(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02M 26/20 20160101AFI20240611BHJP
F02M 26/21 20160101ALI20240611BHJP
F02M 26/40 20160101ALI20240611BHJP
F02M 26/41 20160101ALI20240611BHJP
F02M 26/70 20160101ALI20240611BHJP
【FI】
F02M26/20
F02M26/21
F02M26/40
F02M26/41 311
F02M26/70 311
F02M26/70 351
(21)【出願番号】P 2020175748
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰久
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-040961(JP,U)
【文献】特開2013-217238(JP,A)
【文献】特開2008-057359(JP,A)
【文献】特開2005-180309(JP,A)
【文献】特開平10-266903(JP,A)
【文献】特開2016-033347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/08-47/10
F02M 26/00-26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気バルブで開閉される吸気ポートが形成されたシリンダヘッドに、前記吸気ポートの下方
部に位置してクランク軸線方向に長いEGR分配通路と
、クランク軸線方向視で前記EGR分配通路を下方から覆う形態のウォータジャケットと、前記EGR分配通路からEGRガスを
前記吸気ポートに噴出させるEGRガス噴出口とが形成されており、
かつ、前記シリンダヘッドのうち前記吸気ポートの下方
部で前記EGR分配通路が形成されている部位に、
前記吸気バルブが開いているときのみ前記EGR分配通路と吸気ポートとを連通させて前記EGRガス噴出口からEGRガスを
前記吸気ポートに噴出させる制御バルブが装着されている、
内燃機関。
【請求項2】
前記制御バルブは、
クランク軸線と平行な軸心回りに回転するロータリー式であって、前記EGRガス噴出口からの噴出量を制御できるように前記シリンダヘッドに対して
前記軸心方向にスライド可能に装着されている、
請求項1に記載した内燃機関。
【請求項3】
前記EGR分配通路は、前記制御バルブを兼用するパイプで構成されている、
請求項2に記載した内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGR装置を備えた内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリン機関やディーゼル機関のような内燃機関において、燃費向上や排気ガス浄化促進等のために排気ガスの一部をEGRガスとして吸気系に還流させることは広く行われている。EGRガスの還流は、スロットルバルブが全開でないパーシャル運転領域で行われているが、EGR分配通路を介して複数の吸気ポートが連通していると、スロットルバルブを全開した運転領域において慣性過給の効果が減殺される現象がある。
【0003】
この点について特許文献1には、吸気ポートのうち下流側の部位を隔壁(仕切り板)で仕切られた上下の通路に形成すると共に、吸気ポートのうち隔壁よりも上流側の部位にEGRガスを下向きに噴出させる噴出口を設け、かつ、吸気ポートの内部のうち隔壁よりも上流側の部位に、パーシャル運転領域において、EGRガスを吸気ポートに噴出させると共に、隔壁で仕切られた上下の通路のうち下方の通路を塞ぐロータリーバルブを配置することが開示されている。
【0004】
