(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】レーザ出力変調による積層造形
(51)【国際特許分類】
B22F 10/368 20210101AFI20240611BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240611BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20240611BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240611BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240611BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240611BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240611BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240611BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240611BHJP
【FI】
B22F10/368
B22F10/28
B22F10/85
B29C64/393
B29C64/153
B29C64/268
B28B1/30
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2021543482
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 FR2020050131
(87)【国際公開番号】W WO2020157427
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-19
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】521328847
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール パリ-サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルラント ジル
(72)【発明者】
【氏名】トゥルニエ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルヌ シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】エタイエブ カメル
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345374(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0320168(US,A1)
【文献】特開2017-179575(JP,A)
【文献】特表2018-519588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末の層からの3次元物体の選択的積層造形のための方法であって、
積層造形粉末の層を支持体に又は先に固化された層に付加する段階と、
前記積層造形粉末の層上に経路に沿ってレーザビームを放出する段階であって、前記経路は、走査時におけるレーザが走査される経路である、段階と
前記積層造形粉末の層の第1の点の上にレーザビームを放出し、前記第1の点を含む前記
経路の第1の
部分を固化する段階と、
を含み、
前記方法は、さらに、
前記
経路の前記第1の
部分を固化するための前記レーザビームの前記放出によって引き起こされる該粉末の層の前記第1の点とは別の第2の点での該粉末の層の推定温度変動に応じて前記レーザビームの出力を調節する段階であって、前記推定温度変動は、前記第1の点と前記第2の点の間の距離
及び予め決められた時間間隔に応じる、調節する段階と、
前記第2の点を含む前記
経路の第2の
部分を固化するために前記調節された出力を用いて該第2の点の上にレーザビームを放出する段階であって、
前記第1の部分は、前記第2の部分に対して走査に関して上流に位置し、前記第1の点の上への前記レーザビームの放出及び前記第2の点の上への前記レーザビームの放出が、前記予め決められた時間間隔によって時間的に分離される、放出する段階と、
を含
み、
前記推定温度変動ΔTは、前記第1の点と前記第2の点の間の距離r
21
及び前記予め決められた時間間隔(t
2
-t
1
)に応じて、
を計算することによって予め推定され、Q
1
は、前記粉末の層の前記第1の部分を固化するための前記レーザビームの放出中に該層によって受け入れられエネルギであり、εは、該粉末の層の熱浸透率であり、Rは、該レーザビームの半径であり、aは、該粉末の層の熱拡散率であり、t
0
は、予め決められた瞬間であり、
番号nによりインデックスされる前記層の点での固化前の瞬間t
n
での前記粉末の温度Tp(t
n
)の推定値に応じて前記レーザビームの出力を調節する段階であって、nが、2よりも大きいか又はそれに等しい整数であり、
該推定値が、該粉末の層のn-1個の部分を固化するためのレーザビームのn-1個のレーザの前記放出によって引き起こされる該粉末の前記温度変動ΔT(r
ni
、t
n
―t
i
)に応じ、
前記層の(n-1)の点のそれぞれ、及び、(n-1)の部分のそれぞれは番号iによりインデックスされ、
i=1、2,・・・・(n-1)の各番号iについて、
各番号iに対して、番号iによりインデックスされた点がレーザビームにより瞬間t
i
に前記番号iによりインデックスされた部分を固化するように照射され、
各番号i>1に対して、番号(i―1)によりインデックスされた部分は、番号iによりインデックスされた部分に対して走査に関して上流に位置し
各番号iに対して、番号nによりインデックスされた点は、番号iによりインデックスされた点から距離r
ni
に位置し、
温度Tp(t
n
)の推定値は次式
に従って定められ、ここで、T
0
は、前記粉末の初期温度である前記調節する段階と、
前記瞬間t
n
で前記調節された出力を用いて番号nによりインデックスされた点を含む前記経路の部分を固化するために番号nでインデックスされた点に向けてレーザビームを放出する段階と、
番号nでインデックスされる点の上に放出される前記レーザビームの出力P
n
を計算する段階を含み、
前記出力P
n
は、次式のように固化前温度Tp(t
n
)の推定値に応じており、
Δtが予め決められた時間増分であり、Tsが予め決められた閾値温度である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
番号iでインデックスされるそれぞれの点が、
番号nでインデックスされる点からr
ni≦Vlであるような距離r
niに位置付けられ、ここで、Vlは、予め決められた
距離であり、
数字iでインデックスされた点が、該
数字iでインデックスされた点に向けた前記レーザビームの放出の|t
n-t
i|≦Vtであるような瞬間t
iに対応し、ここで、Vtは、予め決められた
時間間隔であることを特徴とする請求項
1に記載の選択的積層造形方法。
【請求項3】
前記閾値温度Tsは、以下の条件:
レーザスポットの中心がその上を通過する点でかつ前記レーザの通過時に達成されることになる前記粉末の温度、
前記レーザスポットの前記中心がその上を通過する点で経時的に達成される前記粉末の最高温度、
前記粉末の層の点で経時的に達成される前記粉末の最高温度、
前記粉末の層のいずれの点でも経時的に超えないことになる上限温度、
前記粉末の層のいずれの点でも下回らないことになる下限温度、又は
造形工程中に任意的に可変であるこれらの条件の組合せ、
から選ばれる少なくとも1つの温度目標に応じて予め決められることを特徴とする
請求項1に記載の選択的積層造形方法。
【請求項4】
前記レーザが、第1の群の互いに平行な直線部分を含む不連続経路に沿って走査することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の選択的積層造形方法。
【請求項5】
前記レーザが、第1の群の互いに平行な直線部分及び第2の群の直線部分を含む連続経路に沿って走査し、該第2の群の各直線部分が、該第1の群の第1の直線部分の第1の端部と該第1の群の第2の直線部分の第2の端部とを接合し、該第2の直線部分は、該第1の直線部分に隣接していることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の選択的積層造形方法。
【請求項6】
前記粉末の層の1又は2以上の
部分を固化するための前記レーザビームの前記放出によって引き起こされるn番目の点での該粉末の層の前記温度変動の前記推定は、造形方法が開始された状態で実施されることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の選択的積層造形方法。
