(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
F24F 3/153 20060101AFI20240611BHJP
F24F 1/0038 20190101ALI20240611BHJP
F24F 1/0083 20190101ALI20240611BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240611BHJP
F24F 11/81 20180101ALI20240611BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240611BHJP
【FI】
F24F3/153
F24F1/0038 441
F24F1/0083
F24F11/46
F24F11/81
F24F110:12
(21)【出願番号】P 2020191468
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】正木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】村井 絢香
(72)【発明者】
【氏名】篠島 隆司
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-80886(JP,A)
【文献】特開2014-62651(JP,A)
【文献】特開2006-292299(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0000211(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を冷却除湿する冷却除湿部と、
冷却除湿された外気を加熱する再熱部と、
冷却除湿される前の外気と排気とを熱交換させる熱交換部と、
その熱交換部に供給される前の外気の一部を前記再熱部に供給する外気供給部と、
前記外気供給部にて前記再熱部に供給されて前記再熱部を通過した外気を、前記熱交換部に供給される前の外気に対して混合させる第1混合状態と、前記外気供給部にて前記再熱部に供給されて前記再熱部を通過した外気を、前記熱交換部を通過して前記冷却除湿部に供給される前の外気に対して混合させる第2混合状態とに切替自在な外気混合部とが備えられている空調装置。
【請求項2】
前記外気混合部は、前記外気供給部にて前記再熱部に供給されて前記再熱部を通過した外気の温度、及び、前記熱交換部を通過して前記冷却除湿部に供給される前の外気の温度に基づいて、第1混合状態と第2混合状態とに切り替える請求項1に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を冷却除湿する冷却除湿部と、冷却除湿された外気を加熱する再熱部とが備えられている空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置として、外気を冷却除湿する冷却除湿部と、冷却除湿された外気を加熱する再熱部とが備えられたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
この特許文献1、2に記載の空調装置では、冷却除湿される前の外気の一部を再熱部に供給し、再熱部を通過した外気を冷却除湿される前の外気に混合させる外気混合部が備えられている。これにより、再熱部の加熱源として外気を用いることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0004】
一方、別の空調装置として、空調対象空間等から外部に排気する排気と冷却除湿される前の外気とを熱交換させる熱交換器が備えられているものもある(例えば、特許文献3参照)。これにより、熱交換器において、排気が有する冷熱を用いて、冷却除湿される前の外気を冷却することができるので、冷却除湿部での必要熱量の削減を図り、省エネルギー化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-085261号公報
【文献】特開2014-153017号公報
【文献】特開2011-058676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
省エネルギー化を図るために、特許文献1、2に記載の空調装置では、再熱部の加熱源として外気を用いるのに対して、特許文献3に記載の空調装置では、排気が有する冷熱を用いている。そこで、更なる省エネルギー化を図るために、特許文献1、2に記載の空調装置と特許文献3に記載の空調装置とを組み合わせることが考えられる。
