(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援システム、電気装置、設計支援方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240611BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240611BHJP
H01L 21/82 20060101ALI20240611BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L29/78 658L
H01L21/82 D
H01L29/78 653A
H01L29/78 655A
H01L29/78 655D
H01L29/78 652L
H01L29/78 655C
H01L29/78 656A
H01L29/78 655E
(21)【出願番号】P 2021004501
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】坂野 竜則
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-043204(JP,A)
【文献】特開2017-147468(JP,A)
【文献】特開2016-136819(JP,A)
【文献】特開2000-055979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
G06F 30/27
H01L 21/82
H01L 29/78
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ゲート及び第2ゲートを含む複数のゲートが設けられた半導体素子について、前記第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと前記第2ゲートへ電圧を印加する第2タイミングとの第1時間差を含む制御値群を設定し、
前記制御値群に対応した電気信号が前記半導体素子へ入力されたときの出力結果から、前記半導体素子の特性を示す特性値を算出し、
前記特性値に基づくスコアと前記制御値群とのデータセットを1つ以上含む履歴データから第1関数を算出する、
第1処理を実行し、新たな前記制御値群を前記第1関数を用いて設定する、設計支援装置。
【請求項2】
前記第1処理を繰り返し実行する、請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
1つの前記第1処理は、
前記第1関数の算出を含む第1サブ処理と、
前記制御値群の設定及び前記特性値の算出を含む第2サブ処理と、
を含み、
前記第1サブ処理の実行中に、前記第2サブ処理を実行する、請求項2記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記1つの第1処理において、前記第1サブ処理の実行中に前記第2サブ処理を繰り返し、前記第1サブ処理の完了に応じて前記第2サブ処理の繰り返しを停止する、請求項3記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記スコアは、前記特性値の目的関数への入力によって算出され、
前記第1関数は、前記履歴データに基づくベイズ推定によって算出され、
新たな
前記制御値群は、前記第1関数に基づいて設定される、請求項1~4のいずれか1つに記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記制御値群は、前記第1ゲートへ印加される第1電圧値、前記第2ゲートへ印加される第2電圧値、前記第1ゲートの第1電気抵抗、及び前記第2ゲートの第2電気抵抗からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記出力結果は、時間に対する電流の変化及び時間に対する電圧の変化を含み、
前記特性値は、電力損失を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の設計支援装置。
【請求項8】
前記複数のゲートは、第3ゲートをさらに含み、
前記制御値群は、前記第1タイミングと前記第3ゲートへ電圧を印加する第3タイミングとの第2時間差をさらに含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の設計支援装置。
【請求項9】
前記半導体素子は、IGBTを含む、請求項1~8のいずれか1つに記載の設計支援装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の設計支援装置と、
前記半導体素子へ前記電気信号を入力する駆動回路と、
前記半導体素子からの出力を検出し、前記出力結果を生成する検出回路と、
を備えた設計支援システム。
【請求項11】
第1ゲート及び第2ゲートを含む複数のゲートが設けられた半導体素子と、
前記複数のゲートと電気的に接続された制御回路であって、
前記第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと前記第2ゲートへ電圧を印加する第2タイミングとの第1時間差を含む制御値群を設定し、
前記制御値群に対応した電気信号が前記半導体素子へ入力されたときの出力結果から、前記半導体素子を含む電気部品の特性を示す特性値を算出し、
前記特性値に基づくスコアと前記制御値群とのデータセットを1つ以上含む履歴データから第1関数を算出し、新たな前記制御値群は前記第1関数を用いて設定される、
前記制御回路と、
を備えた電気装置。
【請求項12】
第1ゲート及び第2ゲートを含む複数のゲートが設けられた半導体素子について、前記第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと前記第2ゲートへ電圧を印加する第2タイミングとの第1時間差を含む制御値群を設定し、
前記制御値群に対応した電気信号が前記半導体素子へ入力されたときの出力結果から、前記半導体素子の特性を示す特性値を算出し、
前記特性値に基づくスコアと前記制御値群とのデータセットを1つ以上含む履歴データから第1関数を算出する、
第1処理を実行し、新たな前記制御値群を前記第1関数を用いて設定する、設計支援方法。
【請求項13】
前記第1処理を繰り返し実行する、請求項12記載の設計支援方法。
【請求項14】
1つの前記第1処理は、
