(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20240611BHJP
H04L 27/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H04L1/00 F
H04L27/00 A
H04L1/00 E
(21)【出願番号】P 2021033184
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
(72)【発明者】
【氏名】星 大樹
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-074335(JP,A)
【文献】特開平09-298526(JP,A)
【文献】特開平06-077939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04L 1/08-1/24
H04L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリアンブル信号を含むフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置において、
送信処理に適用される、インタリーブサイズを含む送信パラメータを設定する送信パラメータ設定部と、
受信信号の信号電力と基準電力との差分である偏差電力のうち、基準電力より小さい偏差電力のみに基づいて、受信信号のレベルの変動量を検出する受信レベル変動検出部とを備え、
前記送信パラメータ設定部は、前記受信レベル変動検出部により検出された変動量に応じて、以後の送信処理に適用するインタリーブサイズを決定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の無線通信装置において、
受信信号の信号対干渉雑音電力比を算出するSINR算出部を更に備え、
前記送信パラメータは変調方式を含み、
前記送信パラメータ設定部は、前記SINR算出部により算出された信号対干渉雑音電力比に応じて、以後の送信処理に適用する変調方式を決定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の無線通信装置において、
前記SINR算出部は、受信信号からプリアンブル信号を検出し、プリアンブル信号の検出結果に基づいてプリアンブル信号の信号電力、雑音電力、及び干渉電力を算出し、プリアンブル信号の信号電力、雑音電力、及び干渉電力に基づいて信号対干渉雑音電力比を算出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の無線通信装置において、
前記SINR算出部は、マルチパス遅延時間とマルチパス電力との関係を表す遅延プロファイルを算出し、遅延プロファイルと等化限界マルチパス遅延時間とに基づいて干渉電力を算出することを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリアンブル信号を含むフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは一般に、物理層の送信フレームの先頭に、送信側及び受信側で既知のプリアンブル信号ブロックを幾つか付加する。このプリアンブル信号ブロックを用いて、受信側では受信自動利得制御、同期捕捉等の処理を行う。また、このプリアンブル信号ブロックも含め、ヘッダ信号ブロック、チャネル推定用の既知信号ブロック、本来のデータ伝送部分であるデータシンボルブロック等は、フレームフォーマットで数が定められているのが一般的である。
【0003】
一方、MIL-STD-188-110Dのような通信規格では、プリアンブルブロック数を、所定の範囲において任意の数に設定できる。同規格では更に、インタリーブサイズや変調方式も送信側で決定し、受信側では送信情報ヘッダを解析することで、それに応じた復調処理が可能である。
【0004】
ここで、特許文献1には、プリアンブル検出に要する処理量を削減しつつ、受信信号が小さい場合のプリアンブル誤検出を低減できるようにする発明が開示されている。また、特許文献2には、伝搬路のC/N比が劣化した場合でもプリアンブルを正確に検出できるようにする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-244118号公報
【文献】特開2003-304296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリアンブル信号を冗長に送信すると、受信利得制御や同期捕捉は安定的に処理できるが、プリアンブル信号の長さに比例してスループットが低下してしまう。また、伝搬路のレベル変動が大きい場合はフェージング環境下であり、インタリーブサイズが小さいと、誤り訂正による性能改善が得られず性能劣化する。逆に、伝搬路のレベル変動が小さい場合には、インタリーブサイズが大きいと、インタリーブ処理による伝送遅延が冗長となる。また、受信側では通常、マルチパス等化器を具備するが、等化できるマルチパス遅延時間範囲は実装するタップ数により決定されるため有限である。実装されている等化器の範囲外のマルチパスは等化不能であり、干渉成分となって受信性能が劣化する。
