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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】粉粒体および粉粒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20240611BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240611BHJP
   C08F 283/12 20060101ALI20240611BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20240611BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20240611BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L101/00
C08F283/12
C08F279/02
C08F265/06
C08J3/16 CEQ
C08J3/16 CFC
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021549053
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036313
(87)【国際公開番号】W WO2021060482
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2019177485
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019177487
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】舞鶴 展祥
(72)【発明者】
【氏名】寺本 健治
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-203397(JP,A)
【文献】特開2010-209164(JP,A)
【文献】特開2010-241996(JP,A)
【文献】国際公開第2005/056624(WO,A1)
【文献】特開2010-77379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/04
C08L 101/00
C08F 283/12
C08F 279/02
C08F 265/06
C08J 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体であって、
前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、
前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、
前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、
前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、
前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%であり、
前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0600mL/g以上であり、
前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径1000μm以上の粒体は3.00重量%以下である、粉粒体。
【請求項2】
前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径600μm以上の粒体は6.00重量%以下である、請求項1に記載の粉粒体。
【請求項3】
前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0800mL/g以上である、請求項1または2に記載の粉粒体。
【請求項4】
前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~4.50μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.1100mL/g以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の粉粒体。
【請求項5】
前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径600μm以上の粒体は1.90重量%以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の粉粒体。
【請求項6】
前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の粉粒体:
ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、
前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【請求項7】
前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.23μm以下である、請求項1~6の何れか1項に記載の粉粒体。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを含有する、樹脂組成物。
【請求項9】
重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を調製する凝集工程と、
前記凝集体を、気流乾燥または凍結乾燥する乾燥工程を含み、
前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、
前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、
前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、
前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、
前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である、粉粒体の製造方法。
【請求項10】
前記凝集工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤の存在下に噴霧する重合体微粒子噴霧工程をさらに含む、請求項9に記載の粉粒体の製造方法。
【請求項11】
前記凝集工程は、前記凝固剤または前記凝固剤を含む溶液を、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の存在下に噴霧する凝固剤噴霧工程をさらに含む、請求項10に記載の粉粒体の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥工程は100℃以下で実施する、請求項9~11の何れか1項に記載の粉粒体の製造方法。
【請求項13】
重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)と、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)と、を混合する混合工程と、前記混合工程にて得られた混合液から前記重合体微粒子(A)および前記樹脂(B)を含む粉粒体を調製する調製工程と、を含み、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含み、前記水性ラテックス(B)における液滴の体積平均粒子径をx(μm)、当該体積平均粒子径の標準偏差をσとしたとき、前記混合液は、当該混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%~14.0重量%含む、粉粒体の製造方法。
【請求項14】
前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、請求項9~13の何れか1項に記載の粉粒体の製造方法:
ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、
前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【請求項15】
前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.23μm以下である、請求項9~14の何れか1項に記載の粉粒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体および粉粒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の耐衝撃性を改善するために、樹脂にエラストマー、特に、重合体微粒子を添加する方法が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリマー微粒子および固体エポキシ樹脂を混合し粉体化して得たポリマー組成物と、液状エポキシ樹脂とを混合して樹脂組成物を得るという技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、(i)ポリマー(P1)、並びに(ii)(a)10℃未満のガラス転移温度を有するポリマー(A1)を含む1つの段(A)、(b)少なくとも60℃のガラス転移温度を有するポリマー(B1)を含む1つの段(B)、および(c)少なくとも30℃のガラス転移温度を有するポリマー(C1)を含む1つの段(C)を備える多段プロセスにより得られるポリマーを含むポリマー組成物が開示されている。
【0005】
許文献3には、(メタ)アクリルポリマー(P1)および多段ポリマーを含み、多段ポリマーがポリマー組成物の少なくとも20重量%を構成する、ポリマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号WO2016/102658
【文献】国際公開番号WO2016/102682
【文献】国際公開番号WO2016/102666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術は樹脂における重合体微粒子の分散性という観点からは、十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れる、新規の粉粒体および当該粉粒体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の平均細孔径を有する細孔を特定量有する粉粒体は、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れることを独自に見出し、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明の一実施形態に係る粉粒体は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体であって、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%であり、前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0600mL/g以上である。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る粉粒体の製造方法は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を調製する凝集工程と、前記凝集体を、気流乾燥または凍結乾燥する乾燥工程を含み、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れる粉粒体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0014】
[I.第1実施形態]
〔I-1.本発明の一実施形態(第1実施形態)の技術的思想〕
樹脂(例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂)に1μmより小さい体積平均粒子径を有する重合体微粒子を分散させることは、工業レベルでは非常に難しい。重合体微粒子の1次粒子(すなわち、1μmより小さい体積平均粒子径を有する粒子)の集まりである粉粒体(2次粒子とも称する。)は、1μm以上の体積平均粒子径を有し得る。重合体微粒子の粉粒体と熱硬化性樹脂との混合は、機械的な混合により、容易に行うことができる。しかしながら、従来の重合体微粒子の粉粒体の場合、当該粉粒体と熱硬化性樹脂との混合物である樹脂組成物において、熱硬化性樹脂中で重合体微粒子の一次粒子同士は凝集したままである。そのため、重合体微粒子による、樹脂組成物の硬化物の靱性改良効果および耐衝撃性改良効果は小さく、当該硬化物の表面外観も非常に悪い。
【0015】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、上述した通りである。換言すれば、本発明の一実施形態の目的は、マトリクス樹脂中に重合体微粒子が均一に分散している樹脂組成物を提供し得る粉粒体を提供することである。
【0016】
前記課題を解決するための鋭意検討の過程において、本発明者らは、特定の平均細孔径を有する細孔を特定量有する粉粒体は、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れるという驚くべき知見を独自に見出した。この理由は定かではないが、以下のように推察される。
【0017】
特定の平均細孔径(例えば、平均細孔径0.03μm~1.00μm)を有する細孔を特定量(例えば、細孔の合計容積が0.0600mL/g以上)有する粉粒体は、特定の平均細孔径を有する細孔を特定量有していない粉粒体と比較して、表面積が大きい。ここで、「特定の平均細孔径を有する細孔を特定量有していない粉粒体」とは、(a)粉粒体の全細孔の合計容積が特定量(例えば0.0600mL/g)未満である粉粒体、または(b)粉粒体が有する細孔の大部分の細孔が特定の平均細孔径(例えば、平均細孔径1.00μm)超である粉粒体などを意図する。粉粒体は、その表面積が大きいほど、(a)マトリクス樹脂と粉粒体との接触面積が大きいという理由、および/または(b)粉粒体の細孔の毛細管現象により、マトリクス樹脂を含みやすいという理由、などから、マトリクス樹脂により「濡れ易い」と推察される。粉粒体がマトリクス樹脂により濡れ易いほど、続く機械的解砕などにより、マトリクス樹脂中に重合体微粒子を分散させやすいと推察される。本発明者は、このような新規知見を見出し、本発明を完成させるに至った。なお、本発明の一実施形態は、かかる新規知見によって限定されない。
【0018】
〔I-2.粉粒体〕
本発明の一実施形態に係る粉粒体は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む。前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む。前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含む。前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含む。前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体である。粉粒体において、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である。前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0600mL/g以上である。
【0019】
「本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る粉粒体」を、以下「第1の粉粒体」と称する場合もある。第1の粉粒体は、後述するマトリクス樹脂(C)と混合されると樹脂組成物となる。
【0020】
第1の粉粒体は、前記構成を有するため、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂への分散性に優れるという利点を有する。換言すれば、第1の粉粒体は、前記構成を有するため、第1の粉粒体と後述するマトリクス樹脂(C)とを混合することにより、マトリクス樹脂(C)中に重合体微粒子(A)が均一に分散している樹脂組成物を提供できる、という利点を有する。
【0021】
本明細書において、「粉粒体」とは、粉体と粒体の両方を含み、粉、粒などが集まった集合体を意味する。また、特に区別する場合、「粉体」とは体積平均粒子径が0.01mm~0.1mmのもの、「粒体」とは体積平均粒子径が0.1mm~10mmのものを意味する。ただし、粉粒体には粗粒として10mm以上のものが含まれていてもよい。また10μm未満の範囲の「体積平均粒子径」は、動的光散乱式(DLS)粒度分布測定装置Nanotrac WaveII-EX150(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定でき、10μm以上の範囲の「体積平均粒子径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0022】
(I-2-1.重合体微粒子(A))
重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む。
【0023】
(I-2-1-1.弾性体)
弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含む。弾性体は、上述したゴム以外に、天然ゴムを含んでいてもよい。弾性体は、弾性部、またはゴム粒子と言い換えることもできる。本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0024】
以下、弾性体がジエン系ゴムを含む場合(場合A)について説明する。場合Aにおいて、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる硬化物または成形体を提供することができる。靱性および/または耐衝撃性に優れる硬化物または成形体は、耐久性に優れる硬化物または成形体ともいえる。
【0025】
前記ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。前記ジエン系単量体は、共役ジエン系単量体と言い換えることもできる。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位100重量%中、ジエン系単量体に由来する構成単位を50~100重量%、およびジエン系単量体と共重合可能なジエン系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を0~50重量%、含むものであってもよい。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体に由来する構成単位よりも少ない量において、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0026】
ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2-クロロ-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。これらのジエン系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ジエン系単量体と共重合可能なジエン系単量体以外のビニル系単量体(以下、ビニル系単量体A、とも称する。)としては、例えば、(a)スチレン、α-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;(b)アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類;(c)アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;(d)塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;(e)酢酸ビニル;(f)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのアルケン類;(g)ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性単量体、などが挙げられる。上述したビニル系単量体Aは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述したビニル系単量体Aの中でも、特に好ましくはスチレンである。
【0028】
場合Aにおいて、ジエン系ゴムとしては、1,3-ブタジエンに由来する構成単位からなるブタジエンゴム(ポリブタジエンゴムとも称する。)、または、1,3-ブタジエンとスチレンとの共重合体であるブタジエン-スチレンゴム(ポリスチレン-ブタジエンとも称する。)が好ましい。ジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴムがより好ましい。前記構成によると、重合体微粒子(A)の弾性体がジエン系ゴムを含むことによる所望の効果がより発揮され得る。また、ブタジエン-スチレンゴムは、屈折率の調整により、得られる硬化物または成形体の透明性を高めることができる点においても、より好ましい。
【0029】
弾性体が(メタ)アクリレート系ゴムを含む場合(場合B)について説明する。場合Bでは、多種の単量体の組合せにより、弾性体の幅広い重合体設計が可能となる。
【0030】
前記(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位100重量%中、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を50~100重量%、および(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を0~50重量%、含むものであってもよい。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位よりも少ない量において、ジエン系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0031】
(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、(a)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;(b)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート類;(c)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;(d)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート類;(e)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;(f)アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレートなどのアリルアルキル(メタ)アクリレート類;(g)モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの(メタ)アクリレート系単量体の中でも、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0032】
場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムとしては、エチル(メタ)アクリレートゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴムおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートゴムがより好ましい。エチル(メタ)アクリレートゴムはエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムであり、ブチル(メタ)アクリレートゴムはブチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムであり、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴムは2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムである。当該構成によると、弾性体のガラス転移温度(Tg)が低くなるためTgが低い重合体微粒子(A)および粉粒体が得られる。その結果、(a)得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、優れた靱性を有する硬化物または成形体を提供でき、かつ(b)当該樹脂組成物の粘度をより低くすることができる。
【0033】
(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体(以下、ビニル系単量体B、とも称する。)としては、前記ビニル系単量体Aとして列挙した単量体が挙げられる。ビニル系単量体Bは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビニル系単量体Bの中でも、特に好ましくはスチレンである。
【0034】
弾性体がオルガノシロキサン系ゴムを含む場合(場合C)について説明する。場合Cにおいて、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、十分な耐熱性を有し、かつ低温での耐衝撃性に優れる硬化物または成形体を提供することができる。
【0035】
オルガノシロキサン系ゴムとしては、例えば、(a)ジメチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ、ジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるオルガノシロキサン系重合体、および(b)側鎖のアルキルの一部が水素原子に置換されたオルガノハイドロジェンシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール1置換シリルオキシ単位から構成されるオルガノシロキサン系重合体、が挙げられる。これらのオルガノシロキサン系重合体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本明細書において、ジメチルシリルオキシ単位から構成される重合体をジメチルシリルオキシゴムと称し、メチルフェニルシリルオキシ単位から構成される重合体をメチルフェニルシリルオキシゴムと称し、ジメチルシリルオキシ単位とジフェニルシリルオキシ単位とから構成される重合体をジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムと称する。場合Cにおいて、オルガノシロキサン系ゴムとしては、(a)得られる粉粒体を含む樹脂組成物が耐熱性に優れる硬化物または成形体を提供することができることから、ジメチルシリルオキシゴム、メチルフェニルシリルオキシゴムおよびジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、(b)容易に入手できて経済的でもあることから、ジメチルシリルオキシゴムであることがより好ましい。
【0037】
場合Cにおいて、重合体微粒子(A)は、重合体微粒子(A)に含まれる弾性体100重量%中、オルガノシロキサン系ゴムを80重量%以上含有していることが好ましく、90重量%以上含有していることがより好ましい。前記構成によると、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、耐熱性に優れる硬化物または成形体を提供することができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、弾性体は、ブタジエンゴム、ブタジエン-スチレンゴム、ブタジエン-(メタ)アクリレートゴム、エチル(メタ)アクリレートゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴム、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴム、ジメチルシリルオキシゴム、メチルフェニルシリルオキシゴム、およびジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ブタジエンゴム、ブタジエン-スチレンゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴム、およびジメチルシリルオキシゴムからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0039】
(弾性体の架橋構造)
重合体微粒子(A)の、マトリクス樹脂(C)中での分散安定性を保持できることから、弾性体には、架橋構造が導入されていることが好ましい。弾性体に対する架橋構造の導入方法としては、一般的に用いられる手法を採用することができ、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、弾性体の製造において、弾性体を構成し得る単量体に、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を混合し、次いで重合する方法が挙げられる。本明細書において、弾性体など重合体を製造することを、重合体を重合する、とも称する。
【0040】
また、オルガノシロキサン系ゴムに架橋構造を導入する方法としては、次のような方法も挙げられる:(a)オルガノシロキサン系ゴムを重合するときに、多官能性のアルコキシシラン化合物と他の材料とを併用する方法、(b)反応性基(例えば(a)メルカプト基および(b)反応性を有するビニル基、など)をオルガノシロキサン系ゴムに導入し、その後、得られた反応生成物に、(a)有機過酸化物または(b)重合性を有するビニル単量体などを添加してラジカル反応させる方法、または、(c)オルガノシロキサン系ゴムを重合するときに、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を他の材料と混合し、次いで重合を行う方法、など。
【0041】
多官能性単量体は、同一分子内にラジカル重合性反応基を2つ以上有する単量体ともいえる。前記ラジカル重合性反応基は、好ましくは炭素-炭素二重結合である。多官能性単量体としては、ブタジエンは含まれず、アリルアルキル(メタ)アクリレート類およびアリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類のような、エチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートなどが例示される。(メタ)アクリル基を2つ有する単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。前記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレートなどが例示される。また、3つの(メタ)アクリル基を有する単量体として、アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどが例示される。アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、4つの(メタ)アクリル基を有する単量体として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、などが例示される。またさらに、5つの(メタ)アクリル基を有する単量体として、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが例示される。またさらに、6つの(メタ)アクリル基を有する単量体として、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示される。多官能性単量体としては、また、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等も挙げられる。
