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特許7502149高周波コネクタの製造方法および高周波コネクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】高周波コネクタの製造方法および高周波コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20240611BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20240611BHJP
   H01R 24/40 20110101ALI20240611BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H01R43/02 A
H01R24/40
H01B13/00 521
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020178178
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069162
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 勲
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-297493(JP,A)
【文献】特開2000-012184(JP,A)
【文献】特開2004-030971(JP,A)
【文献】米国特許第04746784(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
H01R 24/38-24/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を覆う絶縁体の外周が編組により覆われたケーブルの前記芯線にインナ端子を接続し、
前記インナ端子を収容するインナハウジングのインナ端子収容室に前記インナ端子を装着し、
前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体から延出する円筒状のシールドスリーブを、前記インナ端子の装着と同時に前記絶縁体と前記編組との間に挿入し、
前記編組の外周にはんだペーストを塗布し、
加締め部材の編組加締め片を前記はんだペーストが塗布された前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させて加締めた後、
レーザ照射装置から出射するレーザ光を前記編組加締め片の外周から周方向に走査して前記はんだペーストを溶融固化させて前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを電気的に接合する、
ことを特徴とする高周波コネクタの製造方法。
【請求項2】
前記ケーブル、前記シールドスリーブおよび前記編組加締め片を、前記芯線を回転中心として回転し、前記レーザ光を前記編組加締め片の外周から周方向に走査する、
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波コネクタの製造方法。
【請求項3】
芯線を覆う絶縁体の外周が編組により覆われたケーブルの前記芯線に接続されるインナ端子と、
インナ端子収容室に前記インナ端子を収容するインナハウジングと、
前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体から延出して前記絶縁体と前記編組との間に挿入される円筒状のシールドスリーブと、
編組加締め片が前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させ且つ前記編組を前記シールドスリーブの外周に密着させる程度で前記シールドスリーブを変形させないように加締められた加締め部材と、
前記シールドスリーブと前記編組加締め片との間で溶融固化されて前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを電気的に接合したはんだと、
を備え
前記シールド本体とは別部材の前記シールドスリーブは、編組覆われ部と、前記編組覆われ部よりも大径の嵌入部と、を備え、前記嵌入部は前記シールド本体に嵌め込まれ、前記編組覆われ部は、前記絶縁体と前記編組との間に挿入され且つ前記はんだによって前記編組及び前記編組加締め片と電気的に接合される、
とを特徴とする高周波コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波コネクタの製造方法および高周波コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
シールド電線(ケーブル)を用いて伝送される電気信号の高周波化に伴って、このケーブルに接続される高周波コネクタにも高周波特性の向上の要求が高まっている。
例えば特許文献1に開示されるシールドコネクタ(高周波コネクタ)は、シールド電線の絶縁体とシールド導体(編組)の間に、導電性金属からなる円筒状スリーブが配置される。そして、シールド電線に接続された内導体端子(インナ端子)が、外導体端子(雌シールド部材)の嵌合筒部内に収容される。外導体端子のシールド導体圧着部(編組加締め片)が、円筒状スリーブに対応する位置で、シールド電線のシールド導体に加締められると共にシース圧着部(被覆加締め片)が、シールド電線のシース(被覆)に加締められる。以上により、外導体端子とシールド導体は、シールド導体の内側に円筒状スリーブが位置した状態で電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-302824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外導体端子とシールド導体との接続は、シールド導体圧着部による加締め接続であり、加締めた状態では、シールド導体圧着部、円筒状スリーブ、シールド導体および絶縁体が、特許文献1の図7で示されているように、断面が円形状ではなくなる。