(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】コイル装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/04 20060101AFI20240611BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20240611BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20240611BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20240611BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20240611BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240611BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20240611BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01F27/04 Z
H01F27/06
H01F27/28 128
H01F27/30 130
H01F37/00 G
H01F37/00 A
H01F37/00 F
H01F41/04 A
H01F27/02 N
H01F17/06 K
(21)【出願番号】P 2021006818
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 啓明
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕一
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015151(JP,A)
【文献】特開2010-040774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0033928(US,A1)
【文献】実開平05-041112(JP,U)
【文献】特開平07-045458(JP,A)
【文献】実開平04-002008(JP,U)
【文献】特開平09-330823(JP,A)
【文献】特開平06-036951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/28
H01F 41/04
H01F 27/02
H01F 27/04
H01F 17/06
H01F 27/30
H01F 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向に突出し、かつ離間して配した複数本の端子リードを有するコイル部と、このコイル部を収容するとともに、前記端子リードをそれぞれ外部に導出するリード孔を有し、かつ前記コイル部の一方の端面を覆う端板部,及びこの端板部の外縁部から一方に延出して前記コイル部の周面を覆う周板部を一体に有するケース部とを備えるコイル装置であって、前記周板部の内面の少なくとも一個所に、径方向外方へ凹状に形成し、かつ前記端板部側を漸次幅狭形成することにより、前記端子リードを当接した際に、当該端子リードの先端を前記端板部までガイド可能なガイド凹部を設けるとともに、前記端板部における前記ガイド凹部が臨む位置に前記リード孔(外側リード孔)を設けてなることを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記外側リード孔は、前記端子リードが挿入する挿入側の一部を、当該挿入側が漸次大径となるテーパ部に形成することを特徴とする請求項1記載のコイル装置。
【請求項3】
前記端板部は、中心側に設ける他のリード孔(内側リード孔)の位置に、当該端板部の内面から所定の高さだけ突出する盛上部を一体に設け、この盛上部に当該内側リード孔を形成することを特徴とする請求項1又は2記載のコイル装置。
【請求項4】
前記内側リード孔は、前記端子リードが挿入する挿入側の一部を、当該挿入側が漸次大径となるテーパ部に形成することを特徴とする請求項3記載のコイル装置。
【請求項5】
前記コイル部は、トロイダルコイルを用いることを特徴とする請求項1記載のコイル装置。
【請求項6】
同一方向に延出し、かつ離間して配した複数本の端子リードを有するコイル部と、このコイル部を収容するとともに、前記端子リードをそれぞれ外部に導出するリード孔を有し、かつ前記コイル部の一方の端面を覆う端板部,及びこの端板部の外縁部から一方に延出して前記コイル部の周面を覆う周板部を一体に有するケース部とを備えるコイル装置を製造するコイル装置の製造方法であって、予め、前記周板部の内面の少なくとも一個所に、径方向外方へ凹状に形成し、かつ前記端板部側を漸次幅狭形成することにより、前記端子リードを当接させた際に、当該端子リードの先端を前記端板部までガイド可能なガイド凹部を設けるとともに、前記端板部における前記ガイド凹部が臨む位置に前記リード孔(外側リード孔)を設け、製造時に、前記外側リード孔以外のリード孔に前記端子リードにおける先端側の一部を挿入し、かつ他の前記端子リードを前記ガイド凹部に当接させる前段工程と、この前段工程後、前記コイル部を前記ケース部に収容することにより各端子リードを同時に各リード孔に挿通させる後段工程を備えることを特徴とするコイル装置の製造方法。