【0042】
メルカプト基含有化合物としては、アルキル基置換メルカプタン、アリル基置換メルカプタン、アリール基置換メルカプタン、ヒドロキシ基置換メルカプタン、アルコキシ基置換メルカプタン、シアノ基置換メルカプタン、アミノ基置換メルカプタン、シリル基置換メルカプタン、酸基置換メルカプタン、ハロ基置換メルカプタンおよびアシル基置換メルカプタンなどが挙げられる。アルキル基置換メルカプタンとしては、炭素数1~20のアルキル基置換メルカプタンが好ましく、炭素数1~10のアルキル基置換メルカプタンがより好ましい。アリール基置換メルカプタンとしては、フェニル基置換メルカプタンが好ましい。アルコキシ基置換メルカプタンとしては、炭素数1~20のアルコキシ基置換メルカプタンが好ましく、炭素数1~10のアルコキシ基置換メルカプタンがより好ましい。酸基置換メルカプタンとしては、好ましくは、カルボキシル基を有する炭素数1~10のアルキル基置換メルカプタン、または、カルボキシル基を有する炭素数1~12のアリール基置換メルカプタン、である。
【0043】
(弾性体のガラス転移温度)
弾性体のガラス転移温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がより好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下がより好ましく、-20℃以下がより好ましく、-40℃以下がより好ましく、-45℃以下がより好ましく、-50℃以下がより好ましく、-55℃以下がより好ましく、-60℃以下がより好ましく、-65℃以下がより好ましく、-70℃以下がより好ましく、-75℃以下がより好ましく、-80℃以下がより好ましく、-85℃以下がより好ましく、-90℃以下がより好ましく、-95℃以下がより好ましく、-100℃以下がより好ましく、-105℃以下がより好ましく、-110℃以下がより好ましく、-115℃以下がより好ましく、-120℃以下がさらに好ましく、-125℃以下が特に好ましい。本明細書において、「ガラス転移温度」を「Tg」と称する場合もある。当該構成によると、低いTgを有する重合体微粒子(A)、および、低いTgを有する粉粒体を得ることができる。その結果、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、優れた靱性を有する硬化物または成形体を提供できる。また、当該構成によると、得られる粉粒体を含む樹脂組成物の粘度を、より低くすることができる。弾性体のTgは、重合体微粒子(A)からなる平面板を用いて、粘弾性測定を行うことによって得ることができる。具体的には、以下のようにしてTgを測定できる:(1)重合体微粒子(A)からなる平面板について、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御株式会社製、DVA-200)を用いて、引張条件で動的粘弾性測定を行い、tanδのグラフを得る;(2)得られたtanδのグラフについて、tanδのピーク温度をガラス転移温度とする。ここで、tanδのグラフにおいて、複数のピークが得られた場合には、最も低いピーク温度を弾性体のガラス転移温度とする。
【0044】
一方、得られる硬化物または成形体の弾性率(剛性)の低下を抑制することができる、すなわち十分な弾性率(剛性)を有する硬化物が得られることから、弾性体のTgは、0℃よりも大きいことが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。
【0045】
弾性体のTgは、弾性体に含まれる構成単位の組成などによって、決定され得る。換言すれば、弾性体を製造(重合)するときに使用する単量体の組成を変化させることにより、得られる弾性体のTgを調整することができる。
【0046】
ここで、1種類の単量体のみを重合させてなる単独重合体としたとき、0℃よりも大きいTgを有する単独重合体を提供する単量体の群を、単量体群aとする。また、1種類の単量体のみを重合させてなる単独重合体としたとき、0℃未満のTgを有する単独重合体を提供する単量体の群を、単量体群bとする。単量体群aから選択される少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を50~100重量%(より好ましくは、65~99重量%)、および単量体群bから選択される少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を0~50重量%(より好ましくは、1~35重量%)含む弾性体を、弾性体Xとする。弾性体Xは、Tgが0℃よりも大きい。また、弾性体が弾性体Xを含む場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、十分な剛性を有する硬化物または成形体を提供することができる。
【0047】
弾性体のTgが0℃よりも大きい場合も、弾性体に架橋構造が導入されていることが好ましい。架橋構造の導入方法としては、前記の方法が挙げられる。
【0048】
前記単量体群aに含まれ得る単量体としては、以下に限るものではないが、例えば、スチレン、2-ビニルナフタレンなどの無置換ビニル芳香族化合物類;α―メチルスチレンなどのビニル置換芳香族化合物類;3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6―トリメチルスチレンなどの環アルキル化ビニル芳香族化合物類;4-メトキシスチレン、4-エトキシスチレンなどの環アルコキシル化ビニル芳香族化合物類;2-クロロスチレン、3―クロロスチレンなどの環ハロゲン化ビニル芳香族化合物類;4-アセトキシスチレンなどの環エステル置換ビニル芳香族化合物類;4-ヒトロキシスチレンなどの環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物類;ビニルベンゾエート、ビニルシクロヘキサノエートなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのビニルハロゲン化物類;アセナフタレン、インデンなどの芳香族単量体類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート類;フェニルメタクリレートなどの芳香族メタクリレート;イソボルニルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレートなどのメタクリレート類;メタクリロニトリルなどのメタクリル酸誘導体を含むメタクリル単量体;イソボルニルアクリレート、tert-ブチルアクリレートなどのある種のアクリル酸エステル;アクリロニトリルなどのアクリル酸誘導体を含むアクリル単量体、などが挙げられる。さらに、前記単量体群aに含まれ得る単量体としては、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート及び1-アダマンチルメタクリレート、など、単独重合体としたとき120℃以上のTgを有する単独重合体を提供し得る単量体が挙げられる。これらの単量体aは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記単量体bとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート(別名;アクリル酸ブチル)、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。これらの単量体bは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの単量体bの中でも、特に好ましくは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートである。
【0050】
(弾性体の体積平均粒子径)
弾性体の体積平均粒子径は、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.10μm~1.00μmがさらに好ましく、0.10μm~0.80μmがよりさらに好ましく、0.10μm~0.50μmが特に好ましい。弾性体の体積平均粒子径が(a)0.03μm以上である場合、所望の体積平均粒子径を有する弾性体を安定的に得ることができ、(b)50.00μm以下である場合、得られる硬化物または成形体の耐熱性および耐衝撃性が良好となる。弾性体の体積平均粒子径は、弾性体を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。弾性体の体積平均粒子径の測定方法については、下記実施例にて詳述する。
【0051】
(弾性体の割合)
重合体微粒子(A)中に占める弾性体の割合は、重合体微粒子(A)全体を100重量%として、40~97重量%が好ましく、60~95重量%がより好ましく、70~93重量%がさらに好ましい。弾性体の前記割合が40重量%以上である場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる硬化物または成形体を提供することができる。弾性体の前記割合が、97重量%以下である場合、重合体微粒子(A)は容易には凝集しない(凝集しにくい)ため、得られる粉粒体を含む樹脂組成物が高粘度となることがない。その結果、当該樹脂組成物は取り扱い易いものとなり得る。
【0052】
(弾性体のゲル含量)
弾性体は、適切な溶媒に対して膨潤し得るが、実質的には溶解しないものであることが好ましい。弾性体は、使用するマトリクス樹脂(C)に対して、不溶であることが好ましい。
【0053】
弾性体は、ゲル含量が60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。弾性体のゲル含量が前記範囲内である場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、靱性に優れる硬化物または成形体を提供できる。
【0054】
本明細書においてゲル含量の算出方法は下記の通りである。先ず、重合体微粒子(A)を含有する水性ラテックスを得、次に、当該水性ラテックスから、重合体微粒子(A)の粉粒体を得る。水性ラテックスから重合体微粒子(A)の粉粒体を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、(i)当該水性ラテックス中の重合体微粒子(A)を凝集させ、(ii)得られる凝集物を脱水し、(iii)さらに凝集物を乾燥することにより、重合体微粒子(A)の粉粒体を得る方法が挙げられる。次いで、重合体微粒子(A)の粉粒体2.0gをメチルエチルケトン(MEK)50mLに溶解する。その後、得られたMEK溶解物を、MEKに可溶な成分(MEK可溶分)とMEKに不溶な成分(MEK不溶分)とに分離する。具体的には、遠心分離機(日立工機(株)社製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間、得られたMEK溶解物を遠心分離に供し、当該溶解物を、MEK可溶分とMEK不溶分とに分離する。ここで、遠心分離作業は合計3セット実施する。得られたMEK可溶分とMEK不溶分との重量を測定し、次式よりゲル含量を算出する。
ゲル含量(%)=(メチルエチルケトン不溶分の重量)/{(メチルエチルケトン不溶分の重量)+(メチルエチルケトン可溶分の重量)}×100。
【0055】
(弾性体の変形例)
本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、構成単位の組成が同一である1種類の弾性体、のみからなってもよい。この場合、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種類である。
【0056】
本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種の弾性体からなってもよい。この場合、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される2種類以上であってもよい。また、この場合、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種類であってもよい。換言すれば、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種のジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムまたはオルガノシロキサン系ゴムであってもよい。
【0057】
本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」が、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種の弾性体からなる場合について説明する。この場合、複数種の弾性体のそれぞれを、弾性体、弾性体、・・・、および弾性体とする。ここで、nは2以上の整数である。重合体微粒子(A)の「弾性体」は、それぞれ別々に重合された弾性体、弾性体、・・・、および弾性体の複合体を含んでいてもよい。重合体微粒子(A)の「弾性体」は、弾性体、弾性体、・・・、および弾性体をそれぞれ順に重合して得られる1つの弾性体を含んでいてもよい。このように、複数の弾性体(重合体)をそれぞれ順に重合することを、多段重合とも称する。複数種の弾性体を多段重合して得られる1つの弾性体を、多段重合弾性体とも称する。多段重合弾性体の製造方法については、後に詳述する。
【0058】
弾性体、弾性体、・・・、および弾性体からなる多段重合弾性体について説明する。当該多段重合弾性体において、弾性体は、弾性体n-1の少なくとも一部を被覆し得るか、または弾性体n-1の全体を被覆し得る。当該多段重合弾性体において、弾性体の一部は弾性体n-1の内側に入り込んでいることもある。
【0059】
多段重合弾性体において、複数の弾性体のそれぞれが、層構造を形成していてもよい。例えば、多段重合弾性体が、弾性体、弾性体、および弾性体からなる場合、弾性体が最内層を形成し、弾性体の外側に弾性体の層が形成され、さらに弾性体の層の外側に弾性体の層が弾性体における最外層として形成される態様も、本発明の一態様である。このように、複数の弾性体のそれぞれが層構造を形成している多段重合弾性体は、多層弾性体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、(a)複数種の弾性体の複合体、(b)多段重合弾性体および/または(c)多層弾性体を含んでいてもよい。
【0060】
(I-2-1-2.グラフト部)
本明細書において、弾性体に対してグラフト結合された重合体をグラフト部と称する。グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含む。グラフト部は、前記構成を有するため、種々の役割を担うことができる。「種々の役割」とは、例えば、(a)マトリクス樹脂(C)と重合体微粒子(A)との相溶性を向上させること、(b)マトリクス樹脂(C)中の重合体微粒子(A)の分散性を向上させること、および(c)得られる粉粒体を含む樹脂組成物中または硬化物もしくは成形体中において重合体微粒子(A)が一次粒子の状態で分散することを可能にすること、などである。
【0061】
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0062】
ビニルシアン単量体の具体例としては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
上述した、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体に由来する構成単位、ビニルシアン単量体に由来する構成単位および(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位を合計で、全構成単位100重量%中に、10~95重量%含むことが好ましく、30~92重量%含むことがより好ましく、50~90重量%含むことがさらに好ましく、60~87重量%含むことが特に好ましく、70~85重量%含むことが最も好ましい。
【0066】
グラフト部は、構成単位として、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。前記反応性基を有する単量体は、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、およびシアン酸エステル基からなる群から選択される1種以上の反応性基を有する単量体であることが好ましく、エポキシ基、水酸基、およびカルボン酸基からなる群から選択される1種以上の反応性基を有する単量体であることがより好ましく、エポキシ基を有する単量体であることが最も好ましい。前記構成によると、得られる粉粒体を含む樹脂組成物中で重合体微粒子(A)のグラフト部とマトリクス樹脂(C)とを化学結合させることができる。これにより、得られる粉粒体を含む樹脂組成物中または硬化物もしくは成形体中で、重合体微粒子(A)を凝集させることなく、重合体微粒子(A)の良好な分散状態を維持することができる。
【0067】
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、およびアリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有ビニル単量体が挙げられる。
【0068】
水酸基を有する単量体の具体例としては、例えば、(a)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ直鎖アルキル(メタ)アクリレート(特に、ヒドロキシ直鎖C1-6アルキル(メタ)アクリレート);(b)カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート;(c)α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどのヒドロキシ分岐アルキル(メタ)アクリレート;(d)二価カルボン酸(フタル酸など)と二価アルコール(プロピレングリコールなど)とから得られるポリエステルジオール(特に飽和ポリエステルジオール)のモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
【0069】
カルボン酸基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸などのモノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。カルボン酸基を有する単量体としては、前記モノカルボン酸が好適に用いられる。
【0070】
上述した反応性基を有する単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
グラフト部は、グラフト部100重量%中、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を、0.5~90重量%含むことが好ましく、1~50重量%含むことがより好ましく、2~35重量%含むことがさらに好ましく、3~20重量%含むことが特に好ましい。グラフト部が、グラフト部100重量%中、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を、0.5重量%以上含む場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物または成形体を提供することができる。グラフト部が、グラフト部100重量%中、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を、90重量%以下含む場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物または成形体を提供することができ、かつ、当該樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となるという利点を有する。
【0072】
反応性基を有する単量体に由来する構成単位は、グラフト部に含まれることが好ましく、グラフト部にのみ含まれることがより好ましい。
【0073】
グラフト部は、構成単位として、多官能性単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。グラフト部が、多官能性単量体に由来する構成単位を含む場合、(a)得られる粉粒体を含む樹脂組成物中において重合体微粒子(A)の膨潤を防止することができる、(b)得られる粉粒体を含む樹脂組成物の粘度が低くなるため、当該樹脂組成物の取扱い性が良好となる傾向がある、および(c)マトリクス樹脂(C)中の重合体微粒子(A)の分散性が向上する、などの利点を有する。
【0074】
グラフト部が多官能性単量体に由来する構成単位を含まない場合、グラフト部が多官能性単量体に由来する構成単位を含む場合と比較して、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性により優れる硬化物を提供することができる。
【0075】
グラフト部の重合に用いられ得る多官能性単量体としては、上述の多官能性単量体と同じ単量体が挙げられる。それら多官能性単量体の中でも、グラフト部の重合に好ましく用いられ得る多官能性単量体としては、アリルメタクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これら多官能性単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
グラフト部は、グラフト部100重量%中、多官能性単量体に由来する構成単位を、1~20重量%含むことが好ましく、5~15重量%含むことがより好ましい。
【0077】
グラフト部の重合において、上述した単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
グラフト部は、構成単位として、上述した単量体に由来する構成単位の他に、他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0079】
(グラフト部のガラス転移温度)
グラフト部のガラス転移温度は、190℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、140℃以下がより好ましく、120℃以下がより好ましく、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がより好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下がより好ましく、-20℃以下がより好ましく、-40℃以下がより好ましく、-45℃以下がより好ましく、-50℃以下がより好ましく、-55℃以下がより好ましく、-60℃以下がより好ましく、-65℃以下がより好ましく、-70℃以下がより好ましく、-75℃以下がより好ましく、-80℃以下がより好ましく、-85℃以下がより好ましく、-90℃以下がより好ましく、-95℃以下がより好ましく、-100℃以下がより好ましく、-105℃以下がより好ましく、-110℃以下がより好ましく、-115℃以下がより好ましく、-120℃以下がさらに好ましく、-125℃以下が特に好ましい。
【0080】
グラフト部のガラス転移温度は、0℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。
【0081】
グラフト部のTgは、グラフト部に含まれる構成単位の組成などによって、決定され得る。換言すれば、グラフト部を製造(重合)するときに使用する単量体の組成を変化させることにより、得られるグラフト部のTgを調整することができる。
【0082】
グラフト部のTgは、重合体微粒子(A)からなる平面板を用いて、粘弾性測定を行うことによって得ることができる。具体的には、以下のようにしてTgを測定できる:(1)重合体微粒子(A)からなる平面板について、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御株式会社製、DVA-200)を用いて、引張条件で動的粘弾性測定を行い、tanδのグラフを得る;(2)得られたtanδのグラフについて、tanδのピーク温度をガラス転移温度とする。ここで、tanδのグラフにおいて、複数のピークが得られた場合には、最も高いピーク温度をグラフト部のガラス転移温度とする。
【0083】
(グラフト部のグラフト率)
本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)は、グラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない重合体を有していてもよい。本明細書において、グラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない重合体を、非グラフト重合体とも称する。当該非グラフト重合体も、本発明の一実施形態に係る重合体微粒子(A)の一部を構成するものとする。前記非グラフト重合体は、グラフト部の重合において製造された重合体のうち、弾性体に対してグラフト結合していない重合体ともいえる。
【0084】
本明細書において、グラフト部の重合において製造された重合体のうち、弾性体に対してグラフト結合された重合体、すなわちグラフト部の割合を、グラフト率と称する。グラフト率は、(グラフト部の重量)/{(グラフト部の重量)+(非グラフト重合体の重量)}×100で表される値、ともいえる。
【0085】
グラフト部のグラフト率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。グラフト率が70%以上である場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物の粘度が高くなりすぎないという利点を有する。
【0086】
本明細書において、グラフト率の算出方法は下記の通りである。先ず、重合体微粒子(A)を含有する水性ラテックスを得、次に、当該水性ラテックスから、重合体微粒子(A)の粉粒体を得る。水性ラテックスから重合体微粒子(A)の粉粒体を得る方法としては、具体的には、(i)前記水性ラテックス中の重合体微粒子(A)を凝析し、(ii)得られる凝析物を脱水し、(iii)さらに凝析物を乾燥することにより、重合体微粒子(A)の粉粒体を得る方法が挙げられる。次いで、重合体微粒子(A)の粉粒体2gをメチルエチルケトン(MEK)50mLに溶解する。その後、得られたMEK溶解物を、MEKに可溶な成分(MEK可溶分)とMEKに不溶な成分(MEK不溶分)とに分離する。具体的には、遠心分離機(日立工機(株)社製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間、得られたMEK溶解物を遠心分離に供し、当該溶解物を、MEK可溶分とMEK不溶分とに分離する。ここで、遠心分離作業は合計3セット実施する。次に、濃縮したMEK可溶分20mlをメタノール200mlと混合する。得られた混合物に塩化カルシウム0.01gを水に溶かした塩化カルシウム水溶液を添加し、得られた混合物を1時間攪拌する。その後、得られた混合物をメタノール可溶分とメタノール不溶分とに分離し、メタノール不溶分の重量をフリー重合体(FP)量とする。
【0087】
次式よりグラフト率を算出する。
グラフト率(%)=100-[(FP量)/{(FP量)+(MEK不溶分の重量)}]/(グラフト部の重合体の重量)×10000。
【0088】
なお、グラフト部以外の重合体の重量は、グラフト部以外の重合体を構成する単量体の仕込み量である。グラフト部以外の重合体は、例えば弾性体である。また、重合体微粒子(A)が後述する表面架橋重合体を含む場合、グラフト部以外の重合体は、弾性体および表面架橋重合体の両方を含む。グラフト部の重合体の重量は、グラフト部の重合体を構成する単量体の仕込み量である。また、グラフト率の算出において、重合体微粒子(A)を凝析する方法は特に限定されず、溶剤を用いる方法、凝析剤を用いる方法、水性ラテックスを噴霧する方法などが用いられ得る。
【0089】
(グラフト部の変形例)
本発明の一実施形態において、グラフト部は、同一の組成の構成単位を有する1種のグラフト部のみからなってもよい。本発明の一実施形態において、グラフト部は、それぞれ異なる組成の構成単位を有する複数種のグラフト部からなってもよい。
【0090】
本発明の一実施形態において、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合について説明する。この場合、複数種のグラフト部のそれぞれを、グラフト部、グラフト部、・・・、グラフト部とする(nは2以上の整数)。グラフト部は、それぞれ別々に重合されたグラフト部、グラフト部、・・・、およびグラフト部の複合体を含んでいてもよい。グラフト部は、グラフト部、グラフト部、・・・、およびグラフト部を多段重合して得られる1つの重合体を含んでいてもよい。複数種のグラフト部を多段重合して得られる重合体を、多段重合グラフト部とも称する。多段重合グラフト部の製造方法については、後に詳述する。
【0091】
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、これら複数種のグラフト部の全てが弾性体に対してグラフト結合されていなくてもよい。少なくとも1種のグラフト部の少なくとも一部が弾性体に対してグラフト結合されていればよく、その他の種(その他の複数種)のグラフト部は、弾性体に対してグラフト結合されているグラフト部にグラフト結合されていてもよい。また、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない複数種の重合体(複数種の非グラフト重合体)を有していてもよい。
【0092】
グラフト部、グラフト部、・・・、およびグラフト部からなる多段重合グラフト部について説明する。当該多段重合グラフト部において、グラフト部は、グラフト部n-1の少なくとも一部を被覆し得るか、またはグラフト部n-1の全体を被覆し得る。当該多段重合グラフト部において、グラフト部の一部はグラフト部n-1の内側に入り込んでいることもある。
【0093】
多段重合グラフト部において、複数のグラフト部のそれぞれが、層構造を形成していてもよい。例えば、多段重合グラフト部が、グラフト部、グラフト部、およびグラフト部からなる場合、グラフト部がグラフト部における最内層を形成し、グラフト部の外側にグラフト部の層が形成され、さらにグラフト部の層の外側にグラフト部の層が最外層として形成される態様も、本発明の一態様である。このように、複数のグラフト部のそれぞれが層構造を形成している多段重合グラフト部は、多層グラフト部ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、グラフト部は、(a)複数種のグラフト部の混合物、(b)多段重合グラフト部および/または(c)多層グラフト部を含んでいてもよい。
【0094】
重合体微粒子(A)の製造において弾性体とグラフト部とがこの順で重合される場合、得られる重合体微粒子(A)において、グラフト部の少なくとも一部分は、弾性体の少なくとも一部分を被覆し得る。弾性体とグラフト部とがこの順で重合されるとは、換言すれば、弾性体とグラフト部とが多段重合されるともいえる。弾性体とグラフト部とを多段重合して得られる重合体微粒子(A)は、多段重合体ともいえる。