すると、シールド電線における信号導体(芯線)と円筒状スリーブとの間の半径方向の距離が、円筒状スリーブの周方向で異なる。その結果、上記のシールドコネクタにおいては、インピーダンスが、コネクタの編組加締め部で乱れることになり、伝送性能が低下する虞がある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、伝送性能の低下を防止することができる高周波コネクタの製造方法および高周波コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 芯線を覆う絶縁体の外周が編組により覆われたケーブルの前記芯線にインナ端子を接続し、前記インナ端子を収容するインナハウジングのインナ端子収容室に前記インナ端子を装着し、前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体から延出する円筒状のシールドスリーブを、前記インナ端子の装着と同時に前記絶縁体と前記編組との間に挿入し、前記編組の外周にはんだペーストを塗布し、加締め部材の編組加締め片を前記はんだペーストが塗布された前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させて加締めた後、はんだ接合装置を用いて前記はんだペーストを溶融固化させて前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを電気的に接合する、ことを特徴とする高周波コネクタの製造方法。
【0007】
上記(1)の構成の高周波コネクタの製造方法によれば、ケーブルの絶縁体と編組との間に、円筒状のシールドスリーブが挿入される。ケーブルは、芯線の外周を円柱状の絶縁体が覆い、その絶縁体の外周をさらに編組が覆っている。シールド本体から延出するシールドスリーブの編組覆われ部は、同軸で配置される絶縁体と編組との間で、同心円に配置される。シールドスリーブは、所定の強度を有するとともに、良好な導電性を有する金属からなる。
内周側にシールドスリーブが挿入された編組は、外周側からはんだペーストが塗布される。はんだペーストが塗布された編組は、その上から加締め部材の編組加締め片が加締め付けられる。この際、編組加締め片は、編組の下に位置するシールドスリーブを変形させない程度の加締め力で、シールドスリーブの外形状に沿う円筒状に塑性変形されて加締め付けられる。
即ち、シールドスリーブ、編組および編組加締め片は、同心円状に配置されて組み付けられる。この状態で、はんだペーストは、編組加締め片の外側からはんだ接合装置により加熱されて溶融された後、自然冷却されて固化する。はんだペーストは、溶融することにより一部が編組の編み組み(目)を通過してシールドスリーブに達する。はんだペーストは、固化することによりはんだとなり、所定の強度でシールドスリーブ、編組および編組加締め片を一体的に接合(ろうづけ)する。
このように、本構成の高周波コネクタの製造方法では、固化したはんだが所定強度でシールドスリーブの編組覆われ部、編組および編組加締め片を一体的に接合するので、編組加締め片を加締める際、円筒状のシールドスリーブに変形が生じる程の大きな加締め力を加える必要がなくなる。
したがって、本構成の高周波コネクタの製造方法によれば、シールドスリーブに変形がなく、編組覆われ部が円筒状となる。そこで、コネクタの編組加締め部では、芯線と編組覆われ部の距離が、周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることを防止でき、伝送性能の低下を防止できる高周波コネクタを得ることができる。
【0008】
(2) 前記はんだ接合装置にレーザ照射装置を使用し、前記レーザ照射装置から出射するレーザ光を前記編組加締め片の外周から周方向に走査して前記はんだペーストを溶融固化させる、ことを特徴とする上記(1)に記載の高周波コネクタの製造方法。
【0009】
上記(2)の構成の高周波コネクタの製造方法によれば、レーザ照射装置からのレーザ光が、編組加締め片の外周から周方向に走査される。編組加締め片は、はんだペーストが塗布された編組の上からシールドスリーブに沿って加締め付けられている。編組加締め片は、照射されるレーザ光により加熱され、はんだペーストの融点よりも高温になると、下層で接触しているはんだペーストを溶融させる。
この際、レーザ光は、編組加締め片の外周から周方向に走査されることにより、編組加締め片が円周方向で均一に加熱される。つまり、コネクタの編組加締め部におけるはんだの溶融や接合を周方向で均一化することができる。その結果、シールドスリーブと編組の電気接続信頼性を向上させることができる。
【0010】
(3) 前記ケーブル、前記シールドスリーブおよび前記編組加締め片を、前記芯線を回転中心として回転し、前記レーザ光を前記編組加締め片の外周から周方向に走査する、ことを特徴とする上記(2)に記載の高周波コネクタの製造方法。
【0011】
上記(3)の構成の高周波コネクタの製造方法によれば、ケーブルおよび加締め部材が、芯線の中心を回転中心として回転される。これにより、レーザ照射装置のレーザ光は、定位置で編組加締め片の外周を照射するのみで、編組加締め片の周方向に走査されることになる。
なお、レーザ光の走査は、ケーブルおよび加締め部材を回転するのに加え、芯線に沿う方向にケーブルおよび加締め部材を移動することにより、編組加締め片の全周を、芯線に沿う所望の距離で加熱することができる。
本構成の高周波コネクタの製造方法では、被加熱対象となるケーブルおよび加締め部材が回転されるので、レーザ照射装置におけるレーザ光の照射方向を移動するのに比べ、設備構成の簡素化が可能となる。
