(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】高GOS繊維レベル及び低ラクトースレベルを提供するためのラクターゼの使用
(51)【国際特許分類】
A23C 9/12 20060101AFI20240611BHJP
A23G 9/32 20060101ALI20240611BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20240611BHJP
A23C 19/00 20060101ALI20240611BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20240611BHJP
C12P 19/18 20060101ALI20240611BHJP
C12P 19/02 20060101ALI20240611BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240611BHJP
C12N 9/38 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A23C9/12 ZNA
A23G9/32
A23C9/00
A23C19/00
A23L33/21
C12P19/18
C12P19/02
C12N9/10
C12N9/38
(21)【出願番号】P 2021531828
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 US2019063163
(87)【国際公開番号】W WO2020117548
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513207806
【氏名又は名称】デュポン ニュートリション バイオサイエンシス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー、ジェイコブ、フライホルム
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン、ティナ クロー
(72)【発明者】
【氏名】ケアー、カリナ ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】レンツ、コレット
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529912(JP,A)
【文献】特表2017-533713(JP,A)
【文献】特開昭47-016663(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216000(WO,A1)
【文献】特開2009-291193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00-23/00
A23L 33/00-33/29
C12P 19/00-19/64
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品を調製するための方法であって、
ラクトースを含む乳ベース基質を得るステップと;
前記乳ベース基質をトランスガラクトシル化酵素で処理してGOS繊維及び残存ラクトースを得るステップと;
前記トランスガラクトシル化酵素を不活性化するステップと;
GOS繊維を有する前記乳ベース基質をラクターゼに接触させて前記残存ラクトースを分解し、前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品を得るステップと;
前記ラクターゼを不活性化するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記乳ベース基質が、1~60%(w/w);又は2~50%(w/w)、若しくは3~40%(w/w);又は4~30%(w/w)のラクトース濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トランスガラクトシル化酵素が、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼが、C末端でトランケートされている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも
90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に従う配列を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、配列番号1又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に従う配列を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、配列番号1に従う配列を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記トランスガラクトシル化酵素の前記不活性化が、熱処理を含む、請求項1~1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱処理が、約70℃~95℃で約5分間~30分間である、請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記熱処理が、約95℃で5~30分間である、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記熱処理が、約135℃~約150℃で約2秒間~約15秒間である、請求項1
1に記載の方法。
【請求項15】
前記ラクターゼが、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼである、請求項1~1
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼが、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも
90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
前記K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼが、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項1
6に記載の方法。
【請求項18】
前記K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼが、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼが、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に従うポリペプチドを含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼが、配列番号6に従うポリペプチドを含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記GOS繊維を有する乳ベース基質を前記ラクターゼに接触させるステップ中に、前記GOS繊維の20%未満が前記ラクターゼにより加水分解される、請求項1~2
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記GOS繊維の約15%未満が加水分解される、請求項2
1に記載の方法。
【請求項23】
前記GOS繊維の約10%未満が加水分解される、請求項2
2に記載の方法。
【請求項24】
前記GOS繊維の約5%未満が加水分解される、請求項2
3に記載の方法。
【請求項25】
前記ラクターゼ酵素の前記不活性化が、熱処理を含む、請求項1~2
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記熱処理が、約135℃~約150℃で約2~約15秒間、約85℃~約115℃で約0.5~約9秒間、又は約70℃~約85℃で約15秒間~約30秒間である、請求項2
5に記載の方法。
【請求項27】
前記ラクターゼを不活性化するステップが、前記GOS繊維を有する乳ベース基質及び前記ラクターゼのpHの低下を含む、請求項1~2
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
pHの低下が、ヨーグルト又はチーズ培養物を前記乳ベース基質に添加することにより達成される、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、ヨーグルト、アイスクリーム、UHT乳、フレーバー乳製品、濃縮乳/練乳製品、乳ベース粉末、又はチーズである、請求項1~2
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記低ラクトースの乳ベース製品中の前記GOS繊維が、28日以内の変動が約10%未満であり、安定である、請求項1~
29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、約1.5%(w/w)超のGOS繊維を含有する、請求項1~3
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、約3.2%(w/w)超のGOS繊維を含有する、請求項3
1に記載の方法。
【請求項33】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、約4%(w/w)超のGOS繊維を含有する、請求項3
2に記載の方法。
【請求項34】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、約7%(w/w)超のGOS繊維を含有する、請求項3
3に記載の方法。
【請求項35】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、約14%(w/w)超のGOS繊維を含有する、請求項3
4に記載の方法。
【請求項36】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、約30%(w/w)超のGOS繊維を含有する、請求項3
