(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】無線測定装置、無線測定システム、及び無線測定方法
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20240611BHJP
【FI】
H04W16/18 110
(21)【出願番号】P 2020176663
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 良太
(72)【発明者】
【氏名】関口 悦博
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛人
(72)【発明者】
【氏名】久保 和寿
(72)【発明者】
【氏名】坂口 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亮介
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0312774(US,A1)
【文献】特開2014-23129(JP,A)
【文献】特表2018-514103(JP,A)
【文献】特開2005-57633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線測定装置であって、
前記無線測定装置の位置情報を出力する自己位置推定部と、
前記無線測定装置の周辺の構造データを出力する周辺環境認識部と、
受信した無線信号の
電力値を含む品質情報を出力する無線測定部と、
前記無線測定装置の周辺の地図情報と、
前記自己位置推定部と前記周辺環境認識部と前記無線測定部とから出力されたデータを処理するデータ処理部と、
前記データ処理部で処理されたデータを出力する出力部とを備え、
前記データ処理部は、
所定時間内の、前記受信した無線信号の電力値の中央値と上振れ値と下振れ値を計算し、
前記中央値と前記上振れ値の差、及び前記中央値と前記下振れ値の差に基づいて、フェージングの影響を計算し、
前記自己位置推定部から出力された位置情報と、前記計算されたフェージングの影響とを、
前記位置情報の測定時刻と前記品質情報の測定時刻で関連付け、
前記出力部は、前記フェージングの影響と、前記周辺環境認識部から出力された構造データとを前記地図情報に重畳した表示データを生成することを特徴とする無線測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線測定装置であって、
前記無線測定部は、
受信した無線信号の周波数を変換し、
前記周波数が変換された無線信号をデジタルサンプリングしてIQデータを抽出し、
前記抽出されたIQデータを所定の時間間隔で区切り、
前記所定の時間間隔内のチャネル電力値を計算し、前記無線信号の品質情報として出力することを特徴とする無線測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線測定装置であって、
前記データ処理部は、前記位置情報と前記無線品質情報とを測定時刻で関連付けたデータを記録することを特徴とする無線測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線測定装置であって、
前記出力部は、
前記位置情報と関連付けられた無線品質情報と、前記地図情報と、前記構造データとを重畳した表示データを生成し、
さらに、前記無線品質情報の値によって異なる表示態様の図形及び前記無線品質情報の値の少なくとも一方を表示するための表示データを生成することを特徴とする無線測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無線測定装置であって、
前記データ処理部は、
前記受信した無線信号の電力値の最大値に所定の値を乗じた値から中央値を減じて前記上振れ値を計算し、
前記受信した無線信号の電力値の中央値から最小値に所定の値を乗じた値を減じて前記下振れ値を計算することを特徴とする無線測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の無線測定装置であって、
前記データ処理部は、前記位置情報と、前記計算された中央値と上振れ値と下振れ値とを測定時刻で関連付けたデータを記録することを特徴とする無線測定装置。
【請求項7】
無線測定システムであって、
無線測定装置と、計算機とを備え、
前記無線測定装置は、
前記無線測定装置の位置情報を出力する自己位置推定部と、
前記無線測定装置の周辺の構造データを出力する周辺環境認識部と、
受信した無線信号の
電力値を含む品質情報を出力する無線測定部とを有し、
前記計算機は、
前記無線測定装置の周辺の地図情報と、
前記自己位置推定部と前記周辺環境認識部と前記無線測定部とから出力されたデータを処理するデータ処理部と、
前記データ処理部で処理されたデータを出力する出力部とを有し、
前記データ処理部は、
所定時間内の、前記受信した無線信号の電力値の中央値と上振れ値と下振れ値を計算し、
前記中央値と前記上振れ値の差、及び前記中央値と前記下振れ値の差に基づいて、フェージングの影響を計算し、