【0095】
重合体微粒子(A)が多段重合体である場合、グラフト部は弾性体の少なくとも一部を被覆し得るか、または弾性体の全体を被覆し得る。重合体微粒子(A)が多段重合体である場合、グラフト部の一部は弾性体の内側に入り込んでいることもある。
【0096】
重合体微粒子(A)が多段重合体である場合、弾性体およびグラフト部が、層構造を形成していてもよい。例えば、弾性体が最内層(コア層とも称する。)を形成し、弾性体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層とも称する。)として形成される態様も、本発明の一態様である。弾性体をコア層とし、グラフト部をシェル層とする構造はコアシェル構造ともいえる。このように、弾性体およびグラフト部が層構造(コアシェル構造)を形成している重合体微粒子(A)は、多層重合体またはコアシェル重合体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)は、多段重合体であってもよく、かつ/または、多層重合体もしくはコアシェル重合体であってもよい。ただし、グラフト部が弾性体にグラフト結合している限り、重合体微粒子(A)は前記構成に制限されるわけではない。
【0097】
グラフト部の少なくとも一部分は、弾性体の少なくとも一部分を被覆していることが好ましい。換言すれば、グラフト部の少なくとも一部分は、重合体微粒子(A)の最も外側に存在することが好ましい。
【0098】
(I-2-1-3.表面架橋重合体)
ゴム含有グラフト共重合体は、弾性体、および、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部以外に、表面架橋重合体をさらに有することが好ましい。換言すれば、重合体微粒子(A)は、弾性体、および、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部以外に、表面架橋重合体をさらに有することが好ましい。以下、重合体微粒子(A)(例えばゴム含有グラフト共重合体)が、表面架橋重合体をさらに有する場合を例に挙げて、本発明の一実施形態を説明する。この場合、(a)重合体微粒子(A)の製造において、耐ブロッキング性を改善することができるとともに、(b)得られる粉粒体を含む樹脂組成物において、マトリクス樹脂(C)中の重合体微粒子(A)の分散性がより良好となる利点を有する。これらの理由としては、特に限定されないが、以下のように推測され得る:表面架橋重合体が弾性体の少なくとも一部を被覆することにより、重合体微粒子(A)の弾性体部分の露出が減り、その結果、弾性体同士が引っ付きにくくなるため、重合体微粒子(A)の分散性が向上する。
【0099】
重合体微粒子(A)がさらに表面架橋重合体を有する場合、さらに以下の効果も有し得る:(a)得られる粉粒体を含む樹脂組成物の粘度を低下させる効果、(b)弾性体における架橋密度を上げる効果、および(c)グラフト部のグラフト効率を高める効果。弾性体における架橋密度とは、弾性体全体における架橋構造の数の程度を意味する。
【0100】
表面架橋重合体は、構成単位として、多官能性単量体に由来する構成単位を30~100重量%、およびその他のビニル系単量体に由来する構成単位を0~70重量%、合計100重量%含む重合体からなる。
【0101】
表面架橋重合体の重合に用いられ得る多官能性単量体としては、上述の多官能性単量体と同じ単量体が挙げられる。それら多官能性単量体の中でも、表面架橋重合体の重合に好ましく用いられ得る多官能性単量体としては、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えばジメタクリル酸1,3-ブチレングリコールなど)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これら多官能性単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
重合体微粒子(A)は、ゴム含有グラフト共重合体の重合とは独立して重合された表面架橋重合体を含んでいてもよく、または、ゴム含有グラフト共重合体と共に重合された表面架橋重合体を含んでいてもよい。重合体微粒子(A)は、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体であってもよい。これらいずれの態様においても、表面架橋重合体は弾性体の少なくとも一部を被覆し得る。
【0103】
表面架橋重合体は、弾性体の一部とみなすこともできる。換言すれば、表面架橋重合体は、ゴム含有グラフト共重合体の一部とみなすこともでき、表面架橋重合部ともいえる。重合体微粒子(A)が表面架橋重合体を含む場合、グラフト部は、(a)表面架橋重合体以外の弾性体に対してグラフト結合されていてもよく、(b)表面架橋重合体に対してグラフト結合されていてもよく、(c)表面架橋重合体以外の弾性体および表面架橋重合体の両方に対してグラフト結合されていてもよい。重合体微粒子(A)が表面架橋重合体を含む場合、上述した弾性体の体積平均粒子径とは、表面架橋重合体を含む弾性体の体積平均粒子径を意図する。
【0104】
重合体微粒子(A)が、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体である場合(場合D)について説明する。場合Dにおいて、表面架橋重合体は、弾性体の一部を被覆し得るか、または弾性体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、表面架橋重合体の一部は弾性体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、グラフト部は、表面架橋重合体の一部を被覆し得るか、または表面架橋重合体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、グラフト部の一部は表面架橋重合体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、弾性体、表面架橋重合体およびグラフト部が、層構造を有していてもよい。例えば、弾性体を最内層(コア層)とし、弾性体の外側に表面架橋重合体の層が中間層として存在し、表面架橋重合体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層)として存在する態様も、本発明の一態様である。
【0105】
(I-2-1-4.重合体微粒子(A)の物性)
以下、重合体微粒子(A)の物性について説明する。
【0106】
(重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv))
重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)は、所望の粘度を有し、かつ高度に安定した樹脂組成物を得ることができることから、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.10μm~1.00μmがさらに好ましく、0.10μm~0.80μmがよりさらに好ましく、0.10μm~0.50μmが特に好ましい。重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)が前記範囲内である場合、マトリクス樹脂(C)における重合体微粒子(A)の分散性が良好となるという利点も有する。なお、本明細書において、「重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)」とは、特に言及する場合を除き、重合体微粒子(A)の1次粒子の体積平均粒子径を意図する。重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。重合体微粒子(A)の体積平均粒子径については、下記実施例にて詳述する。重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は、樹脂組成物の硬化物または成形体を切断し、切断面を電子顕微鏡などを用いて撮像し、得られた撮像データ(撮像画像)を用いて測定することもできる。
【0107】
マトリクス樹脂(C)中における重合体微粒子(A)の体積平均粒子径の個数分布は、低粘度であり取り扱い易い樹脂組成物が得られることから、体積平均粒子径の0.5倍以上1倍以下の半値幅を有することが好ましい。
【0108】
(I-2-1-5.重合体微粒子(A)の製造方法)
重合体微粒子(A)は、弾性体を重合した後、当該弾性体の存在下にて弾性体に対してグラフト部を構成する重合体をグラフト重合することによって、製造できる。
【0109】
重合体微粒子(A)は、公知の方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの方法により製造することができる。具体的には、重合体微粒子(A)における弾性体の重合、グラフト部の重合(グラフト重合)、および表面架橋重合体の重合は、公知の方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの方法により実施することができる。これらの中でも特に、重合体微粒子(A)の製造方法としては、乳化重合法が好ましい。乳化重合法によると、(a)重合体微粒子(A)の組成設計が容易である、(b)重合体微粒子(A)の工業生産が容易である、および(c)後述する本樹脂組成物の製造に好適に用いられ得る重合体微粒子(A)の水性ラテックスが容易に得られる、という利点を有する。以下、重合体微粒子(A)に含まれ得る弾性体、グラフト部、および任意の構成である表面架橋重合体の製造方法について、説明する。
【0110】
(弾性体の製造方法)
弾性体が、ジエン系ゴムおよび(メタ)アクリレート系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種以上を含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2005/028546号公報に記載の方法を用いることができる。
【0111】
弾性体が、オルガノシロキサン系ゴムを含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2006/070664号公報に記載の方法を用いることができる。
【0112】
重合体微粒子(A)の「弾性体」が複数種の弾性体(例えば弾性体、弾性体、・・・、弾性体)からなる場合について説明する。この場合、弾性体、弾性体、・・・、弾性体は、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されて複合化されることにより、複数種の弾性体からなる複合体が製造されてもよい。または、弾性体、弾性体、・・・、弾性体は、それぞれ順に多段重合され、複数種の弾性体からなる1つの弾性体が製造されてもよい。
【0113】
弾性体の多段重合について、具体的に説明する。例えば、以下、(1)~(4)の工程を順に行うことにより、多段重合弾性体を得ることができる:(1)弾性体を重合して弾性体を得る;(2)次いで弾性体の存在下にて弾性体を重合して2段弾性体1+2を得る;(3)次いで弾性体1+2の存在下にて弾性体を重合して3段弾性体1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、弾性体1+2+・・・+(n-1)の存在下にて弾性体を重合して多段重合弾性体1+2+・・・+nを得る。
【0114】
(グラフト部の製造方法)
グラフト部は、例えば、グラフト部の形成に用いる単量体を、公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。(a)弾性体、または(b)弾性体および表面架橋重合体を含む重合体微粒子前駆体、を水性ラテックスとして得た場合には、グラフト部の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。グラフト部は、例えば、WO2005/028546号公報に記載の方法に従って製造することができる。
【0115】
グラフト部が複数種のグラフト部(例えばグラフト部、グラフト部、・・・、グラフト部)からなる場合の、グラフト部の製造方法について説明する。この場合、グラフト部、グラフト部、・・・、グラフト部は、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されて複合化されることにより、複数種のグラフト部からなるグラフト部(複合体)が製造されてもよい。または、グラフト部、グラフト部、・・・、グラフト部は、それぞれ順に多段重合され、複数種のグラフト部からなる1つのグラフト部が製造されてもよい。
【0116】
グラフト部の多段重合について、具体的に説明する。例えば、以下、(1)~(4)の工程を順に行うことにより、多段重合グラフト部を得ることができる:(1)グラフト部を重合してグラフト部を得る;(2)次いでグラフト部の存在下にてグラフト部を重合して2段グラフト部1+2を得る;(3)次いでグラフト部1+2の存在下にてグラフト部を重合して3段グラフト部1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、グラフト部1+2+・・・+(n-1)の存在下にてグラフト部を重合して多段重合グラフト部1+2+・・・+nを得る。
【0117】
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部を有するグラフト部を重合した後、弾性体にそれらグラフト部をグラフト重合して、重合体微粒子(A)を製造してもよい。弾性体の存在下にて、弾性体に対して、グラフト部を構成する複数種の重合体を順に多段グラフト重合して、重合体微粒子(A)を製造してもよい。
【0118】
(表面架橋重合体の製造方法)
表面架橋重合体は、表面架橋重合体の形成に用いる単量体を公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。弾性体を水性ラテックスとして得た場合には、表面架橋重合体の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。
【0119】
重合体微粒子(A)の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、重合体微粒子(A)の製造には、公知の乳化剤(分散剤)を用いることができる。
【0120】
乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などが挙げられる。アニオン性乳化剤としては、硫黄系乳化剤、リン系乳化剤、ザルコシン酸系乳化剤、カルボン酸系乳化剤などが挙げられる。硫黄系乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(略称;SDBS)等が挙げられる。リン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0121】
重合体微粒子(A)の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、重合体微粒子(A)の製造には、熱分解型開始剤を用いることができる。前記熱分解型開始剤としては、例えば、(a)2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、並びに(b)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物、などの公知の開始剤を挙げることができる。前記有機過酸化物としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、およびt-ヘキシルパーオキサイドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0122】
重合体微粒子(A)の製造には、レドックス型開始剤を使用することもできる。前記レドックス型開始剤は、(a)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物と、(b)硫酸鉄(II)などの遷移金属塩や、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤を併用した開始剤である。さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などを併用してもよい。
【0123】
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定することができるようになる。そのため、レドックス型開始剤を用いることが好ましい。レドックス型開始剤の中でも、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、およびt-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物を過酸化物として使用したレドックス型開始剤が好ましい。前記開始剤の使用量、並びに、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤、遷移金属塩およびキレート剤などの使用量は、公知の範囲で用いることができる。
【0124】
弾性体、グラフト部または表面架橋重合体に架橋構造を導入する目的で、弾性体、グラフト部または表面架橋重合体の重合に多官能性単量体を使用する場合、公知の連鎖移動剤を公知の使用量の範囲で用いることができる。連鎖移動剤を使用することにより、得られる弾性体、グラフト部もしくは表面架橋重合体の分子量および/または架橋度を容易に調節することができる。
【0125】
重合体微粒子(A)の製造には、上述した成分に加えて、さらに界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤の種類および使用量は、公知の範囲である。
【0126】
重合体微粒子(A)の製造において、重合における重合温度、圧力、および脱酸素などの各条件は、公知の数値範囲の条件を適宜適用することができる。
【0127】
(I-2-2.樹脂(B))
第1の粉粒体は、特定の平均細孔径を有する細孔を特定量有することに加えて、さらに樹脂(B)を含むことにより、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に優れるという驚くべき利点を有する。
【0128】
樹脂(B)は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との任意の組み合わせであってもよい。
【0129】
(I-2-2-1.熱硬化性樹脂)
樹脂(B)における熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エチレン性不飽和単量体を重合させてなる重合体を含む樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオール樹脂およびアミノ-ホルムアルデヒド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。樹脂(B)における熱硬化性樹脂としては、芳香族ポリエステル原料を重合させてなる重合体を含む樹脂も挙げられる。樹脂(B)において、熱硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
(エチレン性不飽和単量体)
エチレン性不飽和単量体としては、分子中にエチレン性不飽和結合を少なくとも1個有するものであれば特に限定されない。
【0131】
エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸、α-アルキルアクリル酸エステル、β-アルキルアクリル酸、β-アルキルアクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル、酢酸ビニル、ビニルエステル、不飽和エステル、多不飽和カルボン酸、多不飽和エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、無水マレイン酸およびアセトキシスチレン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を少なくとも1個有するものであれば特に限定されない。
【0133】
エポキシ樹脂の具体例としては例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(もしくはF)型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリブタジエンもしくはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、p-オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのような不飽和重合体のエポキシ化物、および含アミノグリシジルエーテル樹脂、などが挙げられる。前記多価アルコールとしては、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、およびグリセリンなどが挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記のエポキシ樹脂にビスフェノールA(もしくはF)類、または多塩基酸類などを付加反応させて得られるエポキシ化合物も挙げられる。エポキシ樹脂は、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。これらのエポキシ樹脂は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
上述したエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、樹脂組成物の硬化において、反応性が高く、かつ得られた硬化物が3次元的網目を作りやすいなどの点から好ましい。また、エポキシ樹脂としては、経済性および入手のし易さに優れることから、エポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するエポキシ樹脂の中でもビスフェノール型エポキシ樹脂を主成分とするものが好ましい。
【0135】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られる化合物であれば特に限定されない。フェノール類としては特に限定されないが、例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラフェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびレゾルシンなどが挙げられる。特に好ましいフェノール類としては、フェノール、およびクレゾールが挙げられる。
【0136】
アルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、およびアクロレインなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。アルデヒド類としては、上述したアルデヒド類の発生源となる物質、またはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することもできる。アルデヒド類としては、フェノール類とアルデヒド類とを反応させるときの操作が容易であることから、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0137】
フェノール類とアルデヒド類とを反応させるときの、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とのモル比(F/P)(以下、反応モル比とも称する)は特に限定されない。反応において酸触媒を使用する場合、前記反応モル比(F/P)は0.4~1.0であることが好ましく、0.5~0.8であることがより好ましい。反応においてアルカリ触媒を使用する場合、前記反応モル比(F/P)は0.4~4.0であることが好ましく、0.8~2.5であることがより好ましい。反応モル比が前記下限値以上である場合、歩留まりが低くなりすぎず、また、得られるフェノール樹脂の分子量が小さくなる虞がない。一方、反応モル比が前記上限値以下である場合、フェノール樹脂の分子量が大きくなりすぎずかつ軟化点が高くなりすぎないため、加熱時に充分な流動性を得られる。また、反応モル比が前記上限値以下である場合、分子量のコントロールが容易であり、反応条件に起因したゲル化、もしくは部分的なゲル化物が生じる虞がない。
【0138】
(ポリオール樹脂)
ポリオール樹脂は、末端に活性水素を2個以上有する化合物であり、分子量50~20,000程度の2官能以上のポリオールである。ポリオール樹脂としては、脂肪族アルコール類、芳香族アルコール類、ポリエーテル型ポリオール類、ポリエステル型ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、およびアクリルポリオール類などを挙げることができる。
【0139】
脂肪族アルコールは、二価アルコール、または三価以上のアルコール(三価アルコール、四価アルコールなど)のいずれであってもよい。二価アルコールとしては、(a)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール類(特に炭素数が1~6程度のアルキレングリコール類)、および(b)当該アルキレングリコール類の化合物の2分子以上(例えば、2~6分子程度)の脱水縮合物(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど)、などが挙げられる。三価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオールなど(特に炭素数が3~10程度の三価アルコール)が挙げられる。四価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどが挙げられる。また、単糖、オリゴ糖、多糖などの糖類が挙げられる。
【0140】
芳香族アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類;ジヒドロキシビフェニルなどのビフェニル類;ハイドロキノン、フェノールホルムアルデヒド縮合物などの多価フェノール類;ナフタレンジオールなどが挙げられる。
【0141】
ポリエーテル型ポリオールとしては、例えば、(a)活性水素を含有する開始剤、1種類または2種以上の存在下、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどを開環重合して得られるランダム共重合体またはブロック共重合体など、および(b)これら共重合体の混合物などが挙げられる。ポリエーテル型ポリオールの開環重合に用いられる、活性水素を含有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAなどのジオール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類;単糖、オリゴ糖、多糖などの糖類;ソルビトール;アンモニア、エチレンジアミン、尿素、モノメチルジエタノールアミン、モノエチルジエタノールアミンなどのアミン類;などが挙げられる。
【0142】
ポリエステル型ポリオールとしては、例えば、多塩基酸および/または多塩基酸の無水物と、多価アルコールとを、エステル化触媒の存在下、150~270℃の温度範囲で重縮合させて得られる重合体が挙げられる。前記多塩基酸としては、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、アゼライン酸などが挙げられる。前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられる。さらに、ポリエステル型ポリオールとしては、(a)ε-カプロラクトン、バレロラクトンなどの開環重合物、および、(b)ポリカーボネートジオール、ヒマシ油などの活性水素を2個以上有する活性水素化合物、などが挙げられる。
【0143】
ポリオレフィン型ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、およびそれらの水添物などが挙げられる。
【0144】
アクリルポリオールとしては、例えば、(a)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびビニルフェノールなどの水酸基含有単量体と、(b)n-ブチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの汎用単量体との共重合体、並びにそれら共重合体の混合物などが挙げられる。
【0145】
これらポリオール樹脂の中でも、得られる粉粒体を含む樹脂組成物の粘度が低く作業性に優れ、当該樹脂組成物が硬度と靱性とのバランスに優れた硬化物を提供できることから、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。また、これらポリオール樹脂の中でも、得られる粉粒体を含む樹脂組成物が接着性に優れる硬化物を提供できることから、ポリエステル型ポリオールが好ましい。
【0146】
(アミノ-ホルムアルデヒド樹脂)
アミノ-ホルムアルデヒド樹脂は、アミノ化合物とアルデヒド類とをアルカリ性触媒下で反応させて得られる化合物であれば特に限定されない。前記アミノ化合物としては、メラミン;グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどの6-置換グアナミン類;CTUグアナミン(3,9-ビス[2-(3,5-ジアミノ-2,4,6-トリアザフェニル)エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)、CMTUグアナミン(3,9-ビス[(3,5-ジアミノ-2,4,6-卜リアザフェニル)メチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などのアミン置換トリアジン化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素類を挙げることができる。また前記アミノ化合物としては、(a)メラミンのアミノ基の水素をアルキル基、アルケニル基、および/またはフェニル基で置換した置換メラミン化合物(米国特許第5,998,573号明細書(対応日本公開公報:特開平9-143238号)に記載されている。)、並びに、(b)メラミンのアミノ基の水素をヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシアルキル基、および/またはアミノアルキル基で置換した置換メラミン化合物(米国特許第5,322,915号明細書(対応日本公開公報:特開平5-202157号)に記載されている。)なども使用することができる。前記アミノ化合物としては、上述した化合物中でも、工業的に生産されており安価であることから、多官能性アミノ化合物である、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、およびベンゾグアナミンが好ましく、メラミンが特に好ましい。上述したアミノ化合物は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらアミノ化合物に加えて、(a)フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、およびピロガロールなどのフェノール類、並びに(b)アニリン、などを追加して用いても良い。
【0147】