【0007】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、通信を安定的に維持させることが可能な無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、無線通信装置を以下のように構成した。
すなわち、プリアンブル信号を含むフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置において、送信処理に適用される、インタリーブサイズを含む送信パラメータを設定する送信パラメータ設定部と、受信信号のレベルの変動量を検出する受信レベル変動検出部とを備え、送信パラメータ設定部は、受信レベル変動検出部により検出された変動量に応じて、以後の送信処理に適用するインタリーブサイズを決定することを特徴とする。
【0009】
ここで、受信レベル変動検出部は、受信信号の信号電力のうち基準電力より小さい電力成分である偏差電力に基づいて、受信信号のレベルの変動量を算出してもよい。
【0010】
また、無線通信装置は、受信信号の信号対干渉雑音電力比を算出するSINR算出部を更に備え、送信パラメータは変調方式を含み、送信パラメータ設定部は、SINR算出部により算出された信号対干渉雑音電力比に応じて、以後の送信処理に適用する変調方式を決定してもよい。
【0011】
また、SINR算出部は、受信信号からプリアンブル信号を検出し、プリアンブル信号の検出結果に基づいてプリアンブル信号の信号電力、雑音電力、及び干渉電力を算出し、プリアンブル信号の信号電力、雑音電力、及び干渉電力に基づいて信号対干渉雑音電力比を算出してもよい。
【0012】
また、SINR算出部は、マルチパス遅延時間とマルチパス電力との関係を表す遅延プロファイルを算出し、遅延プロファイルと等化限界マルチパス遅延時間とに基づいて干渉電力を算出してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信を安定的に維持させることが可能な無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信装置の構成例を示す図である。
【
図2】本発明を適用できるフレームフォーマットの一例を示す図である。
【
図3】
図1の無線通信装置における受信レベル変動検出部の構成例を示す図である。
【
図4】
図3の減算器から出力される偏差電力の一例を示す図である。
【
図5】レベル変動算出のための処理を施した偏差電力の一例を示す図である。
【
図6】
図1の無線通信装置におけるSINR算出部の構成例を示す図である。
【
図8】インタリーブサイズ設定テーブルの一例を示す図である。
【
図9】変調方式設定テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の構成例を示してある。本例の無線通信装置は、誤り訂正符号化部101と、インタリーブ部102と、変調部103と、フレーム生成部104と、送信レート変換部105と、デジタル-アナログ変換器(DAC)106と、送信周波数変換部107と、電力増幅部108と、送受信アンテナ109と、受信LNA部110と、受信周波数変換部111と、アナログ-デジタル変換器(ADC)112と、受信レート変換部113と、受信電力制御部114と、パラメータ検出部115と、復調部116と、デインタリーブ部117と、誤り訂正復号部118と、受信レベル変動検出部119と、SINR算出部120と、送信パラメータ設定部121とを備える。
【0016】
誤り訂正符号化部101は、上位層から出力された送信情報ビット系列(伝送データ)に対し、誤り訂正符号化を施す。誤り訂正符号化によって得られた符号化ビット系列は、インタリーブ部102へ出力される。
【0017】
インタリーブ部102は、誤り訂正符号化部101から入力された符号化ビット系列に対し、上位層或いは送信パラメータ設定部121で設定されたインタリーブサイズで所定の順序に並び替えるインタリーブ処理を行う。インタリーブ処理によって得られた変調ビット系列は、変調部103へ出力される。
【0018】
変調部103は、インタリーブ部102から入力された変調ビット系列に対し、上位層或いは送信パラメータ設定部121で設定された変調方式に基づく変調処理を施す。変調処理によって得られた変調信号は、フレーム生成部104へ出力される。
【0019】
フレーム生成部104は、変調部103から入力された変調信号を所定フォーマットのフレームに格納する。このフレームには、プリアンブル信号、パラメータ検出用信号、チャネル推定用既知信号なども格納される。プリアンブル信号は、受信自動利得制御、同期捕捉等の処理に使用される。プリアンブル信号の長さは、上位層或いは送信パラメータ設定部121で設定される。パラメータ検出用信号は、変調方式やインタリーブサイズ等のパラメータを伝達するために使用される。チャネル推定用既知信号は、チャネル推定処理に使用される。
【0020】
本システムで使用するフレームは、例えば、
図2に示すようなフォーマットである。
