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特許7502293優れた溶融特性を有するポリプロピレン樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】優れた溶融特性を有するポリプロピレン樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/02 20060101AFI20240611BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240611BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20240611BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08F255/02
C08F4/6592
C08F210/06
C08J9/00 Z CES
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021530783
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2019016478
(87)【国際公開番号】W WO2020111777
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0150791
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ス-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ヒョン-ユル
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ジュン-グン
(72)【発明者】
【氏名】イ、レ-ハ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ウン-ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ピョン-フン
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0034729(KR,A)
【文献】国際公開第2017/176074(WO,A1)
【文献】特表平09-510253(JP,A)
【文献】特開2001-172465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/02
C08F 4/6592
C08F 210/06
C08J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒の存在下で、プロピレン単量体を重合反応させてポリプロピレンを生成する段階と、
前記生成されたポリプロピレン及び未反応のプロピレン単量体にジエン化合物及び共単量体を投入して反応させることで、前記ポリプロピレンの主鎖に炭素数40以上の長鎖分岐を形成する段階と、を含む、発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法であって、前記発泡用ポリプロピレン樹脂が、溶融指数(230℃、2.16kg荷重)が0.1~50g/10minであり、下記溶融伸び時間の測定方法で測定した最大溶融伸び時間が20秒以上である伸び率を有する、発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法
溶融伸び時間の測定方法:溶融張力の測定時に、サンプルが固定された置台が軸を中心に回転する時間を、サンプルの伸び距離に換算して測定した値であって、回転速度であるExtension Rateは0.1s -1 に設定して測定し、時間によるサンプルの伸び時に、最高溶融張力値を示す時の時間を溶融伸び率として示す。
【請求項2】
前記ジエン化合物は、(C~C20)の脂肪族ジエン化合物及び芳香族ジエン化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ジエン化合物は、プロピレン単量体100重量部に対して0.0001~5重量部の含量で投入する、請求項1に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記共単量体は、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、及び1-ドデセンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記共単量体は、プロピレン単量体100重量部に対して0.1~20重量部の含量で投入する、請求項1に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ポリプロピレンを生成する段階は第1反応器で行い、ポリプロピレンの主鎖に長鎖分岐を形成する段階は、第1反応器内でポリプロピレンを生成する段階と異なる反応条件で行うか、第1反応器とは異なる第2反応器で行う、請求項1から5の何れか一項に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ポリプロピレンを生成する段階の前に、前記プロピレン単量体を予備重合する段階をさらに含む、請求項1から5の何れか一項に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記メタロセン触媒は、下記化学式1及び化学式2のうち少なくとも1種の遷移金属化合物を含むものである、請求項1から5の何れか一項に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【化1】
【化2】
(前記化学式1及び化学式2中、
及びMは、それぞれ独立して、周期律表上の3~10族元素であり、
