(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】船舶を制御するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G08G 3/02 20060101AFI20240611BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G08G3/02 A
B63H21/21
(21)【出願番号】P 2021525405
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 IL2019050772
(87)【国際公開番号】W WO2020016881
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2018-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521023252
【氏名又は名称】アクア マリーナ ヨッツ (1995) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】エヤル アミール
(72)【発明者】
【氏名】セラ オファー
(72)【発明者】
【氏名】カーモン ヤロン シュロモ
(72)【発明者】
【氏名】ナタン ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】オフィール イェホナタン
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-165178(JP,A)
【文献】特開平05-223584(JP,A)
【文献】実公昭54-003515(JP,Y2)
【文献】特開2002-245599(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101256721(CN,A)
【文献】特開2016-099198(JP,A)
【文献】特開2000-182199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B63H 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を制御する方法であって、
制御装置によって、測位システムから前記船舶の位置を受信するステップと、
前記制御装置によって、少なくとも1つのデータベースから地理的データを受信するステップであって、前記地理的データ
は海底深度の地
図を含む、受信するステップと、
前記制御装置によって、前記船舶の進行方向および巡航速度を受信するステップと、
現在の巡航速度から係合解除の速度までの第1の減速度と、前記係合解除の速度からゼロ速度までの第2の減速度という2つの減速度を計算することによって、前記船舶の座礁の予定時刻を計算するステップであって、前記係合解除の速度は、前記船舶のエンジンが、前記船舶の推進装置と係合または係合解除できる速度である、ステップと、
前記制御装置によって、前記船舶の、座礁の前記予定時刻、前記位置、前記進行方向および前記巡航速度に基づいて、前記船舶の前方の安全ゾーンを決定するステップと、
前記制御装置によって、受信した前記地理的データに基づいて、前記安全ゾーン内の臨界海底深
度の位置を識別するステップと、
前記制御装置によって、前記安全ゾーン内で臨界海底深
度が識別された場合に、前記船舶の推進装置の状態を変更するステップであって、前記船舶の前記推進装置の状態を変更するステップは、前記船舶のエンジンを前記推進装置から係合解除することを含むステップと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記船舶の前記推進装置の状態を変更するステップは、前記船舶の速度を低下させるステップと、動的位置決めシステム(DPS)を起動させるステップと、風向に向かって前記船舶を操縦するステップと、前記船舶の針路を変更するステップと、のうちの少なくとも1つをさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記安全ゾーンを決定するステップは、前記船舶巡航中に前記安全ゾーンのマージン距離を動的に更新するステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記安全ゾーン内の臨界海底深度の位置を識別するステップは、
前記船舶の喫水および所定の安全深度に基づいて、有効海底深度を計算するステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法であって、前記船舶の前方の安全ゾーンを決定するステップは、
