフレクタ42で反射し、かつ当該光の一部をシェード43で遮光した上で照射レンズ44により前方に向けて照射する構成である。照射される光はシェード43により一部が遮光されるため、このLoランプユニットLoLUで照射する光の配光パターンは、
図5に示すように、上縁に所要のカットオフラインCOLを有する配光パターン、いわゆるロービーム配光パターン(以下、Lo配光パターンと称する)PLoとなる。
【0029】
AHiランプユニットAHiLUは、
図3に示したように、多分割LEDアレイ61と、この多分割LEDアレイ61で発光された光を前方に向けて投影する投影レンズ62を備えている。この多分割LEDアレイ61は、
図6に示すように、多数のマイクロLED発光素子(以下、ピクセル素子と称する)61pがマトリクス状(枡目状)に配列された構成である。多分割LEDアレイ61は前記ランプ駆動モジュールLDMでの制御により個々のピクセル素子51pが選択的に発光され、発光されたピクセル素子61pの光により所要の発光パターンが形成される。この発光パターンを投影レンズ62により投影することにより、
図5に示すように、前記Lo配光パターンPLoの上側領域に各ピクセル素子61pに対応した多数の単位照明領域uが合成されたADBハイビーム配光パターン(以下、AHi配光パターンと称する)PAHiが形成される。
【0030】
前記ランプカメラLCAMは少なくとも可視光領域を撮像するカメラで構成され、また前記フロントカメラFCAMと同じ焦点距離であるので、フロントカメラFCAMとほぼ同じ前方領域を撮像するように構成される。このランプカメラLCAMは前記したようにフロントカメラFCAMよりも高速のフレームレートで撮像を行なうことが可能である。その一方で、ランプカメラLCAMのコスト低減のために、その解像度はフロントカメラFCAMよりも低い構成とされている。このランプカメラLCAMは、
図1に示したように、自動車に配備されているLIN(Local Interconnect Network)ライン104を介して前記車両ECU100に接続されている。
【0031】
前記ランプカメラLCAMは、
図2~
図4に示したように、その前面、すなわち図には示されない撮像レンズが配設されている側に、前方に向けて開口寸法が徐々に増大された四角錘筒状をした遮光フード91が配設されている。この遮光フード91は円錐筒状であってもよい。また、この遮光フード91に対向する前記透光カバー12の内面には、後方に向けて突出するように当該遮光フード91よりも大きな寸法の四角筒状をした遮光スリーブ92が取り付けられている。この遮光スリーブ92はその一部が前記遮光フード91と径方向に重なるように配設されており、この構成により遮光スリーブ91と遮光フード92とで遮光ラビリンスが構成されている。
【0032】
前記ランプ駆動モジュールLDMは、車両ECU100からのランプ制御信号を受けて前記各ランプユニットTSLU,DRLU,LoLU,AHiLUの点灯を制御する機能と、AHiランプユニットAHiLUにおいて行われるAHi配光パターンのパターン形状を制御するために多分割LEDアレイ61を駆動制御する機能を備えている。
【0033】
以上の構成のヘッドランプHLは、ランプハウジング1が自動車CARの車体に取り付けられるとエイミング調整が実行される。このエイミング調整ではエイミング機構20の上下エイミング調整部22と左右エイミング調整部23を適宜に操作することにより、エイミングブラケット2の上下方向の角度と左右方向の角度が調整される。これにより、エイミングブラケット2に搭載されているLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットLAHiLuの照射光軸Al,Aaの方向と、ランプカメラLCAMの撮影光軸Acの方向はそれぞれ車体に対して特定の方向に設定される。この特定の方向はフロントカメラFCAMの撮像光軸と一致されることが好ましい。また、初期状態においては、前記したようにレベリングブラケット3のエイミングブラケット2に対する相対的な前傾角度は0度に設定されており、LoランプユニットLoLuとAHiランプユニットAHiLUの照射光軸Al,Aaと、ランプカメラLCAMの撮像光軸Acは同一方向に向けられている。
