(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷方法、印刷プログラム
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B41F33/00 290
(21)【出願番号】P 2020197269
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-176763(JP,A)
【文献】特開2008-023879(JP,A)
【文献】特開昭62-290541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被印刷物に印刷する第1の印刷ユニットおよび第2の印刷ユニットと、
前記第1の印刷ユニットに設けられ、前記被印刷物の所定の第1の位置に第1のレジスタマークを印刷する第1のマーク印刷部と、
前記第2の印刷ユニットに設けられ、前記被印刷物の所定の第2の位置に第2のレジスタマークを印刷する第2のマーク印刷部と、
前記第1のレジスタマークおよび前記第2のレジスタマークを検知するマークセンサと、
前記第1のレジスタマークが前記マークセンサの検知領域を通過する第1の検知時間帯に前記マークセンサを検知可能状態とし、前記第2のレジスタマークが前記マークセンサの検知領域を通過する前記第1の検知時間帯と異なる第2の検知時間帯で前記マークセンサを検知可能状態とする検知制御部と、
前記マークセンサが
、前記第1の検知時間帯に検知した前記第1のレジスタマーク
によるパルスおよび
前記第2の検知時間帯に検知した前記第2のレジスタマーク
によるパルスの
、当該各検知時間帯内の相対位置
の直接的な比較に基づき、前記第1の印刷ユニットと前記第2の印刷ユニットの見当誤差を演算する見当誤差演算部と
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記マークセンサは、前記第1の印刷ユニットおよび前記第2の印刷ユニットのうち後段の印刷ユニットに設けられ、
前記検知制御部は、前記第1の検知時間帯および前記第2の検知時間帯を、前記マークセンサが設けられる印刷ユニットの版胴の回転角度に応じて設定する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1の印刷ユニットおよび前記第2の印刷ユニットは複数の印刷ユニットから選択可能であり、
前記検知制御部は、前記第1の検知時間帯を前記第1の印刷ユニットの選択に応じて設定し、前記第2の検知時間帯を前記第2の印刷ユニットの選択に応じて設定する
請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1の印刷ユニットの直前または直後に設けられ、前記被印刷物に印刷する第3の印刷ユニットと、
前記第3の印刷ユニットに設けられ、前記被印刷物の所定の第3の位置に第3のレジスタマークを印刷する第3のマーク印刷部と
を備え、
前記マークセンサは、前記第1の位置と前記第3の位置の相対距離で離間配置される二つの検知部を備え、前記第1の検知時間帯に前記第1のレジスタマークおよび前記第3のレジスタマークを同時に検知し、
前記見当誤差演算部は、前記マークセンサが
、前記第1の検知時間帯に検知した前記第1のレジスタマーク
によるパルスおよび
前記第1の検知時間帯に検知した前記第3のレジスタマーク
によるパルスの
、当該第1の検知時間帯内の相対位置
の直接的な比較に基づき、前記第1の印刷ユニットと前記第3の印刷ユニットの見当誤差を演算する
請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記マークセンサは、前記第1の印刷ユニット、前記第2の印刷ユニット、前記第3の印刷ユニットのうち最後段の印刷ユニットに設けられ、
前記検知制御部は、前記第1の検知時間帯および前記第2の検知時間帯を、前記マークセンサが設けられる印刷ユニットの版胴の回転角度に応じて設定する
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
第1の印刷ユニットが移動する被印刷物に印刷する際に、所定の第1の位置に第1のレジスタマークを印刷するステップと、
第2の印刷ユニットが前記被印刷物に印刷する際に、所定の第2の位置に第2のレジスタマークを印刷するステップと、
マークセンサが、前記第1のレジスタマークが前記マークセンサの検知領域を通過する第1の検知時間帯に前記第1のレジスタマークを検知し、前記第2のレジスタマークが前記マークセンサの検知領域を通過する前記第1の検知時間帯と異なる第2の検知時間帯に前記第2のレジスタマークを検知するステップと、
前記マークセンサが
、前記第1の検知時間帯に検知した前記第1のレジスタマーク
によるパルスおよび
前記第2の検知時間帯に検知した前記第2のレジスタマーク
によるパルスの
、当該各検知時間帯内の相対位置
の直接的な比較に基づき、前記第1の印刷ユニットと前記第2の印刷ユニットの見当誤差を演算するステップと
を備える印刷方法。
【請求項7】