【請求項7】
前記各端子リードは、前記前段工程の前に、各端子リードの先端側を前広がり状態にすることを特徴とする請求項6記載のコイル装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダルコイル等の端子リードを備えるコイル部をケース部に収容して構成するコイル装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リング状のコアにマグネットワイヤを順次巻回することにより一又は二以上のコイル本体を構成するとともに、マグネットワイヤの一端又は両端を、コアの軸方向に延出することにより端子リードとして形成したトロイダルコイルは知られており、一例として、特許文献1にはトロイダルコイルが記載され、また、特許文献2にはケース固定形トロイダルコイルが記載されている。
【0003】
特許文献1のトロイダルコイルは、接着剤を用いることなく、コアや巻線をケース内に確実に固定し、コアや巻線の絶縁を確保し、蓋とケースの固定も確実に短時間で行い易くし、信頼性の高い安価な製品を得ることを目的としたものであり、具体的には、ケースと蓋の各々の係合部に断面が鋸歯状の爪を設け、ケース内周面と蓋の外周面上の爪の間にそれぞれ溝と凸部を設け、鋸歯状の爪同士を噛み合わせ、溝と凸部を嵌合させてコアと巻線をケース内に固定するように構成したものである。
【0004】
また、特許文献2のケース固定形トロイダルコイルは、回路基板への実装固定に接着剤等を使用することなく、極めて簡単容易でかつ安定頑丈に実装固定し、実装コストを大きく低減することを目的としたものであり、具体的には、トロイダルコイルと、このトロイダルコイルを上下から固定する絶縁材からなる上固定板と下ケース台とから形成され、上固定板は、円板の周縁に、先端に爪を持つ複数個の垂下するケース固定片と、円板内に、コの字状に切り欠いて形成した先端に突起を持つ抑止片とを有し、下ケース台は、上固定板よりやや大きい直立円筒を底面の周縁に有する円形のケースと、このケースの底面に、上固定板のケース固定片の爪を嵌合係止する係止孔及びリード端子を垂下させる端子孔と、ケースの周縁に、先端に爪を持つ複数個の垂下する基板固定片とを一体に有し、ケース固定片の爪を係止孔に挿入係止して、トロイダルコイルを上固定板と下ケース台にて挟み込み、かつ抑止片の突起をトロイダルコイルに当接して抑えて固定するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-45458号公報
【文献】実開平4-2008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のトロイダルコイル(コイル装置)及びその製造方法は、次のような問題点があった。
【0007】
即ち、この種のトロイダルコイルの場合、リング状のコアに巻回してコイル本体を構成したマグネットワイヤの端部側を、そのまま軸方向に延出して端子リードを形成するとともに、このコイル本体をケースに収容して製品として構成する。
【0008】
このため、製造時には、複数本の端子リードを、ケースの端板部に形成した複数のリード孔に対して、内面側から通して外部に導出させる必要があるが、通常、このリード孔は、端子リードの径に対してほとんど同径に近いやや大きい径に形成されるとともに、間隔の異なる複数の端子リードを同時に挿入する必要があるため、リード孔に対して端子リードを挿入しにくく、製造時のネックになっていた。
【0009】
この結果、マニュアル作業により製造する際には、作業性及び製造容易性の低下により、製造時間の長時間化を招くなど、効率的かつ量産性の高い生産を行うことができず、製造コストの上昇を招く難点があった。加えて、作業性及び製造容易性の低下は、端子リードの無用な折れ曲がりやケースに対する傷付けを招き易いなど、高い品質性及び均質性を確保しにくい難点があった。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したコイル装置及びその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るコイル装置1は、上述した課題を解決するため、同一方向に延出し、かつ離間して配した複数本の端子リード2a,2b…を有するコイル部2と、このコイル部2を収容するとともに、端子リード2a,2b…をそれぞれ外部に導出するリード孔3a,3b…を有し、かつコイル部2の一方の端面2sを覆う端板部3s,及びこの端板部3sの外縁部3seから一方に延出してコイル部2の周面2fを覆う周板部3fを一体に有するケース部3とを備えてなるコイル装置を構成するに際して、周板部3fの内面3fiの少なくとも一個所に、径方向Fd外