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特許7502191等速ジョイントアセンブリ及びそれを含む電動工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】等速ジョイントアセンブリ及びそれを含む電動工具
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/223 20110101AFI20240611BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20240611BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20240611BHJP
   B25B 23/147 20060101ALI20240611BHJP
   G01L 5/24 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F16D3/223
B25B21/00 510B
B25B21/00 520A
B25B23/14 610B
B25B23/147
G01L5/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020557312
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019058277
(87)【国際公開番号】W WO2019201589
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】1830132-5
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】レンブロム ヨーアン
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0110235(US,A1)
【文献】特開2016-109201(JP,A)
【文献】特開2006-097758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/20-3/229
B25B 21/00-21/02
B25B 23/14
B25B 23/147
G01L 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度ヘッドを有する電動工具であって、等速ジョイントアセンブリ(1)が前記角度ヘッドに設けられ、前記等速ジョイントアセンブリ(1)は、
出力シャフト(7)と、
前記出力シャフト(7)を駆動するように構成されたカプリング構造体(5)と、
クラウンホイールと、
を含み、
前記出力シャフト(7)と前記カプリング構造体(5)は、一定回転速度での該カプリング構造体(5)に対する該出力シャフト(7)の傾斜を可能にするように構成された第1のジョイントを形成し、
前記カプリング構造体(5)には、トルク検出器(5f)が設けられ、
前記カプリング構造体(5)は、前記クラウンホイール(3)と前記出力シャフト(7)の間に駆動接続を与えるように構成され、
前記クラウンホイール(3)と前記カプリング構造体(5)は、該カプリング構造体(5)に対する該クラウンホイール(3)の傾斜を可能にするように構成された第2のジョイントを形成し、
前記トルク検出器(5f)は、前記出力シャフト(7)と前記クラウンホイール(3)とによって与えられる前記カプリング構造体(5)に作用するトルクを検出するように構成され、
固定部分(17a)と、該固定部分(17a)と相互作用するように構成された回転可能部分(17b)とを有する電力及び信号伝達デバイス(17)を含み、
前記カプリング構造体(5)は、中心チャネル(2)を有し、前記回転可能部分(17b)は、該中心チャネル(2)内で該カプリング構造体(5)に固定的に取り付けられ、かつ前記トルク検出器(5f)に接続され、
前記固定部分(17a)は、前記カプリング構造体(5)から切り離されて前記中心チャネル(2)に設けられ、それによって前記回転可能部分(17b)は、該固定部分(17a)に対して回転することができる、
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記トルク検出器(5f)は、歪みゲージ要素を含むことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記トルク検出器(5f)は、前記カプリング構造体(5)の外周面上に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記電力及び信号伝達デバイス(17)は、スリップリングであることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項5】