前記船舶の座礁の予定時刻を計算するステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、予定座礁時刻を計算するステップは、必要な前記船舶の減速度を計算するステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、必要な前記船舶の減速度を計算するステップは、現在の巡航速度から係合速度までの前記船舶の減速度を計算するステップを含み、係合速度は、エンジンが前記推進装置と係合することができる、または前記推進装置から係合解除することができる、速度である、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、必要な前記船舶の減速度を計算するステップは、係合速度から巡航方向でゼロ速度までの前記船舶の減速度を計算するステップをさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、前記船舶の減速度を計算するステップは、巡航速度から巡航方向でゼロ速度までである、方法。
【請求項10】
請求項5に記載の方法であって、アラートを、計算された予定座礁時刻に追加することをさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法であって、
前記船舶の位置での実際の海底深度のリアルタイム測定を、前記船舶に関連付けられた深度センサから受信するステップと、
前記実際の海底深度を、受信された前記地理的データから前記船舶の位置での海底深度と比較するステップと、
受信された前記地理的データに含まれる海底深度を、比較に基づいて補正するステップと、
をさらに含む方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法であって、
船舶特性を受信するステップと、
前記船舶特性にも基づいて前記安全ゾーンを計算するステップと、
をさらに含む方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法であって、船舶特性は、前記船舶の種類と、前記船舶によって運ばれる貨物の重量と、前記船舶上の貨物の分布と、前記船舶の寸法と、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法であって、
前記船舶が航行している領域で気象データを受信するステップと、
前記気象データにも基づいて前記安全ゾーンを決定するステップと、
をさらに含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記気象データは、風速と、風向と、高潮および低潮と、流れと、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記気象データは、データベースと、前記船舶に関連付けられた少なくとも1つのセンサと、のうちの少なくとも1つから受信される、方法。
【請求項17】
船舶を制御するシステムであって、
命令を格納するメモリと、
制御装置であって、
測位システムから前記船舶の位置を受信し、
少なくとも1つのデータベースから地理的データを受信し、前記地理的データ
は海底深度の地
図を含み、
前記船舶の進行方向および巡航速度を受信し、
現在の巡航速度から係合解除の速度までの第1の減速度と、前記係合解除の速度からゼロ速度までの第2の減速度という2つの減速度を計算することによって、前記船舶の座礁の予定時刻を計算し、前記係合解除の速度は、前記船舶のエンジンが、前記船舶の推進装置と係合または係合解除できる速度であり、
前記船舶の前方の安全ゾーンを、前記船舶の、座礁の前記予定時刻、前記位置、前記進行方向および前記巡航速度に基づいて、決定し、
受信された前記地理的データに基づいて、前記安全ゾーン内の臨界海底深
度の位置を識別し、
前記安全ゾーン内で臨界海底深
度が識別されたときに、前記船舶のエンジンを前記推進装置から係合解除することを含む前記船舶の推進装置の状態を変更するように、
構成された制御装置と、
を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が組み込まれる、2018年7月15日に出願された「船舶を制御するシステムおよび方法」という名称の米国仮特許出願第62/698,159号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、船舶の操縦および制御の分野に関し、より具体的には、本出願は、船舶の座礁を防止するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
海難事故の約20パーセントは、岩礁、沿岸、浅瀬、その他の静的危険物に意図せず座礁した場合の座礁船によるものである。それは、非常に頻繁であり、船舶衝突に次ぐ。座礁は、人的負傷および死傷者、構造的損傷、貨物の落下、船舶の全損、保険金請求および同様のものにつながる可能性がある。最新式ナビゲーションシステム、新しい技術、および改善された安全対策があっても、海難は依然として発生し、船舶の座礁は、より頻繁な類型の事故の1つである。
【0004】
ヒューマンエラーは座礁事故の主な原因である。プロのナビゲータでさえ、コミュニケーションの欠如、監視エラー、解析エラー、疲労および同様のものによって引き起こされるヒューマンエラーに悩まされている。
