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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/631 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H01R13/631
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020175355
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066810
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】青樹 英二
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-027982(JP,U)
【文献】特開2006-092776(JP,A)
【文献】特開2012-234744(JP,A)
【文献】特開2005-059697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/73-13/74
H01R 13/631
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクタと第2コネクタとが互いに接合されるコネクタであって、
前記第1コネクタ又は前記第2コネクタの何れか一方は、
機器の嵌合部に嵌合されて前記機器に組付けられるコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに設けられた調心構造と、
を有し、
前記調心構造は、
前記コネクタハウジングの外周面から自由端部が外方に突出するように前記コネクタハウジングから突出形成され、前記コネクタハウジングの外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アームと、
前記可撓アームにおける前記自由端部の外側面部に形成されて前記嵌合部の内周壁に当接する円弧状面と、を備え
前記可撓アームは、前記嵌合部に対する嵌合方向の前方側が前記コネクタハウジングの外周壁に連結される基端部とされ、前記基端部から前記嵌合方向の後方側へ延在されており、その延在方向の端部が前記自由端部とされている、コネクタ。
【請求項2】
第1コネクタと第2コネクタとが互いに接合されるコネクタであって、
前記第1コネクタ又は前記第2コネクタの何れか一方は、
機器の嵌合部に嵌合されて前記機器に組付けられるコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに設けられた調心構造と、
を有し、
前記調心構造は、
前記コネクタハウジングの外周面から自由端部が外方に突出するように前記コネクタハウジングから突出形成され、前記コネクタハウジングの外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アームと、
前記可撓アームにおける前記自由端部の外側面部に形成されて前記嵌合部の内周壁に当接する円弧状面と、を備え、
前記円弧状面は、前記コネクタハウジングの中心軸を円弧中心とする、コネクタ。
【請求項3】
第1コネクタと第2コネクタとが互いに接合されるコネクタであって、
前記第1コネクタ又は前記第2コネクタの何れか一方は、
機器の嵌合部に嵌合されて前記機器に組付けられるコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに設けられた調心構造と、
を有し、
前記調心構造は、
前記コネクタハウジングの外周面から自由端部が外方に突出するように前記コネクタハウジングから突出形成され、前記コネクタハウジングの外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アームと、
前記可撓アームにおける前記自由端部の外側面部に形成されて前記嵌合部の内周壁に当接する円弧状面と、を備え、
前記可撓アームの基端部は、前記コネクタハウジングの中心軸と平行に延びる円柱状に形成される、コネクタ。
【請求項4】
インターロック回路に接続された電線の端末にそれぞれ接続されて前記第1コネクタに設けられた一対の端子と、
前記第2コネクタに設けられて前記一対の端子と接触可能なショート端子と、
を備える、請求項1~3の何れか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
