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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】木質繊維板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 1/00 20060101AFI20240611BHJP
   B27N 3/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B27N1/00
B27N3/06 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020543793
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019053408
(87)【国際公開番号】W WO2019162145
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】18157665.3
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ライフェルト,フェルディナント
(72)【発明者】
【氏名】ボス,サビーネ
(72)【発明者】
【氏名】フェッセンベッカー,アヒム
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03059056(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361489(US,A1)
【文献】特開2006-089676(JP,A)
【文献】特開平10-316958(JP,A)
【文献】特開2002-052515(JP,A)
【文献】特開平06-063913(JP,A)
【文献】特開2008-023919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00 - 3/28
B27N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a)木材を木材チップへと破砕するステップ、
b)木材チップを、100~180℃の温度及び1~10barの圧力で予備蒸し器中で蒸気により熱水前処理するステップ、
c)前処理された木材チップを、150~200℃の温度及び4.5~16barの圧力で蒸気の存在下で、リファイナー中で微細木材粒子へと粉砕するステップ、
d)微細木材粒子を接着及び乾燥させるステップであって、木材粒子の乾燥は、接着前に実施することもできる、ステップ、
e)接着された繊維からマットを形成させ、マットを予備圧縮するステップ、
f)接着及び乾燥された木材粒子を、170~240℃の温度で木質繊維板へとプレスするステップ
を含む、木質繊維板の製造方法であって、ステップd)~e)の少なくとも1つは、1つ又は複数の界面活性剤の存在下で実施され、界面活性剤が、ステップd)及び/又はステップe)において添加される、方法。
【請求項2】
界面活性剤が、水溶液としてブローラインに注入されることによって、ステップd)において添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤が、予備圧縮されたマットの上又は下へ界面活性剤の水溶液を噴霧することによって、ステップe)において添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
界面活性剤が、アニオン性又は非イオン性界面活性剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)における界面活性剤の量が、完全乾燥木材に基づき、0.05~5重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
微細木材粒子が、還元により漂白される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
木質繊維板が、中密度繊維板である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤が、分岐及び/又は非分岐C8~C20アルキル鎖及び2~50個のエチレンオキシド単位を有する脂肪アルコールエーテルサルフェートから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
界面活性剤が、一般式(I)
【化1】
[式中、
R1=直鎖又は分岐、第一級又は第二級C4~C24アルキルフェニル又はナフチル、
R2=直鎖又は分岐C1~C16アルキル、