【0005】
全地球測位システム(GPS)や電子地図より前は、航海は、紙上にプロット/起草された海図のみに基づいて行われた。海図のデジタル化により、ENC(Electronic Nautical Charts)が開発された。ENCには、ラスターチャートとベクトルチャートの2つの主な種類がある。第1のものは、単に、論じた初期のペーパナビゲーションチャートのスキャンバージョンであるが、第2のものは、よりデータ指向である。非表示になっているが、特定の位置にあるデータは、(マウスをクリックするかボタンを押すことで)探すとすぐに表示される。ベクトルチャートENCは、電子チャート表示情報システム(ECDIS)などのナビゲーションソフトウェアによって提供される。チャートプロッタENCは、チャート上に、船舶の位置、進行方向、および速度を表示し、レーダ、自動情報システム(AIS)、または他のセンサからの追加情報を表示し得る。近年、アプリケーションによっては、チャートデータおよび船舶移動ベクトルに基づいて衝突の危険性を計算し、それに応じてアラートを発する「スマート動的アラート」が追加された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの態様は、船舶を制御するコンピュータシステムおよびコンピュータ化された方法に関し得る。システムに含まれるメモリは、制御装置によって実行される命令を含むコードを含んでよく、船舶エンジンを制御し得る。いくつかの実施形態は、制御装置によって、測位システムから船舶の位置を受信することと、制御装置によって、少なくとも1つのデータベースから地理的データを受信することであって、地理的データは少なくとも海底深度の地図を含む、受信することと、制御装置によって、船舶の進行方向および速度を受信することと、制御装置によって、船舶の前方の安全ゾーンを、船舶の位置、進行方向および速度に基づいて決定することと、受信した地理的データに基づいて、安全ゾーン内の臨界海底深度の位置を識別することと、制御装置によって、臨界海底深度が安全ゾーン内で識別されたときに、船舶の推進装置の状態を変更することと、を含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、船舶の推進装置の状態を変更することは、船舶の速度を減少させること、推進装置から船舶のエンジンを係合解除すること、動的位置決めシステム(DPS)を起動させること、風向に向かって船舶を操縦すること、および船舶の針路を変更すること、のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、安全ゾーンの決定は、船舶巡航中に安全ゾーンのマージン距離を動的に更新することを含み得る。いくつかの実施形態では、安全ゾーン内の臨界海底深度の位置を識別することは、船舶の喫水および所定の安全深度に基づいて有効海底深度を計算することを含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、制御装置によって、船舶の前方の安全ゾーンを決定することは、船舶の座礁の予定時刻を計算することを含み得る。いくつかの実施形態では、予想される座礁時刻を計算することは、必要な船舶の減速度を計算することを含み得る。いくつかの実施形態では、必要な船舶の減速度を計算することは、現在の巡航速度から係合速度までの船舶の減速度を計算することを含んでよく、係合速度は、エンジンが推進装置と係合することができる、または推進装置から係合解除することができる、速度である。いくつかの実施形態では、必要な船舶の減速度を計算することは、係合速度から巡航方向でゼロ速度までの船舶の減速度を計算することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、船舶の減速度を計算することは、巡航速度から巡航方向でゼロ速度までである。
【0009】
いくつかの実施形態では、アラートを、計算された予想される座礁時刻に追加し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、船舶の位置での実際の海底深度のリアルタイム測定は、船舶に関連付けられた深度センサから受信されてよく、実際の海底深度は、受信された地理的データから船舶の位置での海底深度と比較されてよく、受信された地理的データに含まれる海底深度は、比較に基づいて補正されてよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、船舶特性が受信されてよく、安全ゾーンは、船舶特性にも基づいて計算されてよい。いくつかの実施形態では、船舶特性は、船舶の種類、船舶によって運ばれる貨物の重量、船舶上の貨物の分布、および船舶の寸法、のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、気象データは、船舶が航行している領域で受信されてよく、安全ゾーンは、気象データに基づいて計算されてもよい。いくつかの実施形態では、気象データは、風速、風向、高潮および低潮、および流れ、のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、気象データは、データベース、および船舶に関連付けられた少なくとも1つのセンサ、のうちの少なくとも1つから受信される。