【請求項7】
粉末の層からの3次元物体(122)の選択的積層造形のための装置(121)であって、
レーザ型光源(1212)と、
積層造形粉末の層に経路に沿ってレーザビームを放出するように前記レーザ型光源を制御するように構成された制御ユニット(129)
であって、前記経路は、走査時においてレーザにより走査され、前記制御ユニット(129)は、第1の点を含む前記経路の第1の部分を固化するために前記積層造形粉末の層の第1の点にレーザビームを放出するように前記レーザ型光源を制御するように構成された、制御ユニット(129)と、
を含み、
前記第1の
部分を固化するための前記レーザビームの前記放出によって引き起こされる該粉末の層の第2の点での該粉末の層の推定温度変動を格納するためのメモリ(M)であって、前記推定温度変動は、前記第1の点と該第2の点の間の距離にかつ予め決められた時間間隔に応じる、メモリ(M)と、
を同じく含み、
前記制御ユニットは、
前記メモリに格納された前記推定温度変動に応じて前記レーザビームの出力を調節し、
前記第2の点を含む前記
経路の第2の
部分を固化するために前記光源が前記調節された出力を用いて該第2の点の上にレーザビームを放出し、
前記走査時に関して前記第2の点の上流に位置する前記第1の点の上への該レーザビームの放出及び該第2の点の上への該レーザビームの放出が前記予め決められた時間間隔によって時間的に分離されるように前記レーザ型光源を制御する、
ように構成され、
前記推定温度変動ΔTは、前記第1の点と前記第2の点の間の距離r
21
にかつ前記予め決められた時間間隔(t
2
-t
1
)に応じて、
を計算することによって予め推定され、Q
1
は、前記粉末の層の前記第1の部分を固化するための前記レーザビームの放出中に該層によって受け入れられエネルギであり、εは、該粉末の層の熱浸透率であり、Rは、該レーザビームの半径であり、aは、該粉末の層の熱拡散率であり、t
0
は、予め決められた瞬間であり、
さらに、前記制御ユニット(129)は、
番号nによりインデックスされる前記層の点での固化前の瞬間t
n
での前記粉末の温度Tp(t
n
)の推定値に応じて前記レーザビームの出力を調節するように構成され、nが、2よりも大きいか又はそれに等しい整数であり、
該推定値が、該粉末の層のn-1個の部分を固化するためのレーザビームのn-1個のレーザの前記放出によって引き起こされる該粉末の前記温度変動ΔT(r
ni
、t
n
―t
i
)に応じ、
前記層の(n-1)の点のそれぞれ、及び、(n-1)の部分のそれぞれは番号iによりインデックスされ、
i=1、2,・・・・(n-1)の各番号iについて、
各番号iに対して、番号iによりインデックスされた点がレーザビームにより瞬間t
i
に前記番号iによりインデックスされた部分を固化するように照射され、
各番号i>1に対して、番号(i―1)によりインデックスされた部分は、番号iによりインデックスされた部分部分に対して走査に関して上流に位置し
各番号iに対して、番号nによりインデックスされた点は、番号iによりインデックスされた点から距離r
ni
に位置し、
温度Tp(t
n
)の推定値は次式
に従って定められ、ここで、T
0
は、前記粉末の初期温度であり、
さらに、前記制御ユニット(129)は、
前記瞬間t
n
で前記調節された出力を用いて番号nによりインデックスされた点を含む前記経路の部分を固化するために番号nでインデックスされた点に向けてレーザビームを放出し、
番号nでインデックスされる点の上に放出される前記レーザビームの出力P
n
を計算する、ように構成され、
前記出力P
n
は、次式のように固化前温度Tp(t
n
)の推定値に応じており、
Δtが予め決められた時間増分であり、Tsが予め決められた閾値温度である、
ことを特徴とする3次元物体(122)の選択的積層造形のための装置(121)。
【請求項8】
造形方法が開始された状態で前記粉末の層の1又は2以上の
部分を固化するための前記レーザビームの放出によって引き起こされる
番号nでインデックスされる点での該粉末の層の温度変動の推定値を決定するように設計された計算機又はシミュレータ(C)を同じく含むことを特徴とする請求項
7に記載の3次元物体(122)の選択的積層造形のための装置(121)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的積層造形の一般分野に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的積層造形は、粉末材料(金属粉末、セラミック粉末など)の連続層内で選択されたゾーンを固化することによって3次元物体を生成することにある。固化されたゾーンは、3次元物体の連続断面に対応する。固化は、出力源を用いて実施される全体的又は部分的な選択的融解を通して例えば層毎に行われる。
【0003】
従来、粉末の層を溶融するための光源として高出力レーザ光源又は電子ビーム光源が用いられている。
【0004】
従来、高出力レーザ光源を用いて3次元物体を製造するための工程中に、粉末が到達する最高温度は、蒸発温度を超える場合があり、粉末層内の温度場は、有意な勾配を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸発による材料の損失及び急な勾配は、残留応力をもたらし、これは、物体の機械的特性に対して、特に、局所変形、マイクロメートル規模又はそれよりも大きい亀裂に対して影響を有し、微小亀裂及び層の転位を引き起こす。
【0006】
従って、製造工程中に粉末の層の温度場をより良好に制御する必要性が存在する。
【0007】
本発明の全体的な目標は、従来技術の積層造形方法の欠点を解消することである。
【0008】
特に、本発明の目標は、工程中に温度場をより良好に制御するためのソリューションを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目標は、粉末層からの3次元物体の選択的積層造形のための方法によって本発明の関連で達成され、本方法は、
-積層造形粉末層を支持体に又は先に固化された層に付加する段階と、
-積層造形粉末層の第1の点の上にこの第1の点を含む積粉末層の第1のゾーンを固化するためにレーザビームを放出する段階と、
を含み、本方法はまた、
-粉末層の第1のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって引き起こされる粉末層の第1の点とは別の第2の点での粉末層の推定温度変動に応じてレーザビームの出力を調節する段階であって、推定温度変動が第1の点と第2の点の間の距離にかつ予め決められた時間間隔に応じる、上記調節する段階と、
-第2の点を含む粉末層の第2のゾーンを固化するために調節出力を用いて第2の点の上にレーザビームを放出する段階であって、第1の点の上へのレーザビームの放出及び第2の点の上へのレーザビームの放出が予め決められた時間間隔によって時間的に分離される上記放出する段階と、
を含む。
【0010】
そのような方法は、それ自体で又は組合せで考慮される以下の様々な特徴又は段階によって有利に補足される:
-推定温度変動ΔTは、第1の点と第2の点の間の距離r
21にかつ予め決められた時間間隔(t
2-t
1)に応じて、
を計算することにより、予め推定され、Q
1は、粉末層の第1のゾーンを固化するためのレーザビームの放出中に層が受け入れるエネルギであり、εは、粉末層の熱浸透率であり、Rは、レーザビームの半径であり、aは、粉末層の熱拡散率であり、t
0は、予め決められた瞬間である。
-以下の2つの段階の組合せ:
-層のn番目の点での瞬間t
nでの固化前粉末温度Tp(t
n)の推定値に応じてレーザビームの出力を調節する段階あって、nが、2よりも大きいか又はそれに等しい整数であり、推定値が、粉末層のn-1個のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって引き起こされる粉末の温度変動に応じ、n番目の点が、粉末層のi番目の点から距離r
niに位置付けられ、ここで、
であり、
各i番目の点が、
のように、固化粉末層のi番目のゾーン内に位置付けられ、かつ瞬間t
iにレーザビームによって照明され、ここで、T
0は初期粉末温度である上記調節する段階、及び
-瞬間t
nで、調節出力を用いて、n番目の点を含む粉末層のn番目のゾーンを固化するためのレーザビームをn番目の点に向けて放出する段階。
-層のn番目の点で瞬間t
nでの固化前粉末温度Tp(t
n)の推定において、層の(n-1)個の第1の点の各i番目の点が、
であるように、粉末層のn番目の点から距離r
niに位置付けられ、ここで、Vlは、予め決められた空間近傍であり、各i番目の点は、
であるようにi番目の点に向けたレーザビームの放出の瞬間t
iに対応し、ここで、Vtは、予め決められた時間近傍であり、ここで、
