(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
E04H1/02
(21)【出願番号】P 2021042168
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】村松 奈美
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
(72)【発明者】
【氏名】糸澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】古村 博隆
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-262261(JP,A)
【文献】特開2004-060426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00 - 1/14
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に隣接する下階部及び上階部を備え、
前記下階部及び前記上階部の各床上を走行し特定の作業を行う走行体が適用される建物であって、
前記下階部及び前記上階部に跨がって形成されているとともに、前記下階部と前記上階部とを連絡する階段が設置された階段空間を備え、
前記階段空間において前記階段が設置されていない非設置スペースを利用して前記走行体を前記下階部及び前記上階部の間で昇降させるための昇降用スペースが形成されており、
前記上階部には、前記昇降用スペースと仕切壁を隔てて隣接する上階隣接空間が設けられており、
前記仕切壁には、前記走行体を前記昇降用スペースと前記上階隣接空間との間で移動させるための開口部が形成されて
おり、
前記走行体は、昇降手段によって前記昇降用スペースにおいて前記下階部と前記上階部との間で昇降可能となっており、
前記昇降用スペースにおいて前記走行体を前記上階部にて支持及び支持解除することが可能な支持手段を有し、その支持手段を前記走行体を支持した状態で動作させることにより前記走行体を前記昇降用スペースと前記上階隣接空間との間で前記開口部を通じて移動させる移動機構を備えることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記走行体は、上下方向に伸縮可能に構成され、その伸縮により前記下階部と前記上階部との間で昇降する前記昇降手段を有していることを特徴とする請求項
1に記載の建物。
【請求項3】
前記開口部よりも上方において前記仕切壁よりも前記昇降用スペース側に張り出した張出部が設けられ、その張出部の下面に前記移動機構が取り付けられていることを特徴とする請求項
1又は
2に記載の建物。
【請求項4】
前記走行体は、側方に向けて互いに反対側に突出する一対の突出部を有しており、
前記移動機構は、前記支持手段として、前記走行体の前記各突出部にそれぞれ引っ掛けられることで前記走行体を支持する一対の可動式のアームを有しており、
前記各アームは、互いに接近することで前記各突出部に引っ掛けられ前記走行体を支持する支持状態となり、互いに離間することで前記各突出部への引っ掛けが解除される支持解除状態となることを特徴とする請求項
1乃至
3のいずれか一項に記載の建物。
【請求項5】
前記走行体は、物を搬送する搬送ロボットであり、
前記搬送ロボットは、床上を走行する本体部と、その本体部の上方に設けられ物を載置する載置部と、前記本体部と前記載置部とを接続する柱部とを有しており、
前記柱部は上下方向に伸縮可能に構成され、
前記搬送ロボットは、前記柱部の伸縮により前記下階部と前記上階部との間で昇降する前記昇降手段を有しており、
前記載置部は前記柱部を挟んだ両側にそれぞれ突出しており、それら突出した各部分が前記アームにより引っ掛けられる前記突出部となっていることを特徴とする請求項
4に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に隣接する下階部及び上階部を備え、下階部及び上階部の各床上を走行して特定の作業を行う自走式ロボットなどの走行体が適用される建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅等の建物では、床上を自走する自走式のロボットが用いられる場合がある。例えば特許文献1には、こうした自走式のロボットを下階部の床と上階部の床との間で移動可能とした建物が開示されている。この建物には、上下階に跨がる吹き抜けスペースが形成され、その吹き抜けスペースに下階部と上階部とに跨がって延びるポールが設けられている。そして、このポールに沿ってロボットが自走することで、ロボットが下階部と上階部との間で移動することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の建物では、建物内にロボットを上下階の間で昇降させる昇降用の吹き抜けスペースを専用に設ける必要がある。そのため、建物内のプランニングに制約が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物内のプランニングに制約が生じるのを抑制しながら、走行体を上下階に移動させることができる建物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物は、上下に隣接する下階部及び上階部を備え、前記下階部及び前記上階部の各床上を走行し特定の作業を行う走行体が適用される建物であって、前記下階部及び前記上階部に跨がって形成されているとともに、前記下階部と前記上階部とを連絡する階段が設置された階段空間を備え、前記階段空間において前記階段が設置されていない非設置スペースを利用して前記走行体を前記下階部及び前記上階部の間で昇降させるための昇降用スペースが形成されており、前記上階部には、前記昇降用スペースと仕切壁を隔てて隣接する上階隣接空間が設けられており、前記仕切壁には、前記走行体を前記昇降用スペースと前記上階隣接空間との間で移動させるための開口部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、建物内に上下階に跨がる階段空間が形成され、その階段空間において階段が設置されていない非設置スペースを利用して走行体の昇降用スペースが形成されている。この場合、その昇降用スペースを通じて走行体を下階部と上階部との間で昇降させることができる。また、上階部には昇降用スペースと上階隣接空間との間の仕切壁に開口部が形成され、その開口部を通じて走行体を昇降用スペースと上階隣接空間との間で移動させることができる。よって、本建物では、建物内の階段空間を利用して、走行体を上下階の各床間で移動させることができる。その結果、走行体を上下階の間で昇降させるための専用の昇降スペース(吹き抜け空間)を建物内に別途設ける必要がない。これにより、建物内のプランニングに制約が生じるのを抑制しながら、走行体を上下階に移動させることができる。