5に記載の方法。
【請求項37】
前記GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品が、100kcalあたり1.5g超のGOS繊維及び0.1%未満のラクトース又は0.01%未満のラクトースを含有する、請求項1~3
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記乳ベース基質中の前記ラクトースが、約50%超、約97%超、約98%超、約99%超、又は約99.7%超低減されている、請求項1~
37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記低ラクトースの乳ベース製品を脱水し粉末を得るステップと、前記粉末を水に溶解するステップとを更に含む、請求項1~
38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定したGOS繊維の含有量を有する乳製品を調製するための方法、及び更にラクトース含有量が大幅に低減された方法によって調製されるGOS繊維富化乳製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラクトオリゴ糖(GOS)は、グリコシド結合によって連結された2つ以上、典型的には9つまでのガラクトース分子を含む、ヒト及び動物において難消化性である炭水化物である。GOSは、更に1つ以上のグルコース分子も含む場合もある。GOSの有益な作用の1つは、それらが消費者に生理学的利益をもたらす細菌等の有益な結腸微生物の増殖を選択的に刺激することによって、プレバイオティクス化合物として作用する能力である。確立された健康効果により、様々なタイプの食品のための食品成分としてのGOSへの関心が高まってきた。
【0003】
酵素であるβ-ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)は、一般に、ラクトースを単糖であるD-グルコース及びD-ガラクトースに加水分解する。β-ガラクトシダーゼの通常の酵素反応では、この酵素はラクトースを加水分解し、ガラクトースを水のヒドロキシル基に転移させるガラクトース-酵素複合体中のガラクトース単糖に一時的に結合し、結果としてD-ガラクトース及びD-グルコースの遊離を生じさせる。しかしラクトース濃度が高い場合は、一部のβ-ガラクトシダーゼは、ガラクト-オリゴ糖が生成されるトランスガラクトシル化と呼ばれるプロセスにおいて、D-ガラクトース又はD-グルコースのヒドロキシル基にガラクトースを転移させることができる。ラクトース濃度が高い場合は、一部のβ-ガラクトシダーゼは、ラクトース又は高次オリゴ糖のヒドロキシル基にガラクトースを転移させることができる。
【0004】
高レベルのGOSを作製するための酵素及び方法が開発されてきた。例えば、Polypeptides Having Transgalactosylating Activity、国際公開第2013/182686号パンフレットを参照されたい。ヨーグルト、チーズ及び乳飲料等の乳ベース製品の日誌用途(diary application)の関連において、GOSの生成は内在性ラクトース糖を枯渇させるが、ラクトースレベルは、ラクトース不耐症の個体にとっては依然として高すぎる。世界人口のおよそ70%が、ラクトース不耐症である、即ち、ラクトースを摂取すると消化障害を起こすと推定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラクトース不耐症の個体が摂取することができるように、高く安定したレベルのGOSを有するがラクトースが十分に少ない乳ベース製品が、引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品を調製するための方法であって、ラクトースを含む乳ベース基質を得るステップと;上記乳ベース基質をトランスガラクトシル化酵素で処理してGOS繊維及び残存ラクトースを得るステップと;トランスガラクトシル化酵素を不活性化するステップと;GOS繊維を有する乳ベース基質をラクターゼに接触させて残存ラクトースを分解し、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品を得るステップと;ラクターゼを不活性化するステップとを含む方法が提示される。任意選択的に、乳ベース基質は、1~60%(w/w);又は2~50%(w/w)、若しくは3~40%(w/w);又は4~30%(w/w)のラクトース濃度を有する。任意選択的に、トランスガラクトシル化酵素は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼである。
【0007】
任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼは、C末端でトランケートされている。任意選択的に、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドである。任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0008】
任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも99%の配列同一性を有する。任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に従う配列を含む。任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に従う配列を含む。任意選択的に、ポリペプチドは、配列番号1に従う配列を含む。
【0009】
任意選択的に、トランスガラクトシル化酵素の不活性化は、熱処理を含む。任意選択的に、熱処理は、約70℃~95℃で約5分間~30分間である。任意選択的に、熱処理は、約95℃で5~30分間である。任意選択的に、熱処理は、約135℃~約150℃で約2秒間~約15秒間である。
【0010】
任意選択的に、ラクターゼは、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼである。任意選択的に、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドである。任意選択的に、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドである。任意選択的に、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドである。任意選択的に、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドである。任意選択的に、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に従うポリペプチドである。任意選択的に、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6に従うポリペプチドである。
【0011】
任意選択的に、GOS繊維を有する乳ベース基質を上記ラクターゼに接触させるステップ中に、GOS繊維の20%未満がラクターゼにより加水分解される。任意選択的に、GOS繊維の約15%未満が加水分解される。任意選択的に、GOS繊維の約10%未満が加水分解される。任意選択的に、GOS繊維の約5%未満が加水分解される。
【0012】
任意選択的に、ラクターゼ酵素の不活性化は、熱処理を含む。任意選択的に、熱処理は、約135℃~約150℃で約2~約15秒間、約85℃~約115℃で約0.5~約9秒間、又は約70℃~約85℃で約15秒間~約30秒間である。
【0013】
任意選択的に、ラクターゼを不活性化するステップは、GOS繊維を有する乳ベース基質及びラクターゼのpHの低下を含む。任意選択的に、そのpHは、ヨーグルト又はチーズ培養物を乳ベース基質に添加することにより達成される。
【0014】
任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、ヨーグルト、アイスクリーム、UHT乳、フレーバー乳製品、濃縮乳/練乳製品、乳ベース粉末、又はチーズである。任意選択的に、低ラクトースの乳ベース製品中のGOS繊維は、28日以内の変動が約10%未満であり、安定である。
【0015】
任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約1.5%(w/w)超のGOS繊維を含有する。任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約3.2%(w/w)超のGOS繊維を含有する。任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約4%(w/w)超のGOS繊維を含有する。任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約7%(w/w)超のGOS繊維を含有する。任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約14%(w/w)超のGOS繊維を含有する。任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約30%(w/w)超のGOS繊維を含有する。
【0016】
任意選択的に、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、100kcalあたり1.5g超のGOS繊維及び0.1%未満のラクトース又は0.01%未満のラクトースを含有する。任意選択的に、乳ベース基質中のラクトースは、約50%超、約97%超、約98%超、約99%超、又は約99.7%超低減されている。
【0017】
任意選択的に、本方法は、低ラクトースの乳ベース製品を脱水し粉末を得るステップと、その粉末を水に溶解するステップとを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】GOSを5℃で貯蔵した示された日数にて実施例4に従い0日目に対して定量した場合の、GOS安定性を示す。
【
図2】24時間の酵素処理及びUHT加熱殺菌による不活性化後の乳汁の、GOSを5℃で貯蔵した示された日数にて実施例2に従い0日目に対して定量した場合の、GOS安定性を示す。