【0034】
次に、ヘッドランプHLにおける点灯制御動作について説明する。自動車CARに配設されている図示を省略した各種スイッチがオンされると、車両ECU100のランプ制御部102からランプ制御信号がランプ駆動モジュールLDMに出力される。ランプ駆動モジュールLDMはこのランプ制御信号に基づいて、対応するランプユニットを点灯制御する。例えば、デイタイムランニングスイッチがオンされるとDRランプユニットDRLUを点灯制御する。ターンシグナルスイッチがオンされるとTSランプユニットTSLUを点灯制御する。さらに、ロービームスイッチがオンされるLoランプユニットLoLUを点灯し、
図4に示したLo配光パターンPLoでの照明を行なう。
【0035】
ADBスイッチがオンされると、ランプ駆動モジュールLDMは車両ECU100からのランプ制御信号に基づいてLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUを点灯する。また、これと同時にランプ駆動モジュールLDMはランプ制御信号に基づいてAHiランプユニットAHiLUの多分割LEDアレイ61の発光制御を行い、選択的に発光されたピクセル素子61pにより発光パターンを形成し、この発光パターンを投影することにより
図4に示したAHi配光パターンPAHiの配光制御を実行する。
【0036】
このAHi配光パターンPAHiの配光制御では、車両ECU100は対象物検出部101においてフロントカメラFCAMとランプカメラLCAMで撮像した各画像に基づいて対象物を検出する。すなわち、フロントカメラFCAMとランプカメラLCAMは、点灯されたLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUの照射光により照明された前方領域を撮像する。
【0037】
図7(a)は、フロントカメラFCAMで撮像した画像を模式的に示した図である。フロントカメラFCAMは高解像度であるので、撮像された対象物Obの形状の崩れは少なく、したがって対象物検出部101はこの画像から対象物Obの形状(外形)やサイズ等を高い精度で検出することが可能である。また、フロントカメラFCAMで撮像した画像から対象物Obを直接的に検出することが難しい場合には、画像中の高輝度部(同図の点描部分)Hbを検出する。
【0038】
検出した高輝度部Hbは対象物が自発光した光によるもの、あるいは対象物で反射された光によるものである。そして、検出した高輝度部Hbの属性、例えば色、輝度(明るさ)、サイズ等を検出し、この属性を所定のテーブルを用いて対照することにより、当該輝点の対象物が他車両(先行車、対向車、自転車等)、歩行者、道路標識、あるいはその他のいずれであるかを検出する。例えば、輝度が所定の第1レベル以上である高輝度部は対象物の自発光に基づくものであるので他車両として検出できる。他車両の場合には高輝度部が白色であれば対向車であると検出し、高輝度部が赤色であれば先行車であると検出する。輝度が第1レベルよりも低い第2レベル以上の高輝度部は反射光に基づくものであるので、歩行者、道路標識として検出でき、あるいは自車で照明した路面であると検出できる。
【0039】
また、対象物検出部101はランプカメラLCAMで撮像した画像についても高輝度部Hbを検出する。
図7(b)は、ランプカメラLCAMで撮像した画像を模式的に示した図である。ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMに比較して解像度が低いので撮像された対象物Obの画像に形状の崩れが生じることがあり、対象物Obを正確に検出することが難しいことがある。しかし、ランプカメラLAMはフロントカメラFCAMと光軸が同一方向に向けられているので、各カメラで撮像した画像は1対1で対応させることができる。したがって、ランプカメラLCAMで撮像した画像の高輝度部HbをフロントカメラFCAMで撮像した画像と対照することにより、当該高輝度部Hbの対象物Obを検出することが可能になる。さらに、ランプカメラLCAMはフロントカメラFCAMよりもフレームレートが高速であるので、対象物検出部101は撮像した画像の高輝度部Hbの経時的な位置変化を検出することにより、検出した対象物Obの位置変化を高速に検出することができる。