この特許文献1においては、パーシャル運転領域では、吸気が隔壁の上方の通路を流れることによってタンブル流の生成が強化されると共に、EGRガスを取り込んで燃費向上等を図ることができる一方、全開運転領域では、吸気ポートの内部空間を吸気通路としてフルに利用することによって出力を確保し、かつ、EGRガス噴出口をロータリーバルブで塞ぐことにより、各吸気ポートがEGR分配通路を介して連通する現象を無くして、慣性過給を利用した吸気の押し込みを確実化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、上記のとおり、EGRガスの導入はパーシャル領域で行われているが、例えばEGRガスをサージタンクに噴出させる構成であると、吸気通路においてEGRガスが流れる経路が長くなることにより、吸気通路に溜まっているEGRガスの量が多くなるため、パーシャル領域で急減速すると、EGRガスの割合が多くなり過ぎて失火を招来するおそれがあり、そこで、EGRガスを還流させるにおいては、急減速しても失火が生じない量に設定している。
【0007】
これに対して、特許文献1のようにEGRガスを吸気ポートに噴出させると、噴出したEGRガスはすぐに気筒に流入して吸気系にEGRガスが残留することはないため、急減速させてもEGRガスの割合が多くなりすぎることはない。従って、許容限度いっぱいのEGRガスを還流させることができて、燃費向上等に貢献できるといえる。
【0008】
しかし、特許文献1のように吸気ポートの内部にロータリーバルブを配置すると、吸気のスムースな流れがロータリーバルブによって損なわれるおそれがある。また、多気筒内燃機関では、各気筒の行程の順序は決まっているため、特許文献1では、ロータリーバルブには、各気筒に対応した複数箇所にそれぞれ連通穴等を形成することになり、この場合、例えば3気筒であると、連通穴等を周方向に120度ずらして配置するというように、周方向にずれた複数の部位にEGRガスが通る連通穴などを形成せねばならないが、吸気が流れていない吸気ポートのEGRガス噴出口をロータリーバルブで塞ぎ得るのか、疑問である。
【0009】
すなわち、特許文献1は単気筒の内燃機関には適用できるが、多気筒内燃機関に問題なく適用できるか否か疑問である。更に、特許文献1では、ロータリーバルブは各吸気ポートを貫通して配置されているため、吸気の漏洩を防止するシール構造が必要になる問題や、ロータリーバルブの外径を吸気ポートの高さ寸法よりも大きい寸法に設定せねばならないため、シリンダヘッドの強度が低下するおそれがあるといった問題も懸念される。
【0010】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明はEGR装置を備えた内燃機関に係り、この内燃機関は、
「吸気バルブで開閉される吸気ポートが形成されたシリンダヘッドに、前記吸気ポートの下方部に位置してクランク軸線方向に長いEGR分配通路と、クランク軸線方向視で前記EGR分配通路を下方から覆う形態のウォータジャケットと、前記EGR分配通路からEGRガスを前記吸気ポートに噴出させるEGRガス噴出口とが形成されている」
という一群の構成を備えている。
【0012】
そして、請求項1の発明では、上記一群の構成に加えて、
「かつ、前記シリンダヘッドのうち前記吸気ポートの下方部で前記EGR分配通路が形成されている部位に、前記吸気バルブが開いているときのみ前記EGR分配通路と吸気ポートとを連通させて前記EGRガス噴出口からEGRガスを前記吸気ポートに噴出させる制御バルブが装着されている」
という構成を備えている。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記制御バルブは、クランク軸線と平行な軸心回りに回転するロータリー式であって、前記EGRガス噴出口からの噴出量を制御できるように前記シリンダヘッドに対して前記軸心方向にスライド可能に装着されている」
という構成になっている。
【0014】
更に、請求項3の発明は、請求項2において、
「前記EGR分配通路は、前記制御バルブを兼用するパイプで構成されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、EGR分配通路も制御バルブもシリンダヘッドに内蔵されているため、全体をコンパクト化できる。また、吸気ポートに噴出したEGRガスは速やかに気筒に流入して吸気系に滞留することはないことから、失火を防止しつつ許容限度いっぱいのEGRガスを取り込むことが可能であり、これにより、EGRガスの還流量を増大させて燃費の向上に大きく貢献できる(例えば、従来はEGRガス量の割合は15%程度が限度であったが、本願発明では30%程度まで高めることが可能であり、この場合は、7%程度の燃費向上効果を享受できる。)。