【0013】
本発明の他の態様は、船舶を制御するコンピュータシステムおよびコンピュータ化された方法に関し得る。システムに含まれるメモリは、制御装置によって実行される命令を含むコードを含んでよく、船舶エンジンを制御し得る。いくつかの実施形態は、制御装置によって、測位システムから船舶の位置を受信することと、制御装置によって、少なくとも1つのデータベースから地理的データを受信することであって、地理的データは少なくとも海底深度の地図を含む、受信することと、制御装置によって、船舶の進行方向および速度を受信することと、制御装置によって、船舶の前方の安全ゾーンを、船舶の位置、進行方向および速度に基づいて決定することと、受信された地理的データに基づいて、安全ゾーン内の臨界海底深度の位置を識別することと、臨界海底深度が安全ゾーン内で識別されたときに、制御装置によって、ユーザーデバイスにアラートを送信することと、を含み得る。
【0014】
本発明と見なされる内容は、本明細書の最後の部分において特に指摘され、明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、その目的、特徴、および利点と共に、構成および動作方法の両方に関して、添付の図面と共に読まれるときに、以下の詳細な説明を参照することによって最も良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による船舶を制御するためのシステムの図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による海での船舶の図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による海での船舶の図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態による海での船舶の図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による船舶を制御する方法のフローチャートを示す。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による船舶への風の衝撃の図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による船舶の測定および計算された減速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
当然のことながら、説明の明確化および簡潔さのために、図示されている要素は、必ずしも正確な縮尺率でない。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確化のために、他の要素に対して誇張されていることがある。さらに、適切であると考えられる場合、参照番号は、対応するまたは類似の要素を示すために、図面間で繰り返され得る。
【0017】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的詳細について述べる。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの具体的詳細なしに実施され得ることが理解されるであろう。他の例では、周知の方法、手順、および構成要素は、本発明を曖昧にしないように詳細には説明されていない。
【0018】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による船舶を制御するためのシステムの図である
図1を参照する。いくつかの実施形態では、システム100は、
図2に示される船舶10に含まれてよく、または独立したシステムであってよい。船舶は、例えば、貨物船、軍用艦艇、ヨット、小型ボート、潜水艦など、任意の推進方法を使用する任意のタイプの船舶であってよい。システム100は、コンピュータ処理装置110、少なくとも1つの記憶装置120、ユーザーインタフェース130、および通信装置140を含み得る。処理装置110は、例えば、中央処理装置(CPU)、チップ、または任意の適切なコンピューティングデバイスもしくは計算デバイスであり得るプロセッサまたは制御装置112、オペレーティングシステム114、およびメモリ116を含み得る。システム100は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、メインフレームコンピュータまたは同様のものに含まれ得る。プロセッサ(例えば、制御装置)112は、例えば、メモリ116などのメモリに格納された命令を実行することによって、本発明のいくつかの実施形態による方法を実行するように構成され得る。
【0019】