【0012】
(4) 芯線を覆う絶縁体の外周が編組により覆われたケーブルの前記芯線に接続されるインナ端子と、インナ端子収容室に前記インナ端子を収容するインナハウジングと、前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体から延出して前記絶縁体と前記編組との間に挿入される円筒状のシールドスリーブと、編組加締め片が前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させて加締められた加締め部材と、前記シールドスリーブと前記編組加締め片との間で溶融固化されて前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを電気的に接合したはんだと、を備えることを特徴とする高周波コネクタ。
【0013】
上記(4)の構成の高周波コネクタによれば、溶融固化されたはんだにより、シールドスリーブの編組覆われ部と編組と編組加締め片とが、所定の強度で一体的に接合されている。このため、はんだが介在しない従来構造のように、編組とシールドスリーブとを電気的に接合するために、大きな力で編組加締め片を加締め付けてシールドスリーブの編組覆われ部を変形させてしまうことがない。
これにより、コネクタの編組加締め部において、シールドスリーブの編組覆われ部が加締められた状態でも、編組覆われ部は、円筒状が維持される。よって、コネクタの編組加締め部では、芯線と編組覆われ部の距離が、周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることがない。その結果、本構成の高周波コネクタによれば、伝送性能の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る高周波コネクタの製造方法および高周波コネクタによれば、伝送性能の低下を防止することができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る高周波コネクタの製造方法により製造された雄高周波コネクタと雌高周波コネクタの嵌合前の斜視図、(b)は(a)の嵌合後の斜視図である。
図2】(a)は図1に示した雌高周波コネクタの分解斜視図、(b)は図1に示した雄高周波コネクタの分解斜視図である。
図3】嵌合した雌高周波コネクタと雄高周波コネクタの芯線に沿う方向の断面図である。
図4】雌高周波コネクタの要部分解斜視図である。
図5】雄高周波コネクタの要部分解斜視図である。
図6】雌インナ端子の接続工程から雌シールド本体の挿入工程までを示す手順説明図である。
図7】編組の縮径工程からレーザ光の照射工程までを示す手順説明図である。
図8】(a)は雌シールドアッセンブリが取り付けられたケーブルの側面図、(b)は(a)の芯線に沿う方向の断面図である。
図9】ケーブルの端末に取り付けられた雌シールド本体と雌加締め部材の芯線に沿う方向の要部断面図である。
図10図9のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
図1の(a)は本発明の一実施形態に係る高周波コネクタの製造方法により製造された雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23の嵌合前の斜視図、図1の(b)は図1の(a)の嵌合後の斜視図である。
本実施形態に係る高周波コネクタの製造方法は、ケーブル11の端末に高周波コネクタを取り付けた高周波コネクタ付きケーブルを得る際の製造方法である。ケーブル11としては、例えば同軸ケーブルが用いられる。
なお、雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23の説明において、同一の構成部材には同一の符号を付して説明する部分がある。
【0018】
[同軸ケーブル]
ケーブル11は、中心側より、芯線13、絶縁体15、編組17、および被覆19より構成される(図4参照)。導電性を有する芯線13は、単線、複数の素線を撚った撚り線のいずれであってもよい。絶縁体15は、電気絶縁性を有して芯線13を覆う。編組17は、導電性を有して絶縁体15の外周を覆う。被覆19は、電気絶縁性を有して編組17の外周を覆う。
【0019】
なお、本実施形態において、ケーブル11は、編組17を有する同軸ケーブルであるが、編組17を有するケーブルであればその他の構成は限定されない。
【0020】
ケーブル11に接続される高周波コネクタは、図1に示すように、雄高周波コネクタ21と、雌高周波コネクタ23とに分けられる。本実施形態に係る高周波コネクタの製造方法は、雄高周波コネクタ21及び雌高周波コネクタ23のいずれにも用いることができる。本発明に係る構成の主要部は、雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23とでほぼ同一である。以下の説明では、主に雌高周波コネクタ23を代表例として本発明に係る構成の主要部を説明する。先ず、雄高周波コネクタ21の概略を説明する。
【0021】
[雄高周波コネクタ]
図2の(a)は図1に示した雌高周波コネクタ23の分解斜視図、図2の(b)は図1に示した雄高周波コネクタ21の分解斜視図である。
雄高周波コネクタ21は、雄アウタハウジング25と、雄サイドスペーサ27と、雄シールドアッセンブリ29とにより構成される。雄アウタハウジング25は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。雄サイドスペーサ27は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。雄アウタハウジング25は、被ロック部31(図1参照)が設けられたフード部33を有している。
【0022】
図3は嵌合した雌高周波コネクタ23と雄高周波コネクタ21の芯線13に沿う方向の断面図である。