R3=H、ベンジル、直鎖又は分岐C1~C18アルキル、
n=1~200、
m=0~80]
のアルキルアルコキシレート及び/又はアリールアルコキシレートから選択され、アルキレンオキシド単位は、任意の所望の順序でブロックごとに又は統計的に配置することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
界面活性剤が、3~20個のエチレンオキシド単位を有するC8~C15アルキルエトキシレートから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
界面活性剤が、一般式(IIa)又は(IIb)
R1O(R2O)b(Z)a (IIa)
R1O(Z)a(R2O)bH (IIb)
[式中、
R1=直鎖又は分岐C6~C30アルキル、
R2=C2~C4アルキレン、
Z=独立して、それぞれ5又は6個の炭素原子を有する1つの糖ラジカル、
b=0~12、
a=1~10]
のアルキルポリグリコシドから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
R1が、C8~C16アルキル鎖であり、b=0であり、a=1~4である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質繊維板、例えばMDF板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中密度繊維板(MDF)及び高密度繊維板(HDF)の市場は、長年にわたって成長している。MDF及びHDF板は、従来のパーティクルボードと同様に加工することができる。しかし、均一な構造のため、それらはまた、輪郭を型取った部品(profiled part)の製造に適しており、それらの使用は、家具の構築においてますます広がっている。
【0003】
繊維板の製造について、木材は、木材粒子へと繊維離解(defibrate)され、接着され、板へとプレスされる。様々な種類の木材がこのプロセスにおいて使用され、針葉樹木材、例えばトウヒ及びマツが主に使用される。他の種類の木材、例えばブナ又はユーカリも使用することができる。
【0004】
繊維製造のための木材の皮をはぎ、木材チップへと破砕する。この後、木材チップは、粉砕装置、いわゆるリファイナー(refiner)において木材粒子へと繊維離解される。
【0005】
リファイナーは、互いに直接隣接する放射状レリーフが付いた2つの金属ディスクからなり得る。これらのディスクの1つが移動し得るか、又は両方が反対方向に回転し得る。リファイナーは、通常、陽圧下で作動する。木材チップは、これら2つのディスク間で繊維離解され、繊維の細かさは、ディスク間の粉砕間隙に依存する。
【0006】
木材チップの繊維離解はエネルギーを消費する。リファイナーにおけるエネルギー消費量は、木材1トンあたり最大400KW/hである。繊維離解のエネルギーコストは、MDF板の製造コストの最大20%を占める可能性がある。エネルギー消費量を削減するために、木材チップは、熱水前処理に供することができる。この目的のため、木材チップは、通常、100~180℃の温度及び最大10barの圧力でボイラーにおいて前処理される。この処理は、中葉(middle lamella)を柔らかくし、リファイナーにおける繊維離解を促進する。
【0007】
次のステップでは、結合剤、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂(UF樹脂)、尿素とメラミンから構成される混合樹脂(MUF樹脂)、フェノールホルムアルデヒド樹脂(PF樹脂)、又はジイソシアネート接着剤が、木質繊維パルプに添加される。結合剤は、通常、まだ湿っている繊維に添加されるが、乾燥後に添加することもできる。湿った繊維への添加は、通常、いわゆる「ブローライン(blow line)」において実施される。結合剤と一緒にワックスを添加することもできる。
【0008】
この後、繊維は、約7%~15%の残留水分含有量まで乾燥機において乾燥される。次のステップでは、接着された繊維は散在されてマットを形成し、予備圧縮(予備プレス)される。この後、予備圧縮されたマットは、170~240℃の温度で加熱プレスにおいて板へとプレスされる。
【0009】