【0016】
そして、EGR分配通路及び制御バルブは吸気ポートの下方部に配置されているため、制御バルブによって吸気の流れが阻害されることはなく、吸気のスムースな流れを保持できる。また、EGR分配通路及び制御バルブは吸気ポートを貫通していないため、吸気の漏洩の問題は皆無であり、また、強度低下も防止できる。
【0017】
更に、制御バルブは、いずれの吸気ポートの箇所でも、EGRガス噴出口を塞いだ状態と開いた状態とを他の吸気ポートの箇所とは関係なく保持できるため、EGR分配通路を介して各吸気ポートが連通している状態を無くして、各気筒ごとに吸気系を独立させることができる。これにより、全開運転領域での慣性過給効果を確実化できる。また、EGR分配通路も制御バルブも吸気ポートの制約は受けないため、必要以上の大きさにする必要はない。この面でも、シリンダヘッドの強度低下を防止できる。
【0018】
さて、特許文献1では、パーシャル運転領域には、隔壁で仕切られた上下の通路のうち上段の通路に吸気が流れるため、EGR分配通路は、必然的に吸気ポートの上方部に形成せねばならない。しかし、吸気ポートの上方部には、インジェクタやばね受け部、ラッシュアジャスタ用オイル通路などがあって、EGR分配通路を形成するスペースが確保しにくい場合も多い。
【0019】
これに対して本願発明では、EGR分配通路及び制御バルブを吸気ポートの下方部に配置しているが、吸気ポートの下方部には、EGR分配通路や制御バルブを配置する上で障害になるような要素は存在しておらず、従って、設計の融通性も高い。また、本願発明では、EGR分配通路がウォータジャケットによって下方から覆われているため、EGRガスの冷却性を格段に向上できる。従って、EGRクーラを廃止することも可能になる。
【0020】
請求項2の構成を採用すると、制御バルブを軸方向にスライドさせることによって吸気ポートに対するEGR分配通路の還流量を制御できるため、制御バルブにEGRバルブ機能を持たせることができる。従って、それだけ構造を簡単化できる。
【0021】
更に、請求項3の発明では、EGR分配通路と制御バルブとEGRバルブとが一体化した状態になるため、コンパクト化を更に促進できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(A)は第1実施形態をクランク軸線方向から見た縦断正面図、(B)は(A)の部分拡大図である。
【
図2】第1実施形態を示す図で、(A)は模式的な概略平面図、(B)は(A)のB-B視断面図、(C)は(A)のC-C視断面図、(D)は(A)のD-D視断面図、(E)は制御バルブ兼用EGR分配通路の部分斜視図である。
【
図3】(A)は
第1参考例の縦断正面図、(B)は
第2参考例の縦断正面図、(C)は
第3参考例の縦断正面図、(D)は(C)のD-D視断面図である。
【
図4】
第4参考例を示す図で、(A)は縦断正面図、(B)は(A)のB-B視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向はクランク軸線方向、左右方向はクランク軸線及びシリンダボア軸線と直交した方向として定義している。前と後ろについては、カム軸を駆動するタイミングチェーンが配置されている側を前、トランスミッションが配置されている側を後ろとしている。念のため、
図2に方向を明示している。
【0024】
(1).第1実施形態の基本構造
まず、
図1,2に示す第1実施形態を説明する。
図2(A)のとおり、本実施形態の内燃機関は3気筒である。
図1に示すように、内燃機関は、シリンダブロック1とその上面に固定されたシリンダヘッド2とを備えており、シリンダブロック1には3つのシリンダボア3が一列に並べて形成されて、これらにそれぞれピストン(図示せず)が摺動自在に嵌まっている。
図2(A)に示すように、シリンダブロック1及びシリンダヘッド2の前面には、カム軸を駆動するためのタイミングチェーン(図示ぜす)を覆うフロントカバー4が固定されている。
【0025】
