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特許7502259COSMOplex:自己組織化システムの自己一貫性シミュレーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】COSMOplex:自己組織化システムの自己一貫性シミュレーション
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/30 20190101AFI20240611BHJP
   G16C 10/00 20190101ALI20240611BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240611BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240611BHJP
【FI】
G16C20/30
G16C10/00
G06F30/10
G06F30/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021500336
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019056636
(87)【国際公開番号】W WO2019179905
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102018002184.0
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラムト
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0094006(US,A1)
【文献】国際公開第2017/121641(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00896286(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0083688(US,A1)
【文献】Andreas Klamt, et al.,COSMOmic: A Mechanistic Approach to the Calculation of Membrane-Water Partition Coefficients and Internal Distributions within Membranes and Micelles,J. Phys. Chem. B,2008年08月28日,Vol.112,pp.12148-12157
【文献】Kai Bittermann, et al.,Prediction of Phospholipid-Water Partition Coefficients of Ionic Organic Chemicals Using the Mechanistic Model COSMOmic,J. Phys. Chem. B,2014年12月02日,Vol.118,pp.14833-14842
【文献】Jean-Christophe Pain, Thomas Blenski,Self-consistent approach for the thermodynamics of ions in dens plasmas in the superconfiguration approximation,Journal of Quantitative Spectroscopy & Radiative Transfer,2003年,Vol.81,pp.355-369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16C 10/00-99/00
G06F 30/10
G06F 30/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの不均一に分布した化学種に溶解した少なくとも1つの化学種を含む1つ以上の化学種の系の少なくとも1つの物理的特性の、特にコンピュータ化計算のためのシミュレーション方法(100)であって、分子表面セグメントの対相互作用の統計熱力学に基づく準化学計算を使用し、
1次元、2次元、又は3次元構造の液体系のシミュレーション体積における分子の統計熱力学的分布の反復計算中に、空間領域の統計熱力学的過剰又は過少集団から生じる圧力が原子体積と追加の連続体応答関数として相互作用し、したがって、系内の分子状態の熱力学的重みに影響を及ぼし、
他のエネルギー寄与を補足し、分子が過密な空間領域にある確率を減少させる圧力エネルギーペナルティを導入し、
前記圧力は、各層の原子体積確率と利用可能な幾何学的体積との比から計算され、
前記原子体積確率は、系内の化合物のモル分率と系内の分子の可能な状態のボルツマン確率から計算され、
前記圧力エネルギーペナルティは、シミュレーションされた不均一系内の分子の状態特異的自由エネルギーとボルツマン因子の追加エネルギー寄与として追加され、