フレームに嵌合されて組付けられるハウジングを備えたコネクタにおいて、フレームとの心ずれを吸収して円滑に嵌合を行わせる弾性部を有する可動接続構造を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-237657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フレームとの上下左右方向の心ずれを吸収する上記の可動接続構造では、フレームに対して軸回りの回転方向にずれがあると、フレームとの嵌合状態において、心ずれを吸収する弾性部に無理な力が付与される。すると、心ずれを吸収する弾性部が変形し、調心機能が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、嵌合状態における調心構造への無理な力の作用を抑制して調心機能を良好に維持させることが可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 第1コネクタと第2コネクタとが互いに接合されるコネクタであって、
前記第1コネクタ又は前記第2コネクタの何れか一方は、
機器の嵌合部に嵌合されて前記機器に組付けられるコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに設けられた調心構造と、
を有し、
前記調心構造は、
前記コネクタハウジングの外周面から自由端部が外方に突出するように前記コネクタハウジングから突出形成され、前記コネクタハウジングの外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アームと、
前記可撓アームにおける前記自由端部の外側面部に形成されて前記嵌合部の内周壁に当接する円弧状面と、を備え
前記可撓アームは、前記嵌合部に対する嵌合方向の前方側が前記コネクタハウジングの外周壁に連結される基端部とされ、前記基端部から前記嵌合方向の後方側へ延在されており、その延在方向の端部が前記自由端部とされている、コネクタ。
【0007】
上記(1)の構成のコネクタによれば、コネクタハウジングの外周面から自由端部が外方に突出するように突出形成されてコネクタハウジングの外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アームを備える。したがって、第1コネクタと第2コネクタとを接合させた際に、機器の嵌合部とコネクタハウジングとの間の嵌合方向と直交する方向への軸ずれを可撓アームによって良好に吸収することができる。
しかも、これらの可撓アームにおける自由端部の外側面部に、機器の嵌合部の内周壁に当接する円弧状面が形成されている。したがって、機器の嵌合部とコネクタハウジングとの間に軸回りの回転方向のずれが生じていた際に、可撓アームの自由端部の円弧状面が嵌合部の内周壁に円滑に摺接する。これにより、嵌合部の内周壁からの反力を円滑に吸収し、中心軸の軸回りの回転方向のずれを無理なく吸収することができる。また、嵌合部の内周壁からの反力が各可撓アームへ無理なく作用するので、可撓アームの変形等を抑え、調心構造による良好な調心機能を維持させることができる。
このように、嵌合方向に直交する方向のずれ及び軸回りの回転方向のずれを良好に吸収することができるので、第1コネクタと第2コネクタとの接合箇所へ無理な力が付与されず、良好な接合状態を得ることができる。
【0008】
(2) 第1コネクタと第2コネクタとが互いに接合されるコネクタであって、
前記第1コネクタ又は前記第2コネクタの何れか一方は、
機器の嵌合部に嵌合されて前記機器に組付けられるコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに設けられた調心構造と、
を有し、
前記調心構造は、
前記コネクタハウジングの外周面から自由端部が外方に突出するように前記コネクタハウジングから突出形成され、前記コネクタハウジングの外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アームと、
前記可撓アームにおける前記自由端部の外側面部に形成されて前記嵌合部の内周壁に当接する円弧状面と、を備え、
前記円弧状面は、前記コネクタハウジングの中心軸を円弧中心とする、コネクタ。
【0009】
上記(2)の構成のコネクタによれば、可撓アームの円弧状面がコネクタハウジングの中心軸を円弧中心としている。したがって、嵌合部の内周壁から可撓アームに作用する反力がコネクタハウジングの中心軸を通る直線上で作用する。したがって、各可撓アームが受ける反力がコネクタハウジングにバランス良く作用することとなり、コネクタハウジングに回転方向の無理な力が付与されるのを抑えることができる。