オペレーティングシステム114は、調整、スケジューリング、アービトレーション、監視、制御、または処理装置110のその他の管理動作、例えば、プログラムの実行のスケジューリング、を含むタスクを実行するように設計および/または構成された任意のコードセグメントであってよく、またはそのようなコードセグメントを含んでよい。オペレーティングシステム114は、市販のオペレーティングシステムであってよい。メモリ116は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SD-RAM)、ダブルデータレート(DDR)メモリチップ、フラッシュメモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、キャッシュメモリ、バッファ、短期記憶装置、長期記憶装置、または他の適切な記憶装置またはストレージ装置であってよく、またはこれらを含んでよい。メモリ116は、複数の、場合によっては異なる記憶装置であってよく、またはこれらを含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、コンピュータ処理装置110は、プロセッサ112とメモリ116の両方がクラウド上に配置され得るように、クラウドベースの処理サービスでホストされてよく、システム100は、例えば通信装置140を使用して、インターネットを介してクラウドと通信し得る。
【0021】
メモリ116は、任意の実行可能コード、例えば、アプリケーション、プログラム、プロセス、タスクまたはスクリプト、を記憶し得る。実行可能コードは、船舶を制御するための命令、または本発明の実施形態による方法を実行するための任意の他のコードもしくは命令を含み得る。実行可能コードは、場合によってはオペレーティングシステム114の制御下でプロセッサ/制御装置112によって実行されてよい。
【0022】
少なくとも1つの記憶装置120は、コンピュータ処理装置110にデータを提供するコンピュータ処理装置110の内部または外部のいずれかの任意の記憶装置であってよく、またはそれを含んでよい。いくつかの実施形態では、記憶装置120は、地理的データモジュール122(例えば、ENC/GISモジュール)を含み得る。地理的データモジュールは、ENCデータおよび/または地理的情報システム(GIS)データ、または船舶に近接する海底深度の少なくとも地図を提供し得る任意の他のソースを含み得る。いくつかの実施形態では、記憶装置120は、船舶データ(例えば、特性)、船舶が航行する領域内の気象データおよび同様のものをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、気象データは、高潮および低潮海面および同様のものを含んでよい。
【0023】
少なくとも1つの記憶装置120は、例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)ドライブ、CD記録可能(CD-R)ドライブ、ユニバーサルシリアルバス(USB)装置、または他の適切なリムーバブルおよび/または固定記憶装置であってよく、またはそれらを含んでよい。コンテンツは、記憶装置120に記憶されてよく、プロセッサ112によって処理され得るメモリ116に記憶装置120からロードされてよい。
【0024】
ユーザーインタフェース130は、ユーザーが情報形式システム100をアップロードまたは受信することを可能にし得る任意の入力または出力装置であってよく、またはそれらを含んでよい。例えば、ユーザーインタフェース130は、スクリーン、タッチスクリーン、マウス、キーボード、ラウドスピーカおよび同様のものを含み得る。いくつかの実施形態では、システム100は、多機能ディスプレイに接続および表示されてよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、通信装置140は、LAN、W-LAN、Wi-Fi、Bluetooth、衛星通信手段および同様のものなどの、任意の形態の有線または無線通信形態を含み得る。例えば、通信装置140は、システム100が、インターネットを介して外部データベースから情報、例えば、更新された気象データ、を受信することを可能にし得る。別の例では、通信装置140は、システム100が、1つ以上のセンサ30A-30Bおよび船舶に関連付けられた測位システム20から情報を受信することを可能にし得る。
【0026】
1つ以上のセンサ30A-30Bは、ソーナー、深度センサ、風センサ(例えば、風プローブ)、動作感知装置、カメラ、レーダおよび同様のものを含んでよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、測位システム20は、船舶の座標、船舶の対地船速(SOG)および対地針路(COG)を提供し得る任意の全地球測位システム(GPS)を含み得る。測位システム20は、システム100に含まれてよく、または外部であってシステム100と通信してよい。測位システム20は、GPSアンテナを含んでよく、GPS衛星と通信するように構成されてよい。測位システム20は、船舶の現在座標などの静的データも、船舶のSOGおよびCOGなどの速度および針路方向に関連する動的データも、提供するように構成されてよい。これらの3つの入力、位置、速度、および方向は、コンピュータ処理装置110が、例えばENC/GISモジュール122から、受信した沿岸/地面の位置にも基づいて、座礁する時間を推定することを可能にし得る。いくつかの実施形態では、コンピュータ処理装置110は、直接または通信装置140を介して、船舶10の推進装置と通信し、制御することができる。コンピュータ処理装置110は、推進装置の状態を変化させてよく、例えば、エンジンを停止させて推進を停止させてよい、または船舶の針路を変化させてよい。コンピュータ処理装置110は、