方へ凹状に形成し、かつ端板部3s側を漸次幅狭形成することにより、端子リード2b…を当接させた際に、当該端子リード2b…の先端2bs…を端板部3sまでガイド可能なガイド凹部4…を設けるとともに、端板部3sにおけるガイド凹部4…が臨む位置にリード孔(外側リード孔)3b…を設けてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るコイル装置の製造方法は、上述した課題を解決するため、同一方向に延出し、かつ離間して配した複数本の端子リード2a,2b…を有するコイル部2と、このコイル部2を収容するとともに、端子リード2a,2b…をそれぞれ外部に導出するリード孔3a,3b…を有し、かつコイル部2の一方の端面2sを覆う端板部3s,及びこの端板部3sの外縁部3seから一方に延出してコイル部2の周面2fを覆う周板部3fを一体に有するケース部3とを備えるコイル装置1を製造するに際し、予め、周板部3fの内面3fiの少なくとも一個所に、径方向Fd外方へ凹状に形成し、かつ端板部3s側を漸次幅狭形成することにより、端子リード2b…を当接させた際に、当該端子リード2b…の先端2bs…を端板部3sまでガイド可能なガイド凹部4…を設けるとともに、端板部3sにおけるガイド凹部4…が臨む位置にリード孔(外側リード孔)3b…を設け、製造時に、外側リード孔3b…以外のリード孔3a…に端子リード2a…における先端2as…側の一部を挿入し、かつ他の端子リード2b…をガイド凹部4…に当接させる前段工程と、この前段工程後、コイル部2をケース部3に収容することにより各端子リード2a,2b…を同時に各リード孔3a,3b…に挿通させる後段工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
一方、本発明は、好適な態様により、外側リード孔3b…は、端子リード2b…が挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3bt…に形成することができる。また、端板部3sは、中心側に設ける他のリード孔(内側リード孔)3a…の位置に、当該端板部3sの内面3siから所定の高さだけ突出する盛上部11を一体に設け、この盛上部11に当該内側リード孔3a…を形成することができる。さらに、この内側リード孔3a…は、端子リード2a…が挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3at…に形成することができる。なお、コイル部2は、トロイダルコイルを用いて好適である。他方、製造時には、各端子リード2a,2b…は、前段工程の前に、各端子リード2a,2b…の先端側を前広がり状態にすることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明に係るコイル装置1及びその製造方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0015】
(1) 製造時には、外側リード孔3b…以外のリード孔3a…に端子リード2a…における先端2as…側の一部を挿入し、かつ他の端子リード2bをガイド凹部4に当接させ、この後、コイル部2をケース部3に収容することにより各端子リード2a,2b…を同時に各リード孔3a,3b…に挿通させることができるため、マニュアル作業により製造する場合であっても、作業性を大幅に高めることができる。これにより、製造の容易化及び製造時間の短縮を実現し、効率的かつ量産性の高い生産を行うことができるとともに、製造コストの削減を図ることができる。加えて、端子リード2b…の無用な折れ曲がりやケース部3に対する傷付けを回避できるため、高い品質性及び均質性を確保することができる。
【0016】
(2) 好適な態様により、外側リード孔3b…を形成するに際し、端子リード2b…が挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3bt…に形成すれば、ガイド凹部4によるガイドの終点部位の範囲をより広げることができるため、外側リード孔3b…に対して、端子リード2b…を、より確実かつ安定に挿入できるとともに、より迅速に挿入できる。
【0017】
(3) 好適な態様により、端板部3sを構成するに際し、中心側に設ける他のリード孔(内側リード孔)3a…の位置に、当該端板部3sの内面3siから所定の高さだけ突出する盛上部11を一体に設け、この盛上部11に当該内側リード孔3a…を形成するようにすれば、ケース部3の内部に内側リード孔3a…の挿入口が存在する場合であっても、当該挿入口の位置(高さ)をケース部3の、より開口側に位置させることができるため、内側リード孔3a…に対する端子リード2a…の挿入操作を、より容易かつスムーズに行うことができる。
【0018】
(4) 好適な態様により、内側リード孔3a…を形成するに際し、端子リード2a…が挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3at…に形成すれば、内側リード孔3a…に対して、端子リード2a…を、より容易かつ迅速に挿入することができる。