【0019】
配列番号の簡単な説明
配列番号1は、BIF917 β-ガラクトシダーゼのアミノ酸配列を示す。
【0020】
配列番号2は、BIF995 β-ガラクトシダーゼのアミノ酸配列を示す。
【0021】
配列番号3は、BIF1068 β-ガラクトシダーゼのアミノ酸配列を示す。
【0022】
配列番号4は、BIF1172 β-ガラクトシダーゼのアミノ酸配列を示す。
【0023】
配列番号5は、BIF1241 β-ガラクトシダーゼのアミノ酸配列を示す。
【0024】
配列番号6は、クリベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟形態であるKLacのアミノ酸配列を示す。
【0025】
配列番号7は、ラクトバチルス・デルブリッキィ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii bulgaricus)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟形態であるLBulのアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明:
本教示の実施には、別途示さない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、及び生化学の従来技術が用いられ、これらは当該技術分野の範囲内である。そのような技術は、文献中、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984;Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1994);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al.,eds.,1994);Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(Kriegler,1990)、及びThe Alcohol Textbook(Ingledew et al.,eds.,Fifth Edition,2009)、及びEssentials of Carbohydrate Chemistry and Biochemistry(Lindhorste,2007)に十分に説明されている。
【0027】
別途本明細書で定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本教示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton,et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,second ed.,John Wiley and Sons,New York(1994)及びHale & Markham,The Harper Collins Dictionary of Biology,Harper Perennial,NY(1991)は、本発明で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。本明細書に記載されている方法及び材料と類似の又は等価のあらゆる方法及び材料を、本教示の実施又は試験で使用することができる。
【0028】
本明細書で提供される数値範囲は、その範囲を画定する数字を含む。
【0029】
定義:
「β-ガラクトシダーゼ」は、ラクトースを含むβ-ガラクトシダーゼの単糖への加水分解を触媒するグリコシドヒドロラーゼである。β-ガラクトシダーゼはまた、「ラクターゼ」と呼ばれることもある。
【0030】
本明細書において「GOS」とも称される「ガラクトオリゴ糖」という用語は、2~20分子の主にガラクトースで構成される難消化性オリゴ糖を指す。GOSは通常、ラクターゼとも呼ばれるβ-ガラクトシダーゼ酵素によって、例えば、乳製品及び/又は乳ベース製品中でのラクトースの分解により形成される。
【0031】
「GOS繊維」という用語は、本明細書において重合度が3以上(DP3+)の難消化性ガラクトオリゴ糖を指す。
【0032】
ポリペプチドに関する「野生型」、「親」、又は「参照」という用語は、1つ以上のアミノ酸の位置での人為的な置換、挿入、又は欠失を含まない天然型ポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する「野生型」、「親」又は「参照」という用語は、人為的なヌクレオチド変化を含まない天然型ポリヌクレオチドを指す。しかし、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、天然型ポリヌクレオチドに限定されず、野生型、親又は参照ポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを包含することに留意されたい。
【0033】
野生型ポリペプチドへの言及は、ポリペプチドの成熟形態を含むと理解される。「成熟」ポリペプチド又はその変異体は、例えば、そのポリペプチドの発現中又は発現後のポリペプチドの未成熟形態から切断されて、シグナル配列が存在しないものである。
【0034】
ポリペプチドに関する「変異体」という用語は、アミノ酸の1つ以上の天然型又は人為的置換、挿入若しくは欠失を含むという点で特定の野生型、親又は参照ポリペプチドと異なるポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する「変異体」という用語は、ヌクレオチド配列が特定の野生型、親又は参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドを指す。野生型、親又は参照ポリペプチド又はポリヌクレオチドの同一性は、文脈から明らかになるであろう。
【0035】
「組換え」という用語は、対象細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関して使用される場合、対象がその天然状態から改変されていることを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞内では見出されない遺伝子を発現するか、又は天然に見出されるものとは異なるレベルで、若しくは異なる条件下で天然遺伝子を発現する。組換え核酸は、天然配列と1つ以上のヌクレオチドが異なり、且つ/又は異種配列、例えば発現ベクター内の異種プロモーターに作動可能に連結されている。組換えタンパク質は、天然配列と1つ以上のアミノ酸が異なる場合があり、且つ/又は異種配列に融合している。β-ガラクトシダーゼをコードする核酸を含むベクターは、組換えベクターである。
【0036】
「回収された」、「単離された」、及び「分離された」という用語は、化合物、タンパク質(ポリペプチド)、細胞、核酸、アミノ酸若しくは他の特定の物質又は構成成分であって、天然に見出されるようにそれが元来付随している少なくとも1つの他の物質又は構成成分から除去されるものを指す。それらの「単離された」ポリペプチドには、異種宿主細胞内で発現した分泌ポリペプチドを含有する培養ブロスが含まれるが、これに限定されない。
【0037】
「ポリマー」という用語は、共に連結した一連のモノマー群を指す。ポリマーは、単一モノマーの複数単位で構成される。本明細書で使用する場合、「グルコースポリマー」という用語は、ポリマーとして共に連結したグルコース単位を指す。少なくとも3つのグルコース単位が存在する限り、グルコースポリマーは、ラクトース又はガラクトース等のグルコース以外の糖を含有し得る。
【0038】
「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」、「タンパク質」、及び「ペプチド」という用語と同義であり、互換的に使用される。そのようなアミノ酸配列が活性を示す場合、それらは「酵素」と称されることがある。アミノ酸残基に対して従来の1文字コード又は3文字コードが使用され、アミノ酸配列は、標準のアミノからカルボキシ末端方向(即ち、N→C)で表される。
【0039】
「核酸」という用語は、ポリペプチドをコードすることができるDNA、RNA、ヘテロ二本鎖、及び合成分子を包含する。核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得、化学的に修飾され得る。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。遺伝暗号が縮重しているため、特定のアミノ酸をコードするために2つ以上のコドンを使用することができ、本発明の組成物及び方法は、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を包含する。別途示さない限り、核酸配列は、5’から3’の方向で表される。
【0040】
細胞に関連して使用される「形質転換された」、「安定に形質転換された」、及び「トランスジェニック」という用語は、細胞が、そのゲノム内に組み込まれたか、又は複数世代にわたり維持されるエピソームとして保持されている、非天然の(例えば、異種の)核酸配列を含有していることを意味する。
【0041】
細胞内へ核酸配列を挿入することに関連して、「導入された」という用語は、当該技術分野において公知のように「遺伝子導入」、「形質転換」又は「形質導入」を意味する。
【0042】
「宿主株」又は「宿主細胞」は、目的のポリペプチド(例えば、β-ガラクトシダーゼ)をコードするポリヌクレオチドを含む、発現ベクター、ファージ、ウイルス、又は他のDNA構築物が導入された生物である。例示的な宿主株は、目的のポリペプチドを発現することができる微生物細胞(例えば、細菌、糸状菌、及び酵母)である。「宿主細胞」という用語には、細胞から作製されたプロトプラストが含まれる。
【0043】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「異種の」という用語は、宿主細胞内で自然には生じないポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0044】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関連する「内在性の」という用語は、宿主細胞内で自然に生じるポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0045】