前記圧力エネルギーペナルティは、表面セグメントの準化学的相互作用から生じるエネルギー寄与を補足する
ことを特徴とする、コンピュータ実装されたシミュレーション方法。
【請求項2】
前記圧力が、準化学的計算による分子表面の相互作用から生じる、エネルギー寄与を有する前記系における分子状態の熱力学的重みにおける追加のエネルギー寄与として使用される
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項3】
前記化学種の構造が、外部情報の必要性を回避して、同じアプローチ内で自己一貫して計算され得る
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項4】
空間領域の統計熱力学的過剰又は過小集団から生じる圧力プロファイルが使用される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項5】
シミュレートされた化学系がミセル又は膜である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項6】
有限負荷の溶質を有する純粋又は混合界面活性剤系及び生体膜を計算することができる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項7】
自己矛盾のないイオン分布を有するイオン界面活性剤を計算することができる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項8】
液液界面の分子及び界面張力を計算できる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項9】
液-気体界面の分子及び表面張力を計算することができる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項10】
液固界面の分子及び吸着定数を計算できる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項11】
閉じ込められた液体を計算することができる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項12】
液晶を計算することができる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項13】
コンピュータ実施ステップを含み、特に、前記シミュレーションは、コンピュータ化された計算によって実行される
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシミュレーション方法(100)。
【請求項14】
少なくとも1つの不均一に分布した化学種に溶解した少なくとも1つの化学種を含む1つ以上の化学種のシステムの少なくとも1つの物理的特性のコンピュータ化された計算のためのコンピュータ装置であって、請求項1~13の少なくとも1つの方法によって、空間領域の統計的な熱力学的過剰又は過小集団から生じる圧力の計算を伴う準化学的計算を用いるシミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子表面セグメントのペアワイズ相互作用の統計熱力学に基づく準化学的計算を使用して、少なくとも1つの不均一に分布した化学種に溶解した少なくとも1つの化学種を含む1つ以上の化学種のシステムの少なくとも1つの物理的特性のシミュレーション、特にコンピュータ化された計算のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子レベルでの材料のシミュレーションは事前の実験作業を必要とせずに最適な材料成分の選択を可能にし、検討中の材料又はシステムの制御及び改善にとって非常に重要であり得る機械的洞察を提供するので、非常に大きな技術的重要性を達成した。エマルジョン及び熱可塑性ポリマーとしての液体材料及び軟質準液体物質は、一般的な化学、医薬、農薬、生化学、石油化学及び化粧品産業ならびに洗浄製品において特に重要である。均質なバルク液体中の分子の理解及びシミュレーションは化学の広い分野にとって非常に重要であり、それでも非常に重要であるが、ミセル、エマルジョン、固体界面に吸着する分子、液体-液体界面及び液体-気体界面、ならびに液晶及び閉じ込められた液体などの不均質な液体系は特に技術、医薬、農薬、生物学、石油化学及び化粧品産業において、ますます技術的重要性を増している。
【0003】
液体系のシミュレーションのための主流の方法は分子動力学(MD)又はモンテカルロ(MC)シミュレーションであり、ここで、シミュレーション体積中の分子の巨大なアンサンブル及びそれらの3D相互作用のすべてが明示的にシミュレートされるが、分子表面セグメントのペアワイズ相互作用の統計熱力学に基づくUNIFAC[2]又はCOSMO-RS[3,4]としての準化学モデル[1]はバルク、均質、液体系のシミュレーションのための非常に効率的なツールであり、コンピュータ時間において約4桁の大きさを節約し、溶液中の分子の自由エネルギーのためのMD/MCシミュレーションの精度の約2倍を提供することが証明されている[5,6]。しかし、準化学的方法は均質な液体に限定されるように思われたが、不均質な液体はMD/MCシミュレーションの領域のままであるように思われた。