雄アウタハウジング25には、前後方向で貫通する端子収容室35が成形されている。雄アウタハウジング25には、端子収容室35に突出するように、弾性係止片37(可撓ランス)が形成されている。また、雄アウタハウジング25には、端子収容室35の一部を、端子挿入方向と交差方向に横断するスペーサ挿入孔39が形成されている。
【0023】
雄シールドアッセンブリ29は、雄インナ端子41と、雄インナハウジング43と、雄シールドアウタ端子45とにより構成される。雄インナ端子(インナ端子)41は、導電性を有する金属によりタブ状或いはピン状に形成されている。雄インナハウジング(インナハウジング)43は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。雄シールドアウタ端子45は、導電性を有する金属により筒状或いは一対の挟持片状に形成されている。雄シールドアッセンブリ29は、ケーブル11の端末に接続されている。
【0024】
雄アウタハウジング25の端子収容室35には、ケーブル11の端末に接続された雄シールドアッセンブリ29が挿入される。端子収容室35に挿入された雄シールドアッセンブリ29は、雄シールドアッセンブリ29に設けられた係止突起47が端子収容室35の弾性係止片37に係止されることにより、雄アウタハウジング25の端子収容室35に保持される。
【0025】
雄アウタハウジング25のスペーサ挿入孔39には、雄サイドスペーサ27が端子収容室35を横断する方向に挿入されるようにして組み付けられる。雄シールドアッセンブリ29が装着された雄アウタハウジング25では、ケーブル11に図3の右方向の引っ張り力が加わった際、モーメントにより、係止突起47と弾性係止片37の係止が解除されるように、弾性係止片37が弾性変形しようとする。このとき、雄サイドスペーサ27は、弾性係止片37の弾性変形を規制して、雄シールドアッセンブリ29の係止突起47と弾性係止片37の係止状態を確実なものとしている。
【0026】
[雌高周波コネクタ]
図2及び図3に示すように、雌高周波コネクタ23は、雌アウタハウジング49と、雌サイドスペーサ51と、雌シールドアッセンブリ53とにより構成される。雌アウタハウジング49は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。雌サイドスペーサ51は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。雌アウタハウジング49は、ロック突起55が設けられた弾性変形可能なロックアーム57を有している。
【0027】
雌アウタハウジング49には、前後方向で貫通する端子収容室35が成形されている。雌アウタハウジング49には、端子収容室35に突出するように、弾性係止片37(可撓ランス)が形成されている。また、雌アウタハウジング49には、端子収容室35の一部を、端子挿入方向と交差方向に横断するスペーサ挿入孔39が形成されている。
【0028】
雌シールドアッセンブリ53は、雌インナ端子59と、雌インナハウジング61と、雌シールドアウタ端子63とにより構成されている。雌インナ端子(インナ端子)59は、導電性を有する金属により筒状に形成されている。雌インナハウジング(インナハウジング)61は、電気絶縁性を有する合成樹脂により成形される。雌シールドアウタ端子63は、導電性を有する金属により筒状或いは一対の挟持片状に形成されている。雌シールドアッセンブリ53は、ケーブル11の端末に接続される。
【0029】
雌アウタハウジング49の端子収容室35には、ケーブル11の端末に接続された雌シールドアッセンブリ53が挿入される。雌アウタハウジング49の端子収容室35に挿入された雌シールドアッセンブリ53は、雌シールドアッセンブリ53に設けられた係止突起47が端子収容室35の弾性係止片37に係止されることにより、雌アウタハウジング49の端子収容室35に保持される。
【0030】
雌アウタハウジング49のスペーサ挿入孔39には、雌サイドスペーサ51が端子収容室35を横断する方向に挿入されるようにして組み付けられる。雌シールドアッセンブリ53が装着された雌アウタハウジング49では、ケーブル11に図3の左方向の引っ張り力が加わった際、モーメントにより、係止突起47と弾性係止片37の係止が解除されるように、弾性係止片37が弾性変形しようとする。このとき、雌サイドスペーサ51は、弾性係止片37の弾性変形を規制して、雌シールドアッセンブリ53の係止突起47と弾性係止片37の係止状態を確実なものとしている。
【0031】
雌アウタハウジング49は、雄アウタハウジング25との正規嵌合を検知して保証する嵌合検知部材65(CPA:Connector Position Assurance)を備える。嵌合検知部材65は、雌アウタハウジング49の側面にコネクタ嵌合方向で、仮係止位置と本係止位置に移動自在に取り付けられる。嵌合検知部材65は、雌アウタハウジング49と雄アウタハウジング25が嵌合完了したときに、すなわち、雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23が嵌合完了したときに、仮係止位置から本係止位置(嵌合保証位置)に移動が可能となる。
【0032】
[雄高周波コネクタと雌高周波コネクタの嵌合]
上記の雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23とは、図1(b)及び図3に示すように、嵌合されることになる。雄高周波コネクタ21のフード部33に、雌高周波コネクタ23が挿入されて、雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23が嵌合されると、ロックアーム57のロック突起55が、被ロック部31と係合する。これにより、雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23とは、嵌合状態が維持される。