【0010】
(3) 第1コネクタと第2コネクタとが互いに接合されるコネクタであって、
前記第1コネクタ又は前記第2コネクタの何れか一方は、
機器の嵌合部に嵌合されて前記機器に組付けられるコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに設けられた調心構造と、
を有し、
前記調心構造は、
前記コネクタハウジングの外周面から自由端部が外方に突出するように前記コネクタハウジングから突出形成され、前記コネクタハウジングの外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アームと、
前記可撓アームにおける前記自由端部の外側面部に形成されて前記嵌合部の内周壁に当接する円弧状面と、を備え、
前記可撓アームの基端部は、前記コネクタハウジングの中心軸と平行に延びる円柱状に形成される、コネクタ。
【0011】
上記(3)の構成のコネクタによれば、可撓アームの基端部がコネクタハウジングの中心軸と平行に延びる円柱状に形成されている。したがって、嵌合部の内周壁から可撓アームの自由端部に対して様々な方向から反力が作用したとしても、可撓アームを円滑に弾性変形させて反力をバランスよく吸収することができる。
【0012】
(4) インターロック回路に接続された電線の端末にそれぞれ接続されて前記第1コネクタに設けられた一対の端子と、
前記第2コネクタに設けられて前記一対の端子と接触可能なショート端子と、
を備える、(1)~(3)の何れか一つに記載のコネクタ。
【0013】
上記(4)の構成のコネクタによれば、第1コネクタと第2コネクタとの良好な接合状態が得られるので、第1コネクタと第2コネクタとを接続した際に良好なインターロック機能を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、嵌合状態における調心構造への無理な力の作用を抑制して調心機能を良好に維持させることが可能なコネクタを提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るコネクタの全体構成を示す分解斜視図である。
図2】本実施形態に係るコネクタの接合前の状態における接合方向に沿う断面図である。
図3】本実施形態に係るコネクタの接合状態における接合方向に沿う断面図である。
図4】第1コネクタのコネクタハウジングを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は下面図である。
図5】機器に対するコネクタハウジングの組付け方を説明する斜視図である。
図6】機器にコネクタハウジングが組付けられた第1コネクタを示す図であって、(a)は上方からの斜視図、(b)は下方側からの斜視図である。
図7】機器にコネクタハウジングが組付けられた第1コネクタを示す図であって、(a)は上面図、(b)は下面図である。
図8】機器に対するコネクタハウジングの組付け状態を示す図であって、(a)は図7におけるA-A断面図、(b)は図7におけるB-B断面図である。
図9】機器に組付けられたコネクタハウジングにおける中心軸の軸回りの回転方向にずれが生じた状態を示す上面図及び一部の拡大図である。
図10】機器に組付けられた参考例に係るコネクタハウジングにおける中心軸の軸回りの回転方向にずれが生じた状態を示す上面図及び一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るコネクタの全体構成を示す分解斜視図である。図2は、本実施形態に係るコネクタの接合前の状態における接合方向に沿う断面図である。図3は、本実施形態に係るコネクタの接合状態における接合方向に沿う断面図である。
【0018】
図1図3に示すように、本実施形態に係るコネクタ10は、互いに接合される第1コネクタ20と第2コネクタ70とを備えている。
【0019】
コネクタ10は、例えば、電気自動車やハイブリッド車等に搭載される。例えば、第1コネクタ20は、駆動モータ等の機器21に設けられ、第2コネクタ70は、インバータや高圧ユニット等の機器71に設けられる。第1コネクタ20と第2コネクタ70とは、機器21と機器71とを組付けることにより互いに接合される。
【0020】