前記第1関数の算出を含む第1サブ処理と、
前記制御値群の設定及び前記特性値の算出を含む第2サブ処理と、
を含み、
前記第1サブ処理の実行中に、前記第2サブ処理を実行する、請求項13記載の設計支援方法。
【請求項15】
前記1つの第1処理において、前記第1サブ処理の実行中に前記第2サブ処理を繰り返し、前記第1サブ処理の完了に応じて前記第2サブ処理の繰り返しを停止する、請求項14記載の設計支援方法。
【請求項16】
処理装置に、
第1ゲート及び第2ゲートを含む複数のゲートが設けられた半導体素子について、前記第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと前記第2ゲートへ電圧を印加する第2タイミングとの第1時間差を含む制御値群を設定させ、
前記制御値群に対応した電気信号が前記半導体素子へ入力されたときの出力結果から、前記半導体素子の特性を示す特性値を算出させ、
前記特性値に基づくスコアと前記制御値群とのデータセットを1つ以上含む履歴データから第1関数を算出させる、
第1処理を実行させ、新たな前記制御値群を前記第1関数を用いて設定させる、プログラム。
【請求項17】
前記処理装置に、前記第1処理を繰り返し実行させる、請求項16記載のプログラム。
【請求項18】
1つの前記第1処理は、
前記第1関数の算出を含む第1サブ処理と、
前記制御値群の設定及び前記特性値の算出を含む第2サブ処理と、
を含み、
前記処理装置に、前記第1サブ処理の実行中において、前記第2サブ処理を実行させる、請求項17記載のプログラム。
【請求項19】
前記処理装置に、前記1つの第1処理において、前記第1サブ処理の実行中に前記第2サブ処理を繰り返させ、前記第1サブ処理の完了に応じて前記第2サブ処理の繰り返しを停止させる、請求項18記載のプログラム。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか1つに記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、設計支援装置、設計支援システム、電気装置、設計支援方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のゲートを含む半導体素子について、ゲートに関する制御値をより効率的に探索できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、制御値をより効率的に探索可能な、設計支援装置、設計支援システム、電気装置、設計支援方法、プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る設計支援装置は、第1処理を実行する。前記設計支援装置は、前記第1処理において、第1ゲート及び第2ゲートを含む複数のゲートが設けられた半導体素子について、前記第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと前記第2ゲートへ電圧を印加する第2タイミングとの第1時間差を含む制御値群を設定する。前記設計支援装置は、前記第1処理において、前記制御値群に対応した電気信号が前記半導体素子へ入力されたときの出力結果から、前記半導体素子の特性を示す特性値を算出する。前記設計支援装置は、前記第1処理において、前記特性値に基づくスコアと前記制御値群とのデータセットを1つ以上含む履歴データから第1関数を算出する。前記設計支援装置は、新たな前記制御値群を前記第1関数を用いて設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る設計支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る設計支援方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係る設計支援方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図5】
図5は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図6】
図6は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図7】
図7は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図8】
図8は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図9】
図9は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図10】
図10は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
【
図11】
図11は、ハードウェア構成を例示する模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態の第1変形例に係る設計支援方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態の第2変形例に係る設計支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、実施形態の第3変形例に係る電気装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、実施形態の第3変形例に係る電気装置の動作を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態の第4変形例に係る電気装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る設計支援システムの機能構成を示すブロック図である。
図1に示すように、設計支援システム1は、設計支援装置10、駆動回路20、半導体素子30、及び検出回路40を含む。
【0009】
設計支援システム1及び設計支援装置10は、半導体素子30に関する制御値群を設定するために用いられる。半導体素子30には、第1ゲート及び第2ゲートを含む複数のゲートが設けられる。半導体素子30は、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)を含む。半導体素子30は、ダイオード及びIGBTを有するReverse-Conducting IGBT(RC-IGBT)を含んでも良い。制御値群は、第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと第2ゲートへ電圧を印加する第2タイミングとの第1時間差を含む。設計支援装置10は、制御値群を探索する。