【0008】
第2の発明の建物は、第1の発明において、前記走行体は、昇降手段によって前記昇降用スペースにおいて前記下階部と前記上階部との間で昇降可能となっており、前記昇降用スペースにおいて前記走行体を前記上階部にて支持及び支持解除することが可能な支持手段を有し、その支持手段を前記走行体を支持した状態で動作させることにより前記走行体を前記昇降用スペースと前記上階隣接空間との間で前記開口部を通じて移動させる移動機構を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の発明によれば、走行体が下階部の床上から上階部の床上に移動する際には、走行体が昇降用スペースにおいて下階部から上階部に昇降手段によって上昇する。また、走行体は上階部にて移動機構の支持手段により支持され、その支持状態で昇降用スペースから上階隣接空間に開口部を通じて移動される。また、走行体が上階部の床上から下階部の床上に移動する際には、走行体が支持手段により支持された状態で上階隣接空間から昇降用スペースに開口部を通じて移動される。また、走行体は昇降用スペースにおいて上階部から下階部に昇降手段によって下降する。走行体が下降する際には、支持手段による走行体の支持が解除されてから下降する。
【0010】
このように、第2の発明によれば、走行体を上下階の床間で昇降手段と移動機構とを用いて具体的に移動させることが可能となる。例えば、走行体を上下階の床間(詳しくは昇降用スペースにおける下階部の床上と上階隣接空間の床上との間)で移動させる移動機構を建物に設けることも考えられるが、そうすると、移動機構の構成が著しく煩雑となることが考えられる。その点、走行体を昇降手段により昇降用スペースにおいて下階部と上階部との間で昇降させ、上階部においては移動機構により昇降用スペースと上階隣接空間との間で移動させるようにした上記の構成では、移動機構の構成が煩雑となるのを抑制しながら、走行体を上下階の床間で移動させることが可能となる。
【0011】
なお、昇降手段は、後述する第3の発明のように走行体自身が有していてもよいし、建物側に設けられていてもよい。建物側に設けられる昇降手段としては、例えば昇降用スペースにおいて下階部と上階部とに跨って上下に延びるポール等の棒状体が挙げられる。この場合、上述した特許文献1の技術と同様、棒状体に沿って走行体を自走可能とし、それにより走行体を下階部と上階部との間で昇降可能とすることが考えられる。
【0012】
第3の発明の建物は、第2の発明において、前記走行体は、上下方向に伸縮可能に構成され、その伸縮により前記下階部と前記上階部との間で昇降する前記昇降手段を有していることを特徴とする。
【0013】
第3の発明によれば、走行体が下階部の床上から上階部の床上に移動する際には、走行体が昇降用スペースにおいて下階部から上階部へ伸長し、その伸長状態で走行体が上階部において支持手段により支持される。そして、その支持状態で走行体が縮むことにより、走行体が下階部から上階部に上昇する。その後、支持手段による支持状態で走行体が昇降用スペースから上階隣接空間に移動される。
【0014】
また、走行体が上階部の床上から下階部の床上に移動する際には、走行体が支持手段により支持された状態で上階隣接空間から昇降用スペースに移動され、その後、昇降用スペースにおいて上階部から下階部へと伸長する。この際、走行体は、昇降用スペース(下階部)の床上に到達するまで伸長し、当該床上に載置される。そして、その載置状態で支持手段による走行体の支持が解除され、解除後、走行体が縮むことにより走行体が上階部から下階部へ下降する。
【0015】
このように、第3の発明では、走行体自らが伸縮することにより、走行体が下階部と上階部との間で昇降するようになっている。そのため、建物側に昇降手段を設ける必要がなく、建物側の構成を簡素化することができる。また、昇降用スペースに昇降手段を設ける必要がないため、住人等が昇降用スペース(ひいては階段空間)を通るに際し昇降手段が邪魔になるといった不都合が生じることがない。
【0016】
第4の発明の建物は、第2又は第3の発明において、前記開口部よりも上方において前記仕切壁よりも前記昇降用スペース側に張り出した張出部が設けられ、その張出部の下面に前記移動機構が取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
第4の発明によれば、昇降用スペース側に張り出した張出部の下面に移動機構が取り付けられている。これにより、張出部を利用して移動機構を安定した状態で取り付けることができるとともに、移動機構を張出部により目立ちにくくすることができる。
【0018】
第5の発明の建物は、第2乃至第4のいずれかの発明において、前記走行体は、側方に向けて互いに反対側に突出する一対の突出部を有しており、前記移動機構は、前記支持手段として、前記走行体の前記各突出部にそれぞれ引っ掛けられることで前記走行体を支持する一対の可動式のアームを有しており、前記各アームは、互いに接近することで前記各突出部に引っ掛けられ前記走行体を支持する支持状態となり、互いに離間することで前記各突出部への引っ掛けが解除される支持解除状態となることを特徴とする。
【0019】
第5の発明によれば、一対のアームが走行体の各突出部に引っ掛けられることにより走行体が支持される。この場合、一対のアームにより走行体を両側から支持することができるため、走行体を安定した状態で支持することが可能となる。また、一対のアームにより走行体を引っ掛け支持する構成では、例えば一対のアームにより走行体を挟持して支持する構成と比べ、走行体の位置が多少ばらついても走行体を支持することが可能である。そのため、走行体を安定した状態でかつ確実に支持することが可能となる。
【0020】
第6の発明の建物は、第5の発明において、前記走行体は、物を搬送する搬送ロボットであり、前記搬送ロボットは、床上を走行する本体部と、その本体部の上方に設けられ物を載置する載置部と、前記本体部と前記載置部とを接続する柱部とを有しており、前記柱部は上下方向に伸縮可能に構成され、前記搬送ロボットは、前記柱部の伸縮により前記下階部と前記上階部との間で昇降する前記昇降手段を有しており、前記載置部は前記柱部を挟んだ両側にそれぞれ突出しており、それら突出した各部分が前記アームにより引っ掛けられる前記突出部となっていることを特徴とする。
【0021】
第6の発明では、走行体が物を搬送する搬送ロボットとされている。搬送ロボットは、床上を走行する本体部と、物を載置する載置部とが伸縮可能な柱部により接続されており、その柱部の伸縮により下階部と上階部との間で昇降可能とされている。これにより、搬送ロボットにおいて上記第3の発明と同様の効果を得ることができる。また、載置部は柱部を挟んだ両側にそれぞれ突出しており、それら突出した各部分がアームにより引っ掛け支持される突出部となっている。この場合、載置部を物を載置するだけでなくアームの引っ掛け部としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】搬送ロボットを示す斜視図であり、(a)が搬送ロボットの柱部が縮んだ通常状態を示し、(b)が柱部が伸長した伸長状態を示している。