第1コネクタ20は、コネクタハウジング30を有している。このコネクタハウジング30は、機器21に形成された角孔からなる嵌合部22に嵌合されて機器21に組付けられる。嵌合部22は、四つの内周壁23を有しており、互いに対向する二つの内周壁23には、コネクタハウジング30の嵌合方向後方側の縁部に、係止爪24が形成されている。コネクタハウジング30は、第2コネクタ70側へ突出する接合部31と、嵌合部22に嵌め込まれる組付部32とを有している。
【0021】
第1コネクタ20は、インターロック回路に接続された電線35の端末にそれぞれ接続された一対の端子36を有している。端子36は、コネクタハウジング30の後端の組付部32側から挿し込まれ、接合部31に形成された端子収容部33に収容される。
【0022】
第2コネクタ70は、一対の接続タブ72が形成されたショート端子73を有している。ショート端子73は、機器71に形成された嵌合穴部75の底部に組付けられる。これにより、ショート端子73は、接続タブ72が嵌合穴部75内に突出されている。
【0023】
コネクタ10では、第2コネクタ70の嵌合穴部75に、第1コネクタ20のコネクタハウジング30の接合部31が嵌合されることにより、第1コネクタ20と第2コネクタ70とが互いに接合される。そして、この接合状態において、第2コネクタ70のショート端子73の接続タブ72が第1コネクタ20の端子36に挿し込まれて接触する。これにより、インターロック回路に接続された電線35が短絡し、インターロック回路が形成される。
【0024】
図4は、第1コネクタのコネクタハウジングを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は下面図である。
図4の(a)及び(b)に示すように、第1コネクタ20のコネクタハウジング30の組付部32は、四つの外周壁40を有する角筒状に形成されており、嵌合部22の内形よりも小さい外形を有している。組付部32には、接合部31と反対側の縁部に、外方へ張り出すフランジ部41が形成されている。
【0025】
コネクタハウジング30の組付部32は、機器21の嵌合部22に対してコネクタハウジング30の位置を調整する調心構造を有している。調心構造は、複数の可撓アーム45を備えている。これらの可撓アーム45は、それぞれの外周壁40に設けられており、コネクタハウジング30の外周方向に沿って等間隔に配置されている。これらの可撓アーム45は、コネクタハウジング30に対して、径方向へ弾性変形可能とされている。
【0026】
可撓アーム45は、外周壁40に形成された窓部42に収容されている。この可撓アーム45は、基端部51と、自由端部53とを有している。可撓アーム45は、機器21の嵌合部22に対する嵌合方向の前方側が基端部51とされ、この基端部51が外周壁40に連結されている。そして、この可撓アーム45は、機器21の嵌合部22に対する嵌合方向の後方側へ延在されており、その延在方向の端部が自由端部53とされている。
【0027】
基端部51は、コネクタハウジング30の中心軸Oと平行に延びる円柱状に形成されている。自由端部53は、その外側面部に、円弧状面55を有している。円弧状面55は、コネクタハウジング30の中心軸Oを円弧中心とした円弧面である。各可撓アーム45の円弧状面55を含む円Cは、コネクタハウジング30の組付部32の外接円及び機器21の嵌合部22の内接円のいずれよりも大きくされている。基端部51と自由端部53とは、連結部56によって一体的に連結されている。連結部56は、基端部51から自由端部53へ向かって次第に外方へ張り出すように広がる扇状に形成されている。
【0028】
次に、第1コネクタ20を機器21に組み付ける場合について説明する。
図5は、機器に対するコネクタハウジングの組付け方を説明する斜視図である。図6は、機器にコネクタハウジングが組付けられた第1コネクタを示す図であって、(a)は上方からの斜視図、(b)は下方側からの斜視図である。図7は、機器にコネクタハウジングが組付けられた第1コネクタを示す図であって、(a)は上面図、(b)は下面図である。図8は、機器に対するコネクタハウジングの組付け状態を示す図であって、(a)は図7におけるA-A断面図、(b)は図7におけるB-B断面図である。図9は、機器に組付けられたコネクタハウジングにおける中心軸の軸回りの回転方向にずれが生じた状態を示す上面図及び一部の拡大図である。
【0029】
図5図6の(a)及び(b)に示すように、第1コネクタ20を機器21に組付けるには、コネクタハウジング30を、その接合部31を向けて機器21の角孔からなる嵌合部22に挿し込み、嵌合部22に組付部32を嵌合させる。
【0030】