【0033】
嵌合状態において、雌アウタハウジング49に設けられる嵌合検知部材65は、仮係止位置から図3に示す本係止位置へ移動される。嵌合検知部材65は、被ロック部31に係合しているロック突起55に、検知アーム67の先端に設けられている検知部69が係合することにより、雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23との正規嵌合を検知する。また、嵌合検知部材65は、雄高周波コネクタ21と雌高周波コネクタ23との正規嵌合を検知した本係止位置に移動される。すると、ロックアーム規制部71が、ロックアーム57のロック解除片73の解除空間に挿入され、ロックアーム57のロック解除を不能とする。つまり、嵌合検知部材65は、正規嵌合を検知するとともに、その正規嵌合を保証するように作動する。
【0034】
嵌合状態において、一方のケーブル11の端末に接続された雄シールドアッセンブリ29と、他方のケーブル11の端末に接続された雌シールドアッセンブリ53が電気的に接続されることになる。すなわち、雄インナ端子41と雌インナ端子59が電気的に接続され、ケーブル11の芯線13同士が導通して通信回路が形成される。同時に、雄シールドアウタ端子45と雌シールドアウタ端子63が電気的に接続され、ケーブル11の編組17同士が導通してシールド回路が成形される。
【0035】
[雌シールドアッセンブリ]
図4は雌高周波コネクタ23の要部分解斜視図である。
雌シールドアッセンブリ53は、雌インナ端子59、雌インナハウジング61および雌シールドアウタ端子63より構成されている。雌シールドアウタ端子63は、雌シールド本体(シールド本体)75、雌シールドスリーブ(シールドスリーブ)77および雌加締め部材(加締め部材)79の3部品より構成されている。
【0036】
雌インナ端子59は、ケーブル11の芯線13に加締めにより、電気的に接続される。雌シールド本体75は、略円筒状である。雌シールド本体75は、前方から後方にかけて、前方円筒接続部81と、拡径された拡径部83とを有して成形される。雌シールド本体75には、前後方向で貫通するインナハウジング収容室85が成形されている。なお、本明細書中、前方とは、コネクタが嵌合方向に進む方向を言い、後方とはその反対の方向を言う。
【0037】
なお、前方円筒接続部81には、弾性変形可能な接触片87が切り起こしにより成形されている。接触片87は、雄高周波コネクタ21が嵌合された状態で、雄シールドアウタ端子45(図5参照)と弾性的に接触し、電気的に接続する機構を構成するものである。また、雌シールド本体75は、拡径部83の後部に、一対の平行な起立片89が切り起こしにより成形されている。起立片89は、雌アウタハウジング49に形成されるガイド溝50(図1参照)に挿入されることにより、雌シールドアッセンブリ53の挿入姿勢を定めるスタビライザを構成するものである。
【0038】
雌シールドスリーブ77は、略円筒状に形成される。雌シールドスリーブ77は、導電性を有する金属からなり、前方から後方にかけて、嵌入部91と、編組覆われ部93とが連続する筒状に形成される。嵌入部91は、編組覆われ部93よりも大径の円筒状となって、編組覆われ部93と同軸で成形される。雌シールドスリーブ77には、前後方向で貫通する挿入空間が成形される。
【0039】
雌加締め部材79は、導電性を有する金属からなり、U字状に形成される。雌加締め部材79には、連結部95を介して、編組加締め片97と被覆加締め片99とが前後方向に接続して一体で形成される。
【0040】
ケーブル11の端末に接続された雌シールドアッセンブリ53は、雌インナ端子59が、雌インナハウジング61のインナ端子収容室101に収容される。雌インナ端子59を収容した雌インナハウジング61は、雌シールド本体75のインナハウジング収容室85に収容される。雌インナハウジング61は、挿入方向の中央部が大径部103となり、大径部103を挟んで前方と後方が、大径部103よりも小径の前方円筒部105と後方円筒部107となる。
【0041】
また、雌シールド本体75の拡径部83には、雌シールドスリーブ77の嵌入部91が嵌め込まれる。雌シールド本体75と雌シールドスリーブ77とは、一体化され、拡径部83と嵌入部91は、圧入された上ではんだで電気的に接合され、保持される。
なお、拡径部83と嵌入部91は、圧入のみ、はんだ接合のみ、または係止機構等で保持させるようにしてもよい。
【0042】
また、雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93には、編組覆われ部93の外周を覆うように、ケーブル11の編組17が配置される。雌加締め部材79は、編組加締め片97が編組17の外周を覆うように加締められる。編組覆われ部93と、編組17と、編組加締め片97との間は、はんだ109(図3参照)により、はんだ接合される。
【0043】
なお、雌加締め部材79の被覆加締め片99は、ケーブル11の被覆19に外周から加締められる。つまり、雌シールドアッセンブリ53は、雌加締め部材79が編組17と被覆19との双方に固定される。
【0044】
編組覆われ部93、編組17および編組加締め片97と、これらを接合しているはんだ109とは、編組加締め部111を構成する。
【0045】
[雄シールドアッセンブリ]
図5は雄高周波コネクタ21の要部分解斜視図である。
雄シールドアッセンブリ29は、雄インナ端子41、雄インナハウジング43および雄シールドアウタ端子45より構成されている。雄シールドアウタ端子45は、雄シールド本体(シールド本体)113、雄シールドスリーブ(シールドスリーブ)115および雄加締め部材(加締め部材)117の3部品より構成されている。
【0046】
雄シールドアッセンブリ29は、雄シールド本体113が、雌シールド本体75の前方円筒接続部81を受け入れる円筒状に形成される。雄シールド本体113の内周には、雌シールド本体75の前方円筒接続部81に形成された接触片87が接触することになる。