「発現」という用語は、核酸配列に基づいてポリペプチドが生成されるプロセスを指す。このプロセスには、転写及び翻訳の両方が含まれる。
【0046】
「選択的マーカー」又は「選択可能マーカー」は、遺伝子を保有する宿主細胞の選択を容易にするために宿主内で発現させることのできる遺伝子を指す。選択可能マーカーの例として、抗生物質(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、若しくはクロラムフェニコール)及び/又は代謝上の利点、例えば栄養上の利点を宿主細胞に付与する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「ベクター」は、核酸を1種以上の細胞タイプに導入するように設計されたポリヌクレオチド配列を指す。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセット等が含まれる。
【0048】
「発現ベクター」は、目的のポリペプチドをコードするDNA配列を含むDNA構築物を指し、そのコード配列は、好適な宿主内のDNAを発現させることができる好適な制御配列に作動可能に連結されている。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、転写を制御する任意選択的なオペレーター配列、mRNA上の好適なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー、並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列が含まれ得る。
【0049】
「作動可能に連結された」という用語は、特定の構成成分が意図された方法で機能することを許容する関係(並列を含むがこれに限定されない)にあることを意味する。例えば、調節配列は、コード配列の発現が調節配列の制御下にあるようにコード配列に作動可能に連結されている。
【0050】
「シグナル配列」は、細胞外部へのタンパク質の分泌を容易にする、タンパク質のN末端部分に結合しているアミノ酸の配列である。細胞外タンパク質の成熟形態は、分泌プロセス中に切断除去されるシグナル配列を欠如している。
【0051】
「生物学的に活性な」とは、酵素活性のような特定の生物活性を有する配列を指す。
【0052】
「比活性」という用語は、特定の条件下で単位時間あたりに酵素又は酵素調製物によって生成物に変換され得る基質のモル数を指す。比活性は、一般に、単位(U)/mgタンパク質で表される。
【0053】
本明細書で使用する場合、「配列同一性パーセント」は、特定の配列が、CLUSTAL Wアルゴリズムをデフォルトパラメータで使用して整列させた場合に、特定の参照配列内のものと同一のアミノ酸残基を少なくともある一定のパーセンテージで有することを意味する。Thompson et al.(1994)Nucleic Acids Res.22:4673-4680を参照されたい。CLUSTAL Wアルゴリズムのデフォルトパラメータは、次の通りである:
ギャップ開始ペナルティ:10.0
ギャップ伸長ペナルティ:0.05
タンパク質ウエイトマトリックス:BLOSUMシリーズ
DNAウエイトマトリックス:IUB
ディレイ発散配列(%):40
ギャップ分離距離:8
DNAトランジションウエイト:0.50
親水性残基のリスト:GPSNDQEKR
ネガティブマトリックスの使用:オフ
トグル残基特異的ペナルティ:オン
トグル親水性ペナルティ:オン
トグル末端ギャップ分離ペナルティ オフ。
【0054】
欠失は、参照配列と比較して非同一である残基として計数される。いずれかの末端で発生している欠失が含まれる。例えば、617残基の成熟ポリペプチドのC末端の5つのアミノ酸欠失を有する変異体は、成熟ポリペプチドに対して99%の配列同一性パーセント(612/617個の同一残基×100、最も近い整数に四捨五入)を有するであろう。そのような変異体は、成熟ポリペプチドに対して「少なくとも99%の配列同一性」を有する変異体に包含されるであろう。
【0055】
「融合した」ポリペプチド配列は、2つの対象ポリペプチド配列間のペプチド結合によって接続されている、即ち作動可能に連結されている。
【0056】
「糸状菌」という用語は、ユウミコチナ(Eumycotina)亜門の全ての糸状体、特にチャワンタケ(Pezizomycotina)種を指す。
【0057】
「約」という用語は、参照値の±5%を指す。
【0058】
「ラクターゼ処理乳」とは、ラクトース糖の量を低減させるようにラクターゼで処理した乳汁を意味する。
【0059】
「ラクトース低減乳」とは、ラクトースのパーセンテージが約2%以下である乳汁を意味する。
【0060】
「ラクトースフリー乳」とは、ラクトースのパーセンテージが0.1%(w/v)を下回る乳汁を意味し、場合によっては、これは、ラクトースのパーセンテージが0.01%(w/v)を下回る乳汁を意味する。
【0061】
追加の突然変異
いくつかの実施形態では、本発明のβ-ガラクトシダーゼは、更なる性能上又は安定性の利益をもたらす1つ以上の突然変異を更に含む。例示的な性能上の利益として、熱安定性の向上、貯蔵安定性の向上、溶解性の向上、pHプロファイルの変更、比活性の向上、基質特異性の変更、基質結合の変更、pH依存的活性の変更、pH依存的安定性の変更、酸化安定性の向上、及び発現の増加が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、性能上の利益は、比較的低い温度で実現される。場合によっては、性能上の利益は、比較的高い温度で実現される。
【0062】
更に、本発明のβ-ガラクトシダーゼは、任意の数の保存的アミノ酸置換を含み得る。例示的な保存的アミノ酸置換を以下の表に列挙する。
【0063】
【0064】
読者は、上述の保存的突然変異の一部を遺伝子操作によって生成することができ、他の保存的突然変異が、遺伝的又は他の手段により合成アミノ酸をポリペプチド内に導入することによって生成されることを理解するであろう。
【0065】
本発明のβ-ガラクトシダーゼは、シグナル配列を含む「前駆体」、「未成熟」若しくは「完全長」、又はシグナル配列が欠如した「成熟」であり得る。ポリペプチドの成熟形態が、一般に最も有用である。別途記載がない限り、本明細書で使用するアミノ酸残基の番号付けは、それぞれのβ-ガラクトシダーゼポリペプチドの成熟形態を指す。本発明のβ-ガラクトシダーゼポリペプチドはまた、結果として生じるポリペプチドがβ-ガラクトシダーゼ活性を保持する限り、N末端又はC末端を除去するためにトランケートされてもよい。
【0066】
本発明のβ-ガラクトシダーゼは、それが第1のβ-ガラクトシダーゼポリペプチドの少なくとも一部分、及び第2のβ-ガラクトシダーゼポリペプチドの少なくとも一部分を含むという点で、「キメラ」又は「ハイブリッド」ポリペプチドであり得る。本発明のβ-ガラクトシダーゼは、異種シグナル配列、トラッキング又は精製を可能にするエピトープ等を更に含み得る。例示的な異種シグナル配列は、B.リケニホルミス(B.licheniformis)アミラーゼ(LAT)、枯草菌(B.subtilis)(AmyE又はAprE)及びストレプトマイセス(Streptomyces)CelA由来のものである。
【0067】
β-ガラクトシダーゼの生成
本発明のβ-ガラクトシダーゼは、例えば分泌又は細胞内発現により、宿主細胞内で生成され得る。β-ガラクトシダーゼを含む培養細胞材料(例えば、全細胞ブロス)を、β-ガラクトシダーゼの細胞培地への分泌後に得ることができる。任意選択的に、β-ガラクトシダーゼを、最終β-ガラクトシダーゼの所望の純度に応じて、宿主細胞から単離することができ、又は更に細胞ブロスから単離することができる。β-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子を、当該技術分野で周知の方法に従ってクローニングして発現させることができる。好適な宿主細胞として、細菌、真菌(酵母及び糸状菌を含む)並びに植物細胞(藻類を含む)が挙げられる。特に有用な宿主細胞として、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、又はトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)が挙げられる。他の宿主細胞として、細菌細胞、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)又はB.リケニホルミス(B.licheniformis)、並びにストレプトマイセス(Streptomyces)及び大腸菌(E.Coli)が挙げられる。
【0068】
宿主細胞は、同種若しくは異種β-ガラクトシダーゼ(即ち、宿主細胞と同一種ではないβ-ガラクトシダーゼ)、又は1種以上の他の酵素をコードする核酸を更に発現し得る。β-ガラクトシダーゼは、変異体β-ガラクトシダーゼであり得る。更に、宿主は、1種以上のアクセサリー酵素、タンパク質、ペプチドを発現し得る。
【0069】
ベクター
β-ガラクトシダーゼをコードする核酸を含むDNA構築物を、宿主細胞内で発現するように構築することができる。周知の遺伝暗号の縮重のために、同一のアミノ酸配列をコードする異なるポリヌクレオチドを、日常的な技能により設計して作製することができる。特定の宿主細胞に対してコドンの使用を最適化することも、当該技術分野において周知である。β-ガラクトシダーゼをコードする核酸を、ベクターに組み込むことができる。ベクターを、周知の形質転換技術(例えば、以下に開示されるもの)を使用して宿主細胞に導入することができる。
【0070】
ベクターは、宿主細胞に形質転換され宿主細胞内で複製され得るいかなるベクターであってもよい。例えば、β-ガラクトシダーゼをコードする核酸を含むベクターを、ベクターの伝播及び増殖の手段として細菌宿主細胞内で形質転換及び複製することができる。更に、コード化核酸を機能的β-ガラクトシダーゼとして発現することができるように、ベクターを発現宿主に形質転換することもできる。発現宿主として機能する宿主細胞には、例えば、糸状菌が含まれ得る。
【0071】