【0010】
設計支援装置10は、制御値群を設定する。駆動回路20は、制御値群に対応した電気信号を半導体素子30へ入力する。検出回路40は、電気信号が半導体素子30へ入力されたときの半導体素子30の出力を検出する。検出回路40は、検出された出力結果を、設計支援装置10へ送信する。設計支援装置10は、出力結果に基づいて、新たな制御値群を設定する。
【0011】
設計支援システム1の具体的な動作について説明する。
設計支援装置10は、設定部11、特性値算出部12、スコア算出部13、関数算出部14、記憶部15、入力部18、及び出力部19を含む。
【0012】
設定部11は、制御値群を設定し、駆動回路20へ送信する。設計支援装置10が検出回路40から送信された出力結果を受信すると、特性値算出部12は、出力結果から、半導体素子30の特性を示す特性値を算出する。例えば、出力結果は、時間に対する電流の変化及び時間に対する電圧の変化を含む。特性値は、電力損失、電流のスイッチング速度、電圧のスイッチング速度、及びスイッチング時間からなる群より選択される少なくとも1つを含む。電力損失として、半導体素子30をターンオン又はターンオフさせたときのスイッチング損失と、半導体素子30がオン状態のときの導通損失と、が算出されても良い。電流のスイッチング速度は、時間(t)に対する電流(i)の変化(di/dt)である。電圧のスイッチング速度は、時間(t)に対する電流(V)の変化(dV/dt)である。特性値は、前記群より選択される少なくとも1つを用いて算出される値を含んでも良い。例えば、特性値は、電力損失及び電圧のスイッチング速度を含むベクトル空間における、電力損失及び電圧のスイッチング速度の大きさを含んでも良い。特性値算出部12は、特性値をスコア算出部13に送信する。
【0013】
スコア算出部13は、特性値に基づき、スコアを算出する。スコアは、特性値の基となった制御値群に対する評価を示す。高い評価は、ユーザにとって好ましい特性値がその制御値群によって得られていることを示す。スコア算出部13は、目的関数に特性値を入力することで、スコアを算出する。目的関数は、特性値からスコアを算出するための関数であり、ユーザにより予め設定される。例えば、特性値が好ましいほど、スコアが高く算出されるように、目的関数が設定される。スコア算出部13は、スコアを関数算出部14へ送信する。スコア算出部13は、算出されたスコアを、目的関数に入力した特性値と、その特性値の基となった制御値群と、に紐付けて記憶部15に保存する。
【0014】
記憶部15は、履歴データを保存する。履歴データは、1つ以上のデータセットを含む。それぞれのデータセットは、制御値群とスコアの組み合わせを含む。記憶部15に新たなデータセットが保存されると、関数算出部14は、記憶部15にアクセスし、それまでに得られた履歴データを取得する。関数算出部14は、履歴データから第1関数を算出する。第1関数は、新たな制御値群の設定に用いられる。
【0015】
第1関数の算出には、最適化方法を適用できる。最適化方法として、ベイズ最適化、応答曲面法、及びシミュレイテッドアニーリング法からなる群より選択される少なくとも1つを用いることができる。例えば、応答曲面法が用いられる場合、第1関数として、応答曲面が算出される。ベイズ最適化が用いられる場合、第1関数として、獲得関数が算出される。関数算出部14は、第1関数を設定部11へ送信する。関数算出部14は、第1関数を記憶部15に保存する。
【0016】
設定部11は、第1関数を受信すると、新たな制御値群を設定する。例えば、設定部11は、第1関数において、最良の特性値が得られると予想される第1時間差を採用する。設定部11は、採用した第1時間差を含む新たな制御値群を設定する。
【0017】
設計支援装置10は、上述した、制御値群の設定、特性値の算出、スコアの算出、及び第1関数の算出を含む第1処理を実行する。設計支援装置10は、第1処理を繰り返す。これにより、より好ましい制御値群が探索される。
【0018】
入力部18は、ユーザがデータを入力するために用いられる。ユーザは、入力部18を用いて、設計支援装置10の処理に必要なデータを記憶部15に保存する。
【0019】
出力部19は、設計支援装置10の処理によって得られたデータを、ユーザに向けて出力する。例えば、出力部19は、第1処理の繰り返しによって得られた最良の特性値を出力する。出力部19は、最良のスコアが得られた制御値群を出力しても良い。出力部19は、第1処理の繰り返し回数と、特性値と、の関係を出力しても良い。
【0020】
駆動回路20は、パルス生成部21及びドライバ22を含む。パルス生成部21は、制御値群に対応したパルス信号を生成し、そのパルス信号をドライバ22へ送信する。パルス生成部21は、制御値群及び他の制御信号に対応したパルス信号を生成しても良い。例えば、パルス生成部21は、他の電気回路から送信される第1タイミングを示すデータを受信する。パルス生成部21は、第1タイミングに基づいて、半導体素子30の第1ゲートへ電圧を印加するための第1パルスを生成する。パルス生成部21は、第1タイミングと、制御値群に含まれる第1時間差と、に基づいて、半導体素子30の第2ゲートへ電圧を印加するための第2パルスを生成する。ドライバ22は、複数のゲートと電気的に接続される。ドライバ22は、パルス信号に対応した電気信号を生成し、その電気信号を複数のゲートへ送信する。
【0021】
例えば、パルス生成部21は、パルスジェネレータ及びレベルシフタを含む。パルス生成部21は、集積回路を含んでも良い。ドライバ22は、集積回路を含む。パルス生成部21及びドライバ22の機能が、1つの集積回路によって実現されても良い。
【0022】
検出回路40は、半導体素子30の例えばコレクタ111及びエミッタ112と電気的に接続される。検出回路40は、コレクタ111とエミッタ112との間の電圧及びコレクタ111とエミッタ112との間に流れる電流を検出する。
【0023】
図2は、実施形態に係る設計支援方法を示すフローチャートである。
例えば、設計支援装置10は、