一定回転速度での前記カプリング構造体(5)に対する前記クラウンホイール(3)の前記傾斜を可能にするように構成された第1の組の軸受球(4)と、該カプリング構造体(5)に対する前記出力シャフト(7)の傾斜を可能にするように構成された第2の組の軸受球(6)とを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記カプリング構造体(5)は、前記第1の組の軸受球(4)のうちのそれぞれの1つを受け入れる第1の組のカップ溝(5d)が設けられた第1の端部(5b)と、前記第2の組の軸受球(6)のうちのそれぞれの1つを受け入れる第2の組のカップ溝(5e)が設けられた第2の端部(5c)とを有することを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記出力シャフト(7)は、前記第2の組の軸受球(6)のうちのそれぞれの1つを受け入れる第3の組のカップ溝(7c)が設けられた中心出力シャフトチャネル(7)を有し、
前記クラウンホイール(3)は、前記第1の組の軸受球(4)のうちのそれぞれの1つを受け入れる第4の組のカップ溝(3b)が設けられた中心クラウンホイールチャネル(3a)を有する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記カプリング構造体(5)は、第1の端部(5b)と該第1の端部(5b)に対向する第2の端部(5c)とを有し、
前記クラウンホイール(3)は、前記第1の端部(5b)を受け入れるように構成され、前記出力シャフト(7)は、前記第2の端部(5c)を受け入れるように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項9】
前記第1のジョイントは、ツェッパ型(Rzeppa)ジョイントであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項10】
遊星歯車システム(23)と、該遊星歯車システム(23)と機械的に相互作用して補助トルク測定値を提供するように構成された補助トルク測定器(25)とを含むことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、一般的に電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
工業アセンブリのような高電力密度を要求する用途では、通常は、高度なモータ制御が要求される。正確にはナットランナーのような電動工具のモータを制御することができるように、一般的に、トルクが測定されてモータコントローラに給送される。トルクを測定するためにトルクセンサを使用することができる。
【0003】
トルクセンサが設けられて工業アセンブリに使用される電動工具の例、特にナットランナーは、「高電力ナットランニング機器」という名称のAMTの「製品カタログ H 1」、改訂版04/2015に開示されている。この文書は、他の工具の中でも取り分け、トルクが角度ドライブからの出力シャフトで直接に取り込まれる角度ナットランナーを開示している。
【0004】
上述の文書に開示されたソリューションに伴う1つの欠点は、トルクセンサが角度ヘッドに嵌め込まれて余分な長さが必要であるので、角度ヘッドの長さが延長されることである。更に、ナットランナーが使用されている時の外部影響に起因してトルク測定が不正確になるリスクがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
「高電力ナットランニング機器」、AMTの「製品カタログ H 1」、改訂版04/2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使用において、ナットランナーの四角ドライブは、特にユーザは工具の上にそれを正しい位置に維持するために力を加える場合があるので、曲げ力を受ける場合がある。四角ドライブのこの曲げは、トルクセンサに作用する曲げ力をもたらし、これは、トルクセンサによって与えられるトルク測定に影響する。
【0007】
以上に鑑みて、本発明の開示の目的は、従来技術の問題を解決する又は少なくとも軽減する等速ジョイントアセンブリ及びそのような等速ジョイントアセンブリを含む電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の開示の第1の態様により、出力シャフトと出力シャフトを駆動するように構成されたカプリング構造体とを含む等速ジョイントアセンブリを提供し、出力シャフトとカプリング構造体は、一定回転速度でのカプリング構造体に対する出力シャフトの傾斜を可能にするように構成された第1のジョイントを形成し、カプリング構造体には、出力シャフトによって与えられるカプリング構造体に作用するトルクを検出するように構成されたトルク変換器が設けられる。