及びXは、それぞれ独立して、(C-C20)アルキル基、(C-C20)シクロアルキル基、(C-C20)アルキルシリル基、シリル(C-C20)アルキル基;(C-C20)アリール基、(C-C20)アリール(C-C20)アルキル基、(C-C20)アルキル(C-C20)アリール基、(C-C20)アリールシリル基、シリル(C-C20)アリール基;(C-C20)アルコキシ基、(C-C20)アルキルシロキシ基;(C-C20)アリールオキシ基;ハロゲン基;またはアミン基であり、
ArとAr及びArとArは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタチエニル、及びインデニルのうち何れか1つの骨格を有するリガンドであり、
さらに、nは、それぞれ独立して、1~5の整数であり、
Bは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、及びリンから選択されるものであり、
Rは、水素、(C-C20)アルキル基、(C-C20)シクロアルキル基、(C-C20)アルキルシリル基、シリル(C-C20)アルキル基、(C-C20)アリール基、(C-C20)アリール(C-C20)アルキル基、(C-C20)アルキル(C-C20)アリール基、(C-C20)アリールシリル基、またはシリル(C-C20)アリール基であり、
mは、1または2の整数である。)
【請求項9】
前記メタロセン触媒は、化学式3~5で表される化合物のうち少なくとも1種の助触媒をさらに含む、請求項8に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
【化3】
(前記化学式3中、
Alはアルミニウムであり;
Raは、ハロゲン基、またはハロゲン基で置換又は非置換された(C-C20)ヒドロカルビル基であり、
Oは酸素であり;
nは2以上の整数である。)、
【化4】
(前記化学式4中、Qは、アルミニウムまたはボロンであり;
Rbは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン基、またはハロゲン基で置換又は非置換された(C-C20)ヒドロカルビル基である。)、
【化5】
(前記化学式5中、[W]は、カチオン性ルイス酸、または水素原子が結合したカチオン性ルイス酸であり;
Zは13族元素であり;
Rcは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン基、(C-C20)ヒドロカルビル基、アルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換された(C-C20)アリール基;ハロゲン基、(C-C20)ヒドロカルビル基、アルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換された(C-C20)アルキル基である。)。
【請求項10】
前記発泡用ポリプロピレン樹脂が、加工性(下記押出機のトルク値の測定方法で測定した押出機のトルク値)が30~40N・mである、請求項1から9の何れか一項に記載の発泡用ポリプロピレン樹脂の製造方法。
出機のトルク値の測定方法:押出機に取り付けられたトルク測定機(ロードセル機器を用いた測定方法)で測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高溶融張力ポリプロピレン樹脂及びその製造方法に関し、より詳細には、メタロセン系触媒を用いた高溶融張力ポリプロピレン樹脂の製造方法及びポリプロピレン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(PP)をフォーミング(foaming)、熱成形、押出コーティング、ブロー成形などの成形工程に適用するためには、溶融体の溶融特性が重要である。溶融特性を改質するために、PPの主鎖に長鎖分岐(LCB)を追加することで溶融張力を効率的に向上させることが、効果的な方法として知られている。
【0003】
すなわち、高溶融張力ポリプロピレン(HMSPP)の製造は、高分子鎖の長鎖分岐の導入により行われ、長鎖分岐を導入するための方法としては、次のような様々な方法が知られている。
【0004】
例えば、米国特許第5,368,919号、第5,414,027号、第5,541,236号、第5,554,668号、第5,591,785号、及び第5,731,362号には、電子線照射装置を用いた、高溶融張力を有するポリプロピレン重合体について開示されている。これらの特許により得られたポリプロピレン重合体は、優れた性能を有するが、電子線照射装置の設置が必要であるため運用費が高価であり、生産性が低くて、高溶融張力ポリプロピレンの製造コストが高いという問題がある。
【0005】
また、米国特許第5,416,169号及び第4,525,257号とWO1997/049759号には、有機過酸化物を用いた高溶融張力ポリプロピレンの製造方法が開示されており、特定の反応条件でポリプロピレンと反応させ、ポリプロピレンに長鎖を導入している。しかし、過酸化物の使用による残留問題、ポリプロピレン分解問題、黄変問題などとともに、反応押出工程を経る必要があるという欠点がある。
【0006】
また、韓国公開特許第2011-0084303号には、2種の触媒を用いる方法が開示されているが、2段階の反応が行われることにより、施設及び製造コストの点から経済的ではないという問題がある。
【0007】