図2に示す設計支援方法DM0を実行する。設定部11は、制御値群を設定する(ステップS1)。特性値算出部12は、半導体素子30の出力結果から、特性値を算出する(ステップS2)。スコア算出部13は、特性値に基づいてスコアを算出する(ステップS3)。関数算出部14は、履歴データから第1関数を算出する(ステップS4)。設計支援装置10は、ステップS1~S4を繰り返す。ステップS1~S4は、第1処理に対応する。
【0024】
図3は、実施形態に係る設計支援方法を示すフローチャートである。
例えば、設計支援システム1は、
図3に示す設計支援方法DM1を実行する。初期サンプリングが実行される(ステップS11)。初期サンプリングでは、設定部11が、制御値群をランダムに設定する。特性値算出部12は、出力結果から特性値を算出する。スコア算出部13は、特性値に基づいてスコアを算出する。初期サンプリングでは、制御値群の設定、特性値の算出、及びスコアの算出が繰り返される。例えば、初期サンプリングは、2回~5回繰り返される。初期サンプリングの繰り返しにより、制御値群とスコアのデータセットが記憶部15に繰り返し保存される。
【0025】
関数算出部14は、記憶部15に保存された複数のデータセットから、第1関数を算出する(ステップS12)。設定部11は、第1関数に基づいて新たな制御値群を生成する(ステップS13)。駆動回路20は、制御値群に対応した電気信号を半導体素子30に入力する(ステップS14)。検出回路40は、半導体素子30からの出力を検出する(ステップS15)。特性値算出部12は、半導体素子30の出力結果から、特性値を算出する(ステップS16)。スコア算出部13は、特性値に基づいてスコアを算出する(ステップS17)。ステップS13、S16、S17、及びS12は、第1処理に対応する。
【0026】
関数算出部14は、終了条件が充足されたか判定する(ステップS18)。終了条件が充足されるまで、ステップS12~S17が繰り返される。終了条件の一例として、ステップS12~S17の繰り返し回数が規定回数に達すること、又はスコアが予め設定された目標値に達すること、が設定される。ステップS12~S17の繰り返しにより、半導体素子に関する好ましい制御値群が探索される。
【0027】
図4~
図10は、半導体素子の一例を示す模式的断面図である。
例えば、
図4~
図10に示す半導体素子100及び100a~100fのいずれかを、半導体素子30として用いることができる。
【0028】
図4に示す半導体素子100は、第1半導体領域101、第2半導体領域102、第3半導体領域103、第4半導体領域104、半導体領域105、コレクタ111、エミッタ112、第1ゲート121、第1絶縁層121a、第2ゲート122、及び第2絶縁層122aを含む。半導体素子100は、IGBTを含む。以下で説明する各半導体領域の導電形は、反転されても良い。
【0029】
コレクタ111からエミッタ112に向かう方向をZ方向とする。第1半導体領域101は、Z方向において、コレクタ111とエミッタ112との間に設けられる。第1半導体領域101の導電形は、p形である。第1半導体領域101は、コレクタ111と電気的に接続される。第2半導体領域102は、Z方向において、第1半導体領域101とエミッタ112との間に設けられる。第2半導体領域102の導電形は、n形である。第3半導体領域103は、Z方向において、第2半導体領域102の一部とエミッタ112との間に設けられる。第3半導体領域103の導電形は、p形である。第4半導体領域104は、Z方向において、第3半導体領域103の一部とエミッタ112との間に設けられる。第4半導体領域104の導電形は、n形である。第3半導体領域103及び第4半導体領域104は、エミッタ112と電気的に接続される。
【0030】
第1半導体領域101と第2半導体領域102との間には、半導体領域105が設けられても良い。半導体領域105の導電形は、n形である。半導体領域105におけるn形不純物濃度は、第2半導体領域102におけるn形不純物濃度よりも高い。
【0031】
第1ゲート121及び第2ゲート122は、Z方向において、第2半導体領域102の別の一部とエミッタ112との間に設けられる。複数の第1ゲート121が、Z方向と交差するX方向に沿って並ぶ。複数の第2ゲート122が、X方向に沿って並ぶ。X方向は、例えばZ方向に対して垂直である。
図4に示す例では、複数の第1ゲート121と複数の第2ゲート122が、X方向において交互に設けられる。
【0032】
それぞれの第1ゲート121と第2半導体領域102との間には、第1絶縁層121aが設けられる。それぞれの第2ゲート122と第2半導体領域102との間には、第2絶縁層122aが設けられる。第1ゲート121及び第2ゲート122は、エミッタ112とは電気的に分離される。
【0033】
第1ゲート121には、第1ゲート端子121tが電気的に接続される。第2ゲート122には、第2ゲート端子122tが電気的に接続される。駆動回路20は、第1ゲート端子121t及び第2ゲート端子122tと電気的に接続される。
【0034】
エミッタ112に対してコレクタ111に正の電圧が印加された状態で、第1ゲート121及び第2ゲート122の一方又は両方に、閾値以上の電圧が印加される。これにより、第3半導体領域103にチャネル(反転層)が形成される。電子は、チャネルを通ってエミッタ112から第2半導体領域102に注入される。電子の注入によりコレクタ111と第2半導体領域102との間の電位差が小さくなると、正孔が、第1半導体領域101を通ってコレクタ111から第2半導体領域102に注入される。第2半導体領域102において伝導度変調が生じ、第2半導体領域102の電気抵抗が減少する。これにより、半導体素子100がオン状態に切り替わる。
【0035】
その後、第1ゲート121及び第2ゲート122の両方に印加される電圧が閾値よりも低くなると、エミッタから第2半導体領域102への電子の注入が停止する。これにより、コレクタ111から第2半導体領域102への正孔の注入も停止する。この結果、半導体素子100がオフ状態に切り替わる。
【0036】
半導体素子100がオフ状態からオン状態に切り替わるとき、第2半導体領域102にキャリア(電子及び正孔)が蓄積されるまでの間に、スイッチング損失が生じる。また、半導体素子100がオン状態からオフ状態に切り替わるとき、第2半導体領域102に蓄積された電子及び正孔は、コレクタ111及びエミッタ112へそれぞれ排出される。第2半導体領域102からキャリアが排出されるまでの間に、スイッチング損失が生じる。導通損失は、半導体素子100がオン状態の間での電力損失である。
