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  • 特許-エンジン構成部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】エンジン構成部材
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20240611BHJP
   G01M 15/02 20060101ALI20240611BHJP
   G01M 15/09 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01M3/26 C
G01M15/02
G01M15/09
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021192117
(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公開番号】P2023078822
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】小西 健也
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-105678(JP,A)
【文献】実開昭52-168110(JP,U)
【文献】特開平07-042612(JP,A)
【文献】特開平07-092053(JP,A)
【文献】特開2002-328066(JP,A)
【文献】特開平09-159566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0011323(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102353501(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00 - 11/00
G01M 3/00 - 3/40
G01M 15/00 - 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞部を有して一端面に複数のボス部が同じレイアウトで配置されている複数種類のエンジン構成部材であって、
前記複数のボス部のうち特定箇所の一部のボス部は各部材とも開口して、他のボス部については開口した部材と閉塞した部材とがあり、前記閉塞したボス部を閉塞していない他のボス部よりも突出高さが低くすることにより、
前記空洞部を加圧状態又は減圧状態にして圧漏れを検査する検査装置のパッド部を前記一端面に重ねたとき、前記一部のボス部と開口した他のボス部とは前記パッド部で塞がれて、前記閉塞した他のボス部と前記パッド部との間には隙間が空くように設定されている、
エンジン構成部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドのように空洞部を有するエンジン構成部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドは内部にウォータジャケット等の空洞が形成された中空構造になっており、一般に鋳造によって製造されている。しかし、鋳造品は鋳型内で金属湯が十分に行き渡らずに気泡が残っていわゆる巣ができたり、収縮等によって亀裂が走ったりすることがある。そして、ウォータジャケットの箇所に巣があると、冷却水漏れが発生するおそれがある。排気通路やオイル通路も同様であり、これらの箇所に巣があると、排気ガスの漏洩やオイルの漏洩が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、製品の検査の一環として、シリンダヘッドの内部に加圧空気を吹き込んで、空気の漏れを測定することによって巣の有無(気密性)を検知することが行われており、そのための検査装置の例が特許文献1に開示されている。
【0004】
シリンダヘッドの外面には空洞部に連通した多数の穴が外向きに開口しているが、巣の有無の検査では、一部の面の穴を除いてパッド材で塞いで、一部の面に重ねた装置から特定の穴を介して加圧空気を空洞部に吹き込んでいるが、穴のレイアウトは機種によってまちまちであることから、特許文献1では、旋回装置に複数のシール治具を設けて、各機種に応じて特定のシール治具を選択して検査するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平07-92053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、空洞部を有する鋳造製のエンジン構成部材は多々あるが、例えばシリンダヘッドについて見ると、一般に、ミッションケースに近い後部に配水部が形成されており、ラジエータへの送りポートや、ウォータポンプへの戻りポートなどが配置されており、これらのポートはボス部に形成されているが、例えば、ボス部のレイアウトは共通化しつつポートが開口したり閉塞したりしていることが有り得る。すなわち、開口したボス部と閉塞したボス部とを同じ箇所に設けた複数種類のシリンダヘッドが用意されていることが有り得る。
【0007】