さらに、韓国公開特許第2016-0122941号には、1種のメタロセン触媒とジエン単量体を用いて高溶融張力ポリプロピレンを製造する方法が開示されている。しかし、溶融張力の増加に比べて溶融伸び率が短く、一定含量のゲルが発生するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリプロピレンの主鎖中の長鎖分岐構造を制御することができ、溶融張力及び溶融伸び率に優れたポリプロピレンの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、ゲル含量が1重量%以下に維持され、かつ溶融張力が最適レベルに向上したポリプロピレン樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一見地として、高溶融張力ポリプロピレン樹脂の製造方法を提供するためのものであって、上記方法は、メタロセン触媒の存在下で、プロピレン単量体を重合反応させてポリプロピレンを生成する段階と、上記生成されたポリプロピレン及び未反応のプロピレン単量体にジエン化合物及び共単量体を投入して反応させることで、上記ポリプロピレンの主鎖に長鎖分岐を形成する段階と、を含む。
【0011】
上記ジエン化合物は、(C~C20)の脂肪族ジエン化合物及び芳香族ジエン化合物から選択される少なくとも1種であり、上記ジエン化合物は、プロピレン単量体100重量部に対して、0.0001~5重量部の含量で投入することができる。
【0012】
上記共単量体は、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、及び1-ドデセンからなるオレフィンから選択される少なくとも1種であり、上記共単量体は、プロピレン単量体に対して0.1~20重量部の範囲で投入することができる。
【0013】
上記ポリプロピレンを生成する段階は第1反応器で行い、ポリプロピレンの主鎖に長鎖分岐を形成する段階は第2反応器で行うことが好ましい。
【0014】
上記ポリプロピレンを生成する段階の前に、上記プロピレン単量体を予備重合する段階をさらに含むことができる。
【0015】
上記メタロセン触媒は、下記化学式1及び化学式2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1種を含む。
【0016】
【化1】
【0017】
【化2】
【0018】
上記化学式1及び化学式2中、
及びMは、それぞれ独立して、周期律表上の3~10族元素であり、
及びXは、それぞれ独立して、(C-C20)アルキル基、(C-C20)シクロアルキル基、(C-C20)アルキルシリル基、シリル(C-C20)アルキル基;(C-C20)アリール基、(C-C20)アリール(C-C20)アルキル基、(C-C20)アルキル(C-C20)アリール基、(C-C20)アリールシリル基、シリル(C-C20)アリール基;(C-C20)アルコキシ基、(C-C20)アルキルシロキシ基;(C-C20)アリールオキシ基;ハロゲン基;またはアミン基であり、
ArとAr及びArとArは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタチエニル、及びインデニルのうち何れか1つの骨格を有するリガンドであり、
m及びnは、それぞれ独立して、1~5の整数であり、
Bは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、及びリンから選択されるものであり、
は、水素、(C-C20)アルキル基、(C-C20)シクロアルキル基、(C-C20)アルキルシリル基、シリル(C-C20)アルキル基、(C-C20)アリール基、(C-C20)アリール(C-C20)アルキル基、(C-C20)アルキル(C-C20)アリール基、(C-C20)アリールシリル基、またはシリル(C-C20)アリール基であり、
pは、1または2の整数である。
【0019】
また、化学式3~5で表される化合物のうち少なくとも1種の化合物を助触媒としてさらに含むことができる。
【0020】
【化3】
【0021】
上記化学式3中、Alはアルミニウムであり、Oは酸素であり、Raは、ハロゲン基、またはハロゲン基で置換又は非置換された(C-C20)ヒドロカルビル基であり、は2以上の整数である。
【0022】
【化4】
【0023】
上記化学式4中、Qは、アルミニウムまたはボロンであり、Rbは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン基、またはハロゲン基で置換又は非置換された(C-C20)ヒドロカルビル基である。
【0024】
【化5】
【0025】
上記化学式5中、[W]は、カチオン性ルイス酸、または水素原子が結合したカチオン性ルイス酸であり、Zは13族元素であり、Rcは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン基、(C-C20)ヒドロカルビル基、アルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換された(C-C20)アリール基;ハロゲン基、(C-C20)ヒドロカルビル基、アルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換された(C-C20)アルキル基である。
【0026】
本発明は、一見地として、高溶融張力ポリプロピレン樹脂を提供するためのものであって、上記樹脂は上記の方法により製造され、ジエン化合物の残留量が0.0001~5重量%であり、ゲル含量が1重量%以下である。
【0027】
上記ポリプロピレン樹脂は、溶融指数(230℃、2.16kg荷重)が0.1~50g/10minであり、溶融張力(Extensional viscosity fixture in the advanced rheoetric expansion system(ARES)、190℃、Extension Rate of 0.1s-1)が1~30gfであり、最大溶融伸び時間が20秒以上である溶融伸び率を有することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の方法によると、従来の工程に比べてポリプロピレンの主鎖中の長鎖分岐構造を制御することができる。
【0029】
本発明の方法によると、ゲル含量が1重量%以下に維持され、かつ溶融張力及び溶融伸び率に優れたポリプロピレンを製造することができる。