シリンダヘッド2は、各シリンダボア3と同心の凹所(燃焼室)5が形成されており、吸気ポート6と排気ポート7とが凹所5に開口している。吸気ポート6及び排気ポート7は1つの気筒の箇所に前後一対ずつ形成されており、吸気ポート6は吸気バルブ8で開閉され、排気ポート7は排気バルブ9で開閉される。バルブ8,9はばね10,11で上向きに付勢されており、ばね10,11はばね受け部12a,12bで支持されている。
【0026】
本実施形態では、
図2(A)のとおり、一対の吸気ポート6はそれぞれ全長に亙って独立しており、その始端はシリンダヘッド2の吸気側面2aに開口している。また、シリンダヘッド2の吸気側面2aには吸気マニホールド13が固定されている。吸気マニホールド13における1本の枝管と一対の吸気マニホールド9とはセットになっており、1本の枝管から一対の吸気ポート6に送気される。
【0027】
各吸気ポート6には、インジェクタ14から燃料が斜め下向きに噴射される。インジェクタ14は吸気マニホールド13に取り付けているが、シリンダヘッド2に取り付けることも多い。燃料が吸気ポート6の下面に付着するポートウエット現象を防止するためには、インジェクタ14をできるだけ吸気ポート6の内部に入り込ませて、燃料を吸気ポート6の出口に向けて(燃焼室に向けて)噴射するのが有効であるが、この場合は、インジェクタ14はシリンダヘッド2に取り付けることになる。
【0028】
シリンダヘッド2のうち凹所5の中央部にはイグニッションホール15が開口しており、イグニッションホール15に点火プラグ(図示せず)が装着されている。
【0029】
シリンダヘッド2のうち吸気ポート6の下方部でかつ凹所5に近い部位に吸気側下部ウォータジャケット16が形成され、凹所5の上方部にはセンターウォータジャケット17が形成され、排気ポート7の下方部には排気側下部ウォータジャケット18が形成されている。また、図示していないが、排気ポート6の上方部には排気側上部ウォータジャケットが形成されている。ウォータジャケットの態様は様々であり、例えば、センターウォータジャケット17と排気側下部ウォータジャケット18とが連通している場合もある。
【0030】
(2).EGR装置
シリンダヘッド2のうち吸気ポート6の下方部に、クランク軸線方向に長く延びるEGR分配通路20を形成している。EGR分配通路20は、シリンダヘッド2に空けた通路用穴21に金属製のパイプ22を挿通することによって構成されており、シリンダヘッド2には、EGR分配通路20からEGRガスを吸気ポート6に噴出させるためのEGRガス噴出口23が形成されている。
【0031】
なお、EGRガス噴出口23は鋳造に際して形成してもよいし、
図1に一点鎖線23aで示すように、ドリル加工によって形成してもよい。ドリル加工で形成する場合は、外向きに開口した部分はプラグで塞ぐことになる。EGRガス噴出口23は円形に形成しているが、角形等の他の形状であってもよい。
【0032】
そして、パイプ22のうち各吸気ポート6に対応した部位には、EGRガスをEGRガス噴出口23に送るための連通穴24が空いている。
図2(E)に示すように、連通穴24は角形のスリット状に形成されているが、様々な形状を選択できる。パイプ22は吸気用カム軸(図示せず)と同期して回転するように設定されており、各吸気ポート6の箇所において、吸気バルブ8が開いているときのみ、連通穴24がEGRガス噴出口23に開口するように設定されている。
【0033】
4サイクル3気筒内燃機関では、各気筒の行程はクランク軸の回転角度では240度ずつずれており、カム軸はクランク軸の1/2に減速されて回転する。そして、カム軸のカムは、周方向に120度ずつずれた状態で形成されている。従って、
図2(B)(C)(D)に示すように、各気筒に対応したパイプ22の連通穴24は、周方向に120度ずつずれた状態に形成されている。従って、EGR分配通路20は特定の1つの気筒の吸気ポート6のみに連通しており、EGR分配通路20を介して複数の気筒の吸気ポート6が連通する状態は生じない。
【0034】
パイプ22を回転駆動する方法は様々な態様を選択できるが、一例として、