【0047】
ケーブル11の端末に接続された雄シールドアッセンブリ29は、雄インナ端子41が、雄インナハウジング43のインナ端子収容室101に収容される。雄インナ端子41を収容した雄インナハウジング43は、雄シールド本体113のインナハウジング収容室85に収容される。
なお、雄シールドアッセンブリ29の他の構成は、上記した雌シールドアッセンブリ53とほぼ同様であるので重複する説明は省略する。
【0048】
[ケーブルの端末に接続される雌シールドアッセンブリの製造方法]
以下に、上述したケーブル11の端末に接続される雌シールドアッセンブリ53の製造方法について説明する。なお、雄シールドアッセンブリ29の製造方法は、雌シールドアッセンブリ53の製造方法とほぼ同一であるので説明を省略する。
【0049】
図6は雌インナ端子59の接続工程から雌シールド本体75の挿入工程までを示す手順説明図である。図7は編組17の縮径工程からレーザ光119の照射工程までを示す手順説明図である。
[工程1]では、ケーブル11を所定の長さに切断する。
[工程2]では、ケーブル11の端末における絶縁体15や被覆19の一部を切除して、芯線13と編組17を露出させる。
[工程3]では、図6の(a),(b)に示すように、雌インナ端子59を、ケーブル11の芯線13に加締めにより電気的に接続する。
【0050】
[工程4]では、図6の(c)に示すように、編組17をほぐし、編組17と絶縁体15の間に隙間を作るように、編組17を拡径させる。
[工程5]では、図6の(d)に示すように、雌インナ端子59を雌インナハウジング61のインナ端子収容室101に収容するため、また、編組17と絶縁体15の間に、編組覆われ部93を配置するため、雌インナハウジング61が収容されて雌シールド本体75と一体化された雌シールドスリーブ77の挿入空間に、雌インナ端子59と芯線13と絶縁体15を挿入する。
【0051】
[工程6]では、図7の(e)に示すように、雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93の外周を編組17で覆うために、拡径された編組17を縮径させる。
[工程7]では、図7の(f)に示すように、編組17の外周にはんだペースト121を塗布する。
[工程8]では、図7の(g)に示すように、雌加締め部材79の編組加締め片97を、編組17の外周を覆うようにして加締める。また、被覆加締め片99を被覆19に加締める。編組加締め片97の加締めは、編組17を編組覆われ部93の外周に密着させる程度で、編組覆われ部93を変形させないように加締める。その結果、編組覆われ部93は、円筒状が維持されている。
【0052】
[工程9]では、図7の(h)に示すように、はんだ接合装置としてレーザ照射装置123を用いて、編組加締め片97にレーザ光119を照射して、はんだペースト121を溶融させ、編組覆われ部93と、編組17と、編組加締め片97とを、はんだ接合する。レーザ照射装置123では、編組加締め部111へのレーザ光119の照射がスポット的となる。
【0053】
レーザ照射装置123から出射するレーザ光119は、編組加締め片97の外周から周方向に走査してはんだペースト121を溶融させる。
【0054】
より具体的には、ケーブル11、雌シールドスリーブ77および編組加締め片97を、芯線13を回転中心として回転し、レーザ光119を編組加締め片97の外周から周方向に走査する。レーザ光119を照射する際、雌シールドアッセンブリ53を軸を中心に回転させ、編組加締め片97の外周全周にレーザ光119を照射させることにより、編組覆われ部93と、編組17と、編組加締め片97との間における周方向全周に渡って、はんだ109の溶融や接合を均一化させることができる。これにより、編組覆われ部93と、編組17と、編組加締め片97との間の電気接続信頼性を向上させることができる。
【0055】
上記した雌シールドアッセンブリの製造方法の主要な構成は、芯線13を覆う絶縁体15の外周が編組17により覆われたケーブル11の芯線13に雌インナ端子59を接続し、雌インナ端子59を収容する雌インナハウジング61のインナ端子収容室101に雌インナ端子59を装着し、雌インナハウジング61の外周を覆う雌シールド本体75から延出する円筒状の雌シールドスリーブ77を、雌インナ端子59の装着と同時に絶縁体15と編組17との間に挿入し、編組17の外周にはんだペースト121を塗布し、雌加締め部材79の編組加締め片97をはんだペースト121が塗布された編組17の上から雌シールドスリーブ77の外形状に沿うように変形させて加締めた後、はんだ接合装置であるレーザ照射装置123を用いてはんだペースト121を溶融固化させて雌シールドスリーブ77と編組17と編組加締め片97とを電気的に接合する、ものである。
なお、はんだ接合装置は、レーザ照射装置123に限定されない。
【0056】
[工程9]の変形例1として、はんだ接合装置には、抵抗溶接装置(図示略)を用いてもよい。抵抗溶接装置のプラス電極とマイナス電極を編組加締め片97に接触させ、編組加締め片97に電流を流し、はんだペースト121を溶融させる。これにより、発生したジュール熱により編組覆われ部93と、編組17と、編組加締め片97との間をはんだ接合する。
【0057】
また、[工程9]の変形例2として、はんだ接合装置には、赤外線照射装置(図示略)を用いてもよい。赤外線照射装置の空間内に、編組加締め片97を配置し、編組加締め片97に赤外線を照射し、はんだペースト121を溶融させ、編組覆われ部93と、編組17と、編組加締め片97との間を、はんだ接合する。
【0058】
図8の(a)は雌シールドアッセンブリ53が取り付けられたケーブル11の側面図、図8の(b)は図8の(a)の芯線13に沿う方向の断面図である。