【0030】
さらに、上記のようなポリプロピレンは加工性に優れるため、押出により表面が美麗な押出品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例1~5のポリプロピレン樹脂の溶融伸び時間による溶融張力の推移を示したグラフである。
図2】比較例1~4のポリプロピレン樹脂の溶融伸び時間による溶融張力の推移を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、ポリプロピレンの主鎖に長鎖分岐を形成することで、ジエン改質されたポリプロピレン樹脂を製造する方法を開示する。
【0033】
本発明の方法は、反応器に、メタロセン触媒下で、プロピレン単量体を投入してポリプロピレンを重合し、次いで、ジエン化合物及び共単量体を追加投入及び反応させることで、ポリプロピレンの主鎖に長鎖分岐が形成された、溶融張力に優れたポリプロピレンを得ることができる。これにより得られたポリプロピレン樹脂は、加工性に優れ、表面が美麗な成形品を製造することができる。
【0034】
上記長鎖分岐が形成されたポリプロピレンの重合反応は、触媒の存在下で、プロピレン単量体、共単量体、及びジエン化合物を反応器に投入して反応させることで行うことができる。
【0035】
上記触媒としてはメタロセン触媒を用いる。上記メタロセン触媒としては、下記化学式1及び化学式2のうち少なくとも1種の遷移金属化合物を含む触媒を用いることが好ましい。
【0036】
【化6】
【0037】
上記化学式1中、ArとArは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタチエニル、及びインデニルのうち何れか1つの骨格を有するリガンドである。
【0038】
上記化学式1中、Mは、周期律表上の3~10族元素である。
【0039】
上記化学式1中、Xは、(C-C20)アルキル基、( -C20)シクロアルキル基、(C-C20)アルキルシリル基、シリル(C-C20)アルキル基;(C-C20)アリール基、(C-C20)アリール(C-C20)アルキル基、(C-C20)アルキル(C-C20)アリール基、(C-C20)アリールシリル基、シリル(C-C20)アリール基;(C-C20)アルコキシ基、(C-C20)アルキルシロキシ基;(C-C20)アリールオキシ基;ハロゲン基;またはアミン基である。
【0040】
さらに、上記化学式1中、mは1~5の整数である。
【0041】
【化7】
【0042】
上記化学式2中、ArとArは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタチエニル、及びインデニルのうち何れか1つの骨格を有するリガンドである。
【0043】
上記化学式2中、Mは、周期律表上の3~10族元素である。
【0044】
上記化学式2中、Xは、(C-C20)アルキル基、( -C20)シクロアルキル基、(C-C20)アルキルシリル基、シリル(C-C20)アルキル基;(C-C20)アリール基、(C-C20)アリール(C-C20)アルキル基、(C-C20)アルキル(C-C20)アリール基、(C-C20)アリールシリル基、シリル(C-C20)アリール基;(C-C20)アルコキシ基、(C-C20)アルキルシロキシ基;(C-C20)アリールオキシ基;ハロゲン基;またはアミン基である。
【0045】
上記化学式2中、nは1~5の整数である。
【0046】
上記化学式2中、Bは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、及びリンから選択される。
【0047】
上記化学式2中、は、水素、(C-C20)アルキル基、(C-C20)シクロアルキル基、(C-C20)アルキルシリル基、シリル(C-C20)アルキル基、(C-C20)アリール基、(C-C20)アリール(C-C20)アルキル基、(C-C20)アルキル(C-C20)アリール基、(C-C20)アリールシリル基、またはシリル(C-C20)アリール基である。
【0048】
さらに、上記化学式2中、nは1または2の整数である。
【0049】
本発明に記載の用語「アルキル」は、炭素及び水素原子のみから構成された1価の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素ラジカルを意味するものであって、かかるアルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシルなどを含むが、これらに限定されない。
【0050】
また、本発明に記載の用語「シクロアルキル」は、1つの環から構成された1価の脂環族アルキルラジカルを意味するものであって、シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどを含むが、これらに限定されない。
【0051】
また、本発明に記載の用語「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルを意味するものであって、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0052】
また、本発明に記載の用語「アリール」は、1つの水素の除去により芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、単一または縮合環系を含む。具体的な例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、フルオレニル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0053】
また、本発明に記載の用語「アルコキシ」は、-O-アルキルラジカルを意味するものであって、ここで、「アルキル」は上記の定義のとおりである。かかるアルコキシラジカルの例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシなどを含むが、これに限定されない。