次いで、通常、滑らかな表面(ラッカーを塗るか又は装飾層を設けることができる)を得るために、板は研磨され、磨かれなければならない。板は、しばしば、不十分な繊維結合、及び不均一な分布から生じる表面上の粗い領域を示すため、研磨ステップが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を軽減又は完全に回避する木質繊維板の製造方法を提供することである。特に、目的は、研磨の複雑さが低減され、並びに/又は製造された木質繊維板のより良好な内部繊維接着及び/若しくはより滑らかな表面が達成され、並びに/又は製造された木質繊維板がより良好な安定性を示す、木質繊維板の製造方法を提供することである。さらなる目的は、水の繊維板への浸透を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これは、界面活性剤の使用により本発明に従って達成される。
【0012】
EP 2168738は、木質繊維板の製造における界面活性剤の使用を記載しており、この場合の界面活性剤の目的は、含浸された流体の未加工木質繊維板への浸透を促進することである。このようにして、所定の最終水分が達成されることになる。使用される界面活性剤の種類はさらに指定されない。
【0013】
EP 2619016 B1は、木材パネルを製造する方法を開示しており、一実施形態では、添加剤が、木質材料ケーキのプレス前に添加される。添加剤は界面活性剤を含有し得るが、界面活性剤はさらに指定されない。
【0014】
"Advantages of Alkylpolyglycoside Surfactants in Mechanical Pulping"、IPCOM000230969Dは、製紙用木材パルプの製造におけるアルキルポリグリコシドの使用について記載する。
【0015】
それにもかかわらず、上記の刊行物は、上記の目的を達成することに寄与しない。
【0016】
しかし、上記の目的は、以下のステップ:
a)木材を木材チップへと破砕するステップ、
b)木材チップを、100~180℃の温度及び1~10barの圧力で予備蒸し器中で蒸気により熱水前処理するステップ、
c)前処理された木材チップを、150℃~200℃の温度及び4.5~16barの圧力で蒸気の存在下で、リファイナー中で微細木材粒子へと粉砕するステップ、
d)微細木材粒子を接着及び乾燥させるステップであって、木材粒子の乾燥は、接着前に実施することもできる、ステップ、
e)接着された繊維からマットを形成させ、マットを予備圧縮するステップ、
f)接着及び乾燥された木材粒子を、170~240℃の温度で木質繊維板へとプレスするステップ
を含む、木質繊維板を製造するための本発明による方法であって、
前処理された木材チップの微細木材粒子への粉砕c)、及び/又は接着(原則としていわゆるブローラインにおいて(d))、及び/又は繊維の形成及び予備圧縮(e)は、1つ又は複数の界面活性剤の存在下で実施される、方法によって達成される。
【0017】
この目的は、以下のステップ:
a)木材を木材チップへと破砕するステップ、
b)木材チップを、100~180℃の温度及び1~10barの圧力で予備蒸し器中で蒸気により熱水前処理するステップ、
c)前処理された木材チップを、150℃~200℃の温度及び4.5~16barの圧力で蒸気の存在下で、リファイナー中で微細木材粒子へと粉砕するステップ、
d)微細木材粒子を接着及び乾燥させるステップであって、木材粒子の乾燥は、接着前に実施することもでき、場合により、1つ又は複数の界面活性剤が、接着剤と共にブローラインに注入される、ステップ、
e)接着された繊維からマットを形成させ、マットを予備圧縮するステップであって、場合により、1つ又は複数の界面活性剤が、予備圧縮されたマットの上又は下に噴霧される、ステップ、及び
場合により、f)接着及び乾燥された木材粒子を、170~240℃の温度で木質繊維板へとプレスするステップ
を含む、微細木材粒子を製造する方法によってさらに達成される。
【0018】
界面活性剤の添加は、本方法の全てのステップにおいて、又は本方法の1つ以上のステップにおいてのみ実施することができる。例えば、少なくとも1つの界面活性剤は、ステップd)及び/又はステップe)において添加することができる。
【0019】
驚くべきことに、本発明による方法により、いくつかの技術的利点が達成される。
【0020】
本発明による界面活性剤の添加のため、木質繊維板の表面は、驚くべきことに、より疎水性になる。木質繊維板の表面は、より滑らかにもなり、研磨は短縮されるか、又はさらには全く省くことができる。その後のコーティングプロセスも機能的に改善される。
【0021】
最後に、本発明による方法の使用において、木質繊維板はまた、より視覚的に魅力的な外観及び増加した安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
リファイナーステップでの使用において、界面活性剤は、予備蒸し器中、又はリファイナーの上流の供給スクリュー(feeding screw)中のいずれかで、木材チップに添加することができる。接着ステップでの使用において、界面活性剤は、水溶液としてブローラインに注入することができる。界面活性剤の水溶液はまた、予備圧縮されたマットの上又は下への噴霧に使用される。