【0037】
図5に示す半導体素子100aは、第1半導体領域101の構造について、半導体素子100と差異を有する。半導体素子100aは、RC-IGBTを含む。
【0038】
第1半導体領域101は、第1サブ領域101a及び第2サブ領域101bを含む。第1サブ領域101aの導電形は、p形である。第2サブ領域101bの導電形は、n形である。
図5に示す例では、複数の第1サブ領域101aと複数の第2サブ領域101bは、X方向において交互に設けられる。
【0039】
半導体素子100aは、第1サブ領域101a、第2半導体領域102、第3半導体領域103、第4半導体領域104、第1ゲート121、及び第2ゲート122を含むIGBTを含む。半導体素子100aは、第2サブ領域101b、第2半導体領域102、及び第3半導体領域103を含むダイオードを含む。
【0040】
誘導起電力等によってコレクタ111に対してエミッタ112に正の電圧が印加されたとき、半導体素子100aのダイオードが動作する。第3半導体領域103から、第2半導体領域102及び第2サブ領域101bへ電流が流れる。
【0041】
図6に示す半導体素子100bは、第3ゲート123をさらに含む。第3ゲート123は、Z方向において、第2半導体領域102とエミッタ112との間に設けられる。複数の第3ゲート123が、X方向に沿って並ぶ。
図6に示す例では、1つの第1ゲート121と1つの第2ゲート122と1つの第3ゲート123が、X方向において交互に設けられる。
【0042】
それぞれの第3ゲート123と第2半導体領域102との間には、第3絶縁層123aが設けられる。第3ゲート123は、エミッタ112とは電気的に分離される。第3ゲート123には、第3ゲート端子123tが電気的に接続される。駆動回路20は、第3ゲート端子123tと電気的に接続される。
【0043】
図7に示す半導体素子100cは、第1半導体領域101、第2半導体領域102、第3半導体領域103、第4半導体領域104、半導体領域105~107、コレクタ111、エミッタ112、第1ゲート121、第1絶縁層121a、第2ゲート122、及び第2絶縁層122aを含む。
【0044】
コレクタ111から第2ゲート122への方向は、X方向に沿う。第2ゲート122は、コレクタ111から離れており、コレクタ111とは電気的に分離される。第1半導体領域101は、Z方向において、コレクタ111とエミッタ112との間に設けられる。半導体領域107は、Z方向において、第2ゲート122とエミッタ112との間に設けられる。第1半導体領域101から半導体領域107への方向は、X方向に沿う。半導体領域106及び107の導電形は、n形である。
【0045】
半導体領域106は、X方向において、半導体領域107から離れている。コレクタ111の一部から半導体領域106へ向かう方向は、Z方向に沿う。第2ゲート122の一部から半導体領域106へ向かう方向は、Z方向に沿う。第2絶縁層122aは、第2ゲート122と第1半導体領域101との間、第2ゲート122と半導体領域106との間、及び第2ゲート122と半導体領域107との間に設けられる。
【0046】
第2半導体領域102は、Z方向において、第1半導体領域101とエミッタ112との間、及び半導体領域107とエミッタ112との間に設けられる。第3半導体領域103は、Z方向において、第2半導体領域102の一部とエミッタ112との間に設けられる。第4半導体領域104は、Z方向において、第3半導体領域103の一部とエミッタ112との間に設けられる。
【0047】
第1ゲート121は、Z方向において、第2半導体領域102の別の一部とエミッタ112との間に設けられる。複数の第1ゲート121が、Z方向と交差するX方向に沿って並ぶ。
【0048】
エミッタ112に対してコレクタ111に正の電圧が印加された状態で、第1ゲート121に、閾値以上の電圧が印加される。この結果、半導体素子100cがオン状態に切り替わる。第1ゲート121への印加電圧が閾値よりも大きいときに、第2ゲート122に閾値以上の電圧が印加される。半導体領域107にチャネルが形成され、このチャネルを通して第2半導体領域102からコレクタ111へ電子が排出される。第2ゲート122に閾値以上の電圧が印加された状態で、第1ゲート121への印加電圧が閾値未満に低下すると、第2半導体領域102からの電子の排出を早めることができる。これにより、ターンオフ時のスイッチング損失を低減できる。
【0049】
図8に示す半導体素子100dは、半導体素子100と比べて、半導体領域107、第3ゲート123、第3絶縁層123a、第4ゲート124、第4絶縁層124aをさらに含む。
【0050】
第1半導体領域101、第3ゲート123、及び第4ゲート124は、Z方向において、コレクタ111と第2半導体領域102との間に設けられる。第3ゲート123には、第3ゲート端子123tが電気的に接続される。第4ゲート124には、第4ゲート端子124tが電気的に接続される。駆動回路20は、第3ゲート端子123t及び第4ゲート端子124tと電気的に接続される。複数の第3ゲート123が、X方向に沿って並ぶ。複数の第4ゲート124が、X方向に沿って並ぶ。
図8に示す例では、複数の第3ゲート123と複数の第4ゲート124が、X方向において交互に設けられる。
【0051】
それぞれの第3ゲート123と第2半導体領域102との間には、第3絶縁層123aが設けられる。それぞれの第4ゲート124と第2半導体領域102との間には、第4絶縁層124aが設けられる。第3ゲート123及び第4ゲート124は、コレクタ111とは電気的に分離される。
【0052】
第1半導体領域101及び半導体領域107は、X方向において隣り合う第3ゲート123と第4ゲート124との間に設けられる。半導体領域107の導電形は、n形である。X方向において隣り合う第3ゲート123と第4ゲート124との間に、互いに離れた複数の半導体領域107が設けられても良い。半導体領域107は、Z方向において、コレクタ111と第1半導体領域101の一部との間に設けられる。
【0053】
エミッタ112に対してコレクタ111に正の電圧が印加された状態で、第1ゲート121に、閾値以上の電圧が印加される。これにより、エミッタ112から第2半導体領域102へ、電子が注入される。また、第2ゲート122に、閾値以上の電圧が印加される。これにより、コレクタ111から第2半導体領域102へ、正孔が注入される。第2半導体領域102への電子及び正孔の注入によって、半導体素子100dがオン状態に切り替わる。
