(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】アセナピンを含有する経皮治療システム
(51)【国際特許分類】
A61K 31/407 20060101AFI20240611BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240611BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240611BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240611BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61K31/407
A61K9/70 401
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/34
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/24
(21)【出願番号】P 2020570982
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2019066270
(87)【国際公開番号】W WO2019243452
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-15
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・モーア
(72)【発明者】
【氏名】レネ・リーチェル
(72)【発明者】
【氏名】レネ・アイフラー
(72)【発明者】
【氏名】オールガ・ブルクアイン
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018321(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018322(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027052(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/127674(WO,A1)
【文献】特表2017-515869(JP,A)
【文献】特表2017-524685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のアセナピンを含有する自己接着性層構造を含むアセナピンの経皮投与のための経皮治療システムであって、前記自己接着性層構造が、
A)バッキング層と、
B)マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層と、を含み、前記マトリックス層組成物が、
1.遊離塩基形態
のアセナピンと、
2.アクリルポリマーから選択されるポリマーと、
3.
ポリビニルピロリドンから選択される追加のポリマーと、
4.安定剤として、前記マトリックス層組成物の0.01~2%の量のα-トコフェロール及び前記マトリックス層組成物の少なくとも0.01%の量のパルミチン酸アスコルビルと、を含む、前記経皮治療システム。
【請求項2】
前記マトリックス層組成物が、安定剤として、前記マトリックス層組成物の0~0.5%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムをさらに含む、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の少なくとも0.025%の量のα-トコフェロールを含む、及び/または
前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の最大1.5%または0.75%の量のα-トコフェロールを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の少なくとも0.02%の量のパルミチン酸アスコルビルを含む、及び/または
前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の最大2.0または1.0%の量のパルミチン酸アスコルビルを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
前記ポリビニルピロリドンから選択される追加のポリマーが、可溶性のポリビニルピロリドンから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
前記
ポリビニルピロリドンから選択される追加のポリマーが、
9~15、
15~20、
20~27、
27~35、及び
75~110
からなる範囲の群から選択される範囲内のK値を有するポリビニルピロリドンまたはそれらの任意の混合物である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の0~20%の量の、
前記ポリビニルピロリドンから選択される追加のポリマーを含む、請求項
1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
前記経皮治療システムが、少なくとも0.70mg/cm
2のアセナピンを含有する、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
前記マトリックス層組成物中のアセナピンの量が、前記マトリックス層組成物の2~20%の範囲である、請求項1~8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
前記
アクリルポリマーから選択されるポリマーが
、ヒドロキシル基を含み、カルボン酸基を含まないアクリルポリマーから選択され、及び/または、酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのコポリマー、または酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートベースのコポリマーである、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
前記
アクリルポリマーから選択されるポリマーが、架橋剤によって架橋されている、請求項10に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
前記
アクリルポリマーから選択されるポリマーの量が、前記マトリックス層組成物の50~90%の範囲である、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
前記マトリックス層組成物が、ポリエチレングリコール、トリグリセリド、ジプロピレングリコール、樹脂、樹脂エステル、テルペ
ン、エチレン酢酸ビニル接着剤、ジメチルポリシロキサン、及びポリブテン、ならびにそれらの混合物から選択される粘着付与剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
前記マトリックス層組成物が、粘着付与剤として、中鎖トリグリセリドを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
前記マトリックス層組成物が、粘着付与剤として、前記マトリックス層組成物の0.1~14%の量の中鎖トリグリセリドを含む、請求項14に記載の経皮治療システム。
【請求項16】
採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、1μg/(cm
2 h)~20μg/(cm
2 h)の48時間または72時間時点でのアセナピン累積皮膚透過速度を提供する、及び/または
採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、
最初の8時間に0μg/(cm
2 h)~10μg/(cm
2 h)、
8時間から24時間まで2μg/(cm
2 h)~20μg/(cm
2 h)、
24時間から32時間まで3μg/(cm
2 h)~20μg/(cm
2 h)、
32時間から48時間まで3μg/(cm
2 h)~20μg/(cm
2 h)、
48時間から72時間まで2μg/(cm
2 h)~15μg/(cm
2 h)のアセナピン皮膚透過速度を提供する、請求項1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項17】
前記マトリックス層が、初期に、前記マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも95%の量のアセナピンを含有する、及び/または
前記マトリックス層が、25℃及び60%相対湿度で少なくとも2ヶ月間貯蔵された後に、前記マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも90%の量のアセナピンを含有する、及び/または
前記マトリックス層が、40℃及び75%相対湿度で少なくとも2ヶ月間貯蔵された後に、前記マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも88%の量のアセナピンを含有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項18】
前記マトリックス層が、初期に、0.7%未満の総アセナピン関連分解物質量を含有する、及び/または
前記マトリックス層が、25℃及び60%相対湿度で少なくとも2ヶ月間貯蔵された後に、1.0%未満の総アセナピン関連分解物質量を含有する、及び/または
前記マトリックス層が、40℃及び75%相対湿度で少なくとも2ヶ月間貯蔵された後に、3.0%未満の総アセナピン関連分解物質量を含有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項19】
統合失調症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、認知症関連精神病、激越、及び躁病障害から選択される1つ以上の状
態を治療する方法で使用するための、請求項1~18のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項20】
双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法で使用するための、請求項1~18のいずれか1項に記載の経皮治療システ
ム。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか1項に記載の経皮治療システムで使用するためのマトリックス層の製造プロセスであって、
1)少なくとも以下の成分、遊離塩基形態
のアセナピン、アクリルポリマー、
ポリビニルピロリドン、α-トコフェロール、及びパルミチン酸アスコルビルを溶媒中で組み合わせて、コーティング組成物を得るステップと、
2)前記コーティング組成物をバッキング層または剥離ライナーまたは任意の中間層にコーティングするステップと、
3)前記コーティングされたコーティング組成物を乾燥させて、前記マトリックス層を形成するステップと、を含む、前記製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセナピンの体循環への経皮投与のための経皮治療システム(TTS)、ならびにその製造プロセス、治療方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
活性剤であるアセナピン(3aRS,12bRS)-rel-5-クロロ-2,3,3a,12b-テトラヒドロ-2-メチル-1H-ジベンズ[2,3:6,7]オキセピノ[4,5-c]ピロール)は、ジベンゾオキセピノピロールファミリーに属する非定型抗精神病薬であり、その四環構造は、オランザピン、クエチアピン、クロザピン(三環構造)、リスペリドン、ジプラシドン、またはアリピプラゾール(二環構造)等の他の抗精神病薬のものとは無関係である。アセナピンは、ドーパミンD2及びセロトニン5-HT2A受容体の拮抗薬であり、後者に対する親和性が高く、統合失調症及び双極性障害に関連する急性躁病の治療のためにSchering-Plough/Organonによって開発された。
【0003】
現在、アセナピンは、ブランド名Sycrest(Swissmedic)及びSaphris(Schering-Plough)で、1日2回(BID)の2.5mg、5mg、または10mgの投薬量強度で投与される舌下錠の形態で市販されている。
【0004】
舌下投与経路は、バイオアベイラビリティを高めるために経口投与の初回通過代謝を回避し、これは、舌下摂取した場合には35%、経口摂取した場合には2%未満である。しかしながら、舌下投与は、苦味または不快な味、ならびに局所麻酔効果によって誘発される舌/口腔粘膜のしびれ、吐き気、及び頭痛に関連する。さらに、舌下投与直後10分間の飲食及び喫煙は許可されていない。これらの不便は、患者のコンプライアンスの低下及び不適切な投与、例えば、用量の減少、投薬スキップ、不規則な薬物摂取、または意図されたアセナピン摂取を完全に断つ等につながり得る。施設に収容された精神病患者の舌下投与の監視も困難であり、小児、高齢者、及び嚥下が困難な他の患者、または独力で薬剤を服用することができない者には好適ではない可能性がある。
【0005】
アセナピンは、神経弛緩薬にはよくある副作用を示す。傾眠及び不安が非常に一般的である(患者の10%以上において観察される)。他の一般的な(患者の1%以上~10%未満)副作用には、体重増加及び食欲増進、ジストニア、アカシジア、ジスキネジア、パーキンソニズム、鎮静、めまい、味覚障害等の神経系障害、口腔感覚鈍麻、吐き気、唾液分泌の増加等の胃腸障害、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加、筋肉硬直、及び倦怠感(疲労感)が含まれる。
【0006】
アセナピンは、主にCYP1A2及びUGT1A4(グルクロン酸抱合)を介して肝臓で代謝される。主なヒト代謝物であるN-デスメチル-アセナピンとアセナピンN+グルクロニドとの臨床的関連性は依然として議論の余地がある。少なくとも、これらの代謝物が治療効果に実質的に関与しないようである。したがって、これらの代謝物の量の減少が一般に望ましいようである。
【0007】
舌下投与後、アセナピンは急速に吸収され、ピーク血漿濃度が0.5~1.5時間以内に起こり、(治療用量で)数時間の半減期を有する急速な初期分布段階に続いて、約1日以上のより長い最終処分半減期を有する2コンパートメント薬物動態を呈する。したがって、血漿濃度は、投与後約1時間でピークを示し、その後、濃度が低下し、定常状態であっても、次の投薬の直前に低い点をもたらす、ある特定の変動程度を呈する。比較的急速な濃度低下は、必然的に複数の日用量(現在は1日2回)にもつながり、これは、特に慢性状態において、患者のコンプライアンスの低下に関連している。
【0008】
かかる変動は、活性剤アセナピンの持続放出を提供することによって2つの用量間の血漿濃度の低下をある程度防止するアセナピンの経皮投与によって回避され得るか、または少なくとも低減され得る。アセナピンの経皮送達が調査されているが、アセナピンの受動的経皮送達、特に長期間にわたる一定の放出は困難であるように思われる。経皮治療システム(TTS)からの皮膚を介した活性剤の受動的輸送は、経皮システム中及び皮膚の外面上の活性剤の濃度と血流中の濃度との間の濃度勾配に基づく駆動力を利用する。かかる受動的輸送は、イオントフォレーシスまたはマイクロポレーション等の能動的輸送を利用するTTSと比較して、TTSの複雑さ及び投与の利便性の観点から有利である。現在、市販のアセナピンTTSは入手不能である。
【0009】
本発明者らは、現在のアセナピン投与の上記の欠点を克服するアセナピンの経皮投与のための経皮治療システムを以前に開発した。具体的には、治療有効用量を達成するのに十分な透過速度を提供することができ、投与期間最大7日間、例えば、3.5日間のアセナピン連続投与に適切であり、製造が容易な製造コスト効率の高いTTSが開発された。
【0010】
しかしながら、初期及び貯蔵時の、製造されたTTSの安定性に関して、特に活性物質の含有量及び活性物質分解に関して、以前に開発された製剤にはまだ改善の余地がある。したがって、有利な皮膚浸透速度を損なうことなく、より良好な安定性を提供する改善されたアセナピンTTS製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、現在のアセナピン投与の上記の欠点を克服するTTSを提供することである。
【0012】
したがって、本発明の目的は、改善された安定性を有し、同時に治療有効用量を提供する、特に連続投与時に、最大7日間(例えば、3.5日間)の患者の皮膚への投与期間中、最大7日間にわたって治療有効用量のアセナピンを提供する、アセナピンの経皮投与のためのTTS、具体的には、マトリックスタイプのTTSを提供することである。
【0013】
特に定常状態で、舌下投与と比較してアセナピン血漿濃度の変動が低減される、改善された安定性を有する、アセナピンの経皮投与のためのTTS、具体的には、マトリックスタイプのTTSを提供することも本発明の目的である。
【0014】
本発明の別の目的は、改善された安定性を有し、サイズ及び厚さを考慮して便利な用途の要求に応じる及び/または製造が容易な製造コスト効率の高い、アセナピンの経皮投与のためのTTS、具体的には、マトリックスタイプのTTSを提供することである。
【0015】
これら及び他の目的は、一態様によれば、治療有効量のアセナピンを含有する自己接着性層構造を含むアセナピンの経皮投与のための経皮治療システムに関する本発明によって達成され、当該自己接着性層構造は、
A)バッキング層と、
B)マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層と、を含み、マトリックス層組成物が、
1.アセナピンと、
2.アクリルポリマーから選択されるポリマーと、
3.追加のポリマーと、
4.安定剤として、マトリックス層組成物の0.01~2%の量のα-トコフェロール及びマトリックス層組成物の少なくとも0.01%の量のパルミチン酸アスコルビルと、を含む。
【0016】
本発明のある特定の実施形態によれば、本発明による経皮治療システムは、特に長期間の投与中、治療方法で使用するためのものであり、好ましくは、精神病を治療する方法で使用するためのものであり、より好ましくは、統合失調症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、認知症関連精神病、激越、及び躁病障害から選択される1つ以上の状態を治療する方法で使用するためのものである。
【0017】
したがって、本発明のある特定の実施形態によれば、本発明による経皮治療システムは、約24時間~約168時間もしくは1~7日間の投与期間中、統合失調症及び/または双極性障害を治療する方法で使用するためのものであり、具体的には、約24時間もしくは1日間、約48時間もしくは2日間、または約84時間もしくは3.5日間の投与期間中、統合失調症及び/または双極性障害を治療する方法で使用するためのものである。
【0018】
他の実施形態によれば、本発明は、本発明による経皮治療システムを患者の皮膚に長期間にわたって適用することを含む、治療方法、具体的には、精神病を治療する方法、より好ましくは、統合失調症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、認知症関連精神病、激越、及び躁病障害から選択される1つ以上の状態を治療する方法に関する。
【0019】
したがって、ある特定の他の実施形態によれば、本発明は、本発明による経皮治療システムを患者の皮膚に約24時間~約168時間もしくは1~7日間、または約24時間、48時間、もしくは84時間、または1日間、2日間、もしくは3.5日間にわたって適用することを含む、統合失調症及び/または双極性障害を治療する方法に関する。
【0020】
かかる投与様式は、24時間治療において、1日1回、2日に1回、週2回、または週1回のTTSの交換を必要とする。
【0021】
さらに別の特定の態様によれば、本発明は、経皮治療システムで使用するためのマトリックス層の製造プロセスであって、
1)少なくとも以下の成分、アセナピン、アクリルポリマー、追加のポリマー、α-トコフェロール、及びパルミチン酸アスコルビルを溶媒中で組み合わせて、コーティング組成物を得るステップと、
2)コーティング組成物をバッキング層または剥離ライナーまたは任意の中間層にコーティングするステップと、
3)コーティングされたコーティング組成物を乾燥させて、マトリックス層を形成するステップと、を含む、製造プロセスに関する。
【0022】
ある特定の実施形態によれば、本発明は、自己接着性層構造を含むアセナピンの経皮投与のための経皮治療システムであって、自己接着性層構造が、
A)バッキング層と、
B)マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層と、を含み、マトリックス層組成物が、
1.遊離塩基の形態で含まれているアセナピンと、
2.酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのコポリマー、または酢酸ビニル、
2-エチルヘキシル-アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートベースのコポリマーと、
3.マトリックス層組成物の5~12%の量の中鎖トリグリセリドと、
4.マトリックス層組成物の5~15%の量の可溶性ポリビニルピロリドンと、
5.安定剤として、マトリックス層組成物の0.025~0.1%の量のα-トコフェロール、マトリックス層組成物の0.15~0.5%の量のパルミチン酸アスコルビル、及びマトリックス層組成物の0.05~0.15%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムと、を含む、経皮治療システムにも関する。
【0023】
本発明の意味の範囲内で、「経皮治療システム」(TTS)という用語は、活性剤(アセナピン)が経皮送達により体循環に投与されるシステムを指し、患者の皮膚に適用され、自己接着性層構造中に治療有効量のアセナピンを含み、任意に、アセナピン含有自己接着性層構造の上部に追加の接着剤オーバーレイを含む、個別の投薬ユニット全体を指す。自己接着性層構造は、剥離ライナー(取り外し可能な保護層)上に配置され得、それ故に、TTSは、剥離ライナーをさらに含み得る。本発明の意味の範囲内で、「TTS」という用語は、具体的には、例えば、イオントフォレーシスまたはマイクロポレーションを含む方法と同様の能動的輸送を除く受動的経皮送達を提供するシステムを指す。
【0024】
本発明の意味の範囲内で、「アセナピン含有自己接着性層構造」または「治療有効量のアセナピンを含有する自己接着性層構造」という用語は、投与中にアセナピンの放出面積を提供する活性剤含有構造を指す。接着剤オーバーレイはTTSの全体的なサイズを増加させるが、放出面積は増加させない。アセナピン含有自己接着性層構造は、バッキング層及び少なくとも1つのアセナピン含有層を含む。
【0025】
本発明の意味の範囲内で、「治療有効量」という用語は、TTSによって患者に投与された場合、所定の長期間(例えば、1、3.5、及び7日間)にわたる1日2回の5mg舌下アセナピンの定常状態投与で得られた血中レベルと比較して同様の範囲(例えば、AUCとして測定される約10%~約1000%)のアセナピン血中レベルを提供するのに十分なTTS中の活性剤の量を指す。TTSは、通常、皮膚及び体循環に実際に提供される活性物質よりも多くの活性物質をシステム中に含んでいる。この過剰量の活性剤は、通常、TTSから体循環への受動的輸送に十分な駆動力を提供するために必要である。
【0026】
本発明の意味の範囲内で、「活性物質」及び「活性剤」等の用語、ならびに「アセナピン」という用語は、任意の薬学的に許容される化学的及び形態学的形態ならびに物理的状態のアセナピンを指す。これらの形態には、遊離塩基形態のアセナピン、プロトン化または部分的にプロトン化されたアセナピン、アセナピン塩、具体的には、無機酸または有機酸の添加によって形成された酸付加塩、例えば、アセナピン塩酸塩またはアセナピンマレイン酸塩、水和物、錯体等、ならびに微粉化、結晶質、及び/または非晶質であり得る粒子の形態のアセナピン、及び前述の形態の任意の混合物が含まれるが、これらに限定されない。アセナピンは、溶媒等の媒体中に含まれる場合、溶解もしくは分散し得るか、または部分的に溶解し、部分的に分散し得る。
【0027】
アセナピンがTTSの製造時に特定の形態で使用されると述べられる場合、これは、最終TTSにおけるこの形態のアセナピンとアセナピン含有層構造の他の成分との間の相互作用、例えば、塩形成または錯体化を除外しない。これは、アセナピンがその遊離塩基形態で含まれている場合でも、それがプロトン化もしくは部分的にプロトン化された形態または酸付加塩の形態で最終TTS中に存在し得るか、またはアセナピンが塩の形態で含まれている場合、その一部が遊離塩基として最終TTS中に存在し得ることを意味する。別途指示されない限り、具体的には、自己接着性層構造中のアセナピンの量は、TTSの製造中にTTS中に含まれるアセナピンの量に関連し、遊離塩基の形態のアセナピンに基づいて計算される。例えば、a)0.1mmol(28.6mgと同等)のアセナピン塩基またはb)0.1mmol(40.2mgと同等)のアセナピンマレイン酸塩が製造中にTTS中に含まれる場合、自己接着性層構造中のアセナピンの量は、本発明の意味の範囲内で、いずれの場合も、0.1mmolまたは28.6mgである。
【0028】
TTSの製造中にTTS中に含まれるアセナピン出発材料は、粒子の形態であり得る。アセナピンは、例えば、粒子の形態で自己接着性層構造中に存在し得る、及び/または溶解し得る。
【0029】
本発明の意味の範囲内で、「粒子」という用語は、個別の粒子を含む固体の粒子状物質であり、その寸法がその物質と比較してごくわずかであるものを指す。具体的には、粒子は、非晶質及び結晶質物質を含む、プラスチック/変形可能な固体を含む固体である。
【0030】
本発明の意味の範囲内で、「分散させる」という用語は、出発材料(例えば、アセナピン)が完全に溶解していないステップまたはステップの組み合わせを指す。本発明の意味での分散は、出発材料の溶解度(例えば、コーティング組成物中のアセナピンの溶解度)に応じて、出発材料(例えば、アセナピン粒子)の一部の溶解を含む。
【0031】
受動的活性剤送達を使用するTTSには、2つの主なタイプ、すなわち、マトリックスタイプのTTS及びリザーバタイプのTTSがある。マトリックスタイプのTTSでは、活性剤はマトリックスに含まれ、リザーバタイプのTTSでは、活性剤は液体または半液体リザーバに含まれる。マトリックスタイプのTTS中の活性剤の放出は、活性剤自体を含むマトリックスによって主に制御される。これとは対照的に、リザーバタイプのTTSは、活性剤の放出を制御する速度制御膜を必要とする。マトリックスタイプのTTSは、リザーバタイプのTTSと比較して、通常、速度決定膜が不要であり、膜の破断による用量ダンピングが起こり得ないという点で有利である。要約すれば、マトリックスタイプの経皮治療システム(TTS)は、製造がより単純であり、患者が容易に使用することができ、患者に便利なものある。
【0032】
本発明の意味の範囲内で、「マトリックスタイプのTTS」とは、活性物質がポリマー担体、すなわち、マトリックス内に均質に溶解及び/または分散しているシステムまたは構造であり、活性剤及び任意に残存する成分とともにマトリックス層を形成するものを指す。かかるシステムでは、マトリックス層は、TTSからの活性剤の放出を制御する。マトリックスタイプのTTSも速度制御膜も含み得る。
【0033】
TTSからの活性剤の放出が速度制御膜によって制御される、速度制御膜及び液体または半液体活性剤含有リザーバを有するTTSは、「リザーバタイプのTTS」という用語で言及される。リザーバタイプのTTSは、本発明の意味の範囲内で、マトリックスタイプのTTSと理解されるべきではない。具体的には、本発明の意味の範囲内で、当該技術分野ではマトリックスタイプのTTSとリザーバタイプのTTSとの間の混合物であるとみなされるマイクロリザーバシステム(外側のマトリックス相に内側の活性物質含有相を有する二相システム)は、本発明の意味の範囲内で、マトリックスタイプであるとみなされる。マトリックスタイプのTTSは、具体的には、活性物質が感圧接着剤マトリックス中に均質に溶解及び/または分散しているシステムを指す「接着剤中薬物」タイプのTTSの形態であり得る。