【0040】
車両ECU100では、対象物検出部101での検出が行われるとランプ制御部102は配光制御にかかわるランプ制御信号を生成してヘッドランプHLに出力する。このランプ制御信号の生成においては、対象物に対する照明光の明るさを制御するランプ制御信号を生成する。例えば検出した対象物が道路標識の場合には照明光は減光しないランプ制御信号を生成する。対象物が歩行者の場合には照明光を所定のレベルまで減光するランプ制御信号を生成する。対象物が他車両(先行車、対向車、自転車等)の場合には照明光を最大限に減光する制御信号、通常では遮光状態とするランプ制御信号を生成する。
【0041】
一方、ランプ制御部102は、対象物の位置をAHi配光パターンPAHiの単位照明領域uに対応させ、対象物Obが含まれる単位照明領域uを判定する。この判定では、対象物の種類により、高輝度部を所定のマージンをもって囲む領域を対象物Obが含まれる領域として判定する。高解像度のフロントカメラの画像から対象物の形状、サイズが検出される場合には、この検出に基づいて単位照明領域を判定することができる。例えば、
図8に示すように、2つの白色の高輝度部Hbが所要の間隔で検出された対向車Ob1の場合には、水平方向に2つの高輝度部を含む数nxと、鉛直方向に予め設定された係数kを乗じた数my(m=k・n)を検出し、このnx×myの単位照明領域を対向車Ob1が存在する領域とする。係数kは自動車の平均的な車幅寸法と車高寸法の比率である。2つの赤色の高輝度部が所要の間隔で検出された先行車の場合もほぼ同じである。
【0042】
そして、ランプ制御部102で生成されたランプ制御信号はヘッドランプHLのランプ駆動モジュールLDMとレベリングアクチュエータLACTに出力される。ランプ駆動モジュールLDMは、このランプ制御信号に基づいてAHiランプユニットAHiLuの多分割LEDアレイ61の各発光素子61pを個別に発光制御する。すなわち、対象物が存在していると判定された単位照明領域uに対応している多分割LEDアレイ61のピクセル素子61pを判定し、この判定したピクセル素子61pを消光、減光し、その他のピクセル素子61pを発光する制御を行う。
【0043】
この配光制御により、
図8に示したように、対向車Ob1が存在する単位照明領域uでは太枠で示すように対応するピクセル素子61pを消光して照明を行なわない遮光領域Asを形成する。これにより、この斜線で示す遮光領域AsではPAHi配光パターンPAHiでの照明が行なわれず、対向車Ob1に対する眩惑が防止される。また、図示は省略するが、遮光領域Asについては、ピクセル素子61pを低光度で発光してもよく、歩行者に対しては眩惑を防止する一方で自車両の照明光による照明により歩行者を確認することができる。他の対象物の領域については、ピクセル素子61pは所定の光度で発光される。これにより、例えば、道路標識は自車両の照明光によって明るく照明できる。
【0044】
ところで、自動車CARの走行に伴い、検出する対象物の相対的な位置が経時的に変化される。そのため、対象物ObがAHi配光パターンPAHiの上縁部または下縁部に近い領域にまで移動されてきた場合にはAHi配光パターンPAHiによる照明効果が低下されることがある。このような照明効果の低下が生じたとき、車両ECU100の対象検出部101では各カメラFCAM,LCAMの画像の高輝度部から対向車Obの移動位置と、対向車Obに対する照明の低下が生じた状況を検出する。また、ランプ制御部102は、この対向車Obの上下方向の位置変化と照明の低下状況に対応して配光制御にかかわるランプ制御信号を変化してヘッドランプHLに出力する。
【0045】
ヘッドランプHLでは、このランプ制御信号によりレベリングアクチュエータLACTが駆動されてレベリング制御が行なわれ、レベリングブラケット3の前傾角度が変化制御される。さらにこれに搭載されているLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUの各照射光軸が上下方向に変化制御される。これにより、Lo配光パターンPLoとAHI配光パターンPAHiも上下方向に変化される。