【0054】
半導体素子100dがターンオフされる前に、第2ゲート122に閾値以上の電圧が印加される。これにより、第2半導体領域102におけるエミッタ112側の正孔が、エミッタ112へ排出される。また、第4ゲート124に閾値以上の電圧が印加される。これにより、第2半導体領域102におけるコレクタ111側の電子が、コレクタ111へ排出される。ターンオフ前に、第2半導体領域102に蓄積されたキャリアが排出されることで、ターンオフ時のスイッチング損失を低減できる。
【0055】
図9に示す半導体素子100eは、半導体素子100dと比べて、第5ゲート125をさらに含む。第1ゲート121、第2ゲート122、及び第5ゲート125は、Z方向において、第2半導体領域102とエミッタ112との間に設けられる。第5ゲート125と第2半導体領域102との間には、第5絶縁層125aが設けられる。第5ゲート125には、第5ゲート端子125tが電気的に接続される。駆動回路20は、第1ゲート端子121t及び第2ゲート端子122tと電気的に接続される。
図9に示す例では、1つの第1ゲート121と、1つの第2ゲート122と、1つの第5ゲート125と、がX方向において交互に設けられる。
【0056】
第1ゲート121~第4ゲート124の動作は、半導体素子100dと同様である。半導体素子100eでは、ターンオン時に、第5ゲート125に閾値以上の電圧が印加される。これにより、第2半導体領域102への電子の注入が促進され、ターンオン時のスイッチング損失が低減される。また、半導体素子100eがオン状態のとき、第5ゲート125への印加電圧は、閾値未満である。第2半導体領域102からエミッタ112への正孔の排出が抑制され、第2半導体領域102におけるキャリア密度を増大できる。これにより、半導体素子100eにおける導通損失を低減できる。
【0057】
図10に示す半導体素子100fは、第1半導体領域101が第1サブ領域101a及び第2サブ領域101bを含む点で、半導体素子100dと異なる。半導体素子100fは、RC-IGBTを含む。
【0058】
半導体素子100fのIGBTとして動作は、半導体素子100dと同様である。半導体素子100fがダイオードとして動作するとき、ダイオード動作の終了前に、第1ゲート121及び第2ゲート122の少なくとも一方に、閾値以上の電圧が印加される。これにより、エミッタ112への電子の排出が促進される。また、第3ゲート123及び第4ゲート124の少なくとも一方に、閾値以上の電圧が印加される。これにより、コレクタ111への正孔の排出が促進される。この結果、ダイオード動作時のリカバリ損失が低減される。
【0059】
半導体素子100bが用いられる場合、制御値群は、第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと第3ゲートへ電圧を印加する第3タイミングとの第2時間差をさらに含んでも良い。制御値群は、第3ゲート123へ印加される第3電圧値及び第3ゲート123の第3電気抵抗からなる群より選択される少なくとも1つを含んでも良い。
【0060】
半導体素子100dが用いられる場合、制御値群は、第2時間差をさらに含んでも良い。制御値群は、第1ゲートへ電圧を印加する第1タイミングと第4ゲートへ電圧を印加する第4タイミングとの第3時間差をさらに含んでも良い。制御値群は、第3ゲート123へ印加される第3電圧値、第3ゲート123の第3電気抵抗、第4ゲート124へ印加される第4電圧値、及び第4ゲート124の第4電気抵抗からなる群より選択される少なくとも1つを含んでも良い。
【0061】
図11は、ハードウェア構成を例示する模式図である。
実施形態に係る設計支援装置10は、
図11に示すハードウェア構成により実現可能である。
図11に示す処理装置90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0062】
ROM92は、コンピュータの動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータに実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0063】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0064】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。
【0065】
入力インタフェース(I/F)95は、処理装置90と入力装置95aとを接続する。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。
【0066】
出力インタフェース(I/F)96は、処理装置90と出力装置96aとを接続する。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HDMI:登録商標)等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aにデータを送信する。出力装置96aは、データを出力する。
【0067】
通信インタフェース(I/F)97は、処理装置90外部のサーバ97aと、処理装置90と、を接続する。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0068】
記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。出力装置96aは、モニタ、プリンタ、スピーカ、及びプロジェクタから選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0069】
処理装置90は、設定部11、特性値算出部12、スコア算出部13、及び関数算出部14として機能する。設定部11、特性値算出部12、スコア算出部13、及び関数算出部14の機能は、複数の処理装置の協働によって実現されても良い。設定部11、特性値算出部12、スコア算出部13、及び関数算出部14の機能を実現する際に、一部の処理装置と別の処理装置が、ネットワークを介して接続されても良い。例えば、設定部11、特性値算出部12、スコア算出部13、及び関数算出部14の機能の一部が、クラウドサーバによって提供されても良い。
【0070】
記憶装置94は、記憶部15として機能する。入力装置95aは、入力部18として機能する。出力装置96aは、出力部19として機能する。