【0034】
本発明の意味の範囲内で、「マトリックス層」という用語は、ポリマー担体中に均一に溶解及び/または分散している活性物質を含む任意の層を指す。典型的には、マトリックス層は、活性剤含有層としてマトリックスタイプのTTS中に存在する。リザーバタイプのTTSは、リザーバ層及び速度制御膜に加えて、皮膚接触層として機能する追加の接着剤層を含み得る。かかるリザーバタイプのTTSでは、追加の接着剤層は、多くの場合、活性剤を含まない層として製造される。しかしながら、濃度勾配のため、活性剤は、平衡に達するまで、リザーバから追加の接着剤層に経時的に移動する。したがって、かかるリザーバタイプのTTSでは、しばらく平衡した後、追加の接着剤層が活性剤を含み、本発明の意味でのマトリックス層とみなされるべきである。
【0035】
マトリックス層は、例えば、溶媒含有コーティング組成物をコーティングして乾燥させた後に得られる最終固化層である。マトリックス層は、所望の面積重量を提供するために同じ組成の2つ以上のかかる固化層(例えば、乾燥層)を積層することによっても製造され得る。マトリックス層は、自己接着性(感圧接着剤マトリックスの形態)であり得るか、またはTTSは、十分な粘着を提供するために感圧接着剤の追加の皮膚接触層を含み得る。具体的には、マトリックス層は、感圧接着剤マトリックス層である。
【0036】
本発明の意味の範囲内で、「感圧接着剤」という用語は、特に指圧で接着し、永久的に粘着性であり、強い保持力を発揮し、残留物を残すことなく滑らかな表面から除去可能であるべき材料を指す。感圧接着剤層は、皮膚と接触したときに、「自己接着性」である、すなわち、典型的には皮膚への固定のためにさらなる補助が必要とされないように皮膚に接着力を提供する。「自己接着性」層構造は、感圧接着剤マトリックスの形態または追加の層の形態で提供され得る皮膚接触用の感圧接着剤層、すなわち、感圧接着剤皮膚接触層を含む。接着剤オーバーレイは、接着力を向上させるために依然として用いられ得る。
【0037】
本発明の意味の範囲内で、「皮膚接触層」という用語は、投与中に患者の皮膚と直接接触するTTS中に含まれる層を指す。TTSが追加の皮膚接触層を含む場合、他の層は、皮膚と接触せず、必ずしも自己接着特性を有しない。上で概説されるように、皮膚接触層は、活性剤の一部を経時的に吸収し得、その結果、マトリックス層とみなされ得る。放出面積は、マトリックス層の面積によって提供される。皮膚接触層を使用して、接着を増強することができる。追加の皮膚接触層のサイズとマトリックス層のサイズは、通常、同延であり、放出面積に相当する。
【0038】
本発明の意味の範囲内で、「面積重量」という用語は、g/m2で提供される、特定の層、例えば、マトリックス層の乾燥重量を指す。面積重量値は、製造時の変動のため、±10%、好ましくは±7.5%の許容誤差の対象となる。
【0039】
別途指示されない場合、「%」は、重量%を指す。
【0040】
本発明の意味の範囲内で、「ポリマー」という用語は、1つ以上のモノマーを重合することによって得られるいわゆる繰り返し単位からなる任意の物質を指し、1種類のモノマーからなるホモポリマー及び2種類以上のモノマーからなるコポリマーを含む。ポリマーは、線状ポリマー、星形ポリマー、櫛形ポリマー、ブラシ形ポリマー等の任意の構造のもの、コポリマーの場合には任意のモノマー配列のもの、例えば、交互、統計的、ブロックコポリマー、またはグラフトポリマーであり得る。最小分子量は、ポリマーの種類に応じて変化し、当業者に既知である。ポリマーは、例えば、2,000ダルトン超、好ましくは5,000ダルトン超、より好ましくは10,000ダルトン超の分子量を有し得る。これに対応して、2,000ダルトン未満、好ましくは5,000ダルトン未満、またはより好ましくは10,000ダルトン未満の分子量を有する化合物は、通常、オリゴマーと称される。
【0041】
本発明の意味の範囲内で、「官能基」という用語は、ヒドロキシ基及びカルボン酸基を指す。
【0042】
本発明の意味の範囲内で、「架橋剤」という用語は、ポリマー中に含まれている官能基を架橋することができる物質を指す。
【0043】
本発明の意味の範囲内で、「接着剤オーバーレイ」という用語は、活性剤を含まず、活性剤含有構造よりも面積が大きく、かつ皮膚に接着する追加の面積を提供するが、活性剤の放出面積を提供しない自己接着性層構造を指す。それにより、TTSの全体的な接着特性が増強される。接着剤オーバーレイは、バッキング層及び接着剤層を含む。
【0044】
本発明の意味の範囲内で、「バッキング層」という用語は、例えば、アセナピン含有層を支持するか、または接着剤オーバーレイのバッキングを形成する層を指す。TTS中の少なくとも1つのバッキング層、及び通常、アセナピン含有層のバッキング層は、貯蔵及び投与期間中、層中に含まれている活性剤に対して閉塞性である、すなわち、実質的に不透過性であり、それ故に、規制要件に従って活性物質損失または交差汚染を防止する。
【0045】
本発明によるTTSは、インビトロ皮膚透過試験で測定されるある特定のパラメータによって特徴付けられ得る。
【0046】
インビトロ浸透試験は、ヒトまたは動物皮膚、好ましくは、800μmの厚さ及び無傷の表皮を有する採皮された分層ヒト皮膚と、受容培地(受容培地が、例えば、60体積%のリン酸緩衝液(pH5.5)、30体積%のジプロピレングリコール、及び10体積%のアセトニトリルを含み得るように、最大40体積%の有機溶媒、例えば、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、ジプロピレングリコール、PEG400が添加されたものまたは添加されていないもの)としてpH5.5または7.4のリン酸緩衝液(32℃、0.1%生理食塩水アジドを有する)とを用いてフランツ拡散セルで行われる。
【0047】
別途指示されない場合、インビトロ透過試験は、800μmの厚さ及び無傷の表皮を有する採皮された分層ヒト皮膚と、受容培地としてpH5.5のリン酸緩衝液(32℃、0.1%生理食塩水アジドを有する)とを用いて行われる。受容培地に透過した活性物質の量は、試料体積を取り込むことによってUV光度検出器を用いた有効なHPLC法を使用して規則的間隔で決定される。受容培地は、試料体積を取り込む際に新鮮な培地で完全にまたは部分的に置き換えられ、透過した活性物質の測定された量は、最後の2つの試料採取時点の間で透過した量に関連し、それまでに透過した総量には関連しない。
【0048】
したがって、本発明の意味の範囲内で、「透過量」というパラメータは、μg/cm2で提供され、ある特定の経過時間での試料間隔で透過した活性物質の量に関連する。例えば、受容培地に透過した活性物質の量が、例えば、0、2、4、8、12、及び24時間時点で測定された上述のインビトロ透過試験において、活性物質の「透過量」は、例えば、8時間~12時間の試料間隔にわたって提供され得、12時間時点での測定結果に相当する。
【0049】
透過量は、ある特定の時点で透過した活性物質の累積量に相当する「累積透過量」としても提供され得る。例えば、受容培地に透過した活性物質の量が、例えば、0、2、4、8、12、及び24時間時点で測定された上述のインビトロ透過試験において、12時間時点での活性物質の「累積透過量」は、0時間~2時間、2時間~4時間、4時間~8時間、及び8時間~12時間の透過量の合計に相当する。
【0050】
本発明の意味の範囲内で、ある特定の経過時間でのある特定の試料間隔にわたる「皮膚透過速度」というパラメータは、μg/(cm2時間)で提供され、μg/cm2で上述のインビトロ透過試験によって測定される当該試料間隔での透過量を当該試料間隔の時間で割ることによって計算される。例えば、受容培地に透過した活性物質の量が、例えば、0、2、4、8、12、及び24時間時点で測定された上述のインビトロ透過試験における皮膚透過速度では、12時間時点での「皮膚透過速度」は、8時間~12時間の試料間隔での透過量を4時間で割ったものとして計算される。
【0051】
「累積皮膚透過速度」は、累積透過量を経過時間で割ることによってそれぞれの累積透過量から計算され得る。例えば、受容培地に透過した活性物質の量が、例えば0、2、4、8、12、及び24時間時点で測定された上述のインビトロ透過試験において、12時間時点での「累積皮膚透過速度」は、12時間にわたる累積透過量(上記参照のこと)を12時間で割ったものとして計算される。
【0052】
本発明の意味の範囲内で、透過量及び皮膚透過速度(ならびに累積透過量及び累積皮膚透過速度)という上記のパラメータは、少なくとも3回のインビトロ透過試験実験から計算された平均値を指す。
【0053】
本発明によるTTSは、インビトロ臨床研究で測定されるある特定のパラメータによって特徴付けられ得る。
【0054】
本発明の意味の範囲内で、「平均放出速度」というパラメータは、活性剤がヒト皮膚を介して体循環に放出される、投与期間(例えば、1~7日間)にわたる、μg/時間、mg/時間、μg/24時間、mg/24時間、μg/日、またはmg/日での平均放出速度を指し、臨床研究で当該投与期間にわたって得られたAUCに基づく。平均放出速度は、TTSの用量または強度を特定するために使用されるパラメータである。例えば、静脈内または経口投与及び(上にも記載されているように)とは対照的に、TTSは、通常、皮膚及び体循環に実際に提供されるよりも多くの活性物質をそのシステム中に含んでいるため、TTS中に含まれる活性物質の量は用量のパラメータとしては無意味である。これは、TTSの場合、用量または強度が、通常、平均放出速度によって特徴付けられる理由であり、対象に経時的に送達される活性物質の量をより正確に表す。
【0055】
本発明の意味の範囲内で、「長期間」という用語は、少なくとももしくは約24時間、少なくとももしくは約48時間、少なくとももしくは約84時間、少なくとももしくは約168時間、少なくとももしくは約1日間、少なくとももしくは約3.5日間、または少なくとももしくは約7日間、または約24時間~約168時間もしくは1~7日間、または約24時間~約84時間もしくは1~3.5日間の期間に関する。
【0056】
継続的な薬物治療の場合、薬物投与の頻度は、好ましくは、治療有効血漿濃度を維持するのに十分に高く保たれる。言い換えれば、投薬間隔とも呼ばれる2つの剤形投与間の間隔は、適宜に調整される必要がある。本発明の意味の範囲内で、「投薬間隔」という用語は、2つの連続するTTS投与間の期間、すなわち、TTSが患者の皮膚に適用される2つの連続する時点間の間隔を指す。一旦適用されると、TTSは、通常、全投薬間隔にわたって患者の皮膚上で維持され、投薬間隔の終了時にのみ除去され、その時点で新たなTTSが皮膚に適用される。例えば、投薬間隔が168時間または7日間である場合、TTSは、患者の皮膚に適用され、患者の皮膚上で168時間または7日間維持される。168時間または7日後、TTSが皮膚から除去され、新たなTTSが適用される。したがって、168時間または7日間の投薬間隔により、24時間治療で週1回のTTS交換モードが可能になる。
【0057】
本発明の意味の範囲内で、「室温」という用語は、実験が行われる実験室内で見られる修正されていない温度を指し、通常、15~35℃、好ましくは約18~25℃の範囲内である。
【0058】
本発明の意味の範囲内で、「患者」という用語は、治療の必要性を示唆する特定の1つ以上の症状の臨床兆候を呈した対象、状態の治療を防止的または予防的に受けている対象、または治療される状態の診断を受けた対象を指す。
【0059】
本発明の意味の範囲内で、「薬物動態パラメータ」という用語は、例えば、健常ヒト対象への活性剤TTS、例えば、アセナピンTTSの単回投与、複数回投与、または定常状態投与によって、臨床研究で得られた血漿曲線、例えば、Cmax、Ct、及びAUCt1-t2を説明するパラメータを指す。個々の対象の薬物動態パラメータは、算術平均及び幾何平均、例えば、平均Cmax、平均AUCt、及び平均AUCINF、ならびに追加の統計値、例えば、それぞれの標準偏差及び標準誤差、最小値、最大値、及び値のリストがランク付けされる場合には中間値(中央値)を使用して要約される。本発明との関連で、薬物動態パラメータ、例えば、Cmax、Ct、及びAUCt1-t2は、算術平均値または幾何平均値を指し、好ましくは幾何平均値を指す。臨床研究である特定のTTSについて得られた絶対平均値が研究毎にある程度異なることを不可能にすることはできない。研究間の絶対平均値の比較を可能にするために、参照製剤、例えば、将来的には本発明に基づくいずれかの製品が内部標準として使用され得る。前の研究と後の研究におけるそれぞれの参照製品の放出面積毎のAUCの比較を使用して補正係数を取得して、研究毎の差を考慮に入れることができる。
【0060】
本発明による臨床研究とは、医薬品規制調和国際会議(ICH)ならびに全ての適用可能な地域の良き臨床上の基準(GCP)及び規制機関に完全に準拠して行われた研究を指す。
【0061】
本発明の意味の範囲内で、「健常ヒト対象」という用語は、55kg~100kgの範囲の体重及び18~29の範囲の肥満度指数(BMI)、ならびに血圧等の正常な生理学的パラメータを有する男性または女性対象を指す。本発明の目的のための健常ヒト対象は、ICHの推奨に基づき、かつそれに従う、選択基準及び除外基準に従って選択される。
【0062】
本発明の意味の範囲内で、「対象集団」という用語は、少なくとも10名の個別の健常ヒト対象を指す。
【0063】
本発明の意味の範囲内で、「幾何平均」という用語は、元のスケールに逆変換された対数変換データの平均を指す。
【0064】
本発明の意味の範囲内で、「算術平均」という用語は、全ての観測値の合計を総観測数で割ったものを指す。
【0065】
本発明の意味の範囲内で、「AUC」というパラメータは、血漿濃度-時間曲線下面積に相当する。AUC値は、血液循環に吸収される活性剤の量の合計に比例し、それ故に、バイオアベイラビリティの尺度になる。
【0066】
本発明の意味の範囲内で、「AUCt1-t2」というパラメータは、(ng/mL)時間で提供され、時間t1からt2までの血漿濃度-時間曲線下面積に関し、線形台形法によって計算される。
【0067】
本発明の意味の範囲内で、「Cmax」というパラメータは、(ng/mL)で提供され、活性剤の観察された最大血漿濃度に関する。
【0068】
本発明の意味の範囲内で、「Ct」というパラメータは、(ng/mL)で提供され、時間t時点で観察された活性剤の血漿濃度に関する。
【0069】
本発明の意味の範囲内で、「tmax」というパラメータは、時間で提供され、Cmax値に到達する時点に関する。言い換えれば、tmaxは、観察された最大血漿濃度の時点である。
【0070】
本発明の意味の範囲内で、「tlag」というパラメータは、時間で提供され、投与時間(TTSの場合、TTSが最初に皮膚に適用される時間、すなわち、t=0)と測定可能な血漿濃度の出現時間との間の遅延に関する。tlagは、測定可能な(すなわち、非ゼロ)活性剤血漿濃度が得られるか、または中央値によって表される第1の時点の平均算術値として概算され得る。
【0071】
本発明の意味の範囲内で、「平均血漿濃度」という用語は、(ng/mL)で提供され、各時点での活性剤、例えば、アセナピンの個々の血漿濃度の平均である。
【0072】
本発明の意味の範囲内で、「コーティング組成物」という用語は、バッキング層または剥離ライナー上にコーティングされて乾燥時にマトリックス層を形成することができる、溶媒中のマトリックス層の全ての成分を含む組成物を指す。
【0073】
本発明の意味の範囲内で、「溶解する」という用語は、肉眼で確認できる透明でいかなる粒子も含有しない溶液を得るプロセスを指す。
【0074】
本発明の意味の範囲内で、「溶媒」という用語は、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、及びそれらの混合物等の揮発性有機液体である任意の液体物質を指す。
【0075】
本発明の意味の範囲内で、別途特定されない限り、「約」という用語は、開示される量の±10%の量を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、開示される量の±5%の量を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、開示される量の±2%の量を指す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1a】参照例1a~1cに従って調製したTTSの0~72時間にわたるアセナピン皮膚浸透速度を示す。
【
図1b】参照例1a~1cに従って調製したTTSの72時間後のアセナピンの利用率を示す。
【
図2a】実施例2aならびに参照例2c及び2dに従って調製したTTSの、25℃及び60%相対湿度(RH)で0~12ヶ月間にわたる貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図2b】実施例2aならびに参照例2c及び2dに従って調製したTTSの、40℃及び75%RHで0~6ヶ月間にわたる貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図3a】実施例3aに従って調製したTTSの場合に0~3ヶ月間、実施例3b及び3cに従って調製したTTSの場合に0~2ヶ月間にわたる、25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図3b】実施例3aに従って調製したTTSの場合に0~3ヶ月間、実施例3b及び3cに従って調製したTTSの場合に0~2ヶ月間にわたる、40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図3c】実施例2aに従って調製したTTSの場合に4.5ヶ月後、実施例2bに従って調製したTTSの場合に4ヶ月後、実施例3d及び3eに従って調製したTTSの場合に2ヶ月後の、5℃での貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図4a】実施例4a及び4bならびに参照例1cに従って調製したTTSの0~72時間時点でのアセナピン皮膚浸透速度を示す。
【
図4b】実施例4a及び4bならびに参照例1cに従って調製したTTSの72時間後のアセナピンの利用率を示す。
【
図5a】参照例5a、5b、及び5cに従って調製したTTSの、2.5ヶ月後の40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図5b】参照例5a及び5cに従って調製したTTSの、12ヶ月後の25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図6a】参照例6a、6b、6c、及び6dに従って調製したTTSの、2.5ヶ月後の40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図6b】参照例6a、6c、及び6dに従って調製したTTSの、12ヶ月後の25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図7a】参照例7a、7b、7c、及び7dに従って調製したTTSの、2.5ヶ月後の40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図7b】参照例6a、7a、7b、7c、及び7dに従って調製したコーティング組成物(コーティング前)の分析で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図8a】実施例8a、8b、8c、8d、及び8eに従って調製したTTSの、2.5ヶ月後の40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図8b】実施例8a、8b、8c、8d、及び8eに従って調製したTTSの、12ヶ月後の25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図9a】参照例2d、ならびに実施例9a、9b、及び9cに従って調製したTTSの、0~12ヶ月間にわたる25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図9b】実施例9a、9b、及び9cに従って調製したTTSの、0~12ヶ月間にわたる30℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図9c】参照例2d、ならびに実施例9a、9b、及び9cに従って調製したTTSの、0~6ヶ月間にわたる40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図9d】参照例2d、ならびに実施例9a、9d、及び9eに従って調製したTTSの、0~12ヶ月間にわたる25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図9e】実施例9a、9d、及び9eに従って調製したTTSの、0~12ヶ月間にわたる30℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図9f】参照例2d、ならびに実施例9a、9d、及び9eに従って調製したTTSの、0~6ヶ月間にわたる40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図10a】参照例2d、ならびに実施例9a及び10aに従って調製したTTSの場合に0~12ヶ月間、実施例10bに従って調製したTTSの場合に0~6ヶ月間にわたる、25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図10b】実施例9a及び10aに従って調製したTTSの場合に0~12ヶ月間、実施例10bに従って調製したTTSの場合に0~6ヶ月間にわたる、30℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図10c】参照例2d、ならびに実施例9a、10a、及び10bに従って調製したTTSの、0~6ヶ月間にわたる40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図11a】実施例11aならびに参照例11c及び11dに従って調製したTTSの、初期及び1ヶ月後の40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図11b】実施例11aならびに参照例11c及び11dに従って調製したTTSの、初期及び1ヶ月後の40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出されたアセナピン塩基の量を示す。
【
図11c】実施例11aならびに参照例11c及び11dに従って調製したTTSの0~96時間にわたるアセナピン皮膚浸透速度を示す。
【
図11d】実施例11aならびに参照例11c及び11dに従って調製したTTSの72時間後のアセナピンの利用率を示す。
【
図11e】実施例11aに従って調製したTTSの写真を示す。
【
図11f】参照例11cに従って調製したTTSの写真を示す。
【
図11g】参照例11dに従って調製したTTSの写真を示す。
【
図12a】参照例2dに従って調製したTTSの場合に0~9ヶ月間、実施例12a、12b、及び12cに従って調製したTTSの場合に0~6ヶ月間にわたる、25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図12b】実施例12a、12b、及び12cについて、0~6ヶ月間にわたる30℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図12c】参照例2d、ならびに実施例12a、12b、及び12cについて、0~6ヶ月間にわたる40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出された全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計を示す。
【
図12d】参照例2d、ならびに実施例9a、12a、12b、及び12cに従って調製したTTSの場合に初期及び3ヶ月後、実施例9a、12a、12b、及び12cに従って調製したTTSの場合に6ヶ月後、参照例2d及び実施例9aに従って調製したTTSの場合に9ヶ月後の、25℃及び60%RHでの貯蔵安定性試験で検出されたアセナピン塩基の量を示す。
【
図12e】実施例9a、12a、12b、及び12cに従って調製したTTSの、初期、3ヶ月後、及び6ヶ月後の、30℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出されたアセナピン塩基の量を示す。
【
図12f】参照例2d、ならびに実施例9a、12a、12b、及び12cに従って調製したTTSの、初期、3ヶ月後、及び6ヶ月後の、40℃及び75%RHでの貯蔵安定性試験で検出されたアセナピン塩基の量を示す。
【
図13a】参照例2c及び2dに従って調製したTTSの、0~168時間にわたるインビボ臨床研究で得られたアセナピン血漿濃度(エラーバーとして標準偏差を伴う算術平均値)を示す。
【
図13b】参照例2c及び2dに従って調製したTTSの、0~84時間にわたるインビボ臨床研究で得られたアセナピン血漿濃度(エラーバーとして標準偏差を伴う算術平均値)を示す。
【
図13c】参照例2c及び2dに従って調製したTTSの、0~168時間にわたるインビボ臨床研究で得られたアセナピン-グルクロニド血漿濃度(幾何平均をエラーバーとして幾何標準偏差で乗じた/割った幾何平均値)を示す。
【
図13d】参照例2c及び2dに従って調製したTTSの、0~96時間にわたるインビボ臨床研究で得られたアセナピン-グルクロニド血漿濃度(幾何平均をエラーバーとして幾何標準偏差で乗じた/割った幾何平均値)を示す。
【
図13e】参照例2c及2dに従って調製したTTSの、0~108時間にわたるインビボ臨床研究で得られたN-デスメチル-アセナピン血漿濃度(幾何平均をエラーバーとして幾何標準偏差で乗じた/割った幾何平均値)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
TTS構造
本発明は、アセナピンを含有する自己接着性層構造を含むアセナピンの経皮投与のための経皮治療システムに関する。
【0078】
自己接着性層構造は、治療有効量のアセナピンを含有し、A)バッキング層と、B)1.アセナピン、2.ポリマー、3.追加のポリマー、及び4.安定剤としてα-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルを含むマトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層とを含む。
【0079】
したがって、アセナピンの経皮投与のための経皮治療システムは、治療有効量のアセナピンを含有する自己接着性層構造を含み、当該自己接着性層構造が、
A)バッキング層と、
B)マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層と、を含み、マトリックス層組成物が、
1.アセナピンと、
2.アクリルポリマーから選択されるポリマーと、
3.追加のポリマーと、
4.安定剤として、マトリックス層組成物の0.01~2%の量のα-トコフェロール及びマトリックス層組成物の少なくとも0.01%の量のパルミチン酸アスコルビルと、を含む。
【0080】
バッキング層は、特に、実質的にアセナピン不透過性である。
【0081】
本発明によるTTSは、マトリックスタイプのTTSまたはリザーバタイプのTTSであり得、好ましくはマトリックスタイプのTTSである。
【0082】