図3の方法に関して詳細に論じたように、少なくともENC/GISモジュール122および測位システム20から受信したデータを使用して、座礁する時間を推定し得る。現在の速度および方向での現在位置から、推定された座礁する時間が、所定の閾値未満である場合、コンピュータ処理装置110は、例えば、推進装置からエンジンを外すことによって、船舶を強制的に停止させ得る。いくつかの実施形態において、コンピュータ処理装置110は、推進装置に針路を変更するように命令してよく、例えば、船舶が帆船である場合、制御装置は、帆船を減速させるために、ボートを風に逆らってターンさせることができる。
【0028】
ここで、海岸線50または海底70上の障害物60からの位置にある船舶10の側面図および上面図の図である
図2A-
図2Cを参照する。海底深度は、船舶10底部から海底70までの実際の距離とは異なることができるDと表される。保たれていれば、船舶10が座礁するのを防ぎ得る、船舶10の前方にある安全ゾーン15は、
図2Bおよび2Cに破線の長方形として示されている。安全ゾーン15は、コンピュータ処理装置110によって決定されてよく、例えば、
図3の方法に関して論じられるように、船舶10の種類、船舶10の速度および方向、ウォータードリフトおよび風況である、いくつかのパラメータに依存し得る。いくつかの実施形態では、安全ゾーン15は、
図2Cに示されるように、船首方向の各側面からのマージン16を含んでよい。いくつかの実施形態では、マージン16は、船舶の所定の設定に従って設定されてよく、船舶の寸法および種類に依存してよい。例えば、45フィートの長さおよび6メートルビームの寸法を有するヨットは、ヨットの各側面から4メートルのマージンで設定し得る。いくつかの実施形態では、安全ゾーンのフロントマージンは、船舶巡航中に動的に更新され得る座礁の推定時刻に基づいて計算され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、GISおよび/またはENC地図から受信した海底深度は、海中の特定の地点で測定された可能な限りの最低深度を含み得る。従って、海底までの船舶10底部の実際の距離は、異なることがあり、例えば、船舶10喫水(例えば、船舶10の寸法、種類および(例えば、積まれた/降ろされた)重量によって影響を受けることがある)、流れおよび同様のものである、いくつかのパラメータによって影響を受けることがある。船舶10が、矢印でマークされた巡航コースで、例えば、海岸線50または障害物60に接近しているとき、
図3の方法に関して開示および論述されたように、沿岸線50または障害物60に船舶10が座礁するのを防ぐために、いくつかのパラメータが考慮されなければならない。
【0030】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による船舶を制御する方法のフローチャートである
図3を参照する。実行するとき、
図3の方法は、海底に、岩礁および同様のものに、船舶が座礁するのを防ぎ得る。
図3の実施形態は、システム100のコンピュータ処理装置110によって、または任意の他の適切な制御装置によって、実行され得る。ステップ310で、船舶(例えば、船舶10)の位置は、測位システム(例えば、測位システム20)から受信されてよい。例えば、船舶10の位置座標は、船舶10のGPSから受信されてよい。
【0031】
ステップ320で、地理的データは、少なくとも1つのデータベースからを受信されてよい。いくつかの実施形態では、地理的データは、船舶に近接する海底深度Dの地図を少なくとも含み得る。例えば、地理的データは、記憶装置120に含まれる地理的データモジュール122から、またはインターネットを介して外部データベースから、受信される、ENC地図および/またはGISデータを含み得る。いくつかの実施形態では、モジュール122に格納された地理的データは、定期的に更新されてよい。
【0032】
ステップ330で、予期される船舶の船首方位および速度は、センサまたはナビゲーションソフトウェアから計算装置110によって受信されてよい。例えば、予期されるSOGおよびCOGは、測位システム20から受信された情報に基づいて受信または計算されてよい。さらに別の例では、予期される船首方位は、システムに同期させることができるスマートフォン、タブレット上の任意の電子ナビゲーションチャートまたは他の同様の携帯電話のアプリケーションなどの、ナビゲーションソフトウェアから受信されてよい。