前記自己位置推定部から出力された位置情報と、前記計算されたフェージングの影響とを、
前記位置情報の測定時刻と前記品質情報の測定時刻で関連付け、
前記出力部は、前記フェージングの影響と、前記周辺環境認識部から出力された構造データとを前記地図情報に重畳した表示データを生成することを特徴とする無線測定システム。
【請求項8】
無線測定システムが実行する無線測定方法であって、
前記無線測定システムは、移動可能な無線測定装置を少なくとも有し、
前記無線測定システムは、前記無線測定装置の周辺の地図情報を有し、
前記無線測定方法は、
前記無線測定装置の位置情報を出力する自己位置推定手順と、
前記無線測定装置の周辺の構造データを出力する周辺環境認識手順と、
受信した無線信号の
電力値を含む品質情報を出力する無線測定手順と、
前記自己位置推定手順と前記周辺環境認識手順と前記無線測定手順とで出力されたデータを処理するデータ処理手順と、
前記データ処理手順で処理されたデータを出力する出力手順とを備え、
前記データ処理手順では、
所定時間内の、前記受信した無線信号の電力値の中央値と上振れ値と下振れ値を計算し、
前記中央値と前記上振れ値の差、及び前記中央値と前記下振れ値の差に基づいて、フェージングの影響を計算し、
前記自己位置推定手順で出力された位置情報と、前記計算されたフェージングの影響とを、
前記位置情報の測定時刻と前記品質情報の測定時刻で関連付け、
前記出力手順では、前記フェージングの影響と、前記周辺環境認識手順で出力された構造データとを前記地図情報に重畳した表示データを生成することを特徴とする無線測定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の無線測定方法であって、
前記無線測定システムは、所定の演算処理が可能な演算装置を有し、
前記演算装置は、前記自己位置推定手順と前記周辺環境認識手順と前記無線測定手順とで出力されたデータを取得し、
前記演算装置は、前記周辺環境認識手順で出力された構造データを変換して、伝搬シミュレータに入力し、
前記演算装置は、伝搬シミュレータによって伝搬シミュレーションを実行し、
前記演算装置は、前記伝搬シミュレーションの結果によって、新しい無線測定計画を立案するための情報を出力することを特徴とする無線測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線測定装置、無線測定システム、及び無線測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線測定システムであって、位置情報と無線品質情報を測定する技術を記載した文献として特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、自装置の位置情報が外部から入力されるごとに、利用している無線装置から受信電力測定結果である受信電力情報を取得する受信電力測定I/F部と、受信電力情報に基づいてRSSIを生成し、位置情報と関連付けて記憶部に格納する通信品質判定部と、ユーザーから支持を受けた場合に、記憶部に格納されているRSSIおよび位置情報と、置局対象エリアの地図情報と、に基づいて、置局対象エリア内の通信可能エリアと通信不能エリアを示すエリア内通信品質判定結果を生成する判定結果出力I/F部と、を備える置局設計装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された置局設計装置は、受信電力情報と位置情報とを関連付けて記憶部に格納し、通信品質判定部が置局対象エリア内の通信可能エリアと通信不能エリアを示す通信品質判定結果を生成するものであるが、WiFiやローカル5Gが主に設置される屋内環境では、GPSによる高精度な位置情報の取得が困難であり、受信電力情報と位置情報の関連付けが困難である点について何ら考慮されていない。また、無線エリア評価には電波測定と共に伝搬シミュレーションも有効であることが知られているが、伝搬シミュレーションに入力される対象エリアの構造データの収集について何ら考慮されていない。さらに、通信品質判定におけるフェージングによる影響の評価について何ら考慮されていない。
【0006】
本発明は、前述した実情を鑑みてなされたものであり、無線品質情報と位置情報と構造情報を同時に測定することによって測定に要する作業量を削減することを目的とする。