【0054】
また、本発明に記載の用語「アリールオキシ」は、-O-アリールラジカルを意味するものであって、ここで、「アリール」は上記の定義のとおりである。かかるアリールオキシラジカルの例としては、フェノキシ、ビフェノキシ、ナフトキシなどを含むが、これらに限定されない。
【0055】
また、本発明に記載の用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
【0056】
本発明において、化学式1または2で表されるような上記遷移金属化合物は、優れた触媒活性及び共重合性により、高い溶融張力及び分子量、均一な組成分布を有し、長鎖分岐構造の制御が可能なポリプロピレン樹脂の製造を可能とする。
【0057】
本発明の一実施形態において、上記遷移金属化合物は、下記構造の化合物から選択されるものであることができるが、こられに限定されるものではない。
【0058】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0059】
上記構造の化合物において、Cpは、インデニル、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタチエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、トリメチルシクロペンタジエニル、またはテトラメチルシクロペンタジエニルであり;Mは、4価のチタン、ジルコニウム、またはハフニウムであり;Xは、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、またはジメチルアミノである。
【0060】
一方、上記化学式1または2の遷移金属化合物は、ポリプロピレンの重合に用いられる活性触媒成分になるために、遷移金属化合物中のリガンドを抽出して中心金属をカチオン化させながら、弱い結合力を有する対イオン、すなわち、アニオンとして作用し得る化学式3~5で表される化合物が助触媒としてともに作用する。
【0061】
【化13】
【0062】
化学式3中、Alはアルミニウムであり、Raは、ハロゲン基、またはハロゲン基で置換又は非置換された(C-C20)ヒドロカルビル基であり、Oは酸素であり、nは2以上の整数である。
【0063】
【化14】
【0064】
化学式4中、Qは、アルミニウムまたはボロンであり、Rbは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン基、またはハロゲン基で置換又は非置換された(C-C20)ヒドロカルビル基である。
【0065】
【化15】
【0066】
化学式5中、[W]は、カチオン性ルイス酸、または水素原子が結合したカチオン性ルイス酸であり、Zは13族元素であり、Rcは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン基、(C-C20)ヒドロカルビル基、アルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換された(C-C20)アリール基;ハロゲン基、(C-C20)ヒドロカルビル基、アルコキシ基、及びフェノキシ基からなる群から選択される1または2以上の置換基で置換された(C-C20)アルキル基である。
【0067】
上記助触媒化合物は、上記化学式1または2で表される遷移金属化合物とともに触媒組成物に含まれ、上記遷移金属化合物を活性化させる役割を果たす。具体的に、上記遷移金属化合物が、オレフィンの重合に用いられる活性触媒成分になるために、遷移金属化合物中のリガンドを抽出して中心金属(M)をカチオン化させながら、弱い結合力を有する対イオン、すなわち、アニオンとして作用し得る上記化学式3で表される単位を含む化合物、化学式4で表される化合物、及び化学式5で表される化合物が助触媒としてともに作用する。
【0068】
上記化学式3で表される「単位」は、化合物中に、[ ]内の構造がn個連結されている構造であって、化学式3で表される単位を含む場合であれば、化合物中の他の構造は特に限定されず、化学式3の繰り返し単位が互いに連結されているクラスター形、例えば、球状の化合物であることができる。
【0069】
化学式3で表される単位を含む化合物は、特に限定されないが、アルキルアルミノキサンであることが好ましい。非制限的な例として、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどが挙げられる。上記遷移金属化合物の活性を考慮すると、メチルアルミノキサンが好ましく使用可能である。
【0070】
また、上記化学式4で表される化合物はアルキル金属化合物であり、特に限定されないが、その非制限的な例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどが挙げられる。上記遷移金属化合物の活性を考慮すると、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上が好ましく使用可能である。
【0071】
化学式5で表される化合物は、上記遷移金属化合物の活性を考慮すると、上記[W]が、水素原子が結合したカチオン性ルイス酸である場合、ジメチルアニリニウムカチオンであり、[W]がカチオン性ルイス酸である場合、[(CC]であり、上記[Z(Rc)は[B(Cであるものが好ましく使用できる。
【0072】