かかるマトリックスタイプのTTSでは、アセナピン、好ましくは治療有効量のアセナピンが、アセナピン含有マトリックス層中に含まれる。かかるマトリックスタイプのTTS中の自己接着性層構造は、皮膚接触層等の1つ以上のさらなる層を含み得る。かかるさらなる層には、活性剤が含まれる場合も含まれない場合もある。上で概説されるように、皮膚接触層は、活性剤を含まない層として製造されたとしても、平衡後、アセナピンを含み、その結果、(さらなる)マトリックス層ともみなされ得る。さらなる層及びアセナピン含有マトリックス層は、同じポリマーまたは異なるポリマーを含み得る。アセナピン含有マトリックス層及びさらなる層(複数可)のうちのいずれかが互いに直接接触し得るか、または速度制御膜等の膜によって分離され得る。アセナピン含有層が、実質的に同じ組成の2つのアセナピン含有マトリックス層を積層することによって調製される場合、結果として得られる二重層は、1つのマトリックス層とみなされるべきである。
【0083】
ある特定の実施形態では、自己接着性層構造は、バッキング層とマトリックス層との間に位置する追加のリザーバ層と、追加のリザーバ層とマトリックス層との間に位置するさらなる速度制御膜とを含む。
【0084】
特定の実施形態では、本発明による自己接着性層構造は、追加の皮膚接触層を含む。追加の皮膚接触層は自己接着性であり、投与中、自己接着性層構造と患者の皮膚との間に接着力を提供する。
【0085】
かかる実施形態では、自己接着性層構造は、マトリックス層と追加の皮膚接触層との間に位置する膜を含む場合も含まない場合もあり、この膜は、好ましくは速度制御膜である。
【0086】
別の実施形態では、本発明による自己接着性層構造は、追加の皮膚接触層を含まない。その後、投与中の自己接着性層構造と患者の皮膚との間の十分な接着力が、他の手段、例えば、アセナピン含有マトリックス層及び/または接着層によって提供される。
【0087】
したがって、本発明のある特定の実施形態によれば、TTSは、接着剤オーバーレイをさらに含み得るか、または接着剤オーバーレイを含まず、好ましくは接着剤オーバーレイを含まない。この接着剤オーバーレイは、特に、アセナピン含有自己接着性層構造よりも大きく、経皮治療システム全体の接着特性を増強するためにそれに付着され得る。当該接着剤オーバーレイは、バッキング層も含む。当該接着剤オーバーレイの面積はTTSの全体的なサイズを増加させるが、放出面積は増加させない。接着剤オーバーレイは、アクリルポリマー、ポリイソブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、ポリシロキサン、及びそれらの混合物からなる群から選択される自己接着性ポリマーまたは自己接着性ポリマー混合物を含み、これらは、活性剤含有自己接着性層構造中に含まれる任意のポリマーまたはポリマー混合物と同一であり得るか、または異なり得る。
【0088】
本発明による自己接着性層構造は通常、取り外し可能な保護層(剥離ライナー)上に位置し、これは、患者の皮膚の表面に適用される直前に除去される。したがって、TTSは、剥離ライナーをさらに含み得る。このように保護されたTTSは、通常、継ぎ目密封パウチ内に保管される。この包装は、小児にとって安全であり得る、及び/または高齢者にとって使い勝手の良いものであり得る。
マトリックス層及びマトリックス層組成物
【0089】
上でより詳細に概説されるように、本発明のTTSは、マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層を含む自己接着性層構造を含む。
【0090】
マトリックス層組成物は、
1.アセナピンと、
2.アクリルポリマーから選択されるポリマーと、
3.追加のポリマーと、
4.安定剤として、マトリックス層組成の0.01~2%の量のα-トコフェロール及びマトリックス層組成の少なくとも0.01%の量のパルミチン酸アスコルビルと、を含む。
【0091】
本発明の特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、アセナピンと、アクリルポリマーから選択されるポリマーとを含み、経皮治療システムは、5~100cm2の放出面積を有する。
【0092】
本発明のある特定の実施形態では、放出面積は、5~100cm2、好ましくは5~80cm2、より好ましくは10~50cm2または50~80cm2、10~40cm2または10~30cm2または55~65cm2の範囲であり、すなわち、経皮治療システムは、5~100cm2、好ましくは5~80cm2、より好ましくは10~50cm2または50~80cm2、10~40cm2または10~30cm2または55~65cm2の放出面積を有する。
【0093】
本発明のある特定の実施形態では、マトリックス層の面積重量は、90~230g/m2、好ましくは110~210g/m2、最も好ましくは120~170g/m2の範囲である。
【0094】
理論に拘束されることを望むことなく、良好なインビトロ皮膚透過は、とりわけ、TTS中に含まれるアセナピンの量によって達成されると考えられ、これは、マトリックス層等のアセナピン含有層の濃度及び/または面積重量を調整することによって双方向に制御され得る。
【0095】
したがって、本発明のある特定の実施形態では、経皮治療システムは、放出面積あたり少なくとも0.70mg/cm2、好ましくは少なくとも0.80mg/cm2、より好ましくは少なくとも0.82mg/cm2、最も好ましくは少なくとも0.83mg/cm2のアセナピンを含有する。本発明のある特定のさらなる実施形態では、経皮治療システムは、放出面積あたり少なくとも0.90mg/cm2、少なくとも1.00mg/cm2、少なくとも1.2mg/cm2、少なくとも1.5mg/cm2、または少なくとも2.0mg/cm2のアセナピンを含有する。
【0096】
具体的には、経皮治療システムは、0.70mg/cm2~4.0mg/cm2、好ましくは0.80mg/cm2~3.0mg/cm2、より好ましくは0.82mg/cm2~2.0mg/cm2、最も好ましくは0.83mg/cm2~1.7mg/cm2のアセナピンを含有する。
【0097】
本発明のある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、感圧接着剤組成物である。マトリックス層組成物は、第2のポリマーを含み得るか、または2つ以上のさらなるポリマーを含み得る。
【0098】
本発明のある特定の実施形態によれば、マトリックス層組成物中の総ポリマー含有量は、マトリックス層組成物の60~95%、好ましくは70~90%、より好ましくは75~85%の範囲である。いずれの場合にも、マトリックス層は、十分な粘着力を提供するのに十分な量のポリマーを含む。
【0099】
ある特定の実施形態によれば、TTS、具体的には、TTSのマトリックス層中に含まれるアセナピンの量は、5~100mg、好ましくは10~80mg、最も好ましくは15~60mgの範囲である。
【0100】
ある特定の実施形態では、経皮治療システムは、5~100cm2の放出面積を有し、TTS中に含まれるアセナピンの量は、5~100mgの範囲である。
【0101】
本発明のある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、マトリックス層組成物の10%の量のパルミチン酸イソプロピルを含まず、好ましくは、マトリックス層組成物の5~15%の量のパルミチン酸イソプロピルを含まず、最も好ましくは、パルミチン酸イソプロピルを含まない。
【0102】
本発明のある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、マトリックス層組成物の5%の量のミリスチン酸イソプロピルを含まず、好ましくは、マトリックス層組成物の1~10%の量のミリスチン酸イソプロピルを含まず、最も好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルを含まない。
【0103】
本発明のある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、マトリックス層組成物の10~20%の量のエチルセルロースを含まず、好ましくは、エチルセルロースを含まない。
【0104】
本発明のある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、塩化水素を含まない。
【0105】
本発明のある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、酢酸ナトリウムまたは二酢酸ナトリウムを含まない。さらに別の実施形態では、アセナピン含有層は、ジカルボン酸アルカリ塩を含まない。さらに別の実施形態では、アセナピン含有層は、マレイン酸アルカリ塩を含まない。
【0106】
本発明のある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、マトリックス層組成物の50%超の量のポリシロキサン及びポリイソブチレンのうちのいずれも含まない。
【0107】
ある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、塩酸がコーティング組成物に含まれていないコーティングされたコーティング組成物を乾燥させることによって得ることができる。
【0108】
本発明のある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、トルエンを含まない。
【0109】
本発明のある特定の実施形態では、アセナピン含有マトリックス層は、トルエンを含まないコーティングされたコーティング組成物を乾燥させることによって得ることができる。
【0110】
アセナピン
本発明によれば、自己接着性層構造は、治療有効量のアセナピンを含有し、自己接着性層構造は、アセナピンを含むマトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層を含む。
【0111】
本発明によれば、活性剤がプロトン化された形態または遊離塩基の形態でTTS中に存在し得るが、遊離塩基の形態が好ましい。
【0112】
したがって、ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物中のアセナピンは、遊離塩基の形態で含まれている。
【0113】
ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、アセナピンを遊離塩基の形態で組み込むことによって得ることができる。
【0114】
具体的には、マトリックス層中のアセナピンの少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%、より好ましくは少なくとも98モル%、最も好ましくは少なくとも99モル%が遊離塩基の形態で存在する。
【0115】
マトリックス層中のアセナピンは完全に溶解し得るか、またはマトリックス層組成物は、好ましくはアセナピン遊離塩基から構成されるアセナピン粒子を含有し得る。
【0116】
上で概説されるように、TTS中のアセナピンの量は、活性物質の良好な放出にとって重要であると考えられており、例えば、アセナピン濃度によって調整され得る。したがって、ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物中のアセナピンの量は、マトリックス層組成物の2~20%、好ましくは3~15%、より好ましくは4~12%の範囲である。
【0117】
ある特定の実施形態では、アセナピンは、定量的HPLCによって決定される、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の純度を有する。定量的HPLCは、UV検出を伴う逆相HPLCで行われ得る。具体的には、HPLCが均一濃度で行われる場合、以下の条件が使用され得る。
カラム:オクタデシル相acc.Ph.Eur.2.2.29(USP相L1)
Kromasil C18 125mm×4.0mm;5μmまたは同等のもの
移動相:0.05モルのKH2PO4緩衝液/メタノール/TEA(45:55:0.1;v:v:v);pH2.5±0.05
(TEA=トリエチルアミン)
勾配:均一濃度
フラックス:1.0mL
注入体積:30μL
カラム温度:40℃
波長:225nm、270nm、及び3-Dフィールド;評価を270nmで行う
実行時間:10分間
さらに、HPLCが勾配で行われる場合、以下の条件が使用され得る。
カラム:オクタデシル相acc.Ph.Eur.2.2.29(USP相L1)
Kinetex C18 EVO 100mm×4.6mm;2.1μmまたは同等のもの
移動相:A:0.02モルのKH2PO4緩衝液/メタノール/TEA(70:30:0.1;v:v:v);pH2.5に調製
B:0.02モルのKH2PO4緩衝液/メタノール/TEA(30:70:0.1;v:v:v);pH2.5に調整(TEA=トリエチルアミン)
フラックス:0.7mL
注入体積:30μL
カラム温度:40℃
波長:225nm、270nm、及び3-Dフィールド;評価を225nmで行う
実行時間:32分間
勾配プロファイル:0.00分:A:100% B:0%
12.00分:A:40% B:60%
18.00分:A:0% B:100%
27.00分:A:0% B:100%
27.01分:A:100% B:0%
32.00分:A:100% B:0%
【0118】
ポリマー
上で概説されるように、本発明によるTTSは、マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層を含む自己接着性層構造を含み、マトリックス層組成物は、ポリマーを含む。
【0119】
このポリマーは、マトリックス層の十分な粘着力を提供する。ある特定の実施形態によれば、ポリマーは、十分な接着力も提供し得る。それらの実施形態では、ポリマーは、感圧接着剤ポリマーから選択される。
【0120】
好ましい実施形態では、ポリマーは、感圧接着剤ポリマーから選択される。
【0121】
本発明によるポリマーとして好適なポリマーは、アクリルポリマーである。
【0122】
対応する市販の製品は、例えば、Duro-Tak(商標)のブランド名で入手可能である(詳細については以下を参照のこと)。
【0123】
アクリルポリマーは、官能基を含むか、または含まない。
【0124】
対応する市販の製品は、例えば、Duro-Tak(商標)387-2287(ヒドロキシル基を含むアクリルコポリマー)、Duro-Tak(商標)87-4287(ヒドロキシル基を含むアクリルコポリマー)、Duro-Tak(商標)387-2516(ヒドロキシル基を含むアクリルコポリマー)、Duro-Tak(商標)387-2051(カルボン酸基を含むアクリルコポリマー)、Duro-Tak(商標)387-2353(カルボン酸基を含むアクリルコポリマー)、Duro-Tak(商標)387-4098(官能基を含まないアクリルコポリマー)、及びDuro-Tak(商標)387-9301(官能基を含まないアクリルコポリマー)のブランド名で入手可能である。
【0125】
ある特定の実施形態では、ポリマーは、官能基を含むアクリルポリマーから選択され、官能基は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、中和されたカルボン酸基、及びそれらの混合物から選択される。好ましくは、官能基は、ヒドロキシル基に限定されている。
【0126】
ある特定の実施形態では、ポリマーは、カルボン酸基または中和されたカルボン酸基またはそれらの両方の基を含まないアクリルポリマーから選択され、好ましくは、ポリマーは、酸性基を含まないアクリルポリマーから選択される。
【0127】
さらに好ましい実施形態では、ポリマーは、ヒドロキシル基を含み、カルボン酸基を含まないアクリルポリマーから選択され、より好ましくは、ポリマーは、酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのコポリマー、または酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートベースのコポリマーである。
【0128】
酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのかかるコポリマーは、Duro-Tak(商標)387-2287(架橋剤を含まない酢酸エチル中の溶液として提供される)及びDuro-Tak(商標)387-2516(チタン架橋剤を含む酢酸エチル、エタノール、ヘプタン、及びメタノール中の溶液として提供される)のブランド名で市販されている。酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルアクリレートベースのコポリマー(架橋剤を含まない酢酸エチル中の溶液として提供される)は、Duro-Tak(商標)387-4287のブランド名で市販されている。したがって、使用される市販のアクリルポリマーのタイプに応じて、かつ架橋剤がコーティング組成物に添加されているかに応じて、最終マトリックス層中のポリマーは、架橋されている(好ましくは、アルミニウム及び/またはチタン架橋剤によって架橋されている)か、または架橋剤によって架橋されていない。
【0129】
ある特定の他の実施形態では、ポリマーは、ヒドロキシル基もカルボン酸基も含まないアクリルポリマーから選択され、好ましくは、ポリマーは、官能基を含まないアクリルポリマーから選択される。
【0130】
さらに好ましい実施形態では、ポリマーは、メチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びt-オクチルアクリルアミドベースのコポリマーであり、Duro-Tak(商標)387-9301(酢酸エチル中の溶液として提供される)のブランド名で市販されている。
【0131】
さらに好ましい実施形態では、ポリマーは、2-エチルヘキシル-アクリレート及び酢酸ビニルベースのコポリマーであり、Duro-Tak(商標)387-4098(酢酸エチル中の溶液として提供される)のブランド名で市販されている。
【0132】
ある特定の好ましい実施形態では、ポリマーの量は、マトリックス層組成物の50~90%、好ましくは60~85%、より好ましくは65~80%の範囲である。
【0133】
追加のポリマー
上で概説されるように、本発明によるTTSにおいて、マトリックス層組成物は、追加のポリマーを含む。
【0134】
より高い吸水及び/または吸湿がマトリックス層の接着特性の維持/改善を助けるため、水を吸収する能力が増強されたポリマーが特に興味深いものである。
【0135】
したがって、ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、マトリックス層の改善された吸水及び/または吸湿を提供するポリマーから選択される追加のポリマーを含む。かかるポリマーは当該技術分野で周知である。それらのうち、ポリビニルピロリドン、特に可溶性ポリビニルピロリドンが特に好適であり、好ましい。
【0136】
本発明の意味の範囲内で、「可溶性ポリビニルピロリドン」という用語は、少なくともエタノール中、好ましくは水、ジエチレングリコール、メタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、2-ピロリドン、マクロゴール400、1,2プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、グリセロール、トリエタノールアミン、プロピオン酸、及び酢酸中でも10%超可溶性であるポリビニルピロリドン、別名、ポビドンを指す。市販のポリビニルピロリドンの例には、BASFによって供給されるKollidon(登録商標)12PF、Kollidon(登録商標)17PF、Kollidon(登録商標)25、Kollidon(登録商標)30、及びKollidon(登録商標)90F、またはポビドンK90Fが挙げられる。Kollidon(登録商標)の異なるグレードが、ポリビニルピロリドングレードの平均分子量を反映するK値に関して定義されている。Kollidon(登録商標)12PFは、公称K値12に相当するK値範囲10.2~13.8を特徴とする。Kollidon(登録商標)17PFは、公称K値17に相当するK値範囲15.3~18.4を特徴とする。Kollidon(登録商標)25は、公称K値25に相当するK値範囲22.5~27.0を特徴とし、Kollidon(登録商標)30は、公称K値30に相当するK値範囲27.0~32.4を特徴とする。Kollidon(登録商標)90Fは、公称K値90に相当するK値範囲81.0~97.2を特徴とする。好ましいKollidon(登録商標)グレードは、Kollidon(登録商標)12PF、Kollidon(登録商標)30、及びKollidon(登録商標)90Fである。ポリビニルピロリドンの全てのグレード及びタイプについて、過酸化物の量がある特定の制限範囲内であることが好ましく、具体的には、過酸化物の量は、500ppm以下、より好ましくは150ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。
【0137】
本発明の意味の範囲内で、「K値」という用語は、「ポビドン」についての欧州薬局方(Ph.Eur.)及びUSPモノグラフに従って水中のポリビニルピロリドンの相対粘度から計算された値を指す。
【0138】
したがって、ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、追加のポリマーを含み、追加のポリマーは、
9~15、好ましくは10.2~13.8、
15~20、好ましくは15.3~18.4、
20~27、好ましくは22.5~27.0、
27~35、好ましくは27.0~32.4、及び
75~110、好ましくは81.0~97.2
からなる範囲の群から選択される範囲内のK値を有するポリビニルピロリドンまたはそれらの任意の混合物であり、より好ましくは、27.0~32.4または81.0~97.2の範囲内のK値を有するポリビニルピロリドン及びそれらの任意の混合物であり、最も好ましくは、27.0~32.4の範囲内のK値を有するポリビニルピロリドンである。
【0139】
追加のポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、好ましくは可溶性ポリビニルピロリドンは、例えば、マトリックス層組成物の0~20%の量で、好ましくはマトリックス層組成物の5~15%の量で、より好ましくはマトリックス層組成の約10%の量で存在し得る。
【0140】
マトリックス層組成物は、例えば、追加のポリマー(複数可)として前述のポリマーのうちの1つを含み得る。粘着力及び/または接着力を増強するために他の追加のポリマー及び添加剤も添加され得る。
【0141】
他のポリマーは、特に、低温流動を減少させ、それ故に、追加のポリマーとしても好適である。かかるポリマー組成物が、多くの場合、非常に高い粘度にもかかわらず、非常に緩徐に流動する能力を呈するため、ポリマーマトリックスは低温流動を示し得る。したがって、貯蔵中に、マトリックスは、バッキング層の縁を越えてある程度流動し得る。これは、貯蔵安定性に関連する問題であり、ある特定のポリマーの添加によって防止され得る。例えば、塩基性アクリレートポリマー(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びメチルメタクリレートベースのコポリマーであるEudragit E100)を使用して、低温流動を減少させることができる。したがって、ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、塩基性ポリマー、具体的には、例えば、Eudragit E100等のアミン官能性アクリレートをさらに含む。
【0142】
ある特定の実施形態によれば、マトリックス層組成物中の総ポリマー含有量は、マトリックス層組成物の60~95%、好ましくは70~90%、より好ましくは75~85%の範囲である。
【0143】
安定剤
上で概説されるように、本発明によるTTSは、マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層を含む自己接着性層構造を含み、マトリックス層組成物は、α-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルを含む。
【0144】
α-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルが安定剤として含まれる。本発明者らは、驚くべきことに、アセナピン含有量及び分解の観点での本発明の製剤の安定性が、特にある特定の量で、α-トコフェロールとパルミチン酸アスコルビルの相乗的組み合わせによって改善されることを見出した。
【0145】
したがって、マトリックス層組成物は、安定剤として、マトリックス層組成物の0.01~2%の量のα-トコフェロール及びマトリックス層組成物の少なくとも0.01%の量のパルミチン酸アスコルビルを含む。
【0146】
本発明者らは、安定性への有利な影響がメタ重亜硫酸ナトリウムの添加によってさらに改善され得ることをさらに見出した。したがって、好ましくは、マトリックス層組成物は、安定剤として、マトリックス層組成物の0~0.5%、好ましくは0.01~0.2%、より好ましくは0.05~0.15%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムをさらに含む。特に好ましくは、マトリックス層組成物は、安定剤として、マトリックス層組成物の約0.1%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムをさらに含む。本出願がメタ重亜硫酸ナトリウムに言及している場合、他の亜硫酸塩または二亜硫酸塩が代替の実施形態として含まれるとみなされる。
【0147】
α-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルの量に関して、ある特定の範囲が安定性に特に有利な影響を及ぼす。
【0148】
したがって、マトリックス層組成物は、好ましくは、マトリックス層組成物の少なくとも0.025%、及び/または最大1.5%または0.75%、好ましくは最大0.5%、より好ましくは最大0.1%の量、最も好ましくはマトリックス層組成物の約0.05%の量のα-トコフェロールを含む。
【0149】
マトリックス層組成物は、マトリックス層組成物の少なくとも0.02%、好ましくはマトリックス層組成物の少なくとも0.08%、より好ましくはマトリックス層組成物の少なくとも0.15%の量、及び/またはマトリックス層組成物の最大2.0または1.0%、好ましくは最大0.6%の量、より好ましくはマトリックス層組成物の0.2~0.4%の量のパルミチン酸アスコルビルをさらに含み得る。
【0150】
ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体、ブチル化ヒドロキシトルエン、酢酸トコフェロール及びリノール酸トコフェロール等のトコフェロールエステル誘導体、カルボン酸、具体的には、分岐状または直鎖状アルキルモノ、ジ、またはトリカルボン酸、好ましくは分岐状または直鎖状C4~C16-モノカルボン酸、より好ましくはイソノナン酸またはヘプタン酸、最も好ましくは3,5,5-トリメチルヘキサン酸、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上のさらなる安定剤を含み得る。
【0151】
本発明によるTTSは、アセナピン含有量ならびにアセナピン分解に関して改善された安定性を有利に示す。
【0152】
したがって、ある特定の実施形態では、マトリックス層は、初期に(すなわち、製造直後、例えば、1週間以内に)、マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、さらにより好ましくは少なくとも98%の量のアセナピンを含む。アセナピンの理論量は、コーティング組成物に使用されるアセナピンの量、ならびに試験されたTTSのコーティングされて乾燥したマトリックス層の(実際の)面積重量から計算される。
【0153】
マトリックス層は、初期に、0.7%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.3%未満、さらにより好ましくは0.2%未満の総アセナピン関連分解物質量も含有し得る。
【0154】
ある特定の他の実施形態では、本発明によるTTSは、貯蔵時に安定している、すなわち、それらは、以下のように、初期のアセナピン含有量値を維持するか、または少量の分解産物を提示し得る。
【0155】