第1の印刷ユニットが移動する被印刷物に印刷する際に、所定の第1の位置に第1のレジスタマークを印刷するステップと、
第2の印刷ユニットが前記被印刷物に印刷する際に、所定の第2の位置に第2のレジスタマークを印刷するステップと、
マークセンサが、前記第1のレジスタマークが前記マークセンサの検知領域を通過する第1の検知時間帯に前記第1のレジスタマークを検知し、前記第2のレジスタマークが前記マークセンサの検知領域を通過する前記第1の検知時間帯と異なる第2の検知時間帯に前記第2のレジスタマークを検知するステップと、
前記マークセンサが
、前記第1の検知時間帯に検知した前記第1のレジスタマーク
によるパルスおよび
前記第2の検知時間帯に検知した前記第2のレジスタマーク
によるパルスの
、当該各検知時間帯内の相対位置
の直接的な比較に基づき、前記第1の印刷ユニットと前記第2の印刷ユニットの見当誤差を演算するステップと
をコンピュータに実行させる印刷プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動する巻取紙に印刷する印刷装置である輪転機は複数の印刷ユニットを備え、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等の各色を順次印刷する。各色の刷版の位置合わせを行うことを「見当を合わせる」という。このために技術として、各色の刷版の位置ずれである見当誤差を検知し、それが少なくなるように巻取紙の各部の送り速度や、各色の刷版が巻き付けられる版胴の回転速度を調整することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、見当誤差の検知のために、各印刷ユニットが所定の位置にレジスタマークを印刷する。各色のレジスタマークは一定の間隔で巻取紙に印刷され、それと同じ間隔で配置された二つの光検知素子を有するマークセンサによって、隣接するレジスタマークが同時に検知される。これらの同時検知されたレジスタマークの相対距離と、その所期の値からのずれが見当誤差として検知され、それを少なくするための見当合わせ制御が行われる。
【0005】
特許文献1では、マークセンサで隣接するレジスタマークを同時に検知するため、いずれかのレジスタマークが検知しづらい色材(例えば、色の薄い色材や、ニスのような透明または半透明な色材)で印刷される場合、見当誤差を検知できない。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、見当誤差を効果的に検知できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の印刷装置は、移動する被印刷物に印刷する第1の印刷ユニットおよび第2の印刷ユニットと、第1の印刷ユニットに設けられ、被印刷物の所定の第1の位置に第1のレジスタマークを印刷する第1のマーク印刷部と、第2の印刷ユニットに設けられ、被印刷物の所定の第2の位置に第2のレジスタマークを印刷する第2のマーク印刷部と、第1のレジスタマークおよび第2のレジスタマークを検知するマークセンサと、第1のレジスタマークがマークセンサの検知領域を通過する第1の検知時間帯にマークセンサを検知可能状態とし、第2のレジスタマークがマークセンサの検知領域を通過する第1の検知時間帯と異なる第2の検知時間帯でマークセンサを検知可能状態とする検知制御部と、マークセンサが検知した第1のレジスタマークおよび第2のレジスタマークの相対位置に基づき、第1の印刷ユニットと第2の印刷ユニットの見当誤差を演算する見当誤差演算部とを備える。
【0008】
この態様では、異なる検知時間帯で検知したレジスタマークの相対位置に基づいて見当誤差を演算できるため、隣接レジスタマークの同時検知の制約のある特許文献1に比べて自由度が高い。例えば、あるレジスタマークが検知しづらい色材で印刷される場合、そのレジスタマークは見当誤差の演算には用いず、検知しやすい色材で印刷された他のレジスタマークを選択して効果的に見当誤差を演算できる。
【0009】
本発明の別の態様は、印刷方法である。この方法は、第1の印刷ユニットが移動する被印刷物に印刷する際に、所定の第1の位置に第1のレジスタマークを印刷するステップと、第2の印刷ユニットが被印刷物に印刷する際に、所定の第2の位置に第2のレジスタマークを印刷するステップと、マークセンサが、第1のレジスタマークがマークセンサの検知領域を通過する第1の検知時間帯に第1のレジスタマークを検知し、第2のレジスタマークがマークセンサの検知領域を通過する第1の検知時間帯と異なる第2の検知時間帯に第2のレジスタマークを検知するステップと、マークセンサが検知した第1のレジスタマークおよび第2のレジスタマークの相対位置に基づき、第1の印刷ユニットと第2の印刷ユニットの見当誤差を演算するステップとを備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、見当誤差を効果的に検知できる印刷装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の構成を示す図である。