【0046】
また、これと同時にランプ駆動モジュールLDMは、ランプ制御信号に基づいてAHiランプユニットAHiLUのAHi配光パターンPAHiの遮光領域(斜線領域)を制御するようにしてもよい。これにより対象物Obの上側領域又は下側領域が照明される状態になり、Lo配光パターンPLoとAHi配光パターンPAHiによる好適な照明が確保される。
【0047】
以上の配光パターン制御及びレベリング制御では、前記したように対象物検出部101はランプカメラLCAMで撮像した撮像信号から得られる画像から対象物を検出する。このとき、ランプカメラLCAMに各ランプユニットからの光が漏光されると、撮像した画像のコントラストや鮮鋭度が低下し、対象物の検出精度が低下される等の障害が生じる。
【0048】
このようなランプユニットからの漏光について、
図2に示したように、ヘッドランプHLのランプハウジング1内において、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUとDRランプユニットDRLUはランプカメラLCAMよりも前方に配設されているので、これらのランプユニットで発光された光がランプカメラLCAMに漏光することは少ない。また、実施形態では、ランプカメラLCAMには、遮光フード91と遮光スリーブ92で構成される遮光ラビリンスが設けられているので、この遮光ラビリンスによりランプカメラLCAMへの漏光をより効果的に防止することができる。
【0049】
一方、TSランプユニットTSLUはランプカメラLCAMに隣接されており、しかもランプカメラLCAMよりも後方に配置されてその光照射領域の一部は自車両の側方にまで向けられている。そのため、TSランプユニットTSLUから出射されるアンバー色光はランプハウジング1の内面、特に透光カバー12の内面や外面で種々の方向に向けて反射され、アンバー色光の一部がランプカメラLCAMに漏光されて対象物を検出する際の障害になる。特に、TSランプユニットTSLUはランプ制御部102からのランプ制御信号により周期的に点滅するので、ランプカメラLCAMで撮像した画像のコントラストや鮮鋭度がTSランプユニットTSLUの点灯周期に合せて低下されることになり、対象物を検出する際の信号処理が難しくなる。
【0050】
このような漏光による対象物検出の障害を抑止するために、
図9に示すように、車両ECU100のランプ制御部102には、TSランプユニットTSLUでの点滅を制御するための点滅信号を出力するTSタイミング部104が設けられている。また、カメラ制御部103には、このTSタイミング部から入力されるタイミング信号に基づいてランプカメラLCAMでのシャッタータイミングを制御するシャッタータイミング部105と、露光量を制御する露光量制御部106が設けられている。
【0051】
そして、漏光による障害抑止制御の一つの形態として、カメラ制御部103はランプ制御部102のTSタイミング部104から出力される点滅信号を取り込み、この点滅信号に基づいてランプカメラLCAMのシャッター動作を制御し、その撮像タイミングを制御している。
図10はそのタイミング図であり、点滅信号がOFFのとき、すなわちTSランプユニットTSLUが消灯しているタイミングのときにランプカメラLCAMの撮像を行ない、点滅信号がONのとき、すなわちTSランプユニットTSLUが点灯しているタイミングのときにランプカメラLCAMの撮像動作を停止する。
【0052】
この周期的な撮像動作の制御は、例えば、TSランプユニットTSLUが点灯しているときにランプカメラLCAMのシャッターを閉じ、TSランプユニットTSLUが消灯しているときにランプカメラLCAMのシャッターを開く機械的な制御である。
【0053】
あるいは、この障害抑止制御の形態の変形例として、TSランプユニットTSLUが点灯しているときにランプカメラLCAMで撮像した撮像信号が対象物検出部101に出力することを遮断し、TSランプユニットTSLUが消灯しているときにランプカメラLCAMで撮像した撮像信号が対象物検出部101に出力するソフト的な制御であってもよい。