【0019】
(5) 好適な態様により、コイル部2に、トロイダルコイルを用いれば、本発明の対象となる典型的なコイルの製造に利用できるため、望ましいパフォーマンスを得る観点から最適な形態として実施できる。
【0020】
(6) 好適な態様により、製造に際し、前段工程の前に、各端子リード2a,2b…の先端側を前広がり状態にすれば、端子リード2b…を、確実かつ安定に、ガイド凹部4…に当接(圧接)させることができるため、より円滑かつ迅速に挿入操作を行うことができるとともに、より作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の好適実施形態に係るコイル装置のコイル部とケース部の一部を省略した外観斜視図、
【
図4】同コイル装置の要部を構成するガイド凹部の平面方向斜視図、
【
図5】同コイル装置の要部を構成するガイド凹部及びリード孔の断面図、
【
図9】本発明の変更実施形態に係るコイル装置のケース部の断面正面図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係るコイル装置1の使用部品及び構成について、
図1-
図5を参照して説明する。
【0024】
コイル装置1は、
図1に示すように、大別して、トロイダルコイルを用いたコイル部2と絶縁材である合成樹脂素材により一体成形したケース部3を備え、このコイル部2をケース部3に収容して構成する。
【0025】
このように、コイル部2に、トロイダルコイルを用いれば、本発明の対象となる典型的なコイルの製造に利用できるため、望ましいパフォーマンスを得る観点から最適な形態として実施できる。したがって、コイル部2は、磁性材によりリング形に形成したコア21を備え、このコア21に、断面円形のマグネットワイヤWを、
図2に示すように、周方向Ffに沿って全周にわたり順次巻回する。これにより、コイル本体22が構成される。例示のコイル部2は単体のコイルとなる。
【0026】
また、マグネットワイヤWの両端は、
図1に示すように、コア21の軸方向Fsに延出することにより所定長さの端子リード2a,2bとして形成する。この場合、一方の端子リード2aは、コア21の中心側空間を通して、軸方向Fsに平行となる一方(下方)側へ延出し、他方の端子リード2bは、コア21の外周面の外方を通して、軸方向Fsに平行となる一方(下方)側へ延出する。したがって、各端子リード2aと2bの延出方向は、同一方向となる。なお、各端子リード2a,2bの長さは、使用目的等に応じて任意に設定可能であり、それぞれ同一長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0027】
ケース部3は、本発明の要部を構成し、基本構成として、コイル部2を収容するとともに、端子リード2a,2bをそれぞれ外部に導出するリード孔3a,3bを有し、かつコイル部2の一方の端面2sを覆う端板部3s,及びこの端板部3sの外縁部3seから一方(上方)に延出してコイル部2の周面2fを覆う周板部3fを一体に備える。
【0028】
そして、周板部3fの内面3fiの所定部位には、
図1及び
図2に示すガイド凹部4を設ける。ガイド凹部4は、径方向Fd外方へ凹状に形成し、かつ端板部3s側を漸次幅狭形成、即ち、内面視V形に形成する。また、ガイド凹部4の下端が臨む部位には、一方のリード孔(外側リード孔)3bを設ける。この場合、
図3(
図1)に示すように、外側リード孔3bを設ける端板部3sの位置の上面には、所定高さの盛上部31を形成し、この盛上部31及び端板部3sを通して外側リード孔3bを形成する。したがって、この盛上部31は端板部3sの一部となる。
【0029】
さらに、外側リード孔3bを形成するに際しては、
図3及び
図4に示すように、端子リード2bが挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3btに形成する。このようなテーパ部3btに形成すれば、ガイド凹部4によるガイドの終点部位の範囲をより広げることができるため、外側リード孔3bに対して、端子リード2bを、より確実かつ安定に挿入できるとともに、より迅速に挿入できる。
【0030】
このように、周板部3fの内面3fiにガイド凹部4を設けるとともに、このガイド凹部4の下端が臨む端板部3sに外側リード孔3bを設ければ、端子リード2bを、ガイド凹部4に当接(又は圧接)させ、この状態で下方へ移動させた際には、端子リード2bの先端2bsが、ガイド凹部4によりガイドされて端板部3sに至るとともに、端板部3sに至った端子リード2bの先端2bsは、ガイド凹部4の下端が臨む外側リード孔3bの挿入側から、当該外側リード孔3bの内部へ挿入させることができる。
【0031】
一方、端板部3sの中心側には、他のリード孔(内側リード孔)3aを設ける。この場合、
図1及び