【
図4】見当制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】アドレスの付与方法を模式的に示す図である。
【
図6】ゲート選択部のゲート選択の具体例を示す図である。
【
図7】低速稼働時に発生する見当誤差を示す図である。
【
図8】高速稼働時に発生する見当誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る印刷装置10の構成を示す。印刷装置10は、ブラック(K)の印刷を行う第1印刷ユニット11A、シアン(C)の印刷を行う第2印刷ユニット11B、マゼンタ(M)の印刷を行う第3印刷ユニット11C、イエロー(Y)の印刷を行う第4印刷ユニット11D、見当制御装置30を備える。以下、第1印刷ユニット11A~第4印刷ユニット11Dを適宜、印刷ユニット11と総称する。なお、各印刷ユニット11の印刷色は上記に限らず、任意の印刷色を任意の順序で各印刷ユニット11に割り当てることができる。また、より多くの色を印刷するため、印刷ユニットを5個以上設けてもよい。
【0015】
第1印刷ユニット11Aは、第1版胴13A、第1圧胴17A、第1駆動モータ19A、第1エンコーダ21Aを備える。第2印刷ユニット11Bは、第2版胴13B、第2圧胴17B、第2駆動モータ19B、第2エンコーダ21B、第2マークセンサ23Bを備える。第3印刷ユニット11Cは、第3版胴13C、第3圧胴17C、第3駆動モータ19C、第3エンコーダ21C、第3マークセンサ23Cを備える。第4印刷ユニット11Dは、第4版胴13D、第4圧胴17D、第4駆動モータ19D、第4エンコーダ21D、第4マークセンサ23Dを備える。以下、第1版胴13A~第4版胴13Dを適宜、版胴13と総称し、第1圧胴17A~第4圧胴17Dを適宜、圧胴17と総称し、第1駆動モータ19A~第4駆動モータ19Dを適宜、駆動モータ19と総称し、第1エンコーダ21A~第4エンコーダ21Dを適宜、エンコーダ21と総称し、第2マークセンサ23B~第4マークセンサ23Dを適宜、マークセンサ23と総称する。
【0016】
印刷装置10は、巻取紙であるウェブ50を被印刷物として印刷する。各印刷ユニット11は、ウェブ50の移動方向に沿って設置される。ウェブ50は、その移動経路に沿って配列されるガイドローラ25により案内され、各印刷ユニット11の版胴13及び圧胴17により、版胴13に巻き付けられた刷版に対応した各色の絵柄が順次印刷される。
【0017】
版胴13は、基準マーク印刷部14、マーク印刷部としてのレジスタマーク印刷部15を有する。
図2(a)は、見当誤差がないときの第1レジスタマーク53A~第4レジスタマーク53Dの位置関係を示し、
図2(b)は見当誤差があるときの位置関係を示す。
図2(a)ではトンボマーク52も併せて示す。基準マークとしてのトンボマーク52は、各版胴13の基準マーク印刷部14で印刷される。第1レジスタマーク53Aは、第1版胴13Aのレジスタマーク印刷部15で所定の第1位置に印刷され、第2レジスタマーク53Bは、第2版胴13Bのレジスタマーク印刷部15で所定の第2位置に印刷され、第3レジスタマーク53Cは、第3版胴13Cのレジスタマーク印刷部15で所定の第3位置に印刷され、第4レジスタマーク53Dは、第4版胴13Dのレジスタマーク印刷部15で所定の第4位置に印刷される。以下、第1レジスタマーク53A~第4レジスタマーク53Dを適宜、レジスタマーク53と総称する。
【0018】
見当誤差がない
図2(a)では、トンボマーク52と第1レジスタマーク53Aは間隔L0で印刷され、各レジスタマーク53は正規の位置に間隔L1で印刷される。すなわち、第1レジスタマーク53Aが印刷される第1位置と第2レジスタマーク53Bが印刷される第2位置の相対距離、第2レジスタマーク53Bが印刷される第2位置と第3レジスタマーク53Cが印刷される第3位置の相対距離、第3レジスタマーク53Cが印刷される第3位置と第4レジスタマーク53Dが印刷される第4位置の相対距離は、いずれも間隔L1に等しい。見当誤差がある
図2(b)では、レジスタマーク53が正規の位置からずれて印刷される。図示の例では、第2レジスタマーク53Bが正規の位置からずれている。このとき、第1レジスタマーク53Aと第2レジスタマーク53Bの相対距離は正規のL1より小さくなっており、その差が見当誤差となる。同様に、第2レジスタマーク53Bと第3レジスタマーク53Cの相対距離は正規のL1より大きくなっており、その差も見当誤差となる。
【0019】
図1に戻り、前からn段目の版胴13では、基準マーク印刷部14、レジスタマーク印刷部15が、L0+(n-1)×L1の間隔で設けられる。全ての版胴13の周長は同一であり、各版胴13を一回転させることで各色の絵柄を一回分印刷し、その繰り返しで連続的に印刷する。
図2(a)に示されるように、各回の印刷では、各版胴13の基準マーク印刷部14が同一の位置にトンボマーク52を印刷し、各版胴13のレジスタマーク印刷部15がL1の間隔で各レジスタマーク53を印刷する。
【0020】