すると、図7の(a)及び(b)に示すように、コネクタハウジング30の組付部32は、調心構造を構成する可撓アーム45の自由端部53に形成された円弧状面55が嵌合部22の内周壁23に当接する。これにより、各可撓アーム45は、嵌合部22の内周壁23から相対的に押圧されて内側へ弾性変形される。
【0031】
図8の(a)及び(b)に示すように、嵌合部22にコネクタハウジング30の組付部32が嵌合されると、組付部32のフランジ部41が機器21の嵌合部22における縁部に係合して嵌合方向への移動が規制される。また、二つの可撓アーム45の自由端部53が嵌合部22の二つの内周壁23に形成された係止爪24に係止され、嵌合部22から抜け止めされる。これにより、第1コネクタ20のコネクタハウジング30が機器21に組付けられ、機器21から接合部31が突出された状態となる。
【0032】
機器21に組付けられた第1コネクタ20は、その接合部31を機器71に設けられた第2コネクタ70の嵌合穴部75に嵌合させることにより、第2コネクタ70に接合される。このとき、機器21と機器71との組付け公差や機器21,71の累積公差等により、第1コネクタ20と第2コネクタ70との間に軸ずれが生じる場合がある。
【0033】
ここで、機器21に組付けられた第1コネクタ20は、可撓アーム45が弾性変形することで、機器21に対して中心軸Oと直交する方向(図7の(a)におけるX方向及びY方向)へ変位可能とされている。
【0034】
したがって、第1コネクタ20と第2コネクタ70との間に軸ずれが生じていたとしても、第1コネクタ20と第2コネクタ70とが接合された際に、第1コネクタ20のコネクタハウジング30が機器21に対して中心軸Oと直交するX方向及びY方向へ変位することにより、軸ずれが吸収されて調心される。
【0035】
また、互いに接合される第1コネクタ20と第2コネクタ70とは、中心軸Oの軸回りの回転方向に対してもずれが生じる場合がある。このような回転方向のずれが生じている場合、図9に示すように、第1コネクタ20は、コネクタハウジング30の各可撓アーム45の自由端部53の円弧状面55が嵌合部22の内周壁23に摺接する。したがって、コネクタハウジング30は、嵌合部22の内周壁23からの反力Fを可撓アーム45が吸収しつつ、中心軸Oの軸回りに無理なく回動し、回転方向のずれを円滑に吸収する。このとき、可撓アーム45に作用する反力Fは、コネクタハウジング30の中心軸Oを円弧中心とする円弧状面55が嵌合部22の内周壁23に当接する箇所で生じる。これにより、各可撓アーム45には、コネクタハウジング30の中心軸Oを通るX方向の直線Lx上及び中心軸Oを通るY方向の直線Ly上で反力Fが作用する。したがって、コネクタハウジング30には、各可撓アーム45が受ける反力Fがバランス良く作用することとなる。なお、コネクタハウジング30の嵌合部22に対する回転は、組付部32の角部が嵌合部22の内周壁23に当接されることにより規制される。
【0036】
ここで、参考例に係る調心構造について説明する。
図10は、機器に組付けられた参考例に係るコネクタハウジングにおける中心軸の軸回りの回転方向にずれが生じた状態を示す上面図及び一部の拡大図である。
【0037】
図10に示すように、参考例に係る調心構造は、組付部32の各外周壁40に、弾性変形可能な平板状の可撓アーム45Aを有している。この平板状の可撓アーム45Aを有する調心構造においても、第1コネクタ20と第2コネクタ70とが接合された際に、各可撓アーム45Aが弾性変形する。これにより、第1コネクタ20のコネクタハウジング30が機器21に対して中心軸Oと直交するX方向及びY方向へ変位し、軸ずれが吸収されて調心される。
【0038】
しかし、この参考例では、第1コネクタ20と第2コネクタ70との間に回転方向のずれが生じている場合、平板状の可撓アーム45Aの角部が嵌合部22の内周壁23に当接する。したがって、可撓アーム45Aは、内周壁23からの反力Fによって捻られてしまう。また、各可撓アーム45Aには、コネクタハウジング30の中心軸Oを通るX方向の直線Lx及び中心軸Oを通るY方向の直線Lyからそれぞれ外れた位置で反力Fが偏って作用する。したがって、コネクタハウジング30には、各可撓アーム45Aが受ける反力Fによって、中心軸Oの軸回りに捻るような無理な力が生じてしまう。
【0039】