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、およびフルフラールなどが挙げられる。前記アルデヒド類としては、安価であり、先に挙げたアミノ化合物との反応性が良いことから、ホルムアルデヒド、およびパラホルムアルデヒドが好ましい。アミノ-ホルムアルデヒド樹脂の製造において、アルデヒド類は、アミノ化合物1モルに対して、有効アルデヒド基当たり1.1~6.0モルを使用することが好ましく、1.2~4.0モルを使用することが特に好ましい。
【0148】
(芳香族ポリエステル原料)
芳香族ポリエステル原料としては、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸誘導体、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物などのラジカル重合性単量体、ジメチルテレフタレート、アルキレングリコールなどが挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0149】
(I-2-2-2.熱可塑性樹脂)
樹脂(B)における熱可塑性樹脂としては、アクリル系重合体、ビニル系共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタンおよびポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0150】
アクリル系重合体は、アクリル酸エステル単量体からなる構成単位を主成分とした重合体である。前記アクリル酸エステル単量体は、エステル部分の炭素数が1~20であることが好ましい。また、アクリル系重合体は、(a)アクリル酸エステル単量体の単独重合体、(b)アクリル酸エステル単量体と、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体、酢酸ビニルなどの単量体またはビニル系共重合体との共重合体(以下、アクリル系共重合体、とも称する。)、などが挙げられる。
【0151】
アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEMA)、アクリル酸ブチル(BA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸n-ブチル(nBMA)、メタクリル酸イソブチル(iBMA)、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸トリシクロデシニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキスエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸クロロエチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。これらは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0152】
アクリル系共重合体において、(a)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位(構成単位(a))と、(b)不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体、酢酸ビニルなどの単量体またはビニル系共重合体に由来する構成単位(構成単位(b))と、の比率は、構成単位(a)は50重量%~100重量%、構成単位(b)は0重量%~50重量%が好ましい。
【0153】
アクリル系重合体は、アクリル酸ブチル(BA)に由来する構成単位を、50重量%以上含むことが好ましく、60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことが更に好ましく、80重量%以上含むことが特に好ましく、90重量%以上含むことが最も好ましい。
【0154】
ビニル系共重合体は、芳香族ビニル系単量体、シアン化系ビニル単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体からなる群から選択される1種以上を含有するビニル系単量体の混合物を共重合して得られる。当該ビニル系単量体の混合物は、上述した単量体と共重合可能なその他の単量体(以下、単量体C、とも称する。)をさらに含有してもよい。
【0155】
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、などが挙げられる。これらのビニル系単量体は1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、屈折率を容易に大きくすることができるという観点から、芳香族ビニル系単量体が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0156】
前記不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、特に制限されない。例えば、炭素数1~6のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが好ましい。炭素数1~6のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステルは、さらに水酸基またはハロゲン基などの置換基を有していてもよい。
【0157】
炭素数1~6のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0158】
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、などが挙げられる。これらは1種類のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0159】
単量体Cは、前記芳香族ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、シアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体であって、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はない。単量体Cとしては、具体的には、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体、酢酸ビニル、アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
不飽和脂肪酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテン酸、アクリル酸、メタクリル酸、などから選択され得る。
【0161】
アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、などから選択され得る。
【0162】
マレイミド系単量体としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、などから選択され得る。
【0163】
ビニル系共重合体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、などが挙げられる。
【0164】
また、ビニル系共重合体の製造方法において、必要により、重合開始剤を使用してもよい、重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸カリウム、などからなる群より1種以上が適宜選択され得る。重合開始剤の添加量は特に制限されない。
【0165】
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルイソプロピルカルボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオクテート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロへキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロへキサン、およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでも、クメンハイドロパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロへキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロへキサンが特に好ましく用いられる。
【0166】
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、1-t-ブチルアゾ-2-シアノブタン、および2-t-ブチルアゾ-2-シアノ-4-メトキシ-4-メチルペンタンなどが挙げられる。なかでも、1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリルが特に好ましく用いられる。
【0167】
ビニル系共重合体の具体例としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-N-フェニルマレイミド共重合体、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0168】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0169】
樹脂(B)としては、後述する混合対象のマトリクス樹脂(C)と同一の樹脂(同一の組成を有する樹脂)であってもよく、マトリクス樹脂(C)と異なる樹脂であってもよい。樹脂組成物中で、マトリクス樹脂(C)と樹脂(B)とは、相分離していないことが好ましい。樹脂(B)は、マトリクス樹脂(C)と相溶する樹脂が好ましい。
【0170】
樹脂(B)が後述する混合対象のマトリクス樹脂(C)と同一の樹脂である場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物または硬化物あるいは成形体の種々の物性に対して、樹脂(B)が影響を与えないという利点を有する。
【0171】
一例として、樹脂(B)がマトリクス樹脂(C)と同じ種類の樹脂である場合を考える。この場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物ではマトリクス樹脂(C)と樹脂(B)との区別をつけることはできない。そのため、外見上、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、重合体微粒子(A)以外に、樹脂(B)のみ、またはマトリクス樹脂(C)のみを有しているように見える。次に、樹脂(B)がマトリクス樹脂(C)と異なる種類の樹脂である場合を考える。この場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物ではマトリクス樹脂(C)と樹脂(B)とは識別可能である。この場合、最終的に得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、重合体微粒子(A)以外に、マトリクス樹脂(C)以外の樹脂として樹脂(B)を含み得る。
【0172】
(I-2-2-3.その他)
本明細書では、油脂および脂肪酸エステルもまた、樹脂(B)に含まれる。樹脂(B)として好適に利用できる、油脂としては、エポキシ化大豆油およびエポキシ化アマニ油などのエポキシ化油脂、などが挙げられる。エポキシ化大豆油としては市販品を用いることもでき、例えば、ADEKA社製、アデカイザーO-130P等を挙げることができる。樹脂(B)として好適に利用できる、脂肪酸エステルとしては、エポキシ化脂肪酸ブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、エポキシ化脂肪酸オクチルエステルおよびエポキシ化脂肪酸アルキルエステルなどのエポキシ化脂肪酸エステル、などが挙げられる。
【0173】
エポキシ化油脂およびエポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ系可塑剤と称される場合もある。すなわち、本明細書では、エポキシ系可塑剤もまた、樹脂(B)に含まれる。エポキシ化油脂およびエポキシ化脂肪酸エステル以外のエポキシ系可塑剤としては、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリルおよびエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0174】
上述した、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物、油脂、および脂肪酸エステルの各々は、酸化防止剤と混合して使用することができる。本明細書では、上述した各々の物質と混合して使用する場合に限り、酸化防止剤を樹脂(B)の一部とみなす。酸化防止剤のみを使用する場合には、酸化防止剤は樹脂(B)とはみなされない。樹脂(B)の代わりに酸化防止剤のみを使用する場合について説明する。酸化防止剤は架橋に寄与しない成分であるため、得られた粉粒体をマトリクス樹脂(C)と混合した場合に、最終的に得られる物(すなわち最終物。例えば、マトリクス樹脂(C)が熱硬化性樹脂である場合は、硬化物)の物性が劣る傾向がある。例えば、最終物のTgが低下したり、耐衝撃性が劣ったりする場合が考えられる。
【0175】
酸化防止剤としては、特に限定されない。酸化防止剤としては、例えば、(a)フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等の一次酸化防止剤、および(b)イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の二次酸化防止剤、などが挙げられる。
【0176】
前記フェノール系酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤を挙げることができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、分子内にヒンダードフェノール構造あるいは片ヒンダードフェノール構造を有する化合物が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としてはとしては市販品を用いることもでき、例えば、BASFジャパン株式会社製、イルガノックス245等を挙げることができる。
【0177】
前記アミン系酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものを広く使用できる。アミン系酸化防止剤の具体例としては、アミン-ケトン系化合物として、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、およびジフェニルアミンとアセトンとの反応物、等が挙げられる。
【0178】
前記アミン系酸化防止剤には、芳香族系アミン化合物も含まれる。芳香族系アミン化合物としては、ナフチルアミン系酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、およびp-フェニレンジアミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0179】
ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤およびイオウ系酸化防止剤としては、それぞれ、特に限定されず、従来公知のものを広く使用できる。
【0180】
リン系酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものを広く使用できる。活性水素を含むリン酸およびリン酸エステルは得られる粉粒体を含む樹脂組成物の貯蔵安定性、および当該樹脂組成物が提供する硬化物または成形体の耐熱性に悪影響を与え得る。そのため、リン系酸化防止剤としては、リン酸およびリン酸エステルを分子内に含まない、アルキルホスファイト、アリールホスファイト、アルキルアリールホスファイト化合物などが好ましい。
【0181】
前記酸化防止剤としては、その他、従来公知の物質を使用してもよい。酸化防止剤としては、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」(昭和51年10月25日初版発行)、シーエムシー出版発行の「高分子添加剤ハンドブック」(春名徹編著、2010年11月7日第1版発行)等に記載された種々の物質を使用してもよい。
【0182】
樹脂(B)は、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂と酸化防止剤との混合物、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂と酸化防止剤との混合物、油脂、油脂と酸化防止剤との混合物、脂肪酸エステル、脂肪酸エステルと酸化防止剤との混合物、エポキシ硬化剤、およびエポキシ硬化剤と酸化防止剤との混合物、からなる群から選択される1つ以上であることが好ましく、エポキシ樹脂、アクリル系重合体、エポキシ樹脂と酸化防止剤との混合物、アクリル系重合体と酸化防止剤との混合物、および、エポキシ系可塑剤と酸化防止剤との混合物からなる群から選択される1つ以上であることがより好ましく、エポキシ樹脂と酸化防止剤との混合物、アクリル系重合体と酸化防止剤との混合物、および、エポキシ系可塑剤と酸化防止剤との混合物からなる群から選択される1つ以上であることがさらに好ましく、エポキシ系可塑剤と酸化防止剤との混合物であることが特に好ましい。当該構成によると、(a)得られる粉粒体を含む樹脂組成物は耐熱性に優れる硬化物または成形体を提供できるとともに、(b)マトリクス樹脂(C)中の重合体微粒子(A)の分散性を向上させることができる、という利点を有する。
【0183】
(I-2-2-4.樹脂(B)の物性)
樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体である限り、その他の性状は、特に限定されない。なお、「樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する」とは、「25℃である樹脂(B)が、100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する」ことを意図する。
【0184】
樹脂(B)が液体である場合、樹脂(B)の粘度は、25℃において、750,000mPa・s以下であることが好ましく、700,000mPa・s以下であることがより好ましく、500,000mPa・s以下であることがより好ましく、350,000mPa・s以下であることがより好ましく、300,000mPa・s以下であることがより好ましく、250,000mPa・s以下であることがより好ましく、100,000mPa・s以下であることがより好ましく、75,000mPa・s以下であることがより好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましく、30,000mPa・s以下であることがより好ましく、25,000mPa・s以下であることがより好ましく、20,000mPa・s以下であることがさらに好ましく、15,000mPa・s以下であることが特に好ましい。前記構成によると、粉粒体は流動性に優れるという利点を有する。
【0185】
また樹脂(B)の粘度は、25℃において、200mPa・s以上であることがより好ましく、300mPa・s以上であることがより好ましく、400mPa・s以上であることがより好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましく、750mPa・s以上であることがさらに好ましく、1000mPa・s以上であることがよりさらに好ましく、1500mPa・s以上であることが特に好ましい。当該構成によると、樹脂(B)は重合体微粒子(A)中に含浸しないが、複数の重合体微粒子(A)の粒子間に入り込み、重合体微粒子(A)の表面付近で留まり得る。その結果、樹脂(B)によって重合体微粒子(A)同士の融着を防ぐことができる。
【0186】
樹脂(B)の粘度は、25℃において、100mPa・s~750,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~700,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~350,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~300,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~50,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~30,000mPa・sがさらに好ましく、100mPa・s~15,000mPa・sが特に好ましい。
【0187】
樹脂(B)が25℃において半固体である場合、樹脂(B)は25℃において半液体であるともいえ、樹脂(B)は、25℃において1,000,000mPa・sより大きい粘度を有しているともいえる。樹脂(B)が、25℃において、半固体であるか、または固体である場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物は、べたつきが少なく取り扱いやすいという利点を有する。
【0188】
さらに、25℃における樹脂(B)の粘度は、25℃でのマトリクス樹脂(C)の粘度に50000mPa・sを加えた値以下であることが好ましい。樹脂(B)とマトリクス樹脂(C)との均一混合を容易にするという点から、25℃での樹脂(B)の粘度が25℃でのマトリクス樹脂(C)の粘度以上の場合、25℃での樹脂(B)の粘度は、25℃でのマトリクス樹脂(C)の粘度に20000mPa・sを加えた値以下であることがより好ましく、10000mPa・sを加えた値以下であることがより好ましく、5000mPa・sを加えた値以下であることがさらに好ましく、0mPa・sを加えた値以下であることがもっとも好ましい。
【0189】
樹脂(B)の粘度は、粘度計により測定することができる。樹脂(B)の粘度の測定方法は、下記実施例にて詳述する。
【0190】
また樹脂(B)は、示差熱走査熱量測定(DSC)のサーモグラムが25℃以下の吸熱ピークを有する樹脂であることが好ましく、0℃以下の吸熱ピークを有する樹脂であることがより好ましい。
【0191】
第1の粉粒体における樹脂(B)の含有量は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である。樹脂(B)の含有量は、上述した数値範囲内および、粉粒体を得ることができる範囲内で、樹脂(B)の種類、および樹脂(B)の物性(固体、半固体、液体、または粘度など)などに応じて、適宜設定され得る。樹脂(B)が25℃において液体であり、かつ粉粒体における樹脂(B)の含有量が多い場合、粉粒体が得られない場合がある。樹脂(B)が25℃において液体であり、かつ粉粒体における樹脂(B)の含有量が多い場合、粉粒体の流動性(サラサラ感)が悪化する虞がある。
【0192】
第1の粉粒体における樹脂(B)の含有量について、耐ブロッキング性に優れる点から説明する。前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、重合体微粒子(A)が55~99重量%、樹脂(B)が1~45重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が60~99重量%、樹脂(B)が1~40重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が65~99重量%、樹脂(B)が1~35重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が70~99重量%、樹脂(B)が1~30重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が75~99重量%、樹脂(B)が1~25重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が80~99重量%、樹脂(B)が1~20重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が85~99重量%、樹脂(B)が1~15重量%であることがさらに好ましく、重合体微粒子(A)が90~99重量%、樹脂(B)が1~10重量%であることがよりさらに好ましく、重合体微粒子(A)が95~99重量%、樹脂(B)が1~5重量%であることが特に好ましい。
【0193】
第1の粉粒体における樹脂(B)の含有量について、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性が良好となる点から説明する。重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、重合体微粒子(A)が50~97重量%、樹脂(B)が3~50重量%であることが好ましく、重合体微粒子(A)が50~95重量%、樹脂(B)が5~50重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が50~92重量%、樹脂(B)が8~50重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が50~90重量%、樹脂(B)が10~50重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が50~87重量%、樹脂(B)が13~50重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が50~85重量%、樹脂(B)が15~50重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が50~82重量%、樹脂(B)が18~50重量%であることがさらに好ましく、重合体微粒子(A)が50~80重量%、樹脂(B)が20~50重量%であることがよりさらに好ましく、重合体微粒子(A)が60~80重量%、樹脂(B)が20~40重量%であることが特に好ましい。
【0194】
(I-2-3.ブロッキング防止剤)
第1の粉粒体は、さらにブロッキング防止剤を含むことが好ましい。当該構成によると、得られる粉粒体は、(a)耐ブロッキング性に優れ、かつ(b)重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に優れる。
【0195】
ブロッキング防止剤は、本発明の一実施形態の効果を奏するものであれば特に制限されない。ブロッキング防止剤としては、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、ゼオライト、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロケイ酸マグネシウム等の無機微粒子からなるブロッキング防止剤;有機微粒子からなるブロッキング防止剤;ポリエチレンワックス、高級脂肪酸アミド、金属セッケン、シリコーン油などの油脂系ブロッキング防止剤が挙げられる。これらの中で、微粒子からなるブロッキング防止剤が好ましく、有機微粒子からなるブロッキング防止剤がより好ましい。有機微粒子からなるブロッキング防止剤としては、構成単位として、芳香族ビニル系単量体、ビニルシアン単量体、(メタ)アクリレート単量体より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体の有機微粒子からなるブロッキング防止剤が特に好ましい。
【0196】
微粒子からなるブロッキング防止剤は、一般に、微粒子が液中に分散してなるもの、またはコロイド状のものである。ブロッキング防止剤中の微粒子は、体積平均粒子径(Mv)が、通常10μm以下、好ましくは0.05μm~10.00μmである。ブロッキング防止剤の含有量は、粉粒体の総重量(100重量%)に対して、0.01重量%~5.00重量%が好ましく、0.50重量%~3.00重量%がより好ましい。
【0197】
(I-2-4.その他の任意成分)
第1の粉粒体は、必要に応じて、前述した成分以外の、その他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、後述する(4-5.その他の任意成分)の項で説明する各種成分を挙げることができる。
【0198】
ブロッキング防止剤およびその他の任意成分は、第1の粉粒体の製造方法における任意の工程中で適宜添加することができる。例えば、ブロッキング防止剤およびその他の任意成分は、重合体微粒子(A)または重合体微粒子(A)および樹脂(B)が、凝固する前もしくは凝固した後の水懸濁液(水性ラテックス)中へ添加することができる。ブロッキング防止剤およびその他の任意成分は、また、重合体微粒子(A)、樹脂(B)または重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体へ添加することができる。
【0199】
(I-2-5.粉粒体の物性)
(TEM画像における樹脂(B)のドメイン)
粉粒体における重合体微粒子(A)同士の融着を防ぐ観点から、粉粒体中において、重合体微粒子(A)の1次粒子の体積平均粒子径の1.5倍以上の長径を有する樹脂(B)は少ないことが好ましい。具体的には、粉粒体を透過型電子顕微鏡分析(TEM)に供し、TEM画像を取得したとき、TEM画像において、樹脂(B)の長径が重合体微粒子(A)の平均粒子径の1.5倍以上であるドメインは、5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、1個以下であることがさらに好ましく、0個以下であることがもっとも好ましい。
【0200】
前記透過型電子顕微鏡分析としては、公知の方法を用いることができる。例えば、粉粒体を凍結後、ウルトラミクロトームを用いて凍結物を薄切して、100nm程の厚さを有する薄片サンプルを作製する。その後、当該薄片をオスミウム(OsO)で染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)に供する方法が挙げられる。樹脂(B)の長径とは、TEM画像において、最大長さ(外周上の2点を結ぶ直線のうち、最大の直線の長さ)をいう。また重合体微粒子(A)の1次粒子の平均粒子径は、例えば、TEM画像において、無作為に抽出された30個の重合体微粒子(A)の投影面積に等しい円の径(面積円相当径)の平均から算出することができる。
【0201】
(粉粒体の体積平均粒子径)
粉粒体の体積平均粒子径(Mv)は、30μm~500μmであることが好ましく、30μm~300μmであることがより好ましく、50μm~300μmであることがさらに好ましく、100μm~300μmであることが特に好ましい。当該構成によると、粉粒体は、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に優れる。また、当該構成によると、粉粒体は、マトリクス樹脂(C)中に重合体微粒子(A)が均一に分散しており、所望の粘度を有し、かつ高度に安定した樹脂組成物を提供できる。本明細書において、粉粒体の体積平均粒子径は、マイクロトラックベル株式会社製のレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000II)を用いて、測定して得られた値とする。
【0202】
得られる粉粒体に、粉塵爆発の可能性がある微粉、および分散性に劣る粗粒が含まれにくいという利点を有するため、粉粒体の体積平均粒子径の個数分布は、体積平均粒子径の0.5倍以上1倍以下の半値幅を有することが好ましい。
【0203】
