(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ハウジング管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 21/06 20060101AFI20240611BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20240611BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F16L21/06
F16L21/08 C
F16L23/02 Z
(21)【出願番号】P 2020180214
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020125869
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513131383
【氏名又は名称】株式会社リケンCKJV
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一善
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特公昭36-487(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3083773(JP,U)
【文献】特開2016-205566(JP,A)
【文献】特開2013-002494(JP,A)
【文献】実開昭60-184486(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00-23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に凸部又は凹部を有する一対の管
の継ぎ部を覆うように端部外周面に配設したシール部材を径方向外側から包持する一対のハウジング本体と、前記ハウジング本体を軸方向両側から
挟持する一対の
挟持部材とを備え、
前記ハウジング本体は、内周面に前記管の凸部又は凹部と係止する係止部
と、径方向外側
に突出するフランジ部とを有し、
一対のハウジング本体は、互いに対向するフランジ部が
連結され、
前記一対の
挟持部材は、前記ハウジング本体のフランジ部の
軸方向外側に位置して互いに
締結されることを特徴とするハウジング管継手。
【請求項3】
前記
挟持部材は内周面にテーパー部を有し、
前記ハウジング本体は外周面に軸方向から近接する前記
挟持部材に向かって縮径する縮径部を有し、
前記
挟持部材のテーパー部が、前記ハウジング本体の縮径部に圧接することを特徴とする請求項
1又は2に記載のハウジング管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の接続に用いるハウジング管継手に関し、特に高圧配管に用いるのに効果的なハウジング管継手に係る。
【背景技術】
【0002】
施工性に優れた配管の接続方法として、ハウジング管継手を用いた方法が知られている。
一般的なハウジング管継手は、接続する二つの配管の端部外周面に環状のシール部材を被せ、このシール部材を径方向外側から一対の略半円状のハウジング本体で包持し、ハウジング本体の周方向両端部から径方向外側に突出するフランジ部を連結することで配管を接続する。
例えば、特許文献1に開示するハウジング管継手は、このようなハウジング管継手の例である。
しかし、このようなハウジング管継手は、配管の継ぎ部から径方向外側へ大きな圧力が加わると、このフランジ部のみの連結では、その大きな圧力に対して耐えきれずにハウジングの包持部が開く恐れが高く、高圧配管での使用には向かないという問題があった。
特に、10MPaを超える高い圧力がかかる高圧配管では、略半円状のハウジング本体が変形しやすく、高圧ガスが漏れる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、配管施工性に優れ、高圧配管に用いるのに効果的なハウジング管継手の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るハウジング管継手は、外周面に凸部又は凹部を有する一対の管を、シール部材を介して接続するハウジング管継手であって、前記シール部材を径方向外側から包持する一対のハウジング本体と、前記ハウジング本体を軸方向両側から挟持する一対の挟持部材とを備え、前記ハウジング本体は、内周面に前記管の凸部又は凹部と係止する係止部を有し、前記一対の挟持部材は、それぞれ対向する挟持部材又は前記ハウジング本体と締結する締結部を有することを特徴とする。
ここで、対向する挟持部材同士をボルト等で締結する態様と、挟持部材をハウジング本体の側部にボルト等で直接締結する態様が含まれる。
このように、シール部材を径方向外側から包持する一対のハウジング本体は、一対の挟持部材で両側から挟み込むように保持されるので、管の継ぎ部に高い圧力が加わってもハウジングの包持部が開こうとするのをこの挟持部材が抑えるために、耐圧性が向上する。
従来のハウジング管継手において、フランジ部のみで高圧に耐えるためには、それだけ径方向外側へ大きく突出する非常に大きなフランジ部になり、接続する配管同士や配管周囲壁等との間に広いスペースが必要となる問題もあった。
本発明に係るハウジング管継手は、一対のハウジングの包持部が開くのを挟持部材で抑えるのでフランジ部が必ずしも必要ではなく、また、フランジ部を設ける場合にあっては小さいものでよくなる。
【0006】
本発明において、挟持部材は、複数の前記締結部を有する環状であり、前記締結部は、締結部材を軸方向に貫通するための締結孔を有することが好ましい。