かかる実施形態のうちの1つの実施形態では、マトリックス層は、25℃及び60%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後、マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも90%、好ましくは92%、より好ましくは少なくとも94%、さらにより好ましくは少なくとも95%の量のアセナピンを含有する。
【0156】
マトリックス層は、25℃及び60%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後、1.0%未満、好ましくは0.7%未満、より好ましくは0.5%未満、さらにより好ましくは0.4%未満の総アセナピン関連分解物質量も含有し得る。
【0157】
かかる実施形態の別の実施形態では、マトリックス層は、40℃及び75%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後、マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも88%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、さらにより好ましくは少なくとも92%の量のアセナピンを含有する。
【0158】
マトリックス層は、40℃及び75%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後、3.0%未満、好ましくは2.0%未満、より好ましくは1.5%未満、さらにより好ましくは0.7%未満の総アセナピン関連分解物質量も含有し得る。
【0159】
アセナピン含有量及び総アセナピン関連分解物質量を決定するために、TTS試料が適切な抽出溶媒で抽出され、アセナピン塩基の量、ならびに様々な可能な分解物質がUV光度検出器を用いた定量的HPLC法によって決定される。アセナピンの量は、アセナピン基準に基づいて決定される。総アセナピン関連分解物質量(%で表される)は、各々応答係数(テトラデヒドロアセナピンの場合は0.33であり、他の全ての物質の場合は1である)を乗じ、試験された試料のアセナピンのピーク面積で割り、100%を乗じた、全ての分解物質のピーク面積の合計である。
【0160】
さらなる添加剤
本発明によるTTSのマトリックス層組成物は、追加のポリマー(上記を参照のこと)、架橋剤、可溶化剤、充填剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、軟化剤、スキンケア用物質、浸透促進剤、すなわち、活性剤の透過性を増加させるという意味で角質層のバリア特性に影響を与える物質、pH調節剤、及び防腐剤からなる群から選択されるさらなる賦形剤または添加剤を含み得る。特に好ましい添加剤は、粘着付与剤及び安定剤である。かかる添加剤は、1添加剤あたりマトリックス層組成物の0.001%~15%の量でアセナピン含有層中に存在し得る。ある特定の実施形態では、全ての添加剤の総量は、マトリックス層組成物の0.001%~25%である。以下、特定の添加剤の量の範囲が提供される場合、かかる範囲は、個々の添加剤あたりの量を指す。
【0161】
薬学的製剤において、製剤成分が、それらの物理化学的及び生理学的特性に従って、かつそれらの機能に従ってカテゴリー化されることに留意されたい。これは、特に、あるカテゴリーに分類される物質または化合物が、製剤成分の別のカテゴリーへの分類から除外されないことを意味する。例えば、ある特定のポリマーは、結晶化抑制剤のみならず、粘着付与剤でもあり得る。いくつかの物質は、例えば、典型的な軟化剤であり得ると同時に、浸透促進剤としても作用する。当業者であれば、自身の一般知識に基づいて、ある特定の物質または化合物が製剤成分のどのカテゴリー(複数可)に属するかを決定することができる。以下に賦形剤及び添加剤の詳細が提供されるが、これらが排他的であると理解されるべきではない。本明細書に明確に列記されていない他の物質も本発明に従って使用され得、製剤成分の1つのカテゴリーに明確に列記されている物質及び/または化合物は、本発明の意味で別の製剤成分としての使用から除外されない。
【0162】
架橋剤は、アルミニウムアセチルアセトネート、チタンアセチルアセトネート、またはポリブチルチタネート等のアルミニウム及びチタン架橋剤からなる群から選択され得、好ましくはチタン架橋剤である。架橋剤の量は、マトリックス層組成物の0.005~1%、好ましくは0.01~0.1%の範囲であり得る。マトリックス層組成物は、自己架橋性ポリマー、すなわち、加熱時に反応するグリシジル基等の架橋性官能基を含むポリマーも含み得る。さらに特定の実施形態によれば、マトリックス層組成物は、上記の架橋剤及び自己架橋性ポリマーを含む。
【0163】
一実施形態では、マトリックス層組成物は、可溶化剤をさらに含む。可溶化剤は、好ましくは、アセナピン含有層中のアセナピンの溶解度を改善する。好ましい可溶化剤には、例えば、中鎖及び/または長鎖脂肪酸のグリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレンエステル、例えば、モノリノール酸グリセリル、中鎖グリセリド及び中鎖トリグリセリド、ヒマシ油をエチレンオキシドと反応させることによって作製される非イオン性可溶化剤、及び脂肪酸または脂肪アルコールをさらに含み得るそれらの任意の混合物;セルロース及びメチルセルロース及びそれらの誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース及び酢酸コハク酸ヒプロメロース;様々なシクロデキストリン及びその誘導体;ポロキサマーとして既知のポリオキシエチレンの2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレンの中央疎水性鎖を有する非イオン性トリブロックコポリマー;PVAc-PVCap-PEGと略され、Soluplus(登録商標)としても既知のポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、及びポリビニルカプロラクタムベースのグラフトコポリマー;天然由来のヒマシ油、ポリエチレングリコール400、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80等)、またはプロピレングリコールの精製グレード;ジエチレングリコールモノエチルエーテル;ならびに以下に記載の可溶性ポリビニルピロリドンのうちのいずれかのみならず、Kollidon(登録商標)CL、Kollidon(登録商標)CL-M、及びKollidon(登録商標)CL-SF等のクロスポビドンとしても既知の不溶性/架橋ポリビニルピロリドン、ならびにKollidon(登録商標)VA64等のコポビドンとしても既知のポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマーが含まれる。
【0164】
しかしながら、以下に記載の透過促進剤も可溶化剤として作用することができる。さらに、結晶化抑制剤も可溶化剤として作用し得る。
【0165】
シリカゲル、二酸化チタン、及び酸化亜鉛等の充填剤がポリマーと併用されて、粘着力及び結合強度等のある特定の物理的パラメータに望ましい方法で影響を与えることができる。
【0166】
マトリックス層が自己接着特性を有する必要があり、十分な自己接着特性を提供しない1つ以上のポリマーが選択される場合、粘着付与剤が添加される。粘着付与剤は、トリグリセリド、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、樹脂、樹脂エステル、テルペン及びそれらの誘導体、エチレン酢酸ビニル接着剤、ジメチルポリシロキサン、及びポリブテン、ならびにそれらの混合物から選択され得る。ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、マトリックス層組成物の5~15%の量の粘着付与剤を含む。
【0167】
ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、中鎖トリグリセリドを含む。かかる中鎖トリグリセリドは、粘着付与剤として含まれ、皮膚へのマトリックス層の改善された接着力を提供する。ある特定の実施形態では、十分な量の中鎖トリグリセリドが、皮膚透過性能を損なうことなく、アクリルポリマーを含むアセナピン含有マトリックス層組成物に添加され得る。
【0168】
かかる実施形態では、マトリックス層組成物は、マトリックス層組成物の0.1~14%、好ましくはマトリックス層組成物の1~13%、より好ましくはマトリックス層組成物の3~12%、さらにより好ましくはマトリックス層組成物の5~12%、最も好ましくはマトリックス層組成物の約10%の量の中鎖トリグリセリドを含み得る。接着力に関して、中鎖トリグリセリドを大量に含むことが好ましいが、濃度が高すぎると粘着特性が不十分になる場合がある。
【0169】
中鎖トリグリセリドは、グリセロール及び3つの中鎖脂肪酸に由来するエステルである。トリグリセリドの特性は、脂肪酸組成、すなわち、中鎖トリグリセリド中に存在する全ての脂肪酸由来部分に基づく組成に依存する(これは、1つのオクタノイド酸、1つのデカン酸、及び1つのドデカン酸に基づくトリグリセリドの3つ分子の脂肪酸組成が各々、オクタン酸のみに基づく第1のトリグリセリド、デカン酸のみに基づく第2のトリグリセリド、及びドデカン酸のみに基づく第3のトリグリセリドの混合物の脂肪酸組成と同じであることを意味する)。
【0170】
ある特定の実施形態では、中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成は、
(i)ヘキサン酸、
(ii)オクタン酸、
(iii)デカン酸、
(iv)ドデカン酸、及び
(v)テトラデカン酸のうちの1つ以上からなる。
【0171】
ある特定の好ましい実施形態では、中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成は、
(i)0~5%のヘキサン酸、
(ii)40.0~90.0%のオクタン酸、
(iii)10.0~55.0%のデカン酸、
(iv)0~5%のドデカン酸、及び
(v)0~2%のテトラデカン酸からなる。
【0172】
好ましくは、中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成は、
(i)0~2%のヘキサン酸、
(ii)50.0~80.0%のオクタン酸、
(iii)20.0~45.0%のデカン酸、
(iv)0~2%のドデカン酸、及び
(v)0~1%のテトラデカン酸からなる。
【0173】
上記の実施形態のうちのある特定の実施形態では、中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成は、
(i)0~2%のヘキサン酸、
(ii)50.0~65.0%のオクタン酸、
(iii)30.0~45.0%のデカン酸、
(iv)0~2%のドデカン酸、及び
(v)0~1%のテトラデカン酸からなる。
【0174】
上記の実施形態のうちのある特定の他の実施形態では、中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成は、
(i)0~2%のヘキサン酸、
(ii)65.0~80.0%のオクタン酸、
(iii)20.0~35.0%のデカン酸、
(iv)0~2%のドデカン酸、及び
(v)0~1%のテトラデカン酸からなる。
【0175】
中鎖トリグリセリドはさらに、ある特定の酸価、過酸化物価、及び/またはヒドロキシル価を示し得る。
【0176】
すなわち、ある特定の実施形態では、中鎖トリグリセリドの酸価は、0.5mg KOH/g以下、好ましくは0.2mg KOH/g以下、最も好ましくは0.1mg KOH/g以下である。
【0177】
ある特定の他の実施形態では、中鎖トリグリセリドの過酸化物価は、5.0meq O/kg以下、好ましくは2.0meq O/kg以下、最も好ましくは1.0meq O/kg以下である。
【0178】
さらに他の実施形態では、中鎖トリグリセリドのヒドロキシル価は、10mg KOH/g以下、好ましくは8.0mg KOH/g以下、最も好ましくは5.0mg KOH/g以下である。
【0179】
一実施形態では、マトリックス層組成物は、軟化剤/可塑剤をさらに含む。例示的な軟化剤/可塑剤には、6~20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状飽和または不飽和アルコール、トリグリセリド、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0180】
ある特定の実施形態では、マトリックス層組成物は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、乳酸ラウリル、ジメチルプロピレン尿素、及びプロピレングリコール脂肪酸モノエステルとプロピレングリコール脂肪酸ジエステルとの混合物から選択される浸透促進剤を含む。プロピレングリコール脂肪酸モノエステルとプロピレングリコール脂肪酸ジエステルとのかかる混合物は、例えば、モノカプリル酸プロピレングリコール(タイプII)であるCapryolのブランド名で市販されており、プロピレングリコール脂肪酸モノエステルとプロピレングリコール脂肪酸ジエステルとの混合物は、モノエステル90%超及びジエステル10%未満の比率であり、脂肪酸は、主にカプリル酸からなる。
【0181】
ある特定の他の実施形態では、マトリックス層組成物は、オレイン酸、オレイン酸アルコール、及びそれらの混合物から選択される透過促進剤を含まず、具体的には、マトリックス層組成物は、透過促進剤を全く含まない。別の実施形態では、マトリックス層組成物は、酢酸ナトリウムまたは二酢酸ナトリウムを含まない。さらに別の実施形態では、アセナピン含有層は、ジカルボン酸アルカリ塩を含まない。さらに別の実施形態では、マトリックス層組成物は、マレイン酸アルカリ塩を含まない。
【0182】
本発明によるマトリックス層組成物は、pH調節剤を含み得る。好ましくは、pH調節剤は、アミン誘導体、無機アルカリ誘導体、それぞれ塩基性官能性及び酸性官能性を有するポリマーから選択される。
【0183】
放出特性
本発明によるTTSは、アセナピンを既定の長期間にわたって体循環に経皮投与するために設計されている。
【0184】
一態様では、本発明によるTTSは、少なくとも24時間の投与にわたって、好ましくは少なくとも48時間の投与にわたって、より好ましくは少なくとも72時間の投与にわたって、最も好ましくは少なくとも84時間の投与にわたって、0.5~20mg/日、0.5~20mg/24時間、500~20,000μg/日、500~20,000μg/24時間、0.021~0.833mg/時間、または21~833μg/時間、好ましくは1.0~15mg/日、1.0~15mg/24時間、1,000~15,000μg/日、1,000~15,000μg/24時間、0.042~0.625mg/時間、または42~625μg/時間、より好ましくは2.0~10mg/日、2.0~10mg/24時間、2,000~10,000μg/日、2,000~10,000μg/24時間、0.083~0.417mg/時間、または83~417μg/時間の平均放出速度を提供する。
【0185】
ある特定の実施形態によれば、本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、1μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、好ましくは2μg/(cm2 h)~15μg/(cm2 h)、より好ましくは4μg/(cm2 h)~12μg/(cm2 h)の、48時間または72時間時点でのアセナピン累積皮膚透過速度を提供する。
【0186】
本発明の特定の実施形態では、上記の本発明によるTTSは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、
最初の8時間に0μg/(cm2 h)~10μg/(cm2 h)、
8時間から24時間まで2μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、
24時間から32時間まで3μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、
32時間から48時間まで3μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、
48時間から72時間まで2μg/(cm2 h)~15μg/(cm2 h)のアセナピン皮膚透過速度を提供する。
【0187】
ある特定の実施形態では、本発明による経皮治療システムは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、0.05mg/cm2~1.0mg/cm2、好ましくは0.1mg/cm2~0.7mg/cm2のアセナピン累積透過量を48時間の期間にわたって提供する。
【0188】
ある特定の実施形態では、本発明による経皮治療システムは、採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、0.1mg/cm2~2.0mg/cm2、好ましくは0.2mg/cm2~1.0mg/cm2のアセナピン累積透過量を72時間の期間にわたって提供する。
【0189】
治療方法/医学的使用
本発明の特定の態様によれば、本発明によるTTSは、治療方法、具体的には、ヒト患者を治療する方法で使用するためのものである。
【0190】
ある特定の実施形態では、本発明によるTTSは、好ましくは、精神病を治療する方法で使用するためのものであり、より好ましくは、統合失調症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、認知症関連精神病、激越、及び躁病障害から選択される1つ以上の状態を治療する方法で使用するためのものであり、具体的には、ヒト患者における統合失調症及び/または双極性障害を治療する方法で使用するためのものであり、具体的には、ヒト患者における双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法で使用するためのものである。
【0191】
ある特定の実施形態では、本発明によるTTSは、10~17歳の成人または小児患者における双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法で使用するためのものである。ある特定の実施形態では、本発明によるTTSは、ヒト患者、具体的には、成人における双極性障害を治療する方法でリチウムまたはバルプロエートに対する補助的治療として使用するためのものである。ある特定の実施形態では、本発明によるTTSは、ヒト患者、具体的には、成人における双極性障害を治療する方法で維持単剤療法治療として使用するためのものである。
【0192】
TTSはさらに、少なくとも24時間もしくは1日間、少なくとも48時間もしくは2日間、または少なくとも72時間もしくは3日間の投薬間隔、及び/または最大168時間もしくは7日間、最大120時間もしくは5日間、または最大96時間もしくは4日間の投薬間隔での治療方法で使用するためのものであり得る。投薬間隔は、特に、24時間もしくは1日間、48時間もしくは2日間、または84時間もしくは3.5日であり得る。
【0193】
したがって、本発明は、1日1回のTTS交換モード(24時間もしくは1日間の投薬間隔)、週2回のTTS交換モード(84時間もしくは3.5日間の投薬間隔)、または週1回のTTS交換モード(168時間もしくは7日間の投薬間隔)での24時間治療における、治療方法で使用するためのTTS、具体的には、統合失調症及び/または双極性障害、特に双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法で使用するためのTTSに関する。
【0194】
本発明によるTTSは、さらに好ましくは、患者を治療する方法で使用するためのものであり、経皮治療システムは、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも1つのアセナピン関連副作用の軽減を提供する。
【0195】
同等用量の舌下アセナピンとの比較は、同じアセナピン血漿曝露を実質的にもたらす経皮及び舌下アセナピンの用量を使用する際の臨床研究における副作用の発生率及び強度の比較として理解されるべきである。
【0196】
別の実施形態では、本発明によるTTSは、同等用量の舌下アセナピンと比較して患者における少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法で使用するためのものでもあり得る。
【0197】
患者を治療する方法または少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法のみならず、治療方法で使用するための全ての経皮治療システム、少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法で使用するための経皮治療システム、ならびに治療方法及び少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法において、以下が一般にさらに適用され得る。
【0198】
(i)少なくとも1つのアセナピン関連副作用は、具体的には、倦怠感、傾眠、めまい、口腔感覚鈍麻、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0199】
(ii)これらの副作用が軽減されるため、一実施形態では、本発明の方法及びそれらの方法で使用するための経皮治療システムは、かかる状態にすでに罹患しているヒト患者、すなわち、倦怠感、傾眠、めまい、またはそれらの任意の組み合わせに罹患しているヒト患者に特に好適である。
【0200】
(iii)さらに、同等用量の舌下アセナピンと比較した少なくとも1つのアセナピン関連副作用の発生率は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%低下し得る、及び/または同等用量の舌下アセナピンと比較した少なくとも1つのアセナピン関連副作用の強度は低下し得る。副作用の強度は、例えば、「軽度」、「中程度」、または「重度」の強度を示すスケールで副作用を分類することによって決定され得、強度の低下は、強度中央値を比較することによって定量化され得る。
【0201】
(iv)かかる実施形態では、少なくとも1つのアセナピン関連副作用は倦怠感であり得、同等用量の舌下アセナピンと比較した倦怠感の発生率は、少なくとも約30%または少なくとも約40%であり得る、及び/または同等用量の舌下アセナピンと比較した倦怠感の強度は低下し得る。
【0202】
(v)あるいは、少なくとも1つのアセナピン関連副作用はめまいであり得、同等用量の舌下アセナピンと比較しためまいの発生率は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%低下し得る。
【0203】
副作用の種類に関して、倦怠感と傾眠は、臨床的に異なる状態を指定する一方で、共通の及び/または同様の症状を有し、それ故に、特に長期間追跡されない場合、区別が困難であり得ることに留意されたい。
【0204】
別の特定の態様によれば、本発明は、治療方法、具体的には、ヒト患者を治療する方法にも関する。
【0205】
本発明は、特に、精神病を治療する方法、具体的には、統合失調症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、認知症関連精神病、激越、及び躁病障害から選択される1つ以上の状態を治療する方法、好ましくは、本発明による経皮治療システムをヒト患者の皮膚に適用することを含む、ヒト患者における統合失調症及び/または双極性障害、特に双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法に関する。
【0206】
ある特定の実施形態では、本発明は、10~17歳の成人または小児患者における双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法にも関する。ある特定の実施形態では、本発明は、リチウムまたはバルプロ酸に対する補助的治療として、ヒト患者、特に成人における双極性障害を治療する方法にも関する。ある特定の実施形態では、本発明は、ヒト患者、特に成人における双極性障害を治療する方法における維持単剤療法治療にも関する。
【0207】
本発明は、本発明による経皮治療システムを少なくとも24時間もしくは1日間、少なくとも48時間もしくは2日間、または少なくとも72時間もしくは3日間、及び/または最大168時間もしくは7日間、最大120時間もしくは5日間、または最大96時間もしくは4日間にわたってヒト患者の皮膚に適用することによる治療方法にも関する。本発明による経皮治療システムは、具体的には、24時間もしくは1日間、48時間もしくは2日間、または84時間もしくは3.5日間にわたってヒト患者の皮膚に適用され得る。
【0208】
したがって、本発明は、1日1回のTTS交換モード(24時間もしくは1日間の投薬間隔)、週2回のTTS交換モード(84時間もしくは3.5日間の投薬間隔)、または週1回のTTS交換モード(168時間もしくは7日間の投薬間隔)での24時間治療における治療方法にも関する。
【0209】
かかる方法では、前に概説されているように、経皮治療システムは、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも1つのアセナピン関連副作用の軽減を提供し得る。
【0210】
別の実施形態では、本発明は、同等用量の舌下アセナピンと比較して患者における少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法にも関し、この方法は、本発明による経皮治療システムを投与することを含む。
【0211】
本発明は、舌下アセナピン療法で治療されている患者における少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法にも関し、この方法は、
a)舌下アセナピン療法を中止することと、
b)患者の皮膚に本発明による経皮治療システムを投与することであって、経皮治療システムが、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも1つのアセナピン関連副作用の軽減を提供する、投与することと、を含む。
【0212】
かかる方法では、経皮治療システムは、舌下アセナピン療法によって本来提供されるアセナピンの量と同等の量のアセナピンを送達することができる。
【0213】
比較的一定のアセナピン血漿濃度は、ヒト対象におけるインビボ臨床研究で得られたいくつかの薬物動態パラメータによって説明され得る。
【0214】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明の経皮治療システムは、
経皮送達により、少なくとも48時間もしくは2日間の投与にわたって、0.5~20mg/日、0.5~20mg/24時間、500~20,000μg/日、500~20,000μg/24時間、0.021~0.833mg/時間、または21~833μg/時間、好ましくは1.0~15mg/日、1.0~15mg/24時間、1,000~15,000μg/日、1,000~15,000μg/24時間、0.042~0.625mg/時間、または42~625μg/時間、より好ましくは2.0~10mg/日、2.0~10mg/24時間、2,000~10,000μg/時間、2,000~10,000μg/24時間、0.083~0.417mg/時間、または83~417μg/時間の平均放出速度を提供するか、または
経皮送達により、少なくとも72時間もしくは3日間の投与にわたって、0.5~20mg/日、0.5~20mg/24時間、500~20,000μg/日、500~20,000μg/24時間、0.021~0.833mg/時間、または21~833μg/時間、好ましくは1.0~15mg/日、1.0~15mg/24時間、1,000~15,000μg/日、1,000~15,000μg/24時間、0.042~0.625mg/時間、または42~625μg/時間、より好ましくは2.0~10mg/日、2.0~10mg/24時間、2,000~10,000μg/時間、2,000~10,000μg/24時間、0.083~0.417mg/時間、または83~417μg/時間の平均放出速度を提供するか、または