【
図4】収納部周辺を階段ホールから見た斜視図であり、(a)が開閉体が閉じた状態を示し、(b)が開閉体が開いた状態を示している。
【
図5】移動機構を示す斜視図であり、(a)が移動機構のアームが第1位置にある場合を示し、(b)がアームが第2位置にある場合を示し、(c)がアームが第3位置にある場合を示している。
【
図6】アームの移動制御を行う制御システムの電気的構成を示す図。
【
図8】搬送ロボットがアームにより昇降用スペースと階段ホールとの間で移動される様子を説明する図。
【
図9】移動機構の別例を示す斜視図であり、(a)が移動機構のアームが第1位置にある場合を示し、(b)がアームが第2位置にある場合を示し、(c)がアームが第3位置にある場合を示している。
【
図10】らせん階段が設けられた階段空間において搬送ロボットの伸長状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、
図1は、本実施形態における建物の概要を示す概略断面図である。
【0024】
図1に示すように、住宅等の建物10は、下階部としての一階部分11と、上階部としての二階部分12とを有する二階建てとなっている。二階部分12の上方には屋根部13が設けられ、屋根部13は例えば切り妻式となっている。
【0025】
建物10には、一階部分11と二階部分12とに跨がる階段空間15が形成されている。階段空間15は、一階部分11から二階部分12に吹き抜けた吹き抜け空間とされており、その床面が一階部分11の床部17により形成され、その天井面が二階部分12の天井部により形成されている。階段空間15には、廻り階段からなる階段16が設置されている。この階段16を通じて一階部分11と二階部分12との間の行き来が可能となっている。また、階段16における下側部分と上側部分との間は斜め腰壁19により仕切られている。
【0026】
一階部分11には、階段空間15に連続して廊下21が設けられている。図示は省略するが、一階部分11には、リビングやダイニングといった居室空間(一階居室)が設けられ、その居室空間は廊下21に通じている。また、一階部分11の床部17(以下、一階床部17ともいう)は、その床面の高さが床部17全域において同じ高さとなっている。
【0027】
二階部分12には、階段空間15に連続して階段ホール23が設けられている。図示は省略するが、二階部分12には、寝室等の居室空間(二階居室)が設けられ、その居室空間は階段ホール23に通じている。また、二階部分12の床部18(以下、二階床部18ともいう)は、その床面の高さが床部18全域において同じ高さとなっている。
【0028】
建物10には、床部17、18上を走行して物を搬送する搬送ロボット30が設けられている。以下、搬送ロボット30の構成について
図2に基づいて説明する。
図2は搬送ロボット30を示す斜視図であり、(a)が搬送ロボット30の柱部35が縮んだ通常状態を示し、(b)が柱部35が伸長した伸長状態を示している。なお、搬送ロボット30が、特定の作業としての搬送作業を行う「走行体」に相当する。
【0029】
図2(a)及び(b)に示すように、搬送ロボット30は、床部17,18上を走行する本体部31と、本体部31の上方に設けられ物を載置する載置部32と、本体部31と載置部32とを上下に接続する柱部35とを備える。本体部31は扁平の円形状に形成され、その下部に複数の車輪33が取り付けられている。また、本体部31には、走行時の駆動源となるモータ等の走行駆動部34が内蔵されている。この走行駆動部34の駆動により車輪33が回転し本体部31ひいては搬送ロボット30が床部17,18上を走行するようになっている。
【0030】
載置部32は円形の皿状に形成され、その外径が本体部31の外径と略同じ大きさとされている。本搬送ロボット30では、この載置部32の上に物を載せた状態で本体部31が床部17,18上を自走(自律運転)することで、建物10内において物を搬送することが可能となっている。なお、載置部32は必ずしも皿状である必要はなく、板状や箱状等、物を載置できればその形状は任意であってよい。
【0031】
柱部35は、本体部31と載置部32とに跨って上下に延びる円柱状をなしており、本体部31の中央部と載置部32の中央部とを互いに接続している。この場合、載置部32において柱部35の外周面よりも側方に突出した部分はフランジ部32aとなっている。
【0032】
柱部35は、上下方向に伸縮可能に構成されている。柱部35は、例えば径の異なる複数の筒状部を有して構成され、隣り合う筒状部のうち一方が他方の内部に収容されることで縮み、一方が他方の内部から引き出されることで伸長するようになっている。後述するように、本搬送ロボット30では、階段空間15(詳しくは昇降用スペース41)において柱部35が伸縮することにより、搬送ロボット30が一階部分11と二階部分12との間で昇降可能となっている。つまり、搬送ロボット30は、一階部分11と二階部分12との間で昇降可能な昇降手段を有している。
【0033】
搬送ロボット30は、柱部35が縮んだ通常状態(
図2(a)に示す状態)と、柱部35が伸長した伸長状態(
図2(b)に示す状態)との間で伸長可能となっている。搬送ロボット30は、床部17,18上を走行する際には通常状態で走行する。また、搬送ロボット30は、伸長状態では、高さ寸法が一階床部17の床面から二階床部18の床面までの上下間距離よりも大きくされる。このため、搬送ロボット30が階段空間15において一階床部17上に配置された状態で搬送ロボット30が伸長状態とされると、少なくとも載置部32が二階床部18の床面よりも高い位置に位置するようになっている。
【0034】
搬送ロボット30には、柱部35を伸縮させる際の駆動源となるモータ等の伸縮駆動部37が設けられている。伸縮駆動部37は、例えば本体部31に内蔵されている。この伸縮駆動部37の駆動により柱部35ひいては搬送ロボット30が上下に伸縮するようになっている。
【0035】
搬送ロボット30には、走行駆動部34及び伸縮駆動部37を駆動制御するロボット制御部40が設けられている。ロボット制御部40は、例えば本体部31に内蔵されている。ロボット制御部40により走行駆動部34が駆動制御されることにより搬送ロボット30が床部17,18上を走行する。また、ロボット制御部40により伸縮駆動部37が駆動制御されることにより搬送ロボット30が上下に伸縮する。
【0036】