化学式5で表される化合物は、特に限定されないが、[W]が、水素原子が結合したカチオン性ルイス酸である場合の非制限的な例としては、トリエチルアンモニウムテトラキスフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラキスフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキスフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキスフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、アニリニウムテトラキスフェニルボレート、アニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキスフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキスフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキスフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラキスフェニルボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0073】
上記助触媒化合物の添加量は、上記化学式1または2で表される遷移金属化合物の添加量、及び上記助触媒化合物を十分に活性化させるのに必要な量などを考慮して決定されることができる。上記助触媒化合物の含量は、上記化学式1または2で表される遷移金属化合物に含有されている遷移金属1モルに対して、助触媒化合物に含有されている金属のモル比を基準として1:1~100,000であり、好ましくは1:1~10,000、より好ましくは1:1~5,000であることができる。
【0074】
より具体的に、上記化学式3で表される化合物は、上記化学式1または2で表される遷移金属化合物に対して、好ましくは1:10~5,000のモル比、さらに好ましくは1:50~1,000のモル比、最も好ましくは1:100~1,000のモル比で含まれることができる。上記化学式1または2の遷移金属化合物に対する、上記化学式3で表される化合物のモル比が1:10未満である場合には、アルミノキサンの量が非常に少ないため、金属化合物の活性化が完全に進行されないという問題が発生する恐れがあり、1:5,000を超える場合には、過量のアルミノキサンが触媒毒として作用し、高分子鎖を成長しにくくする役割をする恐れがある。
【0075】
また、上記化学式4で表される助触媒化合物において、Qがボロンである場合には、上記化学式1または2で表される遷移金属化合物に対して1:1~100、好ましくは1:1~10、さらに好ましくは1:1~3のモル比で担持されることができる。そして、上記化学式4で表される助触媒化合物において、Qがアルミニウムである場合には、重合系中の水の量によって変わり得るが、上記化学式1または2で表される遷移金属化合物に対して1:1~1000、好ましくは1:1~500、さらに好ましくは1:1~100のモル比で担持されることができる。
【0076】
また、上記化学式5で表される助触媒化合物は、上記化学式1または2で表される遷移金属化合物に対して1:1~100、好ましくは1:1~10、さらに好ましくは1:1~4のモル比で担持されることができる。上記化学式5で表される助触媒化合物の比が1:1未満である場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて、金属化合物の活性化が完全に行われないため、生成された触媒組成物の活性度が低下するという問題が発生し、1:100を超える場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残留している過量の活性化剤により、触媒組成物の単価が経済的ではないか、生成された高分子の純度が低下するという問題が発生する恐れがある。
【0077】
本発明で提示された触媒組成物は、重合反応器内で均一な形態で存在するため、該当重合体の溶融点以上の温度で行う溶液重合工程に適用可能である。しかし、米国特許第4,752,597号に開示されたように、多孔性金属オキシド支持体に上記遷移金属触媒及び助触媒を支持させて得られる不均一触媒組成物の形態で、スラリー重合や気相重合工程に用いられることができる。したがって、本発明の上記触媒組成物を無機系担体または有機高分子担体とともに用いると、スラリー重合や気相重合工程にも適用可能である。すなわち、上記遷移金属化合物と助触媒化合物は、無機系担体または有機高分子担体に担持された形態でも使用可能である。
【0078】
本発明によるポリプロピレン樹脂の製造方法は、上記の遷移金属触媒組成物の存在下でプロピレン単量体を重合させることで行われる。この際、遷移金属触媒と助触媒成分は別に反応器内に投入してもよく、または各成分を予め混合して反応器に投入してもよく、投入順序、温度、または濃度などの混合条件は特に制限されない。
【0079】
上記ポリプロピレンの分子量は、水素の投入により調節されることができる。上記水素は、プロピレン単量体100モルに対して0~1モルの含量で投入されることが好ましい。
【0080】
上記プロピレン単量体の反応によるポリプロピレンの重合は、40~80℃の温度で20分~120分間行うことができる。より好ましくは、60~80℃の温度で行うことができる。
【0081】
必要に応じて、上記ポリプロピレンの主鎖を重合する前に、予備重合を行うことができる。上記予備重合は、反応器に触媒を投入し、反応温度が5~60℃に達した後に少なくとも3分以上、好ましくは5分~30分間行うことができる。
【0082】
このように、ポリプロピレンの予備重合を行った後に、または予備重合なしに、反応器の温度を上昇させてポリプロピレンの重合を行うことができ、これにより、ポリプロピレン主鎖を得ることができる。
【0083】
本発明は、上記で得られたポリプロピレン主鎖及び未反応のプロピレン単量体にジエン化合物及び共単量体を反応させることで、ポリプロピレン主鎖及び反応するプロピレン単量体に長鎖分岐を形成することができる。
【0084】