【0033】
ステップ340で、船舶の前方の安全ゾーンは、船舶の位置、進行方向、および速度に基づいて計算されてよい。例えば、計算装置110は、船舶10の位置とSOGおよびCOGに基づいて安全ゾーン15の寸法およびマージンを計算してよい。いくつかの実施形態では、船舶10の前方の安全ゾーン15のマージンは、船舶の座礁の推定時刻から計算されてよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、船舶の座礁の推定時刻は、その現在の巡航速度(例えば、SOG)から進行方向(例えば、COG)で船舶10の巡航を停止するのに要する時間を含んでよい。従って、予想される座礁時刻を計算することは、その巡航速度からゼロへの必要とされる船舶の減速度を計算することを含み得る。いくつかの実施形態では、計算は、現在の巡航速度から係合速度(当技術分野では「デッドスローアヘッド」速度としても知られる)までの船舶の減速度を計算することを含み得る。本明細書で使用されるように、係合速度は、エンジンが推進装置と係合または係合解除できる速度である。いくつかの実施形態では、計算は、係合速度から巡航方向でゼロ速度までの船舶の減速度を計算することをさらに含み得る。そのような計算の一例を以下に示す。
【0035】
船舶の減速度aは、式1によって定義され得る。
【数1】
ここで、Fdragは抗力であり、Mは船舶の質量である。
【0036】
抗力Fdragは、式2から計算され得る。
【数2】
ここで、CDは船舶の抗力係数、ρは水密度、Vは船舶の速度(COGでのSOG)、Aは水線下の船舶の断面である。従って、船舶の減速度aは、式3から計算され得る。
【数3】
【0037】
いくつかの実施形態では、気象データは、減速度、従って安全ゾーンの寸法にさらに影響を及ぼし得る。気象データは、風速、風向、高潮および低潮および流れ、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。従って、風力係数Kwindおよび/または流れ係数Kcurrentを減速度計算に加えてよい。例えば、強い向かい風は、必要な減速度を減少させ、船首方向の風ベクトルの投影が、船舶10の停止に必要な減速度を増加させ得る
図4に示されているように、強い走行風は、必要な減速度を増加させ得る。いくつかの実施形態において、風力係数Kwindは、予想される風に従って、0.5-1.5であるように較正され得る。いくつかの実施形態では、流れは同様の効果を有し得る。従って、流れ係数Kcurrentは、0.5-1.5の間になるように較正され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、風速、風向、高潮および低潮、ならびに流れおよび同様のなどの、気象データは、データベースから受信されてよい、または、船舶10に取り付けられた流量計、風センサおよび同様のものなどの、センサから受信されてよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、巡航方向(例えば、COG)における2つの減速度を計算し得る。第1の減速度a
係合速度は、現在の巡航速度(例えば、SOG)から係合速度までの減速度であり、第2の減速度a
停止は、係合速度からゼロまでの減速度である。2回の減速中に船舶が移動する距離(ノットで)を計算する例を表すグラフを、
図5に示す。これから分かるように、最初の10秒間では、係合速度からゼロへの減速度よりも、巡航速度から係合速度への船舶の速度を減らすために、より大きな減速度が得られる。従って、
図5による予期される座礁の時間は、3分である。従って、計算された安全ゾーンは、YYYマイルである。進行方向の安全ゾーンマージンは、開始位置、加速度、および初速度(例えば、SOG)が進行方向(例えば、COG)で既知である場合、任意の既知の運動方程式を使用して計算され得る。いくつかの実施形態では、進行方向の安全ゾーンマージンは、船舶10が巡航しているときに、リアルタイム、位置、SOGおよびCOGで動的に更新されてよい。そのような減速度を達成する方法は、以下のステップ360で与えられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、アラート時間が、安全係数として、座礁時間に追加されてよい。例えば、追加の30秒が、拡張された安全ゾーンを計算するために、追加されてよい。例えば、巡航速度から係合速度に減速する時間は、120秒であってもよく、係合速度からゼロに減速する時間は、60秒であってよく、アラート時間は、30秒であってよい。従って、新たな予期される座礁時間は3.5分であり得る。
【0041】
ステップ350で、安全ゾーンにおける臨界海底深度の位置が、例えば、受信された地理的データに基づいて、識別されてよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、有効海底深度Deffは、例えば、計算装置110によって計算され得る。有効海底深度Deffは、船舶喫水および底部安全マージンXmとして定義され得る。有効海底深度Deffを計算する例が、式4で与えられる。