であり、nは、2よりも大きいか又はそれに等しい整数である。
-固化前温度Tp(t
n)の推定値に応じる積層造形粉末層のn番目の点の上に放出されるレーザビームの出力P
nが、
によって計算され、ここで、Δtは、予め決められた時間区分であり、Tsは、予め決められた閾値温度である。
-閾値温度Tsは、以下の条件:
-レーザスポットの中心がその上を通過する点でかつレーザ通過時に達成されることになる粉末の温度、
-レーザスポットの中心がその上を通過する点での経時的に達成される粉末の最高温度、
-粉末層の点で経時的に達成される粉末の最高温度、
-粉末層のいずれの点でも経時的に超えないことになる上限温度、
-粉末のいずれの点でも下回らないことになる下限温度、又は
-製造工程中に任意的に可変であるこれらの条件の組合せ、
から選ばれた少なくとも1つの温度目標に応じて予め決められる。
-レーザは互いに平行な直線部分の第1の群を含む不連続経路に沿って走査する。
-レーザが、互いに平行な直線部分の第1の群と直線部分の第2の群とを含む連続経路に沿って走査し、第2の群の各直線部分が、第1の群の第1の直線部分の第1の端部と第1の群の第2の直線部分の第2の端部とを接合し、第2の直線部分が、第1の直線部分に隣接する。
-粉末層の1又は2以上のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって引き起こされるn番目の点での粉末層の温度変動の推定が、製造工程が開始された状態で実施される。
【0011】
本発明はまた、この節に説明するような方法を実施するように設計された選択的積層造形装置に関する。
【0012】
特に、本発明は、粉末層からの3次元物体の選択的積層造形のための装置に関し、装置は、
-レーザ型光源と、
-光源が積層造形粉末層の第1の点の上に第1の点を含む粉末層の第1のゾーンを固化するためにレーザビームを放出するようにレーザ型光源を制御するように構成された制御ユニットと、
を含み、装置はまた、
-粉末層の第1のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって引き起こされる粉末層の第2の点での粉末層の推定温度変動を格納するためのメモリであって、推定温度変動が、第1の点と第2の点の間の距離にかつ予め決められた時間間隔に応じる上記メモリ、
を含み、制御ユニットは、
-メモリに格納された推定温度変動に応じてレーザビームの出力を調節し、
-光源が第2の点を含む粉末層の第2のゾーンを固化するために調節出力を用いて第2の点の上にレーザビームを放出し、第1の点の上へのレーザビームの放出及び第2の点の上へのレーザビームの放出が予め決められた時間間隔によって時間的に分離されるようにレーザ型光源を制御する、
ように構成される。
【0013】
有利ではあるが任意的に、装置は、製造工程が開始された状態で粉末層の1又は2以上のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって引き起こされるn番目の点での粉末層の温度変動の推定値を決定するように設計された計算機又はシミュレータ(C)によって補完される場合がある。
【0014】
本発明の更に別の特徴及び利点は、純粋に例示的かつ非限定的であって添付図面と共に読むべきである以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の1つの可能な実施形態による積層造形装置の概略図である。
【
図2】粉末層の面に位置付けられてレーザビームによって走査される経路の概略図である。
【
図3】従来技術から公知の技術に従って粉末層がレーザビームによって走査された時に粉末によって達成される最高温度場の概略図である。
【
図4】従来技術から公知の技術に従ったレーザビームによる粉末層の走査中に粉末層に向けて放出されるレーザビームの出力の変化、固化前粉末温度の変化、レーザスポットの中心点での粉末温度の変化、及び粉末によって達成される最高温度の変化を示す概略図である。
【
図5】従来技術から公知の技術によるレーザスポットの中心点での粉末によって達成される温度の概略マップである。
【
図6】本発明の1つの可能な実施形態によるレーザビームによる粉末層の走査中の粉末層に向けて送られるレーザビームの出力の変化と、固化前粉末温度の変化と、レーザスポットの中心点での粉末温度の変化と、レーザスポットの中心点での粉末温度目標の変化と、粉末によって達成される最高温度とを示す概略図である。
【
図7】本発明の1つの可能な実施形態に従って粉末層がレーザビームによって走査される時に粉末に向けて送られるレーザビームの出力場を示す概略図である。
【
図8a】従来技術から公知の2つの技術のうちの一方に従ってレーザビームによって走査される粉末層の面での経路の詳細を示す概略図である。
【
図8b】従来技術から公知の2つの技術のうちの一方に従ってレーザビームによって走査される粉末層の面での経路の詳細を示す概略図である。
【
図9】レーザビームによって走査される粉末層の面での経路を示す概略図である。
【
図10】本発明の1つの可能な実施形態に従ったレーザビームによる粉末層の走査中の粉末層に向けて放出されるレーザビームの出力の変化、固化前粉末温度の変化、レーザスポットの中心点での粉末温度の変化、レーザスポットの中心点での粉末の温度目標の変化、及び粉末によって達成される最高温度の変化を示す概略図である。
【
図11】本発明の1つの可能な実施形態に従って粉末層がレーザビームによって走査される時に粉末に向けて送られるレーザビームの出力場を示す概略図である。
【
図12】本発明の1つの可能な実施形態に従って粉末層がレーザビームによって走査される時に粉末によって達成される最高温度場の概略図である。
【
図13】粉末層の点の空間近傍及び時間近傍を決定するための方法を示す概略図である。
【
図14】粉末層の点の空間近傍及び時間近傍を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
選択的積層造形装置
図1の選択的積層造形装置1は、
-様々な積層造形粉末(金属粉末、セラミック粉末など)がその上に順次堆積され、3次元物体(
図1のモミの木の形状の物体122)を製造することを可能にする水平プレート123などの支持体と、
-プレート123の上方に位置付けられる粉末タンク127と、
-プレートの上のこの金属粉末の分配のための配置124であって、例えば、様々な連続粉末層を広げるための層形成ローラー及び/又はスプレッダー125を有する上記配置124と、
-広がった微細層の(全体又は部分)融解のための少なくとも1つのレーザ型光源1212を有するアセンブリ128であって、光源1212によって生成されたレーザビームが粉末平面内、すなわち、粉末層がスプレッダー125によって広げられた平面内で広がった微細層との接触状態になる上記アセンブリ128と、
-事前格納情報(メモリM)に応じて装置121の様々な構成要素を制御する制御ユニット129と、
-層が堆積される時にプレート123に対する支持体を引き下げること(双方向矢印Bに沿った移動)を可能にするための機構1210と、
を含む。
【0017】
図1を参照して説明した例では、少なくとも1つのガルバノメトリックミラー1214が、制御ユニット129によって送られた情報に応じて光源1212からのレーザビームを物体122に対して向けを決めて移動させることを可能にする。当然ながら、いずれか他の偏向システムを想定することができる。
【0018】
装置121の構成要素は、空気又は不活性ガスの処理回路に接続することができる密封チャンバ1217の内側に配置される。空気又は不活性ガスの処理回路は、密封チャンバ1217の中の圧力を大気圧を下回る又は上回るように調節するように設計することもできる。
【0019】
一定出力レーザによって走査される粉末層内の経路
図2は、粉末層の面に位置付けられてレーザビームによって走査される経路を概略で示している。
【0020】
従来技術から公知の技術によると、粉末層は、それを徐々に固化するためにレーザビームによってジグザグ移動又は前後移動で走査される。
【0021】
レーザは、粉末層の第1の点A1に向けて放出され、X軸方向に向けられた第1の直線部分に沿って点B1に至るまで一定出力及び一定速度で粉末層にわたって走査する。第1の直線部分は、0に近いY座標の値に対応し、正のX軸方向に走査される。
【0022】
直線部分A1B1の長さは、この例では1ミリメートルに等しい。
【0023】
レーザビームによる第1の直線部分の走査は、粉末を融解させるのに十分なエネルギを粉末層に局所的に供給して第1の直線部分を含む層のゾーンを固化することを可能にする。
【0024】
粉末層に向けたレーザの放出は、次に中断される。
【0025】
レーザの放出は、レーザが第2の直線部分に沿って点B2から点A2まで一定出力及び一定速度で走査するように再起動される。この直線部分は、第1の直線部分に対して平行である。第2の直線部分は、直前の直線部分のものよりも大きいY座標の値に対応し、負のX軸方向に走査される。