上記ジエン化合物は、(C~C20)の脂肪族ジエン系及び芳香族ジエン系から選択される1種以上であり、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン、1,8-エチリデン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、4-ビニル-1-シクロヘキセン、3-ビニル-1-シクロヘキセン、2-ビニル-1-シクロヘキセン、1-ビニル-1-シクロヘキセン、o-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、及びm-ジビニルベンゼンからなる群から選択される化合物が挙げられ、これらを単独でまたは2つ以上を混合して用いることができる。
【0085】
この際、上記ジエン化合物は、プロピレン単量体100重量部に対して0.0001~5重量部の含量で投入することが好ましい。上記含量を外れた場合には、溶融張力向上の点から好ましくない特性を示す可能性がある。例えば、上記範囲未満の含量でジエン化合物を用いる場合には、溶融張力が十分に発現されず、上記範囲を超えて過量のジエン化合物を用いる場合には、多量のゲルが発生する恐れがある。
【0086】
上記共単量体は、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンのオレフィンから選択される1種以上であることができる。
【0087】
この際、上記共単量体は、プロピレン単量体100重量部に対して0.1~20重量部の含量で投入することが好ましい。共単量体の含量が上記範囲未満である場合には、加工性が向上せず、上記範囲を超えて過量を用いる場合には、好ましくない物性変化をもたらす恐れがある。
【0088】
上記ポリプロピレン主鎖の重合及びジエン化合物の反応による長鎖分岐の形成は、同一の反応器で行うことができるが、互いに異なる反応器で行うことがより好ましい。
【0089】
具体的に、必要に応じて、予備重合のための予備重合器を含む第1反応器で上記ポリプロピレン主鎖の重合を行い、これにより生成されたポリプロピレン及び未反応物を第2反応器に供給し、上記第2反応器にジエン及び共単量体を投入することで、ポリプロピレンの主鎖に長鎖分岐を形成させることができる。すなわち、本発明は、2つの連続した反応器からなる2段の反応工程により行うことが好ましい。この際、第1及び第2反応器は、物理的に異なる反応器の場合に限定されず、同一の反応器を用いる場合であっても、反応条件などが実質的に異なる場合を含む。
【0090】
この際、上記第1反応器及び第2反応器は、バッチ式反応器であってもよく、また、ループ式のような連続式反応器であってもよい。
【0091】
このような本発明の方法によると、ポリプロピレン中の長鎖分岐構造を制御することができ、溶融張力及び溶融伸び率に優れたポリプロピレンを製造することができる。また、ゲル含量が1重量%以下に維持され、かつ溶融張力が最適レベルに向上したポリプロピレンを得ることができる。
【0092】
本発明により得られるポリプロピレン樹脂は、ジエン化合物の含量が0.0001~5重量%であり、ゲル含量が1重量%以下であり、重量平均分子量(Mw)が100,000~3,000,000g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)が2~20であることができる。さらに、上記ポリプロピレン樹脂は、溶融指数(230℃、2.16kg荷重)が0.1~50g/10minであり、溶融張力(Extensional viscosity fixture in the advanced rheometric expansion system(ARES)、190℃、Extension Rate of 0.1s-1)が1~30gfの値を有し、最大溶融伸び時間が20秒以上である溶融伸び率を有する。
【実施例
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明の一実施形態を具体的に示したものであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【0094】
担持触媒の製造
遷移金属化合物として、ジメチルシリルビス(2-メチル-4-ブチルフェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(S-PCI社)を使用した。
【0095】
全ての合成反応は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下で行い、この際、標準シュレンク(Standard Schlenk)技術とグローブボックス(Glove Box)技術を用いた。
【0096】
トルエンは、無水グレード(Anhydrous Grade)(Sigma-Aldrich社)のものを、活性化された分子篩(Molecular Sieve、4A)または活性化されたアルミナ層に通過させてさらに乾燥してから使用した。助触媒であるMAO(メチルアルミノキサン、Methylaluminoxane)は、10%のトルエン溶液(HS-MAO-10%)(Albemarle社)を購買して使用し、焼成されたシリカは、それ以上処理せずに使用した。また、実施例及び比較例で使用された触媒化合物は、追加精製なしに使用した。
【0097】
グローブボックス中で、シュレンクフラスコ(100ml)にシリカ(Grace製、製品名:XPO-2412、2.0g)を入れた後、これに無水トルエン溶液10mlを添加した。
【0098】
これに、メチルアルミノキサン約10.2ml(トルエン中にメチルアルミノキサン10重量%溶液、Al基準15mmol、Grace製)を10℃でゆっくりと滴下し、0℃で約1時間撹拌した後、70℃に昇温させて3時間撹拌し、25℃に冷却した。これにより、触媒化合物を得た。
【0099】
これと別に、グローブボックス中で、上記合成された触媒化合物(100μmol)をさらに他の100mlのシュレンクフラスコに入れてグローブボックスから取り出した後、無水トルエン溶液10mlを添加した。