【0023】
使用される界面活性剤の量は、通常、完全乾燥(bd)木材に基づき、0.05重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%である。
【0024】
使用される界面活性剤は、アニオン性又は非イオン性であってもよい。複数の異なる界面活性剤の組み合わせを使用することもできる。
【0025】
非イオン性界面活性剤を含有する組み合わせ、又は非イオン性界面活性剤単独が、好ましくは使用される。
【0026】
アニオン性界面活性剤は、分岐又は非分岐脂肪アルコール又はオキソアルコール、分岐又は非分岐脂肪アルコールオキシレート又はオキソアルコールオキシレートのサルフェート、スルホネート又はホスフェートであってもよい。ナフチルアルコール又はエトキシル化ナフチルアルコール、アリールアルキルアルコール又はアリールアルキルエトキシレートのサルフェート、スルホネート又はホスフェートも可能である。
【0027】
適切なアニオン性界面活性剤は、分岐又は非分岐C8~C20アルキル鎖及び2~50個のエチレンオキシド(EO)単位を有する脂肪アルコールエーテルサルフェートである。C8~C14アルキル鎖及び2~12個のエチレンオキシド単位を有する脂肪アルコールエーテルサルフェートが特に好ましい。
【0028】
C8~C14アルキル鎖及び2~12個のエチレンオキシド単位を有する脂肪アルコールエーテルサルフェートも適している。
【0029】
非イオン性界面活性剤は、非分岐又は分岐、第一級又は第二級アルキル鎖を有するアルキルアルコールアルコキシレート、又はアリールアルコキシレートであってもよい。式(I)
【0030】
【化1】
[式中、
R1=直鎖又は分岐、第一級又は第二級C4~C24アルキルフェニル及びナフチル、
R2=直鎖又は分岐C1~C16アルキル、
R3=H、ベンジル、直鎖又は分岐C1~C18アルキル、
n=1~200、
m=0~80]
のアルキルアルコキシレート又はアリールアルコキシレートが好ましく、アルキレンオキシド単位は、任意の所望の順序でブロックごとに又は統計的に配置することができる。
【0031】
さらに使用可能な非イオン性界面活性剤は、3~20個のエチレンオキシド単位を有する分岐又は非分岐C8~C15アルキルエトキシレートである。
【0032】
さらに使用可能な非イオン性界面活性剤は、3~20個のエチレンオキシド単位を有する分岐又は非分岐C8~C15アルキルエトキシレートである。
【0033】
非イオン性界面活性剤は、PO/EOブロックコポリマーであってもよい。
【0034】
好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、好ましくは一般式(IIa)又は(IIb)
R1O(R2O)b(Z)a (IIa)
R1O(Z)a(R2O)bH (IIb)
[式中、
R1=直鎖又は分岐C4~C30アルキル、
R2=C2~C4アルキレン、
Z=互いに独立して、糖ラジカル、好ましくはグルコース又はキシロース、
b=0~12、
a=1~15(小数も可能)]
の、C5糖又はC6糖又はそれらの混合物に基づくアルキルポリグリコシドであってもよい。
【0035】
好ましいアルキルポリグリコシドでは、R1は、直鎖又は分岐C8~C16アルキルラジカルであり、b=0であり、a=1.1~4である。
【0036】
本発明の文脈において、「木材粒子」、「木材チップ」、「微細木材粒子」、「繊維」は、微粒子状のセルロース含有粒子を指すと理解される。これは、例えば、木材及び他のセルロース含有材料の繊維及びチップを含む。植物から入手可能な全ての繊維材料は、木材粒子及び木質繊維板の基礎材料として使用することができる。例えば、木材は、通常、原材料として使用されるが、適切なセルロース含有粒子は、ヤシ及び一年生植物、例えばバガス又はワラから得ることもできる。農業廃棄物はさらなる供給源である。好ましい基礎材料は、軽木材の種類、特にトウヒ又はマツであるが、より濃い色の木材の種類、例えばブナ又はユーカリも使用することができる。
【0037】
木質材料(セルロース含有原材料)は、本発明による方法のステップa)において破砕され、場合により洗浄される。この後、蒸気による木材チップの熱水前処理が続く。
【0038】
本発明による方法のステップb)において、破砕された木質材料は、予備蒸し器(ボイラー)中で蒸気により前処理される。これは、好ましくは、1~10barの圧力及び100~180℃の温度で実施される。正確な温度及び圧力は、使用されるそれぞれの原材料に依存する。一年生植物の破砕には、通常、木材などの多年生植物の破砕に必要な温度よりも低い温度で十分である。