【0026】
第2の直線部分の長さは、第1の部分のものと同じである。
【0027】
再びレーザの放出は中断され、続いて第3の直線部分に沿って正のX軸方向に点A3から点B3まで一定出力及び一定速度で走査するために再起動される。この直線部分は、2つの先行直線部分に対して平行であり、これら2つの先行直線部分のものよりも大きいY座標の値に対応する。
【0028】
このようにして続けることで、
図2の点A
9とB
9とによって定義される第9の直線部分を一定速度及び一定出力で正のX軸方向に走査することができる。
【0029】
全ての直線部分の長さは1ミリメートルである。
【0030】
一定出力レーザ走査の熱効果
図3は、
図2で説明した経路に沿ってレーザビームによって走査された時に粉末によって達成される最高温度場を概略で示している。
【0031】
粉末層のいずれかの点での製造工程中の温度は、数値シミュレーションによって決定することができる。
【0032】
調査された各点に関して、方法の進行中にこの点で粉末によって採用される温度の時間シーケンスを生成することができる。
【0033】
この時間シーケンスから、工程中に調査された点での粉末によって達成される最高温度に対応するこのシーケンスの値の最大値を抽出することができる。
【0034】
最も高い最高温度は、
図2に関して上記で定義した直線部分の端部のうちの一方の近くに位置付けられる粉末層の点で達成される。
【0035】
より具体的には、この点は、直線部分の2つの端部のうちでレーザによって最初に走査される端部である。
【0036】
図2及び
図3に示しているゾーンZ
1は、粉末層のそのような点に対応する。これらの点は、レーザによって最初に走査される第3の直線部分の終点の近くに位置付けられる。
【0037】
最も高い最高温度は、3500ケルビンの温度にほぼ対応する。この温度は、積層造形粉末の気化温度を超える場合がある。この場合は、特に、積層造形粉末が3473Kの気化温度を有するTi6Al4Vで構成される時にそうである。
【0038】
粉末の気化は、造形された物体内の隙間及び既に固化されたゾーン上への突起物を生じる場合があり、それによって造形された物体の品質、面状態、及び機械的特性を劣化させる場合がある。
【0039】
更に、最も高い最高温度は、最高温度が1800Kの前後の最も低い点の比較的近くに位置付けられる粉末層の点で達成される。
【0040】
図2及び
図3に示しているゾーンZ
2は、最高温度が最も低い粉末層の点に対応する。ゾーンZ
2は、ゾーンZ
1の近くに位置付けられる。
【0041】
粉末層のゾーンZ1とゾーンZ2の間には比較的急な温度勾配が位置付けられる。より一般的には、新しい直線部分の走査の開始は、比較的急な温度勾配に関連する。
【0042】
その後にこれらの勾配は、構成要素の機械的特性に対する影響を有して変形並びにマイクロメートル規模又はそれよりも大きい亀裂を引き起こす残留応力の発生を招く。
【0043】
図4は、
図2に示した経路に沿った上記で説明したようなレーザビームによる粉末層の走査中の異なる量の変化を概略で示し、異なる量は、
-粉末層に向けて放出されるレーザビームの出力30、
-固化前粉末温度31、
-レーザスポットの中心点での粉末温度32、及び、
-粉末の最高温度33、この事例では製造工程中にレーザスポットの中心によって走査される点での粉末によって達成される最高温度、
である。
【0044】
時間の関数として表されるレーザビームの出力30の曲線は、
図2の説明において上記で説明した各直線部分の走査時間を示している。
【0045】
レーザビームが粉末層にわたって走査する速度は、1メートル毎秒である。
【0046】
各直線部分の長さは1ミリメートルであることから、レーザビームは、各直線部分に沿って1ミリ秒で走査する。
【0047】
2つの直線部分の間で、レーザビームの放出は休止され、出力はゼロまで降下する。
【0048】
レーザビームの出力30の経時曲線は、1ミリ秒の幅と一定の高さとを有する一連の矩形波に対応する。各直線部分は、300Wの一定出力を有するレーザによって走査される。
【0049】
各直線部分は矩形波に対応し、水平時間軸上に示している各瞬間uは、レーザが瞬間uに放出される経路上に位置付けられる粉末層の点Mに対応する。レーザスポットの中心は、瞬間uでは点Mの上を走査する。
【0050】
レーザスポットは、レーザビームと粉末層の間の交点に位置付けられるレーザビームの断面に対応すると理解される。
【0051】
レーザスポットは、円形状を有することができる。
【0052】
固化前粉末温度31は、瞬間uの直後の点Mでの粉末層の温度Tpの推定値である。
【0053】
この推定値は、瞬間uの前にレーザビームによって粉末層に供給されたエネルギの点Mでの拡散を特徴付ける。
【0054】
曲線31は、数値シミュレーションによって得られる。
【0055】
レーザスポットの中心点での粉末温度32は、レーザ通過時のレーザスポットの中心によって走査される点での粉末温度である。この温度は、瞬間uの直後の点Mでの粉末温度の推定値に対応する。
【0056】
曲線32は、数値シミュレーションによって得られる。
【0057】
粉末によって達成される最高温度33は、製造工程中に点Mで粉末によって達成される最高温度の推定値である。この推定値は、瞬間uでレーザによって点Mに向けて供給されるエネルギ、並びに瞬間uの前にレーザによって粉末層に供給されたエネルギの点Mへの拡散を考慮する。
【0058】
曲線33は、曲線30の各矩形波のまさに開始点にピークを有する。これらのピークに対応する温度は、3500Kを超え、場合によっては積層造形粉末の気化温度を超える。
【0059】
曲線31、32、及び33は、ある一定の同様の変動を示す。特に、曲線31、32、及び33は、曲線30の各矩形波端部付近で急激な信号降下を示し、それに曲線30の次の矩形波の最中の急激な上昇及びより緩慢な低下が続き、その後、この矩形波の端部の付近で新しい急激な信号降下を示す。
【0060】
粉末層の直線部分の走査は、走査の開始点で低く、続いて急激にかなり高くなり、その後、直線部分の走査の終点に至るまで徐々に低下する最高到達温度に対応する。固化前の温度Tpとレーザスポットの中心点での粉末によって達成される温度とは同じ変化を辿る。
【0061】
図5は、粉末層がレーザビームによって上記で説明したように
図2の経路に沿って走査された時にレーザスポットの中心点で粉末によって達成される温度のマップを概略で示している。
【0062】
図5と
図4の曲線32とは、「レーザスポットの中心点での粉末によって達成される温度」という同じ量の2つの図を提示している。
図5では、この図は空間的であるが、
図4の曲線32ではこの図は時間的である。
【0063】
レーザスポットの中心点での温度は、直線部分の走査の開始点で低く、その後、急激にかなり高くなる。
図5に示しているゾーンZ
3a、Z
3b、及びZ
3cが、この変化に対応する。
【0064】
この急激な上昇が過ぎると、レーザスポットの中心点での温度は、直線部分の走査の終点に至るまでより穏やかに低下する。
【0065】
レーザスポットの中心点でのこれらの温度変動は様々な影響から生じる。
【0066】
これらの影響のうちの一部として、レーザが直線部分に沿って走査する時に、レーザによって供給されるエネルギの一部は、レーザの走査順序で次にある直線部分に向けて拡散する。
【0067】
次の直線部分は、特にレーザによって直前に走査された点に隣接するゾーン内で加熱される。時間が経つにつれて、走査済み直線部分から発して次の直線部分の隣接ゾーン内にある点へと拡散したエネルギが、低下する前の最大点を通り抜けるように、エネルギは粉末の中へと更に拡散する。
【0068】
上記の影響のうちの他の部分として、粉末層に向けたレーザビームの放出は、直線部分の走査の終点で中断され、その後、次の直線部分の開始点で再起動される。この不連続性は、1つの直線部分から次の直線部分までのエネルギ供給の低下を引き起こす。
【0069】
これらの理由から、固化31の前の粉末温度は、直線部分のまさに開始点では、直線部分の残りの部分でのものよりも低い。固化前のこの温度差は、
図4の曲線31から確認することができ、曲線30の各矩形波端部の付近に位置付けられるこの曲線31内の信号降下に対応する。
【0070】
レーザスポットの中心点の温度は、特に固化前の走査点での温度、すなわち、レーザによって走査される時間にこの点に存在している直前の直線部分から発したエネルギに応じる。
【0071】
図5には第6及び第7の部分P6及びP7を示している。これらの部分は、矢印F6及びF7の方向に走査される。これらの部分内には異なるゾーンが識別されており、これらのゾーンは、レーザによってZ
7a、Z
6a、Z
5a、Z
4a、Z
4b、Z
5b、Z
6b、及びZ
7bの順序で走査される。
【0072】
直線部分のまさに開始点、例えばゾーンZ4b内には、ゾーンZ4aとZ4bの間のレーザ放出の中断に起因して、直前走査ゾーンから比較的少ないエネルギしか拡散されない。