【0009】
カプリング構造体及び従ってトルク変換器は、出力シャフトに作用する曲げ力がカプリング構造体及びトルク変換器に伝達されることにならず、又は少なくともそれらが低減されることになるという意味で出力シャフトから分断されている。この効果は、一定回転速度でカプリング構造体に対して出力シャフトを特に様々な角度で傾けることを可能にする第1のジョイントに起因して取得される。その結果、より正確なトルク測定を提供することができる。
【0010】
出力シャフトとカプリング構造体は、デフォルト非回転状態では同軸に配置され、カプリング構造体に対する出力シャフトの傾斜は、共通中心回転軸に関してのものである。
【0011】
出力シャフトは、例えば、四角ドライブである場合がある。
【0012】
一実施形態により、等速ジョイントアセンブリは、電動工具のためのものである。等速ジョイントアセンブリは、例えば、手持ち式電動工具の角度ヘッドのために設計される場合がある。
【0013】
一実施形態により、トルク変換器は、歪みゲージ要素を含む。
【0014】
一実施形態により、トルク変換器は、カプリング構造体の外周面上に設けられる。これは、カプリング構造体の上への歪みゲージ要素の装着を簡素化する。
【0015】
カプリング構造体は、中心チャネルが設けられた中空円筒体を有することができる。カプリング構造体の外周面上に歪みゲージ要素を設ける代わりに、歪みゲージ要素は、中心チャネルの内面上に設けることができると考えられる。
【0016】
一実施形態は、固定部分と、固定部分と相互作用するように構成された回転部分とを有する電力及び信号伝達デバイスを含み、カプリング構造体は、中心チャネルを有し、回転部分は、中心チャネル内でカプリング構造体に固定的に取り付けられ、かつトルク変換器に接続され、固定部分は、カプリング構造体から切り離されて中心チャネルに設けられ、回転部分は、固定部分に対して回転することができる。回転可能なトルク変換器には、従って電力が給送され、トルク変換器からのトルク測定信号を更に別の処理に向けて伝達することができる。
【0017】
一実施形態により、電力及び信号伝達デバイスは、スリップリングである。
【0018】
一実施形態は、クラウンホイールを含み、カプリング構造体とクラウンホイールは、一体構成要素を形成する。
【0019】
一実施形態は、クラウンホイールを含み、カプリング構造体は、クラウンホイールと出力シャフトの間に駆動接続を与えるように構成される。
【0020】
一実施形態により、クラウンホイールとカプリング構造体は、一定回転速度でカプリング構造体に対してクラウンホイールを傾けることができるように構成された第2のジョイントを形成し、トルク変換器は、出力シャフト及びクラウンホイールによって与えられたカプリング構造体に作用するトルクを検出するように構成される。
【0021】
クラウンホイールとカプリング構造体は、デフォルト非回転状態では同軸に配置され、カプリング構造体に対するクラウンホイールの傾斜は、共通中心回転軸に関してのものである。
【0022】
出力シャフトの曲げに加えて、クラウンホイールも、それがクラウンホイールを駆動するピニオンと協働する時に曲げを受ける場合がある。カプリング構造体及び従ってトルク変換器は、クラウンホイールに作用する曲げ力がカプリング構造体及びトルク変換器に伝達されることにならず、又は少なくともそれらが低減されることになるという意味でクラウンホイールから分断されている。この効果は、一定回転速度でカプリング構造体に対してクラウンホイールを特に様々な角度で傾けることを可能にする第2のジョイントに起因して取得される。その結果、より正確なトルク測定を提供することができる。
【0023】
これに加えて、この2重ジョイント構成は、コンパクトであり、かつ等速ジョイントを含む電動工具のフットプリント又は軸線方向長さを低減することができる。
【0024】
一実施形態は、カプリング構造体に対するクラウンホイールの傾斜を可能にするように構成された第1の組の軸受球と、カプリング構造体に対する出力シャフトの傾斜を可能にするように構成された第2の組の軸受球とを含む。
【0025】
一実施形態により、カプリング構造体は、第1の組の軸受球のうちのそれぞれの1つを受け入れる第1の組のカップ溝が設けられた第1の端部と、第2の組の軸受球のうちのそれぞれの1つを受け入れる第2の組のカップ溝が設けられた第2の端部とを有する。
【0026】