経皮送達により、少なくとも84時間もしくは3.5日間の投与にわたって、0.5~20mg/日、0.5~20mg/24時間、500~20,000μg/日、500~20,000μg/24時間、0.021~0.833mg/時間、または21~833μg/時間、好ましくは1.0~15mg/日、1.0~15mg/24時間、1,000~15,000μg/日、1,000~15,000μg/24時間、0.042~0.625mg/時間、または42~625μg/時間、より好ましくは2.0~10mg/日、2.0~10mg/24時間、2,000~10,000μg/時間、2,000~10,000μg/24時間、0.083~0.417mg/時間、または83~417μg/時間の平均放出速度を提供する。
【0215】
さらに、ある特定の実施形態では、本発明の経皮治療システムは、
経皮送達により、20~300(ng/mL)hまたは300超~450(ng/mL)h、好ましくは30~200(ng/mL)hのAUC0-48を提供するか、または
経皮送達により、30~400(ng/mL)hまたは400超~600(ng/mL)h、好ましくは50~300(ng/mL)hのAUC0-72を提供するか、または
経皮送達により、35~450(ng/mL)hまたは450超~700(ng/mL)h、好ましくは60~350(ng/mL)hのAUC0-84を提供する。
【0216】
なおさらに、ある特定の実施形態では、本発明の経皮治療システムは、
経皮送達により、2.0未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.3未満のCmaxのC48に対する比率を提供するか、または
経皮送達により、3.0未満、好ましくは2.5未満、より好ましくは2.0未満のCmaxのC72に対する比率を提供するか、または
経皮送達により、3.5未満、好ましくは3.0未満、より好ましくは2.5未満、最も好ましくは2.0未満のCmaxのC84に対する比率を提供する。
【0217】
なおさらに、ある特定の実施形態では、本発明の経皮治療システムは、
経皮送達により、0.5~10ng/mL、好ましくは1~8ng/mLのCmax値を提供する。
【0218】
全てのかかる実施形態では、前述のように、TTSは、ヒト患者を治療する方法で使用するためのものであり得、経皮治療システムは、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも1つのアセナピン関連副作用の軽減を提供する。
【0219】
製造プロセス
本発明はさらに、経皮治療システムで使用するためのマトリックス層の製造プロセス、ならびに対応するマトリックス層構造及び対応するTTSに関する。
【0220】
本発明によれば、経皮治療システムで使用するためのマトリックス層の製造プロセスは、
1)少なくとも以下の成分、アセナピン、アクリルポリマー、追加のポリマー、α-トコフェロール、及びパルミチン酸アスコルビルを溶媒中で組み合わせて、コーティング組成物を得るステップと、
2)コーティング組成物をバッキング層または剥離ライナーまたは任意の中間層にコーティングするステップと、
3)コーティングされたコーティング組成物を乾燥させて、マトリックス層を形成するステップと、を含む。
【0221】
ある特定の実施形態では、ステップ1)において、少なくとも以下の成分、アセナピン、アクリルポリマー、追加のポリマー、α-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、及びメタ重亜硫酸ナトリウムが溶媒中で組み合わせられて、コーティング組成物が得られる。
【0222】
この製造プロセスでは、好ましくは、ステップ1)において、アセナピンが溶解して、コーティング組成物が得られる。
【0223】
上記のプロセスでは、好ましくは、溶媒は、アルコール溶媒、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの混合物、ならびに非アルコール溶媒、具体的には、酢酸エチル、ヘキサン、n-ヘプタン、ヘプタン、石油エーテル、トルエン、及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、エタノール及び酢酸エチルから選択される。
【0224】
ある特定の実施形態では、上記のプロセスにおけるポリマーは、アクリルポリマーであり、好ましくは、酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのコポリマー、または酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートベースのコポリマーであり、これは、30~60重量%の固形分を有する溶液として、好ましくは、酢酸エチル、n-ヘプタン、ヘプタン、メタノール、エタノール、またはそれらの任意の混合物中の溶液として提供される。
【0225】
ある特定の好ましい実施形態では、ポリマーはアクリルポリマーであり、ポリマーは架橋されている。上で詳細に概説されるように、市販のアクリルポリマーは、架橋剤を含む溶液または含まない溶液として提供され得る。加えて、追加の架橋剤(すなわち、ポリマーに備わっていない架橋剤)が製造プロセスのステップ1)で添加され得る。
【0226】
したがって、ある特定の実施形態では、コーティング組成物を得るためにステップ1)で追加の架橋剤が使用され、架橋剤は、好ましくは、アルミニウムまたはチタン架橋剤である。代替の実施形態では、コーティング組成物を得るためにステップ1)で追加の架橋剤は使用されない。
【0227】
架橋剤を含むポリマー溶液が使用される場合及び/または追加の架橋剤がステップ1)で使用される場合、ポリマーは架橋されている。代替の実施形態では、ポリマーはアクリルポリマーであり、ポリマーは架橋されていない。
【0228】
ステップ3)において、乾燥は、好ましくは、室温で、及び/または65~100℃、より好ましくは70~90℃の温度で、1回以上のサイクルで行われる。
【実施例】
【0229】
これより、添付の実施例を参照して本発明をより完全に説明する。しかしながら、以下の説明が例証にすぎず、決して本発明を制限するものと解釈されるべきはないことを理解されたい。組成物中の成分の量または面積重量に関して実施例で提供される数値は、製造時の変動のため、わずかに変化し得る。
【0230】
参照例1A~C
コーティング組成物
参照例1a~1cのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表1.1に要約する。表1.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0231】
【0232】
コーティング組成物の調製
参照例1aの場合、ステンレス鋼容器にα-トコフェロールを装填した。中鎖トリグリセリド、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516、及びポリビニルピロリドンを添加し、その後、透明な溶液が得られるまで(約40分間)混合物を撹拌した。アセナピンを緩徐に添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌しながら溶解させた。
【0233】
参照例1b及び1cの場合、ビーカーにα-トコフェロール、アセナピン、及びエタノールを装填した。アクリル系接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加し、その後、透明な溶液が得られるまで(約10分間)混合物を撹拌した。撹拌しながらポリビニルピロリドンを緩徐に添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌しながら溶解させた。
【0234】
参照例1a及び1bのコーティング組成物のコーティング
結果として得られたアセナピン含有コーティング組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(片面シリコーン処理、厚さ75μm、剥離ライナーとして機能し得る)上にコーティングし、室温で約10分間及び80℃で20分間乾燥させた。コーティング厚は、それぞれ、136.8g/m2(参照例1a)及び151.5g/m2(参照例1b)の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0235】
参照例1cのコーティング組成物のコーティング
結果として得られたアセナピン含有コーティング組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(シリコーン処理、厚さ100μm、剥離ライナーとして機能し得る)上にコーティングし、室温で約10分間及び80℃で20分間乾燥させた。コーティング厚さは、111.3g/m2のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムの第1の部分にポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層した。その後、この第1の部分のポリエチレンテレフタレートフィルム(シリコーン処理、厚さ100mm、剥離ライナーとして機能し得る)を除去し、第1の部分の接着部位を乾燥させたフィルムの第2の未修正部分の接着部位(剥離ライナーを含むが、バッキング層は含まない)上に積層した。これにより、バッキング層及び剥離ライナーを備えた、222.6g/m2のマトリックス層の面積重量を有するアセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0236】
TTSの調製(全ての実施例に関する)
次いで、個々のシステム(TTS)をアセナピン含有自己接着性層構造から打ち抜いた。特定の実施形態では、上述のTTSは、好ましくは角部が丸みを帯びており、活性成分を含まない感圧接着剤マトリックス層を含む、より大きい表面面積を有するさらなる自己接着性層を備え得る。これは、TTSが、その物理的特性のみに基づいて、皮膚に十分に接着しない場合に、及び/またはアセナピン含有マトリックス層が、無駄を避ける目的のために、顕著な角部を有する(正方形または長方形形状)場合に有利である。その後、TTSを打ち抜き、当該技術分野で慣行されているように、すなわち、保護雰囲気下で、窒素ガスを流すことによって、一次包装材料のポーチ内に密封する。
【0237】
皮膚透過速度の測定
実施例1aならびに参照例1b及び1cに従って調製したTTSの透過量及び対応する皮膚透過速度を、7.0mLのフランツ拡散セルを用いて行ったOECDガイドライン(2004年4月13日に採用)に従うインビトロ実験によって決定した。美容外科手術からの分層ヒト皮膚(女性腹部、出生1955年)を使用した。採皮刀を使用して、全てのTTSのために無傷の表皮を有する皮膚を800μmの厚さに調製した。1.151cm
2の面積を有するダイカットをTTSから打ち抜いた。32±1℃の温度でフランツセルの受容培地(抗菌剤として0.1%生理食塩水アジドを有するリン酸緩衝液pH5.5)中のアセナピン透過量を測定し、対応する皮膚透過速度を計算した。結果を表1.2及び
図1aに示す。
【0238】
【0239】
アセナピンの利用率
72時間時点でのアセナピンの利用率を、72時間時点での累積透過量及び初期アセナピン含有量に基づいて計算した。結果を表1.3及び
図1bに示す。
【0240】
【0241】
インビトロ実験は、良好な皮膚透過速度、ならびに以前に開発された参照製剤(参照例1b及び1c)のアセナピンの利用率を示す。参照例1b及び1cは、参照例2dの製剤に相当し(面積重量がより高いことを除く)、これについてのインビボ臨床研究が成功している(以下を参照のこと)。
【0242】
実施例2A、2B、及び参照例2C、2D
コーティング組成物
実施例2a及び2bならびに参照例2b及び2dのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表2.1に要約する。表2.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0243】
【0244】
コーティング組成物の調製
実施例2aの場合、ビーカーにα-トコフェロールを装填した。パルミチン酸アスコルビル、中鎖トリグリセリド、及びメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を添加した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加し、その後、透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。撹拌しながらポリビニルピロリドンを緩徐に添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌しながら溶解させた。エタノールを約100g添加し、結果として得られた溶液を撹拌した。アセナピンをビーカーに移し、混合物を撹拌した。エタノールの残りを添加し、溶液を撹拌した。
【0245】
実施例2bの場合、ビーカーにアセナピンを装填した。α-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、中鎖トリグリセリド、メタ重亜硫酸ナトリウム溶液、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516、ポリビニルピロリドン、及びエタノールをこの順序でアセナピンに添加した。結果として得られた混合物を撹拌した。
【0246】
参照例2c及び2dの場合、ステンレス鋼容器に
α-トコフェロールを装填した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加し、その後、透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。撹拌しながらポリビニルピロリドンを緩徐に添加し、透明な溶液が得られるまで撹拌しながら溶解させた。アセナピンをエタノール中に懸濁し、ステンレス鋼容器に移した。アセナピンを添加した後、透明でわずかに黄色の溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0247】
実施例2a及び2bのコーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚さは、実施例2bの場合、133.0の面積重量をもたらした。実施例2aの場合、140.2~143.8g/m2の面積重量を有する異なるフィルムが生成された。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0248】
参照例2c及び2dのコーティング組成物のコーティング
結果として得られたアセナピン含有コーティング組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(片面シリコーン処理、厚さ75μm、剥離ライナーとして機能し得る)上にコーティングし、80℃で約15分乾燥させた。コーティング厚は、ラベル要件に従って約140g/m2の面積重量をもたらした(以下、ラベル値について言及する場合、実際の値がラベル値の±7.5%の許容範囲内であると理解される)。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。残留溶媒量は、ICHガイドラインQ3C(R3)の要件、すなわち、メタノール≦3,000ppm、エタノール≦5,000ppm、酢酸エチル≦5,000ppm、及びn-ヘプタン≦5,000ppmを満たしていた。
【0249】
TTSの調製
実施例2a及び2bについては、実施例1を参照されたい。参照例2c及び2dの場合、10cm2(参照例2c)及び15cm2(参照例2d)の個別システム(TTS)をアセナピン含有自己接着性層構造から打ち抜いた。
【0250】
安定性の測定
実施例2aならびに参照例2c及び2dの長期貯蔵安定性試験を、異なる試験条件下、すなわち、25℃及び60%相対湿度(RH)ならびに40℃及び75%RHでの貯蔵下で行った。本明細書に開示される全ての安定性測定(すなわち、全ての実施例及び参照例に関する)をICH安定性ガイドラインQ1A(R2)に従って行った。様々な時点で、試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な可能な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。他の関連物質の量を、説明全体を通してICH安定性ガイドラインQ1A(R2)に従って提示する。結果を表2.2~2.7に示す。全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計のプロットを
図2a及び
図2bに示す。
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
安定性データは、本発明のある特定の実施形態では、初期安定性ならびに貯蔵安定性が、アセナピン塩基の量(特に貯蔵後に残っているアセナピン塩基の量に関して)及び全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計の両方の観点で、以前に開発された参照製剤(参照例2c及び2d)と比較して実質的に改善されたことを示す。
【0258】
実施例3A~E
コーティング組成物
実施例3a~eのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表3.1に要約する。表3.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0259】
【0260】
コーティング組成物の調製
実施例3aのコーティング組成物を、実施例2aに記載されるように調製した。
【0261】
実施例3b及び3cの場合、ビーカーにα-トコフェロールを装填した。中鎖トリグリセリド、メタ重亜硫酸ナトリウム溶液、及びアクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2287をこの順序で添加し、その後、混合物を撹拌した。撹拌しながらパルミチン酸アスコルビル溶液を滴加し、その後、撹拌しながらポリビニルピロリドンを添加し、実施例3cの場合、アルミニウムアセチルアセトネートを添加した。アセナピンをエタノールとの混合物に数回に分けて移し、結果として得られた混合物を撹拌した。
【0262】
実施例3d及び3eの場合、ビーカーにα-トコフェロールを装填した。中鎖トリグリセリド、メタ重亜硫酸ナトリウム溶液、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-4287、パルミチン酸アスコルビル溶液、及びポリビニルピロリドンをこの順序で添加し、その後、混合物を撹拌した。アセナピンを添加し、混合物を撹拌した。撹拌しながらエタノールを添加するか(実施例3d)、またはアルミニウムアセチルアセトネートをエタノール中に溶解させ、撹拌しながら添加した(実施例3e)。
【0263】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、149.7g/m2(実施例3d)及び146.8g/m2(実施例3e)のマトリックス層の面積重量をもたらした。実施例3a、3b、及び3cの場合、それぞれ、135.9~147.0g/m2、144.2~150.1g/m2、及び143.1~150.7g/m2の面積重量を有する異なるフィルムが生成された。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0264】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0265】
安定性の測定
実施例3a~3cの長期貯蔵安定性試験を、異なる試験条件下、すなわち、25℃及び60%相対湿度(RH)ならびに40℃及び75%RHでの貯蔵下で行った。様々な時点で、試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な可能な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表3.2~3.7に示す。全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計のプロットを
図3a及び
図3bに示す。
【0266】
さらに、同様に、それぞれ、4.5、4、2、及び2ヶ月にわたって5℃で貯蔵した(上で概説されるようにN
2雰囲気下で包装した)実施例2a、2b、3d、及び3eのTTSのアセナピン塩基の量、ならびに様々な可能な分解物質を決定した。結果を表3.8及び
図3cに示す。
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
【0274】
安定性データは、本発明のある特定の実施形態では、TTSが優れた初期安定性を提供し、優れた貯蔵安定性も提供することを示す。
【0275】
実施例4A及び4B
コーティング組成物
実施例4a及び4bのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表4.1に要約する。表4.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0276】
【0277】
コーティング組成物の調製
実施例4aのコーティング組成物を、実施例2bに記載されるように調製した。
【0278】
実施例4bの場合、ビーカーにアセナピンを装填した。α-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、中鎖トリグリセリド、メタ重亜硫酸ナトリウム溶液、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2287、及びポリビニルピロリドンをこの順序でアセナピンに添加し、結果として得られた混合物を撹拌した。アルミニウムアセチルアセトネートをエタノール中に溶解させ、撹拌しながら混合物に添加した。
【0279】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、143.2g/m2(実施例4a)及び144.2g/m2(実施例4b)のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0280】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0281】
皮膚透過速度の測定
実施例4a及び4bならびに参照例1cに従って調製したTTSの透過量及び対応する皮膚透過速度を、7.0mLのフランツ拡散セルを用いて行ったOECDガイドライン(2004年4月13日に採用)に従うインビトロ実験によって決定した。美容外科手術からの分層ヒト皮膚(女性腹部、出生1982年)を使用した。採皮刀を使用して、全てのTTSのために無傷の表皮を有する皮膚を800μmの厚さに調製した。1.188cm
2の面積を有するダイカットをTTSから打ち抜いた。32±1℃の温度でフランツセルの受容培地(抗菌剤として0.1%生理食塩水アジドを有するリン酸緩衝液pH5.5)中のアセナピン透過量を測定し、対応する皮膚透過速度を計算した。結果を表4.2及び
図4aに示す。
【0282】
【0283】
アセナピンの利用率
72時間時点でのアセナピンの利用率を、72時間時点での累積透過量及び初期アセナピン含有量に基づいて計算した。結果を表4.3及び
図4bに示す。
【0284】
【0285】
インビトロ実験は、良好な皮膚透過速度、ならびに以前に開発された参照製剤(参照例1c)のアセナピンの利用率を、驚くべきことに、粘着付与剤として相当量の中鎖トリグリセリドを含み、安定剤の特定の組み合わせも含む、本発明のある特定の実施形態による製剤について維持することができたことを示す。参照例1cは、参照例2dの製剤に相当し(面積重量がより高いことを除く)、これについてのインビボ臨床試験が成功している(以下を参照のこと)。
【0286】
参照例5A~C
コーティング組成物
参照例5a、5b、及び5cのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表5.1に要約する。表5.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0287】
【0288】
コーティング組成物の調製
ビーカーにパルミチン酸アスコルビルを装填した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加し、混合物を撹拌し、撹拌しながらポリビニルピロリドンを添加した。アセナピン及びエタノールを連続して添加し、透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0289】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、150.9g/m2(参照例5a)、146.7g/m2(参照例5b)、及び146.2g/m2(参照例5c)のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0290】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0291】
安定性の測定
40℃及び75%RHで2.5ヶ月間貯蔵した参照例5a~5cのTTS、ならびに25℃及び60%RHで12ヶ月間貯蔵した参照例5a及び5cのTTSの安定性を調査した。試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表5.2及び表5.3、ならびに
図5a及び
図5bに示す。
【0292】
【0293】
【0294】
参照例5a~cの安定性データは、パルミチン酸アスコルビルの存在及びある特定のより高い量が、アクリル系接着剤ベースであり、かつ追加のポリマー(ポリビニルピロリドン)を含むマトリックス層を含むアセナピン製剤の初期安定性及び貯蔵安定性にプラスの影響を与えることを示す。
【0295】
参照例6A~D
コーティング組成物
参照例6a、6b、6c、及び6dのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表6.1に要約する。表6.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0296】
【0297】
コーティング組成物の調製
参照例6aの場合、ビーカーにアクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を装填した。撹拌しながらポリビニルピロリドンを添加した。アセナピン及びエタノールを連続して添加し、混合物を撹拌した。
【0298】
参照例6b~6dの場合、ビーカーにα-トコフェロールを装填した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加し、混合物を撹拌し、撹拌しながらポリビニルピロリドンを添加した。アセナピン及びエタノールを連続して添加し、透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0299】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、144.2g/m2(参照例6a)、133.0g/m2(参照例6b)、149.0g/m2(参照例6c)、及び147.2g/m2(参照例6d)のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0300】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0301】
安定性の測定
40℃及び75%RHで2.5ヶ月間貯蔵した参照例6a~6dのTTS、ならびに25℃及び60%RHで12ヶ月間貯蔵した参照例6a、6c、及び6dのTTSの安定性を調査した。試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表6.2及び表6.3、ならびに