図2(A)に示すように、パイプ22の一端部をシリンダヘッド2の前方に突出させて、前向き突出部22aに従動スプロケット25を固定し、タイミングチェーンで駆動される主動スプロケット(図示せず)で駆動することが可能である。主動スプロケットの歯数と従動スプロケット25の歯数とを選択することにより、パイプ22をカム軸と同期して駆動できる。
【0035】
パイプ22は、タイミングチェーンで駆動することに代えてカム軸で駆動してもよい(この場合、吸気用のカム軸と排気用のガム軸とは等速回転しているので、パイプ22を排気用のカム軸で駆動することも可能である。)。或いは、電動モータで駆動することも可能である。
【0036】
図2(A)から理解できるように、シリンダヘッド2の後端部には、排気側面に開口したEGR取り込み通路26が左右方向に長い姿勢で形成されており、EGR取り込み通路26の終端(下流端)とパイプ22とは互いに連通している。
【0037】
そして、EGR分配通路を構成するパイプ22は、電磁式等のアクチュエータ27により、軸方向にスライド可能に保持されている。従って、パイプ22がスライドすると、連通穴24とEGRガス噴出口23との重合面積が変化して、EGRガスの吐出量を制御できる。すなわち、EGR分配通路を構成するパイプ22がEGRバルブの機能を果たしている。アクチュエータ27として電動モータを採用し、電動モータを正逆回転させてパイプ22をスライドさせることも可能である。
【0038】
パイプ22はスライドするので、これを駆動する従動スプロケット25は、図示しない保持部材により、回転自在でスライド不能に保持されており、パイプ22の前向き突出部22aと従動スプロケット25とは、スプライン嵌合等により、一体に回転しつつ相対的にスライドするように保持されている。
【0039】
以上のとおり、いずれかの吸気ポート6において吸気バルブ8が開くと、これに連動して、EGRガスが連通穴24及びEGRガス噴出口23を通って吸気ポート6に噴出する。そして、吸気バルブ8が閉じきる前にEGRガスの噴出は停止しており、従って、EGRガスが吸気ポート6に残留することはない。
【0040】
従って、パーシャル運転領域において急減速してもEGRガスの割合が過剰に高くなることはなくて、許容限度いっぱいのEGRガスを取り込むことができる。これにより、失火を防止した状態でEGRガスの取り込み量を増大させて、燃費を向上できる。また、複数の吸気ポート6がEGR分配通路20を介して連通することはないため、全開運転領域での慣性過給効果を享受できて、高出力を得ることができる。
【0041】
なお、連通穴24とEGRガス噴出口23との重合面積は、徐々に拡大してから最大面積になり、それから徐々に縮小していく。従って、EGRガスの噴出量は概ね吸気バルブ8の開度に連動している。この面からも、EGRガスが吸気バルブ8に残留することはない。本実施形態では、EGRガス噴出口23の形状や連通穴24の形状を工夫することにより、EGRガスの噴出量や噴出タイミングをきめ細かく調整できる。
【0042】
本実施形態では、パイプ22は、EGR分配通路20と制御バルブの機能とEGRバルブとの機能を併有しているため、それだけ構造を簡単化できる利点がある。なお、パイプ22のうち各連通穴24を挟んだ前後両側にそれぞれオイルシールのようなシールリングを装着して、シールリングを通路用穴21の内面に当接させてもよい。この場合は、熱変形などに起因してパイプ22に曲がりが発生しても、その曲がりを吸収して円滑に回転及びスライドさせることができる。
【0043】
吸気ポート6の上方部には、ばね受け部12aやインジェクタ14などの要素があるため、EGR分配通路20を配置するスペースがない場合が多いが、実施形態のように、EGR分配通路20を吸気バルブ8の下方部に配置すると、他の要素が存在しない部位を有効利用してEGR分配通路20を形成できる利点がある。
【0044】
図1に示すように、本実施形態では、吸気側下部ウォータジャケット16はEGR
分配通路20を下方から覆う形態に形成している。従って、吸気側下部ウォータジャケット16によってEGRガスを冷却できるが、吸気側下部ウォータジャケット16は前後方向に長く延びているため、EGRガスの冷却性を格段に向上できる。従って、EGRクーラを廃止することも可能になる。
【0045】
(3).