【0004】
これは、COSMO-RSアプローチがKlamtらによるCOSMOmic方法において、1次元的に不均一な液体系(例えば、ミセル及び生体膜)における溶質の分布及び分配のシミュレーションに拡張された場合に変化した[7,8]。COSMOmicは不均質な液体を層状の均質な液体とみなし、各層についてCOSMO-RSアプローチを使用し、その可能な状態、すなわち、この層状の液体の背景技術の前のコンホメーション、位置、及び配向のすべてにおいて溶質を計算する。しかし、COSMOmicは不均一な、大部分はミセルの液体中での無限希釈での溶質分子の挙動をシミュレートすることしかできないという事実によって制限され、それは通常、以前の高価なMDシミュレーションから生成されなければならなかった、不均一系の構造に関する外部情報に依存した。
【発明の開示】
【0005】
本発明はCOSMOmic概念の、圧力エネルギーペナルティの導入による不均質な自己組織化システムの自己無矛盾シミュレーションへの一般化を含み、不均質システム内の特定の状態にある分子の他のエネルギー寄与、特に準化学エネルギーを補足する。この圧力ペナルティは、分子が過密な空間領域にある確率を減少させる。従って、溶質の分布を計算するためにCOSMOmicで使用された類似のアルゴリズムはここで、不均一系の成分、例えば、界面活性剤分子及び水に適用することができる。これは、COSMOmicの無限希釈への制限を克服し、高価な外部情報の必要性を排除する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】COSMORS方法を用いたアセトン水混合物からのコンピュータ化モデル。
図2】COSMOmic方法で計算されたコンピュータ化モデル。
図3】本発明の方法の概念を図のワークフロー図。
図4】本発明の方法によって計算された、油-界面活性剤-水系(デカン-C8E3-水)中の添加剤の体積分布を示す図。
図5】本発明のCOSMOplex方法を用いて計算されたコンピュータ化モデル。
【発明を実施するための形態】
【0007】
COSMO-RS方法は、液体系を構成するすべての分子がそれらの表面特性に関する情報を液体の連続体の説明に渡すという概念に基づいている。最も単純なバージョンでは、関連する表面特性が同じ計算から生じる原子体積情報に加えて、量子化学COSMO計算で計算されるように、表面分極電荷密度である。結果として得られる全体的な表面連続体組成に基づいて、すなわち、その最も単純なバージョンにおいて、溶媒σプロファイル、熱力学的応答関数、σポテンシャルは、準化学方程式を解くことによって計算される。次いで、この溶媒連続体S中の各分子Xの自由エネルギーは、分子Xの全ての表面セグメントの個々のσポテンシャルを合計することによって計算される。
【0008】
COSMOmic方法ではミセル、生体膜、又は液体-液体界面のような不均質な1次元構造の液体系は層状の均質な液体と考えられ、すなわち、1~2オングストロームの典型的な幅を有する各層はそれ自体が均質であると考えられるが、組成、したがって、層の応答関数は不均質の方向に沿って異なり、これはz方向としてさらに示される。通常、分子動力学シミュレーションによって生成される外部情報が必要とされ、これは、異なる原子タイプが異なる層にある確率を提供する。次に、原子確率はそれらの原子σプロファイルで乗算され、このようにして、連続体組成、すなわち、層σプロファイルが、各層について生成される。次に、バルク液体中で行われるように、各層について熱力学的応答関数が計算される。シミュレートされた不均一系における溶質Xの自由エネルギーの計算のために、系における溶質の全ての可能な状態、又はより正確には全ての状態の合理的に密なグリッド表現、すなわち全ての中心位置及び配向がサンプリングされる。溶質Xが複数のコンホメーションを有する場合、コンホメーション、中心位置、及び配向の各組み合わせがサンプリングされる。各個々の状態について、分子の状態特定自由エネルギーは各表面セグメントの位置を決定し、その領域に局所的な層σポテンシャルを乗算し、全てのセグメントについてこれらの積を合計することによって計算される。これから各状態の状態固有の熱力学的重みすなわちボルツマン因子を計算した。すべての状態のボルツマン因子は、システム内の化合物の分配関数まで合計される。自由エネルギーは-RT ln(分配関数)として基本的に計算される。ここで、Rは理想気体定数、Tは温度である。
【0009】
本発明の目的は、外部情報の必要性を排除することによって、液体システムの1次元、2次元、又は3次元構造のシミュレーション体積における分子のシミュレーションのための方法を改善することである。
【0010】