【0007】
しかしながら、単に組み合わせるだけでは、外気が有する熱と、空調対象空間等から外部に排気される排気が有する熱との両方を有効に活用することができず、かえって消費エネルギーの増大を招く等、省エネルギー化を図ることができない可能性がある。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、外気が有する熱だけでなく、空調対象空間等から外部に排気される排気が有する熱も有効に活用して、更なる省エネルギー化を図ることができる空調装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、外気を冷却除湿する冷却除湿部と、
冷却除湿された外気を加熱する再熱部と、
冷却除湿される前の外気と排気とを熱交換させる熱交換部と、
その熱交換部に供給される前の外気の一部を前記再熱部に供給する外気供給部と、
前記外気供給部にて前記再熱部に供給されて前記再熱部を通過した外気を、前記熱交換部に供給される前の外気に対して混合させる第1混合状態と、前記外気供給部にて前記再熱部に供給されて前記再熱部を通過した外気を、前記熱交換部を通過して前記冷却除湿部に供給される前の外気に対して混合させる第2混合状態とに切替自在な外気混合部とが備えられている点にある。
【0010】
本構成によれば、外気混合部は、第1混合状態と第2混合状態とに切替自在であるので、例えば、外気供給部にて再熱部に供給されて再熱部にて温度低下した外気の温度が比較的高温であれば、外気混合部が第1混合状態に切り替え、再熱部にて温度低下した外気の温度が比較的低温であれば、外気混合部が第2混合状態に切り替えることができる。
【0011】
外気混合部が第1混合状態に切り替えた場合には、熱交換部に供給される前の外気に対して、再熱部にて温度低下した比較的高温の外気を混合させても、熱交換部に供給される前の外気を、冷却し過ぎるのを防止しながら冷却することができる。よって、熱交換部において外気と排気との間に十分な温度を確保することができ、再熱部の加熱源として外気を有効に活用できることは勿論、再熱部にて温度低下した外気の混合と熱交換部との2段階で外気を冷却することができるので、冷却除湿部での必要熱量の削減を図ることができる。
【0012】
外気混合部が第2混合状態に切り替えた場合には、熱交換部において排気が有する冷熱を活用して外気を冷却できるだけでなく、熱交換部を通過して冷却除湿部に供給される前の外気に対して、再熱部にて温度低下した比較的低温の外気を混合させることで、更に外気を冷却することができる。よって、再熱部の加熱源として外気を有効に活用できることは勿論、熱交換部と再熱部にて温度低下した外気の混合との2段階で外気を冷却することができるので、冷却除湿部での必要熱量の削減を図ることができる。
【0013】
このように、外気混合部を各種の条件に応じて第1混合状態と第2混合状態とに切り替えることで、外気が有する熱だけでなく、空調対象空間等から外部に排気される排気が有する熱も有効に活用して、更なる省エネルギー化を図ることができる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、前記外気混合部は、前記外気供給部にて前記再熱部に供給されて前記再熱部を通過した外気の温度、及び、前記熱交換部を通過して前記冷却除湿部に供給される前の外気の温度に基づいて、第1混合状態と第2混合状態とに切り替える点にある。
【0015】
本構成によれば、外気供給部にて再熱部に供給されて再熱部を通過した外気の温度が熱交換部を通過して冷却除湿部に供給される前の外気の温度よりも高いと、外気混合部が第1混合状態に切り替え、外気供給部にて再熱部に供給されて再熱部を通過した外気の温度が熱交換部を通過して冷却除湿部に供給される前の外気の温度よりも低いと、外気混合部が第2混合状態に切り替えることができる。このように、外気供給部にて再熱部に供給されて再熱部を通過した外気の温度、及び、熱交換部を通過して冷却除湿部に供給される前の熱交換部を通過した外気の温度を用いることで、外気混合部による第1混合状態と第2混合状態との切替を適切に行うことができ、省エネルギー化を効率よく図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る空調装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
この空調装置1は、
図1及び
