(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】スプールを制動する制動装置及びこれを備えた魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20240611BHJP
A01K 89/017 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A01K89/015 B
A01K89/017
(21)【出願番号】P 2021137785
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-001575(JP,U)
【文献】特開平01-086826(JP,A)
【文献】実開平02-093966(JP,U)
【文献】実開昭58-053563(JP,U)
【文献】米国特許第02528271(US,A)
【文献】特開2004-208633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両軸受リールのリール本体に回転自在に装着されたスプールを制動する両軸受リールの制動装置であって、
該スプールに取り付けた被制動部と、該被制動部に制動力を与える制動部と、回動角度に応じて該制動部の制動力を調整する出力軸と、該出力軸を正逆方向に駆動可能なモータと、該モータから該出力軸に減速して力を伝える減速機構と、該モータを制御する制御部と、該モータに給電する電源と、を備えた制動装置であって、
該モータと、該減速機構と、該制御部と、該電源とを水密して収納する水密ケースと、該出力軸に防水のための防水部と、を備えた両軸受リールの制動装置。
【請求項2】
前記被制動部は、導体であり、前記制動部は永久磁石によって構成される磁気回路であり、
前記出力軸は、該磁気回路の少なくとも一部を移動させることで、該導体への磁場を変化させることを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
【請求項3】
前記被制動部は摩擦部材であり、前記制動部は、該摩擦部材へ接触力を伝達する摩擦制動部であり、前記出力軸は、回転に応じて接触力を変化させることを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
【請求項4】
前記水密ケースは、前記スプールの回転を検出する回転検出部、前記減速機構の減速ギヤの位置を検出する位置検出部、又は前記
両軸受リールのクラッチの状態を検出するクラッチ状態検出部の内の少なくともいずれかをさらに収納することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の制動装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の制動装置を備える
両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機構を備えた、制動装置、特に、リール本体に回転自在に装着されたスプールを制動する両軸受リールの制動装置及びこれを備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、両軸受リール、特に、釣り糸の先端にルアー等の仕掛けを装着して投擲(キャスティング)するベイトキャスティングリールには、投擲(キャスティング)時のバックラッシュを防止するためにスプールを制動する制動装置が設けられている。
【0003】
この種の制動装置には、電気的に制動力を調整可能なものがある。特許文献1では、リール本体に回転自在に装着されたスプールを制動する両軸受リールの制動装置であって、回転方向に並べて配置され極性が交互に異なる複数の磁極を有し前記スプールに連動して回転する回転子、前記回転子の周囲に周方向に間隔を隔てて前記リール本体に装着され直列接続された複数のコイル、及び直列接続された前記複数のコイルの両端に接続されたスイッチ手段を有し、前記スプールを制動するスプール制動手段と、前記リール本体に装着され前記複数のコイルが取り付けられた回路基板及び前記回路基板に搭載された制御素子を有し、前記スプール制動手段を電気的に制御するスプール制御手段と、前記コイルを被覆する絶縁体製の第1合成樹脂被膜と、前記スプール制御手段を被覆する絶縁体製の第2合成樹脂被膜と、を備えた両軸受リールの制動装置が開示されている。このような制動装置では、制動力を電気的に制御する回路部の防水を実現するために、コイルや回路を防水構造の中に収納することで、制御回路の防水を実現していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、スプールに制動力を与える原理としては、いわゆる発電ブレーキと呼ばれるものである。すなわち、スプールに設けた磁石と、ステータに設けたコイルとの発電効果により、運動エネルギーを電気的エネルギーに変換している。