搬送ロボット30は、住人の音声による搬送指示を取得するマイク(図示略)を内蔵している。ロボット制御部40は、取得した住人の搬送指示に基づいて、搬送ロボット30の移動経路を決定し、その決定した移動経路に基づき、各駆動部34,37を制御し搬送ロボット30の移動制御を行う。また、ロボット制御部40は、建物10内の間取り情報を記憶したメモリを有しており、そのメモリに記憶された間取り情報を参照して搬送ロボット30の移動制御を行う。
【0037】
次に、搬送ロボット30を一階床部17と二階床部18との間で移動させるための構成について
図1を用いながら説明する。
【0038】
図1に示すように、階段空間15は、その一部が階段16が設置されていない非設置スペース15aとなっている。非設置スペース15aの一部は、搬送ロボット30を一階部分11と二階部分12との間で昇降させるための昇降用スペース41となっている。昇降用スペース41は、一階床部17の床面から二階床部18の床面よりも高い位置へ延びており、
図1では便宜上、昇降用スペース41の外縁を二点鎖線の矩形枠で示している。
【0039】
二階部分12では、昇降用スペース41と階段ホール23とが横並びで隣接している。本建物10では、階段ホール23が段ボール箱等の物が置かれた物置きスペースとして利用されており、例えば階段ホール23に置かれた物が搬送ロボット30による搬送対象となっている。なお、階段ホール23が上階隣接空間に相当する。昇降用スペース41と階段ホール23との間には、それら両空間23,41を仕切る仕切壁としての腰壁43が設けられている。腰壁43は、階段ホール23の床面から上方に立ち上がるように設けられている。
【0040】
腰壁43の上方には物を収納可能な収納部45が設けられている。以下、収納部45周辺の構成について
図1に加え、
図3及び
図4を用いながら説明する。なお、
図3は収納部45周辺を階段空間15から見た斜視図である。また、
図4は収納部45周辺を階段ホール23から見た斜視図であり、(a)が開閉体48が閉じた状態を示しており、(b)が開閉体48が開いた状態を示している。
【0041】
図1,
図3及び
図4に示すように、収納部45は直方体状に形成された収納棚であり、腰壁43の上端部と階段ホール23の天井面とに跨って設けられている。収納部45は観音開きの扉部45aを有しており、その扉部45aを開いて階段ホール23から物の出し入れが可能となっている。収納部45は、腰壁43よりも階段空間15側(昇降用スペース41側)に張り出して設けられている。これにより、昇降用スペース41は、一階床部17の床面から収納部45の下面45bまでのスペースとして形成されている。なお、収納部45が張出部に相当する。
【0042】
腰壁43には、昇降用スペース41と階段ホール23とを連通する矩形の開口部47が形成されている。開口部47は、階段ホール23の床面から収納部45の下面45bに亘る上下範囲に形成されている。この開口部47を通じて搬送ロボット30が昇降用スペース41と階段ホール23との間で移動することが可能となっている。
【0043】
腰壁43には、開口部47を開閉する開閉体48が設けられている。開閉体48は、矩形板状に形成され、上端部において腰壁43に回動可能に取り付けられている。詳しくは、開閉体48は、腰壁43における開口部47を挟んだ両側部分にそれぞれ回動可能に取り付けられている。これにより、開閉体48が回動することにより開口部47が開閉されるようになっている。なお、開閉体48は通常閉状態とされているが、
図1では便宜上、開状態で示している。また、開閉体48は、電動モータ等からなる開閉駆動部49により開閉駆動されるようになっている。
【0044】
収納部45の下面45bには、搬送ロボット30を昇降用スペース41と階段ホール23との間で開口部47を通じて移動させる移動機構50が設けられている。そこで、以下では、この移動機構50について
図5に基づいて説明する。
図5は移動機構50を示す斜視図であり、(a)が移動機構50のアーム52が第1位置にある場合を示し、(b)がアーム52が第2位置にある場合を示し、(c)がアーム52が第3位置にある場合を示している。また、
図5(a)~(c)では、説明の便宜上、収納部45等、移動機構50以外の各部を二点鎖線で示している。
【0045】
図5(a)~(c)に示すように、移動機構50は、収納部45の下面45bに取り付けられた一対の案内レール51と、それら各案内レール51により案内可能に設けられた一対のアーム52とを備える。各案内レール51はいずれも収納部45の下面45bに沿ってL字状に延びており、開口部47の幅方向に離間して配置されている。各案内レール51は、開口部47の開口する開口方向(換言すると腰壁43の厚み方向)に延びる第1レール部51aと、第1レール部51aの反開口部47側の端部から開口部47の幅方向において互いに離間する側に延びる第2レール部51bとを有している。
【0046】
各アーム52は、搬送ロボット30を支持する支持手段である。移動機構50では、これら各アーム52により搬送ロボット30を支持した状態で、各アーム52を案内レール51に沿って移動させることにより搬送ロボット30を昇降用スペース41と階段ホール23との間で移動させるものとなっている。各アーム52は、棒材によりL字状に形成され、各案内レール51にそれぞれ吊り下げ状態で取り付けられている。
【0047】
各アーム52は、上下方向に延び上端部が案内レール51に取り付けられた取付部52aと、取付部52aの下端部から開口部47側に延び搬送ロボット30を支持する支持部52bとを有している。取付部52aは、案内レール51に取り付けられた状態で案内レール51に沿ってスライド可能とされ、そのスライドによりアーム52が案内レール51に沿って移動可能となっている。この場合、各アーム52は、向きを変えることなく案内レール51に沿って平行移動する。また、各アーム52の支持部52bは互いに平行に配置されている。
【0048】
各アーム52は、案内レール51において第2レール部51bの自由端に位置する第1位置(
図5(a)に示す位置)と、第1レール部51a及び第2レール部51bの境界部に位置する第2位置(
図5(b)に示す位置)と、第1レール部51aの自由端に位置する第3位置(
図5(c)に示す位置)との間で移動可能となっている。
【0049】
各アーム52が第1位置から第2位置に移動する際には各アーム52が開口部47の幅方向に互いに接近する。これにより、各アーム52が第2位置に位置する場合には各アーム52の間隔が小さくなるアーム閉状態となる(
図8(b)及び(f)参照)。一方、各アーム52が第2位置から第1位置に移動する際には各アーム52が開口部47の幅方向に互いに離間する。これにより、各アーム52が第1位置に位置する場合には各アーム52の間隔が大きくなるアーム開状態となる(
図8(a)及び(g)参照)。
【0050】