【0054】
このようなカメラ制御を行なうことにより、TSランプユニットTSLUの光がランプカメラLCAMに漏光することを防止することが難しいヘッドランプHLであっても、TSランプユニットTSLUが点灯したタイミングではランプカメラLCAMによる実質的な撮像動作が停止される。これにより、対象物検出部101では漏光された状態の画像に基づいて対象物を検出することが防止され、漏光が要因となる対象物の検出精度の低下が防止できる。したがって、ランプ制御部102において行なわれるLoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUの配光制御、すなわち配光パターンの制御と、照射光軸方向の制御を適切に行うことができるようになり、好適な配光制御が実現できる。
【0055】
また、この実施形態では、ランプカメラLCAMはエイミングブラケット2に支持されておりレベリングブラケット3には支持されていないので、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUをレベリング制御してもランプカメラLCAMが傾動されることはなく、撮像光軸がほぼ一定に保たれる。したがって、レベリング制御時にランプカメラLCAMの撮像光軸の方向が変化されてTSランプユニットTSLUの光がランプカメラLCAMに漏光する抑制効果が向上できる。
【0056】
漏光による障害抑止制御の他の形態として、前記したランプカメラLCAMにおけるソフト的な撮像制御として、
図11に示すように、TSランプユニットTSLUの点滅に関わらずランプカメラLCAMは常時撮像を行なっており、TSランプユニットTSLUが点灯しているタイミング時にランプカメラLCAMで撮像した撮像信号のレベルを低下させるようにしてもよい。対象物検出部101では、ランプカメラLCAMで撮像した撮像信号の信号レベルが低下されるので、TSランプユニットTSLUによる点滅光の影響を抑制することができる。
【0057】
この障害抑止制御の場合には、TSランプユニットTSLUが点灯しているタイミング時に撮像した撮像信号の信号レベルを所定のしきい値と比較し、当該しきい値以下の撮像信号のみを取り込むようにしてもよい。このしきい値は漏光による画像品質の低下への影響が少ない信号レベルに設定される。
【0058】
また、
図10の場合のように、ランプカメラLCAMの撮像タイミングを周期的に制御する場合、あるいは撮像信号を周期的に低下させる制御の場合には、周期的に撮像信号が得られないタイミングが生じ、対象物の位置変化を連続的に検出することが難しくなる。そこで、対象物検出部101では、さらに他の障害抑止制御の形態として、
図12にタイミング図を示すように、ランプカメラLCAMからの撮像信号が入力されないタイミングにおいては、フロントカメラFCAM(本発明における第2のカメラ)で撮像した撮像信号を取り込むようにしてもよい。フロントカメラFCAMはランプカメラLCAMよりも撮像速度が低速であるが、ランプカメラLCAMで撮像が行なわれないタイミング時に画像を利用するのみであるので、対象物を検出するのに問題は生じることは少ない。これはランプカメラLCAMの撮像信号が抑制されているタイミングにおいても同様である。
【0059】
また、本発明における障害抑止制御として、ランプカメラLCAMにアンバー色光を遮光する分光フィルターを設け、TSランプユニットTSLUのアンバー色光を遮光してランプカメラに漏光することを防止するようにしてもよい。あるいは、カメラ制御部103においてランプカメラLCAMで撮像したときの撮像信号を周波数成分に分光し、アンバー色光の周波数成分を濾波して除去する制御、すなわちソフトフィルター制御を行なうようにしてもよい。このようにアンバー色光を除去して漏光を防止する形態では、ランプカメラLCAMで撮像した対向車や先行車等の対象物が発するアンバー色光を除去することになるので、対象物のアンバー色光を検出する必要がない場合に適用することが可能である。
【0060】
前記した実施形態は、LoランプユニットLoLUとAHiランプユニットAHiLUを備えた構成であるが、AHiランプユニットのみで構成されてもよい。例えば、