【0006】
他方、スプールに制動力を与える原理としては、他に渦電流式ブレーキや、摩擦ブレーキといったものが考案されている。渦電流式ブレーキでは、スプールに設けた導電部材へ、ステータに設けた永久磁石等による磁気回路から磁場を与えることで、渦電流を発生させることで制動力を付与する。摩擦ブレーキでは、スプールに設けた制動部に、外部から接触力を与えることでクーロン摩擦力を発生させることで制動力を付与する。
【0007】
これらの原理を用いた制動装置は、発電ブレーキ式よりもスプールの低イナーシャ化が図れる、制御回路が断線したときでも制動力を発生させることができるといった、発電ブレーキ式にはない有利な特徴を有している。しかしながら、これらの方式によって電気的に制動力を制御するには、水密構造の外部に機械的な力を伝達する必要があり、防水構造の実現が難しかった。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発電ブレーキ式以外の方式による制動装置の防水構造を実現したことができる制動装置及びこれを備えた魚釣用リールを提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置は、リール本体に回転自在に装着されたスプールを制動するものであり、該スプールに取り付けた被制動部と、該被制動部に制動力を与える制動部と、回動角度に応じて該制動部の制動力を調整する出力軸と、該出力軸を正逆方向に駆動可能なモータと、該モータから該出力軸に減速して力を伝える減速機構と、該モータを制御する制御部と、該モータに給電する電源と、を備えた制動装置であって、該モータと、該減速機構と、該制御部と、該電源とを水密して収納する水密ケースと、該出力軸に防水のための防水部と、を備えるように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置において、前記被制動部は、導体であり、前記制動部は永久磁石によって構成される磁気回路であり、前記出力軸は、該磁気回路の少なくとも一部を移動させることで、該導体への磁場を変化させる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置において、前記被制動部は摩擦部材であり、前記制動部は、該摩擦部材へ接触力を伝達する摩擦制動部であり、前記出力軸は、回転に応じて接触力を変化させる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置において、前記水密ケースは、前記スプールの回転を検出する回転検出部、前記減速機構の減速ギヤの位置を検出する位置検出部、又は前記魚釣用リールのクラッチの状態を検出するクラッチ状態検出部の内の少なくともいずれかをさらに収納するように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、上記いずれかの両軸受リールの制動装置を備えるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
上記実施形態によれば、電気的に制動力を調整可能な制御回路の防水を実現することができる制動装置及びこれを備えた魚釣用リールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る制動装置を備える魚釣用リールにおける防水構造を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る制動装置又は魚釣用リールにおける制動装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る制動装置又は魚釣用リールにおける制動装置の構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る制動装置又は魚釣用リールにおける制動装置の構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る制動装置を備える魚釣用リールの断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る制動力制御装置及びこれを備える魚釣用リールの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0017】
図1から5を参照して、本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置及びこれを備える魚釣用リールについて説明する。
【0018】
まず、