【0071】
実施形態の利点を説明する。
複数のゲートを含む半導体素子について、ゲートへ電圧を印加するタイミングを、ゲート同士の間でずらす方法がある。これにより、半導体素子の特性を改善できる。例えば、電力損失を低減できる。特性を効果的に改善させるためには、ゲート同士の間での電圧印加の時間差を、半導体素子の構造に応じて設定することが望ましい。従来、人が時間差を変化させながら半導体素子の特性を確認し、時間差が探索される。
【0072】
実施形態によれば、第1時間差を含む制御値群が、履歴データから算出された第1関数を用いて設定される。例えば、人が経験、勘などに基づいて制御値群を設定する場合に比べて、より良い制御値群を効率的に探索できる。実施形態に係る設計支援装置10によれば、制御値群が自動的に探索される。人による制御値群の探索が不要となり、設計効率を向上できる。
【0073】
第1関数は、ベイズ推定によって算出されることが好ましい。例えば、
図3に示す設計支援方法DM1のステップS12において、関数算出部14は、履歴データから、スコアの代理モデルを推定する。関数算出部14は、スコアの代理モデルから、第1関数としての獲得関数を算出する。設定部11は、獲得関数を用いて新たな制御値群を設定する。
【0074】
ベイズ推定によれば、応答曲面法に比べて、好ましい制御値群をより少ない処理時間で得られる可能性が高い。又は、ベイズ推定によれば、応答曲面法に比べて、より好ましい制御値群が探索される可能性を向上できる。より好ましい制御値群とは、より良い特性値が得られる制御値群を指す。
【0075】
第1関数を用いて設定される制御値群は、第1時間差に代えて、第1ゲート121へ印加される第1電圧値、第2ゲート122へ印加される第2電圧値、第1ゲート121の第1電気抵抗、及び第2ゲート122の第2電気抵抗からなる群より選択される少なくとも1つを含んでも良い。制御値群は、第1時間差に加えて、前記群より選択される少なくとも1つを含んでも良い。
【0076】
例えば、第1ゲート121及び第2ゲート122のそれぞれは、第2半導体領域102中に設けられた電極部分と直列に接続されるゲート抵抗を含む。第1ゲート抵抗及び第2ゲート抵抗は、可変抵抗を含む。第1ゲート121の第1ゲート抵抗及び第2ゲート122の第2ゲート抵抗は、独立してそれぞれ調整可能である。
【0077】
前記群より選択される少なくとも1つの制御値について、探索により、より好ましい値を得ることが可能である。例えば、探索により、より消費電力の小さい制御値を得ることができる。
【0078】
(第1変形例)
図12は、実施形態の第1変形例に係る設計支援方法を示すフローチャートである。
設計支援装置10は、第1サブ処理の実行中に、第2サブ処理を実行しても良い。第1サブ処理は、ステップS12を含む。第2サブ処理は、
図3に示すフローチャートのステップS13~S17を含む。すなわち、1つの第1処理において、第1サブ処理及び第2サブ処理が実行される。
【0079】
図12に示す第1変形例に係る設計支援方法DM1aでは、初期サンプリングが実行される(ステップS11)。関数算出部14は、第1関数を算出する(ステップS12)。第1関数の算出中に、設定部11は、制御値群を設定する(ステップS13)。駆動回路20は、電気信号を半導体素子30に入力する(ステップS14)。検出回路40は、半導体素子30からの出力を検出する(ステップS15)。特性値算出部12は、特性値を算出する(ステップS16)。スコア算出部13は、スコアを算出する(ステップS17)。1回目のステップS12の実行中は、制御値群は、ランダムに設定される。
【0080】
ステップS17の後、設定部11は、第2サブ処理の終了条件が充足されたか判定する(ステップS21)。終了条件として、第1関数の算出が完了したことが設定される。終了条件として、ステップS12~S17の繰り返し回数が規定回数に達することが設定されても良い。
【0081】
ステップS12が完了し、ステップS21において終了条件が充足されたと判定された後、設定部11は、第1サブ処理及び第2サブ処理の繰り返しの終了条件が充足されたか判定する(ステップS18)。終了条件が充足されない場合、ステップS12及びS13が再度実行される。このとき、ステップS13では、直前のステップS12によって得られた第1関数を用いて、制御値群が設定される。
【0082】
第1関数の算出に要する時間は、半導体素子30からの出力の検出や、特性値の算出、スコアの算出などに比べて、長い。第1サブ処理の実行中に、第2サブ処理を実行することで、制御値群の探索に要する処理時間を短縮できる。第1サブ処理の完了に応じて第2サブ処理の繰り返しを停止することで、1回の第1処理の時間を短縮できる。設計支援方法DM1aによれば、設計支援方法DM1に比べて、同じ時間での第2サブ処理の実行回数を増やすことができる。好ましい制御値群をより早く探索できる可能性を向上できる。
【0083】
(第2変形例)
図13は、実施形態の第2変形例に係る設計支援システムの機能構成を示すブロック図である。
図13に示すように、第2変形例に係る設計支援システム1bは、電気装置2、設計支援装置10、及び検出回路40を含む。電気装置2は、制御回路10a、駆動回路20、及び半導体素子30を含む。
【0084】
設定部11は、設定した制御値群を制御回路10aに送信する。制御回路10aは、制御値群に対応した電気信号を半導体素子30へ送信するように、駆動回路20を制御する。
【0085】
制御回路10aは、記憶部を含む。探索によって得られた制御値群は、記憶部に記憶される。例えば、第2変形例に係る設計支援システム1bでは、電気装置2が他の製品に組み込まれる前に、制御値群の探索が実行される。電気装置2が他の製品に組み込まれた後、制御回路10aは、記憶部に記憶された制御値群に基づいて、駆動回路20を動作させる。
【0086】
第2変形例によれば、より好ましい特性を発揮する電気装置2を提供できる。
【0087】
(第3変形例)
図14は、実施形態の第3変形例に係る電気装置の機能構成を示すブロック図である。
図14に示すように、第3変形例に係る電気装置2aは、制御回路10b、駆動回路20、半導体素子30、及び検出回路40を含む。
【0088】
制御回路10bは、設計支援システム1における設計支援装置10として機能する。制御回路10bは、制御値群を設定する。制御回路10bは、制御値群に対応した電気信号を半導体素子30へ送信するように、駆動回路20を制御する。例えば、第3変形例に係る電気装置2aは、他の製品に組み込まれた後に、制御値群を探索する。