図6a及び
図6bに示す。
【0302】
【0303】
【0304】
参照例6a~dの安定性データは、α-トコフェロールの存在及びある特定のより高い量が、アクリル系接着剤ベースであり、かつ追加のポリマー(ポリビニルピロリドン)を含むマトリックス層を含むアセナピン製剤の初期安定性及び貯蔵安定性にプラスの影響を与えることを示す。
【0305】
参照例7A~D
コーティング組成物
参照例7a、7b、7c、及び7dのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表7.1に要約する。表7.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0306】
【0307】
コーティング組成物の調製
参照例7aの場合、ビーカーに精製水を装填し、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加した。この混合物に、撹拌しながらポリビニルピロリドンを添加した。アセナピン及びエタノールを連続して添加し、混合物を撹拌した。
【0308】
参照例7b~7dの場合、ビーカーにメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を装填し、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加した。撹拌しながらポリビニルピロリドンを添加した。アセナピン及びエタノールを連続して添加し、透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0309】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、147.7g/m2(参照例7a)、148.3g/m2(参照例7b)、147.6g/m2(参照例7c)、及び146.7g/m2(参照例7d)のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0310】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0311】
安定性の測定
40℃及び75%RHで2.5ヶ月間貯蔵した参照例7a~7dのTTSの安定性を調査した。試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表7.2及び
図7aに示す。
【0312】
さらに、アセナピン塩基の量、ならびに参照例6aならびに7a~7dのコーティング組成物の様々な可能な分解物質も、コーティング組成物を調製した数日後にUV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により決定した。結果を表7.3及び
図7bに示す。
【0313】
【0314】
【0315】
参照例7a~dの安定性データは、メタ重亜硫酸ナトリウムの存在及びある特定のより高い量が、アクリル系接着剤ベースであり、かつ追加のポリマー(ポリビニルピロリドン)を含むマトリックス層を含むアセナピン製剤の初期安定性にプラスの影響を与えることを示す。
【0316】
実施例8A~E
コーティング組成物
実施例8a~8eのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表8.1に要約する。表8.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0317】
【0318】
コーティング組成物の調製
実施例8a~8eの場合、ビーカーにα-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルを装填し、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を添加し、結果として得られた混合物を撹拌した。撹拌しながらポリビニルピロリドンを添加した。アセナピン及びエタノールを連続して添加し、透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0319】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、144.7g/m2(実施例8a)、139.2g/m2(実施例8b)、147.5g/m2(実施例8c)、145.8g/m2(実施例8d)、及び144.8g/m2(実施例8e)のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0320】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0321】
安定性の測定
40℃及び75%RHで2.5ヶ月間、ならびに25℃及び60%RHで12ヶ月間貯蔵した実施例8a~8eのTTSの安定性を調査した。試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表8.2及び表8.3、ならびに
図8a及び
図8bに示す。
【0322】
【0323】
【0324】
実施例8a~eの安定性データは、アクリル系接着剤ベースであり、かつ追加のポリマー(ポリビニルピロリドン)を含むマトリックス層を含むアセナピン製剤の初期安定性及び貯蔵安定性に対するα-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルのプラスの影響が、ある特定の量のα-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビルに相乗的であることを示す。
【0325】
実施例9A~E
コーティング組成物
実施例9a~9eのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表9.1に要約する。表9.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0326】
【0327】
コーティング組成物の調製
ステンレス鋼容器(実施例9a~9c)またはビーカー(実施例9d及び9e)にエタノールの一部を装填し、撹拌しながらメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を滴加し、混合物を少なくとも10分間撹拌した。撹拌しながらα-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビル溶液を滴加し、結果として得られた混合物を少なくとも20分間撹拌した。撹拌しながら中鎖トリグリセリドを添加した後、ポリビニルピロリドンをビーカー中に秤量し、撹拌しながら混合物に添加した。実施例9eの場合、イソノナン酸を添加し、混合物を少なくとも10分間撹拌した後、ポリビニルピロリドンを添加した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を反応混合物中に秤量し、結果として得られた混合物を撹拌し、静置させ、その後、アセナピンをビーカー中に秤量し、エタノールの残りの一部とともに混合物に添加した。透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0328】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、136.6g/m2(実施例9d)及び135.1g/m2(実施例9e)のマトリックス層の面積重量をもたらした。実施例9aの場合、140.2~148.7g/m2の面積重量を有する異なるフィルムが生成された。実施例9bの場合、140.5~145.6g/m2の面積重量を有する異なるフィルムが生成された。実施例9cの場合、137.0~148.9g/m2の面積重量を有する異なるフィルムが生成された。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0329】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0330】
安定性の測定
実施例9a~9eの長期貯蔵安定性試験を、異なる試験条件下、すなわち、25℃及び60%相対湿度(RH)、30℃及び75%RH、ならびに40℃及び75%RHでの貯蔵下で行った。様々な時点で、試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な可能な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表9.2~9.16に示す。参照例2d(25℃及び60%RH、ならびに40℃及び75%RHでの貯蔵の場合)と比較した、全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計のプロットを
図9a~9fに示す。
【0331】
【0332】
【0333】
【0334】
【0335】
【0336】
【0337】
【0338】
【0339】
【0340】
【0341】
【0342】
【0343】
【0344】
【0345】
【0346】
安定性データは、本発明のある特定の実施形態では、初期安定性ならびに貯蔵安定性が、アセナピン塩基の量(特に貯蔵後に残っているアセナピン塩基の量に関して)及び全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計の両方の観点で、以前に開発された参照製剤(例えば、参照例2d)と比較して実質的に改善されたことを示す。
【0347】
実施例10A及び10B
コーティング組成物
実施例10a及び10bのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表10.1に要約する。表10.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0348】
【0349】
コーティング組成物の調製
実施例10aの場合、ビーカーにエタノールの一部を装填し、撹拌しながらメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を滴加し、混合物を少なくとも10分間撹拌した後、撹拌しながらα-トコフェロールを滴加した。実施例10bの場合、ビーカーにα-トコフェロール及びエタノールの一部を装填した。エタノール中α-トコフェロール(実施例10b)及びメタ重亜硫酸ナトリウム(実施例10a)を含むこの混合物に、撹拌しながらパルミチン酸アスコルビル溶液を滴加し、結果として得られた混合物を少なくとも20分間撹拌した。撹拌しながら中鎖トリグリセリドを添加した後、ポリビニルピロリドンをビーカー中に秤量し、撹拌しながら混合物に添加した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を反応混合物中に秤量し、結果として得られた混合物を撹拌し、静置させ、その後、アセナピンをビーカー中に秤量し、エタノールの残りの一部とともに混合物に添加した。透明な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0350】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、135.9g/m2(実施例10a)及び137.2g/m2(実施例11b)のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0351】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0352】
安定性の測定
実施例10a及び10bの長期貯蔵安定性試験を、異なる試験条件下、すなわち、25℃及び60%相対湿度(RH)、30℃及び75%RH、ならびに40℃及び75%RHでの貯蔵下で行った。様々な時点で、試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な可能な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表10.2~10.7に示す。実施例9aと比較した、かつ参照例2d(25℃及び60%RHならびに40℃及び75%RHでの貯蔵の場合)と比較した、全ての関連(すなわち、分解産物の可能性がある)物質の合計のプロットを
図10a~10cに示す。
【0353】
【0354】
【0355】
【0356】
【0357】
【0358】
【0359】
安定性データは、α-トコフェロールとパルミチン酸アスコルビルとの組み合わせによって安定性の改善のみならず貯蔵安定性の改善も達成され得、ある特定のメタ重亜硫酸ナトリウムの添加が全体的な貯蔵安定性にプラスの影響を与えることを示す。
【0360】
実施例11A、ならびに参照例11B、11C、及び11D
コーティング組成物
実施例11a、ならびに参照例11b、11c、及び11dのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表11.1に要約する。表11.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0361】
【0362】
コーティング組成物の調製
実施例11aのコーティング組成物を、実施例9d及び10aについて記載されるように調製した。
【0363】
参照例11bの場合、ビーカーにマレイン酸アセナピンを装填し、水酸化ナトリウム溶液を添加し、混合物を撹拌した。混合物が固化した時点で、エタノールを添加し、混合物をさらに撹拌した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を反応混合物中に秤量し、その後、撹拌し、静置させ、再び撹拌した。結果として得られた混合物が不均質であったため、組成物のコーティングは不可能であった。
【0364】
参照例11cの場合、ビーカーにマレイン酸アセナピンを装填し、エタノールを添加した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を反応混合物中に秤量し、その後、撹拌し、静置させ、溶解していない粒子を含む透明な溶液が得られるまで再び撹拌した。
【0365】
参照例11dの場合、ビーカーにマレイン酸アセナピン及び炭酸水素ナトリウムを装填した。エタノールを添加し、アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-2516を反応混合物中に秤量し、その後、撹拌した。ポリビニルピロリドンをビーカー中に秤量し、撹拌しながら混合物に添加した。水酸化ナトリウム溶液及び中鎖トリグリセリドをこの順序で連続して滴加した。白色の均質な溶液を得た。
【0366】
実施例11aならびに参照例11c及び11dのコーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。コーティング厚は、それぞれ、145.3g/m2(実施例11a)、153.4g/m2(参照例11c)、及び144.3g/m2(参照例11d)のマトリックス層の面積重量をもたらした。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。上で概説されるように、参照例11bの場合、コーティングは不可能であった。参照例11cのコーティングされたマトリックス層は、恐らく溶解していない炭酸水素ナトリウム粒子のため、目に見える程に不均質であり、接着力が不十分であるように見えた。実施例11aのコーティングされたマトリックス層が優れた接着力を示した一方で、参照例11dのコーティングされたマトリックス層は中程度の接着力しか呈しなかった。
【0367】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
図11e~11gは、それぞれ、実施例11a、参照例11c、及び参照例11dに従って調製したTTSの写真を示す。これらの図から、実施例11a及び参照例11dのTTS表面が滑らかである一方で、参照例11bのTTS表面は粗く、不均質なマトリックス層を示唆していることが分かる。
【0368】
安定性の測定
実施例11aならびに参照例11c及び11dのTTSの初期安定性ならびに40℃及び75%RHでの1ヶ月の貯蔵後の安定性を調査した。TTS調製直後及び1ヶ月の貯蔵期間後に試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表11.2及び表11.3、ならびに
図11a及び
図11bに示す。
【0369】
【0370】
【0371】
これらのデータは、本発明の製剤がα-トコフェロールとパルミチン酸アスコルビルとの組み合わせを使用することによってアセナピン遊離塩基を安定化することができ、かかる方法で得られた安定性が、水酸化ナトリウムでの脱プロトン化によるより安定したマレイン酸アセナピン塩からのアセナピン遊離塩基のインサイチュ生成に依存する製剤よりもさらに高いことを実証する(参照例11d)。
【0372】
活性剤の遊離塩基形態のインサイチュ生成は、塩形態の透過性の低下のために不利であると考えられ、マレイン酸アセナピンベースの製剤のインビトロ皮膚透過挙動がより低い理由であり、恐らく脱プロトン化反応のタイミングに依存している(以下の皮膚透過速度の測定を参照のこと)。
【0373】
加えて、参照例11b及び11cが実証するように、重炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウム等の脱プロトン化剤の使用も、コーティング組成物を困難にする(
図11cを参照のこと)か、または製剤化を不可能にし、これにより、TTSを得ることもできない(参照例11b)。
【0374】
皮膚透過速度の測定
実施例11aならびに参照例11c及び11dに従って調製したTTSの透過量及び対応する皮膚透過速度を、7.0mLのフランツ拡散セルを用いて行ったOECDガイドライン(2004年4月13日に採用)に従うインビトロ実験によって決定した。美容外科手術からの分層ヒト皮膚(腹部、出生1964年)を使用した。採皮刀を使用して、全てのTTSのために無傷の表皮を有する皮膚を800μmの厚さに調製した。1.157cm
2の面積を有するダイカットをTTSから打ち抜いた。32±1℃の温度でフランツセルの受容培地(抗菌剤として0.1%生理食塩水アジドを有するリン酸緩衝液pH5.5)中のアセナピン透過量を測定し、対応する皮膚透過速度を計算した。結果を表11.4及び
図11cに示す。
【0375】
【0376】
アセナピンの利用率
72時間時点でのアセナピンの利用率を、72時間時点での累積透過量及び初期アセナピン含有量に基づいて計算した。結果を表11.5及び
図11dに示す。
【0377】
【0378】
インビトロ実験は、良好な皮膚透過速度、ならびに以前に開発された参照製剤(参照例1b及び1c)を、驚くべきことに、本発明による製剤を表し、かつ改善された安定性を提供する実施例11aについて維持することができたことを示す(上記ならびに
図11a及び11bを参照のこと)。参照例11dが、わずかに低いが、それでも許容範囲内の皮膚浸透速度を提供することができた一方で、参照例11dの安定性は許容範囲外であった(上記を参照のこと)。その一方で、参照例11cは、許容範囲内の皮膚浸透速度を提供せず(
図11cを参照のこと)、アセナピン利用率も非常に低い(上記の表11.5及び
図11d)。
【0379】
本発明の製剤は、優れた皮膚浸透速度を維持しながら、アセナピン分解及びアセナピン含有量の両方の観点で改善された安定性を提供することができる。
【0380】
実施例12A~C
コーティング組成物
実施例12a~12cのアセナピン含有コーティング組成物の製剤を以下の表12.1に要約する。表12.1にも示されるように、製剤は重量パーセントに基づく。
【0381】
【0382】
コーティング組成物の調製
ステンレス鋼容器にエタノールの一部を装填し、撹拌しながらメタ重亜硫酸ナトリウム溶液を滴加し、混合物を少なくとも10分間撹拌した。撹拌しながらα-トコフェロール及びパルミチン酸アスコルビル溶液を滴加し、結果として得られた混合物を少なくとも20分間撹拌した。撹拌しながら中鎖トリグリセリドを添加した後、ポリビニルピロリドンをビーカー中に秤量し、撹拌しながら混合物に添加した。アクリル系感圧接着剤Duro-Tak(商標)387-4287を反応混合物中に秤量し、結果として得られた混合物を撹拌し、静置させ、その後、アルミニウムアセチルアセトナート及びアセナピンを各々ビーカー中に秤量し、エタノールの残りの一部とともに混合物に添加した。均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。
【0383】
コーティング組成物のコーティング
コーティングプロセスについては、参照例1a及び参照例1bを参照されたい。139.9~149.7g/m2(実施例12a)、142.0~147.5g/m2(実施例12b)、及び138.2~143.3g/m2の面積重量を有する異なるフィルムが生成された。乾燥させたフィルムにポリエチレンテレフタレートバッキング層(厚さ23μm)を積層して、アセナピン含有自己接着性層構造を得た。
【0384】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0385】
安定性の測定
実施例12a~12cの長期貯蔵安定性試験を、異なる試験条件下、すなわち、25℃及び60%相対湿度(RH)、30℃及び75%RH、ならびに40℃及び75%RHでの貯蔵下で行った。様々な時点で、試料をTTSから採取し、適切な抽出溶媒及びアセナピン塩基の量で抽出し、様々な可能な分解物質も、試験したTTSの(実際の)面積重量から計算されたアセナピン含有量に基づいて、UV光度検出器を用いた特定の定量的HPLC法により測定した。結果を表12.2~12.10及び
図12a~12fに示し、
図12a~12cは、参照例2dと比較した、検出された可能な分解物質の合計を示し(25℃及び60%RHならびに40℃及び75%RHでの貯蔵)、
図12d~12fは、実施例9aと比較した、かつ参照例2d(データが利用可能である場合)と比較した、アセナピン塩基の量を示す。
【0386】
【0387】
【0388】
【0389】
【0390】
【0391】
【0392】
【0393】
【0394】
【0395】
実施例12a~cの安定性データは、ある特定のアクリルポリマーの使用により、特に貯蔵後に残っているアセナピン塩基の量の観点でアセナピン製剤の優れた初期安定性ならびに貯蔵安定性がもたらされることを示す。
【0396】
インビボ臨床研究
インビボ臨床研究
舌下投与と比較した参照例2c及び2dのTTSの経皮適用後のアセナピンの相対的バイオアベイラビリティを調査するためのインビボ臨床試験を行った。この研究を、ヘルシンキ宣言を起源とする倫理原則に従って行った。
【0397】
試験設計
この試験を、16名の健康な男性及び女性対象における、3回治療、3つの治療期間、固定治療シーケンスでの単一施設、第I相、非盲検設計で行い、参照例2c及び2dで調製したTTSの単回経皮投与後の血漿中アセナピンの相対的バイオアベイラビリティを現在販売されている舌下錠(Sycrest(登録商標)、5mg)と比較した。
【0398】
各対象について、試験は以下からなった。
・インフォームドコンセントが得られ、対象の適格性が評価された外来スクリーニング期間。スクリーニングの結果に応じて、対象をこの試験に含めた。
・3つの連続した治療期間(各々数日間)からなる治療及び観察期間。
・最後の治療終了後の外来フォローアップ訪問。
【0399】
3つの連続した治療期間に関して、対象に、期間1の初日に5mgの舌下アセナピン錠剤をb.i.d.(1日2回)投与し(参照)、期間2中に参照例2cで調製したTTSを単回投与し(各々10cm2の3つのTTS)、期間3中に参照例2dで調製したTTSを単回投与した(15cm2の1つのTTS)。
【0400】
試験集団の選択
全ての選択基準を満たし、いずれの除外基準も満たさない対象のみを治療段階に含めた。基準をスクリーニング時に評価し、再確認は期間1の-1日目に行った。
【0401】
選択基準
対象は、治療期間への参加資格を得るために、以下の基準を全て満たす必要があった。
1.研究中に指示を理解し、それに従うことができる対象。
2.インフォームドコンセントに署名した者。
3.白人。
4.年齢18歳以上55歳以下。
5.非喫煙者。
6.一般に、病歴及び手術歴、身体検査、12誘導心電図(ECG)、バイタルサイン、ならびに臨床検査によって決定した良好な身体的健康。
7.18.0~29.4kg/m2以内の肥満度指数(BMI)の許容値に従う正常範囲内の体重。
8.仰臥位で5分間休息した後に測定した正常血圧(収縮期血圧(SBP)90mmHg以上139mmHg以下、拡張期血圧55mmHg以上89mmHg以下)。
9.仰臥位で5分間休息した後に測定した50b/分以上99b/分以下の脈拍数。
10.臨床的に有意な異常のないECG記録。
11.最初の投与前の少なくとも7日間、発熱性または感染性の病気に罹患していなかった者。
【0402】
除外基準
対象が健康で同等の状態にあることを確認するために、以下の
除外基準を適用した。
ライフスタイルの制限
1.キサンチン消費量の過剰を示す(1日あたり5杯以上のコーヒーまたは同等のもの)。
2.中程度以上のアルコール消費量(1日あたり定期的に35g超または1週間あたり定期的に245g超のエタノール)。
3.アルコールまたは薬物乱用の履歴。
4.菜食主義者。
5.薬物スクリーニング陽性。
6.アルコール呼気検査陽性。
7.最初の投与前48時間以内のキサンチン含有食品または飲料、ならびにグレープフルーツジュースまたはダイダイの消費。
8.最初の投与前72時間以内の炭火焼き食品、ブロッコリー、または芽キャベツの消費。
以前の投薬
9.最初の投与前4週間以内(またはそれぞれの排出半減期の少なくとも10倍のいずれか長い方)のホルモン避妊薬を除く全ての薬剤(自己治療薬または処方薬)の使用。
病歴及び手術歴
10.急性または慢性の活動性身体的疾患を示す。
11.薬物過敏症、喘息、蕁麻疹、または他の重度のアレルギー素質、ならびに現在の枯草熱の病歴。
12.調査された剤形の任意の成分の過敏症の病歴。
13.慢性胃炎または消化性潰瘍の病歴。
14.慢性または再発性代謝性疾患、腎疾患、肝疾患、肺疾患、胃腸疾患、神経系疾患(特にてんかん発作の病歴)、内分泌疾患(特に真性糖尿病)、免疫疾患、精神疾患、または心臓血管疾患、ミオパチー、皮膚疾患、及び出血傾向の病歴。
15.ジルベール症候群。
16.最初の投与前7日以内の胃腸愁訴。
17.TTS適用部位での傷跡、ほくろ、入れ墨、皮膚炎症、または過度の発毛。
18.過去12ヶ月間のC-SSRS(コロンビア自殺重大度評価スケール)でのタイプ2~5の自殺念慮(すなわち、アクティブな自殺念慮、方法によるアクティブな自殺念慮、意図的であるが特定の計画を伴わないアクティブな自殺念慮、または計画及び意図を伴うアクティブな自殺念慮)。
臨床検査
19.特にアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)に関して、臨床的に関連のある基準範囲外の臨床検査値(例えば、未知の疾患を示唆し、治験責任医師によって評価されるさらなる臨床評価を必要とするもの)。
20.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体/p24抗原の検査陽性。
21.B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)検査陽性。
22.抗C型肝炎ウイルス抗体(抗HCV)検査陽性。
その他
23.この試験へのインフォームドコンセントに署名する前の30日以内の献血。
24.この試験へのインフォームドコンセントに署名する30日前の、または以前の臨床試験のフォローアップ期間によってブロックされた、臨床試験の治療段階への参加。
25.極めて有効な避妊法を使用していない出産可能な女性。極めて有効な避妊法は、終始正しく使用された場合に失敗率が低くなる、すなわち、1年に1%未満になる方法と定義されている(例えば、子宮内避妊器具とコンドームとの組み合わせ)。女性対象は、子宮摘出術もしくは両側卵管結紮術によって外科的に不妊にされているか、または閉経後少なくとも2年間経過していない限り、出産可能であるとみなされる。
26.妊娠中または授乳中の女性。
【0403】
研究中の治療
研究中に投与した治療薬を以下の表13.1に要約し、それらの特徴を以下に詳述する。