分子表面セグメントのペアワイズ相互作用の統計熱力学に基づく準化学的計算を使用して、少なくとも1つの不均一に分布した化学種に溶解した少なくとも1つの化学種を含む1つ以上の化学種のシステムの少なくとも1つの物理的特性のシミュレーション、特にコンピュータ化計算のための本発明の方法は液体システムの1次元、2次元、又は3次元構造のシミュレーション体積における分子の統計熱力学的分布の反復計算中に、空間領域の統計熱力学的過剰又は過小集団から生じる圧力が原子体積との追加の連続応答関数として相互作用し、したがって、システム内の分子状態の熱力学的重みに影響を及ぼすという技術的教示を含む。
【0011】
COSMOplexとして言及される本発明の方法は、表面セグメントの準化学的相互作用から生じるエネルギー寄与を補足する、シミュレートされた不均一系における分子の状態比自由エネルギー及びボルツマン因子の計算における追加のエネルギー寄与として、層比横方向系圧力及び結果として生じる原子体積との相互作用エネルギーの包含を含む。システム圧力は、空間充填率、すなわち各層における原子体積確率と利用可能な幾何学的体積の比率から計算される。原子体積確率は、システム中の化合物のモル分率及びシステム中の分子の可能な状態のボルツマン確率から計算される。過剰分子数は高圧ペナルティを生み出すため、過剰分子数地域ではボルツマン確率が低下する。したがって、シミュレーション体積中の化合物のもっともらしい分布から出発して、初期層σプロファイル、層電荷及び層体積占有を計算することができ、その結果、初期σポテンシャル、層静電ポテンシャル及び層圧が生じる。これらは、系のすべての分子の状態特定自由エネルギー、及びそれらの可能な状態、すなわちコンホメーション、位置及び配向にわたる分子の対応する分布をもたらす。これにより、分子の新しい分布が得られ、更新された層σプロファイル及び層体積占有が得られる。これらは、減衰因子に従って、以前の層σプロファイル、層電荷及び層体積占有と混合される。これは、COSMOplex法の最初の反復サイクルを閉じる。同じサイクルを何度も繰り返すことにより、システムはその全自由エネルギーを最小化し、現実的な自己組織化構造に収束する。したがって、最終的な出力は、シミュレートされたシステム全体にわたるすべての分子の自己組織化された分布と、成分の対応する自由エネルギーとを含む。
【0012】
本発明の方法の計算上の要求は、おおよそ以下の通りである:
・典型的な計算時間は単一のCPUで0.5~4時間である。
・最適化された新しい実装はこれを2~5分の1に低減する。
・メモリ所要量は~0.5GBである。
【0013】
ステップ圧縮性関数(圧力)は非常に効率的であるべきなので、パフォーマンスを改善するために、並列化と極端な減衰が必要であるが、減衰戦略は依然として改善の余地がある。
【0014】
いずれにせよ、本発明の方法を用いたシミュレーションは対応するMDシミュレーションよりも1000倍から10000倍程度、効率が高くなることが期待できる。
【0015】
本発明の方法は、液晶を計算するためにも使用することができる。この計算のための条件を作り出すためには、反復計算中の状態のエネルギー計算において外部電場を加えることが特別な関心事である。
【0016】
実験室又は遠心機で観察されるように、相がそれらの密度に従って自動的に順序付けられることを可能にするために、外部重力又は遠心力が、状態のエネルギー計算において使用され得る。
【0017】
空間領域の統計熱力学的過不足集団から生じる圧力を計算することにより、このシステムに対して圧力プロファイルを計算することができる。
【0018】
さらに、本発明の方法は、有限の負荷の溶質を有する少なくとも純粋かつ混合された界面活性剤系及び生体膜、自己矛盾のないイオン分布を有するイオン界面活性剤、液体-気体界面及び表面張力における分子、液体-固体界面における分子、ならびに吸着定数又は閉じ込められた液体を計算することを可能にする。
【0019】
本発明の方法の別のアプローチは矩形ボックスの一端での固体表面のシミュレーション、又は両端での固体のシミュレーション、又は円筒形ナノチューブでのシミュレーション、すなわち、閉じ込められた液体の処理であり得る。これは、以下のような方法ステップを用いて、固形物の表面上に液相がどのように配置(吸着)するかを研究することを可能にする:
・(周期的COSMO又はクラスタCOSMO計算のいずれかを用いて)固体のσ表面を計算する。
・このσ表面を、ボックス内部の方向に法線ベクトル(DIRPLEX)を有する最外層に存在するものとして定義する。
・固体に浸透する表面セグメントに対するレナード-ジョーンズ様固体浸透ペナルティを定義する。
【0020】
さらに、本発明の方法は、指数格子間隔を使用して巨視的距離(μm、mm、cm、m)をシミュレートするために使用することができる。
【0021】