粉粒体の総量(100重量%)において、体積平均粒子径1000μm以上の粒体は、6.00重量%以下であることが好ましく、5.00重量%以下であることがより好ましく、4.50重量%以下であることがより好ましく、4.00重量%以下であることがより好ましく、3.50重量%以下であることがより好ましく、3.00重量%以下であることがより好ましく、2.50重量%以下であることがより好ましく、2.00重量%以下であることがより好ましく、1.50重量%以下であることがより好ましく、1.00重量%以下であることがより好ましく、0.50重量%以下であることがさらに好ましく、検出限界以下(例えば0.00%)であることが特に好ましい。当該構成によると、粉粒体は、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に非常に優れるという利点を有する。なお、「体積平均粒子径1000μm以上の粒体」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)を測定したとき、1000μm以上の粒子径を示す粉体を意図する。
【0204】
粉粒体の総量(100重量%)において、体積平均粒子径600μm以上の粒体は、6.00重量%以下であることが好ましく、5.50重量%以下であることがより好ましく、5.00重量%以下であることが好ましく、4.50重量%以下であることがより好ましく、4.00重量%以下であることがより好ましく、3.50重量%以下であることがより好ましく、3.00重量%以下であることがより好ましく、2.50重量%以下であることがより好ましく、1.90重量%以下であることがより好ましく、2.00重量%以下であることがより好ましく、1.50重量%以下であることがより好ましく、1.00重量%以下であることがより好ましく、0.50重量%以下であることがさらに好ましく、検出限界以下(例えば0。00%)であることが特に好ましい。当該構成によると、粉粒体は、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に非常に優れるという利点を有する。なお、「体積平均粒子径600μm以上の粒体」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて粉粒体の体積平均粒子径(Mv)を測定したとき、600μm以上の粒子径を示す粉体を意図する。
【0205】
粉粒体の総量における体積平均粒子径1000μm以上または600μm以上の粒体の割合を、上述した好ましい数値範囲内とする方法としては、特に限定されず、下記の様な方法を挙げることができる:(1)粉粒体の製造方法において、後述する凝集工程における気相凝固を実施する方法;または(2)所定の孔径を有するメッシュを用いて、得られた粉粒体を篩う方法。
【0206】
(粉粒体の細孔)
粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0600mL/g以上である。本明細書において、粉粒体の平均細孔径および特定の平均細孔径を有する細孔の合計容積は、自動水銀ポロシメータ細孔分布測定装置を用いて測定して得られた値とする。
【0207】
粉粒体における、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔の合計容積は、0.0650mL/g以上であることがより好ましく、0.0700mL/g以上であることがより好ましく、0.0720mL/g以上であることがより好ましく、0.0750mL/g以上であることがより好ましく、0.0800mL/g以上であることがより好ましく、0.0850mL/g以上であることがより好ましく、0.0900mL/g以上であることがより好ましく、0.0950mL/g以上であることがより好ましく、0.1000mL/g以上であることがより好ましく、0.1050mL/g以上であることがさらに好ましく、0.1100mL/g以上であることが特に好ましい。当該構成によると、粉粒体は、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に非常に優れるという利点を有する。
【0208】
粉粒体は、平均細孔径0.03μm~4.50μmの細孔を有していてもよい。粉粒体における、平均細孔径0.03μm~4.50μmの細孔の合計容積は、0.0900mL/g以上であることがより好ましく、0.0950mL/g以上であることがより好ましく、0.1000mL/g以上であることがより好ましく、0.1050mL/g以上であることがより好ましく、0.1100mL/g以上であることがより好ましく、0.1150mL/g以上であることがより好ましく、0.1200mL/g以上であることがより好ましく、0.1250mL/g以上であることがより好ましく、0.1300mL/g以上であることがさらに好ましく、0.1350mL/g以上であることが特に好ましい。当該構成によると、粉粒体は、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に非常に優れるという利点を有する。
【0209】
(耐ブロッキング性)
第1の粉粒体は、耐ブロッキング性に優れる。本明細書において、粉粒体の耐ブロッキング性は、粉粒体のブロックを崩すために必要な力によって評価できる。第1の粉粒体は、当該粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下であることが好ましい。ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックである。また、前記力(粉粒体のブロックを崩すために必要な力)は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【0210】
〔I-3.粉粒体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る粉粒体の製造方法は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を調製する凝集工程と、前記凝集体を、気流乾燥または凍結乾燥する乾燥工程を含む。前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む。前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含む。前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含む。前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体である。前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である。「本発明の一実施形態に係る粉粒体の製造方法」を「第1の製造方法」と称する場合もある。
【0211】
第1の製造方法は、前記構成を有するため、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂への分散性に優れる粉粒体を提供できる、という利点を有する。換言すれば、第1の製造方法は、前記構成を有するため、マトリクス樹脂(C)と混合することにより、マトリクス樹脂(C)中に重合体微粒子(A)が均一に分散している樹脂組成物をし得る粉粒体を提供できる、という利点を有する。
【0212】
以下、第1の製造方法の各工程について詳説するが、以下に説明する以外の事項(例えば、各種成分およびその添加量など)は特に限定されず、上述の〔I-2.粉粒体〕の項の説明を適宜援用する。
【0213】
(I-3-1.凝集工程)
凝集工程は、最終的に重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を得ることができる限り、換言すれば最終的に得られる凝集体が重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む限り、特に限定されない。
【0214】
凝集工程は、例えば、以下のような工程を順に、含むものであってもよい:重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む水性ラテックスを調製する調製工程(a1);得られた水性ラテックス中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を共に凝集させる凝集工程(a2)。
【0215】
調製工程(a1)は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む水性ラテックスを得ることができる限り、特に限定されない。重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む水性ラテックスを得る方法としては、例えば、(i)重合体微粒子(A)の重合工程中、反応溶液に対して、樹脂(B)を添加する方法、(ii)重合体微粒子(A)の水性ラテックスに対して樹脂(B)を添加する方法、および(iii)重合体微粒子(A)の水性ラテックスにて、樹脂(B)を重合する方法、などが挙げられる。
【0216】
重合体微粒子(A)の重合工程中の反応溶液または重合体微粒子(A)の水性ラテックスに対する樹脂(B)の添加方法は特に限定されない。例えば、前記反応溶液または前記水性ラテックスに対して、(i)樹脂(B)を直接添加する方法、(ii)樹脂(B)を含む水性ラテックスを別途調製した後、樹脂(B)を含む水性ラテックスを添加する方法、および(iii)樹脂(B)を含む溶液を別途調製した後、樹脂(B)を含む溶液を添加する方法、などが挙げられる。樹脂(B)の添加方法としては、前記反応溶液または前記水性ラテックスに対して、樹脂(B)を含む水性ラテックスを別途調製した後、樹脂(B)を含む水性ラテックスを添加する方法が好ましい。
【0217】
凝集工程(a2)が、凝固剤を使用する態様である場合、重合体微粒子(A)の水性ラテックスに対して樹脂(B)を添加する時宜は、凝固剤を添加する前であってもよく、後であってもよく、また凝固剤とともに樹脂(B)を重合体微粒子(A)に添加してもよい。
【0218】
重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む水性ラテックスを得る方法としては、重合体微粒子(A)の水性ラテックスに対して樹脂(B)を水性ラテックス状態で添加する方法が好ましい。
【0219】
凝集工程(a2)は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を得ることができる限り、特に限定されない。水性ラテックス中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を共に凝集させる方法は、特に限定されない。当該方法としては、例えば、凝固剤を用いる方法、溶媒を用いる方法、水性ラテックスを噴霧する方法などの公知の方法が挙げられる。などの公知の方法が挙げられる。ここで、水性ラテックス中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を共に凝集させて得られる、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体と水性溶媒とを含む混合物を、スラリーとも称する。
【0220】
耐ブロッキング性が良好となるため、また重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性が優れるため、水性ラテックス中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝集は、ブロッキング防止剤の存在下で行われることが好ましい。
【0221】
凝集工程(a2)は、凝固剤を用いる方法を採用することが好ましい。換言すれば、第1の製造方法における凝集工程では、凝固剤を使用することが好ましい。
【0222】
凝固剤としては、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスと接触させることにより、当該水性ラテックス中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を凝集(凝析および凝固とも称する。)し得る性質を有する物質であれば、特に限定されない。凝固剤としては、例えば、無機塩の水溶液、無機酸の水溶液、有機塩の水溶液、有機酸の水溶液、および高分子凝固剤などが挙げられる。
【0223】
無機塩としては、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硫酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、リン酸塩などが挙げられる。具体的な無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバンなどが挙げられる。
【0224】
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
【0225】
有機塩としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。具体的な有機酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウムなどが挙げられる。
【0226】
有機酸としては、酢酸、ギ酸などが挙げられる。
【0227】
高分子凝固剤としては、親水基と疎水基とを有する高分子化合物であればよく特に限定されず、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれの高分子凝固剤であってもよい。本発明の一実施形態の作用効果をより高めることができるという点より、高分子凝固剤としては、カチオン系の高分子凝固剤が好ましい。カチオン系の高分子凝固剤としては、分子内にカチオン性基を有する高分子凝固剤、すなわち水に溶解させたときにカチオン性を示す高分子凝固剤であればよい。カチオン系の高分子凝固剤としては、たとえば、ポリアミン類、ポリジシアンジアミド類、カチオン化デンプン、カチオン系ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性アニリン樹脂、ポリチオ尿素、ポリエチレンイミン、第4級アンモニウム塩類、ポリビニルピリジン類、キトサンなどが挙げられる。
【0228】
凝固剤としては、上述した化合物のうち、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。凝固剤としては、上述した化合物の中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、塩酸、硫酸などの一価若しくは二価の無機塩あるいは無機酸の水溶液が好適に使用できる。前記凝固剤の添加方法には特に制限は無く、一気に添加、分割添加、あるいは連続的に添加することができる。
【0229】
重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスと凝固剤または凝固剤の溶液(例えば、水溶液)とを接触させることにより、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を凝集させることができる。重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスと凝固剤または凝固剤の溶液とを接触させる方法としては、特に限定されない。当該方法としては、例えば、(i)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤または凝固剤の溶液と接触させる方法(以下、凝集方法1とする。)、および(ii)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを噴霧して得られる重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む液滴を、凝固剤または凝固剤の溶液と接触させる方法(以下、凝集方法2とする。)などが挙げられる。
【0230】
凝集方法1は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを液相として用いる方法、換言すれば、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを噴霧しない方法である。本明細書では、凝集方法1を、「液相凝固」とも称する。
【0231】
凝集方法1について、具体的に説明する。凝集方法1として、具体的には、(1-i)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックス中に、凝固剤を添加する方法、および(1-ii)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスと凝固剤の溶液とを、混合する方法、(1-iii)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックス中に、凝固剤または凝固剤の溶液を噴霧する方法、などが挙げられる。前記(1-iii)の方法は、凝固剤または凝固剤の溶液を、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の存在下に噴霧する方法ともいえる。凝集方法1では、重合体微粒子(A)、樹脂(B)および凝固剤を含む水性ラテックスが得られる。
【0232】
凝集方法1は、得られた水性ラテックス(重合体微粒子(A)、樹脂(B)および凝固剤を含む水性ラテックス)を加熱する工程をさらに含んでいてもよい。重合体微粒子(A)、樹脂(B)および凝固剤を含む水性ラテックスを加熱する工程を有する場合、得られる凝集体の含水率を低くすることができるという利点、および/または得られる粉粒体中の微粉を減らすことができるという利点、を有する。加熱工程において、重合体微粒子(A)、樹脂(B)および凝固剤を含む水性ラテックスを加熱して得られる水性ラテックスの温度(加熱温度)は、特に限定されない。
【0233】
凝集方法2は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを噴霧する方法、換言すれば、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを液滴として用いる方法である。本明細書では、凝集方法2を、「気相凝固」とも称する。
【0234】
凝集方法2について、具体的に説明する。凝集方法2として、具体的には、(2-i)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤または凝固剤の溶液中に、噴霧する方法、(2-ii)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを噴霧し、かつ凝固剤または凝固剤の溶液を噴霧する方法、などが挙げられる。前記(2-i)の方法は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤の存在下に噴霧する重合体微粒子噴霧工程を含む方法ともいえる。
【0235】
前記(2-ii)の方法について、具体的に説明する。前記(2-ii)の方法は、以下の態様を含み得る:(2-ii-a)噴霧により得られる重合体微粒子(A)および/または樹脂(B)を含む液滴と、噴霧により得られる凝固剤を含む液滴とを接触させる方法;(2-ii-b)噴霧により得られる凝固剤を含む液滴が存在する領域(空間)に、重合体微粒子(A)および樹脂(B)含む水性ラテックスを噴霧する方法;および(2-ii-c)噴霧により得られる重合体微粒子(A)および/または樹脂(B)を含む液滴が存在する領域(空間)に、凝固剤の溶液を噴霧する方法。ここで、凝固剤を含む液滴が存在する領域(空間)は、凝固剤存在下ともいえる。また、重合体微粒子(A)および/または樹脂(B)を含む液滴が存在する領域(空間)は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の存在下ともいえる。それ故、前記(2-ii)の方法は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤の存在下に噴霧する重合体微粒子噴霧工程を含み、かつ、凝固剤または凝固剤を含む溶液を、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の存在下に噴霧する凝固剤噴霧工程、を含む方法ともいえる。
【0236】
第1の製造方法における凝集工程は、凝集方法2、すなわち「気相凝固」により行われることが好ましい。換言すれば、第1の製造方法における凝集工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤の存在下に噴霧する重合体微粒子噴霧工程をさらに含むことが好ましい。当該構成によると、粉粒体の総量に対する、体積平均粒子径1000μm以上の粒体または600μm以上の粒体の割合が少ない粉粒体、を得ることができるという利点を有する。第1の製造方法における凝集工程は、重合体微粒子噴霧工程に加えて、凝固剤または凝固剤を含む溶液を、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の存在下に噴霧する凝固剤噴霧工程をさらに含むことがより好ましい。当該構成によると、粉粒体の総量に対する、体積平均粒子径1000μm以上の粒体または600μm以上の粒体の割合がより少ない粉粒体、を得ることができるという利点を有する。
【0237】
上述した調製工程(a1)および凝集工程(a2)により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を含むスラリーを得ることができる。凝集工程は、スラリーから、得られた凝集体、すなわち重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を回収する回収工程(a3)をさらに含んでいてもよい。
【0238】
回収工程(a3)としては、スラリーの水性溶媒と凝集体とを分離することができる限り、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。回収工程(a3)としては、例えば、スラリーを濾過する方法、スラリーを遠心脱水する方法等が挙げられる。
【0239】
凝集工程の他の態様としては、例えば、以下のような工程を順に、含むものが挙げられる:重合体微粒子(A)のみを含む水性ラテックスを用いて、水性ラテックス中の重合体微粒子(A)を凝集させる凝集工程(b1);得られた重合体微粒子(A)の凝集体を回収する回収工程(b2);および回収された重合体微粒子(A)の凝集体と樹脂(B)とを混合する混合工程(b3)。
【0240】
凝集工程(b1)は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスに代えて、重合体重合体微粒子(A)のみを含む水性ラテックスを用いることを除き、好ましい態様を含み、上述した凝集工程(a2)と同じ態様であってもよい。
【0241】
回収工程(b2)は、凝集体が重合体微粒子(A)および樹脂(B)ではなく、重合体微粒子(A)のみを含むことを除き、好ましい態様を含み、上述した回収工程(a3)と同じ態様であってもよい。
【0242】
混合工程(b3)において、回収された重合体微粒子(A)の凝集体と樹脂(B)とを混合する方法としては、特に限定されない。当該方法としては、例えば、自転公転ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーなど用いた機械的な混合方法などを挙げることができる。
【0243】
(I-3-2.凝集体の含水率)
凝集工程において得られる重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体は、水分を含み得る。凝集体の含水率は、凝集体の総重量(100重量%)に対して、10%~70%が好ましく、20%~60%がより好ましく、30%~60%がより好ましく、30%~50%がさらに好ましく、30%~40%が特に好ましい。凝集体の含水率は、得られた凝集体を、120℃のオーブンにて1時間乾燥させ、乾燥前後の重量を比較することにより、測定できる。
【0244】
(I-3-3.乾燥工程)
乾燥工程は、上述した凝集工程により得られた、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を乾燥させる工程である。第1の製造方法において、乾燥工程では、凝集体を気流乾燥または凍結乾燥する。
【0245】
本明細書において、気流乾燥とは、凝集体を一定の空間中に舞わせながら、乾燥することを意図する。気流乾燥の方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。気流乾燥の一例としては、容器内に凝集体を収容し、当該容器内に所定の温度の気体を送り込むことにより、凝集体を容器内に舞わせながら乾燥する方法が挙げられる。
【0246】
乾燥工程が実施されるときの、雰囲気温度は、特に限定されない。得られる粉粒体が、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性により優れるものとなることから、乾燥工程は、100℃以下で実施することが好ましく、90℃以下で実施することがより好ましく、80℃以下で実施することがより好ましく、70℃以下で実施することがより好ましく、60℃以下で実施することがより好ましく、50℃以下で実施することがより好ましく、40℃以下で実施することがより好ましく、30℃以下で実施することがより好ましく、20℃以下で実施することがより好ましく、10℃以下で実施することがさらに好ましく、0℃以下で実施することが特に好ましい。
【0247】
気流乾燥において、乾燥工程が実施されるときの、雰囲気温度は、凝集体を収容している容器内の温度、および/または、容器内に送り込む気体の温度などを変化させることにより調節できる。
【0248】
気流乾燥において、容器内に送り込む気体としては、特に限定されない。当該気体としては、空気、窒素、窒素と空気との混合物、窒素と酸素との混合物および希ガスなどが挙げられる。
【0249】
凍結乾燥の方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。乾燥工程として、凍結乾燥を採用する場合は、乾燥工程を0℃以下で実施することが容易となる。
【0250】
乾燥工程の時間としては、特に限定されず、凝集体の乾燥の程度によって、適宜設定できる。乾燥時間は、例えば、1分~3時間を挙げることができるが、1分~1時間が好ましく、1分~30分がより好ましく、1分~20分がさらに好ましく、1分~10分が特に好ましい。乾燥工程は、例えば、凝集体(粉粒体)の温度が40℃に達するまでの時間、実施してもよい。
【0251】
本明細書では、従来技術のように、オーブンなどの容器内に、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を静置して乾燥する態様を、「静置乾燥」とも称する。
【0252】
(I-3-4.洗浄工程)
第1の製造方法は、凝集工程と乾燥工程との間に、凝集工程で得られた凝集体を洗浄する工程をさらに含むことが好ましい。凝集体を洗浄することにより、夾雑物等の含有量が少ない粉粒体が得られる。洗浄工程では、凝集体を水で洗浄することがより好ましく、イオン交換水または純水で洗浄することがさらに好ましい。
【0253】
洗浄工程は、凝集体を洗浄する工程であればよく、具体的な方法について特に限定されない。洗浄工程の具体的な方法としては、例えば、凝集体と水とを混合して攪拌機により撹拌する方法、凝集体と水とをニーダーを用いて混練する方法、凝集体と水とを自転公転ミキサーで混合する方法、水を凝集体に噴霧する方法、加圧ろ過機によりケーキ洗浄する方法、などを挙げることができる。ニーダーとしては、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、押出式ニーダー、押出機など、各種利用できる。
【0254】
洗浄の時間は特に限定されず、例えば、1秒間~60分間を挙げることができる。洗浄の時間は、1秒間~45分間であることが好ましく、1秒間~30分間であることがより好ましく、1分間~30分間であることがより好ましく、3分間~30分間であることがさらに好ましく、5分間~30分間であることが特に好ましく、10分間~30分間であることが特に好ましい。
【0255】
洗浄の回数は特に限定されず、例えば、1~10回(サイクル)を挙げることができる。洗浄の回数は、1回~6回(サイクル)であることが好ましく、1回~5回(サイクル)であることがより好ましく、1回~4回(サイクル)であることがさらに好ましく、1回~3回(サイクル)であることが最も好ましい。
【0256】
洗浄水の量は特に限定されず、例えば、凝集体1重量部に対して、0.1重量部~1000重量部であることを挙げることができる。洗浄水の量は、凝集体1重量部に対して、1重量部~1000重量部であることが好ましく、1重量部~500重量部であることがより好ましく、1重量部~200重量部であることがより好ましく、10重量部~200重量部であることがより好ましく、15重量部~200重量部であることがさらに好ましく、20重量部~200重量部であることが特に好ましい。洗浄水の量は、凝集体1重量部に対して、1重量部~10重量部であることも好ましく、2重量部~10重量部であることも好ましく、2~5重量部であることも好ましい。また、ニーダーを用いた凝集体と水との混練により洗浄する場合、洗浄水を少なくできるため、より好ましい。
【0257】
洗浄水の温度も限定されず、例えば、常温のもの、加熱した温水を適宜使用し得る。洗浄効果は温水の方が高いため、加熱した洗浄水を使用することが好ましい。洗浄水の温度としては、例えば、10℃~100℃を挙げることができるが、15℃~100℃であることが好ましく、20℃~100℃であることがより好ましく、40℃~100℃であることがより好ましく、40℃~90℃であることがより好ましく、40℃~85℃であることがさらに好ましく、40℃~80℃であることがよりさらに好ましく、40℃~70℃であることが特に好ましい。
【0258】
洗浄工程において、洗浄した水を除く方法も限定されず、例えば、洗浄水の払い出し、減圧濾過、油水分離、フィルタープレス、遠心分離、ベルトプレス、スクリュープレス、膜分離、圧搾脱水等の方法を挙げることができる。
【0259】
洗浄する対象物としては、凝集体中に含まれる不純物全般を意図し、特に限定されない。例えば、乳化剤(例えば、リン系乳化剤、スルホン酸系乳化剤)由来の夾雑物のほか、凝固剤を使用する場合には凝固剤由来の夾雑物等を挙げることができる。
【0260】
(I-3-5.温度)
重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体および粉粒体は、製造方法を通して、重合体微粒子(A)のグラフト部のガラス転移温度未満の温度環境下で操作する(扱う)ことが好ましい。換言すれば、製造方法を通して、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体および粉粒体が、重合体微粒子(A)のグラフト部のガラス転移温度以上の温度環境下に曝される時間は、少ないほど好ましい。当該構成によると、得られる粉粒体は、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性により優れるものとなる。その結果、得られる粉粒体は、マトリクス樹脂(C)中に重合体微粒子(A)がより均一に分散している樹脂組成物を提供できる。
【0261】
第1の製造方法において、次のような温度を調節することにより、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体および粉粒体が、重合体微粒子(A)のグラフト部のガラス転移温度以上の温度環境下に曝される時間(期間)を短くすることができる:重合体微粒子(A)を含む水性ラテックスの温度、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックス(凝固剤添加前の水性ラテックス)の温度、凝固剤の水溶液の温度、重合体微粒子(A)、樹脂(B)および凝固剤を含む水性ラテックスの温度、加熱工程における加熱温度、乾燥工程における乾燥温度、洗浄工程における洗浄水の温度、などである。