これにより、一対の挟持部材はその間にハウジング本体を保持した状態で、それぞれ対向する挟持部材又はハウジング本体と締結部材にて容易に締結される。
また、複数の締結部を有することで、一対の挟持部材の間でハウジング本体を安定して挟持できる。
従来のハウジング管継手は、周方向両側のフランジ部のみで連結してあるので、耐圧性能を発揮するためには大きな締め付けトルクが必要であり、大きいフランジ部や径の大きいボルト等が必要であった。
一方、本発明に係るハウジング管継手の締結部材は、挟持部材を互いに引き寄せる方向に力があればよく、低いトルクでの配管接続施工が可能となる。
【0007】
本発明において、前記ハウジング本体は外周面に、径方向外側へ突出した突出部を有し、
前記挟持部材は、前記ハウジング本体の突出部に当接可能な当接部を有してもよい。
このように、ハウジング本体の突出部に挟持部材の当接部を当接することで、ハウジング本体を一対の挟持部材で両側から挟み込むように締結するため、ハウジング本体の軸方向のねじれ変形を抑える効果が大きい。
この場合に、前記一対のハウジング本体は、両側端部にそれぞれ対向配置され、相互に締結可能なフランジ部を有するようにしてもよい。
このようにすると、一対のハウジング本体を両側のフランジ部で相互にボルト等で締結後にハウジング本体の包持部を挟持部材で支えるので小さなフランジ部でよい。
【0008】
本発明において、挟持部材は内周面にテーパー部を有し、前記ハウジング本体は外周面に、軸方向から近接する前記挟持部材に向かって縮径する縮径部を有し、前記挟持部材のテーパー部が、前記ハウジング本体の縮径部に圧接してもよい。
このようにすると、一対の挟持部材の間隔が小さくなるように締め付けるだけで、テーパー部の内側方向の分力により、ハウジング本体を管の中心に向けて押し付ける力が働く。
これにより、挟持部材は径方向外側からハウジング本体に圧接するため、高圧配管のように管の継ぎ部から径方向外側等へ高い圧力が加わる場合にも、ハウジング本体の径方向外側等への変形を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るハウジング管継手は、シール部材を径方向外側から包持する一対のハウジング本体を、軸方向両側から一対の挟持部材にて挟持し、締結する。
また、挟持部材が径方向外側からハウジング本体を保持するので、ハウジング本体が径方向外側等へ変形するのを抑制する。
これにより、高圧配管のように管の継ぎ部に高い圧力が加わる場合にも、本発明に係るハウジング管継手が有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るハウジング管継手の構造例を、管接続前の状態例として示す。
【
図2】(a)はハウジング管継手の構造例を、管接続後の状態例として示し、(b)はその部分断面図を示す。
【
図3】ハウジング管継手による管の接続手順を示す。
【
図5】本発明に係るハウジング管継手の別構造例である実施例2を示す。
【
図6】実施例2の構造例を、管接続前の状態として示す。
【
図7】管接続後の状態例である
図5の部分断面図を示す。
【
図10】実施例3の構造例を、管接続前の状態として示す。
【
図11】(a)は実施例3の構造例を、管接続後の状態例として示し、(b)はそのA-A線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るハウジング管継手の構造例を以下、図に基づいて説明する。
図1~
図4に、実施例1のハウジング管継手の構造例を示す。
図1は、ハウジング管継手を構成する一対のハウジング本体20、20と一対の
挟持部材30、30が、シール部材10を配設した一対の管1,1を接続する前の状態例を示し、
図2(a)はその接続した後の状態例を、(b)はその部分断面図を示す。
また、このハウジング管継手による管1,1の接続手順を説明するために、
図3、
図4を示す。
【0012】
図1、
図2(b)に示すように、管1は、高圧配管用炭素鋼鋼管等からなる管1、1の端部付近の外周面に、転造加工にてリング状の凸部1aを成形した例である。
シール部材10はゴム製の弾性リングであり、一対の管1、1の端部外周面に跨がるように配設された後、径方向外側から一対の略半円状のハウジング本体20、20により包持される。
環状の
挟持部材30は、その軸方向の面に複数の締結部31、31,31を所定の間隔で設け、締結部31に締結部材33を軸方向に貫通するための締結孔31aを形成してある。
一対の
挟持部材30、30が、上記一対のハウジング本体20、20を軸方向から
挟持し、締結部31、31の相互の締結孔31a、31aを用いて締結部材33と止め部材34にて締結されることで、
図2(a)に示すような管1、1とハウジング継手の接続構造となる。
【0013】
本実施例のハウジング管継手による管の接続手順について、
図3、
図4に基づいて具体的に説明する。
図3(a)は、
図1に示すような環状の
挟持部材30の内側に管1を挿通した状態で一対の管1、1の端部を概ね突き合せ、管1、1の継ぎ部1bを覆うようにその端部外周面にシール部材10を配設した例を示す。
挟持部材30の内径は、管1の凸部1aに接触することがない大きさであることが好ましく、これにより管1に凸部1aを成形した後からも
挟持部材30の内側に管1を挿通でき、配管を接続する施工性に優れる。
ハウジング本体20は、内周面にリング状の外リブ22aと内リブ22bを形成することで凹部形状の係止部21を形成し、この係止部21に管1の凸部1aを係合させる。
また、左右一対の内リブ22bの間に凹部形状の包持部23を形成し、この包持部23にてシール部材10の外周面を径方向外側から包持した例を、