アーム閉状態では、各アーム52の間隔が搬送ロボット30の載置部32の外径よりも小さくなる。そのため、アーム閉状態では、各アーム52の支持部52bにより載置部32のフランジ部32aを引っ掛けて搬送ロボット30を支持することが可能となる(
図8(b)及び(f)参照)。また、アーム閉状態では、各アーム52が柱部35を挟んだ両側においてそれぞれ載置部32のフランジ部32aに引っ掛けられる。この場合、各アーム52はフランジ部32aにおいて柱部35を挟んだ両側に突出する各部分に引っ掛けられていることになり、それら突出する各部分がそれぞれ「突出部」に相当する。一方、アーム開状態(つまり第1位置)では、各アーム52の間隔が載置部32の外径よりも大きくなる。そのため、アーム開状態では、各アーム52による載置部32への引っ掛けが解除される(
図8(a)及び(g)参照)。
【0051】
このように、各アーム52が第1位置と第2位置との間で移動することにより、各アーム52がアーム開状態とアーム閉状態とに切り替わるようになっている。そして、昇降用スペース41において搬送ロボット30が伸長状態にある場合に、各アーム52がアーム開状態からアーム閉状態に切り替わると、各アーム52が載置部32のフランジ部32aに引っ掛けられ搬送ロボット30を支持する支持状態となり、各アーム52がアーム閉状態からアーム開状態に切り替わると、フランジ部32aに対する各アーム52の引っ掛けが解除され、各アーム52が搬送ロボット30を支持しない支持解除状態となる。
【0052】
各アーム52が第3位置に位置する場合には、各アーム52が第2位置に位置する場合よりも開口部47側に位置する(
図8(d)及び(e)参照)。各アーム52が第2位置と第3位置との間で移動する際には、各アーム52が互いの間隔を保持したまま、つまりアーム閉状態のまま、開口部47の開口方向に移動する。これにより、各アーム52が搬送ロボット30を支持した状態で第2位置と第3位置との間で移動することが可能となっており、それにより搬送ロボット30が昇降用スペース41と階段ホール23との間で開口部47を通じて移動されるようになっている(
図8(c)~(f)参照)。
【0053】
なお、各アーム52は、通常は第1位置に待機するようになっている。したがって、第1位置をアーム52の待機位置ということもできる。
【0054】
各アーム52は、電動モータからなるアーム駆動部55の駆動によって案内レール51に沿って移動されるようになっている。アーム駆動部55は、例えば収納部45の下面45b側に設けられている。
【0055】
続いて、アーム52の移動制御を行う制御システムについて
図6に基づき説明する。
図6はアーム52の移動制御を行う制御システムの電気的構成を示す図である。
【0056】
図6に示すように、建物10には、アーム52の移動制御を行うコントローラ60が設けられている。コントローラ60は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成され、例えば階段ホール23の壁面に設けられている。コントローラ60には、ロボット検知センサ57と荷重センサ58とが接続されている。ロボット検知センサ57は、アーム52の周辺に搬送ロボット30が存在することを検知するセンサであり、例えばアーム52の取付部52aに取り付けられている。また、荷重センサ58は、アーム52に作用する下向き荷重を検知するセンサであり、例えばアーム52を支持する案内レール51に取り付けられている。これらのセンサ57,58による検知結果は、逐次各センサ57,58からコントローラ60に出力される。
【0057】
コントローラ60には、開閉駆動部49とアーム駆動部55とが接続されている。コントローラ60は、ロボット検知センサ57及び荷重センサ58からの検知結果に基づいて、開閉駆動部49による開閉体48の開閉制御を行うとともに、アーム駆動部55によるアーム52の移動制御を行う。
【0058】
続いて、コントローラ60により実行されるアーム制御処理について
図7に示すフローチャートに基づき説明する。ここでは、一階部分11の居室にいる住人(例えば高齢者)が、二階部分12の階段ホール23に置かれている段ボール箱Nを当該居室まで搬送するよう搬送ロボット30に搬送指示を行い、その搬送指示に基づいてロボット制御部40が搬送ロボット30の移動制御を行うことを想定している。そこで、以下では、搬送ロボット30の移動の流れと合わせて、コントローラ60によるアーム制御処理について説明する。なお、アーム制御処理は所定の周期で繰り返し実行される。また、
図8には、搬送ロボット30がアーム52により昇降用スペース41と階段ホール23との間で移動される様子が示されており、以下においてはこの
図8を適宜参照しながら説明を行う。
【0059】
搬送ロボット30のロボット制御部40は、住人の搬送指示に基づき、搬送ロボット30の移動経路を決定する。ここでは、搬送ロボット30の移動経路として、搬送ロボット30が、「住人のいる居室→廊下21→昇降用スペース41→(段ボール箱Nが置かれている)階段ホール23→昇降用スペース41→廊下21→住人のいる居室」、の順に移動する経路を決定する。そして、ロボット制御部40は、この決定した移動経路に基づき、搬送ロボット30の移動制御を行う。
【0060】
この場合、まず搬送ロボット30は、一階床部17上を走行して居室から廊下21を経由して昇降用スペース41まで移動する。そして、昇降用スペース41に到達したら柱部35を伸ばして伸長状態に移行する。これにより、搬送ロボット30の載置部32が昇降用スペース41において二階部分12まで上昇する(
図8(a)参照)。また、この伸長状態において、搬送ロボット30は二階部分12において各アーム52の間に位置する。なお、このとき、各アーム52は第1位置(待機位置)に位置している。
【0061】
図7に示すように、アーム制御処理では、まずステップS11において、搬送ロボット30が昇降用スペース41において伸長状態(
図2(b)の状態)とされているか否かを判定する。この判定は、ロボット検知センサ57からの検知結果に基づいて行う。つまり、ロボット検知センサ57によりアーム52周辺に搬送ロボット30の存在が検知された場合には、搬送ロボット30が伸長状態とされて載置部32等がアーム52付近に存在するとみなすことができるため、この場合には搬送ロボット30が伸長状態とされていると判定する。この場合、ステップS12に進む。それに対して、ロボット検知センサ57によりアーム52周辺に搬送ロボット30の存在が検知されていない場合には、昇降用スペース41において伸長状態とされた搬送ロボット30は存在しないとみなすことができるため、この場合ステップS11の判定を否定して本処理を終了する。
【0062】
ステップS12では、開閉駆動部49を駆動して、開閉体48を開状態とする。これにより、
図8(a)に示すように、開口部47が開放される。
【0063】