各版胴13は、個別の駆動モータ19で回転駆動される。印刷装置10の印刷動作中、各駆動モータ19は電気的に回転同期がとられ、各版胴13は同一の回転速度で回転する。すなわち、印刷装置10は、セクショナルドライブ方式で構成される。各駆動モータ19は、その機械軸にエンコーダ21が設けられる。
【0021】
エンコーダ21は、インクリメンタル式エンコーダである。エンコーダ21は、版胴13の一回転につき、予め定められた回数のA相、B相のパルス信号と、一回のZ相のパルス信号を出力する。A相、B相のパルス信号はカウンタでカウントされ、Z相のパルス信号でカウント値がリセットされる。パルス信号のカウント値により版胴13の位相(回転位置)が検知される。なお、エンコーダ21は、版胴13の位相を検知できるものであれば方式は問わず、アブソリュート式のシリアルエンコーダでもよい。
【0022】
図3は印刷ユニット11の構成を示す。マークセンサ23は、同じ印刷ユニット11の版胴13より下流側に設けられる。マークセンサ23は、複数の光検知素子T1、T2を有する。上流側の第1光検知素子T1と下流側の第2光検知素子T2は間隔L1で配置される。このため、同じ間隔L1で印刷される隣接するレジスタマーク53A~53Dを、各光検知素子T1、T2がほぼ同じタイミングで検知できる。
【0023】
図4は、見当制御装置30の構成を示すブロック図である。この構成は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現され、ソフトウェア的にはメモリに格納されたプログラムなどにより実現される。ここではそれらの連携により実現される機能ブロックを示す。
【0024】
見当制御装置30は、制御部31と記憶部41を備える。制御部31は、検知制御部33と、第2の見当誤差演算部としての非隣接マーク見当誤差演算部35と、第1の見当誤差演算部としての隣接マーク見当誤差演算部37と、見当誤差演算切替部38と、見当誤差補正部39を備える。記憶部41は、制御部31の制御に関する情報を記憶する汎用メモリである。
【0025】
検知制御部33は、各マークセンサ23B~23Dを検知可能状態とする検知時間帯を個別に設定する。
図2(a)に示されるように、各版胴13の一回転に相当する一回分の印刷では、ウェブ50の移動方向である
図2の上下方向の帯状領域にトンボマーク52と4個のレジスタマーク53A~53Dが印刷されるが、この帯状領域には図示しない他の絵柄や情報も印刷される。これらの他の絵柄や情報による誤検知を防止するため、各マークセンサ23B~23Dの検知時間帯を限定し、トンボマーク52やレジスタマーク53だけを検知できるようにする。各マークセンサ23B~23Dの検知時間帯は、それぞれが設けられる印刷ユニット11B~11Dの各版胴13B~13Dの回転角度と関連付けられたアドレスに基づき設定される。
【0026】
図5は、印刷ユニット11Dを例にしてアドレスの付与方法を模式的に示す。印刷ユニット11Dの版胴13Dが時計回り方向に回転してウェブ50に印刷する際に、図示のレジスタマーク印刷部15がレジスタマーク53Dを印刷する。本図は、レジスタマーク53Dが、マークセンサ23Dの光検知素子T1の位置に来た状態を示す。このとき、レジスタマーク53Dは、印刷点PからLdの距離を移動している。その間の版胴13Dの回転角度をθdとすれば、版胴13Dの半径をrとしてLd=rθdである。
【0027】
図2で説明したように、ウェブ50には、印刷ユニット11Dより前段に設けられる他の印刷ユニット11A~Cのレジスタマーク印刷部15で印刷された他のレジスタマーク53A~53Cが存在する。レジスタマーク53Cの印刷点Pからの距離LcはLd+L1であり、レジスタマーク53Bの印刷点Pからの距離LbはLd+2L1であり、レジスタマーク53Aの印刷点Pからの距離LaはLd+3L1である。また、ウェブ50には、各印刷ユニット11A~Dの基準マーク印刷部14で印刷されたトンボマーク52が存在する。トンボマーク52の印刷点Pからの距離LsはLd+3L1+L0である。
【0028】
これらの各マークの印刷点Pからの距離は、版胴13Dの半径rで除算することで、版胴13Dの位相(回転角度)と関連付けられる。すなわち、図示の状態において、レジスタマーク53Dの位相はθdであり、レジスタマーク53Cの位相θcはLc/r=θd+L1/rであり、レジスタマーク53Bの位相θbはLb/r=θd+2L1/rであり、レジスタマーク53Aの位相θaはLa/r=θd+3L1/rであり、トンボマーク52の位相θsはLs/r=θd+(3L1+L0)/rである。
【0029】
さらに、これらの位相は、ゼロから最大値Amaxまでの連続する整数で表されるアドレスに変換される。このアドレスは、版胴13Dが時計回り方向に一回転する間にゼロから最大値Amax(例えば2047)まで単調に増加し、次の回転の開始時に再びゼロになる。アドレスがゼロとなる版胴13Dの基準回転位置は任意に設定できる。図示のレジスタマーク印刷部15が印刷点Pからθd回転した状態のレジスタマーク53DのアドレスをAdとすれば、レジスタマーク53CのアドレスAcはAd+Amax×(θc-θd)/2πであり、レジスタマーク53BのアドレスAbはAd+Amax×(θb-θd)/2πであり、レジスタマーク53AのアドレスAaはAd+Amax×(θa-θd)/2πであり、トンボマーク52のアドレスAsはAd+Amax×(θs-θd)/2πである。