【0262】
重合体微粒子(A)のグラフト部のガラス転移温度未満の温度は、グラフト部の組成により変化し、グラフト部の組成によって、適宜設定される。重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体および粉粒体は、製造方法を通して、90℃未満の環境下で扱われることが好ましく、80℃未満の環境下で扱われることがより好ましく、70℃未満の環境下で扱われることがさらに好ましい。すなわち、上述した各温度は、90℃未満が好ましく、80℃未満がより好ましく、70℃未満がより好ましく、60℃未満がより好ましく、50℃未満がより好ましく、40℃未満がさらに好ましい。
【0263】
〔I-4.樹脂組成物〕
上述した粉粒体(第1の粉粒体)と、マトリクス樹脂(C)とを含有する樹脂組成物もまた、本発明の一実施形態である。「本発明の一実施形態に係る樹脂組成物」を、以下、「本樹脂組成物」と称する場合もある。
【0264】
(I-4-1.マトリクス樹脂(C))
マトリクス樹脂(C)としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との任意の組み合わせであってもよい。
【0265】
マトリクス樹脂(C)における、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、それぞれ、好ましい態様を含み、前記(I-2-2.樹脂(B))の項にて説明した、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の態様と同じであってもよい。
【0266】
従来、熱硬化性樹脂中に、重合体微粒子(A)を一次粒子の状態で分散させることは非常に困難であった。しかし、本発明の一実施形態に係る粉粒体は、マトリクス樹脂(C)として熱硬化性樹脂を使用する場合であっても、マトリクス樹脂(C)中に重合体微粒子(A)がより均一に分散している樹脂組成物を提供できる、という利点を有する。マトリクス樹脂(C)は、熱硬化性樹脂であってもよい。第1の粉粒体は、熱硬化性樹脂用の粉粒体であってもよい。
【0267】
(I-4-2.マトリクス樹脂(C)の物性)
マトリクス樹脂(C)の性状は特に限定されない。マトリクス樹脂(C)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有することが好ましい。マトリクス樹脂(C)の粘度は、25℃において、50,000mPa・s以下であることがより好ましく、30,000mPa・s以下であることがさらに好ましく、15,000mPa・s以下であることが特に好ましい。前記構成によると、マトリクス樹脂(C)は流動性に優れるという利点を有する。25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有するマトリクス樹脂(C)は、液体であるともいえる。
【0268】
マトリクス樹脂(C)の流動性が大きくなるほど、換言すれば粘度が小さくなるほど、マトリクス樹脂(C)中に、重合体微粒子(A)を一次粒子の状態で分散させることが困難となる。従来、25℃において1,000,000mPa・s以下の粘度を有するマトリクス樹脂(C)中に、重合体微粒子(A)を一次粒子の状態で分散させることは非常に困難であった。しかし、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した構成を有する重合体微粒子(A)が、25℃において1,000,000mPa・s以下の粘度を有するマトリクス樹脂(C)中で良好に分散しているという利点を有する。
【0269】
またマトリクス樹脂(C)の粘度は、重合体微粒子(A)中にマトリクス樹脂(C)が入り込むことにより重合体微粒子(A)同士の融着を防ぐことができることから、25℃において、100mPa・s以上であることがより好ましく、500mPa・s以上であることがさらに好ましく、1000mPa・s以上であることがよりさらに好ましく、1500mPa・s以上であることが特に好ましい。
【0270】
マトリクス樹脂(C)の粘度は、25℃において、100mPa・s~750,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~700,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~350,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~300,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~50,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~30,000mPa・sがさらに好ましく、100mPa・s~15,000mPa・sが特に好ましい。
【0271】
マトリクス樹脂(C)は、1,000,000mPa・sより大きい粘度を有していてもよい。マトリクス樹脂(C)は、半固体(半液体)であってもよく、固体であってもよい。マトリクス樹脂(C)が1,000,000mPa・sより大きい粘度を有する場合、得られる粉粒体を含む樹脂組成物が、べたつきが少なく取り扱いやすいという利点を有する。
【0272】
マトリクス樹脂(C)は、示差熱走査熱量測定(DSC)のサーモグラムにて25℃以下の吸熱ピークを有することが好ましく、0℃以下の吸熱ピークを有することがより好ましい。前記構成によると、マトリクス樹脂(C)は流動性に優れるという利点を有する。
【0273】
(I-4-3.粉粒体とマトリクス樹脂(C)との配合比率等)
第1の粉粒体とマトリクス樹脂(C)との配合比率は、粉粒体とマトリクス樹脂(C)の合計を100重量%とした場合に、通常、粉粒体が0.5~50重量%、マトリクス樹脂(C)が50~99.5重量%であることが好ましく、粉粒体が1~50重量%、マトリクス樹脂(C)が50~99重量%であることがより好ましく、粉粒体が1~45重量%、マトリクス樹脂(C)が55~99重量%であることがより好ましく、粉粒体が1~40重量%、マトリクス樹脂(C)が60~99重量%であることがより好ましく、粉粒体が1~35重量%、マトリクス樹脂(C)が65~99重量%であることがより好ましく、粉粒体が1~30重量%、マトリクス樹脂(C)が70~99重量%であることがより好ましく、粉粒体が1~25重量%、マトリクス樹脂(C)が75~99重量%であることがより好ましく、粉粒体が1.5~25重量%、マトリクス樹脂(C)が75~98.5重量%であることがより好ましく、粉粒体が1.5~20重量%、マトリクス樹脂(C)が80~98.5重量%であることがさらに好ましく、粉粒体が2.5~20重量%、マトリクス樹脂(C)が80~97.5重量%であることが特に好ましい。
【0274】
第1の粉粒体とマトリクス樹脂(C)との配合比率は、得られる樹脂組成物中の重合体微粒子(A)とマトリクス樹脂(C)との含有量の比率を所望の値とすることを目的として、(a)粉粒体に含まれている重合体微粒子(A)以外の成分の含有量および含水率、並びに(b)粉粒体とマトリクス樹脂(C)との混合方法などに応じて、適宜設定され得る。
【0275】
樹脂組成物中の重合体微粒子(A)とマトリクス樹脂(C)との含有量の比率は、重合体微粒子(A)とマトリクス樹脂(C)との合計を100重量%とした場合に、通常、重合体微粒子(A)が0.5~50重量%、マトリクス樹脂(C)が50~99.5重量%であることが好ましく、重合体微粒子(A)が1~50重量%、マトリクス樹脂(C)が50~99重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が1~45重量%、マトリクス樹脂(C)が55~99重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が1~40重量%、マトリクス樹脂(C)が60~99重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が1~35重量%、マトリクス樹脂(C)が65~99重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が1~30重量%、マトリクス樹脂(C)が70~99重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が1~25重量%、マトリクス樹脂(C)が75~99重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が1.5~25重量%、マトリクス樹脂(C)が75~98.5重量%であることがより好ましく、重合体微粒子(A)が1.5~20重量%、マトリクス樹脂(C)が80~98.5重量%であることがさらに好ましく、重合体微粒子(A)が2.5~20重量%、マトリクス樹脂(C)が80~97.5重量%であることが特に好ましい。
【0276】
マトリクス樹脂(C)が熱硬化性樹脂である場合、マトリクス樹脂(C)の状態は、粉粒体との混合時に流動するのであれば特に限定されず、室温で固体であってもよいが、作業性の点から液状が好ましい。
【0277】
粉粒体とマトリクス樹脂(C)とを混合するときの温度は、マトリクス樹脂(C)が流動し得る温度に設定されることが一般的である。当該温度について、マトリクス樹脂(C)が流動し得る温度で粉粒体中の樹脂(B)が流動しうるなら、樹脂(B)とマトリクス樹脂(C)とを均一に混合することが容易になる。
【0278】
本樹脂組成物がマトリクス樹脂(C)として熱硬化性樹脂を含む場合、樹脂組成物を硬化させることにより硬化物を得ることができる。本樹脂組成物がマトリクス樹脂(C)として熱可塑性樹脂を含む場合、樹脂組成物を成形することにより成形体を得ることができる。本樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、および本樹脂組成物を成形してなる成形体もまた、それぞれ本発明の一実施形態である。
【0279】
本樹脂組成物は、マトリクス樹脂(C)以外の、公知の熱硬化性樹脂をさらに含んでいてもよいし、公知の熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0280】
(I-4-4.有機溶剤)
本樹脂組成物は、有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。上述した粉粒体が実質的に有機溶剤を含まない場合、有機溶剤を実質的に含まない樹脂組成物を得ることができる。「有機溶剤を実質的に含まない」とは、樹脂組成物中の有機溶剤の量が100ppm以下であることを意図する。
【0281】
本樹脂組成物に含まれる有機溶剤の量(含溶剤量とも称する。)は100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。本樹脂組成物に含まれる有機溶剤の量は、本樹脂組成物に含まれる揮発成分(但し水は除く)の量ともいえる。本樹脂組成物に含まれる有機溶剤(揮発成分)の量は、例えば、所定量の樹脂組成物を熱風乾燥機などで加熱し、加熱前後の樹脂組成物の重量を測定することにより、減少した重量分として求めることができる。また、本樹脂組成物に含まれる有機溶剤(揮発成分)の量は、ガスクロマトグラフィーによって求めることもできる。また、本樹脂組成物および樹脂組成物に含まれる粉粒体の製造において、有機溶剤を使用していない場合、得られる樹脂組成物に含まれる有機溶剤の量は、0ppmとみなすことができる。
【0282】
本樹脂組成物に実質的に含まれない有機溶剤としては、(a)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、(b)アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、(c)エタノール、(イソ)プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、(d)テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、(e)ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、並びに(f)塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0283】
(I-4-5.その他の任意成分)
本樹脂組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の、その他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、硬化剤、顔料および染料などの着色剤、体質顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、上述した酸化防止剤、熱安定化剤(ゲル化防止剤)、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、粘度調整剤、チクソトロピー性付与剤、低収縮剤、無機質充填剤、有機質充填剤、熱可塑性樹脂、乾燥剤、分散剤、熱伝導性改良剤、水結合剤、タレ止め剤、色別れ防止剤、沈降防止剤、塗膜消耗調整剤、表面調整剤、一塩基有機酸、樟脳、ひまし油などが挙げられる。
【0284】
(I-4-6.樹脂組成物の製造方法)
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、〔I-2.粉粒体〕の項に記載の粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを混合する工程を含む。本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、〔I-3.粉粒体の製造方法〕の項に記載の粉粒体の製造方法により得られた粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを混合する工程を含むものであってもよい。これらの構成によると、マトリクス樹脂(C)で重合体微粒子(A)が均一に分散している樹脂組成物を得ることができる。
【0285】
樹脂組成物の製造方法に関して、各種成分および具体的な工程については特に限定されず、上述の説明を適宜援用する。
【0286】
前記粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを混合するための具体的な方法は、特に限定されず、例えば、自転・公転ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーなどを用いる方法が挙げられる。粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを混合する方法は、例えば、自転・公転ミキサーを用いて2000rpmにて40分間混合する方法が好ましい。
【0287】
さらに、本樹脂組成物の製造方法には、得られた樹脂組成物を、洗浄する工程を有していてもよい。樹脂組成物を洗浄することにより、より夾雑物が少ない樹脂組成物を製造することができる。本洗浄工程については、上述した(3-3.洗浄工程)の欄の「粉粒体」を「樹脂組成物」と置き換えて援用する。
【0288】
さらに、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、その他の工程を備えていても良い。上述した工程以外に、得られた樹脂組成物を加熱し、脱揮・乾燥させる工程を備えていてもよい。かかる工程も種々の方法を利用でき、特に限定されない。脱揮・乾燥させる工程としては、例えば、加熱および真空脱揮等が挙げられる。
【0289】
〔I-5.硬化物〕
〔I-4.樹脂組成物〕の項で説明した本樹脂組成物において、前記マトリクス樹脂(C)が熱硬化性樹脂であるものを硬化させて得られる硬化物もまた、本発明の一実施形態である。「本発明の一実施形態に係る硬化物」を、以下、「本硬化物」ともいう。
【0290】
本硬化物は、前記構成を有するため、(a)表面美麗であり、(b)高剛性および高弾性率を有し、かつ(c)靱性および接着性に優れるものである。
【0291】
〔I-6.その他の用途〕
本発明の一実施形態に係る粉粒体(第1の粉粒体)または樹脂組成物は、様々な用途に使用することができ、それらの用途は特に限定されない。第1の粉粒体または樹脂組成物は、それぞれ、例えば、金属張積層板、接着剤、コーティング材、フィルム、強化繊維のバインダー、レジンコンクリート、複合材料、3Dプリンターの造形材料、封止剤、電子基板、インキバインダー、木材チップバインダー、ゴムチップ用バインダー、フォームチップバインダー、鋳物用バインダー、床材用およびセラミック用の岩盤固結材、ウレタンフォームなどの用途に好ましく用いられる。ウレタンフォームとしては、自動車シート、自動車内装部品、吸音材、制振材、ショックアブソーバー(衝撃吸収材)、断熱材、工事用床材クッションなどが挙げられる。
【0292】
第1の粉粒体または樹脂組成物は、上述した用途の中でも、接着剤、コーティング材、フィルム、強化繊維のバインダー、複合材料、3Dプリンターの造形材料、封止剤、および電子基板として用いられることがより好ましい。
【0293】
(I-6-1.金属張積層板)
本発明の一実施形態に係る金属張積層板は、〔I-4.樹脂組成物〕の項で説明した本樹脂組成物を用いてなり、前記マトリクス樹脂(C)が熱硬化性樹脂であるものであればよい。本発明の一実施形態に係る金属張積層板を、以下、単に本金属張積層板と称する場合もある。
【0294】
本金属張積層板は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
【0295】
本金属張積層板の用途としては、特に限定されないが、プリント回路、プリント配線、プリント回路板、プリント回路実装品、プリント配線板およびプリント板などが挙げられる。
【0296】
(I-6-2.接着剤)
本発明の一実施形態に係る接着剤は、上述した第1の粉粒体または樹脂組成物を含むものである。本発明の一実施形態に係る接着剤は、前記構成を有するため、接着性に優れるものである。
【0297】
本発明の一実施形態に係る接着剤を、単に本接着剤ともいう。
【0298】
本接着剤は、自動車内装材用、一般木工用、家具用、内装用、壁材用および食品包装用などの種々の用途に好適に用いられ得る。
【0299】
本接着剤は、冷間圧延鋼、アルミニウム、ファイバーグラスで強化されたポリエステル(FRP)、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化物のパネル、炭素繊維で強化された熱可塑性樹脂シートのパネル、シートモウルディングコンパウンド(SMC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、TPO、木材およびガラス、など、種々の被着体へ良好な接着性を示す。
【0300】
本接着剤は低温(-20℃程度)から常温のみならず、高温(80℃程度)においても接着性能および柔軟性に優れる。よって本接着剤は構造用接着剤としてより好適に用いることができる。
【0301】
本接着剤を用いた構造用接着剤は、例えば、自動車および車両(新幹線、電車など)、土木、建築、建材、木工、電気、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野などの構造部材の接着剤として使用することができる。特に、自動車関連の用途としては、天井、ドア、シートなどの内装材の接着、および、ランプなどの自動車照明灯具、サイドモールなどの外装材の接着などを挙げることができる。
【0302】
本接着剤は、第1の粉粒体または樹脂組成物を用いて製造することができる。本接着剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0303】
(I-6-3.コーティング材)
本発明の一実施形態に係るコーティング材は、上述した第1の粉粒体または樹脂組成物を含むものである。本発明の一実施形態に係るコーティング材は、前記構成を有するため、耐荷重性および耐摩耗性に優れた塗膜を提供できる。
【0304】
本発明の一実施形態に係るコーティング材を、単に本コーティング材ともいう。
【0305】
本コーティング材は、例えば、有機溶剤と第1の粉粒体とを含むものであり、有機溶剤中に重合体微粒子(A)が一次粒子の状態で分散しているものである。本コーティング材は、例えば、有機溶剤と本樹脂組成物とを含むものであり、有機溶剤中に重合体微粒子(A)が一次粒子の状態で分散しているものである。従来、有機溶剤中に、重合体微粒子(A)を一次粒子の状態で分散させることは非常に困難であった。しかし、第1の粉粒体は、有機溶剤中に重合体微粒子(A)がより均一に分散しているコーティング材を提供できる、という利点を有する。第1の粉粒体は、コーティング材用の粉粒体であってもよい。
【0306】
本コーティング材を、例えば床または廊下に施工する場合には、一般に実施されている施工法を適用することができる。たとえば、素地調整した下地にプライマーを塗布後、施工条件に応じて、コテ、ローラー、レーキ、スプレーガンなどを用いて本コーティング材を均一に塗工する。本コーティング材を塗工後、硬化が進み、性能の良い舗装膜が得られる。本コーティング材を硬化して得た塗膜は、耐荷重性および耐摩耗性に優れた塗膜となり得る。
【0307】
本コーティング材の施工方法に依存して、当該コーティング材に用いられる樹脂組成物の粘度を調整してもよい。例えば、本コーティング材の施工にコテまたはレーキを使用する場合、当該コーティング材に用いられる樹脂組成物の粘度は、一般的には500~9,000cps/25℃程度に調整され得る。本コーティング材の施工にローラーまたはスプレーを使用する場合、当該コーティング材に用いられる樹脂組成物の粘度は、一般的には100~3,000cps/25℃程度に調整され得る。
【0308】
本コーティング材が塗付される下地(換言すれば、床または廊下の材質)としては特に限定は無い。前記下地としては、具体的には、(a)コンクリート壁、コンクリート板、コンクリートブロック、CMU(Concrete Masonry Unit)、モルタル板、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)板、石膏板(Dens Glass Gold:Georgia Pacific社製など)、スレート板などの無機系下地、(b)木質系下地(木材、合板、OSB(Oriented Strand Board)など)、アスファルト、変性ビチューメンの防水シート、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)の防水シート、TPOの防水シート、プラスチック、FRP、ウレタンフォーム断熱材などの有機系下地、および(c)金属パネルなどの金属系下地、などが挙げられる。
【0309】
本コーティング材を、金属の下地または多孔質下地に塗布する場合について説明する。前記塗布の後、コーティング材を硬化して得られる積層体は、前記下地への防食性に優れるものである。また、前記塗布の後、コーティング材が硬化されて得られる塗膜は、下地に対して、優れた耐クラック性および耐荷重性を付与し得る。そのため、本コーティング材を、金属の下地または多孔質下地に塗布する態様は特に好ましい態様である。
【0310】
本コーティング材の塗付方法としては特に限定は無いが、コテ、レーキ、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアレススプレーなどの公知の塗布方法により行うことができる。
【0311】
本コーティング材の用途としては、特に限定されないが、自動車用、電気機器用、事務機用、建材用、木材用、塗り床用、舗装用、重防食用、コンクリート防食用、屋上および屋根の防水用、屋上および屋根の耐食用、地下防水用の塗膜防水材用、自動車補修用、缶塗装用、上塗り用、中塗り用、下塗り用、プライマー用、電着塗料用、高耐候塗料用、無黄変塗料用、などが挙げられる。塗り床用コーティング材、および舗装用コーティング材などに使用する場合、工場、実験室、倉庫、およびクリーンルームなどに使用することができる。
【0312】
本コーティング材は、第1の粉粒体または樹脂組成物を用いて製造することができる。本コーティング材の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0313】
(I-6-4.フィルム)
本発明の一実施形態に係るフィルムは、上述した第1の粉粒体または樹脂組成物を含むものである。本発明の一実施形態に係るフィルムは、前記構成を有するため、耐荷重性および耐摩耗性に優れるものである。
【0314】
本発明の一実施形態に係るフィルムを、単に本フィルムともいう。
【0315】
本フィルムは、例えば、有機溶剤と第1の粉粒体とを含むドープ液から、有機溶剤を揮発させて得られるものである。本フィルムは、例えば、有機溶剤と本樹脂組成物とを含むドープ液から、有機溶剤を揮発させて得られるものである。これらのドープ液では、有機溶剤中に重合体微粒子(A)が一次粒子の状態で分散している。従来、有機溶剤中に、重合体微粒子(A)を一次粒子の状態で分散させることは非常に困難であった。しかし、第1の粉粒体は、有機溶剤中に重合体微粒子(A)がより均一に分散しているドープ液を提供できるため、重合体微粒子(A)がより均一に分散しているフィルムを提供できる、という利点を有する。第1の粉粒体は、フィルム用の粉粒体であってもよい。
【0316】
本フィルムの用途としては、特に限定されないが、偏光子保護フィルムなどの光学フィルム、加飾フィルム、導電性フィルム、電磁波吸収シート、および反射防止フィルムなどに使用することができる。
【0317】
本フィルムは、第1の粉粒体または樹脂組成物を用いて製造することができる。本フィルムの製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0318】
(I-6-5.複合材料)
本発明の一実施形態に係る複合材料は、上述した第1の粉粒体または樹脂組成物を、強化繊維のバインダーとして含むものである。本発明の一実施形態に係る複合材料は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
【0319】
本発明の一実施形態に係る複合材料を、単に本複合材料ともいう。
【0320】
本複合材料は、強化繊維を含み得る。前記強化繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、ガラス長繊維、炭素繊維、天然繊維、金属繊維、熱可塑性樹脂繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン強化繊維などが挙げられる。これら強化繊維の中でも、特に、ガラス繊維および炭素繊維が好ましい。
【0321】
本複合材料の製造方法(成形方法)としては、特に限定されないが、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法、フィラメントワインド成形法、ハンドレイアップ成形法、真空バッグ成形法、樹脂注入成形(RTM)法、バキュームアシスト樹脂注入成形(VARTM)法、引き抜き成形法、射出成型法、シートワインディング成形法、スプレーアップ法、BMC(Bulk Molding Compound)法、SMC(Sheet MoldingCompound)法、などが挙げられる。
【0322】
特に、強化繊維として炭素繊維を用いた場合、本複合材料の製造方法としては、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法、フィラメントワインド成形法、ハンドレイアップ成形法、真空バッグ成形法、樹脂注入成形(RTM)法、バキュームアシスト樹脂注入成形(VARTM)法、などを使用することが好ましい。
【0323】
本複合材料の用途としては、特に限定されないが、航空機、宇宙機、自動車、自転車、船舶、兵器、風車、スポーツ用品、容器、建築材料、防水材、プリント基板、電気絶縁材料、などが挙げられる。
【0324】
本複合材料は、第1の粉粒体または樹脂組成物を用いて、製造することができる。本複合材料に関する、強化繊維、製造方法(成形方法)、製造条件(成形条件)、配合剤、用途、などのより詳細内容については、米国公開特許2006/0173128号公報、米国公開特許2012/0245286号公報、特表2002-530445号公報(国際公開WO2000/029459号公報)、特開昭55-157620号公報(米国特許第4251428号公報)、特表2013-504007号公報(国際公開WO2011/028271号公報)、特開2007-125889号公報(米国公開特許2007/0098997号公報)、特開2003-220661号公報(米国公開特許2003/0134085号公報)に記載された内容を挙げることができる。
【0325】
(I-6-6.3Dプリンターの造形材料)
本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料は、上述した第1の粉粒体または樹脂組成物を含むものである。本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
【0326】
本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料を、単に本造形材料ともいう。
【0327】
本造形材料の用途としては、特に限定されないが、実際に製品を作る前のデザインの検証および機能検証などを目的とした試作品、航空機の部品、建築部材および医療機器の部品などが挙げられる。
【0328】
本造形材料は、第1の粉粒体または樹脂組成物を用いて製造することができる。本造形材料の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0329】
(I-6-7.封止剤)
本発明の一実施形態に係る封止剤は、上述した第1の粉粒体または樹脂組成物を用いてなるものである。本発明の一実施形態に係る封止剤は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
【0330】
本発明の一実施形態に係る封止剤を、単に本封止剤ともいう。
【0331】
本封止剤の用途としては、特に限定されないが、半導体などの各種電気機器およびパワ-デバイスなどの封止などが挙げられる。
【0332】
本封止剤は、第1の粉粒体または樹脂組成物を用いて製造することができる。本封止剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0333】
[II.第2実施形態]
本発明の第1実施形態と同様に、第2実施形態もまた、前記特許文献1~3のような従来技術における、樹脂中の重合体微粒子の分散性の問題点に鑑みなされたものである。すなわち、本発明の第2実施形態の目的は、第1実施形態と同様に、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れる、新規の粉粒体および当該粉粒体の製造方法を提供することである。
【0334】
本発明者らは、前記課題を解決するため別の観点から鋭意検討した。その結果、本発明者らは、重合体微粒子の水性ラテックスと樹脂の水性ラテックスとを、特定の体積平均粒子径を有する液滴を特定量含む混合液が得られるように混合することにより、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れる粉粒体を提供できることを見出し、本発明の別の一実施形態(第2実施形態)に係る発明を完成させるに至った。
【0335】