一実施形態により、出力シャフトは、第2の組の軸受球のうちのそれぞれの1つを受け入れる第3の組のカップ溝が設けられた中心出力シャフトチャネルを有し、クラウンホイールは、第1の組の軸受球のうちのそれぞれの1つを受け入れる第4の組のカップ溝が設けられた中心クラウンホイールチャネルを有する。
【0027】
一実施形態により、カプリング構造体は、第1の端部と、第1の端部部分に対向する第2の端部とを有し、クラウンホイールは、第1の端部を受け入れるように構成され、出力シャフトは、第2の端部を受け入れるように構成される。
【0028】
一実施形態により、第1のジョイントは、Rzeppaジョイントである。Rzeppaジョイントは、コンパクトであり、等速ジョイントが電動工具に設けられる場合に、軸受球は、電動工具ハウジングに対する出力シャフト及びクラウンホイールの回転を可能にするのに使用される軸受球と同じサイズを有することができ、アセンブリに必要な異なる構成要素のタイプがより少数であるので、電動工具のアセンブリ工程を容易にする。
【0029】
本発明の開示の第2の態様により、第1の態様による等速ジョイントアセンブリを含む電動工具を提供する。
【0030】
電動工具は、例えば、角度ナットランナー又は直線ナットランナーのようなナットランナーである場合がある。
【0031】
一実施形態は、遊星歯車システムと、補助トルク測定を提供するために遊星歯車システムと機械的に相互作用するように構成された補助トルク変換器とを含む。電動工具は、トルク変換器からのトルク測定値を補助トルク測定値と比較し、2つの測定トルクが等しいか又は予め決められた許容範囲内で外れているか否か、又はそれらがより大きく外れているかを決定するように構成することができる。後者の状況は、電動工具が点検を必要とする場合があることの表示を提供する。
【0032】
一般的に、特許請求の範囲に使用する全ての用語は、本明細書に明示的に他を定めない限り、技術分野でのそれらの通常の意味に従って解釈されるものとする。「a/an/the要素、装置、構成要素、手段など」への全ての参照は、明示的に他を言及しない限り、「the要素、装置、構成要素、手段など」の少なくとも1つの事例への参照として無制限に解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の概念の特定の実施形態をここで添付図面を参照して一例として以下に説明する。
【0034】
図1】分解された等速ジョイントアセンブリの一例の斜視図を概略的に描く図である。
図2】電動工具の一例の側面図を概略的に示す図である。
図3図2での電動工具の角度ヘッドの長手断面を概略的に示す図である。
図4】電動工具の別の例の一部分の長手断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の概念をここで例示的実施形態を示す添付図面を参照してより完全に以下に説明する。しかし、本発明の概念は、多くの異なる形態に具現化することができ、本明細書に列挙する実施形態に限定されるように解釈してはならず。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であることになり、かつ当業者に本発明の概念の範囲を完全に伝達することになるように一例として与えるものである。同じ数字は、説明全体を通して同じ要素を指す。
【0036】
図1は、等速ジョイントアセンブリ1の一例を描いている。等速ジョイントアセンブリ1は、電動工具に使用されるように構成される。例示的な等速ジョイントアセンブリ1は、クラウンホイール3、カプリング構造体5、及び出力シャフト7を含む。
【0037】
図1に示す例では、クラウンホイール3とカプリング構造体5は、別々の構成要素である。一代替設計により、クラウンホイールとカプリング構造体は、単一一体構成要素を形成することができる。この目的のために、クラウンホイールは、カプリング構造体を含むことができる。
【0038】
図1の例により、クラウンホイール3は、カプリング構造体5を駆動するように構成される。カプリング構造体5は、出力シャフト7を駆動するように構成される。この点に関して、クラウンホイール3の回転は、出力シャフト7の回転をもたらす。
【0039】
カプリング構造体5と出力シャフト7は、一定回転速度でのカプリング構造体5に対する出力シャフト7の傾斜を可能にする第1のジョイントを定める。カプリング構造体5とクラウンホイール3は、一定回転速度でのカプリング構造体5に対するクラウンホイール3の傾斜を可能にする第2のジョイントを定める。
【0040】