続くステップS13では、アーム駆動部55を駆動することにより各アーム52を第1位置から第2位置へ移動させる。これにより、
図8(b)に示すように、各アーム52がアーム閉状態となり搬送ロボット30の載置部32のフランジ部32aに引っ掛けられる。そして、その引っ掛けにより搬送ロボット30が各アーム52により支持される。
【0064】
搬送ロボット30は、各アーム52により支持されると、伸長状態から通常状態(
図2(a)の状態)へ移行する。例えば、搬送ロボット30には、アーム52が接近したことを検知するアームセンサが内蔵され、ロボット制御部40はそのアームセンサによる接近検知に基づき、アーム52により支持されたことを判定する。そして、ロボット制御部40は当該判定がされたことに基づき、搬送ロボット30を伸長状態から通常状態へ移行させる。この場合、
図8(c)に示すように、搬送ロボット30は各アーム52により支持された状態で縮み、それにより搬送ロボット30全体が二階部分12に上昇する。
【0065】
続くステップS14では、搬送ロボット30が伸長状態から通常状態に移行したか否かを判定する。この判定は、荷重センサ58からの検知結果に基づいて行う。搬送ロボット30が伸長状態にある場合には搬送ロボット30が一階床部17上に載置された状態にあるため、アーム52には搬送ロボット30からの下向き荷重がそれほど作用しないのに対して、搬送ロボット30が伸長状態から通常状態に向けて縮み始めると搬送ロボット30が一階床部17から上方に離間されるため、アーム52には搬送ロボット30からの下向き荷重が大きく作用することになる。そこで、本ステップでは、荷重センサ58により検知される荷重が大きくなった場合に搬送ロボット30が通常状態に向けて縮み始めたと判定し、そして、その判定時から所定時間が経過したときに搬送ロボット30が通常状態に移行したと判定するようにしている。この場合、所定時間は、搬送ロボット30が伸長状態から通常状態に移行するのに要する時間又はそれよりも長めの時間に設定されている。搬送ロボット30が通常状態に移行した場合にはステップS15に進み、搬送ロボット30が通常状態に移行していない場合には移行するまで繰り返し本判定を行う。
【0066】
ステップS15では、アーム駆動部55を駆動することにより各アーム52を第2位置から第3位置へ移動させる。これにより、
図8(d)に示すように、各アーム52により支持された搬送ロボット30が昇降用スペース41から階段ホール23に開口部47を通じて移動される。また、この場合、搬送ロボット30は、階段ホール23の床部18上に載置される。
【0067】
搬送ロボット30は、階段ホール23の床部18上に載置されると走行を開始する。そこでステップS16では、搬送ロボット30が床部18上にて走行を開始したか否かを判定する。この判定は、荷重センサ58からの検知結果に基づいて行う。搬送ロボット30が走行を開始すると、各アーム52には搬送ロボット30からの下向き荷重が作用しなくなる。そこで本ステップでは、荷重センサ58により荷重が検知されなくなった場合に搬送ロボット30が走行を開始したと判定するようにしている。搬送ロボット30が走行を開始した場合にはステップS17に進み、搬送ロボット30が走行を開始していない場合には走行を開始するまで繰り返し本判定を行う。なお、搬送ロボット30が走行を開始した場合、各アーム52は第3位置において待機される。
【0068】
搬送ロボット30は、走行を開始すると階段ホール23の物置きスペースに移動し、同スペースに置かれた段ボール箱Nを受け取る。例えば、物置きスペースには物を移動させる移動装置が設置され、搬送ロボット30が物置きスペースに移動すると移動装置により自動で段ボール箱Nが載置部32上に載せられるようになっている。搬送ロボット30は段ボール箱Nを受け取ると、
図8(e)に示すように、再び各アーム52により引っ掛け支持される支持位置に戻る。
【0069】
ステップS17では、搬送ロボット30が各アーム52による支持位置まで戻ったか否かを判定する。この判定は、荷重センサ58からの検知結果に基づいて行う。搬送ロボット30が支持位置に戻ると、各アーム52には搬送ロボット30からの下向き荷重が作用する。そのため、本ステップでは、荷重センサ58により荷重が検知された場合に搬送ロボット30が支持位置に戻ったと判定するようにしている。搬送ロボット30が各アーム52による支持位置に戻った場合にはステップS18に進み、搬送ロボット30が支持位置に戻っていない場合には戻るまで繰り返し本判定を行う。
【0070】
ステップS18では、アーム駆動部55を駆動することにより各アーム52を第3位置から第2位置へ移動させる。これにより、
図8(f)に示すように、各アーム52により支持された搬送ロボット30が階段ホール23から昇降用スペース41に開口部47を通じて移動される。
【0071】
搬送ロボット30は、昇降用スペース41に移動すると、通常状態から伸長状態に移行する。これにより、
図8(g)に示すように、搬送ロボット30は各アーム52により支持された状態で本体部31が二階部分12から一階部分11に下降する。そして、本体部31は一階床部17の上に載置される。
【0072】
ステップS19では、搬送ロボット30が通常状態から伸長状態に移行したか否かを判定する。この判定は、荷重センサ58からの検知結果に基づいて行う。搬送ロボット30が伸長状態に移行した場合、つまり本体部31が一階床部17上に載置され荷重センサ58により検知される荷重が小さくなった場合にはステップS20に進む。一方、搬送ロボット30が伸長状態に移行していない場合には移行するまで繰り返し本判定を行う。
【0073】
ステップS20では、アーム駆動部55を駆動することにより各アーム52を第2位置から第1位置へ移動させる。これにより、
図8(h)に示すように、各アーム52がアーム開状態となり、それら各アーム52による載置部32のフランジ部32aへの引っ掛けが解除される。つまり、各アーム52による搬送ロボット30の支持が解除される。これにより、搬送ロボット30は、伸長状態で一階床部14上に自立した状態とされる。
【0074】
続くステップS21では、開閉駆動部49を駆動して、開閉体48を閉状態とする。これにより、開口部47が閉鎖される。その後、本処理を終了する。
【0075】
搬送ロボット30は、その後、伸長状態から通常状態に移行する。これにより、搬送ロボット30は昇降用スペース41において二階部分12から一階部分11に下降する。その後、搬送ロボット30は、一階床部17上を走行して昇降用スペース41から廊下21を経由して住人のいる居室に移動する。これにより、搬送ロボット30により段ボール箱Nが住人のもとへ搬送される。
【0076】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0077】