【0030】
ここで、マークセンサ23Dの光検知素子T1に着目し、各マークが光検知素子T1の検知領域を通過するタイミングをアドレスで表すと次のようになる。レジスタマーク53DがT1を通過する際のアドレスAd1はAd(図示の状態)、レジスタマーク53CがT1を通過する際のアドレスAc1はAd-Amax×(θc-θd)/2π、レジスタマーク53BがT1を通過する際のアドレスAb1はAd-Amax×(θb-θd)/2π、レジスタマーク53AがT1を通過する際のアドレスAa1はAd-Amax×(θa-θd)/2π、トンボマーク52がT1を通過する際のアドレスAs1はAd-Amax×(θs-θd)/2πである。レジスタマーク53C、レジスタマーク53B、レジスタマーク53A、トンボマーク52がT1を通過するのは、図示の状態よりも前の時間であるため、その位相差分のアドレスがAdから減算される。
【0031】
以上のように、マークセンサ23Dの光検知素子T1の検知領域を各マークが通過するタイミングを、版胴13Dの回転角度と関連付けたアドレスで表現できる。同様に、マークセンサ23Dの光検知素子T2の検知領域を各マークが通過するタイミングもアドレスで表現できる。例えば、レジスタマーク53Cが光検知素子T2の位置に来た図示の状態のアドレスAc2はAdである。また、他の印刷ユニット11B、11Cに設けられるマークセンサ23B、23Cについても、各マークの通過タイミングを、版胴13B、13Cの回転角度と関連付けたアドレスで表現できる。ここで、各版胴13B~13Dの回転角度はエンコーダ21B~21Dで検知できるため、見当制御装置30は各版胴13B~13Dのアドレスをリアルタイムで把握して、その制御に使用できる。
【0032】
図4に戻り、検知制御部33は、各マークセンサ23B~23Dの検知時間帯をアドレスに基づき設定する。例えば、
図5の例において、光検知素子T1がレジスタマーク53Dを検知する検知時間帯として、アドレスAd1を含む所定のアドレス範囲を設定する。同様に、光検知素子T1がレジスタマーク53Cを検知する検知時間帯として、アドレスAc1を含む所定のアドレス範囲を設定し、光検知素子T1がレジスタマーク53Bを検知する検知時間帯として、アドレスAb1を含む所定のアドレス範囲を設定し、光検知素子T1がレジスタマーク53Aを検知する検知時間帯として、アドレスAa1を含む所定のアドレス範囲を設定し、光検知素子T1がトンボマーク52を検知する検知時間帯として、アドレスAs1を含む所定のアドレス範囲を設定する。以下、各マークに設定されるアドレス範囲をゲートといい、そのアドレス幅をゲート幅という。
【0033】
各マークに設定されるゲート幅は任意に設定できるが、全てのマークについて同一のゲート幅として各検知時間帯の長さを同一とするのが好ましい。また、ウェブ50の移動速度も考慮して、検知時間帯において各マークの正規の位置を中心とする所定範囲(例えば、各マークの間隔が20mm程度の場合、各マークの中心から±10mm未満)がマークセンサ23の検知領域を通過するようにゲート幅を動的に調整してもよい。また、上記の各ゲートは互いに重複のないように設定して、複数のマークで検知時間帯が重複しないようにするのが好ましい。
【0034】
以上のように検知制御部33が各マークセンサ23B~23Dのゲート(または検知時間帯)をアドレスに基づき設定することで、各マークセンサ23B~23Dは、トンボマーク52やレジスタマーク53A~Dだけを検知でき、同じ帯状領域に印刷される他の絵柄や情報による誤検知を防止できる。
【0035】
なお、
図5に示される印刷ユニット11Dでは、光検知素子T1、T2それぞれについて、5個のマーク52、53A~53Dのゲートが設定される。したがって、印刷ユニット11Dでは合計10個のゲートが設定される。同様に、印刷ユニット11Cでは、光検知素子T1、T2それぞれについて、4個のマーク52、53A~53Cのゲートが設定される。したがって、印刷ユニット11Cでは合計8個のゲートが設定される。また、印刷ユニット11Bでは、光検知素子T1、T2それぞれについて、3個のマーク52、53A~53Bのゲートが設定される。したがって、印刷ユニット11Bでは合計6個のゲートが設定される。このように、印刷装置10全体では、合計24個のゲートが設定される。以下、これらのゲートを区別するためGlmnと表記する。lは2~4の整数であり、l=2は印刷ユニット11Bを表し、l=3は印刷ユニット11Cを表し、l=4は印刷ユニット11Dを表す。mは1または2であり、m=1は光検知素子T1を表し、m=2は光検知素子T2を表す。nは0~4の整数であり、n=0はトンボマーク52を表し、n=1~4はそれぞれレジスタマーク53A~53Dを表す。したがって、合計24個のゲートは次のように表される。G210、G211、G212、G220、G221、G222、G310、G311、G312、G313、G320、G321、G322、G323、G410、G411、G412、G413、G414、G420、G421、G422、G423、G424。