【0073】
直線部分のまさに開始点の直後、例えばゾーンZ5b内には、このゾーンに隣接して位置付けられる直前の直線部分の部分であるゾーンZ5aがレーザによって走査されたばかりであることから、この直前走査ゾーンから比較的多めのエネルギが拡散される。
【0074】
直線部分の残りの部分には、これらの残りの部分に隣接して位置付けられる直前の直線部分の部分がレーザによって走査された時から次第に長い時間が経つことから、これらの直前走査ゾーンから徐々に比較的少ないエネルギしか拡散されない。
【0075】
ゾーンZ6a内に受け入れられて、ゾーンZ6bが走査された時間にゾーンZ6bの中に拡散していたエネルギは、
-ゾーンZ5a内に受け入れられ、ゾーンZ5bが走査された時間にゾーンZ5bの中に拡散していたエネルギよりも少なく、
-ゾーンZ7a内に受け入れられ、ゾーンZ7bが走査された時間にゾーンZ7bの中に拡散していたエネルギよりも多い。
【0076】
図5に例示している温度場は、レーザスポットの中心点での温度場に対応する。この温度場は、特に、最初に走査される直線部分の端部での急な温度勾配を有して不均一である。
【0077】
変調出力レーザによって走査される粉末層内の経路
粉末を走査する時のレーザの出力を変調することによってレーザスポットの中心で粉末によって達成される温度場及び従って到達最高温度場をより良好に制御する方法を提案する。
【0078】
レーザによって一定速度で走査される粉末層内経路が選ばれる。この経路は、例えば同じ長さのセグメントSnへと仮想的に分割することができ、この場合、これらのセグメントSnは、レーザ走査持続時間に対応する。各セグメントSnは、特に、当該セグメントSn内に含まれるn番目の粉末層の点と、当該セグメントをレーザによって走査し始める瞬間tnとによって特徴付けることができる。
【0079】
各セグメントを走査するレーザビームの出力は、異なるセグメントを走査する順序で計算される。
【0080】
n番目のセグメントSnに関して、この計算は、以下の段階を含む:
-セグメントSn内に含まれるn番目の粉末層の点での瞬間tnの固化前粉末温度Tp(tn)の推定値であって、経路上の上流に位置付けられ、直前に計算された出力で各々が走査されるn-1個のセグメントにわたって走査するためのレーザビームの放出によってn番目の粉末層の点での瞬間tnに引き起こされる粉末の温度変動に応じる上記推定値を計算する段階、
-レーザスポットの中心点の超えられることなく達成されることになる層温度である閾値温度Tsと固化前粉末温度Tp(tn)の間の温度差に等しい達成目標の温度変動を計算する段階、及び
-n番目のセグメントSnにわたって走査するために放出されるレーザビームの出力を温度変動目標に応じて計算する段階。
【0081】
レーザ出力の変調は、セグメントの全てに関してこれらのセグメントを走査する順序で計算される。
【0082】
変調出力レーザ走査の熱効果
図6は、
図2に示している経路に沿ったレーザビームによる粉末層の走査の場合のそのような方法の適用に対応する。
【0083】
図6は、走査中の異なる量の変化を概略で示し、異なる量は、
-粉末層に向けて放出されるレーザビームの出力40、
-固化前粉末温度41、
-レーザスポットの中心点での粉末温度42、
-粉末の最高温度43、この事例では製造工程中にレーザスポットの中心によって走査される点での粉末によって達成される最高温度、及び、
-レーザスポットの中心点での粉末温度目標44、
である。
【0084】
曲線41、42、及び43は、数値シミュレーションによって得られる。
【0085】
曲線41、42、及び43で表される量は、曲線31、32、及び33で表される量とそれぞれ同じ方法で定義されるが、温度場をより良好に制御する方法が適用される場合のものである。
【0086】
レーザビームが粉末層にわたって走査する速度は、1メートル毎秒である。
【0087】
各直線部分の長さは1ミリメートルであることから、レーザビームは、各直線部分に沿って1ミリ秒で走査する。
【0088】
2つの直線部分の間ではレーザビームの放出は休止され、出力はゼロまで降下する。
【0089】
レーザビームの出力40の経時曲線は、1ミリ秒で、2ミリ秒で等々、ミリ秒毎にゼロまで降下する信号を示す。各直線部分の走査は、ゼロまでの2つの信号降下の間の時間間隔に対応する。
【0090】
最初のミリ秒中のレーザビームの出力の曲線40は一定であり、この出力は、第1の直線部分が走査されている間に一定に保たれる。
【0091】
後続の直線部分に沿った走査では、レーザビームの出力は、直線部分のまさに開始点で最大であり、続いて急激に低下し、その後の走査中により穏やかに上昇する。
【0092】
走査中のレーザビームのこれらの出力変化は、
図4の最高温度曲線33の場合に説明した最高温度変動と反対である。
【0093】
図6の固化前粉末温度の曲線41は、
図4の固化前粉末温度の曲線31と同様のある一定の変化を示す。
【0094】
特に、曲線41は、直線部分に沿った走査の各端部付近で急激な信号降下を示し、この信号降下に急激な上昇が続き、更に次の直線部分に沿った走査をしている間のより緩慢な低下が続く。
【0095】
しかし、曲線41での変動の振幅は曲線31での変動の振幅よりも小さく、すなわち、レーザビームによって走査された第2の直線部分から開始して、曲線41は、1200Kの温度値と2200Kの温度値の間、すなわち、1000Kの範囲で変化し、それに対して曲線31は、1400Kの温度値と2700Kの温度値の間、すなわち、1300Kの範囲で変化する。
【0096】
経路の下流に位置付けられるセグメントの温度に対するレーザによるセグメントの走査の影響は、
図4及び
図5の状況と比較して小さい。
【0097】
曲線44は、レーザスポットの中心点での粉末温度目標を表す。より具体的には、曲線44は、レーザ通過時にレーザスポットの中心によって走査される粉末層の点で超えられることなく達成されることになる粉末温度である。
【0098】
曲線44は一定であり、すなわち、レーザスポットの中心点で超えられることなく達成されることになる層温度は、レーザ走査中及び製造工程中に同じである。この温度を、閾値温度Tsと呼ぶ場合がある。
【0099】
各直線部分の走査のまさに開始点では曲線42は曲線44よりも低く、続いて直線部分の走査の残りの部分の最中に2つの曲線42と44とは一致する。レーザスポットの中心点での粉末温度目標は、レーザビームによる各直線部分の走査の開始後に素早く達成される。
【0100】
曲線42での変動の振幅は曲線32での変動の振幅よりも小さく、すなわち、レーザビームによって走査された第2の直線部分から開始して、曲線42は、1800Kの温度値と2300Kの温度値の間、すなわち、500Kの範囲で変化し、それに対して曲線32は、1600Kの温度値と3100Kの温度値の間、すなわち、1500Kの範囲で変化する。
【0101】
この方法は、
図4の状況と比較してレーザスポットの中心点での粉末温度の変化を大幅に低減することを可能にする。
【0102】
曲線43は、レーザビームによる各直線部分の走査の開始直後にピークを有する。これらのピークに対応する温度は3000Kを超えず、材料Ti6Al4Vの気化温度をはるかに下回る。
【0103】
従って、この新しい方法の適用中に粉末によって達成される温度は、粉末の気化温度よりも低くすることができる。それによって、積層造形方法中に消費されるエネルギを低減すること、並びに製造物体内の材料の気化及び隙間を回避することが可能になる。
【0104】
曲線43での変動の振幅は、曲線33での変動の振幅よりもかなり小さく、すなわち、レーザビームによって走査された第2の直線部分から開始して、曲線43は、2600Kの温度値と2900Kの温度値の間、すなわち、300Kの範囲で変化し、それに対して曲線33は、2900Kの温度値と3600Kの温度値の間、すなわち、700Kの範囲で変化する。
【0105】
この方法は、
図4の状況と比較してレーザスポットの中心点で粉末によって達成される最大値の変動を低減することを可能にする。
【0106】
図7は、レーザビームによって粉末層を走査する
図6のモードと同じモードで粉末に向けて送られたレーザビームの出力場を概略で示している。
【0107】
図6の曲線40上に既に表したように、
図7の底部に位置付けられる第1の直線部分の最中に出力は一定で300W前後に等しい。
【0108】
各後続の直線部分に関して、レーザビームの出力は、走査の開始点で最大であり、続いて急激に降下し、その後の走査中に前と同様により穏やかに上昇する。
【0109】
不連続性を有する走査経路
図8aは、
図2に示している経路に沿って上記で説明したように粉末層がレーザビームによって走査される際の経路の詳細を概略で示している。
【0110】
温度場をより良好に制御するために、本提案の方法に従って走査中にレーザビームの出力が変調される。
【0111】