上記のようにして製造された雌シールドアッセンブリ53は、雌インナハウジング61が挿入された雌シールド本体75に、雌シールドスリーブ77の嵌入部91が固定される。雌シールドスリーブ77は、後方の編組覆われ部93が、ケーブル11の絶縁体15と編組17との間に挿入された状態で編組加締め片97と共に一体に固定される。また、雌加締め部材79は、編組加締め片97に連結部95を介して連結された被覆加締め片99がケーブル11の被覆19に加締められる。これにより、雌シールドアッセンブリ53は、はんだ109および加締め構造により強固にケーブル11に取り付けられることになる。
【0059】
図9はケーブル11の端末に取り付けられた雌シールド本体75と雌加締め部材79の芯線13に沿う方向の要部断面図である。
上記した高周波コネクタの製造方法により製造された雌シールドアッセンブリ53は、芯線13を覆う絶縁体15の外周が編組17により覆われるケーブル11の芯線13に接続される雌インナ端子59と、雌インナ端子59を収容するインナ端子収容室101を有しこのインナ端子収容室101に雌インナ端子59を装着する雌インナハウジング61と、雌インナハウジング61の外周を覆う雌シールド本体75から延出して絶縁体15と編組17との間に挿入される雌シールドスリーブ77と、編組加締め片97を有し編組17の上から雌シールドスリーブ77に沿うように変形させて加締められる雌加締め部材79と、雌シールドスリーブ77と編組加締め片97との間で溶融固化し雌シールドスリーブ77と編組17と編組加締め片97とを一体的に接合するはんだ109と、を備える。
なお、雄シールドアッセンブリ29においても、はんだ109による接合構造を有した編組加締め部111の構成は同一である。
【0060】
次に、上記した構成の作用を、雌高周波コネクタ23を例に説明する。
本実施形態に係る高周波コネクタの製造方法では、ケーブル11の絶縁体15と編組17との間に、円筒状の雌シールドスリーブ77が挿入される。ケーブル11は、芯線13の外周を円柱状の絶縁体15が覆い、その絶縁体15の外周をさらに編組17が覆っている。雌シールド本体75から延出する雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93は、同軸で配置される絶縁体15と編組17との間で、同心円で配置される。雌シールドスリーブ77は、所定の強度を有するとともに、良好な導電性を有する金属からなる。
【0061】
内周側に雌シールドスリーブ77が挿入された編組17は、外周側からはんだペースト121が塗布される。はんだペースト121が塗布された編組17は、その上から雌加締め部材79の編組加締め片97が加締め付けられる。この際、編組加締め片97は、編組17の下に位置する雌シールドスリーブ77の外形状を変形させない程度の加締め力で、雌シールドスリーブ77に沿う円筒状に塑性変形されて加締め付けられる。
【0062】
即ち、雌シールドスリーブ77、編組17および編組加締め片97は、同心円状に配置されて組み付けられる。この状態で、はんだペースト121は、編組加締め片97の外側からレーザ照射装置123により加熱されて溶融された後、自然冷却されて固化する。はんだペースト121は、溶融することにより一部が編組17の編み組み(目)を通過して雌シールドスリーブ77に達する。はんだペースト121は、固化することによりはんだ109となり、所定の強度で雌シールドスリーブ77、編組17および編組加締め片97を一体的に接合(ろうづけ)する。
【0063】
このように、本実施形態に係る高周波コネクタの製造方法では、固化したはんだ109が所定強度で雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93、編組17および編組加締め片97を一体的に接合するので、編組加締め片97を加締める際、円筒状の雌シールドスリーブ77に変形が生じる程の大きな加締め力を加える必要がなくなる。
【0064】
図10図9のA-A断面図である。
したがって、本実施形態の高周波コネクタの製造方法では、雌シールドスリーブ77に変形がなく、図10に示すように、編組覆われ部93が円筒状となる。そこで、コネクタの編組加締め部111では、芯線13と編組覆われ部93の距離が、周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることを防止でき、伝送性能の低下を防止できる雌高周波コネクタ23を製造することができる。
【0065】
また、本実施形態の高周波コネクタの製造方法では、レーザ照射装置123からのレーザ光119が、編組加締め片97の外周から周方向に走査される。編組加締め片97は、はんだペースト121が塗布された編組17の上から雌シールドスリーブ77に沿って加締め付けられている。編組加締め片97は、照射されるレーザ光119により加熱され、はんだペースト121の融点よりも高温になると、下層で接触しているはんだペースト121を溶融させる。
【0066】
この際、レーザ光119は、編組加締め片97の外周から周方向に走査されることにより、編組加締め片97が円周方向で均一に加熱される。つまり、コネクタの編組加締め部111におけるはんだ109の溶融や接合を周方向で均一化することができる。その結果、雌シールドスリーブ77と編組17の電気接続信頼性を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態の高周波コネクタの製造方法では、ケーブル11および雌加締め部材79が、芯線13を回転中心として回転される。これにより、レーザ照射装置123のレーザ光119は、定位置で編組加締め片97の外周を照射するのみで、編組加締め片97の周方向に走査されることになる。
【0068】
なお、レーザ光119の走査は、ケーブル11および雌加締め部材79を回転するのに加え、芯線13に沿う方向にケーブル11および雌加締め部材79を移動することにより、編組加締め片97の全周を、芯線13に沿う所望の距離(面積)で加熱することができる。