図2に示すように、空気を流通させる系統として、外気A1を流通させて空調対象空間5に供給する給気系統2と、空調対象空間5の空気を流通させて外部に排気する排気系統3と、給気系統2の外気A1から一部の外気A2を分岐させて流通させたのち、給気系統2に戻す循環系統4との3つの系統が備えられている。3つの系統の夫々には、空気を流通させるためのファン等の空気流通手段(図示省略)が備えられている。ちなみに、
図1と
図2は、いずれも空調装置1の概略構成を示すものであるが、空気が流通する部位が異なっており、空気が流通する部位を黒塗りの太線にて示している。
【0018】
空調装置1は、空気の空調処理を行う機器として、外気A1を冷却除湿する冷却除湿部6と、冷却除湿された外気A1を加熱する再熱部7と、冷却除湿される前の外気A1と排気B(空調対象空間5の空気)とを熱交換させる熱交換部8とが備えられている。ちなみに、図示は省略するが、冷却除湿部6には、冷却除湿用の熱媒体が循環供給されている。
【0019】
給気系統2には、外気A1の流通方向の上流側から順に、熱交換部8、冷却除湿部6、再熱部7が備えられている。給気系統2は、外気A1を熱交換部8に供給する第1給気路21と、熱交換部8を通過した外気A1を冷却除湿部6に供給する第2給気路22と、冷却除湿部6を通過した外気A1を再熱部7に供給する第3給気路23と、再熱部7を通過した外気A1を空調対象空間5に供給する第4給気路24とが備えられている。給気系統2では、外気A1が、まず、熱交換部8にて排気Bとの熱交換により冷却され、その冷却された外気A1が、冷却除湿部6にて冷却除湿用の熱媒体との熱交換により冷却除湿される。その後、その冷却除湿された外気A1が、再熱部7にて外気A2との熱交換により再熱され、その再熱された外気A1が、空調対象空間5に供給されている。
【0020】
排気系統3には、その途中部位に熱交換部8が備えられている。排気系統3は、排気B(空調対象空間5の空気)を熱交換部8に供給する第1排気路31と、熱交換部8を通過した排気Bを外部に排気する第2排気路32とが備えられている。排気系統3では、排気Bが、熱交換部8において外気A1との熱交換により加熱され、その加熱された排気Bが外部に排気されている。
【0021】
循環系統4には、その途中部位に再熱部7が備えられている。循環系統4は、第1給気路21の外気A1から分岐された一部の外気A2を再熱部7に供給する第1循環路41(外気供給部に相当する)と、再熱部7を通過した外気A2を第1給気路21に戻して熱交換部8に供給される前の外気A1に対して混合させる第2循環路42と、再熱部7を通過した外気A2を第2給気路22に戻して熱交換部8を通過して冷却除湿部6に供給される前の外気A1に対して混合させる第3循環路43とが備えられている。第2循環路42と第3循環路43とは、その上流側部位が共通の流路として備えられ、その下流側部位が分岐されて第1給気路21と第2給気路22とに接続されている。循環系統4では、第1給気路21の外気A1から分岐された外気A2が、再熱部7にて外気A1との熱交換により冷却され、その冷却された外気A2が給気系統2の外気A1に混合されている。
【0022】
循環系統4では、第2循環路42を開閉する第1開閉弁44が第2循環路42に備えられ、第3循環路43を開閉する第2開閉弁45が第3循環路43に備えられ、第1開閉弁44及び第2開閉弁45の開閉状態を制御する開閉制御部46が備えられている。開閉制御部46が、第1開閉弁44及び第2開閉弁45の開閉状態を制御することで、再熱部7を通過した外気A2を給気系統2の外気A1に混合させる混合状態について、第1混合状態と第2混合状態とに切替自在に構成されている。このようにして、第1循環路41(外気供給部)にて再熱部7に供給されて再熱部7を通過した外気A2を給気系統2の外気A1に混合させる外気混合部が、第2循環路42、第3循環路43、第1開閉弁44、第2開閉弁45、開閉制御部46等から構成されている。
【0023】
第1混合状態では、
図1に示すように、開閉制御部46が、第1開閉弁44を開状態とし且つ第2開閉弁45を閉状態として、再熱部7を通過した外気A2を、第2循環路42にて熱交換部8に供給される前の第1給気路21の外気A1に対して混合させている。第2混合状態では、
図2に示すように、開閉制御部46が、第1開閉弁44を閉状態とし且つ第2開閉弁45を開状態として、再熱部7を通過した外気A2を、第3循環路43にて熱交換部8を通過して冷却除湿部6に供給される前の外気A1に対して混合させている。ちなみに、
図1及び
図2において、第1開閉弁44及び第2開閉弁45について、開状態のものを黒塗りとし、閉状態のものを白抜きとしている。
【0024】