図3に示すように、端板部3sの上面における内側リード孔3aを設ける位置、即ち、端板部3sの上面(内面)3siにおける中心位置には、上方へ所定の高さだけ突出する盛上部11を一体に設け、この盛上部11に当該内側リード孔3aを形成する。このように、中心側に設ける内側リード孔3aの位置に、端板部3sの内面3siから所定の高さだけ突出する盛上部11を一体に設け、この盛上部11に当該内側リード孔3aを形成するようにすれば、ケース部3の内部に内側リード孔3aの挿入口が存在する場合であっても、当該挿入口の位置(高さ)をケース部3の、より開口側に位置させることができるため、内側リード孔3aに対する端子リード2aの挿入操作を、より容易かつスムーズに行うことができる。
【0032】
また、内側リード孔3aを形成するに際しては、
図3に示すように、端子リード2aが挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3atに形成する。このようなテーパ部3atに形成すれば、内側リード孔3aに対して、端子リード2aを、より容易かつ迅速に挿入することができる。
【0033】
次に、本実施形態に係るコイル装置1の製造方法について、
図6-
図8を参照して説明する。
【0034】
まず、コイル部2(トロイダルコイル)の製作を行う。即ち、リング形のコア21に、
図1及び
図2に示すように、マグネットワイヤWを周方向Ffに沿って全周にわたり順次巻回する巻回工程を行う。巻回工程の終了によりコイル本体22が完成するため、コイル本体22の両端における、一端側のマグネットワイヤWは、
図1に示すように、コア21の中心側空間を通して軸方向Fs一方(下方)へ延出することにより、一方側の端子リード(内側端子リード)2aとして形成する。また、他端側のマグネットワイヤWは、同図に示すように、コア21の外周面の外方を通して、軸方向Fs一方(下方)へ延出することにより、他方側の端子リード(外側端子リード)2bとして形成する。
【0035】
この場合、端子リード2aと2bは、通常、平行又は予め決められた間隔になるように処理することが望ましいが、本実施形態に係るコイル装置の製造方法では、各端子リード2aと2bの先端側は前広がり状態となるように処理する。即ち、内側端子リード2aの先端2asと外側端子リード2bの先端2bs間の間隔を、内側リード孔3aと外側リード孔3b間の間隔よりやや広くなるように処理する。このように、各端子リード2a,2b…の先端側を前広がり状態にすれば、端子リード2b…を、確実かつ安定に、ガイド凹部4…に当接(圧接)させることができるため、より円滑かつ迅速に挿入操作を行うことができるとともに、より作業性を高めることができる。
【0036】
また、ケース部3を用意する。ケース部3は、合成樹脂素材により金型等により一体成形する。
【0037】
そして、ケース部3に対してコイル部2の組付けを行う。例示は、マニュアル工程により組付けを行う製造方法を示す。なお、マニュアル工程を示すが、自動化工程に置換することも容易である。
【0038】
組付けに際しては、最初に、前段工程を行い、この後、後段工程を行う。前段工程では、まず、作業者は、
図6に示すように、コイル部2を、手(指)Hにより掴み、特に、端子リード2b側は、内側へ湾曲できるようにやや強い力を付与し、この状態でケース部3の内側へ収容するとともに、内側端子リード2aの先端2as側の一部を内側リード孔3aに挿入する。
図6が、この状態を示している。次いで、コイル部2から手(指)Hを離せば、
図7の状態にすることができる。以上の処理が前段工程となる。
【0039】
前段工程が終了したなら後段工程を行う。後段工程では、
図8に示すように、コイル部2を手Hで下方へ押し下げる。これにより、コイル体22がケース部3の内部に収容されるとともに、各端子リード2a,2bを、同時に、各リード孔3a,3bに挿通させることができる。即ち、内側端子リード2aは、そのまま内側リード孔3aに挿入されるとともに、外側端子リード2bの先端2bsは、ガイド凹部4にガイドされ、ガイド凹部4の下端に至るとともに、このガイド凹部4の下端が臨む外側リード孔3bの挿入側から当該リード孔3bの内部に挿入させることができる。このように、後段工程では、コイル部2を単に押し下げるのみで、自動的かつ確実に挿入処理を行うことができる。コイル部2を最終位置まで押し下げた状態を
図8に示す。以上が後段工程となり、これにより、目的のコイル装置1を得ることができる。
【0040】
次に、本発明の変更実施形態に係るコイル装置1、即ち、端子リード2a…の本数を変更した場合のコイル装置1について、
図9を参照して説明する。
【0041】
上述した基本の実施形態では、二本の端子リード2a,2bを有する単体コイルの場合について説明したが、コイル装置1によっては、リング状のコア21の片側半分に巻回した第一の単体コイル,及び残りの片側半分に巻回した第二の単体コイルを備える仕様も存在する。この場合、四本の端子リード2a,2b,2c,2dを有するコイル部2が構成されるが、このような仕様であっても、本実施形態に係るコイル装置1及びその製造方法を適用することができる。
図9は、このような仕様に使用するコイル部2を仮想線で示すとともに、ケース部3を実線で示す。
【0042】
図9に示すケース部3は、