【0404】
【0405】
期間1で投与した参照製剤は有効成分マレイン酸アセナピンを含み、N.V.Organon,Oss,NetherlandsからSycrest(登録商標)5mg Sublingualtablettenの商品名で販売されている。医薬品中央番号(PZN)は07728207である。
【0406】
舌下錠の投与(参照)
舌下錠を、製品特性の概要に記載の投与指示に従って、12時間間隔の2回の投与で、初日の朝及び夕方に投与した。対象に、舌下錠を噛んだり飲み込んだりせずに、舌下錠を溶解させるように、錠剤を少なくとも10分間舌下に置くように指示した。
【0407】
TTSの適用
TTSを上胸部または上背の無傷の皮膚に適用した。必要に応じて、適用前に適用面積上の毛を(剃らずに)はさみでトリミングした。対象に、TTSを適用する前に、皮膚に洗剤、油、脂肪が含まれていないことを確認するように指示した。TTSを所望の位置に置き、指または手のひらで少なくとも30秒間押して、TTSを皮膚表面上に固定した。必要に応じて、かつさらなる剥離を避けるために、TTSを、活性剤を含まない接着剤オーバーレイでさらに固定した。両側が接着剤オーバーレイで同等に覆われるように、任意の接着剤オーバーレイをTTSの上方に置いた。その後、TTSを固定するために、TTSを指または手のひらで少なくとも30秒間再度押した。3.5日後にTTSを除去した(84時間、期間2及び期間3)。除去した後、使用済みのTTS(該当する場合、接着剤オーバーレイを含む)を処理し、さらに分析するまで冷蔵庫内の窒素下で貯蔵した。
【0408】
各対象の投与のタイミング
期間1の初日、朝食を供給せず、対象は朝の投与前に一晩絶食した。標準化された食を朝の投与後4時間時点で与え、夕食を朝の投与の約10時間後に与えた。朝及び夕方の投与の1時間前から1時間後まで水分摂取を禁じた。食物がTTSと相互作用しないため、対象に、期間2及び3中の通常の時間に、院内にいる間、標準化された食事及び飲料を供給した。院内にいる間、対象に、研究ユニットによって提供された食品または飲料のみを摂取することを許可した。
【0409】
制限及び事前注意
試験中、対象に、体温を上昇させる可能性のある全ての活動、すなわち、身体運動、サウナ、高熱を伴う環境を控えるように指示した。TTSを着用している間、対象に、発汗を増加させるであろう活動等のTTSの接着力に影響を及ぼす可能性のある活動を行うことを禁じた。食品及び飲料の摂取量に対するさらなる制限を、例えば、除外基準に従って課した。
【0410】
試料の収集及び血漿濃度の決定
血漿中のアセナピン及びその代謝物の濃度を決定するための血液試料を、投与後の特定の時点で収集した。
【0411】
有効な内部標準化液体クロマトグラフィータンデム質量分析法を使用して、アセナピン、N-デスメチル-アセナピン、及びアセナピン-グルクロニドの血漿濃度を決定し、この決定は、GLP(優良試験所基準)によって認定された研究所によって行われた。アセナピン-グルクロニドの血漿濃度は8名のみの対象に対して決定され、結果の妥当性または試験結果の解釈に影響はなかった。定量下限値(LLOQ)は、血漿中のアセナピン及びN-デスメチル-アセナピンの場合に0.1ng/mLであり、アセナピン-グルクロニドの場合に0.25ng/mLであった。
【0412】
有害事象(AE)
有害事象は、非誘導質問を使用して治験責任医師によって確認され、対象によって医療スタッフに自発的に報告されたもの、または剤形の投与後の全ての研究日の測定中に観察されたものと付記され、治験責任医師によって評定された。
【0413】
さらに、自殺リスクを監視した。試験中の全ての陽性報告を有害事象として記録した。タイプ1~3の自殺念慮を非重篤AEとして記録した。タイプ4及び5の自殺念慮、ならびに試験中の全ての自殺行動を重篤有害事象(SAE)として記録し、報告した。
【0414】
AEを、それが発症した後の治療及び時点とみなし、すなわち、最初の投与前に発症したAEを、ベースラインの愁訴/治療前のAEとしてカウントし、以下の分析には含まない。
【0415】
結果及び分析
16名の対象全てが試験の期間1(参照)を完了した。期間1(参照)の後及び期間2(参照例2c)を開始する前に、1名の対象が脱落した。別の対象は期間3(参照例2d)中に脱落したが、有害事象分析について評価することができた。安全性研究室パラメータ、バイタルサイン、及びECGパラメータは、医学的に関連する変化を示さなかった。研究の結果を表13.2~13.9及び
図13a~13eに示す。
【0416】
アセナピンの算術平均血漿濃度
期間1の16名の対象全てに基づき、かつそれぞれ期間2及び3を完了した15名及び14名の対象に基づくアセナピン血漿濃度の算術平均値を、標準偏差値とともに、表13.2ならびに
図13a及び
図13bに示す。AUC値を血漿濃度から計算した。t
lagを、測定可能な(すなわち、非ゼロ)アセナピン血漿濃度が得られた第1の時点の平均算術値として概算し、その結果も表13.2に示す。
【0417】
【0418】
アセナピン及び代謝物の薬物動態分析
アセナピン及び代謝物の血漿濃度時間データに基づいて、血漿薬物動態パラメータを、非コンパートメント手順を使用して計算し、結果を表13.3~13.5に示す。ここで、C
avは、関連性のある投薬間隔(期間1/参照の場合に12時間、期間2及び3/参照例2c及び2dの場合に84時間)の間に観察された平均濃度を表し、t
lagは、投与後の第1の定量化可能な濃度の時間を表す。参照製剤のC
av及びt
lagについて、第1の投薬間隔(0~12時間)のみを考慮した。さらに、代謝物であるアセナピングルクロニド及びN-デスメチル-アセナピンの血漿濃度プロファイルを幾何平均値として示し、幾何平均に幾何標準偏差を乗じて割ったものをエラーバーとして
図13c、13d、及び13eに示した。
【0419】
生物学的評価を、Windows用のSAS SystemのSASソフトウェアバージョン9.3を使用して行った。薬物動態計算を、Phoenix WinNonlinバージョン6.4を使用して行った。薬物動態計算は、少なくとも2つの治療期間を完了した全ての対象、すなわち、参照及びアセナピン及びN-デスメチル-アセナピンの参照例2aまたは2bの少なくとも一方の評価可能なデータを有する者に基づいた。したがって、対象数は、
期間1及び2(参照及び参照例2c)の場合にn=15、期間3(参照例2d)の場合にn=14であった。アセナピン-グルクロニドの場合、対象数は全ての期間でn=8であった。LLOQ未満の値を記述統計量の計算から除外した。個々のデータポイントの少なくとも2分の1がLLOQ以上と測定された場合、濃度の記述統計量を計算した。
【0420】
薬物動態特性の計算は、実際の血液試料採取時間[時間数](対応する投与時間と比較したものであり、計画された血液試料採取時間からの許容偏差は3.5%以内であった)に基づき、小数第2位で四捨五入し、負の投与前時間をゼロに設定した。
【0421】
時間ゼロと第1の定量化可能な濃度との間の遅延時間の時点で、LLOQ未満の濃度をゼロとして計算した。2つの定量可能な濃度間のLLOQ未満の濃度をLLOQの半分で計算した。LLOQ未満の末尾濃度(trailing concentration)を計算に使用しなかった。
【0422】
薬物動態パラメータの記述統計量を、期間1、2、及び3の各々について別々に計算した。tmaxの場合、度数分布表をtmaxの名目上の時間に基づく治療により作成した。
【0423】
参照ならびに参照例2c及び2dの各々について、アセナピン及び代謝物の薬物動態パラメータを、予備的分散分析(ANOVA)モデルを用いて比較した。治療間の差異及び比率等の点推定量の計算に使用した算術平均及び幾何平均を、それぞれ、最小二乗平均(LSMEANS)または指数変換LSMEANSとしてANOVAから導出した。90%の信頼区間を含めることは、タイプIのエラーに対してα=0.05の値を意味する。α-調整を行わなかった。
【0424】
基本的な薬物動態関係に基づいて、乗法モデルを全ての濃度関連パラメータに適用した。これは、これらの特性が正規分布ではなく対数正規分布であることを意味する。したがって、ANOVAを対数変換後に行った。例示的な結果を表13.6及び13.7に示す。
【0425】
アセナピンの血漿濃度プロファイルは、治療濃度がTTSの全装着期間にわたって大きな変動なしに維持され得ることを示す。舌下投与と比較して、経皮適用後の最大濃度はより低く、より遅く到達した。主要代謝物であるN-デスメチル-アセナピン及びアセナピン-グルクロニドの形成は、舌下投与と比較して著しく減少している。
【0426】
【0427】
【0428】
【0429】
【0430】
【0431】
有害事象(AE)
表13.8及び13.9は、様々なカテゴリーで報告された有害事象の数を反映している。
【0432】
舌下錠(参照)の治療期間は、3.5日間のTTS適用(参照例2c及び2d)と比較してわずか12時間(すなわち、2回の投与)であったが、倦怠感及びめまい等のアセナピン治療の一般的な全身性副作用は、TTSの適用後により低い頻度で観察され、倦怠感の場合、軽度の強度のみであった。舌下投与治療(参照)と比較して、経皮投与後の倦怠感の頻度及び強度は著しく低く、めまいはより低い頻度で発生した。
【0433】
参照治療の投与後に観察された感覚鈍麻及び口渇等の口腔不快症状は、TTS適用下(参照例2c及び2d)では観察されなかった。
【0434】
適用部位での局所耐性は良好であり、軽度の反応のみが時折観察され(5つのAE)、介入なしに治まった。
【0435】
強度が中程度であった期間3中に報告された月経困難症は、投与した参照例2dのTTSとは無関係であった。
【0436】
SAEは報告されておらず、自殺念慮のある対象はいなかった。
【0437】
全体的に、アセナピンの経皮投与は安全であり、忍容性も良好であった。いずれかのTTS(期間2及び3)の投与後に観察されたAEは、ほとんどが軽度で一時的なものであり、介入なしに解消され、AEの頻度は、参照期間1と比較して低かった。
【0438】
【0439】
【0440】
本発明は、具体的には、以下のさらなる項目に関する。
1.治療有効量のアセナピンを含有する自己接着性層構造を含むアセナピンの経皮投与のための経皮治療システムであって、前記自己接着性層構造が、
A)バッキング層と、
B)マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層と、を含み、前記マトリックス層組成物が、
1.アセナピンと、
2.アクリルポリマーから選択されるポリマーと、
3.追加のポリマーと、
4.安定剤として、前記マトリックス層組成物の0.01~2%の量のα-トコフェロール及び前記マトリックス層組成物の少なくとも0.01%の量のパルミチン酸アスコルビルと、を含む、前記経皮治療システム。
2.前記マトリックス層組成物が、安定剤として、前記マトリックス層組成物の0~0.5%、好ましくは0.01~0.2%、より好ましくは0.05~0.15%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムをさらに含む、項目1に記載の経皮治療システム。
3.前記マトリックス層組成物が、安定剤として、前記マトリックス層組成物の約0.1%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムをさらに含む、項目2に記載の経皮治療システム。
4.前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の少なくとも0.025%の量のα-トコフェロールを含む、及び/または
前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の最大1.5%または0.75%、好ましくは最大0.5%、より好ましくは最大0.1%の量のα-トコフェロールを含む、項目1~3のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
5.前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の約0.05%の量のα-トコフェロールを含む、項目4に記載の経皮治療システム。
6.前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の少なくとも0.02%、好ましくは少なくとも0.08%、より好ましくは少なくとも0.15%の量のパルミチン酸アスコルビルを含む、及び/または
前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の最大2.0または1.0%、好ましくは最大0.6%の量のパルミチン酸アスコルビルを含む、項目1~5のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
7.前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の0.2%~0.4%の量のパルミチン酸アスコルビルを含む、項目6に記載の経皮治療システム。
8.前記追加のポリマーが、前記マトリックス層の改善された吸水及び/または吸湿を提供するポリマー、より好ましくはポリビニルピロリドン、最も好ましくは可溶性ポリビニルピロリドンから選択される、項目1~7のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
9.前記追加のポリマーが、
9~15、好ましくは10.2~13.8、
15~20、好ましくは15.3~18.4、
20~27、好ましくは22.5~27.0、
27~35、好ましくは27.0~32.4、及び
75~110、好ましくは81.0~97.2
からなる範囲の群から選択される範囲内のK値を有するポリビニルピロリドンまたはそれらの任意の混合物であり、好ましくは、27.0~32.4または81.0~97.2の範囲内のK値を有するポリビニルピロリドンまたはそれらの任意の混合物であり、より好ましくは、27.0~32.4の範囲内のK値を有するポリビニルピロリドンである、項目8に記載の経皮治療システム。
10.前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の0~20%、好ましくは前記マトリックス層組成物の5~15%、より好ましくは前記マトリックス層組成物の約10%の量の、ポリビニルピロリドン、好ましくは可溶性ポリビニルピロリドンから選択される追加のポリマーを含む、項目8または9に記載の経皮治療システム。
11.前記経皮治療システムが、少なくとも0.70mg/cm2、好ましくは少なくとも0.80mg/cm2、より好ましくは少なくとも0.82mg/cm2、最も好ましくは少なくとも0.83mg/cm2のアセナピンを含有する、項目1~10のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
12.前記経皮治療システムが、0.70mg/cm2~4.0mg/cm2、好ましくは0.80mg/cm2~3.0mg/cm2、より好ましくは0.82mg/cm2~2.0mg/cm2、最も好ましくは0.83mg/cm2~1.7mg/cm2のアセナピンを含有する、項目1~11のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
13.前記マトリックス層の面積重量が、90~230g/m2、好ましくは110~210g/m2、最も好ましくは120~170g/m2の範囲である、項目1~12のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
14.前記経皮治療システムが、経皮送達により、少なくとも48時間、好ましくは72時間、より好ましくは84時間の投与にわたって0.5~20mg/日の平均放出速度を提供する、項目1~13のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
15.前記経皮治療システムが、経皮送達により、少なくとも48時間の投与にわたって0.5~20mg/日、好ましくは1.0~15mg/日、より好ましくは2.0~10mg/日の平均放出速度を提供する、または
前記経皮治療システムが、経皮送達により、少なくとも72時間の投与にわたって0.5~20mg/日、好ましくは1.0~15mg/日、より好ましくは2.0~10mg/日の平均放出速度を提供する、または
前記経皮治療システムが、経皮送達により、84時間の投与にわたって0.5~20mg/日、好ましくは1.0~15mg/日、より好ましくは2.0~10mg/日の平均放出速度を提供する、項目14に記載の経皮治療システム。
16.前記経皮治療システムが、経皮送達により、20~300(ng/mL)hまたは300超~450(ng/mL)hのAUC0~48を提供し、好ましくは、経皮送達により、30~200(ng/mL)hのAUC0~48を提供する、項目1~15のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
17.前記経皮治療システムが、経皮送達により、30~400(ng/mL)hまたは400超~600(ng/mL)hのAUC0~72を提供し、好ましくは、経皮送達により、50~300(ng/mL)hのAUC0~72を提供する、項目1~16のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
18.前記経皮治療システムが、経皮送達により、35~450(ng/mL)hまたは450超~700(ng/mL)hのAUC0~84を提供し、好ましくは、経皮送達により、60~350(ng/mL)hのAUC0~84を提供する、項目1~17のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
19.前記経皮治療システムが、経皮送達により、2.0未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.3未満のCmaxのC48に対する比率を提供する、項目1~18のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
20.前記経皮治療システムが、経皮送達により、3.0未満、好ましくは2.5未満、より好ましくは2.0未満のCmaxのC72に対する比率を提供する、項目1~19のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
21.前記経皮治療システムが、経皮送達により、3.5未満、好ましくは3.0未満、より好ましくは2.5未満、最も好ましくは2.0未満のCmaxのC84に対する比率を提供する、項目1~20のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
22.前記アセナピン含有マトリックス層が、前記マトリックス層組成物の10%の量のパルミチン酸イソプロピルを含まず、好ましくは、前記マトリックス層組成物の5~15%の量のパルミチン酸イソプロピルを含まず、最も好ましくは、パルミチン酸イソプロピルを含まない、項目1~21のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
23.前記マトリックス層組成物が、前記マトリックス層組成物の50%超の量のポリシロキサン及びポリイソブチレンのうちのいずれも含まない、項目1~22のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
24.前記経皮治療システムが、5~100cm2の放出面積を有する、項目1~23のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
25.前記アセナピン含有マトリックス層が、前記マトリックス層組成物の5%の量のミリスチン酸イソプロピルを含まず、好ましくは、前記マトリックス層組成物の1~10%の量のミリスチン酸イソプロピルを含まず、最も好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルを含まない、項目1~24のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
26.前記アセナピン含有マトリックス層が、前記マトリックス層組成物の10~20%の量のエチルセルロースを含まず、好ましくは、エチルセルロースを含まない、項目1~25のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
27.前記アセナピン含有マトリックス層が塩化水素を含まない、項目1~26のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
28.前記アセナピン含有マトリックス層がトルエンを含まない、項目1~27のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
29.前記アセナピン含有マトリックス層が、塩酸が前記コーティング組成物中に含まれていないコーティングされたコーティング組成物を乾燥させることによって得ることができる、項目1~28のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
30.前記アセナピン含有マトリックス層が、トルエンを含まないコーティングされたコーティング組成物を乾燥させることによって得ることができる、項目1~29のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
31.前記マトリックス層組成物中の前記アセナピンが、遊離塩基の形態で含まれている、項目1~30のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
32.前記マトリックス層組成物が、前記アセナピンを遊離塩基の形態で組み込むことによって得ることができる、項目1~31のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
33.前記マトリックス層中の前記アセナピンの少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%、より好ましくは少なくとも98モル%、最も好ましくは少なくとも99モル%が、遊離塩基の形態で存在する、項目1~32のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
34.前記マトリックス層中の前記アセナピンが完全に溶解している、項目1~33のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
35.前記マトリックス層組成物が、好ましくはアセナピン遊離塩基から構成されるアセナピン粒子を含有する、項目1~34のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
36.前記マトリックス層組成物中のアセナピンの量が、前記マトリックス層組成物の2~20%、好ましくは3~15%、より好ましくは4~12%である、項目1~35のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
37.前記アセナピンが、定量的HPLCによって決定される、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%の純度を有する、項目1~36のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
38.前記マトリックス層組成物が感圧接着剤組成物である、項目1~37のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
39.前記ポリマーが、感圧接着剤ポリマーから選択される、項目1~38のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
40.前記ポリマーが、官能基を含むアクリルポリマーから選択される、項目1~39のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
41.前記官能基が、ヒドロキシル基、カルボン酸基、中和されたカルボン酸基、及びそれらの混合物から選択される、項目40に記載の経皮治療システム。
42.前記官能基がヒドロキシル基に限定されている、項目41に記載の経皮治療システム。
43.前記ポリマーが、カルボン酸基または中和されたカルボン酸基またはそれらの両方の基を含まないアクリルポリマーから選択される、項目1~42のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
44.前記ポリマーが、酸性基を含まないアクリルポリマーから選択される、項目1~43のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
45.前記ポリマーが、ヒドロキシル基を含み、カルボン酸基を含まないアクリルポリマーから選択される、項目1~44のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
46.前記ポリマーが、酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、
2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのコポリマー、または酢酸ビニル、
2-エチルヘキシル-アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートベースのコポリマーである、項目45に記載の経皮治療システム。
47.前記ポリマーが、架橋剤によって架橋されており、好ましくは、アルミニウムまたはチタン架橋剤によって架橋されている、項目39~46のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
48.前記ポリマーが、架橋剤によって架橋されていない、項目39~46のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
49.前記ポリマーが、ヒドロキシル基及びカルボン酸基を含まないアクリルポリマーから選択される、項目1~48のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
50.前記ポリマーが、官能基を含まないアクリルポリマーから選択される、項目49に記載の経皮治療システム。
51.前記ポリマーが、メチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びt-オクチルアクリルアミドベースのコポリマー、または2-エチルヘキシル-アクリレート及び酢酸ビニルベースのコポリマーである、項目50に記載の経皮治療システム。
52.前記ポリマーの量が、前記マトリックス層組成物の50~90%、好ましくは60~85%、より好ましくは65~80%の範囲である、項目1~51のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
53.前記マトリックス層組成物中の総ポリマー含有量が、前記マトリックス層組成物の60~95%、好ましくは70~90%、より好ましくは75~85%の範囲である、項目1~52のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
54.前記経皮治療システムが、5~100cm2、好ましくは5~80cm2、より好ましくは10~50cm2または50~80cm2、10~40cm2または10~30cm2または55~65cm2の放出面積を有する、項目1~53のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
55.前記経皮治療システム中に含まれるアセナピンの量が、5~100mg、好ましくは10~80mg、最も好ましくは15~60mgの範囲である、項目1~54のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
56.前記経皮治療システムが5~100cm2の放出面積を有し、前記経皮治療システム中に含まれるアセナピンの量が5~100mgの範囲である、項目1~55のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