【0039】
ステップc)において、熱水前処理された破砕木質材料は、いわゆるリファイナーに移され、そこで微粒子状の粒子へと粉砕される。リファイナーは、通常、繊維材料を粉砕するための回転する及び場合により静止したブレード又はディスクを有する粉砕装置であり、好ましくは、互いに密接に隣接する放射状レリーフを備えた2つの金属ディスクを含む。これら2つのディスクのうち、一方は移動し、もう一方は静止してよいが、両方のディスクが反対方向に回転してもよい。リファイナーは、通常、陽圧下で操作される。
【0040】
前処理された破砕木質材料の粉砕は、この目的に適した他の装置で実施することもできる。
【0041】
リファイナーでのMDF板用の木質繊維の製造は、一般に、150~180℃、好ましくは約170℃の温度で行われる。
【0042】
界面活性剤は、本方法における様々な時点で本発明に従って添加することができる。最初の投入の可能性は、リファイナー、又はリファイナーの上流の予備蒸し器である。使用される界面活性剤の量は、完全乾燥(bd)木材に基づき、0.05重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%である。
【0043】
本発明による方法のステップd)では、微細木材粒子は、接着及び乾燥され、木材粒子の乾燥は、接着前に実施することもできる。本発明の一実施形態では、界面活性剤は、この時点で添加することができる。
【0044】
通常、木材粒子は、ブローラインを介してリファイナー中に広がっている陽圧によってリファイナーから排出される。次いで、木材粒子は、直接、すなわち、まだ湿っている間に、ブローラインにおいて接着させることができる。本発明による界面活性剤を投入するための第2の可能性は、ブローラインである。界面活性剤は、ブローラインへの注入により水溶液として添加することができる。使用される界面活性剤の量は、完全乾燥(bd)木材に基づき、0.05重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%である。この後、それらは乾燥機を通過し、その中で、それらは8~15%の残留水分含有量まで乾燥される。
【0045】
別の実施形態では、木材粒子は最初に乾燥され、次いで、乾燥状態で接着され、さらに加工される。
【0046】
本発明に従って製造される木質材料は、MDF、HDF、チップボード又はOSB板であってもよい。MDF及びHDF板が好ましく、MDF板が特に好ましい。
【0047】
MDF、HDF、OSB及びパーティクルボードは、木質材料板とも呼ばれる。それらは、接着された繊維又はチップをマットへと注ぎ、場合によりそれらを冷間予備圧縮し、170~240℃の温度で加熱プレスにおいてそれらを板へとプレスすることによって製造される。本方法におけるこの時点で、本発明の一実施形態では、界面活性剤はまた、好ましくは界面活性剤を水溶液として予備圧縮されたマットの上又は下に噴霧することによって、添加することができる。
【0048】
接着剤として使用される結合剤は、通常、部分的にメラミンで強化された尿素-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-メラミン樹脂、及びフェノール-ホルムアルデヒド樹脂である。イソシアネートは、通常ポリメチレンジイソシアネートに基づく、さらなる結合剤として使用される。
【0049】
木材粒子は、直接、すなわち、まだ湿っている間に、ブローラインにおいて接着させることができる。しかし、予備乾燥された木材粒子も、ミキサー、好ましくは連続運転ミキサーにおいて接着させることができる。ミキサーにおける接着は、パーティクルボード及びOSBの製造において特に好ましく、接着は、好ましくは、HDF及びMDF板の製造ではブローラインにおいて実施される。接着のさらなる可能な方法は、いわゆる乾式接着であり、これでは、乾燥された木材粒子に接着剤が噴霧される。
【0050】
木材粒子がブローラインにおいて接着される場合、次いで、それらは乾燥機を通過し、その中で、それらは、8~15重量%の残留水分含有量まで乾燥される。
【0051】
本発明による方法のステップe)において、接着及び乾燥された木材粒子は、次いで、マットへと注がれ、場合により冷間予備圧縮され、170~240℃の温度で加熱プレスにおいて板へとプレスされる。
【0052】
本発明による界面活性剤を投入するさらに可能な方法は、加熱プレスの上流で繊維マットを予備圧縮する方法である。界面活性剤は、水溶液として繊維マットの上又は下に噴霧することができる。使用される界面活性剤の量は、完全乾燥(bd)木材に基づき、0.05重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%である。