例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドにおいて、車内暖房用のヒータが必要な国内用エンジンと、車内暖房用のヒータが不要な東南アジア用エンジンとでシリンダヘッドを共通化して、国内用エンジンのシリンダヘッドで特定のヒータ用ボス部を開口し、東南アジア用エンジンのシリンダヘッドではヒータ用ボス部は閉塞して機能を停止することがある。
【0008】
或いは、ハイブリッド化に際してシリンダヘッドの後ろにパワーユニットを配置する ために、シリンダヘッドの後ろに配管のスペースが無くなって、特定のボス部を閉塞させてポートはシリンダヘッドの側面(一般に排気側面)に開口させることが有り得る。すなわち、ハイブリッド車と非ハイブリッド車とでシリンダヘッドを共通化するため、特定のボス部を開口させたり閉塞したりすることがある。
【0009】
このように、基本的構造は共通化しつつ仕様が異なるシリンダヘッドにおいて、閉塞したボス部が気密性を保持しているか否か検査する必要があるが、ボス部を開口させている仕様のシリンダヘッドのための検査装置のパッド部をそのまま使用すると、閉塞したボス部もパッドでシールされているため、巣や割れ、ヒケなどがあっても空気の漏れは発生せずに不良品を発見することができない。
【0010】
この点については、特許文献1のように、様式が異なるシリンダヘッドに対応したパッドをシリンダヘッドの後面に重ねたらよいと云えるが、特許文献1の装置は構造が複雑でコストが嵩むという問題がある。
【0011】
従って、基本構造は共通であるものの仕様が異なる複数種類(複数機種)のエンジン構成部材について、共通の検査装置で気密性を検査できる技術が要請されていると云える。本願発明は、この要請に応えようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、内部に空洞部を有して一端面に複数のボス部が同じレイアウトで配置されている複数種類のエンジン構成部材に係るものであり、この複数種類のエンジン構成部材は、
「前記複数のボス部のうち特定箇所の一部のボス部は各部材とも開口して、他のボス部については開口した部材と閉塞した部材とがあり、前記閉塞したボス部を閉塞していない他のボス部よりも突出高さを低くすることにより、
前記空洞部を加圧状態又は減圧状態にして圧漏れを検査する検査装置のパッド部を前記一端面に重ねたとき、前記一部のボス部と開口した他のボス部とは前記パッド部で塞がれて、前記閉塞した他のボス部と前記パッド部との間には隙間が空くように設定されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、1種類の検査装置を複数種類のエンジン構成部材に適用できる。そして、他のボス部が閉塞しているエンジン構成部材において、他のボス部と検査装置のパッド部との間に隙間があるため、閉塞した他のボス部に巣や割れがある等して気密性が確保されていない場合は、空気の漏れがあって不良品として検出できる。
【0014】
そして、エンジン構成部材の基本構造は複数種類で共通しており、各ボス部は同じレイアウトで配置されているため、鋳造品の場合は、鋳型については中子の一部を変えるといった簡単な対応で足り、鋳造コストのアップを抑制できる。また、閉塞したボス部の高さを低くすることは、フライス加工の手順を調整すること、あるいは、素材を共通化してキリ穴貫通加工、ねじ加工の工程を利用して、閉塞仕様では加工機の工具を入れ替えて座面を追い込む事により、コストをかけずに簡単に対応できる。
【0015】
従って、本願発明では、基本構造は共通化されていて仕様が異なる複数種類のエンジン構成部材について、簡単な構造により、共通の検査装置で気密性を検査できるため、仕様が異なるエンジン構成部材の検査コスト抑制を、エンジン構成部材の製造コストをアップさせることなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るシリンダヘッドの部分的な斜視図である。
図2】実施形態に係るシリンダヘッドの後面図である。
図3図2のII-II 視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明を自動車用エンジンのシリンダヘッドに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。以下では方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向はクランク軸線方向、左右方向はクランク軸線及びシリンダボア軸線と直交した水平方向である。前と後ろについては、タイミングチェーンが配置されている側を前、ミッションが配置されている側を後ろとしている。
【0018】
(1).構造の説明
図1はシリンダヘッドを斜め後ろから見た斜視図であり、排気出口穴1が開口した排気側面2と、配水部を設けた後面3とが現れている。本実施形態のエンジンでは、シリンダヘッドは上下2つの部材で構成されており、図示のシリンダヘッドは、正確には、上下に分離した2つの部材のうちの下部のものである。図1において符号4で示すのは、上部分を固定するためのボス体の群の一部であり、ボス体4には、シリンダヘッドの上部分を固定するボルトが螺合する雌ねじが形成されている。
【0019】