第2給気路22には、熱交換部8を通過して冷却除湿部6に供給される前の外気A1の温度を検出する第1温度検出部T1が備えられ、第2循環路42と第3循環路43との共通部位には、第1循環路41にて再熱部7に供給されて再熱部7を通過した外気A2の温度を検出する第2温度検出部T2が備えられている。
【0025】
開閉制御部46は、第1温度検出部T1及び第2温度検出部T2の検出温度に基づいて、第1開閉弁44及び第2開閉弁45の開閉制御を行っている。第2温度検出部T2の検出温度が第1温度検出部T1の検出温度以上である場合には、
図1に示すように、開閉制御部46が、第1開閉弁44を開状態とし且つ第2開閉弁45を閉状態として、第1混合状態に切り替えている。第2温度検出部T2の検出温度が第1温度検出部T1の検出温度よりも低い場合には、
図2に示すように、開閉制御部46が、第1開閉弁44を閉状態とし且つ第2開閉弁45を開状態として、第2混合状態に切り替えている。
【0026】
図1に示すように、第1混合状態では、熱交換部8に供給される前の外気A1(例えば、36℃)に対して、再熱部7を通過した外気A2(例えば、32℃)が混合されて、外気A1が冷却される。このとき、再熱部7を通過して温度低下した外気A2は、熱交換部8に供給される前の外気A1よりも低温であるものの、第2温度検出部T2の検出温度が第1温度検出部T1の検出温度以上であるので、熱交換部8を通過した外気A1よりも低温とはなっていない。よって、外気A2の混合により、熱交換部8に供給される前の外気A1を、冷却し過ぎるのを防止しながら冷却することができる。
【0027】
外気A2の混合により冷却された外気A1は、熱交換部8に供給され、熱交換部8にて排気B(例えば、26℃)との熱交換により冷却される。熱交換部8に供給される外気A1は、外気A2の混合により冷却されているものの、冷却し過ぎるのが防止されているので、熱交換部8において外気A1と排気Bとの間に十分な温度差を確保することができ、熱交換部8においても外気A1を効果的に冷却することができる。よって、冷却除湿部6に供給される前に、再熱部7にて温度低下した外気A2の混合と熱交換部8での熱交換との2段階で外気A1を効果的に冷却することができる。
【0028】
2段階で冷却された外気A1は、冷却除湿部6に供給され、冷却除湿部6にて冷却除湿され(例えば、12℃)、再熱部7に供給される。そして、外気A1は、再熱部7にて外気A2との熱交換により再熱されて(例えば、16℃)、空調対象空間5に供給されている。
【0029】
図2に示すように、第2混合状態では、第1混合状態とは異なり、熱交換部8に供給される前の外気A1が、外気A2の混合を受けることなく、熱交換部8に供給され、熱交換部8にて排気Bとの熱交換により冷却される。その冷却された外気A1に対して、冷却除湿部6に供給される前に、再熱部7を通過した外気A2が混合されて、外気A1が冷却される。このとき、第2温度検出部T2の検出温度が第1温度検出部T1の検出温度よりも低いので、再熱部7を通過して温度低下した外気A2は、熱交換部8を通過した外気A1よりも低温となっている。よって、外気A2の混合により、熱交換部8を通過した外気A1を効果的に冷却することができるので、冷却除湿部6に供給される前に、熱交換部8での熱交換と再熱部7にて温度低下した外気A2の混合との2段階で外気A1を効果的に冷却することができる。
【0030】
2段階で冷却された外気A1は、冷却除湿部6に供給され、冷却除湿部6にて冷却除湿され、再熱部7に供給される。そして、外気A1は、再熱部7にて外気A2との熱交換により再熱されて、空調対象空間5に供給されている。
【0031】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、開閉制御部46が、熱交換部8を通過して冷却除湿部6に供給される前の外気A1の温度(第1温度検出部T1の検出温度)、及び、再熱部7を通過した外気A2の温度(第2温度検出部T2の検出温度)に基づいて、第1混合状態と第2混合状態とに切り替えているが、例えば、熱交換部8に供給される前の外気の温度に基づいて、第1混合状態と第2混合状態とに切り替えることも可能であり、第1混合状態と第2混合状態とに切り替えるための条件は適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 空調装置
6 冷却除湿部
7 再熱部
8 熱交換部
41 第1循環路(外気供給部)
42 第2循環路(外気混合部)
43 第3循環路(外気混合部)
44 第1開閉弁(外気混合部)
45 第2開閉弁(外気混合部)
46 開閉制御部(外気混合部)