β-ガラクトシダーゼをコードする核酸は、宿主細胞内での転写を可能にする好適なプロモーターと作動可能に連結され得る。プロモーターは、選択した宿主細胞内で転写活性を示すあらゆるDNA配列であり得、且つ宿主細胞に対して同種又は異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子由来であり得る。特に細菌宿主においてβ-ガラクトシダーゼをコードするDNA配列の転写を誘導するための例示的なプロモーターは、大腸菌(E.Coli)のlacオペロンのプロモーター、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子dagA又はcelAプロモーター、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)α-アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)マルトジェニックアミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)α-アミラーゼ(amyQ)のプロモーター、枯草菌(Bacillus subtilis)xylA及びxylB遺伝子のプロモーター等である。真菌宿主における転写については、有用なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性α-アミラーゼ、A.ニガー(A.niger)酸安定性α-アミラーゼ、A.ニガー(A.niger)グルコアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、A.オリゼ(A.oryzae)アルカリ性プロテアーゼ、A.オリゼ(A.oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ、又はA.ニデュランス(A.nidulans)アセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するものである。β-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子が細菌種、例えば、大腸菌(E.coli)内で発現する場合、例えば、T7プロモーター及びファージラムダプロモーターを含むバクテリオファージプロモーターから好適なプロモーターを選択することができる。酵母種内での発現に好適なプロモーターの例として、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のGal1及びGal10プロモーター、並びにピキア・パストリス(Pichia pastoris)AOX1又はAOX2プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。cbh1は、T.リーセイ(T.reesei)由来の内在性の誘導性プロモーターである。Liu et al.(2008)“Improved heterologous gene expression in Trichoderma reesei by cellobiohydrolase I gene(cbh1)promoter optimization,”Acta Biochim. Biophys.Sin(Shanghai)40(2):158-65を参照されたい。
【0072】
コード配列は、シグナル配列と作動可能に連結され得る。シグナル配列をコードするDNAは、発現されるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子に元来付随しているDNA配列、又は異なる属若しくは種に由来するDNA配列であり得る。DNA構築物又はベクターを構成するシグナル配列及びプロモーター配列は、真菌宿主細胞に導入され得、且つ同一起源に由来し得る。例えば、シグナル配列は、cbh1プロモーターに作動可能に連結されるcbh1シグナル配列である。
【0073】
発現ベクターはまた、適切な転写ターミネーターを含み得る(真核細胞では、変異体β-ガラクトシダーゼをコードするDNA配列に作動可能に連結されているポリアデニル化配列も含み得る)。終結配列及びポリアデニル化配列は、適切には、プロモーターと同一の供給源に由来し得る。
【0074】
ベクターは、宿主細胞内でのベクターの複製を可能とするDNA配列を更に含み得る。このような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、及びpIJ702の複製開始点である。
【0075】
ベクターはまた、選択可能マーカー、例えば、産物が、単離された宿主細胞の欠損を補う遺伝子、例えば、枯草菌(B.subtilis)若しくはB.リケニホルミス(B.licheniformis)に由来するdal遺伝子、又は抗生物質耐性、例えば、アンピシリン耐性、カナマイシン耐性、クロラムフェニコール耐性、若しくはテトラサイクリン耐性等を付与する遺伝子も含み得る。更に、ベクターは、アスペルギルス属(Aspergillus)選択マーカー(例えば、amdS、argB、niaD及びxxsC)、ハイグロマイシン耐性を生じさせるマーカーを含むことができ、又は選択を、当該技術分野で公知のもの等の同時形質転換により行うことができる。例えば、国際公開第91/17243号パンフレットを参照されたい。
【0076】
細胞内発現は、いくつかの点で、例えば、ある特定の細菌又は真菌を宿主細胞として使用して、後続の濃縮又は精製のために大量のβ-ガラクトシダーゼを生成する場合に有利であり得る。培地中へのβ-ガラクトシダーゼの細胞外分泌もまた、単離されたβ-ガラクトシダーゼを含む培養細胞材料を作製するために使用することができる。
【0077】
発現ベクターは、典型的には、クローニングベクターの構成成分、例えば、選択した宿主生物内でのベクターの自己複製を許容するエレメント、及び選択を目的とする表現型により検出可能な1種以上のマーカー等を含む。発現ベクターは、通常、制御ヌクレオチド配列、例えば、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合部位、翻訳開始シグナル及び任意選択的に、リプレッサー遺伝子又は1種以上のアクチベーター遺伝子を含む。更に、発現ベクターは、ペルオキシソーム等の宿主細胞オルガネラに、又は特定の宿主細胞コンパートメントにβ-ガラクトシダーゼを標的化することができるアミノ酸配列をコードする配列を含み得る。そのような標的配列として、配列SKLが挙げられるがこれに限定されない。制御配列の指示下での発現のために、β-ガラクトシダーゼの核酸配列は、発現に関して適切な方法で制御配列に作動可能に連結されている。
【0078】
β-ガラクトシダーゼ、プロモーター、ターミネーター及び他のエレメントをそれぞれコードするDNA構築物のライゲーション、並びに複製に必要な情報を含む適切なベクターへのそれらの挿入に使用される手順は、当業者に周知である(例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd ed.,Cold Spring Harbor,1989、及び3rd ed.,2001を参照されたい)。
【0079】
宿主細胞の形質転換及び培養
DNA構築物又は発現ベクターのいずれかを含む単離された細胞は、β-ガラクトシダーゼの組換え産生における宿主細胞として有利に使用される。この細胞は、この酵素をコードするDNA構築物で、便宜的にはこのDNA構築物を宿主染色体に(1つ以上のコピー数で)組み込むことにより形質転換され得る。このDNA配列は細胞内で安定して維持され易いことから、この組み込みは有利であると一般に考えられている。宿主染色体へのDNA構築物の組み込みを、従来の方法に従って、例えば、相同組換え又は非相同組換えにより実施することができる。或いは、細胞を、異なるタイプの宿主細胞と関連した上述の発現ベクターを用いて形質転換させることができる。
【0080】
好適な細菌宿主生物の例は、グラム陽性細菌種、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、ゲオバチルス(Geobacillus)(以前はバチルス(Bacillus))ステアロサーモフィラス(stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ロータス(Bacillus lautus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)を含むバチルス科(Bacillaceae);ストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)等のストレプトマイセス(Streptomyces)種;ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス種(Lactococcus sp.)を含む乳酸細菌種;ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)を含むラクトバチルス種(Lactobacillus sp.);ロイコノストック種(Leuconostoc sp.);ペディオコッカス種(Pediococcus sp.);並びにレンサ球菌種(Streptococcus sp.)である。或いは、大腸菌(E.Coli)を含む腸内細菌科(Enterobacteriaceae)又はシュードモナス科(Pseudomonadaceae)に属する、グラム陰性細菌種の株を宿主生物として選択することができる。
【0081】