【数4】
ここで、Xm-は、システム100のセットアップで定義され得る安全マージンであり、デフォルト値、例えば、2m、3m、4m以上である。いくつかの実施形態では、Xmは、船舶の寸法および種類に依存してよく、船舶が大きいほど、選択されるXmは大きくなる。
【0043】
いくつかの実施形態では、有効海底深度Deffが、臨界海底深度よりも安全ゾーン(例えば、安全ゾーン15)内の少なくとも1つの位置で海底深度よりも低いかが、識別され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、臨界海底深度の識別情報の精度を高めるために、コンピュータ処理装置110は、例えば、1つ以上のセンサ30Aおよび30Bから、追加のデータを受信してよい。いくつかの実施形態では、海底からの船舶10の距離のより正確な決定は、実際の海深を測定するために深さゲージを使用することによって決定されてよい。いくつかの実施形態では、船舶の位置での実際の海底深度のリアルタイム測定は、船舶に関連する深度センサ(例えば、センサ30Aおよび30B)から受信され得る。いくつかの実施形態では、実際の海底深度は、地理的データから受信した船舶の位置での海底深度と比較され得る。例えば、補正係数は、比較に基づいて計算されてよい。いくつかの実施形態では、受信された地理的データに含まれる海底深度は、比較に基づいて、例えば、補正係数を掛けることによって、補正されてよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、処理装置110は、深さゲージのオフセットを較正するために較正プロセスを実行してよく、それにより、海中の船舶10の喫水を計算する必要がなくなる。例えば、既知の深さを有する既知の位置(例えば、港内)で、1つ以上の深さゲージは、既知の海底深さと比較される海底の深さの測定を行い得る。1つ以上の深さゲージは、例えば、船のへさき(船首)および/または船尾に配置されてよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、船舶の位置での予期される海底深度は、例えば、高潮/低潮を考慮に入れて、地理的データおよび日時に基づいてリアルタイムで計算されてよい。いくつかの実施形態では、ENC/GISから受信された平均海底深度は、特定の日時での船舶の位置での予期される高潮/低潮に従って補正されてよい。
【0047】
ステップ360で、安全ゾーン内で臨界海底深度が識別された場合に、船舶の推進装置の状態が変更され得る。いくつかの実施形態では、計算装置110は、推進装置を制御して、例えば、巡航速度から係合速度まで、船舶の速度を低下させ得る。いくつかの実施形態では、計算装置110は、例えば、係合速度のときに、推進装置を制御して、船舶のエンジンを推進装置から係合解除させ得る。いくつかの実施形態では、計算装置110は、推進装置を制御して、動的位置決めシステム(DPS)を起動させてよく、これにより、船舶10を実質的にその現在位置に保ち得る。いくつかの実施形態では、計算装置110は、船舶を風に漂うことなくその位置に保つために、必要な推力を提供しながら、船舶を風向に向かって操縦するように推進装置を制御し得る。そのような操縦は、帆船(例えば、ケッチ、ジーベックおよび同様のもの)についてさえも、速度を減少させ、船舶を停止させることを可能にし得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、計算処理装置110は、衝突を回避するために、船舶の進路を変更し得る。例えば、計算処理装置110は、推進装置の攪拌システムを攪拌し、それにより、船舶10を、例えば、海岸線50または障害物60から離れるように方向転換させ得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、ステップ360に加えて、またはステップ360に代えて、計算装置110は、臨界海底深度が安全ゾーン内で識別されたときに、制御装置によって、ユーザーデバイスにアラートを送信するように構成されてよい。ユーザーデバイスは、外部ユーザーデバイス(例えば、ユーザーの携帯電話、ラップトップコンピュータ、スマートウォッチおよび同様のもの)であってよい。いくつかの実施形態では、計算装置110は、ユーザーインタフェース130にアラートを送信するように構成されてよい。アラートは、音声、振動、視覚的警報、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0050】
本発明の特定の特徴が本明細書に例示および説明されたが、多くの修正、置換、変更、および均等物が、当業者には今や思い浮かぶであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、そのような修正および変更全てが本発明の真の趣旨に含まれるとしてカバーすることを意図していることを、理解されたい。