この経路は、直線部分48と次の直線部分49の間に不連続性を有する。
【0112】
レーザは、直線部分48に沿って走査し、特に点48a、48b、48c、48d、及び48eの上を通り過ぎる。これらの点は、レーザによって走査される直線部分を仮想的に分割し、レーザビームの出力がそれに対して計算される同じ長さのセグメントSnの端部に対応する。
【0113】
円51aは、点48aで粉末層を照明するレーザスポットに対応する。区域52aは、点48aに至るまでのレーザ走査の熱効果に対応する。点48aにおいて達成される温度が高いほど、区域52aは大きい。区域52aは、点48aに送られるレーザビームの出力と、レーザによって点48aの上流の粉末層に供給されて点48aに至るまで拡散したエネルギとの両方に応じる。
【0114】
レーザ走査の熱効果は、直線部分48の走査中に強まる。区域52b、52c、52d、及び52eは次第に大きくなる。
【0115】
図7の説明で述べたように、レーザビームの出力は走査中に強まる。粉末層内で走査方向に拡散されるエネルギは、直線部分48の走査中に次第に大きくなる。
【0116】
点48eでは、レーザの放出は中断される。レーザは、レーザビームが点49eに向けて放出されるように再起動される。続いてレーザビームは、点49eから点49aへと直線部分49を直線部分48と反対方向に走査する。レーザ走査の熱効果は、直線部分49の走査中に強まる。区域53e、53d、53c、53b、及び53aは、この順序で次第に大きくなる。
【0117】
点49eに至るまでのレーザ走査の熱効果に対応する区域53eは、区域52eよりも実質的に小さい。走査の不連続性、すなわち、点48eと49eの間のレーザの放出の中断と、これらの点の間の走査方向の変化とは、点48eと49eの間の粉末層内に拡散されるエネルギを減少させる。
【0118】
図7の説明において述べたように、点48eに向けて放出されるレーザビーム出力よりもかなり高いレーザビーム出力が点49eに向けて放出される場合であっても、レーザ走査の熱効果は、点49eよりも点48eにおいてかなり強い。
【0119】
レーザスポットの中心で粉末によって達成される温度場は、
図8a及び
図6の場合には走査経路に沿って均一ではない。特に、レーザビームによる直線部分の走査のまさに開始点では、固化前粉末温度曲線41とレーザスポットの中心点での粉末温度曲線42との両方が信号降下を示す。
【0120】
不連続性のない走査経路
直線部分の走査のまさに開始点での固化前粉末温度の降下とレーザスポットの中心点での粉末温度の降下とを制限するための経路形態を提案する。
【0121】
図8bは、この目標に対して提案する経路形態の詳細を概略で示している。
【0122】
温度場をより良好に制御するために、走査中に本提案の方法に従ってレーザビーム出力が変調される。
【0123】
この経路は、直線部分48の端部48eと直線部分49eの端部49eとを接合する直線部分50の追加によって直線部分48と次の直線部分49の間の連続性を示す。直線部分50は、レーザビームによって点48eから点49eまで、とりわけ、点50aの上を通り過ぎることによって走査され、この点50aには、そこに至るまでのレーザ走査の熱効果を特徴付ける区域54aが関連付けられる。
【0124】
図8aに例示している経路と比較して、
図8bの経路は連続的であり、走査方向の小さめの変化に対応する。
【0125】
図9は、本提案の経路形態を用いてレーザビームによって走査される粉末層の面での経路を概略で示している。
【0126】
この経路は、連続的であり、
図2に示している経路の平行直線部分に対応する第1の平行直線部分群を含む。
図9の経路は、第2の直線部分群を含み、第2の群の各直線部分は、第1の群の第1の直線部分の第1の端部と、当該の第1の直線部分に隣接する第1の群の第2の直線部分の第2の端部とを接合する。
【0127】
第1の直線部分群の直線部分からこの第1の群内の次の直線部分への各通過、例えば、直線部分60から直線部分62への通過は、第2の直線部分群の直線部分、例えば直線部分61の追加によって連続的になる。
【0128】
不連続性のない走査経路の場合の変調出力レーザ走査の熱効果
図10は、温度場をより良好に制御するための本提案の方法の
図9に例示している経路に沿ったレーザビームによる粉末層の走査への適用に対応する。
【0129】
図10は、走査中の異なる量の変化を概略で示し、異なる量は、
-粉末層に向けて放出されるレーザビームの出力70、
-固化前粉末温度71、
-レーザスポットの中心点での粉末温度72、
-粉末の最高温度73、この事例では製造工程中にレーザスポットの中心によって走査される点での粉末によって達成される最高温度、及び、
-レーザスポットの中心点での粉末温度目標74、
である。
【0130】
曲線71、72、及び73は、数値シミュレーションによって得られる。
【0131】
曲線71、72、及び73で表される量は、曲線31、32、及び33で表される量とそれぞれ同じ方法で定義されるが、温度場をより良好に制御する方法が連続的経路の場合に適用される場合のものである。
【0132】
レーザビームによって粉末層を走査する速度が1メートル毎秒であること、及び第1の直線部分群の各直線部分の長さが1ミリメートルであることから、レーザビームは、第1の群の各直線部分に沿って1ミリ秒で走査する。
【0133】
最初のミリ秒中のレーザビームの出力の曲線70は一定であり、この出力は、第1の直線部分が走査されている間に一定に保たれる。
【0134】
第1の群の2つの直線部分の間ではレーザビームの出力はゼロまで降下せず、レーザが第2の群の直線部分に沿って走査するのにある一定の時間が必要である。
【0135】
出力の曲線70は、第1の群の第2の直線部分から開始して、規則的なパターンと1ミリ秒よりも長い期間とを示す。
【0136】
このパターンでは、レーザビームの出力は低下し、続いて2度急激に上昇し、その後の走査中により穏やかに上昇する。輪郭75が、信号の低下と急激な上昇との2つの連続シーケンスを有する曲線70のゾーンを囲んでいる。
【0137】
2つの連続シーケンスの各々は、レーザの走査方向の変化に対応する。
【0138】
第1のシーケンスは、第1の群の直線部分から第2の群の直線部分への移行に対応する。
【0139】
第2のシーケンスは、第2の群の直線部分から第1の群の直線部分への移行に対応する。
【0140】
各直線部分移行では、
図6の出力の曲線40の場合と同様に、レーザビームの出力は、直線部分のまさに開始点で最大値を通り抜け、続いて急激に低下する。
【0141】
固化前温度曲線71は、第1の群の第2の直線部分から開始して、曲線70に関して説明した時間間隔と同じ1ミリ秒よりも長い期間を有する規則的な変動を示す。
【0142】
これらの変動は、
図6の曲線41の変動よりもかなり小さい振幅を有する。特に、第1の群の直線部分の開始に対応する急激な上昇が続く曲線41の信号降下は、曲線71では出現しない。レーザによって走査される第2の直線部分から開始して、曲線71は、2000Kの温度値と2300Kの温度値の間、すなわち、300Kの範囲で変化し、それに対して曲線41は、1200Kの温度値と2200Kの温度値の間、すなわち、1000Kの範囲で変化する。
【0143】
図10では、第1の群の直線部分のまさに開始点での固化前粉末温度は、
図6の状況と比較して上昇した。
【0144】
図6の曲線44と同様に、曲線74は一定であり、すなわち、レーザスポットの中心点で超えられることなく達成されることになる層温度は、レーザ走査中及び製造工程中に同じである。この温度は、閾値温度Tsと呼ぶ場合がある。
【0145】
経路の走査のまさに開始点では、曲線72は曲線44よりも低く、続いて経路の走査の残りの部分の最中に、2つの曲線42と44とは一致する。レーザスポットの中心点での粉末温度目標は、レーザビームによる第1の直線部分の走査の開始後に素早く達成される。
【0146】
曲線72での変動の振幅は曲線42での変動の振幅よりもかなり小さく、すなわち、レーザビームによって走査された第2の直線部分から開始して、曲線72は一定に見え、それに対して曲線42は、1600Kの温度値と2300Kの温度値の間、すなわち、700Kの範囲で変化する。
【0147】
本提案の連続的経路は、
図6の状況と比較してレーザスポットの中心点での粉末温度の変化を大幅に低減することを可能にする。
【0148】
第1の群の第2の直線部分から開始して、曲線73は、曲線70及び71に関して説明した時間間隔と同じ1ミリ秒よりも長い期間を有する規則的パターンを示す。
【0149】
これらのパターンの最中に達成される最高温度は3000Kを超えず、材料Ti6Al4Vの気化温度をはるかに下回る。
【0150】
従って、新しい方法の適用中に粉末が本提案の連続的経路に沿って達成される温度は、粉末の気化温度よりも低くすることができる。それによって、積層造形方法中に消費されるエネルギを低減すること、並びに製造物体内の材料の気化及び隙間を回避することが可能になる。