図2のフレームは、プリアンブル信号が格納されるプリアンブル信号ブロックAn(ただし、n=0~N)と、パラメータ検出用信号が格納されるヘッダ信号ブロックBp(ただし、p=0~P)と、チャネル推定用既知信号が格納される既知信号ブロックCq(ただし、q=0~Q)と、伝送データの変調信号が格納されるデータシンボルブロックDm(ただし、m=0~M)とを有している。フレーム生成部104によって生成されたフレームは、送信レート変換部105へ出力される。
【0021】
送信レート変換部105は、変調信号を含むフレーム全体に対し、変調のサンプリングレートからDACのサンプリングレートへの変換処理を施す。サンプリングレート変換されたフレーム信号(すなわち、送信信号)は、DAC106へ出力される。
【0022】
DAC106は、送信レート変換部105から入力されたデジタル信号形式の送信信号を、所定の電圧範囲のアナログ信号に変換する。アナログ信号形式に変換された送信信号は、送信電力制御部106へ出力される。
【0023】
送信周波数変換部107は、DAC106から入力されたベースバンド周波数の送信信号を、送信周波数へ周波数変換する。周波数変換された送信高周波信号は、電力増幅部108へ出力される。
【0024】
電力増幅部108は、送信周波数変換部107から入力された送信高周波信号を、無線システムが必要とする電力まで増幅する。電力増幅された送信高周波信号は、送受信アンテナ109へ供給される。
【0025】
送受信アンテナ109は、送信時は電力増幅部108へ接続され、電力増幅部108から入力された送信高周波信号を放射する。送受信アンテナ109は、送信時以外は受信LNA部110へ接続され、別の無線通信装置から無線送信された信号を受信し、受信高周波信号を受信LNA部110へ出力する。
【0026】
受信LNA部110は、送受信アンテナ109で受信された受信高周波信号を、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)で増幅する。電力増幅された受信高周波信号は、受信周波数変換部111へ出力される。
【0027】
受信周波数変換部111は、受信LNA部110から入力された受信高周波信号を、ベースバンド周波数へ周波数変換する。周波数変換された受信信号は、ADC112へ出力される。
【0028】
ADC112は、受信周波数変換部111から入力されたアナログ信号形式の受信信号を所定のサンプルレートでサンプリングし、所定のビット数のデジタル信号形式に変換する。デジタル信号形式に変換された受信信号は、受信レート変換部113へ出力される。
【0029】
受信レート変換部113は、ADC112から入力された受信信号に対し、ADC112のサンプリングレートから変調信号のサンプリングレートへの変換処理を施す。サンプリングレート変換された受信信号は、受信電力制御部114及び受信レベル変動検出部119へ出力される。
【0030】
受信電力制御部114は、後段の処理を一定の信号レベルで処理するために、受信レート変換部113から入力された受信信号の電力を算出し、規定の信号電力にする利得を計算し、受信信号に利得を乗じる電力制御処理を行う。電力制御された受信信号は、パラメータ検出部115、復調部116及びSINR算出部120へ出力される。
【0031】
パラメータ検出部115は、受信信号のフレームのヘッダ信号ブロックから、データブロックの変調方式やインタリーブサイズ等のパラメータを抽出する。抽出されたパラメータは、復調部116、及びデインタリーブ部117へ通知される。
【0032】
復調部116は、パラメータ検出部115で検出されたパラメータに基づいて、チャネル等化等の復調処理を施す。復調処理によって得られた復調対数尤度比もしくは復調ビット(以下、復調信号)は、デインタリーブ部117へ出力される。
【0033】
デインタリーブ部117は、パラメータ検出部115で検出されたインタリーブサイズに基づいて、インタリーブ部102で並び替えられている復調信号系列の順序を元の符号化ビット系列と同じ順序に戻すデインタリーブ処理を行う。デインタリーブ処理によって得られた復調信号系列は、誤り訂正復号部118へ出力される。
【0034】
誤り訂正復号部118は、デインタリーブ部117から入力された復調信号系列に対して、誤り訂正復号処理を施す。誤り訂正復号処理によって得られた復号ビットは、上位層へ出力される。
【0035】
受信レベル変動検出部119は、受信レート変換部113から入力された受信信号のレベルの変動量を検出する。検出された変動量は、送信パラメータ設定部121へ出力される。受信レベル変動検出部119の詳細について、図面を用いて説明する。
【0036】
図3には、受信レベル変動検出部119の構成例を示してある。受信レベル変動検出部119は、信号電力算出部201と、基準電力算出部202と、減算器203と、変動算出部204とを備える。
【0037】
信号電力算出部201は、受信レート変換部113から入力された受信信号の信号電力を算出する。算出された信号電力は、基準電力算出部202及び減算器203へ出力される。
【0038】