図1は、本発明の一実施形態に係る制動装置10を備える魚釣用リール1における防水構造を説明するための模式図であり、
図5は、当該防水構造を説明するための、本発明の一実施形態に係る制動装置10を備える魚釣用リール1の断面図である。
【0019】
図1及び5に示すように、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール1は、フレーム(リ
ール本体)2と、スプール3と、被制動部(被制動手段)4と、制動部(制動手段)5と
、出力部材(出力手段ないし出力機構)6と、出力軸7と、防水部(防
水手段ないし防水
部材)8と、水密ケース(防水ケース)9と、減速ギヤ11を含む減速機構12と、モー
タ13と、基板14と、電池15とから構成される。
【0020】
ここで、スプール3は、リール本体2に対して回転可能に支持され、正方向に回転することで外周に釣糸を巻き取ることができる。また、ルアー等を投擲する際は、逆方向に回転することで、巻回された釣糸を放出することができる。この時に釣糸の放出量が多すぎると、バックラッシュと呼ばれる糸絡みが発生し、魚釣用リール1の正常な使用を妨げる。後述する制動部5で適切な制動力を付与することにより、バックラッシュを防止することができる。
【0021】
被制動部4は、スプール3に固定され、制動部5により制動力を受ける。出力部材6は、制動部5の少なくとも一部を回動させることで、制動部5が被制動部4に与える制動力を調整することができる。その構造は制動部の方式によって異なるため、詳細は後述する。出力部材6は出力軸7を中心軸として回転自在に支持される。出力軸7の一端ないし一部(第1の部分)は、後述の水密ケース9内に収納され、出力軸7の他端ないし一部(第2の部分)は水密ケース外に配置される。
【0022】
出力軸7が水密ケース9を貫通する箇所には、防水部材8を設けることで、水密ケース9内の防水を行うことができる。防水部材8としては、Oリング等の防水パッキンや、磁性流体を用いた防水シールなどの公知の手段により、出力軸の回転支持と、水密ケースの防水を両立させるようにすることができる。防水部材8はこれらに限られず、その他の公知の技術を用いることができる。
【0023】
ここで、モータ13は、コストや体積を考慮して、防水機能なしのモータを使用している。通常、モータ13に防水処理を施しても、モータ13の本体と軸芯との隙間は防水が難しい。この隙間を狭くする、Oリング等の防水手段を設けることで、防水性を高めることは可能であるが、その分、本体と軸芯との間で生じる摩擦により、トルクの損失が発生するため、防水性とトルクとの関係はトレードオフの関係にある。この問題を解決するため、モータの軸芯と出力軸7との間に減速ギヤ11を設置している。これにより、防水部8が施されたことによるトルクの損失を減速ギヤ11で補填することにも繋がる。さらには、より少ない電力で被制動部4を制動することも可能となる。
【0024】
出力軸7は、減速ギヤ11などの減速機構12を介してモータ13より動力伝達を受ける。モータ13は、マイコンやモータドライバを有する基板14と電気的に接続され、必要に応じて正逆回転の指令を受け、出力軸7を所定位置に位置決めすることができる。このとき、減速ギヤ11の一部に位置センサ(図示しない)を設け、その出力信号をマイコンで受け取ることで、モータ13をフィードバック制御できるように構成してもよい。また、電池15は、モータ13や制御回路への給電を行う。
【0025】
水密ケース9は、例えば、箱部材16と、蓋部材17とにより構成され、箱部材16と蓋部材17を密閉して固定することにより、内部に収納する構成部品を水やその他の物質の内部への侵入を防ぐ。水密ケース9が、箱部材16と蓋部材17とから構成される場合、箱部材16と蓋部材17との接続部は、Oリングなどのパッキン部材や、防水両面テープ、レーザ溶着部、印籠構造や防水グリス等によって実現される防水接合部材(防水接合手段)を全周にわたって閉ループとして設けることにより、ループ内への外部からの水やその他の物質の侵入を防ぐようにしてもよい。このようにして形成した内部空間に、モータ13、減速ギヤ11、基板14、及び電池15を内部に収納するようにすることができる。当該内部空間に、既述の減速ギヤの位置を検出する位置センサや、スプールの回転を検出する回転センサを配置するようにしてもよい。これにより、防水処理が必要な複数の部品を一つの水密構造内に収納することができるため、装置全体の大型化を避けることができる。
【0026】
次に、
図2から4を参照して、本発明の一実施形態に係る制動装置10又は魚釣用リール1における制動装置10の構成について説明する。