さらに、本発明は、無線品質情報と位置情報と構造情報を重畳して表示でき、構造情報を伝搬シミュレーションに入力することによってシミュレーションに要する作業量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、無線測定装置であって、前記無線測定装置の位置情報を出力する自己位置推定部と、前記無線測定装置の周辺の構造データを出力する周辺環境認識部と、受信した無線信号の電力値を含む品質情報を出力する無線測定部と、前記無線測定装置の周辺の地図情報と、前記自己位置推定部と前記周辺環境認識部と前記無線測定部とから出力されたデータを処理するデータ処理部と、前記データ処理部で処理されたデータを出力する出力部とを備え、前記データ処理部は、所定時間内の、前記受信した無線信号の電力値の中央値と上振れ値と下振れ値を計算し、前記中央値と前記上振れ値の差、及び前記中央値と前記下振れ値の差に基づいて、フェージングの影響を計算し、前記自己位置推定部から出力された位置情報と、前記計算されたフェージングの影響とを、前記位置情報の測定時刻と前記品質情報の測定時刻で関連付け、前記出力部は、前記フェージングの影響と、前記周辺環境認識部から出力された構造データとを前記地図情報に重畳した表示データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明における無線測定システムは、無線品質情報と位置情報と構造情報を同時に測定し、測定結果を重ねて可視化し表示することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る無線測定システムの概略構成を示す図である。
【
図2】第一実施形態に係る無線測定部が実行する処理のフローチャートである。
【
図3】第一実施形態に係るデータ処理部が実行する処理のフローチャートである。
【
図4】第一実施形態に係る情報テーブルの構成例を示す図である。
【
図5】第一実施形態に係る出力表示部による測定結果の表示例を示す図である。
【
図6】伝搬シミュレーション評価を行う手順を示すフローチャートである。
【
図7】第二実施形態に係る無線測定部が実行する処理のフローチャートである。
【
図8】第二実施形態に係るデータ処理部によるフェージング影響度合いの計算方法を示す図である。
【
図9】第二実施形態に係る情報テーブルの構成例を示す図である。
【
図10】第二実施形態に係る出力表示部による測定結果の表示例を示す図である。
【
図11】第三実施形態に係る無線測定システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は実施の形態に分割して説明する。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。なお、以下の実施の形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0011】
また、以下の実施の形態における各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウエアとして実現してもよい。また、後述する各構成、機能、処理部、処理手段等は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現してもよい。すなわち、ソフトウエアとして実現しても良い。各構成、機能、処理部、処理手段等を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納できる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
<第一実施形態>
[システム構成]
本発明の第一実施形態は、一体の無線測定装置として構成される無線測定システムに係るものである。
【0014】
図1は、第一実施形態に係る無線測定システム100の概略構成を示す図である。無線測定システム100は、自己位置推定部101と、周辺環境認識部102と、無線測定部103と、地図情報104と、データ処理部105と、出力表示部106で構成される。自己位置推定部101は、無線測定システム100の位置情報を取得する機能を有し、例えば、屋内環境で位置情報を取得できる装置であるトラッキングカメラや、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)などで構成できる。周辺環境認識部102は、無線測定システム周辺の構造物の形状に関わる情報を、点群データや距離画像の形式で周辺構造情報として取得する機能を有し、例えば、LiDAR、レーザスキャナ、ステレオカメラなど構成できる。無線測定部103は無線信号の品質情報を取得する機能を有し、その処理内容は
図2を用いて説明する。地図情報104は、無線測定システム100で調査する該当エリアに関する地図情報である。地図情報104は、無線測定システム100に予め準備されるものでも、周辺環境認識部102が取得したデータによって作成されるものでもよい。データ処理部105は、位置情報と周辺構造情報と無線品質情報とを関連付けて処理する機能を有し、その処理内容は
図3を用いて説明する。出力表示部106は、データ処理部105の処理結果を可視化する表示データを出力する。
【0015】
図2は、無線測定部103が実行する処理のフローチャートである。無線測定部103は、ある周波数帯の無線信号(例えば、パイロットチャンネル)を受信する待ち受け動作を開始する(201)。次に、無線測定部103は、受信した無線信号の周波数を変換するダウンコンバートして(202)、ダウンコンバートした信号をデジタルサンプリングして、IQデータを保存する(203)。次に、無線測定部103は、デジタルIQデータを所定の時間間隔ごとに区切り(204)、所定の時間間隔ごとに区切られたデータの無線品質情報を計算する(205)。例えば、無線品質情報としてチャネル電力値を計算する。以上に説明した処理を(例えば周期的に)繰り返し実行する。なお、無線測定部103は、デジタルサンプリングされたIQデータから無線品質情報を取得するのではなく、無線受信機から出力されるRSSI(受信信号強度)を取得してもよい。