カプリング構造体5は、中心チャネル2が設けられた中空円筒体又はシャフト5aを有する。カプリング構造体5は、第1の端部5bと第2の端部5cを有する。第1の端部5bには、第1の組のカップ溝5dが設けられる。第1の組のカップ溝5dは、カプリング構造体5の周方向に第1の端部5bに沿って配分された複数のカップ溝5dを含む。第2の端部5cには、第2の組のカップ溝5eが設けられる。第2の組のカップ溝5eは、カプリング構造体5の周方向に第2の端部5cに沿って配分された複数のカップ溝5e含む。
【0041】
四角ドライブとすることができる出力シャフト7は、工具端部7aと、工具端部7aに対する反対端から開く中心出力シャフトチャネル7bとを有する。出力シャフト7は、中心出力シャフトチャネル7bにカプリング構造体5の第2の端部5cを同軸的に受け入れるように構成される。中心出力シャフトチャネル7bの内面には、出力シャフト7の周方向に配分された第3の組のカップ溝7cが設けられる。第3の組のカップ溝7cは、複数のカップ溝7cを含む。
【0042】
クラウンホイール3は、歯が設けられた歯車端3cと、歯車端3に対する反対端から開く中心クラウンホイールチャネル3aとを有する。クラウンホイール3は、中心クラウンホイールチャネル3aにカプリング構造体5の第1の端部5bを同軸的に受け入れるように構成される。中心クラウンホイールチャネル3aの内面には、クラウンホイール3の周方向に配分された第4の組のカップ溝3bが設けられる。第4の組のカップ溝3bは、複数のカップ溝3bを含む。クラウンホイール3と出力シャフト7が、少なくとも80%のようなカプリング構造体5の長さの大部分、例えば、カプリング構造体5の長さの少なくとも90%又は少なくとも95%のような少なくとも85%を受け入れるような軸線方向寸法を用いてカプリング構造体5を設計することにより、カプリング構造体5によって引き起こされる等速ジョイントアセンブリ1に対する長手衝撃を最小に保つことができる。等速ジョイントアセンブリ1の軸線方向長さは、従って最小にすることができる。
【0043】
等速ジョイントアセンブリ1は、第1の組の軸受球4(図3に示す)と第2の組の軸受球6(図3に示す)とを含む。第1の組の軸受球のうちの軸受球4は、それぞれ第1の組のカップ溝のうちのカップ溝5dと第4の組のカップ溝のうちのカップ溝3bとによって受け入れられる。この構成は、クラウンホイール3とカプリング構造体5を回転的にロックし、かつクラウンホイール3がカプリング構造体5の上に曲げ力を与えることなくカプリング構造体を駆動する間にカプリング構造体5に対するクラウンホイール3の傾斜を可能にする。
【0044】
第2の組の軸受球のうちの軸受球6は、それぞれ第2の組のカップ溝のうちのカップ溝5eと第3の組のカップ溝のうちのカップ溝7cとによって受け入れられる。この構成は、カプリング構造体5と出力シャフト75を回転的にロックし、かつカプリング構造体5がカプリング構造体5の上に曲げ力を与えることなく出力シャフト7を駆動する間にカプリング構造体5に対する出力シャフト7の傾斜を可能にする。
【0045】
カプリング構造体5は、更に、トルク変換器5fを含む。本発明の例により、トルク変換器は、歪みゲージ要素5fを含む。歪みゲージ要素5fは、特に円筒体5aのカプリング構造体5の外周面上に設けられる。トルク変換器5fは、出力シャフト7とクラウンホイール3とによって印加されるカプリング構造体5上の応力に起因してカプリング構造体5が受けているトルクを測定するように構成される。
【0046】
図2は、等速ジョイントアセンブリ1を含む電動工具9の例を示している。電動工具3は、角度ヘッド9aを有し、等速ジョイントアセンブリ1は、角度ヘッド9aに設けられる。
【0047】
電動工具9は、手持ち式電動工具である。本発明の例では、電動工具9は、ナットランナーであるが、他の電動工具にも等速ジョイントアセンブリ1を設けることができると想定されている。
【0048】
図3は、角度ヘッド9aの長手断面を示している。電動工具9は、電気モータ(図示しない)と、遊星歯車システムと、遊星歯車システムを通じて電気モータによって駆動されるように構成されたピニオン11とを含む。ピニオン11は、クラウンホイール3の歯車端3cに係合し、それによってクラウンホイール3を駆動するように構成される。クラウンホイール3は、カプリング構造体5と回転的にロックされ、カプリング構造体5は、出力シャフト7と回転的にロックされる。ピニオン11の回転は、従って、クラウンホイール3とカプリング構造体5とを通じて出力シャフト7の回転を引き起こす。等速ジョイントアセンブリ1は、従って、電動工具ハウジング9bの内側で自由に回転することができる。電動工具9は、この目的のために、電動工具ハウジング9bに対するクラウンホイール3の及び出力シャフト7の回転を可能にするように構成された第3の組の軸受球13及び第4の組の軸受球15を含むことができる。
【0049】