一階部分11と二階部分12とに跨がる階段空間15において階段16が設置されていない非設置スペース15aを利用して搬送ロボット30の昇降用スペース41を形成し、その昇降用スペース41を通じて搬送ロボット30を一階部分11と二階部分12との間で昇降させるようにした。また、二階部分12には昇降用スペース41と階段ホール23との間を仕切る腰壁43に開口部47を形成し、その開口部47を通じて搬送ロボット30を昇降用スペース41と階段ホール23との間で移動させるようにした。これにより、本建物10では、建物10内の階段空間15を利用して、搬送ロボット30を一階床部17と二階床部18との間で移動させることができる。その結果、搬送ロボット30を一階部分11と二階部分12との間で昇降させるための専用の昇降スペース(吹き抜け空間)を建物10内に別途設ける必要がない。よって、建物10内のプランニングに制約が生じるのを抑制しながら、搬送ロボット30を一階部分11と二階部分12との間で移動させることが可能となる。
【0078】
搬送ロボット30をその伸縮機能(昇降手段)により昇降用スペース41において一階部分11と二階部分12との間で昇降させ、二階部分12においては移動機構50により昇降用スペース41と階段ホール23との間で移動させるようにした。例えば、搬送ロボット30を昇降用スペース41の一階床部17上と階段ホール23の二階床部18上との間で移動させる移動機構を建物10に設けることも考えられるが、その場合、移動機構の構成が著しく煩雑となることが考えられる。その点、搬送ロボット30の伸縮機能と移動機構50とにより搬送ロボット30を移動させる上記の構成では、移動機構50の構成が煩雑となるのを抑制しながら、搬送ロボット30を一階床部17と二階床部18との間で移動させることが可能となる。
【0079】
また、搬送ロボット30の伸縮機能により搬送ロボット30を昇降用スペース41において一階部分11と二階部分12との間で昇降させるようにしたことで、建物10側に昇降手段を設ける必要がなく、建物10側の構成を簡素化することができる。また、昇降用スペース41に昇降手段を設ける必要がないため、住人等が昇降用スペース41を通るに際し昇降手段が邪魔になるといった不都合が生じることがない。
【0080】
腰壁43の上方において昇降用スペース41側に張り出した収納部45の下面45bに移動機構50を取り付けた。これにより、収納部45を利用して移動機構50を安定した状態で取り付けることができるとともに、移動機構50を収納部45により目立ちにくくすることができる。
【0081】
一対のアーム52を搬送ロボット30の載置部32のフランジ部32aに引っ掛けることにより搬送ロボット30を支持するようにした。具体的には、載置部32のフランジ部32aにおいて柱部35を挟んだ両側に突出する各部分に一対のアーム52をそれぞれ引っ掛けることで搬送ロボット30を支持するようにした。この場合、一対のアーム52により搬送ロボット30を両側から支持することができるため、搬送ロボット30を安定した状態で支持することが可能となる。また、一対のアーム52により搬送ロボット30を引っ掛け支持する構成では、例えば一対のアームにより搬送ロボット30を挟持して支持する構成と比べ、搬送ロボット30の位置が多少ばらついても搬送ロボット30を支持することが可能である。そのため、搬送ロボット30を安定した状態でかつ確実に支持することが可能となる。
【0082】
載置部32のフランジ部32aに各アーム52を引っ掛けて搬送ロボット30を支持するようにしたため、載置部32を物を載置するだけでなくアーム52の引っ掛け部としても利用することができる。
【0083】
一階部分11では昇降用スペース41に隣接して廊下21を設け、二階部分12では昇降用スペース41に隣接して階段ホール23を設けた。廊下21及び階段ホール23はいずれも非居室空間であるため、昇降用スペース41に隣接して居室が設けられる場合と比べ、移動機構50による搬送ロボット30の移動に際し、住人が気になるといった不都合が生じるのを抑制することができる。
【0084】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0085】
(1)移動機構の変形例を
図9に示す。
図9に示す移動機構70は、上記実施形態の移動機構50と同様、一対の案内レール71と一対のアーム72とを備えている。各案内レール71は開口部47の開口方向に互いに平行に延びている。また、各アーム72は、上記実施形態のアーム52と同様、取付部72aと支持部72bとを有してL字状に形成されている。各アーム72は、案内レール71に沿って移動可能となっているとともに、上下に延びる取付部72aを中心として回動可能とされている。
【0086】
図9(a)には各アーム72が第1位置にある場合を示しており、
図9(b)には各アーム72が第2位置にある場合を示しており、
図9(c)には各アーム72が第3位置にある場合を示している。
図9(a)に示すように、各アーム72が第1位置にある場合には各アーム72の支持部72bが開口部47の開口方向に互いに平行に延びている。この場合、各アーム72はアーム開状態となっている。
【0087】
図9(b)に示すように、各アーム72が第1位置から第2位置に移動する際には、各アーム72が取付部72aを中心として内側に回動する。つまり、各アーム72の支持部72bが互いに接近するように各アーム72が回動する。そのため、各アーム72が第2位置に位置する場合には、各アーム72がアーム開状態よりも互いに接近したアーム閉状態となっている。これにより、本移動機構70においても、各アーム72が第1位置と第2位置との間で移動することにより、各アーム72がアーム開状態とアーム閉状態とに切り替えられる。このため、この切り替えにより、各アーム72による載置部32のフランジ部32aへの引っ掛け及び引っ掛け解除を行うことが可能であり、ひいては各アーム72による搬送ロボット30の支持及び支持解除が可能となっている。
【0088】
図9(c)に示すように、各アーム72が第2位置と第3位置との間で移動する際には、各アーム72が案内レール71に沿って平行移動する。そのため、各アーム72はアーム閉状態を維持したまま第2位置と第3位置との間で移動する。これにより、本例の移動機構70によっても、各アーム72を第2位置と第3位置との間で移動させることにより、各アーム72に支持された搬送ロボット30を昇降用スペース41と階段ホール23との間で開口部47を通じて移動させることができる。
【0089】
(2)上記実施形態では、各アーム52により搬送ロボット30を引っ掛け支持する構成としたが、各アームにより搬送ロボット30を挟持して支持する構成としてもよい。例えば、各アームにより搬送ロボット30の柱部35を挟持することにより搬送ロボット30を支持する構成が考えられる。
【0090】