敢えて述べるまでもないが、シリンダヘッドの排気側面2には排気マニホールドが固定される。シリンダヘッドの排気側面2のうち後端寄りの上部に、ウォータポンプ戻りポート5が開口している。ウォータポンプ戻りポート5は、戻り管路のフランジが重なる受け座6に開口しており、受け座6には、ウォータポンプ戻り管路のフランジを固定するための複数のタップ穴7が形成されている。
【0020】
シリンダヘッドの後面3には、吸気側面の側に寄った大径の第1ボス部8と、それよりも排気側面2の側でやや下方に位置した第2ボス部9と、吸気側面2に近接した第3ボス部10と、第1ボス部8と第2ボス部9との間の部位でかつ第2ボス部9よりも高い位置に位置した第4ボス部11と、第4ボス部11よりも排気側面2の側に位置したメガネ状の第5ボス部12とが後ろ向きに突設されている。
【0021】
第1ボス部8はラジエータ送りポート13を設けるためのものであり、ラジエータ送りポート13はすべての機種で開口している。第2ボス部9及び第3ボス部10は、例えばヒータ送りポートやヒータ戻りポート、排気ターボ過給機用送水ポート、CVTウォーマ送水ポートなどが開口可能なものであり、図では閉塞した状態に表示しているが、図2に一点鎖線で示すようにポート14を開口させた仕様の機種と基本構成を共有している。
【0022】
第3ボス部10においては、閉塞している状態では他の部材を固定するための雌ねじ穴15が空いている。第2ボス部9と第5ボス部12とは図示しない部材をボルトで固定するためのものであり、雌ねじ穴16が開口している。
【0023】
まとめると、本実施形態では、同じレイアウトのボス部8~12を有しつつ、ラジエータ送りポート13が開口した第1ボス部8と閉塞した第2ボス部9及び第3ボス部10を有する機種(仕様)のシリンダヘッドと、ラジエータ送りポート13が開口した第1ボス部8とポート14が開口した第2ボス部9及び第3ボス部10を有する機種(仕様)のシリンダヘッドとの2種類が存在しており、エンジンの仕様によって使い分けている。
【0024】
そして、第2ボス部9~第5ボス部12の4つのボス部は同じ突出高さでかつ第1ボス部8よりも低い高さになっている。図1及び図2では、第1ボス部8は右下がりの平行斜線を付して、第2~第5ボス部9~12には左下がりの平行斜線を付しているが、これは突出高さの違いを明示するための措置であり、断面の表示ではない。
【0025】
なお、第4ボス部11と第5ボス部12は部材を固定するためのものであるが、両方とも第2ボス部9及び第3ボス部10と同じ高さに設定している。気密性を検査する必要がない場合は、両方とも第1ボス部8と同じ高さに設定したらよい。いずれか一方を第1ボス部8と同じ高さに設定して、他方を第2ボス部9及び第3ボス部10と同じ高さに設定するといったことも可能である。
【0026】
シリンダヘッドは、鋳造してからフライス加工によって各面を仕上げられるが、後面3については、同一のカッターを使用しつつ、第1ボス部8を加工する段階と第2~第5ボス部9~12を加工する段階とでカッターの前進量を変えることにより、各ボス部8~12の加工を一連に行える。従って、加工コストが嵩むことはない。
【0027】
(2).まとめ
シリンダヘッドの水回り部の気密性検査は、シリンダヘッドの前面と下面との開口を他のシール材でシールした状態で、図3に模式的に示すように、シリンダヘッドに後ろから検査装置のヘッダー17のパッド部18を当てて、加圧空気を第1ボス部8から内部に送ることによって行われる。この状態で、第2ボス部9及び第3ボス部10とパッド部18との間には隙間19が空いているため、第2ボス部9や第3ボス部10に巣や亀裂があると、空気が漏れて圧力低下が生じるため、巣や亀裂の存在を発見して不良品として排除できる。
【0028】
第2ボス部9及び第3ボス部10にポート14が空いている仕様のシリンダヘッドの場合は、同一の検査装置が使用されて、第2ボス部9及び第3ボス部10ともパッド部18で塞がれる。従って、ポート14が開口していても気密性を検査できる。
【0029】
図示の例では、各機種において第1ボス部8はいずれの機種でも開口して、第2ボス部9と第3ボス部10とについては、開口した機種と閉塞した機種とが存在しているが、第1ボス部8は開口して第2ボス部9及び第3ボス部10は閉塞している第1機種(仕様)と、第1ボス部8及び第2ボス部9は開口して第3ボス部10は閉塞している第2機種と、第1ボス部8及び第3ボス部10は開口して第2ボス部9は閉塞している第3機種との3種類の機種がある場合は、閉塞したボス部を低くすることによって1種類の検査装置で対応できる。
【0030】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも具体化できる。例えば、適用対象はシリンダヘッドに限らず、シリンダブロックなどの他のエンジン構成部材にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願発明は、シリンダヘッド等のエンジン構成部材に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0032】
3 シリンダヘッドの後面
5 ウォータポンプ送りポート
8 第1ボス部
9 開口タイプと閉塞タイプとがある第2ボス部
10 開口タイプと閉塞タイプとがある第3ボス部
11,12 部材締結用のボス部
13 第1ボス部に設けたラジエータ送りポート
14 ポート
17 検査装置のヘッダー
18 検査装置のパッド部
19 隙間
図1
図2
図3