すなわち本発明の別の一実施形態に係る粉粒体の製造方法は、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)と、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)と、を混合する混合工程と、前記混合工程にて得られた混合液から前記重合体微粒子(A)および前記樹脂(B)を含む粉粒体を調製する調製工程と、を含み、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含み、前記水性ラテックス(B)における液滴の体積平均粒子径をx(μm)、当該体積平均粒子径の標準偏差をσとしたとき、前記混合液は、当該混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%~14.0重量%含む。
【0336】
また、本発明の別の一実施形態に係る粉粒体は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体であって、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含み、前記粉粒体とマトリクス樹脂(C)とを混合して得られる樹脂組成物について、前記樹脂組成物を下記の攪拌条件で攪拌するとき、撹拌開始から、分散性が良好な状態となるまでの撹拌時間が、80分以下である:ここで、前記攪拌条件は、攪拌装置として羽根径が32mmであるディスパーを使用し、回転数が3000rpmである条件であり;ここで、前記「分散性が良好な状態」とは、前記樹脂組成物をグラインドメーター上に載せ、金属スクレーパーでゲージ上の前記樹脂組成物をかき取り、分散状態を目視で確認したとき、スクレーパーの運動で生じた平均粒径10μm以上の粒状痕が、3mm幅の帯の中に5~10個の点が発生した位置が0μmになる状態、である。
【0337】
本発明の別の一実施形態によれば、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れる粉粒体を提供できる。
【0338】
本発明の別の一実施形態(第2実施形態)について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の別の一実施形態(第2実施形態)の各態様に関して、以下に詳説した態様以外は、適宜、第1実施形態の記載を援用する。
【0339】
〔II-1.粉粒体の製造方法〕
本発明の別の一実施形態に係る粉粒体の製造法は、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)と、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)と、を混合する混合工程と、前記混合工程にて得られた混合液から前記重合体微粒子(A)および前記樹脂(B)を含む粉粒体を調製する調製工程と、を含む。前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む。前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含む。前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含む。前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体である。前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含む。前記水性ラテックス(B)における液滴の体積平均粒子径をx(μm)、当該体積平均粒子径の標準偏差をσとしたとき、前記混合液は、当該混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%~14.0重量%含む。
【0340】
「本発明の別の一実施形態(第2実施形態)に係る粉粒体の製造方法」を、以下「第2の製造方法」と称する場合もある。第2の製造方法により得られる粉粒体は、後述するマトリクス樹脂(C)と混合されると樹脂組成物となる。
【0341】
第2の製造方法は、前記構成を有するため、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂への分散性に優れるという粉粒体を提供できる、という利点を有する。第2の製造方法が前記構成を有するため、第2の製造方法により得られる粉粒体は、当該粉粒体と後述するマトリクス樹脂(C)とを混合することにより、マトリクス樹脂(C)中に重合体微粒子(A)が均一に分散している樹脂組成物を提供できる、という利点を有する。
【0342】
(II-1-1.重合体微粒子(A))
第2実施形態の重合体微粒子(A)は、第1実施形態の重合体微粒子(A)と同じであってもよい。例えば、第2実施形態の重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む。
【0343】
(II-1-1-1.弾性体)
(弾性体の体積平均粒子径)
第2実施形態において、弾性体の体積平均粒子径は、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.09μm~1.00μmがより好ましく、0.09μm~0.80μmがより好ましく、0.09μm~0.50μmがより好ましく、0.09μm~0.23μmがさらに好ましく、0.10μm~0.23μmが特に好ましい。弾性体の体積平均粒子径が(a)0.03μm以上である場合、所望の体積平均粒子径を有する弾性体を安定的に得ることができ、(b)50.00μm以下である場合、得られる硬化物または成形体の耐熱性および耐衝撃性が良好となる。
【0344】
(重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv))
第2実施形態において、重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)は、所望の粘度を有し、かつ高度に安定した樹脂組成物を得ることができることから、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.09μm~1.00μmがより好ましく、0.09μm~0.80μmがより好ましく、0.09μm~0.50μmがより好ましく、0.09μm~0.23μmがさらに好ましく、0.10μm~0.23μmが特に好ましい。また、重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)が前記範囲内である場合、マトリクス樹脂(C)における重合体微粒子(A)の分散性が良好となるという利点も有する。また、重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)が大きいほど、重合体微粒子(A)の凝集力は小さくなる。
【0345】
(II-1-2.混合工程)
混合工程では、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)と、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)と、を混合する。これにより、混合工程では、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液を得ることができる。混合工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液を調製する工程ともいえる。
【0346】
水性ラテックス(A)中において、重合体微粒子(A)は、例えば乳化剤等の作用によって、1つ以上の重合体微粒子(A)を含む液滴(以下、液滴(A)とも称する。)として存在する。水性ラテックス(B)中において、樹脂(B)は、例えば乳化剤等の作用によって、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴(以下、液滴(B)とも称する。)として存在する。それ故に、混合工程は、1つ以上の重合体微粒子(A)を含む液滴と、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴とを混合する工程ともいえる。混合工程で得られる混合液は、混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%~14.0重量%含む。当該構成について、以下に説明する。
【0347】
本発明者は、上述した課題に対する鋭意検討の過程で、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に優れる粉粒体を得るためには、前記混合液において、液滴(A)と液滴(B)とが一体化することが重要である、との知見を独自に得た。液滴(A)と液滴(B)との一体化により液滴(B)は消失する。そのため、混合液において、液滴(B)の添加量に対する液滴(B)に相当する体積平均粒子径を有する液滴の含有量が少ないほど、当該混合液中で液滴(A)と液滴(B)とが一体化していることが想定される。液滴(B)の添加量とは、混合に使用した水性ラテックス(B)中の液滴(B)の含有量ともいえる。すなわち、混合液において、混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴の含有量が少ないほど、当該混合液中で液滴(A)と液滴(B)とが一体化していることが想定される。
【0348】
混合液は、混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を、下限値としては0.0重量%以上含むことが好ましい。混合液は、混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を、上限値としては、13.5重量%以下含むことが好ましく、13.0重量%以下含むことがより好ましく、12.5重量%以下含むことがより好ましく、12.0重量%以下含むことがより好ましく、11.5重量%以下含むことがより好ましく、11.0重量%以下含むことがより好ましく、10.5重量%以下含むことがより好ましく、10.0重量%以下含むことがより好ましく、9.5重量%以下含むことがより好ましく、9.0重量%以下含むことがより好ましく、8.5重量%以下含むことがより好ましく、8.0重量%以下含むことがより好ましく、7.5重量%以下含むことがより好ましく、7.0重量%以下含むことがより好ましく、6.5重量%以下含むことがより好ましく、6.0重量%以下含むことがより好ましく、5.5重量%以下含むことがより好ましく、5.0重量%以下含むことが特に好ましい。なお、混合液が、混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%以上含む、とは、混合液が当該液滴を含まないか、または、混合液が当該液滴を0.0重量%超含む、ことを意味する。従って、混合工程で得られる混合液は、混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を含まないか、当該液滴を0.0重量%超14.0重量%以下含む、ともいえる。
【0349】
液滴(A)と液滴(B)とが一体化する態様としては、特に限定されない。液滴(A)と液滴(B)とが一体化する態様としては、例えば、液滴(B)が液滴(B)よりも小さい幾つかの液滴に分散して、換言すれば液滴(B)が微細化して、それら分散した各々の液滴が液滴(A)に取り込まれる態様(以下、態様Aとも称する。)が考えられる。態様Aでは、液滴(B)が液滴(B)よりも小さい幾つかの液滴に分散し得る程度に、液滴(B)の安定性を調整することにより、(i)液滴(A)と液滴(B)との一体化、および(ii)液滴(B)の分散および微細化、などを促進できると推測される。しかしながら、本発明の別の一実施形態は、かかる推測および態様Aに限定されない。
【0350】
第2の製造方法では、例えば、以下の(a)~(c)等を調製することにより、前記混合液における、(i)液滴(A)と液滴(B)との一体化、および(ii)液滴(B)の分散および微細化、などを促進させることができる:(a)重合体微粒子(A)の体積平均粒子径;(b)重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)中における液滴(A)の安定性;および(c)樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)中における液滴(B)の安定性。
【0351】
重合体微粒子(A)の体積平均粒子径の態様としては、好ましい態様を含み、前記(重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv))の項に記載の態様を援用できる。また、重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)が小さいほど、重合体微粒子(A)の体積に対する表面積が大きくなるため、液滴(A)と液滴(B)との一体化、例えば液滴(B)の液滴(A)への移行が増大し得る。
【0352】
混合工程は、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)を調製する、水性ラテックス(A)調製工程を有していてもよい。水性ラテックス(A)調製工程は、重合体微粒子(A)を調製する工程ともいえる。また、水性ラテックス(A)調製工程は、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)中における液滴(A)の安定性を調整する工程ともいえる。
【0353】
水性ラテックス(A)調製工程の具体的な操作としては、特に限定されない。例えば、前記(2-1-5.重合体微粒子(A)の製造方法)の項に記載のように、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により重合体微粒子(A)を製造することにより、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)を調製することができる。重合体微粒子(A)の製造において、例えば、乳化剤の種類および使用量(配合量)を調整することにより、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)中における液滴(A)の体積平均粒子径を調整することができる。さらに、重合体微粒子(A)の製造において、例えば、(i)乳化剤の種類および使用量(配合量)、並びに(ii)液滴(A)の体積平均粒子径、などを調整することにより、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)中における液滴(A)の安定性を調整することができる。
【0354】
混合工程は、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)を調製する、水性ラテックス(B)調製工程を有していてもよい。水性ラテックス(B)調製工程は、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)中における液滴(B)の安定性を調整する工程ともいえる。
【0355】
水性ラテックス(B)調製工程の具体的な操作としては、特に限定されず、例えば、水と樹脂(B)と乳化剤とを混合し、撹拌することが挙げられる。水性ラテックス(B)調製工程において、乳化剤の種類および使用量(配合量)、並びに、撹拌における撹拌速度および撹拌時間などを調整することにより、得られる水性ラテックス(B)中における液滴(B)の体積平均粒子径を調整することができる。さらに、水性ラテックス(B)調製工程において、(i)乳化剤の種類および使用量(配合量)、(ii)撹拌における撹拌速度および撹拌時間、並びに(iii)液滴(B)の体積平均粒子径、などを調整することにより、得られる水性ラテックス(B)中における液滴(B)の安定性を調整することができる。
【0356】
水性ラテックス(B)調製工程における乳化剤の使用量としては、特に限定されない。水性ラテックス(B)調製工程における乳化剤の使用量は、樹脂(B)100重量部に対して、1.0重量部~30.0重量部が好ましく、1.0重量部~30.0重量部がより好ましく、1.5重量部~30.0重量部がより好ましく、2.0重量部~29.0重量部がより好ましく、2.5重量部~28.0重量部がより好ましく、3.0重量部~27.5重量部がより好ましく、3.5重量部~27.0重量部がより好ましく、4.0重量部~26.5重量部がより好ましく、4.5重量部~26.0重量部がより好ましく、5.0重量部~25.5重量部がより好ましく、5.5重量部~25.0重量部がより好ましく、6.0重量部~24.5重量部がさらに好ましく、6.5重量部~24.0重量部が特に好ましい。
【0357】
乳化剤としては特に限定されず、例えば、(a)以下に例示するような酸類、当該酸類のアルカリ金属塩、または当該酸類のアンモニウム塩などのアニオン性乳化剤、(b)非イオン性乳化剤、(c)ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などが挙げられる。前記酸類としては、(a1)アルキルもしくはアリールスルホン酸、またはアルキルもしくはアリールエーテルスルホン酸、(a2)アルキルもしくはアリール硫酸、またはアルキルもしくはアリールエーテル硫酸、(a3)アルキルもしくはアリール置換リン酸、またはアルキルまたはアリールエーテル置換リン酸、(a4)N-アルキルもしくはアリールザルコシン酸、(a5)アルキルもしくはアリールカルボン酸、またはアルキルもしくはアリールエーテルカルボン酸、などが挙げられる。乳化剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸と水酸化ナトリウムとを組み合わせて使用することにより、生成されたポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムを乳化剤として使用してもよい。
【0358】
水性ラテックス(B)調製工程における撹拌速度としては特に限定されない。撹拌速度としては、1000rpm~50000rpmが好ましく、
2000rpm~45000rpmがより好ましく、3000rpm~40000rpmがより好ましく、4000rpm~35000rpmがより好ましく、5000rpm~30000rpmがより好ましく、6000rpm~25000rpmがより好ましく、7000rpm~20000rpmがさらに好ましく、8000rpm~12000rpmが特に好ましい。
【0359】
水性ラテックス(B)調製工程における撹拌時間としては特に限定されない。撹拌時間としては、1分~10分が好ましく、2分~9分がより好ましく、3分~7分がさらに好ましく、4分~6分が特に好ましい。
【0360】
(II-1-3.調製工程)
調製工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得る工程ともいえる。
調製工程において、粉粒体を得るための具体的な工程(操作)としては、特に限定されない。調製工程は、さらに、混合液から重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を調製する凝集工程を有していてもよい。
【0361】
凝集工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を得ることができる限り、特に限定されない。混合液中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を共に凝集させる方法は、特に限定されない。当該方法としては、例えば、凝固剤を用いる方法、溶媒を用いる方法、水性ラテックスを噴霧する方法などの公知の方法が挙げられる。ここで、混合液中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を共に凝集させて得られる、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体と水性溶媒とを含む混合物を、スラリーとも称する。
【0362】
耐ブロッキング性が良好となるため、また重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性が優れるため、混合液中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝集は、ブロッキング防止剤の存在下で行われることが好ましい。
【0363】
調製工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体(例えば凝集工程にて得られた凝集体)を、スラリーから回収する回収工程を有していてもよい。
【0364】
回収工程としては、スラリーの水性溶媒と凝集体とを分離することができる限り、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。回収工程としては、例えば、スラリーを濾過する方法、スラリーを遠心脱水する方法等が挙げられる。
【0365】
調製工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体(例えば、凝集工程または回収工程にて得られた凝集体)を洗浄する洗浄工程を有していてもよい。調製工程がさらに洗浄工程を有する場合、夾雑物等の含有量が少ない粉粒体が得られる。洗浄工程では、凝集体を水で洗浄することがより好ましく、イオン交換水または純水で洗浄することがさらに好ましい。
【0366】
洗浄工程は、凝集体を洗浄する工程であればよく、具体的な方法について特に限定されない。洗浄工程の具体的な方法としては、例えば、凝集体と水とを混合して攪拌機により撹拌する方法、凝集体と水とをニーダーを用いて混練する方法、凝集体と水とを自転公転ミキサーで混合する方法、水を凝集体に噴霧する方法、加圧ろ過機によりケーキ洗浄する方法、などを挙げることができる。ニーダーとしては、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、押出式ニーダー、押出機など、各種利用できる。
【0367】
洗浄の時間は特に限定されず、例えば、1秒間~60分間を挙げることができる。洗浄の時間は、1秒間~45分間であることが好ましく、1秒間~30分間であることがより好ましく、1分間~30分間であることがより好ましく、3分間~30分間であることがさらに好ましく、5分間~30分間であることが特に好ましく、10分間~30分間であることが特に好ましい。
【0368】
洗浄の回数は特に限定されず、例えば、1~10回(サイクル)を挙げることができる。洗浄の回数は、1回~6回(サイクル)であることが好ましく、1回~5回(サイクル)であることがより好ましく、1回~4回(サイクル)であることがさらに好ましく、1回~3回(サイクル)であることが最も好ましい。
【0369】
洗浄水の量は特に限定されず、例えば、凝集体1重量部に対して、0.1重量部~1000重量部であることを挙げることができる。洗浄水の量は、凝集体1重量部に対して、1重量部~1000重量部であることが好ましく、1重量部~500重量部であることがより好ましく、1重量部~200重量部であることがより好ましく、10重量部~200重量部であることがより好ましく、15重量部~200重量部であることがさらに好ましく、20重量部~200重量部であることが特に好ましい。洗浄水の量は、凝集体1重量部に対して、1重量部~10重量部であることも好ましく、2重量部~10重量部であることも好ましく、2~5重量部であることも好ましい。また、ニーダーを用いた凝集体と水との混練により洗浄する場合、洗浄水を少なくできるため、より好ましい。
【0370】
洗浄水の温度も限定されず、例えば、常温のもの、加熱した温水を適宜使用し得る。洗浄効果は温水の方が高いため、加熱した洗浄水を使用することが好ましい。洗浄水の温度としては、例えば、10℃~100℃を挙げることができるが、15℃~100℃であることが好ましく、20℃~100℃であることがより好ましく、40℃~100℃であることがより好ましく、40℃~90℃であることがより好ましく、40℃~85℃であることがさらに好ましく、40℃~80℃であることがよりさらに好ましく、40℃~70℃であることが特に好ましい。
【0371】
洗浄工程において、洗浄した水を除く方法も限定されず、例えば、洗浄水の払い出し、減圧濾過、油水分離、フィルタープレス、遠心分離、ベルトプレス、スクリュープレス、膜分離、圧搾脱水等の方法を挙げることができる。
【0372】
洗浄する対象物としては、凝集体中に含まれる不純物全般を意図し、特に限定されない。例えば、乳化剤(例えば、リン系乳化剤、スルホン酸系乳化剤)由来の夾雑物のほか、凝固剤を使用する場合には凝固剤由来の夾雑物等を挙げることができる。
【0373】
調製工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体(例えば、凝集工程、回収工程または洗浄工程にて得られた凝集体)を乾燥する乾燥工程を有していてもよい。乾燥工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を乾燥することができる限り特に限定されない。凝集体を乾燥する方法としては特に限定されず、乾燥機を用いて凝集体を乾燥する方法、容器内に凝集体を仕込み当該容器内を加熱減圧する方法、容器内に凝集体を仕込み当該容器内で乾燥ガスと凝集体とを向流接触させる方法、などが挙げられる。
【0374】
乾燥工程における乾燥温度、例えば乾燥機内の温度、または乾燥ガスの温度、としては特に限定されない。乾燥工程における乾燥温度は、例えば、90℃未満が好ましく、80℃未満がより好ましく、70℃未満がより好ましく、60℃未満がより好ましく、50℃未満がより好ましく、40℃未満がさらに好ましい。
【0375】
調製工程は、凝集工程、回収工程および乾燥工程を有することが好ましく、凝集工程、回収工程、洗浄工程および乾燥工程を有することがより好ましい。
【0376】
調製工程の他の態様としては、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液を噴霧乾燥する方法も挙げられる。
【0377】
(II-1-3.温度)
第2の製造方法において、次のような温度を調節することにより、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体および粉粒体が、重合体微粒子(A)のグラフト部のガラス転移温度以上の温度環境下に曝される時間(期間)を短くすることができる:重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)の温度、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)の温度、混合液(凝固前)の温度、凝固剤の水溶液の温度、重合体微粒子(A)、樹脂(B)および凝固剤を含む水性ラテックスの温度、加熱工程における加熱温度、乾燥工程における乾燥温度、洗浄工程における洗浄水の温度、などである。
【0378】
〔II-2.粉粒体〕
本発明の別の一実施形態に係る粉粒体は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体である。前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む。前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含む。前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含む。前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体である。前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含む。前記粉粒体とマトリクス樹脂(C)とを混合して得られる樹脂組成物について、前記樹脂組成物を下記の攪拌条件で攪拌するとき、撹拌開始から、分散性が良好な状態となるまでの撹拌時間が、80分以下である。ここで、前記攪拌条件は、攪拌装置として羽根径が32mmであるディスパーを使用し、回転数が3000rpmである条件である。ここで、前記「分散性が良好な状態」とは、前記樹脂組成物をグラインドメーター上に載せ、金属スクレーパーでゲージ上の前記樹脂組成物をかき取り、分散状態を目視で確認したとき、スクレーパーの運動で生じた平均粒径10μm以上の粒状痕が、3mm幅の帯の中に5~10個の点が発生した位置が0μmになる状態、である。
【0379】
「本発明の別の一実施形態(第2実施形態)に係る粉粒体」を、以下「第2の粉粒体」と称する場合もある。第2の粉粒体は、後述するマトリクス樹脂(C)と混合されると樹脂組成物となる。
【0380】
第2の粉粒体は、前記構成を有するため、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性に優れるという利点を有する。換言すれば、第2の粉粒体は、前記構成を有するため、第2の粉粒体と後述するマトリクス樹脂(C)とを混合することにより、マトリクス樹脂(C)中に重合体微粒子(A)が均一に分散している樹脂組成物を提供できる、という利点を有する。
【0381】
以下、第2の粉粒体の各態様について詳説するが、以下に説明する以外の事項(例えば、重合体微粒子(A)、樹脂(B)および粉粒体の物性など)は特に限定されず、上述の〔I-2.粉粒体〕および〔II-1.粉粒体の製造方法〕の項の説明を適宜援用する。
【0382】
(II-2-1.分散性)
第2の粉粒体は、粉粒体とマトリクス樹脂(C)とを混合して得られる樹脂組成物について、樹脂組成物を特定の撹拌条件で撹拌するとき、撹拌開始から、分散性が良好な状態となるまでの撹拌時間が、80分以下である。
【0383】
特定の攪拌条件において攪拌装置として用いられる、羽根径が32mmであるディスパーとしては、例えば、PRIMIX株式会社製のディスパーが挙げられる。樹脂組成物の撹拌において、樹脂組成物を収容する容器としては、当該樹脂組成物の体積の1.5倍~3倍の体積を有する容器、および容器底面の直径と容器の高さとの比(直径:高さ)が1:1~1:5の容器、などを好適に使用することができる。樹脂組成物の撹拌において、樹脂組成物を収容している容器中における攪拌装置の位置としては、例えば、羽根(攪拌翼)の中心が容器の底から0.5cm~3cmの高さとなる位置が挙げられる。
【0384】
第2の粉粒体は、前記攪拌時間が短いほど、重合体微粒子(A)のマトリクス樹脂(C)への分散性が優れる粉粒体といえる。第2の粉粒体は、前記攪拌時間が、75分以下が好ましく、70分以下がより好ましく、65分以下がより好ましく、60分以下がより好ましく、55分以下がより好ましく、50分以下がより好ましく、45分以下がさらに好ましく、40分以下が特に好ましい。
【0385】
(II-2-2.粉粒体の製造方法)
第2の粉粒体の製造方法としては、特に限定されない。粉粒体の製造方法としては、例えば、以下の(a)および(b)の方法などが挙げられる:(a)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを調製し、当該水性ラテックスを用いて重合体微粒子(A)および樹脂(B)を塩析し、得られた重合体微粒子(A)および樹脂(B)をの凝集体を、脱水し、乾燥する方法;および(b)重合体微粒子(A)を含む水性ラテックスを噴霧乾燥する方法。
【0386】
第2の粉粒体の製造方法は、上述した〔II-1.粉粒体の製造方法〕の項に記載の製造方法であることが好ましい。換言すれば、〔II-1.粉粒体の製造方法〕の項に記載の製造方法は、第2の粉粒体を容易に提供できる。
【0387】
〔II-3.樹脂組成物〕
第2の粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを含有する樹脂組成物もまた、本発明の別の一実施形態である。第2の粉粒体を含む樹脂組成物に関する各態様については、「第1の粉粒体」を「第2の粉粒体」に適宜置き換えて、〔I-4.樹脂組成物〕の項の記載を適宜援用できる。