【0036】
非隣接マーク見当誤差演算部35は、ゲート選択部351と、見当誤差演算部352を備える。ゲート選択部351は、見当誤差演算部352での演算のために、合計24個のゲートGlmnから異なるアドレスにある任意の2個のゲートを選択する。ここで、見当誤差演算部352での演算精度を上げるために同一の印刷ユニット11に含まれるゲート(lが同じゲート)を選択するのが好ましいが、異なる印刷ユニット11に含まれるゲートを選択してもよい。
【0037】
図6を参照して、ゲート選択部351のゲート選択の具体例を説明する。この図は、印刷ユニット11Dの各光検知素子T1、T2のレジスタマーク53A~53Dのゲートを示す。横軸は版胴13Dのアドレスを示す。上記の通り、版胴13Dが印刷時に回転するとアドレスが単調に増加するので、横軸は時間の経過を表す。
【0038】
図示される各アドレスAa1、Ab1、Ac1、Ad1については上述した。アドレスAa1には、光検知素子T1がレジスタマーク53Aを検知するゲートG411が設けられる。アドレスAb1には、光検知素子T1がレジスタマーク53Bを検知するゲートG412と、光検知素子T2がレジスタマーク53Aを検知するゲートG421が設けられる。アドレスAc1には、光検知素子T1がレジスタマーク53Cを検知するゲートG413と、光検知素子T2がレジスタマーク53Bを検知するゲートG422が設けられる。アドレスAd1には、光検知素子T1がレジスタマーク53Dを検知するゲートG414と、光検知素子T2がレジスタマーク53Cを検知するゲートG423が設けられる。各アドレスAa1、Ab1、Ac1、Ad1の間隔をΔAとして、アドレスAd1+ΔAには、光検知素子T2がレジスタマーク53Dを検知するゲートG424が設けられる。
【0039】
このように、各アドレスAb1~Ad1には、光検知素子T1のゲートG412~G414と、光検知素子T2のゲートG421~G423の二つのゲートが存在する。これらの同一アドレスのゲートの組合せについては、後述する隣接マーク見当誤差演算部37が見当誤差を演算するため、非隣接マーク見当誤差演算部35のゲート選択部351では選択しなくてもよい。つまり、ゲート選択部351は、主として、異なるアドレスに設けられた任意の2個のゲートを選択する。このゲートの選択は、同一の光検知素子で行ってもよいし、異なる光検知素子で行ってもよい。前者の場合、例えば、ゲートG411とゲートG414を選択する。後者の場合、例えば、ゲートG413とゲートG421を選択する。
図6は印刷ユニット11Dのゲートのみを示したが、ゲート選択部351は、他の印刷ユニット11B、11Cのゲートを選択してもよい。これにより、任意の印刷ユニットの任意のゲートの組合せに基づいて、見当誤差演算部352で見当誤差を演算できる。
【0040】
見当誤差演算部352は、ゲート選択部351で選択された2個のゲートで光検知素子が検知した信号に基づき、見当誤差を演算する。
図6に示されるように、各ゲートでは、各レジスタマーク53A~53Dによるパルスが検知される。見当誤差がない場合は、各パルスは各ゲート内の同一の位置にある。逆に、見当誤差がある場合は、各パルスは各ゲート内の異なる位置にある。したがって、各パルスの各ゲート内の相対位置を比較することで、見当誤差を演算できる。例えば、各ゲート内の位置をゲートの左端アドレスをゼロとしたゲート内アドレスで表した場合、各ゲート内における各パルスの立ち上がり位置のアドレスの差分が見当誤差となる。
【0041】
例えば、ゲートG411とゲートG414を対象として演算した見当誤差は、ゲートG411のレジスタマーク53Aを印刷した印刷ユニット11Aと、ゲートG414のレジスタマーク53Dを印刷した印刷ユニット11Dの見当誤差である。また、ゲートG413とゲートG421を対象として演算した見当誤差は、ゲートG413のレジスタマーク53Cを印刷した印刷ユニット11Cと、ゲートG421のレジスタマーク53Aを印刷した印刷ユニット11Aの見当誤差である。このように、任意の印刷ユニットの見当誤差を演算できる。
【0042】
なお、印刷ユニット11Dのゲートを示す
図6において、ゲートG414、G424は、印刷ユニット11D自身が印刷したレジスタマーク53Dを検知する。
図5に示すように、このレジスタマーク53Dは、その印刷点Pから距離Ldだけ移動したに過ぎず、その間に大きな見当誤差が生じることは通常考えられない。そのため、光検知素子T1、T2がゲートG414、G424でレジスタマーク53Dを検知できなくても問題ない。例えば、印刷ユニット11Dが検知しづらい色材(例えば、色の薄い色材や、ニスのような透明または半透明な色材)で印刷する場合、レジスタマーク53Dが検知できないこともあるが、ゲートG414、G424内の所期の位置にレジスタマーク53Dのパルスが立ち上がったものとして扱うことができ、他のゲートのパルス立ち上がり位置との見当誤差を演算できる。以上の内容は、印刷ユニット11CのゲートG313、G323、印刷ユニット11BのゲートG212、G222にも当てはまる。