【0151】
図11は、レーザビームによって粉末層を走査する
図10のモードと同じモードで粉末に向けて送られたレーザビームの出力場を概略で示している。
【0152】
図10の出力の曲線70上に既に示したように、
図11の底部にある第1の直線部分の最中に、レーザビームの出力は一定であり、300W前後に等しい。
【0153】
第1の群及び第2の群の各後続の直線部分に関して、レーザビームの出力は、走査のまさに開始点での最大値にあり、続いて急激に降下し、その後の直線部分の走査中に前と同様により穏やかに上昇する。この経路の連続性は、直線部分の走査の最終点と次の直線部分の走査のまさに開始点とを一致させる。
【0154】
図12は、レーザビームによって粉末層を走査する
図10のモードと同じモードで粉末層がレーザビームによって走査された時に粉末によって達成される最高温度場を概略で示している。
【0155】
図12では、
図3のものよりも最高温度場は均一である。
図12では、最高温度は1700Kと2800Kの間にあり、それに対して
図3では、最高温度は1800Kと3500Kの間にある。
【0156】
図12の場合の温度勾配は、
図3の場合のものよりも緩い。
【0157】
固化前粉末温度Tpの推定-2つの点の場合
異なる粉末固化方式の状況にある
図4の曲線31、
図6の曲線41、
図10の曲線71上に示している固化前粉末温度は、レーザが粉末層上の点の上を走査する直前の当該点での粉末層温度Tpの推定値である。
【0158】
この推定値は、レーザによって先に粉末層に供給されたエネルギの当該点への拡散を考慮する。
【0159】
例えば、第1の点を含む積層造形粉末層の第1のゾーンを固化するための粉末層の第1の点の上へのレーザビームの放出の場合に、粉末層の第1のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって第1の点とは別の粉末層の第2の点での引き起こされる粉末層温度変動は、第1の点と第2の点の間の距離と、予め決められた時間間隔とに応じて推定することができる。
【0160】
より具体的には、この推定温度変動ΔTは、第1の点と第2の点の間の距離r
21と予め決められた時間間隔(t
2-t
1)とに応じて以下のように決定することができる:
ここで、Q
1は、第1のセグメントにわたって走査するためのレーザビームの放出中に層が受け入れるエネルギであり、εは、粉末層の熱浸透率であり、Rは、レーザビームの半径であり、aは、粉末層の熱拡散率であり、t
0は、予め決められた瞬間である。
【0161】
t0は、時間的正当性の下限を定義するモデルパラメータである。この値は、例えばt0=10×Δtであるような時間区分Δtに応じて決定することができ、この場合はΔt=10マイクロ秒である。
【0162】
エネルギQ1は、第1の点の上に放出されるレーザビームの出力と、この第1の点の上へのレーザビームの放出時間との積として定義することができる。レーザビームが経路に沿って走査される場合に、時間区分Δtを定義し、この時間区分Δtに等しい時間にわたってレーザビームによって各々が走査される複数の部分へと経路を分割することができる。これらの部分が十分に小さい場合に、1つの部分に向けて送られるエネルギは、当該部分の単一の点に送られるものと見なすことができる。
【0163】
レーザスポットが半径Rによって定義される円形状を有する場合に注目する。
【0164】
ここで用いる式は、固体内への熱の拡散に当てはまるモデルを基本にしたものであり、このモデルは、金属セラミック粉末を含む固体の積層造形粉末に適用することもできる。
【0165】
この式:
は、粉末層の第1のゾーンを固化するための瞬間t
1でのレーザビームの放出によって引き起こされる第2の点での瞬間t
2の粉末層温度変動として解釈することができる。
【0166】
この式を用いて、瞬間t1の後のいずれかの瞬間の第2の点での粉末温度を確立することができる。
【0167】
特に、この式を用いて、第2の点での固化前粉末温度Tp(t2)、すなわち、レーザがこの第2の点を照明する直前の第2の点での粉末温度を確立することができる。
【0168】
粉末層の第1の点から距離r
21の場所に位置付けられる第2の点での瞬間t
2の固化前粉末温度Tp(t
2)は、関係式;
から推定することができ、ここで、t
0は、初期粉末温度である。
【0169】
積層造形粉末層の第1の点の上へのレーザビームの放出は、瞬間t1に行われる。
【0170】
この推定は、粉末層からの3次元物体の選択的積層造形のための方法を実施することを可能にし、本方法は、
-積層造形粉末層を支持体又は先に固化された層に付加する段階と、
-第1の点を含む積層造形粉末層の第1のゾーンを固化するために粉末層のこの第1の点の上にレーザビームを放出する段階と、
を含み、本方法は、それが、
-粉末層の第1のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって第1の点とは別の粉末層の第2の点での引き起こされる粉末層の推定温度変動であって、第1の点と第2の点の間の距離にかつ予め決められた時間間隔に応じる上記推定温度変動に応じてレーザビームの出力を調節する段階と、
-第2の点を含む粉末層の第2のゾーンを固化するために調節出力を用いて第2の点の上にレーザビームを放出する段階であって、第1の点の上へのレーザビームの放出及び第2の点の上へのレーザビームの放出が予め決められた時間間隔によって時間的に分離される上記放出する段階と、
を同じく含むこと特徴とする。
【0171】
P
2と表すこの調節された出力は、固化前温度Tp(t
2)の推定値に応じて以下のように計算することができ:
ここで、Δtは、時間区分であり、Tsは、予め決められた閾値温度であり、t
0は、予め決められた瞬間である。
【0172】
【0173】
固化前粉末温度Tpの推定-n個の点の場合
より一般的に、固化前温度は、レーザによって照明されるいくつかの点を含む粉末層内の経路の状況で推定することができる。
【0174】
nが2よりも大きいか又はそれに等しい整数である時のn番目の点での瞬間tnの固化前粉末温度Tp(tn)は、瞬間tnの前にレーザビームによって粉末層に供給されたエネルギを把握することで推定することができる。
【0175】
である場合に各i番目の点は、瞬間t
iにレーザビームによって照明され、かつこの瞬間t
iの前後にレーザビームによって供給されるエネルギQ
iによって固化される粉末層のi番目のゾーン内に位置付けられる。
【0176】
i番目の点とn番目の点の間の距離をrniと表す。
【0177】
粉末層に向けたエネルギQ
iの供給は、瞬間t
nにこの層のn番目の点での推定温度変動:
を生じる。この変動は、以下のように計算される:
【0178】
これらの変動の和は、固化前粉末温度Tp(t
n)の推定を以下のように可能にする:
ここで、T
0は、初期粉末温度である。
【0179】
この推定は、粉末層からの3次元物体の選択的積層造形のための方法を実施することを可能にし、本方法は、
-nが2よりも大きいか又はそれに等しい整数である時の層のn番目の点での瞬間t
nの固化前粉末温度Tp(t
n)の推定値であって、
である場合にn番目の点が粉末層のi番目の点から距離r
niに位置付けられ、
各i番目の点が、固化粉末層のi番目のゾーン内に位置付けられ、瞬間t
iにレーザビームによって照明され、T
0が初期粉末温度である時に、粉末層のn-1個のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって引き起こされる粉末の温度変動に次式:
のように応じる推定値に応じてレーザビームの出力を調節する段階と、
瞬間t
nで、n番目の点を含む粉末層のn番目のゾーンを固化するために調節出力を有するレーザビームをn番目の点に向けて放出する段階と、
を含む。
【0180】
P
nと表すこの調節出力は、固化前温度Tp(t
n)の推定値に応じて以下のように計算することができる:
ここで、Δtは、時間区分であり、Tsは、予め決められた閾値温度であり、t
0は、予め決められた瞬間である。
【0181】
走査速度及び時間区分
レーザによって照明されるいくつかの点を含む粉末層内の経路は、レーザビームの一定又は可変の走査速度で走査することができる。
【0182】
上記で提示した
図2から
図12に対応するレーザ走査経路は、レーザによってレーザビームの一定の走査速度で走査される経路として何度か説明した。
【0183】
しかし、温度変動推定値に応じるレーザビームの出力の調節は、レーザビームによって可変走査速度で走査される経路を用いて実施することが全く可能である。
【0184】
特に、出力を変調する上で温度の均一性が不十分なままに留まっている場合に、温度の均一性を改善するように走査速度を変調することができる。
【0185】
同じように、上記で提示した
図2から
図12に対応するレーザ走査経路は、経路全体にわたって一定である時間区分:
を用いて走査される経路として何度か説明した。
【0186】