参考例
次に、
図3,4に示す
参考例を説明する。
図3に示す各
参考例では、EGR
分配通路20と制御バルブ28とを別構造としている。
図3(A)に示す
第1参考例では、EGR
分配通路20と制御バルブ28とは、EGR
分配通路20が吸気側面2aの側に位置するようにして左右に配置している。
【0046】
制御バルブ28は棒状の形態であり、シリンダヘッド2に形成された前後長手のバルブ穴29に回転自在でスライド自在に配置されている。そして、シリンダヘッド2のうち各EGRガス噴出口23に対応した部位に、EGR分配通路20と取り付け穴29とを繋ぐ吐出穴30を形成し、かつ、制御バルブ28には、吐出穴30とEGRガス噴出口23とを繋ぐための連通溝31を形成している。なお、EGRガス噴出口23と吐出穴30とは、第1実施形態と同様にドリル加工で形成できる(他の参考例も同様である。)。
【0047】
吐出穴30とEGRガス噴出口23との広がり角度θは約120度に設定している一方、連通溝31の広がり角度は180度程度に設定している。各気筒に対応した連通溝31は、周方向に120度ずつずれた状態に形成されている。連通溝31は周方向に180度程度に広がっているが、吐出穴30とEGRガス噴出口23との広がり角度θは約120度であるため、EGRガスの噴出は、各気筒の行程に合わせて120度間隔で行われる。従って、複数の吸気バルブ8がEGR分配通路20を介して連通することはない。
【0048】
図3(B)に示す
第2参考例では、EGR
分配通路20は制御バルブ28の斜め下方に配置されており、吐出穴30とEGRガス噴出口23とは同心になっている。そして、制御バルブ28には、軸心を横切る連通穴24が形成されている。この場合、連通穴24の入口部24aと出口部24bとを扇形に形成することにより、EGRガスの噴出時間を長く取れるように配慮している。
【0049】
図3(C)(D)に示す
第3参考例では、EGR
分配通路20と制御バルブ28とは
第2参考例と同じレイアウトになっているが、制御バルブ28は、回転不能で軸方向にスライド自在となっている。そして、EGRガス噴出口23に、吐出穴30とEGRガス噴出口23とを繋ぐ環状連通溝32を形成している。
【0050】
この参考例では、各気筒に対応した環状連通溝32は、いずれかの環状連通溝32が吐出穴30及びEGRガス噴出口23に連通した状態では、他の環状連通溝32は吐出穴30及びEGRガス噴出口23に連通しない状態になっており、かつ、いずれの環状連通溝33も吐出穴30及びEGRガス噴出口23に連通していない状態が存在している。
【0051】
従って、制御バルブ28を軸方向にスライドさせるだけで、EGRガスの噴出を制御できる。1気筒及び2気筒の内燃機関の場合、有益である。
【0052】
上記の
参考例では、制御バルブ
28を前後方向に長い姿勢に形成したが、
図4に示す
第4参考例では、各吸気ポート6の箇所ごとに電磁式の制御バルブ34を配置している。この
参考例では、シリンダヘッド2に、EGRガス噴出口23と同心でかつEGRガス噴出口23よりも大径の弁穴35を形成し、弁穴35に、電磁ソレノイドで駆動される弁体36をスライド自在に嵌め入れている。
【0053】
弁体36は、EGR分配通路20を横切るロッド36aを有していると共に、外周に向けて開口した連通溝37を周方向に点在させている。そして、弁体36が前進しきった状態では、弁体36が弁穴35とEGRガス噴出口23との間の段部38に重なることによりEGRガスの流れは遮断されており、弁穴35が後退すると、EGRガスは連通溝37を通ってEGRガス噴出口23に流れていく。制御バルブ28は、シリンダヘッド2に空けた取り付け穴39に密嵌するボス部40を備えている。
【0054】
この参考例でも、弁体36の前進量を制御することにより、EGRガスの噴出量を制御できる。すなわち、制御バルブ34をEGRバルブとして機能させることができる。この参考例では、制御バルブ34はパーシャル運転領域においてのみ、吸気バルブ8の動きに連動させて駆動したらよい。
【0055】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明は、EGR装置を備えた内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0057】
2 シリンダヘッド
5 凹所
6 吸気ポート
8 吸気バルブ
13 吸気マニホールド
14 インジェクタ
20 EGR分配通路
21 通路用穴
22 EGR分配通路と制御バルブとEGRバルブとを兼用するパイプ
23 EGRガス噴出口
24 連通穴