【0043】
隣接マーク見当誤差演算部37は、光検知素子T1、T2が同一アドレスのゲートで検知した信号に基づき、見当誤差を演算する。印刷ユニット11Dのゲートを示す
図6では、アドレスAb1におけるゲートG412、G421、アドレスAc1におけるゲートG413、G422、アドレスAd1におけるゲートG414、G423の組合せが演算対象となる。また、印刷ユニット11Cでは、ゲートG312、G321、ゲートG313、G322が演算対象となり、印刷ユニット11Bでは、ゲートG212、G221が演算対象となる。これらの同一アドレスのゲートの組合せでは、レジスタマーク53と同一の間隔L1で離間配置された光検知素子T1、T2が、隣接するレジスタマーク53を同時に検知できるので、ゲート選択部351のようなゲート選択が不要である。見当誤差の演算方法については、見当誤差演算部352について上述した通りである。このような隣接マーク見当誤差演算部37によれば、隣接するレジスタマーク53を印刷した隣接する印刷ユニット11の見当誤差を演算できる。
【0044】
以上で説明した、非隣接マーク見当誤差演算部35による見当誤差演算と、隣接マーク見当誤差演算部37による見当誤差演算は、同時に併用してもよいが、見当誤差演算切替部38によって切り替えてもよい。例えば、見当誤差演算切替部38は、刷り出しの際などウェブ50の移動速度が所定の閾値未満の際は隣接マーク見当誤差演算部37を用い、ウェブ50の移動速度が閾値以上の際は非隣接マーク見当誤差演算部35を用いる。
【0045】
このとき、非隣接マーク見当誤差演算部35のゲート選択部351は、全ての印刷ユニット11で最初にウェブ50に印刷する印刷ユニット11Aが印刷する色を基準色として、その基準色で印刷されるレジスタマーク53Aを検知するゲートを一方のゲートに選択し、他方のゲートとして他の印刷ユニット11B~Dが印刷するレジスタマーク53B~53Dを検知するゲートを選択する。印刷ユニット11Dのゲートを示す
図6では、一方のゲートとして基準色のレジスタマーク53Aを検知するゲートG411またはG421を選択し、他方のゲートとして基準色以外のレジスタマーク53B~53Dを検知する任意のゲートを選択する。このようにすることで、非隣接マーク見当誤差演算部35は、基準色を印刷する印刷ユニット11Aと、基準色以外を印刷する印刷ユニット11B~11Dの見当誤差をそれぞれ演算できる。なお、印刷ユニット11A以外の印刷ユニット11が印刷する色を基準色としてもよい。一方、隣接マーク見当誤差演算部37は隣接色を印刷する印刷ユニット11A~11Dの見当誤差を演算する。
【0046】
つまり、見当誤差演算切替部38は、低速時は隣接マーク見当誤差演算部37によって隣接色に基づく見当誤差を演算し、高速時は非隣接マーク見当誤差演算部35によって基準色に基づく見当誤差を演算する。
【0047】
図7に模式的に示されるように、刷り出しの際など、ウェブ50の移動速度が小さく、通常稼働速度に到達するまでの加速度が発生している間は、各印刷ユニットの動作が安定せず、各印刷ユニット間の張力変動等の影響もあるため、各印刷ユニット間でそれぞれ大きな見当誤差が発生しうる。
図7の例は、見当誤差のない
図6の例に対して、各印刷ユニット間でeで表される見当誤差が発生している様子を示す。まず、レジスタマーク53Cを検知するゲートG413では、印刷ユニット11Dと印刷ユニット11C間の見当誤差eにより、パルス(点線)が正規の位置(実線)よりもeだけずれる。次に、レジスタマーク53Bを検知するゲートG412では、印刷ユニット11Cと印刷ユニット11B間の見当誤差eがさらに加わるため、パルスが正規の位置よりも2eだけずれる。同様に、レジスタマーク53Aを検知するゲートG411では、印刷ユニット11Bと印刷ユニット11A間の見当誤差eがさらに加わるため、パルスが正規の位置よりも3eだけずれる。このとき、基準色で印刷されるレジスタマーク53Aのパルス(点線)はゲート外に出てしまうため、基準色を利用する非隣接マーク見当誤差演算部35では見当誤差を演算できない。一方、隣接色を利用する隣接マーク見当誤差演算部37によれば、見当誤差が小さいゲートG414とG423の対から順に見当誤差を補正できる。このように、低速時は隣接色を利用する隣接マーク見当誤差演算部37を用いるのが好ましい。
【0048】
一方、
図8は、ウェブ50が通常稼働速度に到達し加速度がほぼゼロの高速時の様子を模式的に示す。通常稼働速度に到達した後は、
図7の低速時とは異なり、各印刷ユニットの動作が安定しているので、見当誤差が発生したとしても一部の印刷ユニット11間に留まる。
図8の例は、見当誤差のない