以上、説明したように、本実施形態に係るコネクタ10によれば、コネクタハウジング30の外周面から自由端部53が外方に突出するように突出形成されてコネクタハウジング30の外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アーム45を備える。したがって、第1コネクタ20と第2コネクタ70とを接合させた際に、機器21の嵌合部22とコネクタハウジング30との間の嵌合方向と直交する方向への軸ずれを可撓アーム45によって良好に吸収することができる。
【0040】
しかも、これらの可撓アーム45における自由端部53の外側面部に、機器21の嵌合部22の内周壁23に当接する円弧状面55が形成されている。したがって、機器21の嵌合部22とコネクタハウジング30との間に軸回りの回転方向のずれが生じていた際に、可撓アーム45の自由端部53の円弧状面55が嵌合部22の内周壁23に円滑に摺接する。これにより、嵌合部22の内周壁23からの反力Fを円滑に吸収し、中心軸Oの軸回りの回転方向のずれを無理なく吸収することができる。また、嵌合部22の内周壁23からの反力Fが各可撓アーム45へ無理なく作用するので、可撓アーム45の変形等を抑え、調心構造による良好な調心機能を維持させることができる。
【0041】
このように、嵌合方向に直交する方向のずれ及び軸回りの回転方向のずれを良好に吸収することができるので、第1コネクタ20と第2コネクタ70との接合箇所へ無理な力が付与されず、良好な接合状態を得ることができる。
【0042】
しかも、可撓アーム45の円弧状面55がコネクタハウジング30の中心軸Oを円弧中心としている。したがって、嵌合部22の内周壁23から可撓アーム45に作用する反力Fがコネクタハウジング30の中心軸Oを通る直線Lx,Ly上で作用する。したがって、各可撓アーム45が受ける反力Fがコネクタハウジング30にバランス良く作用することとなり、コネクタハウジング30に回転方向の無理な力が付与されるのを抑えることができる。
【0043】
また、可撓アーム45の基端部51がコネクタハウジング30の中心軸Oと平行に延びる円柱状に形成されている。したがって、嵌合部22の内周壁23から可撓アーム45の自由端部53に対して様々な方向から反力Fが作用したとしても、可撓アーム45を円滑に弾性変形させて反力をバランスよく吸収することができる。
【0044】
このように、コネクタ10によれば、第1コネクタ20と第2コネクタ70との良好な接合状態が得られるので、第1コネクタ20と第2コネクタ70とを接続した際に良好なインターロック機能を得ることができる。
【0045】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 第1コネクタ(20)と第2コネクタ(70)とが互いに接合されるコネクタ(10)であって、
前記第1コネクタ(20)又は前記第2コネクタ(70)の何れか一方は、
機器(21)の嵌合部(22)に嵌合されて前記機器(21)に組付けられるコネクタハウジング(30)と、
前記コネクタハウジング(30)に設けられた調心構造と、
を有し、
前記調心構造は、
前記コネクタハウジング(30)の外周面から自由端部(53)が外方に突出するように前記コネクタハウジング(30)から突出形成され、前記コネクタハウジング(30)の外周方向に沿って等間隔に設けられた複数の可撓アーム(45)と、
前記可撓アーム(45)における前記自由端部(53)の外側面部に形成されて前記嵌合部(22)の内周壁(23)に当接する円弧状面(55)と、を備える、コネクタ(10)。
[2] 前記円弧状面(55)は、前記コネクタハウジング(30)の中心軸(O)を円弧中心とする、[1]に記載のコネクタ(10)。
[3] 前記可撓アーム(45)の基端部(51)は、前記コネクタハウジング(30)の中心軸(O)と平行に延びる円柱状に形成される、[1]又は[2]に記載のコネクタ。
[4] インターロック回路に接続された電線(35)の端末にそれぞれ接続されて前記第1コネクタ(20)に設けられた一対の端子(36)と、
前記第2コネクタ(70)に設けられて前記一対の端子(36)と接触可能なショート端子(73)と、
を備える、[1]~[3]の何れか一つに記載のコネクタ(10)。
【符号の説明】
【0047】
10:コネクタ
20:第1コネクタ
21,71:機器
22:嵌合部
30:コネクタハウジング
35:電線
36:端子
45:可撓アーム
51:基端部
53:自由端部
55:円弧状面
70:第2コネクタ
73:ショート端子
O:中心軸
図1
図2
図3
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図8
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図10