(3)上記実施形態では、建物10に張出部として収納部45が設けられていたが、張出部として机や置き台等が設けられている場合もある。この場合にも、移動機構50を張出部の下面に取り付けるようにすればよい。
【0091】
(4)上記実施形態の建物10では、階段ホール23と昇降用スペース41との間に腰壁43が設けられ、その腰壁43の上方に収納部45が設けられていたが、建物によっては階段ホール23と昇降用スペース41との間に階段ホール23の床面から天井面に亘って上下に延びる間仕切壁(仕切壁に相当)が設けられ、収納部等の張出部が設けられていない場合もある。このような建物においては、間仕切壁に搬送ロボット30を移動させるための開口部を形成し、間仕切壁における昇降用スペース41側の面に移動機構を取り付けるようにすればよい。この場合、移動機構は間仕切壁から昇降用スペース41に張り出すようにして配置される。
【0092】
(5)上記実施形態では、搬送ロボット30が自身の伸縮機能により、昇降用スペース41において一階部分11と二階部分12との間で昇降する構成となっていたが、建物10側の昇降用スペース41に搬送ロボット30を一階部分11と二階部分12との間で昇降させる昇降手段を設けるようにしてもよい。この場合、搬送ロボットには伸縮機能を不具備とすることができる。
【0093】
かかる昇降手段としては、例えば昇降用スペース41に一階部分11と二階部分12とに跨がって上下に延びるポール等の棒状体を設けることが考えられる。この場合、上述した特許文献1の技術と同様、棒状体に沿って搬送ロボットを上下方向に走行可能とし、その走行により搬送ロボットが昇降用スペース41において一階部分11と二階部分12との間で昇降するようにすることが考えられる。
【0094】
かかる構成では、搬送ロボットが昇降用スペース41において棒状体に沿って一階部分11から二階部分12に上昇すると、各アーム52により搬送ロボットが支持され、その支持状態で搬送ロボットが昇降用スペース41から階段ホール23に移動される。また、搬送ロボットが各アーム52により支持された状態で階段ホール23から昇降用スペース41に移動されると、搬送ロボットが棒状体に支持されるとともに各アーム52による支持が解除される。その後、搬送ロボットは棒状体に沿って二階部分12から一階部分11に下降する。
【0095】
また、昇降手段としては、その他に、昇降用スペース41において一階床部17の床面上と二階部分12との間で昇降可能な昇降台を設けることが考えられる。この場合、搬送ロボットが昇降台の上に載った状態で昇降台を昇降させることにより、搬送ロボットが昇降用スペース41にて一階部分11と二階部分12との間で昇降することになる。
【0096】
(6)上記実施形態では、搬送ロボット30を二階部分12において昇降用スペース41と階段ホール23との間で移動させる移動機構50を設けたが、かかる移動機構に代えて、搬送ロボット30を昇降用スペース41における一階床部17上と階段ホール23との間で直接移動させる移動装置を設けてもよい。この場合、かかる移動装置により、搬送ロボットは昇降用スペース41において一階部分11と二階部分12との間で昇降するとともに、二階部分12において昇降用スペース41と階段ホール23との間で移動することになる。かかる移動装置としては、例えば、上記実施形態の移動機構50と同様、搬送ロボットを支持するアームと、そのアームを案内する案内レールとを有する構成のものが考えられる。
【0097】
(7)上記実施形態では、開口部47を開閉する開閉体48を設けたが、開閉体48を設けずに開口部47を常時開放させたままとしてもよい。その場合、開閉体48に加え開閉駆動部49も不具備とすることができ、構成の簡素化を図ることができる。ただし、この場合、開口部47を通じて物等が落下するおそれがあるため、その点を鑑みると開閉体48を設けるのが望ましい。
【0098】
(8)例えば、建物10の新築時には建物10に搬送ロボット30を導入する予定はないが、将来的に導入する予定がある場合には建物10の新築時に移動機構50を予め収納部45に取り付けておくようにしてもよい。この場合、搬送ロボット30を導入する際に、腰壁43に開口部47を形成する作業を行うだけでよく、搬送ロボット30の導入作業を容易にすることができる。
【0099】
(9)搬送ロボット30の構成は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば、搬送ロボット30に可動式のアームを設け、そのアームにより搬送する物を搬送ロボット30自らがつかんで載置部32に載せるようにしてもよい。
【0100】
(10)上記実施形態では、建物10に走行体として物を搬送する搬送ロボット30を設けたが、走行体として建物10内の掃除を行う掃除ロボット等、他の用途を有するロボットを設けてもよい。例えば、建物10に掃除ロボットを設ける場合、掃除ロボットには載置部32(フランジ部32a)が設けられていないため、掃除ロボットに互いに反対側に向けて側方に突出する一対の突出部を設け、それら各突出部に一対のアーム52を引っ掛け掃除ロボットを支持するようにする必要がある。
【0101】
(11)上記実施形態では、二階部分12において昇降用スペース41と開口部47を介して連続する上階隣接空間が階段ホール23となっていたが、上階隣接空間は必ずしも階段ホール23である必要はなく例えば居室であってもよい。また、上記実施形態では、一階部分11において昇降用スペース41と連続する空間が廊下21となっていたが、例えば当該連続する空間が居室であってもよい。
【0102】
(12)上記実施形態では、階段空間15に、階段16として廻り階段が設けられていたが、例えば
図10に示すように、階段として、らせん階段81が設けられている場合もある。そこで、かかる場合に本発明を適用してもよい。
図10の例では、平面視におけるらせん階段81の内側に上下方向に延びるスペース82が存在している。このスペース82は、階段空間15においてらせん階段81が設置されていない非設置スペースの一部を構成している。そこで、かかるスペース82を搬送ロボット30の昇降用スペース83として用いるようにしてもよい。
【0103】
(13)上記実施形態では、二階建ての建物10に本発明を適用したが、三階建て以上の建物に本発明を適用してもよい。この場合にも、上下に隣接する下階部及び上階部の間で搬送ロボット30を移動させるに際し、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
10…建物、11…下階部としての一階部分、12…上階部としての二階部分、15…階段空間、15a…非設置スペース、16…階段、23…上階隣接空間としての階段ホール、30…走行体としての搬送ロボット、31…本体部、32…載置部、35…柱部、41…昇降用スペース、43…仕切壁としての腰壁、45…張出部としての収納部、45b…下面、47…開口部、50…移動機構、52…アーム。