図6に示したAHiランプユニットAHiLUの構成として、鎖線で示すように、複数個、例えば2つの多分割LEDアレイ61が上下に配置された構成としてもよい。この場合、各多分割LEDアレイ61で構成される各AHi配光パターンPAHiが上下に接して投影されるように、例えば投影レンズ62は上下に2つの焦点を有する複合型レンズとして構成されることが好ましい。これら2つの多分割LEDアレイ61を備えることにより、
図13に示すように、上下に配列された2つのAHi配光パターンPAHiが合成された合成AHi配光パターンPAHicが形成される。この場合にはAHiランプユニットAHiLUのみがレベリングブラケット3に搭載され、レベリングアクチュエータLACTによりレベリング制御が行われることになる。
【0061】
さらに、図示は省略するが、LoランプユニットとAHiランプユニットに代えて、光源の光をDMD(Digital Micromirror Device)で選択的に反射して配光制御を行うランプユニットで構成されてもよい。また、光を走査するスキャン型のランプユニットで構成されてもよい。これらで構成する場合でも、これらのユニットのみをレベリングブラケットに搭載してレベリング制御を行なうようにすればよい。
【0062】
なお、実施形態では、低コストに構成できる高速のフレームレートで低解像度のフロントカメラと、低コストに構成できる低速のフレームレートで高解像度のランプカメラの2台のカメラを備えている。これは、高速のフレームレートで高解像度のカメラは極めて高コストであるためである。仮に、高速のフレームレートで高解像度のカメラが低コストに得られるのであれば、1台のランプカメラのみで構成してもよい。あるいは、本発明においては、ランプカメラをランプ駆動モジュールに直接接続してもよく、このようにした場合にはランプカメラはフロントカメラと同程度のフレームレートのカメラで構成されてもよい。フレームレートが低速であっても、ランプカメラで撮像して得られる撮像信号をランプ駆動モジュールで処理してランプ配光制御を行なうことにより、実質的に高速な制御が可能になる。
【0063】
また、実施形態では、エイミングブラケットを用いてエイミング調整を行なっているが、ランプユニットとランプカメラを内装したランプハウジングの全体を自動車の車体に対してエイミング調整する構成のヘッドランプに適用してもよい。この場合には、エイミングブラケットは省略し、ランプカメラをランプハウジングに支持し、ランプハウジングに対して傾動するレベリングブラケットにランプユニットを搭載するようにすればよい。
【0064】
さらに、実施形態では、車両ECUに対象物検出部、ランプ制御部、カメラ制御部が設けられているが、ヘッドランプにランプECUが配設され、このランプECUに対象物検出部、ランプ制御部、カメラ制御部が設けられるようにしてもよい。あるいは、これらの一部が設けられるようにしてもよい。この場合、ランプECUは車両ECUに接続され、両ECUの間で各信号が送受するように構成されることが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
HL(L-HL,R-HL)ヘッドランプ
LoLU Loランプユニット(ロービームランプユニット)
AHiLU AHiランプユニット(ADBハイビームランプユニット)
TSLU TSランプユニット(ターンシグナルランプユニット)
DRLU DRランプユニット(デイタイムランニングランプユニット)
FCAM フロントカメラ
LCAM ランプカメラ
LACT レベリングアクチュエータ
LDM ランプ駆動モジュール
Ob 対象物
PLo Lo配光パターン
PAHi AHi配光パターン
1 ランプハウジング
2 エイミングブラケット
3 レベリングブラケット
11 ランプボディ
12 透光カバー
20 エイミング機構
30 レベリング機構
91 遮光フード
92 遮光スリーブ
100 車両ECU(制御手段)
101 対象物検出部
102 ランプ制御部
103 カメラ制御部
104 TSタイミング部
105 シャッタータイミング部
106 露光量制御部