【0100】
これに、上記メチルアルミノキサンを含む溶液を、シリカ及びメチルアルミノキサンを含む溶液に10℃でゆっくりと加えた後、70℃に昇温させて1時間撹拌し、25℃に冷却して約24時間撹拌した。
【0101】
次に、得られた反応結果物を十分な量のトルエン及びヘキサンで洗浄し、未反応のアルミニウム化合物を除去した。その後、真空で乾燥させて担持触媒を得た。
【0102】
実施例1
内部容量が3Lであるステンレス鋼のオートクレーブの内部を窒素で完全に置換した。
【0103】
プロピレンでパージしながら、トリイソブチルアルミニウム(triisobutylaluminum、Aldrich製)2mmol、水素15mg、及びプロピレン500gを順に投入した後、40℃に昇温した。
【0104】
上記製造された遷移金属化合物が担持された触媒0.05gをn-ヘキサン(n-Hexane)3mlとともにフラスコで撹拌したものを反応器内に注入した。
【0105】
5分間予備重合し、70℃に昇温した後、第1重合反応を30分間行った。
【0106】
第1重合反応を進行した後、ジエン3ml及び1-ヘキセン5gを注入し、第2重合反応を30分間行った。
【0107】
反応の終結のために温度を常温に下げた後、余分のプロピレンガスを排出させて重合体パウダーを得た。次いで、重合体パウダーを真空オーブン内で80℃に加熱しながら12時間以上乾燥させることで、ポリプロピレン樹脂を製造した。
【0108】
反応物の投入量、反応温度、及び反応条件を表1に示した。
【0109】
実施例2~7
表1に示したような含量及び条件を適用し、実施例1と同様の方法によりポリプロピレン樹脂を製造した。
【0110】
比較例1
実施例1において、ジエンを1.5ml使用し、第1重合反応及び第2重合反応の区分なしに、反応温度が70℃に達した時に直ちにジエンを投入したことを除き、実施例1と同様の方法によりポリプロピレン樹脂を製造した。
【0111】
反応物の投入量、反応温度、及び反応条件を表2に示した。
【0112】
比較例2~6
表2に示したような含量及び条件を適用し、実施例1と同様の方法によりポリプロピレン樹脂を製造した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
物性評価
上記実施例1~7及び比較例1~6で製造されたポリプロピレン樹脂に対して、下記のような方法により物性を測定し、その結果を下記表3にそれぞれ示した。
【0116】
(1)溶融指数(Melt Index、MI)
ASTM D1238に準じて、ポリプロピレン樹脂を230℃で4分間それぞれ加熱した後、シリンダーに2.16kgのピストンを元の位置におき、オリフィス(内径:2.09mm、長さ:8mm)を一定時間(分単位)通過して出た樹脂の重量を測定し、10分間の通過量に換算した。
【0117】
(2)溶融張力(Extensional viscosity fixture(EVF) Melt Strength)
Advanced rheometric expansion system(ARES)のExtensional viscosity fixture(EVF)モードを用いて測定した。試験片は、ホットプレス溶融または射出により横20mm、縦10mm、及び厚さ7mmに製作された。試験片を流量(Rheometric)測定装置(2KFRTN、TA Instrument社)を用いてサンプル置台に固定させた後、サンプル置台が軸を中心に回転する時に、試験片にかかる抵抗値から溶融張力を測定した。サンプル置台の回転距離(伸び率)によって変化される溶融張力のうち最大値を溶融張力として測定した。この際、サンプル置台の回転速度であるExtension Rateは0.1s-1に設定し、測定温度は190℃であった。
【0118】
(3)溶融伸び率(Extensional viscosity fixture(EVF)、Elongation Time)
上記溶融張力の測定時に、サンプルが固定された置台が軸を中心に回転する時間を、サンプルの伸び距離に換算して測定した。回転速度であるExtension Rateは0.1s-1に設定して測定した。時間によるサンプルの伸び時に、最高溶融張力値を示す時の時間を溶融伸び率として測定した。
【0119】
(4)ゲル(Gel)含量
ASTM D2765の方法に準じてゲル含量を測定した。乾燥された生成物を粉砕し、キシレンに入れた後、沸点で12時間抽出して残存量を測定した。この際、抽出前の試料の重量に対する、抽出後の残存試料の百分率をゲル含量とした。
【0120】
(5)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)
PL Mixed-BX2+preColが取り付けられたPL210 GPCを用いて、135℃で1.0mL/minの速度で1,2,3-卜リクロロベンゼン溶媒下で測定し、PLポリスチレン標準物質を用いて分子量を補正した。
【0121】
(6)溶融点(Tm)分析
Dupont DSC2910を用いて、窒素雰囲気下で10℃/minの速度で2nd加熱条件で測定した。
【0122】
(7)加工性
加工性は、押出機のトルクを測定して評価し、押出機に取り付けられたトルク測定機(ロードセル機器を用いた測定方法)で測定した。
【0123】
【表3】
【0124】
表3を参照すると、本発明の方法による実施例1~7で製造されたポリプロピレン樹脂は、触媒活性に優れ、適正な重量平均分子量及び分子量分布を有するとともに、比較例1~6で製造されたポリプロピレン樹脂に比べて加工性に優れ、溶融張力の改善に好適な物性を有し、かつ溶融伸び率に優れることが確認できる。すなわち、本発明によると、ゲル含量が1%以下に維持され、かつ溶融張力が最適レベルに向上することが確認できる。一方、実施例1~5及び比較例1~4の樹脂に対して、溶融伸び時間による溶融張力の変化を図1及び図2に示した。
図1
図2