基準電力算出部202は、信号電力算出部201で算出された信号電力の平均値或いは中央値を基準電力として算出する。算出された基準電力は、減算器203へ出力される。
【0039】
減算器203は、信号電力算出部201から入力された信号電力と基準電力算出部202から入力された基準電力の差分である偏差電力を算出する。算出された偏差電力は、変動算出部204へ出力される。
【0040】
変動算出部204は、減算器203で算出された偏差電力に基づいて、受信信号のレベルの変動量を算出する。算出された変動量は、送信パラメータ設定部121へ出力される。変動量の算出方式の一例について、
図4、
図5を用いて説明する。
【0041】
図4には、減算器203の出力の一例をグラフ形式で示してある。
図4のグラフは、横軸が離散時間(n=1,2,3,…,N)であり、縦軸が信号電力から基準電力を減じた偏差電力[dB]である。変動量の算出方式の一例について説明する。偏差電力をP
DEV とするとき、まず、下記の式(1)のように、基準電力より高い電力を0に置き換える。言い換えれば、受信信号の信号電力のうち基準電力より低い電力成分である偏差電力のみ用いる。
【0042】
【0043】
図5には、式(1)による演算結果の一例をグラフ形式で示してある。その後、式(1)で得られたP'
DEVの総和に基づいて、例えば、変動量P
FLUCを下記の式(2)により算出する。
【0044】
【0045】
また、下記の式(3)に示すように、P'DEV(n)の分散を変動量PFLUCとして算出してもよい。
【0046】
【0047】
また、高速フーリエ変換を用いてP'DEV(n)の周波数解析を行い、所定の閾値を超える最も低い周波数を変動量PFLUCとして算出してもよい。更に、上記で示したPFLUCの全てを統合的に判断した結果を、新たな変動量PFLUCとしてもよい。上記の変動量PFLUCの算出方式は一例に過ぎず、他の方式で変動量PFLUCを算出してもよい。
【0048】
SINR算出部120は、受信信号の遅延プロファイルを算出し、復調部116の等化範囲外の干渉波となる遅延波を検出し、信号対干渉雑音電力比(SINR:Signal to Interference-Noise Ratio)を計算する。計算された信号対干渉雑音電力比は、送信パラメータ設定部121へ出力される。SINR算出部120の詳細について、図面を用いて説明する。
【0049】
図6には、SINR算出部120の構成例を示してある。SINR算出部120は、プリアンブル検出部301と、信号電力算出部302と、雑音電力算出303と、遅延プロファイル算出部304と、干渉電力算出部305と、SINR演算部306とを備える。
【0050】
プリアンブル検出301は、受信信号がプリアンブル区間であるか否かを判定する。例えば、
図2のプリアンブル信号ブロックAとの相互相関演算結果の閾値判定によりプリアンブル信号を検出する。プリアンブル検出301による検出結果は、信号電力算出部302、雑音電力算出部303、及び遅延プロファイル算出部304へ出力される。
【0051】
信号電力算出302は、プリアンブル検出301の検出結果に基づいて、プリアンブル区間の信号電力PS を算出する。算出された信号電力PS は、SINR演算部306へ出力される。
【0052】
雑音電力算出部303は、例えば、プリアンブル検出部301でプリアンブル区間が検出される前、すなわち、プリアンブル信号の未受信時の信号電力を雑音電力PN として算出し、或いはプリアンブル信号の差分電力を雑音電力PN として算出する。算出された雑音電力PN は、SINR演算部306へ出力される。
【0053】
遅延プロファイル算出部304は、プリアンブル検出部301の検出結果に基づいて、プリアンブル区間の受信信号から遅延プロファイルを算出する。算出された遅延プロファイルは、干渉電力算出部305へ出力される。一例として、遅延プロファイルは、受信信号を高速フーリエ変換して電力スペクトラムを計算し、電力スペクトラムを逆高速フーリエ変換するスペクトルアナライザ法で算出することができる。別の例として、遅延プロファイルは、長い連続したプリアンブル信号を参照信号とした相互相関による方法で算出することができる。
【0054】
干渉電力算出部305は、遅延プロファイル算出304で算出された遅延プロファイルから干渉電力PI を算出する。算出された干渉電力PI は、SINR演算部306へ出力される。干渉電力の算出について、図面を用いて説明する。
【0055】
図7には、遅延プロファイルの一例を示してある。
図7に示すように、遅延プロファイルは、マルチパス遅延時間とマルチパス電力との関係を表す。
図7には2種類の遅延プロファイルを示してあり、横軸がサンプル時間、縦軸が電力である。
図7の(a)は等化可能領域内に遅延波が存在している場合の例であり、(b)は等化不能領域に遅延波が存在している場合の例である。等化不能領域とは、等化限界マルチパス遅延時間を超える時間領域である。復調部116の等化器のタップ数は有限であり、タップ数の範囲を超える遅延波は等化できずに干渉成分として残る。よって、干渉電力P
I は、図中の等化不能領域の信号電力となる。
【0056】