等速ジョイントアセンブリ1は、更に、電力及び信号伝達デバイス17を含む。電力及び信号伝達デバイス17は、トルク変換器5fを給電し、かつトルク変換器5fからのトルク測定信号を中継するように構成される。例示的な電力及び信号伝達デバイス17は、固定部分17aと回転可能部分17bを含む。固定部分17aは、クラウンホイール3、カプリング構造体5、及び出力シャフト7に対して不動に配置される。固定部分17aは、カプリング構造体5の中心チャネル2に配置される。回転可能部分17bは、固定部分17aに対して回転可能であるように構成される。回転可能部分17bは、中心チャネル2の内側でカプリング構造体5に固定的に装着される。回転可能部分17bは、従って、カプリング構造体5と同時に回転するように構成される。固定部分17aは、回転可能部分17bによって受け入れられ、固定部分17aと回転可能部分17bの間の相互作用を可能にし、それによってトルク変換器5fに電力を提供し、かつそこからのトルク測定信号を伝達する。
【0050】
図3の例では、電力及び信号伝達デバイス17は、スリップリングである。回転可能部分17bと固定部分17aのうちの一方は、従って、回転可能部分17bと固定部分17aのうちの他方のものとのスライド式機械接続でのブラシのような接触部材を含む。回転可能部分17bは、トルク変換器5fへの電源線及び信号線に接続される。これに代えて、電力及び信号伝達デバイスは、例えば、無線遠隔測定法又は回転変圧器を用いて固定部分と回転可能部分の間の無接触電力伝達及び信号伝達を提供するように構成することができると考えられる。
【0051】
等速ジョイントアセンブリ1は、増幅器回路19を含むことができる。増幅器回路19は、カプリング構造体5に固定的に装着することができる。増幅器回路19は、トルク変換器5fにかつ回転可能部分17bに接続することができる。増幅器回路19は、トルク変換器5fによって発生されたトルク測定信号を増幅するように構成される。このようにして、トルク測定信号は、それらが固定部分17aによって受信される前に増幅される。トルク測定信号の処理をより困難にすると考えられるトルク測定信号に対するいずれの電圧リップルの影響も、全体的なトルク測定信号強度の観点から低減されることになる。
【0052】
電動工具9は、電気配線21と、モータコントローラ及び電源ユニット(図示しない)のような電子機器とを含む。電気配線21は、電力及び信号伝達デバイス17に接続され、特に、固定部分17aに及び電子機器に接続されてトルク変換器を給電し、かつ処理及びモータ制御のためにトルク測定信号を伝達する。
【0053】
図4は、上述のような等速ジョイントアセンブリ1を含む電動工具9’の別の例を示している。電動工具9’は、電気モータの回転子と協働するように構成された遊星歯車システム23、及びそれに加えてトルク変換器5f及び補助トルク変換器25を含む。補助トルク変換器25は、円筒形であり、かつ軸線方向に自由端と、自由端に対向する固定端とを有する。補助トルク変換器25は、例えば、歪みゲージ要素25aを含むことができる。電動工具9’は、更に、遊星歯車システム23を包む込む円筒形トルク伝達要素27を含む。トルク伝達要素27は、補助トルク変換器25の自由端と遊星歯車システム23とを接続する。トルク伝達要素27は、補助トルク変換器25と回転的に係合し、かつ遊星歯車システム23と協働し、それによってその固定端に起因して電動工具ハウジング9aに対して実質的に回転不能な方式で配置された補助トルク変換器25にトルクを伝達するように構成される。補助トルク変換器25は、従って、補助トルク測定値を提供する。
【0054】
補助トルク測定値は、例えば、ピニオン11とクラウンホイール3の間のカプリングの摩耗に起因する電動工具9’の経年劣化と共に、カプリング構造体5のトルク変換器5fによって与えられるトルク測定値から逸れることになる。補助トルク変換器25からの補助トルク測定信号とトルク変換器5fからのトルク測定信号を比較することにより、電動工具9’を点検する必要性に関する表示を提供することができる。この点に関して、電動工具9’の電子機器は、補助トルク測定信号とトルク測定信号を比較して分析し、2つのトルク測定信号間の差が閾値又は予め決められた範囲を超える場合に点検必要性の表示を与える点検表示データを発生させるように構成することができる。
【0055】
本発明の概念を主に少数の例を参照して上記に説明した。しかし、当業者によって容易に認められるように、上記に開示したもの以外の他の実施形態も添付の特許請求の範囲によって定められるような本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【符号の説明】
【0056】
3 クラウンホイール
5 カプリング構造体
7 出力シャフト
11 ピニオン
13 第3の組の軸受球
図1
図2
図3
図4