好適な酵母宿主生物は、バイオテクノロジー関連の酵母種から選択することができ、それらは、限定されるものではないが、酵母種、例えば、ピキア種(Pichia sp.)、ハンゼヌラ種(Hansenula sp.)、若しくはクリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイニア(Yarrowinia)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)種、又はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含むサッカロマイセス属(Saccharomyces)の種、又はシゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)に属する種、例えば、S.ポンベ(S.pombe)種等である。宿主生物として、メチロトローフ酵母種であるピキア・パストリス(Pichia pastoris)の株を宿主生物として使用することができる。或いは、宿主生物はハンゼヌラ(Hansenula)種であり得る。糸状菌のうちの好適な宿主生物として、アスペルギルス属(Aspergillus)の種、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、又はアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)が挙げられる。或いは、宿主生物として、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)等のフサリウム(Fusarium)種の株、又はリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)等のリゾムコール(Rhizomucor)種の株を使用することができる。他の好適な株として、サーモマイセス属(Thermomyces)及びムコール属(Mucor)の種が挙げられる。加えて、宿主として、トリコデルマ種(Trichoderma sp.)を使用することができる。アスペルギルス属(Aspergillus)の宿主細胞の形質転換に好適な手順は、例えば、欧州特許第238023号明細書に記載されているものが含まれる。真菌宿主細胞により発現されたβ-ガラクトシダーゼはグリコシル化され得る、即ちグリコシル部分を含むであろう。グリコシル化パターンは、野生型β-ガラクトシダーゼに存在するものと同一である場合もあれば、異なる場合もある。グリコシル化のタイプ及び/又は程度により、酵素的特性及び/又は生化学的特性に変化が付与され得る。
【0082】
形質転換された発現ベクターにより遺伝子欠損が回復され得る発現宿主から遺伝子を欠失させることが有利である。公知の方法を使用して、1種以上の不活性化遺伝子を有する真菌宿主細胞を得ることができる。遺伝子の不活性化は、遺伝子による機能性タンパク質の発現を防止するように、完全若しくは部分欠失によって、挿入不活性化によって、又は意図された目的のために遺伝子を非機能的にさせる任意の他の手段によって行うことができる。クローニングされている、トリコデルマ種(Trichoderma sp.)又は他の糸状菌宿主からの遺伝子(例えば、cbh1遺伝子、cbh2遺伝子、egl1遺伝子、及びegl2遺伝子)を欠失させることができる。遺伝子欠失を、当該技術分野で公知の方法により、不活性化させる所望の遺伝子のある形態をプラスミドに挿入することにより行うことができる。
【0083】
宿主細胞へのDNA構築物又はベクターの導入として、形質転換;エレクトロポレーション;核マイクロインジェクション;形質導入;遺伝子導入、例えば、リポフェクション媒介及びDEAE-デキストリン媒介遺伝子導入;リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション;DNA被覆微粒子弾丸(microprojectile)による高速衝突;並びにプロトプラスト融合等の技術が挙げられる。一般的な形質転換技術は、当該技術分野において公知である。例えば、Sambrook et al.(2001)、上掲を参照されたい。トリコデルマ属(Trichoderma)における異種タンパク質の発現は、例えば、米国特許第6,022,725号明細書に記載されている。アスペルギルス属(Aspergillus)の株の形質転換については、Cao et al.(2000)Science 9:991-1001も参照される。遺伝的に安定な形質転換体を、β-ガラクトシダーゼをコードする核酸が宿主細胞染色体に安定的に組み込まれるベクター系を用いて構築することができる。次いで、公知の技術により、形質転換体を選択して精製する。
【0084】
発現
β-ガラクトシダーゼの生成方法は、この酵素の生成を促す条件下で上述の通りに宿主細胞を培養すること、及びこの細胞及び/又は培養培地からこの酵素を回収することを含み得る。
【0085】
細胞を培養するために使用される培地は、当該宿主細胞の増殖及びβ-ガラクトシダーゼの発現の達成に好適な従来の任意の培地であってよい。好適な培地及び培地成分は、商業的供給業者から入手可能であるか、又は公開された製法(例えばAmerican Type Culture Collectionのカタログに記載されているもの)に従って調製することができる。
【0086】
宿主細胞から分泌された酵素を、全ブロス調製物に使用することができる。本発明の方法では、組換え微生物の馴化全発酵ブロス(spent whole fermentation broth)の調製は、β-ガラクトシダーゼの発現をもたらす、当該技術分野で公知の任意の培養法を使用して行うことができる。したがって、発酵は、好適な培地中で、且つβ-ガラクトシダーゼの発現又は単離が可能な条件下で行われる、振盪フラスコ培養、実験室用又は産業用発酵槽内での、小規模又は大規模発酵(連続、バッチ、流加バッチ若しくは固体発酵を含む)を含むと理解することができる。「馴化全発酵ブロス」という用語は、本明細書では培養培地、細胞外タンパク質(例えば、酵素)及び細胞バイオマスを含む発酵材料の未分画内容物であると定義される。「馴化全発酵ブロス」という用語は、当該技術分野で周知の方法を使用して溶解又は透過処理されている細胞バイオマスも更に包含すると理解される。
【0087】
宿主細胞から分泌される酵素を、遠心分離又は濾過による細胞の培地からの分離、硫酸アンモニウム等の塩による培地のタンパク質性成分の沈殿、次いで、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフ手順を使用することを含む周知の手順により、培地から好都合に回収することができる。
【0088】
ベクター中のβ-ガラクトシダーゼをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現をもたらすことができる制御配列に作動可能に連結され得る(即ち、ベクターは発現ベクターである)。制御配列を、例えば、更なる転写調節エレメントを付加することにより改変し、制御配列により誘導される転写レベルを転写調節因子に対してより応答性にすることができる。制御配列は、特にプロモーターを含み得る。
【0089】
宿主細胞を、β-ガラクトシダーゼの発現を可能にする好適な条件下で培養することができる。酵素の発現は、酵素が連続的に生成されるように構成的であってよく、又は発現を開始するためには刺激を必要とする誘導性であってもよい。誘導性発現の場合には、タンパク質生成は、必要とされる場合は、例えば、培養培地への誘導物質(例えば、デキサメタゾン又はIPTG又はソホロース)の添加によって開始させることができる。ポリペプチドはまた、例えばTNT(商標)(Promega)ウサギ網状赤血球系等のインビトロの無細胞系内で組換えにより生成することができる。
【0090】
β-ガラクトシダーゼの濃縮及び精製方法
発酵、分離、及び濃縮技術は当該技術分野において周知であり、従来の方法を、β-ガラクトシダーゼポリペプチド含有溶液を調製するために使用することができる。
【0091】
発酵後に発酵ブロスが得られ、β-ガラクトシダーゼ溶液を得るために、微生物細胞と、残留する発酵原料を含む様々な懸濁固体とを、従来の分離技術により除去する。濾過、遠心分離、精密濾過、回転式真空ドラム濾過、限外濾過、遠心分離(限外濾過、抽出又はクロマトグラフィーが後続する)等が一般に使用される。
【0092】
回収率を最適化するために、β-ガラクトシダーゼポリペプチド含有溶液を濃縮することが望ましい。未濃縮溶液を使用すると、濃縮又は精製酵素沈殿物を収集するためのインキュベーション時間を増加させる必要がある。
【0093】
酵素含有溶液は、所望の酵素レベルが得られるまで、従来の濃縮技術を使用して濃縮される。酵素含有溶液の濃縮は、本明細書で考察した技術のいずれかによって行うことができる。濃縮及び精製の例示的な方法として、回転式ドラム真空濾過及び/又は限外濾過が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の特定の実施形態では、β-ガラクトシダーゼは、例えば、レンサ球菌(Streptococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、又はラクトバチルス(Lactobacillus)種に由来し得る。β-ガラクトシダーゼが由来し得るレンサ球菌(Streptococcus)種の例として、S.サリバリウス(S.salivarius)、S.ソブリヌス(S.sobrinus)、S.デンチロウセッティ(S.dentirousetti)、S.ダウネイ(S.downei)、S.ムタンス(S.mutans)、S.オラリス(S.oralis)、S.ガロリティカス(S.gallolyticus)、及びS.サングイニス(S.sanguinis)が挙げられる。β-ガラクトシダーゼが由来し得るロイコノストック(Leuconostoc)種の例として、L.メセンテロイデス(L.mesenteroides)、L.アメリビオスム(L.amelibiosum)、L.アルゲンティナム(L.argentinum)、L.カーノサム(L.carnosum)、L.シトレウム(L.citreum)、L.クレモリス(L.cremoris)、L.デキストラニカム(L.dextranicum)、及びL.フルクトーサム(L.fructosum)が挙げられる。β-ガラクトシダーゼが由来し得るラクトバチルス(Lactobacillus)種の例として、L.アシドフィルス(L.acidophilus)、L.デルブリッキィ(L.delbrueckii)、L.ヘルベティカス(L.helveticus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.カゼイ(L.casei)、L.カルバタス(L.curvatus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.サケイ(L.sakei)、L.ブレビス(L.brevis)、L.ブフネリ(L.buchneri)、L.ファーメンタム(L.fermentum)、及びL.ロイテリ(L.reuteri)が挙げられる。
【0095】
加熱殺菌時間及び温度