しかし、温度変動推定値に応じるレーザビームの走査速度の調節は、可変時間区分を用いて実施することが全く可能である。
【0187】
時間区分Δtは、経路に沿って可変であるように選ぶことができる。特に、時間区分は、連続する調節出力が比較的大きく異なる状況では小さめに、かつ連続する調節出力が比較的僅かにしか異ならない状況では大きめに選ぶことができる。
【0188】
経路は、同じ又は異なる長さを有し、従って同じ又は異なる走査持続時間に対応するセグメントSnへと仮想的に分割することができる。各セグメントSnは、空間的にn番目の点に対応する第1の端部から、更に時間的に瞬間tnからレーザによって走査される。
【0189】
温度目標
次式:
に現れる閾値温度Tsは、レーザスポットの中心が瞬間t
nにおいて上を通り過ぎるn番目の点での達成される粉末温度に正確に対応する。
【0190】
閾値温度Tsは、従って、レーザスポットの中心がその上を通過する点とレーザ通過時とに望ましい粉末温度に応じて選ぶことができる。
【0191】
しかし、閾値温度Tsは、他の基準に応じて選ぶことができる。
【0192】
上記で説明した温度変動公式は、これらの供給に応じるいずれかの点及びいずれかの瞬間での粉末層へのエネルギの1又は2以上の供給の影響を決定することを可能にする。
【0193】
温度変動は予測することができることから、閾値温度Tsは、とりわけ、以下の条件:
-レーザスポットの中心がその上を通過する点での経時的に達成される最大粉末温度、
-粉末層の点での経時的に達成される最大粉末温度、
-粉末層のいずれの点でも経時的に超えないことになる上限温度、
-粉末層のいずれの点でも経時的に下回らないことになる下限温度、又は
-製造工程中に任意的に可変であるこれらの条件の組合せ、
から温度目標に応じて選ぶことができる。
【0194】
調節出力の決定は、経路上に含まれる異なる点での粉末層の温度変動の推定値の決定を必要とする。温度変動推定値の決定は、工程の開始前に又は製造工程が開始された状態で実施することができる。
【0195】
粉末層のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって引き起こされるn番目の点での粉末層の温度変動の推定が製造工程が開始された状態で実施される場合に、経路の異なる点を十分に高速に処理する計算機又はシミュレータを有する必要がある。
【0196】
特に、シミュレータが異なる点を処理する速度は、レーザビームがこれらの同じ点を照明又は走査する速度よりも高いか又は少なくともそれに等しい必要がある。
【0197】
それは、生産中に生じるいずれかの不測の事態を生産及び温度シミュレーションを初期化し直すことを必要とせずに考慮することを可能にする。
【0198】
時間近傍-空間近傍
調節出力の決定は、推定の精度が高いほど、すなわち、考慮する点の個数が多いほど時間を要する。
【0199】
推定の品質を損なうことなく計算時間を制限するために、空間近傍Vlと時間近傍Vtを定義し、それによって計算に考慮すべき既に照明済みの点の個数を制限することができる。
【0200】
時間近傍Vtは、経路セグメントの走査の熱効果の持続時間を表す。この持続時間を超えた場所では、走査済みセグメントの環境の中に拡散されてセグメントの走査中に供給されたエネルギの粉末温度に対する影響は、無視可能量と見なすことができる。
【0201】
空間近傍Vlは、経路セグメントの走査の熱効果の最大距離を表す。この距離を超えた場所では、走査済みセグメントの環境の中に拡散されてセグメントの走査中に供給されたエネルギの粉末温度に対する影響は、無視可能量と見なすことができる。
【0202】
無視可能な性質は、温度閾値差Dsを定義することを必要とする。この差を下回る温度変動に対応する走査の熱効果は、無視可能量と見なされる。
【0203】
時間近傍Vt及び空間近傍Vlは、
図13に例示している以下の方法を用いて決定することができる。第1の段階で、シミュレータ内に以下の情報が格納される:
-レーザ走査工程のパラメータ(レーザビームの出力及び半径、レーザの走査速度)、
-材料のパラメータ(熱伝導度、熱容量、密度、融点、及び初期粉末温度T
0)、
-直線部分型の経路の座標。
【0204】
第2の段階で、シミュレータは、直前の段階で定義された経路を含む予め定められた空間領域内の粉末温度の推定値を与える。
【0205】
シミュレータによって与えられる温度推定値は、時間的にレーザによる経路全体の走査の終点に位置付けられる粉末熱平衡化時間の後の予め定められた瞬間での粉末温度に対応する。
【0206】
この推定値は、複数のセグメントへの経路の仮想分割及び空間領域の異なる点でのレーザによる各セグメントの走査によって引き起こされる温度変動の和などの予め事前定義済みの要素から計算することができる。
【0207】
第2の段階の終了時に、予め定められた瞬間での予め定められた空間領域内の粉末温度のマップが得られる。
【0208】
第3の段階で、初期粉末温度T
0と温度閾値差D
sの和:
に対応する等温曲線が、第2の段階で得られた温度マップ内で決定される。この等温曲線は、温度閾値差D
sの温度の上昇に対応する。
【0209】
第4の段階で、空間近傍は、直前の段階で決定された等温曲線の2つの点の間の直線部分型の経路に対して垂直な方向の最大距離として決定される。
【0210】
第5の段階で、時間近傍は、第3の段階で決定された等温曲線の2つの点の間の直線部分型の経路の方向の最大距離のレーザの走査速度に対する比として決定される。
【0211】
図14は、空間近傍及び時間近傍を決定するために用いられる距離を示している。
【0212】
図14に示しているX軸は、上記の方法の第1の段階で定義される経路の直線部分の方向を表している。経路は、Xの値の増加方向に走査される。Y軸は、直線部分型の経路に対して垂直な方向を表している。
【0213】
閉曲線100は、上記の方法の第3の段階の最中に定義される等温曲線を表している。
【0214】
空間近傍は、セグメント101の長さに対応する。第3の段階で直線部分型の経路の方向に決定される等温曲線の2つの点の間の最大距離は、セグメント102の長さに対応する。
【0215】
走査速度に対するセグメント102の長さの比は、時間近傍を定義することを可能にする。
【0216】
空間近傍Vl及び時間近傍Vtが決定された状態で、これらのデータを用いて、選択的積層造形方法において調節出力を計算することを可能にする温度変動を予め決めるための計算時間を制限することができる。
【0217】
より具体的には、
である場合に、各i番目の点は、各iに関して不等式r
ni≦Vl及び|t
n-t
i|≦Vtが保たれるような瞬間t
iにレーザビームによって照明され、そのような粉末層のn番目の点からの距離r
niの場所に位置付けられる場合の粉末層のn-1個の点を照明するためのレーザビームの放出によって引き起こされる粉末温度変動を考慮することにより、層のn番目の点での瞬間t
nの固化前粉末温度T
pの推定を実施することができる。
【0218】
図1に示して上記で提示した選択的積層造形装置121は、第1の点を含む積層造形粉末層の第1のゾーンを固化するために光源がレーザビームをこの粉末層のこの第1の点に放出するようにレーザ型光源1212を制御するように構成することができる制御ユニット129を含む。
【0219】
選択的積層造形装置121は、粉末層の第1のゾーンを固化するためのレーザビームの放出によって粉末層の第2の点で引き起こされる粉末層の推定温度変動であって、第1の点と第2の点の間の距離にかつ予め決められた時間間隔に応じる上記推定温度変動を格納するためのメモリMを含むことができる。
【0220】
制御ユニット129は、
-メモリに格納された推定温度変動に応じてレーザビームの出力を調節し、
-第2の点を含む粉末層の第2のゾーンを固化するために光源が調節出力を有するレーザビームを放出し、第1の点の上へのレーザビームの放出及び第2の点の上へのレーザビームの放出が予め決められた時間間隔によって時間的に分離されるようにレーザ型光源を制御する、
ように構成することができる。
【0221】
選択的積層造形装置121は、製造工程が開始された状態で温度変動の推定値を決定するための
図1に示している計算機又はシミュレータCを更に含むことができる。
【0222】
計算機又はシミュレータCは、経路上の異なる点を十分に高速に処理するように設計され、特に、異なる点を計算機又はシミュレータが処理する時間は、これらの同じ点を予め定められた速度で照明又は走査するのにレーザビームが要する時間よりも短いか又は少なくともそれに等しいことが必要である。
【0223】
そのような計算機又はシミュレータCは、温度変動の推定値をそれらが生成された状態で格納するためにメモリMと協働することができる。
【符号の説明】
【0224】
70 粉末層に向けて放出されるレーザビームの出力
71 固化前粉末温度
72 レーザスポットの中心点での粉末温度
74 レーザスポットの中心点での粉末温度目標
75 輪郭