【0016】
図3は、データ処理部105が実行する処理のフローチャートである。データ処理部105は、自己位置推定部101が出力する自己位置情報を取得し(301)、周辺環境認識部102が出力する周辺構造情報を取得し(302)、無線測定部103が出力する無線品質情報を取得する(303)。次に、データ処理部105は、取得した自己位置情報と無線品質情報とを、測定された時刻情報が一致する情報同士で関連付け、情報テーブル400に格納する。情報テーブル400の詳細は
図4を用いて説明する。無線測定システム100による測定を終了する命令が入力されたかを判定し(305)、測定を終了するまで、以上に説明した処理を(例えば周期的に)繰り返し実行する。測定が終了したら、出力表示部106は、周辺構造情報と、関連付けられた位置情報及び無線品質情報とを地図情報に重ねて表示するための表示データを生成し、出力する(306)。
【0017】
図4は、データ処理部105が実行する処理に用いる情報テーブル400の構成例を示す図である。情報テーブル400は、測定時刻情報と、位置情報(例えば、X、Y、Zの座標値)と、無線品質情報を記録する。位置情報と無線品質情報とは、それぞれが測定された時刻情報が一致するもの同士を関連付けてテーブルに格納すされる。
【0018】
図5は、出力表示部106が出力する表示データによって表示される測定結果の例を示す図であり、無線測定を行った屋内環境における測定エリアの地図情報500を表す。測定エリア内には、周辺構造情報から生成される実際に配置されている構造物の情報501が表示される。また必須ではないが、送信局の位置502を表示してもよい。この測定エリア内に、
図4に示す情報テーブル400に記録された情報に基づいて、無線品質情報を、例えば丸印の図形503で表示する。無線品質情報の値によって図形の表示態様(例えば、色、形状、模様)を代えて、無線品質情報を可視化するとよい。また、無線品質情報は図形の表示態様と共に数値を表示してもよく、図形の表示態様を変えずに図形の近傍に数値を表示してもよい。このような態様の表示によって、無線品質情報を分かりやすく表示できる。
【0019】
図6は、
図1に示した無線測定システム100を用いて測定データを取得し、取得した測定データに基づいて、測定エリア内の伝搬シミュレーション評価を行う手順を示すフローチャートである。本実施形態の無線測定システム100を用いた測定によって、測定データとして位置情報、無線品質情報、及び周辺構造情報を取得する(601)。次に、測定データから、周辺構造情報を抽出し(602)、伝搬シミュレータへ入力可能な形式へ変換する(603)。例えば、点群データ形式の周辺構造情報をCAD形式へ変換して、構造物の位置を地図上に描けるようにする。次に、形式が変換された周辺構造情報を用いて伝搬シミュレーションを行い、結果を評価する(604)。伝搬シミュレーションの評価結果に基づいて、次回の測定計画を立案し(605)、当該計画に従って測定する(606)。以上に説明した手順の繰り返しによって、無線測定エリアを効率的に評価できる。
【0020】
以上に説明した構成及び処理によって、第一実施形態の無線測定システム100では、少ない作業量で無線測定エリアを測定し評価できる。また、無線品質情報を周辺構造情報と共に可視化するので、高精度で理解しやすく無線品質情報表示できる。さらに、測定によって得られた周辺構造データを用いた伝搬シミュレーションによって、少ない作業量で伝搬シミュレーションにおける三次元構造データを作成できる。
【0021】
<第二実施形態>
第二実施形態は、第一実施形態で示した構成を用いて、無線品質情報としてフェージングの影響度合いを測定する。第二実施形態では、前述した第一実施形態との相違点を主に説明し、同じ構成及び処理には同じ符号を付しで、それらの説明は省略する。
【0022】
図7は、第二実施形態に係る無線測定部103が実行する処理のフローチャートである。第二実施形態では、無線品質情報としてフェージングの影響度合いを計算して数値化し、地図情報にマッピングする。無線測定部103は、ある周波数帯の無線信号(例えば、パイロットチャンネル)を受信する待ち受け動作を開始する(701)。次に、無線測定部103は、受信した無線信号の周波数を変換する周波数変換(ダウンコンバート)をして(702)、周波数変換された信号をデジタルサンプリングして、IQデータを抽出する(703)。次に、無線測定部103は、デジタルIQデータを所定の時間間隔ごとに区切り(704)、所定の時間間隔ごとに区切られたデータの無線品質情報を計算する(705)。無線品質情報の計算方法の詳細は、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0023】