乳ベースの加熱殺菌において、超高温(UHT)は通常135~150℃で2~15秒間行われ、超高温/超短時間(higher-heat/shorter time)(HHST)は通常85~115℃で0.5~9秒間行われ、高温/短時間(HTST)加熱殺菌は、通常70~85℃で15~30秒間行われる。
【0096】
本発明の好ましい実施形態
本発明の一態様によれば、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品を調製するための方法が提示され、この方法は、ラクトースを含む乳ベース基質を得るステップと;上記乳ベース基質をトランスガラクトシル化酵素で処理してGOS繊維及び残存ラクトースを得るステップと;トランスガラクトシル化酵素を不活性化するステップと;GOS繊維を有する乳ベース基質をラクターゼに接触させて残存ラクトースを分解し、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品を得るステップと;ラクターゼを不活性化するステップとを含む。
【0097】
好ましくは、乳ベース基質は、1~60%(w/w);又は2~50%(w/w)、若しくは3~40%(w/w);又は4~30%(w/w)のラクトース濃度を有する。
【0098】
好ましくは、トランスガラクトシル化酵素は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼである。より好ましくは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼは、C末端でトランケートされている。より一層好ましくは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するトランケート型β-ガラクトシダーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドである。より一層好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。更により好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。より一層好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。更により好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に対して少なくとも99%の配列同一性を有する。より一層好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、若しくは配列番号5、又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に従う配列である。更により好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1又はそのトランスガラクトシラーゼ活性断片に従う配列である。
【0099】
最も好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1に従う配列である。
【0100】
好ましくは、トランスガラクトシル化酵素の不活性化は、熱処理による。
【0101】
より好ましくは、熱処理は、約70℃~95℃で約5分間~30分間である。より一層好ましくは、熱処理は、約95℃で5~30分間である。他の好ましい実施形態では、熱処理は、約135℃~約150℃で約2秒間~約15秒間である。
【0102】
好ましくは、ラクターゼは、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼである。より好ましくは、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドである。より一層好ましくは、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。更により好ましい実施形態では、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。更により好ましくは、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に対して少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。更により好ましい実施形態では、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6又はそのラクターゼ活性断片に従うポリペプチドである。最も好ましい実施形態では、K.ラクチス(K.lactis)ラクターゼは、配列番号6に従うポリペプチドを含む。
【0103】
好ましくは、GOS繊維を有する乳ベース基質を上記ラクターゼに接触させるステップ中に、GOS繊維の20%未満がラクターゼにより加水分解される。より一層好ましくは、GOS繊維の約15%未満が加水分解される。更により好ましくは、GOS繊維の約10%未満が加水分解される。最も好ましい実施形態では、GOS繊維の約5%未満が加水分解される。
【0104】
好ましくは、ラクターゼ酵素の不活性化は、熱処理を含む。より好ましくは、熱処理は、約135℃~約150℃で約2~約15秒間、約85℃~約115℃で約0.5~約9秒間、又は約70℃~約85℃で約15秒間~約30秒間である。
【0105】
好ましくは、ラクターゼを不活性化するステップは、GOS繊維を有する乳ベース基質及びラクターゼのpHの低下である。好ましくは、pHの低下は、ヨーグルト又はチーズ培養物を乳ベース基質に添加することにより達成される。
【0106】
好ましくは、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、ヨーグルト、アイスクリーム、UHT乳、フレーバー乳製品、濃縮乳/練乳製品、乳ベース粉末、又はチーズである。好ましくは、低ラクトースの乳ベース製品中のGOS繊維は、28日以内の変動が約10%未満であり、安定である。好ましくは、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約1.5%(w/w)超のGOS繊維を含有する。より好ましくは、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約3.2%(w/w)超のGOS繊維を含有する。より一層好ましくは、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約4%(w/w)超のGOS繊維を含有する。更により好ましい実施形態では、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約7%(w/w)超のGOS繊維を含有する。より一層好ましくは、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約14%(w/w)超のGOS繊維を含有する。更により好ましい実施形態では、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、約30%(w/w)超のGOS繊維を含有する。
【0107】
本発明の更に別の好ましい実施形態では、GOS繊維を有する低ラクトースの乳ベース製品は、100kcalあたり1.5g超のGOS繊維及び0.1%未満のラクトース又は0.01%未満のラクトースを含有する。
【0108】
更なる他の好ましい実施形態では、乳ベース基質中のラクトースは、約50%超、約97%超、約98%超、約99%超、又は約99.7%超低減されている。
【0109】
本発明の他の好ましい実施形態では、本方法は、低ラクトースの乳ベース製品を脱水し粉末を得るステップと、その粉末を水に溶解するステップとを更に有する。
【0110】
以下の実施例で本開示を更に詳しく説明するが、それらの実施例は、特許請求された本開示の範囲を決して限定するものではない。添付の図面は、本開示の明細書及び説明に組み込まれたそれらの一部と見なされることが意図されている。以下の実施例は、特許請求された開示を説明するために提示されたものであって、その開示を限定するものではない。
【実施例】
【0111】
実施例1:酵素配列
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟トランケート型形態であるBIF917のアミノ酸配列を、配列番号1として示す:
【化1】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟トランケート型形態であるBIF995のアミノ酸配列を、配列番号2として示す:
【化2】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟トランケート型形態であるBIF1068のアミノ酸配列を、配列番号3として示す:
【化3】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟トランケート型形態であるBIF1172のアミノ酸配列を、配列番号4として示す:
【化4】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟トランケート型形態であるBIF1241のアミノ酸配列を、配列番号5として示す:
【化5】
クリベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)に由来するβ-ガラクトシダーゼの成熟形態であるKLacのアミノ酸配列を、配列番号6として示す:
【化6】
ラクトバチルス・デルブリッキィ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii bulgaricus)に由来するB-ガラクトシダーゼの成熟形態であるLBulのアミノ酸配列を、配列番号7として示す
【化7】
【0112】
実施例2:酵素
BIF917:配列番号1に示すアミノ酸配列を有するBIF917のB-ガラクトシダーゼ調製物(ZYMSTAR(商標)GOS、DuPont、材料A15017、バッチ4863188124)
KLac:配列番号6に示すアミノ酸配列を有するB-ガラクトシダーゼ調製物KLac(GODO YNL2、Godo Shusei Co.)