図3(b)に示す。
【0014】
図4(a)に示すように、ハウジング本体20、20に対して
挟持部材30、30を軸方向の両側から近接する。
本実施例のハウジング本体20は、外周面に近接する
挟持部材30、30に向かって縮径するリング状の縮径部25,25を形成し、縮径部25,25よりも軸方向内側に、径方向外側へ突出したリング状の突出部26,26を形成してある。
一方、
挟持部材30は、内周面に近接するハウジング本体20に向かって拡径する環状のテーパー部32を形成してあり、このテーパー部32をハウジング本体20の縮径部25に軸方向から近接する。
図4(b)は、
挟持部材30のテーパー部32をハウジング本体20の縮径部25に摺接するように圧接した例を示す。
一対の
挟持部材30、30は、対向する締結部31、31の相互の締結孔31a、31aを用いて、ボルト等の締結部材33とナット等の止め部材34にて締結される。
このように、
挟持部材30のテーパー部32が径方向外側からハウジング本体20の縮径部25を圧接するとともに、テーパー部32が縮径部25を軸方向へ押圧することで、ハウジング本体20がその径方向内側のシール部材10を圧縮させる。
なお、
挟持部材30は、ハウジング本体20の突出部26の軸方向外側面26aと対向する面であって、軸方向外側面26aに当接可能な当接部35を有してもよい。
【0015】
本実施例は、転造加工により管の外周面にリング状の凸部を成形した例を示したが、外周面に転造溝からなる凹部を成形してもよく、角形又は丸形のリングを管の外周面に溶接してもよい。
また、本実施例における挟持部材は、その軸方向の面に3つの締結部をおよそ均等な間隔で設けた例であるが、締結部の数はハウジング管継手の外径の大きさに合せてもよく、外径が大きくなるほど、締結部の数を増やすことが望ましい。
【0016】
本発明に係るハウジング管継手のハウジング本体20は、
図5に示すように、周方向両端部からそれぞれ径方向外側に突出するフランジ部24を有するものであってもよいが、この場合には連結部材27、28にて一対のハウジング本体20の対向するフランジ部24を互いに連結し、連結したハウジング本体20を一対の
挟持部材30で軸方向から
挟持し、
フランジ部24の軸方向外側に位置する一対の挟持部材30を締結するため、フランジ部24は径方向外側に大きく突出するような大きさでなくてよい。
【0017】
上記フランジ部24を有するハウジング管継手として、
図6~
図9に実施例2を、
図10、
図11に実施例3を示す。
実施例2,3は、ハウジング本体20の縮径部25及び
挟持部材30のテーパー部32を設ける替わりに、ハウジング本体20のフランジ部24同士をボルト等で締結及び連結した後にハウジング本体20の包持部が開くのを
挟持部材30で防止した例である。
このようなハウジング管継手の場合には、例えば
図6、
図10に示すように、ハウジング本体20の外周面には縮径部25の替わりに円筒状の外周部29を形成し、
挟持部材30の内周面にはテーパー部32の替わりに傾斜していない保持部36を形成してある。
図10に示すように実施例3は、ハウジング本体20の外周面に
挟持部材30の保持部36にて保持される外周部29、29と、この外周部29、29よりも軸方向内側に径方向外側へ突出したリング状の突出部26を形成してある。
突出部26には、
挟持部材30の締結部31と締結可能な被締結部26bを設けてある。
被締結部26bは、例えば
図10に示すように突出部26から部分的に径方向外側へ突出するように形成してある。
ハウジング本体20と
挟持部材30は、被締結部26bに設けた被締結孔26cと締結部31の締結孔31aを用いて締結部材33にて締結可能である。
【0018】
実施例2、3のハウジング管継手による管の接続手順について、実施例2を例として
図8,
図9に基づいて具体的に説明する。
まず、
図8(a)、(b)に示すようにハウジング本体20の係止部21に管1の凸部1aを係合させ、シール部材10の外周面を径方向外側から包持部23にて包持し、一対のハウジング本体20、20の対向するフランジ部24,24を、その相互の連結孔24a、24aを用いてボルト等の連結部材27とナット等の連結部材28にて連結するように締結する。
締結後のハウジング本体20、20に対して、
図9(a)に示すように
挟持部材30、30を軸方向の両側から近接する。
図9(b)に示すように、
挟持部材30の当接部35がハウジング本体20の有する突出部26の軸方向外側面26aに当接するように、
挟持部材30、30の対向する締結部31、31を締結部材33と止め部材34にて締結する。
実施例3の場合には
図11に示すように、ハウジング本体20の有する被締結部26bの被締結孔26cと
挟持部材30の締結孔31aを締結部材33にて締結する。
なお、被締結孔26cは貫通孔であっても、有底孔であってもよい。
実施例2、3のように、当接部35が軸方向外側面26aに当接するように締結されることで、一対の
挟持部材30、30がハウジング本体20をより安定して締結
挟持し、
挟持部材30の保持部36が径方向外側からハウジング本体20の外周部29を保持することで、高圧配管のように管の継ぎ部から径方向外側等へ高い圧力が加わる場合にも、ハウジング本体の径方向外側等への変形を抑制できる。
このようにすると、
挟持部材30にテーパー部32を設けた場合よりもハウジング本体20への取り付けが容易になる。
【符号の説明】
【0019】
1 管
1a 凸部
10 シール部材
20 ハウジング本体
21 係止部
25 縮径部
26 突出部
30 挟持部材
31 締結部
31a 締結孔
32 テーパー部
33 締結部材
35 当接部