図2に示す例は、制動装置10として渦電流式ブレーキを用いた場合である。この例では、制動部5は、回転磁石18と固定磁石19とで構成され、回転磁石18と固定磁石19とは磁気回路を形成し、当該磁気回路で生成された磁場は、導体で構成されるインダクトロータ(被制動部)4を貫通する。インダクトロータ4は、スプール3に取り付けられ、磁場の強さとスプール3の回転速度に比例した制動力が生じる。出力部材6として、例えば、ギヤ等を設けることで、上述の出力軸からの回転力を回転磁石18に伝達することで、回転磁石18を回転させることができる。このようにして回転磁石18を所定の位置に移動(回転により
図2(a)から
図2(b)の状態へ移動)させることで、スプール3への制動力を調整することができる。
【0027】
次に、
図3に示す例は、制動装置10として摩擦式ブレーキを用いた場合である。図示のように、出力部材6(ないし出力軸7)の先端に、制動部材5(例えば、弾性摩擦部材)が設けられている。制動部材5は、スプール3に取り付けられた被制動部4に接触可能である。出力部材6(ないし出力軸7)を回動させると、その移動量に応じて制動部材5は被制動部4に接触するため、制動部材5は弾性変形する。被制動部4と制動部材5の間には、弾性変形量に応じた反力が接触力として働く。これにより、スプール3には摩擦力が発生する。ここで、出力部材6(ないし出力軸7)の回転移動量と、スプール3に与える摩擦力は比例する。このようにして、出力部材6(ないし出力軸7)を所定の位置に移動(回動)させることで、スプール3への制動力を調整することができる。
【0028】
次に、
図4に示す例は、制動装置10として磁気粘性流体式ブレーキを用いた場合である。図示のように、スプール3へは円筒状の被制動部4(図示は被制動部4の断面のため円状)が設けられている。被制動部4は、磁気粘性流体(MR流体)が充填された空間20に配置されることで、磁気粘性流体から粘性抵抗を受ける。磁気粘性流体は、磁場に応じて粘度を変える。前述と同様、回転磁石21と固定磁石22とで磁気回路が形成されており、当該磁気回路で作られた磁場は磁気粘性流体を貫通する。出力部材6が回転することで、回転磁石21を回転させることができる。出力部材6を所定の位置(回転により
図4(a)から
図4(b)の状態へ移動)に移動(回動)させることで、スプール3への制動力を調整することができる。なお、被制動部4は、磁気回路改善のために強磁性材料で構成されることが望ましいが、非磁性材料であっても構わない。
【0029】
本発明の一実施形態に係る制動装置10又は魚釣用リール1における制動装置10では、モータで出力部材を回動させ、その回動量に応じて制動手段の制動力を調整している。すなわち、渦電流式ブレーキの磁気回路の一部を構成する永久磁石を回動させたり、摩擦式ブレーキの制動部材を回動させたりすることで、スプールに働く制動力を調整することができる。このように、出力部材から機械的な伝達力を伝えることができるので、様々な方式のキャスティングブレーキに用いることができる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る制動装置10又は魚釣用リール1における制動装置10では、出力部材が水密構造外に配置されるので、制動部内には水が入ってもよく、制動部自体は防水構造のレイアウト制限を受けない。例えば、渦電流式ブレーキ内を防水する場合、回転磁石とインダクトロータの間に防水壁を設けるような構造はあり得るが、その場合はインダクトロータと回転磁石の間のギャップが広くなるため、インダクトロータへの磁場が弱くなり、制動力を強めることが困難となり得る。
【0031】
渦電流式や摩擦式などの制動方式は、制御回路が断線した場合でも、制動力を与えることができ、また、スプールに磁石を設ける必要がなく低イナーシャ化が可能であるため、軽量ルアーを投げるときに特に有利となり、さらに、スプールの回転数に依存しない制動力を付与できる(摩擦式ブレーキ)等、発電式ブレーキにはみられない特徴を備えている。また、それらの制動方式を電気的に制御可能にすると、投擲(キャスト)の途中で随時制動力を調整可能であり、また、制動力の変動をメモリ等に保存可能であるといった利点がある。
【0032】
また、パッキン等による防水部(防水手段)は、一般的に防水能力を増やすほど、出力軸が回転するときに発生する摩擦抵抗は大きくなる。本発明の一実施形態に係る制動装置10又は魚釣用リール1における制動装置10では、モータの動力は、減速ギヤにより倍力してから出力軸に伝え、その先の出力軸に防水手段を設けている。これにより、防水手段によって生じる摩擦抵抗がモータに与える影響は、減速比分の1となる。従って、モータは摩擦抵抗に打ち勝って、安定して出力軸を回動させることができ、また、より小型のモータを使うことができるため、消費電力を小さくすることができるといった技術的効果を奏する。また、本発明の一実施形態に係る制動装置10又は魚釣用リール1における制動装置10では、1ユニット内に基板、モータ、ギヤが収まるので、リールの大型化を招かないという利点もある。