SINR演算部306は、信号電力PS 、雑音電力PN 、干渉電力PI に基づいて、例えば、下記の式(4)を用いて信号対干渉雑音電力比Γを算出する。算出された信号対干渉雑音電力比Γは、送信パラメータ設定部121へ出力される。
【0057】
【0058】
送信パラメータ設定部121は、入力された変動量と信号対干渉雑音電力比に基づいて、インタリーブサイズ、変調方式を決定し、インタリーブサイズ、変調方式、通常の送信フレーム時あるいは所定の時間間隔又はフレーム間隔で送信する冗長送信フレーム時のプリアンブル信号の長さの各送信パラメータをインタリーブ部102、変調部103、フレーム生成部104に設定する。また、これらの送信パラメータは、上位層へも通知される。インタリーブサイズ、変調方式の設定について、図面を用いて説明する。
【0059】
図8には、インタリーブサイズ設定テーブルの一例を示してある。予め、誤り訂正方式と変動量に応じて通信維持に必要なインタリーブサイズを決めておき、インタリーブサイズを小さい方から順に「Ultra short」「Short」「Medium」「Long」とし、「Short」「Medium」「Long」を要する変動量をそれぞれR
s 、R
M 、R
L とした場合、
図8に示す条件によってインタリーブサイズを決定することができる。なお、これはほんの一例に過ぎず、例えば、変調方式毎にR
s 、R
M 、R
L を設けても構わない。
【0060】
図9には、変調方式設定テーブルの一例を示してある。予め、変調方式に応じて通信維持に必要な信号対干渉雑音電力比を決めておき、変調方式を多値ビット数が小さい順に「BPSK」「QPSK」「8PSK」「16QAM」「32QAM」「64QAM」とし、「QPSK」「8PSK」「16QAM」「32QAM」「64QAM」に要する信号対干渉雑音電力比をそれぞれΓ
Q 、Γ
8 、Γ
16、Γ
32、Γ
64、Γ
256 とした場合、
図9に示す条件によって変調方式を決定することができる。なお、これはほんの一例に過ぎず、例えば、インタリーブサイズ毎にΓ
Q 、Γ
8 、Γ
16、Γ
32、Γ
64、Γ
256 を設けても構わない。
【0061】
冗長なプリアンブル信号の送信間隔は、例えば、10フレームに1フレームのように任意に設定し、通常フレームのプリアンブル長は2、冗長フレームのプリアンブル長は10といったように任意に設定する。
【0062】
以上のように、本例の無線通信装置は、プリアンブル信号を含むフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置であって、送信処理に適用される、インタリーブサイズを含む送信パラメータを設定する送信パラメータ設定部121と、受信信号のレベルの変動量を検出する受信レベル変動検出部119とを備え、送信パラメータ設定部121は、受信レベル変動検出部119により検出された変動量に応じて、以後の送信処理に適用するインタリーブサイズを決定するように構成されている。また、本例の無線通信装置は、受信信号の信号対干渉雑音電力比を算出するSINR算出部120を更に備え、送信パラメータは変調方式を含み、送信パラメータ設定部121は、SINR算出部120により算出された信号対干渉雑音電力比に応じて、以後の送信処理に適用する変調方式を決定するように構成されている。
このような構成によれば、定期的な伝搬路解析を行って、最適なインタリーブサイズや変調方式を決定することができ、安定的な通信の維持を実現することが可能となる。
【0063】
なお、本実施形態では、インタリーブ部102と変調部103とフレーム生成部104で使用する各送信パラメータの設定を送信パラメータ設定部121が行っているが、上位層が送信パラメータの設定を行っても構わない。また、本実施形態では、無線通信装置が自身の送信パラメータを設定しているが、対向する無線通信装置の送信パラメータの設定を行うようにしてもよい。
【0064】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0065】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、プリアンブル信号を含むフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
101:誤り訂正符号化部、 102:インタリーブ部、 103:変調部、 104:フレーム生成部、 105:送信レート変換部、 106:デジタル-アナログ変換器、 107:送信周波数変換部、 108:電力増幅部、 109:送受信アンテナ、 110:受信LNA部、 111:受信周波数変換部、 112:アナログ-デジタル変換器、 113:受信レート変換部、 114:受信電力制御部、 115:パラメータ検出部、 116:復調部、 117:デインタリーブ部、 118:誤り訂正復号部、 119:受信レベル変動検出部、 120:SINR算出部、 121:送信パラメータ設定部、 201:信号電力算出部、 202:基準電力算出部、 203:減算器、 204:変動算出部、 301:プリアンブル検出部、 302:信号電力算出部、 303:雑音電力算出部、 304:遅延プロファイル算出部、 305:干渉電力算出部、 306:SINR演算部