【実施例
【0053】
ここで、本発明のいくつかの態様を、以下の例示的な実施例によってさらに詳細に説明する。
【0054】
全ての試験について、トウヒ木材チップをリファイナーにおいて繊維離解し、表1に示される接着剤配合を使用してブローラインにおいて接着させた。
【0055】
木材チップを、約180℃の温度、約9barの圧力で、0.12mmの粉砕間隙を有するリファイナーにおいて繊維離解した。リファイナーの上流のボイラーにおける滞留時間は3~4分であった。必要なエネルギーは、粉砕プロセス中に測定した。
【0056】
繊維離解エネルギーの単位は、kWh/t bdである。Bdは、「完全乾燥木材(bone-dry wood)」を表す。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1
次いで、接着された繊維を、約8重量%の水分含有量まで乾燥機において乾燥させ、注いでマットを形成させ、予備圧縮し、220℃で約4mmの厚さの板へとプレスする。
【0059】
MDF板は、濃い領域を有する粗い表面を有する。
【0060】
表面の疎水性を試験するために、水滴を表面上に滴下し、水滴が板に完全に吸収されるのに必要な時間を測定する。
【0061】
2番目の試験では、板の横方向の引張強度を測定する(EN 319に従って); 結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例2
実施例2では、トウヒ木材チップを、C8~C10アルキルポリグリコシドの存在下で繊維離解する。界面活性剤を、木材の量に基づいて1%の活性な界面活性剤を含有する25%水溶液としてリファイナーに直接投入する。
【0064】
次いで、接着された繊維を、約8重量%の水分含有量まで乾燥機において乾燥させ、マットへと注ぎ、予備圧縮し、220℃で約4mmの厚さの板へとプレスする。
【0065】
板は、滑らかで、光沢があり、均質な表面を有する(表3も参照)。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例3
実施例3では、トウヒ木材チップをリファイナーにおいて繊維離解し、ブローラインにおいて接着させる。同時に、木材の量に基づいて0.5%の活性な界面活性剤を含有するC8~C14アルキルポリグリコシドの20%溶液を、ブローラインに注入する。
【0068】
次いで、接着された繊維を、約8重量%の水分含有量まで乾燥機において乾燥させ、マットへと注ぎ、予備圧縮し、220℃で約4mmの厚さの板へとプレスする。
【0069】
板は、滑らかで、光沢があり、均質な表面を有する(表4も参照)。
【0070】
【表4】
【0071】
実施例4
実施例4では、トウヒ木材チップをリファイナーにおいて繊維離解し、ブローラインにおいて接着させる。同時に、木材の量に基づいて0.5%の活性な界面活性剤を含有するC13オキソアルコールエトキシレート+12EO単位の20%溶液を、ブローラインに注入する。
【0072】
次いで、接着された繊維を、約8重量%の水分含有量まで乾燥機において乾燥させ、マットへと注ぎ、予備圧縮し、220℃で約4mmの厚さの板へとプレスする。
【0073】
板は、滑らかで、光沢があり、均質な表面を有する(表5も参照)。
【0074】
【表5】
【0075】
実施例5
実施例5では、トウヒ木材チップをリファイナーにおいて繊維離解し、ブローラインにおいて接着させる。
【0076】
次いで、接着された繊維を、約8重量%の水分含有量まで乾燥機において乾燥させ、マットへと注ぎ、予備圧縮する。C8~C14アルキルポリグリコシドの20%溶液を、予備圧縮されたマット上に噴霧し、木材の量に基づいて0.4%の活性な界面活性剤を使用する。この後、マットを220℃で約4mmの厚さの板へとプレスする。
【0077】
板の処理面は、滑らかで、光沢があり、均質である。未処理の面は、粗く、斑点が付いている(表6も参照)。
【0078】
【表6】
【0079】
実施例6
実施例6では、トウヒ木材チップをリファイナーにおいて繊維離解し、ブローラインにおいて接着させる。同時に、木材の量に基づいて0.7%の活性な界面活性剤を含有する12EO単位を有する脂肪アルコールエーテルサルフェートのナトリウム塩の20%溶液を、ブローラインに注入する。
【0080】
次いで、接着された繊維を、約8重量%の水分含有量まで乾燥機において乾燥させ、マットへと注ぎ、予備圧縮し、220℃で約4mmの厚さの板へとプレスする。
【0081】
板は、滑らかで、光沢があり、均質な表面を有する(表7も参照)。
【0082】
【表7】