【0033】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置は、リール本体に回転自在に装着されたスプールを制動するものであり、該スプールに取り付けた被制動部と、該被制動部に制動力を与える制動部と、回動角度に応じて該制動部の制動力を調整する出力軸と、該出力軸を正逆方向に駆動可能なモータと、該モータから該出力軸に減速して力を伝える減速機構と、該モータを制御する制御部と、該モータに給電する電源と、を備えた制動装置であって、該モータと、該減速機構と、該制御部と、該電源とを水密して収納する水密ケースと、該出力軸に防水のための防水部と、を備えるように構成される。
【0034】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置によれば、電気的に制動力を調整可能な制御回路の防水を実現することが可能となる。より具体的には、水密構造の外部に機械的な力を伝達する制動装置を用いても、装置の大型化を避けながら防水を実現することが可能となる。
【0035】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置において、前記被制動部は、導体であり、前記制動部は永久磁石によって構成される磁気回路であり、前記出力軸は、該磁気回路の少なくとも一部を移動させることで、該導体への磁場を変化させる。このようにして、装置全体の大型化を避けながら、渦電流式ブレーキでの防水が可能となる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置において、前記被制動部は摩擦部材であり、前記制動部は、該摩擦部材へ接触力を伝達する摩擦制動部であり、前記出力軸は、回転に応じて接触力を変化させる。このようにして、装置全体の大型化を避けながら、摩擦式ブレーキでの防水が可能となる。
【0037】
ここで、フレーム(リール本体)2は、釣竿に取り付け可能であり、魚釣用リール1は、従来の魚釣り用リールと同様、図示しない操作手段(ハンドル)を有し、ユーザの操作によってスプール3を正方向回転させると、釣糸を巻き取ることができる。ハンドル(図示しない)の回転は、ギヤ等の伝達手段によってスプール3に伝達される。魚釣用リール1は、クラッチ手段(図示しない)を有し、ユーザはクラッチ手段を操作することで、スプール3への動力伝達の接続・解放を選択することができる。接続状態では操作手段による巻き取りが可能である。開放状態ではスプール3を正逆方向に自由に回転させることができ、釣糸は放出可能となる。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る制動装置10又は魚釣用リール1における制動装置10では、クラッチ手段の状態を検出するクラッチ状態検出部(クラッチ状態検出手段)を設け、クラッチが接続状態から解放状態に切り替わった際にキャスト準備をしたと見做すようにしてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態に係る両軸受リールの制動装置において、前記水密ケースは、前記スプールの回転を検出する回転検出部、前記減速機構の減速ギヤの位置を検出する位置検出部、又は前記魚釣用リールのクラッチの状態を検出するクラッチ状態検出部の内の少なくともいずれかをさらに収納するように構成される。このようにして、防水処理が必要な複数の部品を一つの水密構造内に収納することができるため、装置全体の大型化を避けることが可能となる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、上記いずれかの両軸受リールの制動装置を備えるように構成される。本発明の一実施形態に係る制動装置を備える魚釣用リールによれば、電気的に制動力を調整可能な制御回路の防水を実現することが可能となる。より具体的には、水密構造の外部に機械的な力を伝達する制動装置を用いても、装置の大型化を避けながら防水を実現するリールを提供することが可能となる。
【0041】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 魚釣用リール
2 フレーム(リール本体)
3 スプール
4 被制動部(被制動手段)
5 制動部(制動手段)
6 出力部材(出力手段ないし出力機構)
7 出力軸
8 防水部(防水手段ないし防水部材)
9 水密ケース(防水ケース)
10 制動装置
11 減速ギヤ
12 減速機構
13 モータ
14 基板
15 電池
16 箱部材
17 蓋部材
18 回転磁石
19 固定磁石
20 空間
21 回転磁石
22 固定磁石