全体として、本発明の手法はCOSMOファイルに基づいた自己組織化システムの自己一貫性シミュレーションを可能にし、MDシミュレーションと比較して非常に効率的(10~10高速)であり、非常に有望な予備的定量的結果をもたらす。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では本発明の方法、好ましくは本発明のシミュレーション方法及び/又は計算方法はコンピュータ装置上で、好ましくはコンピュータ化されたソフトウェアの形態で実行され、好ましくは本発明の方法による計算は好ましくはコンピュータ化された計算として、特に好ましくはプログラムされたソフトウェア内のアルゴリズムとして、好ましくはコンピュータ装置上で使用するためのコンピュータソフトウェアとして、コンピュータ実装されたステップを含む。プログラムされたソフトウェアは例えば、モバイル記憶媒体、クライアントコンピュータ、及び/又は、アプリケーションプログラム等を実行するサーバコンピュータ処理、記憶、及び入出力装置のような記憶媒体に記憶することができる。
【0023】
好ましくは、本発明ではシミュレーションが表示装置上のコンピュータ化されたモデルとして視覚化することができ、及び/又はコンピュータ化されたモデルは例えば、3Dプリンタで印刷された3Dモデルとして印刷又はプロットすることができる。したがって、本発明の別の態様は、本発明のシミュレーション及び/又は本発明の計算を視覚化するためのコンピュータ化されたモデルである。
【0024】
本発明によるコンピュータ装置のさらなる利点に関する繰り返しを避けるために、本発明の方法の有利な改良の説明を参照し、これに十分に頼る。
【0025】
(実施例)
一例として、COSMOplexプログラムによって計算された油-界面活性剤-水系(デカンC8E3-水)中の添加剤の体積分布を図に示す。
【0026】
本発明を改善するためのさらなる手段は図面を用いた本発明の好ましい実施例の説明により、以下により詳細に記載される。全ての特許請求の範囲、説明、又は図面の前の特徴及び/又は利点(設計の詳細、空間的構成、及び手順のステップを含む)はそれら自体のために、又は種々の組み合わせにおいて、本発明に不可欠であり得る。なお、図面は単に説明のためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0027】
図1は、溶媒シグマプロファイルを有するアセトン-水混合体からのコンピュータ化モデル、及び50%水、50%アセトン混合体についてCOSMORS方法で計算されたシグマ電位を示す。実線は、成分の表面セグメントから構築される混合物のσプロファイルを示す。破線は、結果として生じるσ電位である。矢印は、異なる極性の表面セグメントがσプロファイルの異なる部分に加えられ、各セグメントの極性に対応するσ電位が表面セグメントの自由エネルギーを表すために分子の表面に戻されることを示す。
【0028】
図2は、DMPC-生体膜のバックグラウンドの前の溶質の3つの異なる状態(位置及び配向)を示すためのCOSMOmic法の概略図を示す。各状態において、溶質表面の異なるセグメントは異なる層に存在し、したがって、異なるσポテンシャルを感じる。バックグラウンドは、ティーレマンらによるMDシミュレーションのスナップショットである[9]。
【0029】
図3には、COSMOplexとして言及された本発明の方法100の概念がワークフロー図で示されている。
【0030】
過剰分子数は高圧エネルギーを生み出すため、過剰分子数地域ではボルツマン確率が低下する。したがって、シミュレーション体積中の化合物のもっともらしい分布から出発して、初期層σプロファイル、層電荷及び層体積占有を計算することができ、その結果、初期σポテンシャル、層静電ポテンシャル及び層圧が生じる。したがって、第1のステップ1において、本発明の方法100は、ミラー境界又は周期的境界(オートボックススクリプトによってサポートされる)を有する矩形ボックス、球、又は円柱のいずれかにおいて考慮される化合物の合理的な開始分布を構築することから開始する。
【0031】
ステップ1で構築された分布から、層σプロファイル、層電荷、層平均モル領域及び体積、ならびに層空間充填比率(占有モル体積を幾何学的層体積で割ったもの)が、第2のステップ2で計算され、初期σ電位、層静電電位、及び層圧力をもたらす。これらは、系のすべての分子の状態特定自由エネルギー、及びそれらの可能な状態、すなわちコンホメーション、位置及び配向にわたる分子の対応する分布をもたらす。これにより、分子の新しい分布が得られ、更新された層σプロファイル及び層体積占有が得られる。
【0032】
第3のステップ3では、層連続体応答関数:p(σ,z)からのμ(σ,z)、平均体積及び領域からの組み合わせ応答、層電荷からの静電応答V(z)、及び空間充填からの圧力応答がレナード-ジョーンズ様圧縮関数によって計算される。
【0033】
これらは第四段階4で、減衰因子に従って前の層σプロファイル、層電荷及び層体積占有と混合される。
【0034】