図8は、データ処理部105によるフェージング影響度合いの計算方法を示す図であり、縦軸を電力、横軸を時間として、無線信号を表すグラフである。まず、無線信号を、所定の時間間隔t1、t2、…のように区切る。そして、ある時間区間内の中央値を計算する。更に、上振れ値及び下振れ値を計算する。上振れ値及び下振れ値は、受信した無線信号の電力値の増減幅の程度を表す値である。例えば、上振れ値は、所定の時間区間内の電力値の時系列値において、中央値から最大値の所定割合(例えば95%値)に該当する値を決定する。同様に、下振れ値は、所定の時間区間内の電力値の時系列値において、中央値から最小値の所定割合(例えば95%値)に該当する値を決定する。前述した以外の方法によって、電力の最大値及び最小値を用いる方法で上振れ値及び下振れ値を決定してもよい。
【0024】
図9は、フェージング影響度合いと位置情報を関連付けて格納する情報テーブル900の構成例を示す図である。
図9に示す情報テーブル900は、
図4に示す情報テーブル400と同様に、位置情報と無線品質情報をそれぞれ取得した時刻情報で関連付けて、情報を格納する。具体的には、情報テーブル900は、測定時刻情報と、位置情報(例えば、X、Y、Zの座標値)と、
図8で示す無線品質情報(例えば、中央値、上振れ値、下振れ値)を格納する。
【0025】
図10は、第二実施形態において出力表示部106が出力する表示データによって表示される測定結果の例を示す図であり、無線測定を行った屋内環境における測定エリアの地図情報1000を表す。測定エリア内には、周辺構造情報から生成される実際に配置されている構造物の情報1001が表示される。また必須ではないが、送信局の位置1002を表示してもよい。この測定エリア内に、
図9に示す情報テーブル900に記録された情報に基づいて、無線品質情報(フェージング影響度合い)を、例えば丸い図形1003で表示する。丸図形の色情報などによって、フェージング影響度合いを可視化する。無線品質情報の値によって図形の表示態様(例えば、色、形状、模様)を代えて、無線品質情報を可視化するとよい。例えば、情報テーブル900に記録された上振れ値から中央値を減じた差の値によって図形の表示態様を変えて可視化するとよい。また、無線品質情報は図形の表示態様と共に数値を表示してもよく、図形の表示態様を変えずに図形の近傍に数値を表示してもよい。
【0026】
以上に説明した構成及び処理によって、第二実施形態の無線測定システム100は、少ない作業量で無線測定エリアを測定し評価できる。また、無線品質情報としてよく用いられる電波強度の情報に加えて、フェージングの強弱を可視化し、構造情報と共に地図情報にマッピングして表示できる。これによって、安定した無線エリアを設計できる。
【0027】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態は、移動可能な無線測定装置と固定的に設置される計算機とが別体に構成される無線測定システム100に係るものである。第三実施形態では、前述した第一実施形態及び第二実施形態との相違点を主に説明し、同じ構成及び処理には同じ符号を付して、それらの説明は省略する。
【0028】
図11は、第三実施形態に係る無線測定システム100の概略構成を示す図である。無線測定システム100は、自己位置推定部101と、周辺環境認識部102と、無線測定部103とを有する無線測定装置110と、地図情報104と、データ処理部105と、出力表示部106とを有するサーバ120とで構成される。無線測定装置110とサーバ120との間は通信可能に接続される。自己位置推定部101と、周辺環境認識部102と、無線測定部103と、地図情報104と、データ処理部105と、出力表示部106との構成は、前述した第一実施形態と同じでよい。また、データ処理部105は、第一実施形態のように受信信号強度をマッピングしても、第二実施形態のようにフェージング影響度合いをマッピングしてもよい。
【0029】
以上に説明した構成及び処理によって、第三実施形態の無線測定システム100は、移動する無線測定装置110を小型軽量にできる。また、サーバ120は高い演算能力の演算装置を使用できるので、高精度かつ短時間で処理を実行できる。
【0030】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0031】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウエアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウエアで実現してもよい。
【0032】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0033】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0034】
100 無線測定装置
101 自己位置推定部
102 周辺環境認識部
103 無線測定部
104 地図情報
105 データ処理部
106 出力表示部
110 無線測定装置
120 サーバ