57.前記マトリックス層組成物が、追加のポリマー、架橋剤、可溶化剤、充填剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、軟化剤、スキンケア用物質、透過促進剤、pH調節剤、及び防腐剤からなる群から選択されるさらなる賦形剤または添加剤を含む、項目1~56のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
58.前記粘着付与剤が、ポリエチレングリコール、トリグリセリド、ジプロピレングリコール、樹脂、樹脂エステル、テルペン及びその誘導体、エチレン酢酸ビニル接着剤、ジメチルポリシロキサン、及びポリブテン、ならびにそれらの混合物から選択される、項目57に記載の経皮治療システム。
59.前記マトリックス層組成物が、粘着付与剤として、中鎖トリグリセリドを含む、項目58に記載の経皮治療システム。
60.前記マトリックス層組成物が、粘着付与剤として、前記マトリックス層組成物の0.1~14%、好ましくは前記マトリックス層組成物の1~13%、より好ましくは前記マトリックス層組成物の3~12%、最も好ましくは前記マトリックス層組成物の5~12%の量の中鎖トリグリセリドを含む、項目59に記載の経皮治療システム。
61.前記マトリックス層組成物が、粘着付与剤として、前記マトリックス層組成物の約10%の量の中鎖トリグリセリドを含む、項目60に記載の経皮治療システム。
62.前記中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成が、
(i)ヘキサン酸、
(ii)オクタン酸、
(iii)デカン酸、
(iv)ドデカン酸、及び
(v)テトラデカン酸のうちの1つ以上からなる、項目59~61のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
63.前記中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成が、
(i)0~5%のヘキサン酸、
(ii)40.0~90.0%のオクタン酸、
(iii)10.0~55.0%のデカン酸、
(iv)0~5%のドデカン酸、及び
(v)0~2%のテトラデカン酸からなる、項目59~62のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
64.前記中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成が、
(i)0~2%のヘキサン酸、
(ii)50.0~80.0%のオクタン酸、
(iii)20.0~45.0%のデカン酸、
(iv)0~2%のドデカン酸、及び
(v)0~1%のテトラデカン酸からなる、項目59~63のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
65.前記中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成が、
(i)0~2%のヘキサン酸、
(ii)50.0~65.0%のオクタン酸、
(iii)30.0~45.0%のデカン酸、
(iv)0~2%のドデカン酸、及び
(v)0~1%のテトラデカン酸からなる、項目59~64のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
66.前記中鎖トリグリセリドの脂肪酸組成が、
(i)0~2%のヘキサン酸、
(ii)65.0~80.0%のオクタン酸、
(iii)20.0~35.0%のデカン酸、
(iv)0~2%のドデカン酸、及び
(v)0~1%のテトラデカン酸からなる、項目59~64のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
67.前記中鎖トリグリセリドの酸価が、0.5mg KOH/g以下、好ましくは0.2mg KOH/g以下、最も好ましくは0.1mg KOH/g以下である、項目59~66のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
68.
前記中鎖トリグリセリドの過酸化物価が、5.0meq O/kg以下、好ましくは2.0meq O/kg以下、最も好ましくは1.0meq O/kg以下である、項目59~67のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
69.前記中鎖トリグリセリドのヒドロキシル価が、10mg KOH/g以下、好ましくは8.0mg KOH/g以下、最も好ましくは5.0mg KOH/g以下である、項目59~68のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
70.前記安定剤が、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール及そのエステル誘導体、例えば、酢酸トコフェロール及びリノール酸トコフェロール、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される、項目57に記載の経皮治療システム。
71.前記透過促進剤が、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、乳酸ラウリル、ジメチルプロピレン尿素、及びプロピレングリコール脂肪酸モノエステルとプロピレングリコール脂肪酸ジエステルとの混合物から選択される、項目57に記載の経皮治療システム。
72.前記マトリックス層組成物が、オレイン酸、トリグリセリド、オレイン酸アルコール、及びそれらの混合物から選択される透過促進剤を含まない、項目1~71のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
73.前記マトリックス層組成物が透過促進剤を含まない、項目1~72のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
74.採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、1μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、好ましくは2μg/(cm2 h)~15μg/(cm2 h)、より好ましくは4μg/(cm2 h)~12μg/(cm2 h)の、48時間または72時間時点でのアセナピン累積皮膚透過速度を提供する、項目1~73のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
75.採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、
最初の8時間に0μg/(cm2 h)~10μg/(cm2 h)、
8時間から24時間まで2μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、
24時間から32時間まで3μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、
32時間から48時間まで3μg/(cm2 h)~20μg/(cm2 h)、
48時間から72時間まで2μg/(cm2 h)~15μg/(cm2 h)のアセナピン皮膚透過速度を提供する、項目1~74のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
76.採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、0.05mg/cm2~1.0mg/cm2、好ましくは0.1mg/cm2~0.7mg/cm2のアセナピン累積透過量を48時間の期間にわたって提供する、項目1~75のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
77.採皮されたヒト皮膚を用いてフランツ拡散セルで測定される、0.1mg/cm2~2.0mg/cm2、好ましくは0.2mg/cm2~1.0mg/cm2のアセナピン累積透過量を72時間の期間にわたって提供する、項目1~76のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
78.前記マトリックス層が、初期に、前記マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、さらにより好ましくは少なくとも98%の量のアセナピンを含有する、項目1~77のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
79.前記マトリックス層が、25℃及び60%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後に、前記マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも94%、さらにより好ましくは少なくとも95%の量のアセナピンを含有する、項目1~78のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
80.前記マトリックス層が、40℃及び75%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後に、前記マトリックス層中に含まれるアセナピンの理論量の少なくとも88%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、さらにより好ましくは少なくとも92%の量のアセナピンを含有する、項目1~79のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
81.前記マトリックス層が、初期に、0.7%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.3%未満、さらにより好ましくは0.2%未満の総アセナピン関連分解物質量を含有する、項目1~80のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
82.前記マトリックス層が、25℃及び60%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後に、1.0%未満、好ましくは0.7%未満、より好ましくは0.5%未満、さらにより好ましくは0.4%未満の総アセナピン関連分解物質量を含有する、項目1~81のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
83.前記マトリックス層が、40℃及び75%相対湿度で少なくとも2ヶ月間、好ましくは少なくとも3ヶ月間貯蔵された後に、3.0%未満、好ましくは2.0%未満、より好ましくは1.5%未満、さらにより好ましくは0.7%未満の総アセナピン関連分解物質量を含有する、項目1~79のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
84.剥離ライナーをさらに含む、項目1~83のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
85.接着剤オーバーレイをさらに含むか、または接着剤オーバーレイを含まず、好ましくは接着剤オーバーレイを含まない、項目1~84のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
86.前記バッキング層が、実質的にアセナピン不透過性である、項目1~85のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
87.前記自己接着性層構造が、追加の皮膚接触層を含まない、項目1~86のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
88.前記自己接着性層構造が、追加の皮膚接触層を含む、項目1~87のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
89.前記自己接着性層構造が、前記マトリックス層と前記追加の皮膚接触層との間に位置する膜を含み、前記膜が、好ましくは、速度制御膜である、項目88に記載の経皮治療システム。
90.前記自己接着性層構造が、前記バッキング層と前記マトリックス層との間に位置する追加のリザーバ層と、前記追加のリザーバ層と前記マトリックス層との間に位置するさらなる速度制御膜と、を含む、項目1~89のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
91.前記経皮治療システムが、マトリックスタイプのTTSである、項目1~90のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
92.治療方法で使用するための、好ましくは、精神病を治療する方法で使用するための、より好ましくは、統合失調症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、認知症関連精神病、激越、及び躁病障害から選択される1つ以上の状態を治療する方法で使用するための、項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
93.統合失調症及び/または双極性障害を治療する方法で使用するための、項目92に記載の経皮治療システム。
94.双極性障害、特に双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法で使用するための、項目92に記載の経皮治療システム。
95.少なくとも24時間もしくは1日間、少なくとも48時間もしくは2日間、または少なくとも72時間もしくは3日間の投薬間隔での治療方法で使用するための、項目92~94のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
96.最大168時間もしくは7日間、最大120時間もしくは5日間、または最大96時間もしくは4日間の投薬間隔での治療方法で使用するための、項目92~95のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
97.24時間または1日間の投薬間隔での治療方法で使用するための、項目95に記載の経皮治療システム。
98.48時間または2日間の投薬間隔での治療方法で使用するための、項目95に記載の経皮治療システム。
99.84時間または3.5日間の投薬間隔での治療方法で使用するための、項目95に記載の経皮治療システム。
100.患者を治療する方法で使用するためのものであり、
前記経皮治療システムが、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも1つのアセナピン関連副作用の軽減を提供する、項目92~99のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
101.患者を治療する方法で使用するためのものであり、
前記患者が、倦怠感、傾眠、めまい、またはそれらの任意の組み合わせに罹患しているヒト患者である、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が、倦怠感、傾眠、めまい、口腔感覚鈍麻、またはそれらの任意の組み合わせである、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、及び/または前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が倦怠感であり、倦怠感の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%または少なくとも約40%減少する、及び/または倦怠感の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用がめまいであり、めまいの発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、項目94に記載の経皮治療システム。
102.同等用量の舌下アセナピンと比較して患者における少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法で使用するための、項目1~101のいずれか1つに記載の経皮治療システム。
103.同等用量の舌下アセナピンと比較して患者における少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法で使用するためのものであり、
前記患者が、倦怠感、傾眠、めまい、またはそれらの任意の組み合わせに罹患しているヒト患者である、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が、倦怠感、傾眠、めまい、口腔感覚鈍麻、またはそれらの任意の組み合わせである、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、及び/または前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が倦怠感であり、倦怠感の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%または少なくとも約40%減少する、及び/または倦怠感の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用がめまいであり、めまいの発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、項目102に記載の経皮治療システム。
104.治療方法、特に精神病を治療する方法、より好ましくは統合失調症、双極性障害、心的外傷後ストレス障害、大うつ病性障害、認知症関連精神病、激越、及び躁病障害から選択される1つ以上の状態を治療する方法であって、
項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを患者の皮膚に適用することを含む、前記方法。
105.統合失調症及び/または双極性障害を治療する方法であって、
項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを患者の皮膚に適用することを含む、前記方法。
106.双極性障害、特に双極性障害の急性躁病または混合エピソードを治療する方法であって、
項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを患者の皮膚に適用することを含む、前記方法。
107.項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを少なくとも24時間もしくは1日間、少なくとも48時間もしくは2日間、または少なくとも72時間もしくは3日間にわたって患者の皮膚に適用することを含む、項目104~106のいずれか1つに記載の治療方法。
108.項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを最大168時間もしくは7日間、最大120時間もしくは5日間、または最大96時間もしくは4日間にわたって患者の皮膚に適用することを含む、項目104~106のいずれか1つに記載の治療方法。
109.項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを24時間または1日間にわたって患者の皮膚に適用することを含む、項目104~106のいずれか1つに記載の治療方法。
110.項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを48時間または2日間にわたって患者の皮膚に適用することを含む、項目104~106のいずれか1つに記載の治療方法。
111.項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを84時間または3.5日間にわたって患者の皮膚に適用することを含む、項目104~106のいずれか1つに記載の治療方法。
112.前記経皮治療システムが、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも1つのアセナピン関連副作用の軽減を提供する、項目104~111のいずれか1つに記載の治療方法。
113.前記患者が、倦怠感、傾眠、めまい、またはそれらの任意の組み合わせに罹患しているヒト患者である、項目112に記載の治療方法。
114.前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が、倦怠感、傾眠、めまい、口腔感覚鈍麻、またはそれらの任意の組み合わせである、項目112または113に記載の治療方法。
115.前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、及び/または前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、項目112~114のいずれか1つに記載の治療方法。
116.前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が倦怠感であり、倦怠感の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%または少なくとも約40%減少する、及び/または倦怠感の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用がめまいであり、めまいの発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、項目115に記載の治療方法。
117.同等用量の舌下アセナピンと比較して患者における少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法であって、項目1~91のいずれか1つに記載の経皮治療システムを投与することを含む、前記方法。
118.前記患者が、倦怠感、傾眠、めまい、またはそれらの任意の組み合わせに罹患しているヒト患者である、項目117に記載の方法。
119.前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が、倦怠感、傾眠、めまい、口腔感覚鈍麻、またはそれらの任意の組み合わせである、項目117または118に記載の方法。
120.前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、及び/または前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、項目117~119のいずれか1つに記載の方法。
121.前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用が倦怠感であり、倦怠感の発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%または少なくとも約40%減少する、及び/または倦怠感の強度が、同等用量の舌下アセナピンと比較して減少する、または
前記少なくとも1つのアセナピン関連副作用がめまいであり、めまいの発生率が、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する、項目120に記載の方法。
122.舌下アセナピン療法で治療されている患者における少なくとも1つのアセナピン関連副作用を軽減する方法であって、
a)舌下アセナピン療法を中止することと、
b)項目1~91のいずれかに記載の経皮治療システムを前記患者に投与することであって、前記経皮治療システムが、同等用量の舌下アセナピンと比較して少なくとも1つのアセナピン関連副作用の軽減を提供する、前記投与することと、を含む、前記方法。
123.前記経皮治療システムが、前記舌下アセナピン療法によって本来提供されるアセナピンの量と同等の量のアセナピンを送達する、項目122に記載の方法。
124.項目1~103のいずれか1つに記載の経皮治療システムで使用するためのマトリックス層の製造プロセスであって、
1)少なくとも以下の成分、アセナピン、アクリルポリマー、追加のポリマー、α-トコフェロール、及びパルミチン酸アスコルビルを溶媒中で組み合わせて、コーティング組成物を得るステップと、
2)前記コーティング組成物をバッキング層または剥離ライナーまたは任意の中間層にコーティングするステップと、
3)前記コーティングされたコーティング組成物を乾燥させて、前記マトリックス層を形成するステップと、を含む、前記製造プロセス。
125.ステップ1)において、少なくとも前記成分、アセナピン、アクリルポリマー、追加のポリマー、α-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、及びメタ重亜硫酸ナトリウムが溶媒中で組み合わせられて、前記コーティング組成物が得られる、項目124に記載のプロセス。
126.ステップ1)において、前記アセナピンが溶解して、コーティング組成物が得られる、項目124または125に記載のプロセス。
127.好ましくは、前記溶媒が、アルコール溶媒、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの混合物、ならびに非アルコール溶媒、具体的には、酢酸エチル、ヘキサン、n-ヘプタン、ヘプタン、石油エーテル、トルエン、及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、エタノール及び酢酸エチルから選択される、項目124~126のいずれか1つに記載のプロセス。
128.前記ポリマーが、アクリルポリマーであり、好ましくは、酢酸ビニル、
2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのコポリマー、または酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートベースのコポリマーであり、これが、30~60重量%の固形分を有する溶液として、好ましくは、酢酸エチル、n-ヘプタン、ヘプタン、メタノール、エタノール、またはそれらの任意の混合物中の溶液として提供される、項目124~127のいずれか1つに記載のプロセス。
129.前記ポリマーがアクリルポリマーであり、前記ポリマーが架橋されている、項目124~128のいずれか1つに記載のプロセス。
130.前記コーティング組成物を得るためにステップ1)で追加の架橋剤が使用されない、項目123に記載のプロセス。
131.前記ポリマーがアクリルポリマーであり、前記ポリマーが架橋されていない、項目124~128のいずれか1つに記載のプロセス。
132.前記コーティング組成物を得るためにステップ1)で追加の架橋剤が使用され、
前記架橋剤が、好ましくは、アルミニウムまたはチタン架橋剤である、項目131に記載のプロセス。
133.乾燥が、室温で、及び/または65~100℃、より好ましくは70~90℃の温度で、1回以上のサイクルで行われる、項目124~132のいずれか1つに記載のプロセス。
134.自己接着性層構造を含むアセナピンの経皮投与のための経皮治療システムであって、
A)バッキング層と、
B)マトリックス層組成物からなるアセナピン含有マトリックス層と、を含み、前記マトリックス層組成物が、
1.遊離塩基の形態で含まれているアセナピンと、
2.酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートベースのコポリマー、または酢酸ビニル、
2-エチルヘキシル-アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートベースのコポリマーと、
3.マトリックス層組成物の5~12%の量の中鎖トリグリセリドと、
4.マトリックス層組成物の5~15%の量の可溶性ポリビニルピロリドンと、
5.安定剤として、前記マトリックス層組成物の0.025~0.1%の量のα-トコフェロール、前記マトリックス層組成物の0.15~0.5%の量のパルミチン酸アスコルビル、及び前記マトリックス層組成物の0.05~0.15%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムと、を含む、前記経皮治療システム。