LBul:配列番号6に示すアミノ酸配列を有するラクトバチルス・デルブリッキィ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii bulgaricus)に由来するLBulの実験用B-ガラクトシダーゼ調製物
NFit:https://hjemmeriet.comを通じて購入した、NOLA Fit 5500(Chr.Hansen)材料350502、バッチ番号3339769のB-ガラクトシダーゼ調製物
【0113】
実施例3:ラクトースの定量化方法
試料をホモジナイズし、p-アミノ安息香酸及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて誘導体化した後、H2Oで希釈して、ラクトース定量化のためにRP-C(18)(逆相)カラムに注入した。テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩を溶出液系におけるイオン対試薬として使用した。糖を、Prontosil RP-C(18)SHカラムを備えたAgilent 1100 HPLCシステムで蛍光検出(λ(ex)313nm、λ(em)358nm)により定量した。注入量は0.8mL/分の流量で20μLであり、20mMテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(pH2.0)を含有する10mMリン酸ナトリウム緩衝液を使用してアイソクラティック溶出した。各注入の間に、カラムを50/50(v/v%)のアセトニトリル/水で洗浄した。試料を、内部標準としてのL-アラビノースと共に調製し、ラクトース標準曲線に従って定量した。
【0114】
実施例4:GOS(DP3以上)の定量化方法
HPLCによるガラクト-オリゴ糖の定量化
標準ラクトース(HPLC分析用グレード、Sigma Aldrich)を再蒸留水(ddH2O)で調製し、0.2μmシリンジフィルタに通して濾過した。ラクトース標準物質の500~10000ppmの範囲の希釈系列を作製した。
【0115】
乳ベース試料及びヨーグルト試料の同様の試料調製物を適用した(但し、それぞれ5倍及び10倍の希釈係数を利用した)。乳ベース試料を5倍に希釈した:H2O(800μL)中の200mgの試料(質量を記録した)を完全に混合し、沸騰水中で20分間不活性化した後に冷却した。50μLのCarrez試薬A(Carrez Clarification Kit、1.10537.001、Sigma Aldrich)及び50μLのCarrez Bを、希釈した試料1000μLに添加して、タンパク質及び脂質の沈殿を誘導した。試料混合物を室温にて15分間インキュベートし、50μLの10mM NaOH、1mM EDTAを試料に添加した。試料を10,000rpmで4分間遠心分離し、300μLの清澄化した上清を、0.20μmの96ウェルプレートフィルターを通して(3000rpmで15分間遠心分離した)、MTPフィルタープレートに移してから分析した(Corningフィルタープレート、PVDF親水性膜、NY、USA)。全ての試料を、テープで密封した96ウェルMTPプレート中で二連で分析した。
【0116】
計器による計測
ガラクト-オリゴ糖(GOS)、ラクトース、グルコース及びガラクトースの定量をHPLCにより実施した。試料の分析を、DGP-3600SD Dual-Gradient分析用ポンプ、WPS-3000TSLサーモスタットオートサンプラ、TCC-3000SDサーモスタットカラムオーブン、及びRI-101屈折率検出器(Shodex、JM Science)を備えたDionex Ultimate 3000 HPLCシステム(Thermo Fisher Scientific)で行った。データの取得及び分析にChromeleonデータシステムソフトウェア(Version 6.80、DU10A Build 2826、171948)を使用した。
【0117】
クロマトグラフ条件
70℃で操作する分析用ガードカラム(Carbo-Ag+中性、AJ0-4491、Phenomenex、The Netherlands)を備えたRSOオリゴ糖カラム、Ag+4%架橋(Phenomenex、The Netherlands)を使用して、HPLCにより試料を分析した。このカラムを、0.3ml/分の流速で再蒸留水(0.45μmの再生セルロース膜に通して濾過し、ヘリウムガスでパージした)により溶出させた。
【0118】
総実行時間が45分である分析の間中、0.3ml/分のアイソクラティック流量を維持し、注入量を20μLに設定した。全ての成分を確実に可溶化するために、サーモスタットオートサンプラのコンパートメント中で試料を30℃で保持した。溶出液を屈折率検出器(RI-101、Shodex、JM Science)でモニタリングし、上述のラクトースのピーク面積に対するピーク面積によって定量を行った。3以上の程度のピーク(DP3+)を、ガラクトオリゴ糖(DP3、DP4、DP5等)として定量した。全てのDP3+ガラクト-オリゴ糖成分に対する応答が同一であるという仮定を、物質収支により確認した。他のDP2成分を含むラクトースを、DP2、グルコース及びガラクトースとして同様の方法で定量した。
【0119】
実施例5:95℃で5分間の加熱殺菌後のGOS繊維の安定性
GOS繊維(DP3以上)は、95℃で5分間の加熱殺菌後の乳汁/ヨーグルト中で、加熱殺菌後の二次的なラクターゼの導入なしに安定であることが示された。
【0120】
4.7%ラクトースの脱脂乳(4%のタンパク質及び0.03%の脂肪で標準化したもの)を3.2g/LのBIF917酵素により5℃で18時間酵素処理(enzymate)し、ラクトースをGOS繊維(DP3以上)に変換した。次に、BIF917酵素を、乳汁を95℃で5分間加熱殺菌することにより不活性化した。
【0121】
加熱殺菌の加熱条件:乳汁を65℃に予熱し、200barで30秒にわたりホモジナイズした。次に、乳汁を80℃で4秒間予熱後、95℃で5分間加熱殺菌した。加熱殺菌後、乳汁を5℃に冷却した。
【0122】
次に、乳ベースを43℃に加熱した。スターター培養物YO-MIX 495(20DCU/100L)を添加し、pHが4.6に達するまで発酵を行った。次に、全ての試料を5℃に冷却し、56日の貯蔵期間にわたり維持した。
【0123】
示された時点で、実施例4に従って試料のGOSを定量した。結果を
図1A及び
図1Bに示す。
【0124】
実施例6:UHT加熱殺菌後のGOSの安定性
GOS繊維(DP3以上)は、UHT加熱殺菌後の乳汁中で、加熱殺菌後の第2のラクターゼの添加なしに安定であることが示された。4.7%ラクトースの全乳を、3.2g/LのBIF917により酵素処理し、5℃で24時間保持してから、UHT加熱殺菌した(75~80℃で予熱し、直接蒸気注入により142℃で1~2秒間、1500 homo psi)。加熱殺菌後、
図2に示す時点で実施例4に従ってGOSの定量を行うまで、試料を4℃で保存した。
【0125】
実施例7:培養物と共に発酵中に第2のラクターゼを添加した後の残留GOS繊維
4.7%ラクトースの脱脂乳(4%のタンパク質及び0.03%の脂肪で標準化したもの)を3.2g/LのBIF917により5℃で18時間酵素処理し、ラクトースをGOS繊維(DP3以上)に変換した。次に、BIF917を、乳汁を95℃で5分間加熱殺菌することにより不活性化した。
【0126】
加熱殺菌の加熱条件:乳汁を65℃に予熱し、200barで30秒にわたりホモジナイズした。次に、乳汁を80℃で4秒間予熱後、95℃で5分間加熱殺菌した。加熱殺菌後、乳汁を5℃に冷却した。
【0127】
続いて、乳ベースをヨーグルトに発酵させた。乳ベースを43℃に加熱した。様々な量のKLac、LBul又はNFitラクターゼのいずれかを、スターター培養物YO-MIX 495(20DCU/100L、Dupont Nutrition Biosciences)と共に表1に従って添加した。酵素(KLac及びLBul)がpHの低下により不活性化されるpH4.6に達するまで、発酵を行った。次に、全ての試料を5℃に冷却し、次いで、実施例3及び4に従って残留ラクトース及びGOSについて分析するまで、発酵終了後24時間凍結させた。結果を表1に示す。
【0128】
【0129】
実施例8:第2のラクターゼをGOS富化UHT乳へ添加した後の残留GOS繊維
4.7%ラクトースの脱脂乳を、3.2g/LのBIF917により5℃で24時間酵素処理した。24時間後、この乳汁をUHT加熱殺菌した(75~80℃で予熱し、直接蒸気注入により142℃で1~2秒間、1500 homo psi)。次に、3.2g/LのBIF917で酵素処理した乳汁に、表2に従ってLBul、KLac又はNFitのいずれかを加えた第2のラクターゼを添加し、5℃で24時間インキュベートした。次に、試料を95℃で20分間熱処理してからHPLCで分析した。ラクトース及びGOS繊維を実施例3及び4に従って定量した。
【0130】
【0131】
上記の発明は、理解を明確にする目的で、図面及び実施例によってある程度詳しく説明してきたが、添付の特許請求の範囲内で一定の変更及び修正を実施することができる。更に、本明細書で提供される各参考文献は、各参考文献が参照により個々に組み込まれているのと同程度に、あらゆる目的でその全体が参照により組み込まれる。ウェブサイト又は受入番号を含む任意の引用の内容が時間とともに変化し得る限り、本出願の出願日に有効なバージョンが意図される。文脈から別途明らかでない限り、実施形態の任意のステップ、要素、態様、特徴は、任意の他のものと組み合わせて使用することができる。
【配列表】