図3に示したケース部3のリード孔3a,3bを有する右側半分の構成を、左右反転させ、左側半分の構成として同様に追加したものである。即ち、ケース部3の左側半分に、内側リード孔3aと同様の内側リード孔3cを盛上部11に追加するとともに、ガイド凹部4と同様のガイド凹部4eを周板部3fに追加し、外側リード孔3bと同様の外側リード孔3dを端板部3sに追加したものである。
【0043】
これにより、四本の端子リード2a,2b,2c,2dを、四つのリード孔3a,3b,3c,3dに挿入する際には、まず、中心側に位置する二つの内側リード孔3aと3cに、二本の内側端子リード2a,2cの先端側を挿入する。この場合、二本の内側端子リード2a,2cは、近接した位置関係にあり、かつ内側リード孔3aと3cにはそれぞれテーパ部3at,3ctを有するため、比較的容易かつ確実に挿入することができる。この後、外側端子リード2b,2d間を手で持つとともに、やや強い力を付与することにより、端子リード2b,2d間が狭くなるようにして、各端子リード2b,2dをガイド凹部4,4eに当接(圧接)させればよい。これにより、前述した、二本の端子リード2a,2bを挿入した場合と同様に挿入することができる。
【0044】
このように、本実施形態に係るコイル装置1及びその製造方法によれば、予め、周板部3fの内面3fiの少なくとも一個所に、径方向Fd外方へ凹状に形成し、かつ端板部3s側を漸次幅狭形成することにより、端子リード2b…を当接させた際に、当該端子リード2b…の先端2bs…を端板部3sまでガイド可能なガイド凹部4…を設けるとともに、端板部3sにおけるガイド凹部4…が臨む位置にリード孔(外側リード孔)3b…を設け、製造時に、外側リード孔3b…以外のリード孔3a…に端子リード2a…における先端2as…側の一部を挿入し、かつ他の端子リード2b…をガイド凹部4…に当接させる前段工程と、この前段工程後、コイル部2をケース部3に収容することにより各端子リード2a,2b…を同時に各リード孔3a,3b…に挿通させる後段工程とを備えるため、マニュアル作業により製造する場合であっても、作業性を大幅に高めることができる。これにより、製造の容易化及び製造時間の短縮を実現し、効率的かつ量産性の高い生産を行うことができるとともに、製造コストの削減を図ることができる。加えて、端子リード2b…の無用な折れ曲がりやケース部3に対する傷付けを回避できるため、高い品質性及び均質性を確保することができる。
【0045】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0046】
例えば、端子リード2a,2b…として、二本の場合と四本の場合について例示したが、三本の場合であってもよいし、基本的には、五本以上の場合であっても適用可能である。また、コイル部2として、トロイダルコイルを用いた例を示したが、同様の端子リードやケースを備える各種タイプのコイルを適用できる。さらに、外側リード孔3b…は、端子リード2b…が挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3bt…に形成することが望ましいが、必須の構成要素となるものではない。同様に、内側リード孔3a…は、端子リード2a…が挿入する挿入側の一部を、挿入側が漸次大径となるテーパ部3at…に形成することが望ましいが、必須の構成要素となるものではない。一方、端板部3sは、当該端板部3sの内面3siから所定の高さだけ突出する盛上部11を一体に設け、この盛上部11に当該内側リード孔3a…を形成することが望ましいが、盛上部11の高さは、特定の高さに限定されるものではないとともに、必ずしも必須の構成要素になるものではない。他方、製造するに際し、前段工程として、外側リード孔3b以外のリード孔3aに端子リード2aにおける先端2as側の一部を挿入し、この後、他の端子リード2bをガイド凹部4に当接させる例を示したが、他の端子リード2bをガイド凹部4に当接させ、この後、リード孔3aに端子リード2aにおける先端2as側の一部を挿入する場合を排除するものではなく、どちらが先ということはない。また、製造時における前段工程の前に、各端子リード2a,2bの先端側を前広がり状態にすることが望ましいが、必要に応じてコイル部2の位置を変位させ、端子リード2bをガイド凹部4に当接させることができるため、必須の構成要素となるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、トロイダルコイル等の端子リードを備えるコイル部をケース部に収容して構成するコイル装置及びその製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:コイル装置,2:コイル部,2a:端子リード,2b…:端子リード,2s:コイル部の一方の端面,2f:コイル部の周面,2as…:端子リードの先端,2bs…:端子リードの先端,3:ケース部,3a:リード孔(内側リード孔),3b…:リード孔(外側リード孔),3at…:テーパ部,3bt…:テーパ部,3s:端板部,3se:端板部の外縁部,3si:端板部の内面,3so:端板部の外面,3f:周板部,3fi:周板部の内面,4…:ガイド凹部,11:盛上部,Fd:径方向