図6の例に対して、印刷ユニット11D、11C間でeで表される見当誤差が発生している状態を示す。印刷ユニット11A~11Cの間には見当誤差が発生していないため、同一の見当誤差eがレジスタマーク53A~53Cを検知するゲートで発生している。これらの見当誤差eは、基準色を利用する非隣接マーク見当誤差演算部35でも、隣接色を利用する隣接マーク見当誤差演算部37でも補正可能だが、隣接マーク見当誤差演算部37を用いる場合は、見当誤差が残留する可能性がある。例えば、アドレスAb1の二つのゲートG412、G421、アドレスAc1の二つのゲートG413、G422は、隣接色のレジスタマークを比較するが、これらのゲート対におけるパルス位置は同一である(両パルスともeだけずれている)。このため、これらのパルスが正規の位置からeだけずれた状態が継続する可能性がある。一方、基準色を利用する非隣接マーク見当誤差演算部35によれば、まずゲートG411(基準色)、G414の見当誤差演算に基づきゲートG411の見当誤差eを補正し、その上でゲートG411と、ゲートG412、G413それぞれの見当誤差演算に基づき、G412、G413のそれぞれの見当誤差eを補正する。したがって、見当誤差の残留が防止される。このように、高速時は基準色を利用する非隣接マーク見当誤差演算部35を用いるのが好ましい。
【0049】
なお、ウェブ50の移動速度は、各印刷ユニット11のエンコーダ21の出力に基づき演算できるので、その演算結果を所定の閾値と比較することで、ウェブ50の低速時と高速時を区別できる。また、見当誤差演算切替部38での切り替えは、ウェブ50の加速度に基づいて行ってもよい。すなわち、見当誤差演算切替部38は、ウェブ50の加速度が所定の閾値以上の際(刷り出し時など)は隣接マーク見当誤差演算部37を用い、ウェブ50の加速度が閾値未満の際(通常稼働速度到達後など)は非隣接マーク見当誤差演算部35を用いる。なお、ウェブ50の加速度も、各印刷ユニット11のエンコーダ21の出力に基づき演算できる。また、見当誤差演算切替部38での切り替えは、印刷装置10のオペレータのマニュアル操作に基づいて行ってもよい。
【0050】
見当誤差補正部39は、非隣接マーク見当誤差演算部35および隣接マーク見当誤差演算部37で演算された見当誤差を補正する。見当誤差補正部39は、見当誤差が生じている印刷ユニット11の駆動モータ19または図示しないサイドレーに補正信号を出力する。駆動モータ19またはサイドレーは、補正信号に基づき見当誤差が修正されるように版胴13を駆動する。駆動モータ19はウェブ50の移動方向の見当誤差を修正し、サイドレーはウェブ50の移動方向に垂直な幅方向の見当誤差を修正する。
【0051】
以上の実施形態によれば、非隣接マーク見当誤差演算部35が、任意の印刷ユニット11の任意のゲートの組合せに基づいて効果的に見当誤差を演算できる。隣接しないレジスタマーク53を異なるアドレスまたは検知時間帯のゲートから選択できるため、検討誤差の演算の自由度が飛躍的に高まる。例えば、あるレジスタマーク53が検知しづらい色材で印刷される場合、そのレジスタマーク53は見当誤差の演算には用いず、検知しやすい色材で印刷された他のレジスタマーク53を選択して見当誤差を演算できる。
【0052】
また、基準色を利用する非隣接マーク見当誤差演算部35と、隣接色を利用する隣接マーク見当誤差演算部37を設け、見当誤差演算切替部38によって切り替えて用いることで、被印刷物の移動状態に応じた適切な見当誤差演算を行える。
【0053】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
実施形態では、被印刷物として巻取紙であるウェブ50を例示したが、印刷装置10は任意の被印刷物に印刷可能である。例えば、任意の素材で形成されるシートでもよいし、容器や製品など任意の形状の個体の表面でもよい。
【0055】
実施形態では、マークセンサ23に二つの検知素子T1、T2が設けられたが、検知素子は一つでもよい。このとき、
図6の例では、T1(またはT2)の波形のみが得られるが、ゲート選択部351が、アドレスまたは検知時間帯が異なるゲートG411~G414の中から任意の二つのゲートを選択し、見当誤差演算部352が見当誤差を演算できるので、各印刷ユニット11A~11D間の見当誤差を補正できる。また、基準色を印刷ユニット11Aの印刷色として、ゲート選択部351で、一方のゲートとしてゲートG411を選択し、他方のゲートとしてゲートG412~G414を選択すれば、基準色に基づく見当誤差演算ができる。また、ゲート選択部351で、ゲートG411~G414から隣接する二つのゲートを選択すれば、隣接色に基づく見当誤差演算ができる。
【0056】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 印刷装置、11 印刷ユニット、13 版胴、14 基準マーク印刷部、15 レジスタマーク印刷部、21 エンコーダ、23 マークセンサ、30 見当制御装置、33 検知制御部、35 非隣接マーク見当誤差演算部、37 隣接マーク見当誤差演算部、38 見当誤差演算切替部、39 見当誤差補正部、53 レジスタマーク、351 ゲート選択部、352 見当誤差演算部、T1 第1光検知素子、T2 第2光検知素子。