【0089】
例えば、電気装置2aは、
図3に示す設計支援方法DM1を実行する。電気装置2aは、半導体素子30からの出力結果が得られるたびに、第1関数の算出、新たな制御値群の設定等を実行する。これにより、電気装置2aの動作中に、リアルタイムで制御値群を改善することが可能となる。
【0090】
図15は、実施形態の第3変形例に係る電気装置の別の動作を示すフローチャートである。
電気装置2aは、
図15に示す設計支援方法DM2を実行しても良い。設計支援方法DM2では、初期サンプリングが実行される(ステップS11)。関数算出部14は、第1関数を算出する(ステップS12)。設定部11は、算出された第1関数に基づいて制御値群を設定する(ステップS13)。電気装置2aは、設定された制御値群を用いてサンプリングを実行する(ステップS31)。サンプリングでは、半導体素子30への入力、検出、特性値の算出、及びスコアの算出が繰り返される。制御値群とスコアのデータセットが記憶部15に繰り返し保存される。
【0091】
電気装置2aは、終了条件が充足されるまで、データセットを蓄積する。例えば、終了条件は、電気装置2aの稼働時間が経過することである。終了条件が充足されると、関数算出部14は、履歴データから第1関数を算出する。
【0092】
例えば、設計支援方法DM2によれば、電気装置2aの稼働時間帯は、データセットが蓄積され、設計値群は変更されない。電気装置2aの非稼働時間帯に、設計値群が変更される。設計支援方法DM2によれば、例えば、電気装置2aの動作をより安定させることができる。
(第4変形例)
図16は、実施形態の第4変形例に係る電気装置の機能構成を示すブロック図である。
第4変形例に係る電気装置2bは、電気部品31を含む点で、電気装置2aと異なる。電気部品31は、半導体素子30を含む。電気部品31は、例えばモータである。
【0093】
検出回路40は、電気部品31の出力を検出する。特性値算出部12は、出力結果から、電気部品31の特性を示す特性値を算出する。電気部品31がモータである場合、検出回路40は、モータを流れる電流値を検出する。この場合、検出回路40は、例えば電流検出抵抗器(シャント抵抗)を含む。又は、検出回路40は、モータの位置(角度)を検出しても良い。この場合、検出回路40は、回転角センサ(例えばホールセンサ又はレゾルバ)を含む。特性値算出部12は、出力結果から、電気部品31の特性を示す特性値を算出する。いずれの場合も、特性値は、例えばモータの回転速度である。
【0094】
設計支援システム1によれば、制御値群を探索しているときの半導体素子30の動作条件が、実際に半導体素子30が使用されるときの動作条件と異なりうる。すなわち、探索時に得られた特性が、実際の半導体素子30の使用時に得られる特性と異なりうる。第3変形例によれば、実際に半導体素子30が使用されたときの出力に基づいて、制御値群を設定できる。このため、実際の半導体素子30の使用時に得られる特性を、より好ましい値に設定できる。
【0095】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又は、他の非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0096】
例えば、記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0097】
以上で説明した各実施形態によれば、制御値群をより効率的に探索可能な、設計支援装置、設計支援システム、電気装置、設計支援方法、プログラム、及び記憶媒体を提供できる。
【0098】
本願明細書において、「垂直」は、厳密な垂直だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直であれば良い。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、設計支援装置、制御回路、駆動回路、半導体素子、検出回路などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0100】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0101】
その他、本発明の実施の形態として上述した設計支援装置、設計支援システム、電気装置、設計支援方法、プログラム、及び記憶媒体を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての設計支援装置、設計支援システム、電気装置、設計支援方法、プログラム、及び記憶媒体も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0102】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1,1b:設計支援システム、 2,2a,2b:電気装置、 10:設計支援装置、 10a,10b:制御回路、 11:設定部、 12:特性値算出部、 13:スコア算出部、 14:関数算出部、 15:記憶部、 18:入力部、 19:出力部、 20:駆動回路、 21:パルス生成部、 22:ドライバ、 30:半導体素子、 31: 電気部品、 40:検出回路、 90:処理装置、 91:CPU、 92:ROM、 93:RAM、 94:記憶装置、 95:入力インタフェース、 95a:入力装置、 96:出力インタフェース、 96a:出力装置、 97:通信インタフェース、 97a:サーバ、 98:システムバス、 100,100a~100f:半導体素子、 101:第1半導体領域、 101a:第1サブ領域、 101b:第2サブ領域、 102:第2半導体領域、 103:第3半導体領域、 104:第4半導体領域、 105~107:半導体領域、 111:コレクタ、 112:エミッタ、 121:第1ゲート、 121a:第1絶縁層、 121t:第1ゲート端子、 122:第2ゲート、 122a:第2絶縁層、 122t:第2ゲート端子、 123:第3ゲート、 123a:第3絶縁層、 123t:第3ゲート端子、 124:第4ゲート、 124a:第4絶縁層、 124t:第4ゲート端子、 125:第5ゲート、 125a:第5絶縁層、 125t:第5ゲート端子、 DM0,DM1,DM1a:設計支援方法