【0069】
本実施形態に係る高周波コネクタの製造方法では、被加熱対象となるケーブル11および雌加締め部材79が回転されるので、レーザ照射装置123におけるレーザ光119の照射方向を移動するのに比べ、設備構成の簡素化が可能となる。
【0070】
そして、本実施形態に係る雌高周波コネクタ23では、溶融固化されたはんだ109により、雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93と編組17と編組加締め片97とが、所定の強度で一体的に接合されている。このため、はんだ109が介在しない従来構造のように、編組17と雌シールドスリーブ77とを電気的に接合するために、大きな力で編組加締め片97を加締め付けて雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93を変形させてしまうことがない。
【0071】
これにより、コネクタの編組加締め部111において、雌シールドスリーブ77の編組覆われ部93が加締められた状態でも、編組覆われ部93は、円筒状が維持される。よって、コネクタの編組加締め部111では、芯線13と編組覆われ部93の距離が、周方向で一定に保たれるので、インピーダンスが乱れることがない。その結果、本実施形態の雌高周波コネクタ23では、伝送性能の低下を防止できる。
【0072】
従って、本実施形態に係る高周波コネクタの製造方法、雄高周波コネクタ21および雌高周波コネクタ23によれば、伝送性能の低下を防止することができる。
【0073】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0074】
ここで、上述した本発明に係る高周波コネクタの製造方法および高周波コネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 芯線(13)を覆う絶縁体(15)の外周が編組(17)により覆われたケーブル(11)の前記芯線にインナ端子(雄インナ端子41,雌インナ端子59)を接続し、
前記インナ端子を収容するインナハウジング(雄インナハウジング43,雌インナハウジング61)のインナ端子収容室(101)に前記インナ端子を装着し、
前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体(雄シールド本体113,雌シールド本体75)から延出する円筒状のシールドスリーブ(雄シールドスリーブ115,雌シールドスリーブ77)を、前記インナ端子の装着と同時に前記絶縁体と前記編組との間に挿入し、
前記編組の外周にはんだペースト(121)を塗布し、
加締め部材(雄加締め部材117,雌加締め部材79)の編組加締め片(97)を前記はんだペーストが塗布された前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させて加締めた後、
はんだ接合装置(レーザ照射装置123)を用いて前記はんだペーストを溶融固化させて前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを電気的に接合する、
ことを特徴とする高周波コネクタの製造方法。
[2] 前記はんだ接合装置にレーザ照射装置(123)を使用し、
前記レーザ照射装置から出射するレーザ光(119)を前記編組加締め片(97)の外周から周方向に走査して前記はんだペースト(121)を溶融固化させる、
ことを特徴とする上記[1]に記載の高周波コネクタの製造方法。
[3] 前記ケーブル(11)、前記シールドスリーブ(雄シールドスリーブ115,雌シールドスリーブ77)および前記編組加締め片(97)を、前記芯線(13)を回転中心として回転し、前記レーザ光(119)を前記編組加締め片(97)の外周から周方向に走査する、
ことを特徴とする上記[2]に記載の高周波コネクタの製造方法。
[4] 芯線(13)を覆う絶縁体(15)の外周が編組(17)により覆われたケーブル(11)の前記芯線に接続されるインナ端子(雄インナ端子41,雌インナ端子59)と、
インナ端子収容室(101)に前記インナ端子を収容するインナハウジング(雄インナハウジング43,雌インナハウジング61)と、
前記インナハウジングの外周を覆うシールド本体(雄シールド本体113,雌シールド本体75)から延出して前記絶縁体と前記編組との間に挿入される円筒状のシールドスリーブ(雄シールドスリーブ115,雌シールドスリーブ77)と、
編組加締め片(97)が前記編組の上から前記シールドスリーブの外形状に沿うように変形させて加締められた加締め部材(雄加締め部材117,雌加締め部材79)と、
前記シールドスリーブと前記編組加締め片との間で溶融固化されて前記シールドスリーブと前記編組と前記編組加締め片とを電気的に接合したはんだ(109)と、
を備えることを特徴とする高周波コネクタ(雄高周波コネクタ21,雌高周波コネクタ23)。
【符号の説明】
【0075】
11…ケーブル
13…芯線
15…絶縁体
17…編組
21…雄高周波コネクタ(高周波コネクタ)
23…雌高周波コネクタ(高周波コネクタ)
41…雄インナ端子(インナ端子)
43…雄インナハウジング(インナハウジング)
59…雌インナ端子(インナ端子)
61…雌インナハウジング(インナハウジング)
75…雌シールド本体(シールド本体)
77…雌シールドスリーブ(シールドスリーブ)
79…雌加締め部材(加締め部材)
97…編組加締め片
101…インナ端子収容室
109…はんだ
113…雄シールド本体(シールド本体)
115…雄シールドスリーブ(シールドスリーブ)
117…雄加締め部材(加締め部材)
119…レーザ光
121…はんだペースト
123…レーザ照射装置(はんだ接合装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10