したがって、第4のステップ4では、各化合物のすべての状態(コンホメーション、位置、配向)がサンプリングされ、局所μ(σ, z)、局所組合せ寄与、局所静電ポテンシャルが計算され、原子体積*圧力(z)の積による各原子の圧力寄与が含まれる。これは、新しい分配関数、新しい自由エネルギーにおける新しい分布、及び最終的に自己組織化化合物の収束分布及び自由エネルギーにおける結果をもたらし、これはCOSMOplex法100の最初の反復サイクルを閉じる。曲がった矢印5で示されている同じサイクルを何度も繰り返すことによって、システムはその全自由エネルギーを最小化し、現実的な自己組織化構造に収束する。したがって、最終的な出力は、シミュレートされたシステム全体にわたるすべての分子の自己組織化された分布と、図4及び図5にコンピュータ化されたモデルで示される構成要素の対応する自由エネルギーとを含む。
【0035】
図4は、本発明の方法によって計算された油-界面活性剤-水系(デカン-C8E3-水)中の添加剤の体積分布を示す。添加剤はブタン、テトラデカン、1-デシン、1-ドデシン、T=338Kのデカン、ピナン、シクロヘキサン、ドデカン、1-ドデセン、1-デセン、1-ヘキサノール、ヘキサン、ヘキシン、T=298Kのデカン、1-オクタノール、オクタン、T=298Kのデカン、2-ブタノール、T=318Kのデカン及び1-メチル-4-イソプロピルベンゼンである。図は、システム中の添加剤の分子の分布及びシステムへの添加剤の影響を示す。例えば、1-ヘキサノールは界面活性剤のように振る舞い、したがって、システムにわずかな影響しか及ぼさない。
【0036】
図5は、COSMOplex法の概略図を示す。これは、COSMOplexを用いて自己一貫して計算されたシクロヘキサン-水界面における圧力プロファイルを示す。
【0037】
前述の例は、例としてのみ実行され、本発明の保護の範囲を限定するものではない。
【0038】
(参考文献)
[1] Guggenheim, E. A. Mixtures; Clarendon Press: Oxford, 1952.
[2] A. Fredenslund, J. Gmehling, P. Rasmussen: Vapor-Liquid Equilibria Using UNIFAC - A Group Contribution Method. Elsevier, Amsterdam 1977.
[3] A. Klamt, Conductor-like screening model for real solvents: a new approach to the quantitative calculation of solvation phenomena, J. Phys. Chem. 99 (1995) 2224-2235. doi:10.1021/j100007a062.
[4] Klamt, A.; Krooshof, G. J. P.; Taylor, R. COSMOSPACE: Alternative to Conventional Activity-Coefficient Models. AIChE J. 2002, 48 (10), 2332-2349.
[5] Zhang, J.; Tuguldur, B.; van der Spoel, D. Force Field Benchmark of Organic Liquids. 2. Gibbs Energy of Solvation. J. Chem. Inf. Model. 2015, 55 (6), 1192-1201.
[6] Zhang, J.; Tuguldur, B.; van der Spoel, D. Correction to Force Field Benchmark of Organic Liquids. 2. Gibbs
[7] A. Klamt, U. Huniar, S. Spycher, J. Keldenich, COSMOmic: a mechanistic approach to the calculation of membrane-water partition coefficients and internal distributions within membranes and micelles, J. Phys. Chem. B. 112 (2008) 12148-12157. doi:10.1021/jp801736k.
[8] Bittermann, K.; Spycher, S.; Endo, S.; Pohler, L.; Huniar, U.; Goss, K.-U.; Klamt, A. Prediction of Phospholipid-Water Partition Coefficients of Ionic Organic Chemicals Using the Mechanistic Model COSMOmic. J. Phys. Chem. B 2014, 118 (51), 14833-14842.
[9] A DMPC micelle consisting of 54 lipids and a few thousand water molecules (schematically), http//indigo1.biop.ox.ac.uk/tieleman/projects.html#micelles
図1
図2
図3
図4
図5