【0388】
〔II-4.硬化物〕
〔II-3.樹脂組成物〕の項で説明した本発明の別の一実施形態に係る樹脂組成物において、前記マトリクス樹脂(C)が熱硬化性樹脂であるものを硬化させて得られる硬化物もまた、本発明の別の一実施形態である。
【0389】
本発明の別の一実施形態に係る硬化物は、前記構成を有するため、(a)表面美麗であり、(b)高剛性および高弾性率を有し、かつ(c)靱性および接着性に優れるものである。
【0390】
〔II-5.その他の用途〕
本発明の別の一実施形態に係る粉粒体(第2の粉粒体)または樹脂組成物は、様々な用途に使用することができ、それらの用途は特に限定されない。第2の粉粒体、または、第2の粉粒体の含む樹脂組成物の用途に関する各態様については、「第1の粉粒体」を「第2の粉粒体」に適宜置き換えて、〔I-6.その他の用途〕の項の記載を適宜援用できる。
【0391】
本発明の一実施形態において、〔I-3.粉粒体の製造方法〕の項に記載の第1の製造方法と、〔II-1.粉粒体の製造方法〕の項に記載の第2製造方法とを組み合わせて実施してもよい。換言すれば、第1の製造方法と第2の製造方法とを組み合わせた製造方法によって、粉粒体を製造してもよい。第1の製造方法と第2の製造方法とを組み合わせた製造方法により製造された粉粒体もまた、本発明の一実施形態である。
【0392】
第1の製造方法と第2の製造方法とを組み合わせる方法としては、特に限定されない。「第1の製造方法と第2の製造方法とを組み合わせた製造方法」を「第3の製造方法」と称する場合もある。第3の製造方法は、特に限定されるものではないが、次のような製造方法であることが好ましい:
重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)と、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)と、を混合する混合工程と、
前記混合工程にて得られた混合液から重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を調製する凝集工程と、
前記凝集体を、気流乾燥または凍結乾燥する乾燥工程を含み、
前記水性ラテックス(B)における液滴の体積平均粒子径をx(μm)、当該体積平均粒子径の標準偏差をσとしたとき、前記混合液は、当該混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%~14.0重量%含み、
前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、
前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、
前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、
前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、
前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である、粉粒体の製造方法。
【0393】
第3の製造方法における混合工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液を調製する工程ともいえる。第3の製造方法における混合工程は、第2の製造方法における混合工程であってもよい。それ故、第3の製造方法における混合工程に関する各態様については、〔II-1.粉粒体の製造方法〕の項、例えば(II-1-2.混合工程)の項の記載を適宜援用できる。第3の製造方法における混合工程は、第1の製造方法における調製工程(a1)ともいえる。それ故、第3の製造方法における混合工程に関する各態様については、〔I-3.粉粒体の製造方法〕の項の記載を適宜援用してもよい。
【0394】
第3の製造方法における凝集工程は、第1の製造方法における凝集工程、より具体的には凝集工程(a2)であってもよい。それ故、第3の製造方法における凝集工程に関する各態様については、〔I-3.粉粒体の製造方法〕の項、例えば(I-3-1.凝集工程)項の凝集工程(a2)に関する記載を適宜援用できる。
【0395】
第3の製造方法における乾燥工程は、第1の製造方法における乾燥工程であってもよい。それ故、第3の製造方法における凝集工程に関する各態様については、〔I-3.粉粒体の製造方法〕の項、例えば(I-3-3.乾燥工程)項の乾燥工程に関する記載を適宜援用できる。
【0396】
第3の製造方法における凝集工程と乾燥工程とを合わせた工程は、第2の製造方法における調製工程ともいえる。
【0397】
第3の製造方法について、上述した以外の態様については、これまでの記載、例えば〔I-3.粉粒体の製造方法〕および〔II-1.粉粒体の製造方法〕の項の記載を適宜援用する。
【0398】
「第1の製造方法と第2の製造方法とを組み合わせた製造方法により製造された粉粒体」を「第3の粉粒体」と称する場合もある。第3の製造方法は、特に限定されるものではないが、次のような構成を有することが好ましい:
重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体であって、
前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、
前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、
前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、
前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、
前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%であり、
前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0600mL/g以上であり、
前記粉粒体とマトリクス樹脂(C)とを混合して得られる樹脂組成物について、前記樹脂組成物を下記の攪拌条件で攪拌するとき、撹拌開始から分散性が良好な状態となるまでの撹拌時間が、80分以下である。
【0399】
第3の粉粒体に関する各態様については、これまでの記載、例えば〔I-2.粉粒体〕および〔II-2.粉粒体〕の項の記載を適宜援用する。
【0400】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0401】
〔X1〕重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体であって、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%であり、前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0600mL/g以上であり、前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径1000μm以上の粒体は3.00重量%以下である、粉粒体。
【0402】
〔X2〕前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径600μm以上の粒体は6.00重量%以下である、〔X1〕に記載の粉粒体。
【0403】
〔X3〕前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0800mL/g以上である、〔X1〕または〔X2〕に記載の粉粒体。
【0404】
〔X4〕前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~4.50μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.1100mL/g以上である、〔X1〕~〔X3〕の何れか1つに記載の粉粒体。
【0405】
〔X5〕前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径600μm以上の粒体は1.90重量%以下である、〔X1〕~〔X4〕の何れか1つに記載の粉粒体。
【0406】
〔X6〕前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、〔X1〕~〔X5〕の何れか1つに記載の粉粒体:ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【0407】
〔X7〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.23μm以下である、〔X1〕~〔X6〕の何れか1つに記載の粉粒体。
【0408】
〔X8〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.09μm以上である、〔X1〕~〔X7〕の何れか1つに記載の粉粒体。
【0409】
〔X9〕〔X1〕~〔X8〕の何れか1つに記載の粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを含有する、樹脂組成物。
【0410】
〔X10〕重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を調製する凝集工程と、前記凝集体を、気流乾燥または凍結乾燥する乾燥工程を含み、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である、粉粒体の製造方法。
【0411】
〔X11〕前記凝集工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤の存在下に噴霧する重合体微粒子噴霧工程をさらに含む、〔X10〕に記載の粉粒体の製造方法。
【0412】
〔X12〕前記凝集工程は、前記凝固剤または前記凝固剤を含む溶液を、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の存在下に噴霧する凝固剤噴霧工程をさらに含む、〔X11〕に記載の粉粒体の製造方法。
【0413】
〔X13〕前記乾燥工程は100℃以下で実施する、〔X10〕~〔X12〕の何れか1つに記載の粉粒体の製造方法。
【0414】
〔X14〕重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)と、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)と、を混合する混合工程と、前記混合工程にて得られた混合液から前記重合体微粒子(A)および前記樹脂(B)を含む粉粒体を調製する調製工程と、を含み、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含み、前記水性ラテックス(B)における液滴の体積平均粒子径をx(μm)、当該体積平均粒子径の標準偏差をσとしたとき、前記混合液は、当該混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%~14.0重量%含む、粉粒体の製造方法。
【0415】
〔X15〕前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、〔X10〕~〔X14〕の何れか1つに記載の粉粒体の製造方法:ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【0416】
〔X16〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.23μm以下である、〔X10〕~〔X15〕の何れか1つに記載の粉粒体の製造方法。
【0417】
〔X17〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.09μm以上である、〔X10〕~〔X16〕の何れか1つに記載の粉粒体の製造方法。
【0418】
〔Y1〕重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体であって、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%であり、前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0600mL/g以上である、粉粒体。
【0419】
〔Y2〕前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径1000μm以上の粒体は3.00重量%以下である、〔Y1〕に記載の粉粒体。
【0420】
〔Y3〕前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径600μm以上の粒体は6.00重量%以下である、〔Y1〕または〔Y2〕に記載の粉粒体。
【0421】
〔Y4〕前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~1.00μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.0800mL/g以上である、〔Y1〕~〔Y3〕の何れか1つに記載の粉粒体。
【0422】
〔Y5〕前記粉粒体は、平均細孔径0.03μm~4.50μmの細孔を有し、当該細孔の合計容積が0.1100mL/g以上である、〔Y1〕~〔Y4〕の何れか1つに記載の粉粒体。
【0423】
〔Y6〕前記粉粒体100重量%中、体積平均粒子径600μm以上の粒体は1.90重量%以下である、〔Y1〕~〔Y5〕の何れか1つに記載の粉粒体。
【0424】
〔Y7〕前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、〔Y1〕~〔Y6〕の何れか1つに記載の粉粒体:ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【0425】
〔Y8〕〔Y1〕~〔Y7〕の何れか1つに記載の粉粒体と、マトリクス樹脂(C)とを含有する、樹脂組成物。
【0426】
〔Y9〕重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む凝集体を調製する凝集工程と、前記凝集体を、気流乾燥または凍結乾燥する乾燥工程を含み、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、前記重合体微粒子(A)が50~99重量%、前記樹脂(B)が1~50重量%である、粉粒体の製造方法。
【0427】
〔Y10〕前記凝集工程は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む水性ラテックスを、凝固剤の存在下に噴霧する重合体微粒子噴霧工程をさらに含む、〔Y9〕に記載の粉粒体の製造方法。
【0428】
〔Y11〕前記凝集工程は、前記凝固剤または前記凝固剤を含む溶液を、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の存在下に噴霧する凝固剤噴霧工程をさらに含む、〔Y10〕に記載の粉粒体の製造方法。
【0429】
〔Y12〕前記乾燥工程は100℃以下で実施する、〔Y9〕~〔Y11〕の何れか1つに記載の粉粒体の製造方法。
【0430】
〔Y13〕前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、〔Y9〕~〔Y12〕の何れか1つに記載の粉粒体の製造方法:ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【0431】
本発明の一実施形態は、以下の様な構成であってもよい。
【0432】
〔Z1〕重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(A)と、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)と、を混合する混合工程と、前記混合工程にて得られた混合液から前記重合体微粒子(A)および前記樹脂(B)を含む粉粒体を調製する調製工程と、を含み、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含み、前記水性ラテックス(B)における液滴の体積平均粒子径をx(μm)、当該体積平均粒子径の標準偏差をσとしたとき、前記混合液は、当該混合液中の前記樹脂(B)100重量%に対して、体積平均粒子径がx-σ以上、x+5σ以下である液滴を0.0重量%~14.0重量%含む、粉粒体の製造方法。
【0433】
〔Z2〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.23μm以下である、〔Z1〕に記載の粉粒体の製造方法。
【0434】
〔Z3〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.09μm以上である、〔Z1〕または〔Z2〕に記載の粉粒体の製造方法。
【0435】
〔Z4〕前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、〔Z1〕~〔Z3〕の何れか1つに記載の粉粒体の製造方法:ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【0436】
〔Z5〕重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む粉粒体であって、前記重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含み、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴム、およびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含み、前記グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体を含み、前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体であり、前記粉粒体は、前記重合体微粒子(A)と前記樹脂(B)との合計100重量%中、前記重合体微粒子(A)を50~99重量%、かつ前記樹脂(B)を1~50重量%含み、前記粉粒体とマトリクス樹脂(C)とを混合して得られる樹脂組成物について、前記樹脂組成物を下記の攪拌条件で攪拌するとき、撹拌開始から分散性が良好な状態となるまでの撹拌時間が、80分以下である、粉粒体:ここで、前記攪拌条件は、攪拌装置として羽根径が32mmであるディスパーを使用し、回転数が3000rpmである条件であり;ここで、前記「分散性が良好な状態」とは、前記樹脂組成物をグラインドメーター上に載せ、金属スクレーパーでゲージ上の前記樹脂組成物をかき取り、分散状態を目視で確認したとき、スクレーパーの運動で生じた平均粒径10μm以上の粒状痕が、3mm幅の帯の中に5~10個の点が発生した位置が0μmになる状態、である。
【0437】
〔Z6〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.23μm以下である、〔Z5〕に記載の粉粒体。
【0438】
〔Z7〕前記重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は0.09μm以上である、〔Z5〕または〔Z6〕に記載の粉粒体。
【0439】
〔Z8〕前記粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である、〔Z5〕~〔Z7〕の何れか1つに記載の粉粒体:ここで、前記ブロックは、直径50mmの筒状の容器内に収容された30gの前記粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加して得られるブロックであり、前記力は、レオメーターにて測定して得られた値である。
【実施例
【0440】
〔実施例A〕
以下、実施例Aおよび比較例Aによって本発明の一実施形態(第1実施形態)をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、前記または後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例Aおよび比較例Aにおいて「部」および「%」とあるのは、重量部または重量%を意味する。
【0441】
<成分>
各製造例A、実施例Aおよび比較例Aにおいて使用した各成分は、以下の通りである。
・重合体微粒子(A)
以下に示す製造例Aで得られた重合体微粒子(A)を使用した。
・樹脂(B)
エポキシ化大豆油(株式会社ADEKA社製、アデカサイザーO-130P)67重量部、およびトリエチレングリコールビス[3-(-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート](酸化防止剤)(イルガノックス245、BASFジャパン株式会社製)33重量の混合物を用いた。
・マトリクス樹脂(C)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、JER828)を使用した。
【0442】
<評価方法>
先ず、実施例Aおよび比較例Aによって製造した樹脂組成物の評価方法について、以下説明する。
【0443】
(体積平均粒子径の測定)
水性ラテックスに分散している弾性体または重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)は、Nanotrac WaveII-EX150(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。脱イオン水で水性ラテックスを希釈したものを測定試料として用いた。測定は、水、および、各製造例Aで得られた弾性体または重合体微粒子(A)の屈折率を入力し、計測時間120秒、ローディングインデックス1~10の範囲内になるように試料濃度を調整して行った。
【0444】
また、粉粒体の体積平均粒子径(Mv)は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。
【0445】
(水性ラテックス(B)または混合液中の液滴の、体積平均粒子径および含有量の測定)
樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、または、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液中の液滴の、体積平均粒子径および含有量は、水性ラテックス(B)または混合液を試料とし、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を使用した。
【0446】
(樹脂(B)の示差熱走査熱量測定(DSC))
使用した樹脂(B)を用い、DSC7020(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、昇温速度10℃/minで測定した。その結果、樹脂(B)のDSCのサーモグラムは-16.9℃の吸熱ピークを示した。
【0447】
(樹脂(B)の粘度測定)
使用した樹脂(B)を用い、BROOKFIELD社製デジタル粘度計DV-II+Pro型を用いて、粘度領域によってスピンドルCPE-52を用いて、測定温度25℃にてShear Rate(ずり速度)を必要に応じ変化させ粘度を測定した。その結果、樹脂(B)の粘度は11,000mPa・sであった。
【0448】
(マトリクス樹脂(C)への粉粒体の分散性)
実施例Aおよび比較例Aで得られた粉粒体15重量部(15g)、マトリクス樹脂(C)であるビスフェノールA型エポキシ樹脂85重量部(85g)を準備した。準備した粉粒体およびビスフェノールA型エポキシ樹脂を、容積200mLである容器内に加えた。容器の容積は、準備した粉粒体およびビスフェノールA型エポキシ樹脂の体積の約2倍であった。粉粒体およびビスフェノールA型エポキシ樹脂を、羽根径がΦ32mmの攪拌翼を有するディスパー(PRIMIX株式会社製)を用い、回転数3000rpmの条件にて混合し、樹脂組成物を得た。樹脂組成物をグラインドメーター(グラインドゲージ)上に載せ、金属スクレーパーでゲージ上の樹脂組成物をかき取り、分散状態を目視で確認した。スクレーパーの運動で生じた粒状痕が、3mm幅の帯の中に5~10個の点が発生した位置の目盛りを読み取り、目盛りが0μmになるまでの時間を計測した。結果を表1に示す。
【0449】
(粉粒体の細孔)
実施例Aおよび比較例Aで得られた粉粒体を用い、自動水銀ポロシメータ細孔分布測定装置(島津製作所株式会社製)を使用し、圧力20psiaから3000psiaまで測定した。得られた結果より、平均細孔径0.03μmから1.0μmまでの細孔の合計容積、および平均細孔径0.03μmから4.5μmまでの細孔の合計容積値を、それぞれ算出した。結果を表1に示す。
【0450】
(粉粒体の耐ブロッキング性)
実施例Aおよび比較例Aで得られた粉粒体を用い、以下の(1)~(3)の操作を順に行い、粉粒体のブロックを調製した:(1)粉粒体30gを直径50mmの筒状の容器に収容した;(2)容器内の粉粒体上に6.3kgの重しを載せることにより、60℃で2時間、静置させた前記粉粒体に荷重6.3kgを付加した;(3)得られたブロックを容器から取り出した。次に、得られた粉粒体のブロックを崩すために必要な力をレオメーターにて測定した。得られた結果に基づき、以下の基準で耐ブロッキング性を評価した。
合格:粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である。
不合格:粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Paを超える。
【0451】
<1.重合体微粒子(A)の調製>
(製造例A)
(製造例A1-1;重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-A1)の調製)
耐圧重合器中に、脱イオン水160重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.029重量部、および水酸化ナトリウム0.003重量部を投入した。ここで、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸は、水酸化ナトリウムの存在下で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムとなり、乳化剤として機能した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、ブタジエン(Bd)76.5重量部、およびスチレン(St)23.5重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.05重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から20時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸および水酸化ナトリウムのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリスチレン-ブタジエンゴムを主成分とする弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-A1)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体(コア層)の体積平均粒子径は192nmであった。
【0452】
ガラス製反応器に、ポリスチレン-ブタジエンゴムの水性ラテックス(R-A1)215重量部(ポリスチレン-ブタジエンゴムを主成分とする弾性体70重量部を含む)、および、脱イオン水82重量部を投入した。ここで、前記ガラス製反応器は、温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、および単量体の添加装置を有していた。ガラス製反応器中の気体を窒素で置換しながら、60℃にて投入した原料を撹拌した。次に、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール2.6重量部、およびt-ブチルハイドロパーオキサイド(BHP)0.07重量部をガラス製反応器内に加え、10分間撹拌した。その後、EDTA0.004重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、およびSFS0.13重量部をガラス製反応器内に加え、30分間撹拌した。その後、BHP0.013重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに30分間撹拌した。その後、メチルメタクリレート(MMA)28.5重量部、ブチルアクリレート(BA)1.5重量部およびBHP0.085重量部の混合物をガラス製反応器内に、120分間かけて連続的に添加した。その後、BHP0.013重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに1時間、ガラス製反応器内の混合物の撹拌を続けて重合を完結させた。以上の操作により、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-A1)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は200nmであった。
【0453】
(製造例A1-2;重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-A3)の調製)
耐圧重合器中に、脱イオン水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、EDTA0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、および、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1.55重量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd100重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から15時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTAおよび硫酸第一鉄・7水和塩のそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-A2)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体の体積平均粒子径は90nmであった。
【0454】
耐圧重合器中に、ポリブタジエンゴムの水性ラテックス(R-A2)をポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体7重量部に相当する量、脱イオン水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、EDTA0.002重量部、および硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd93重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.02重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から30時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTA、および硫酸第一鉄・7水和塩のそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-A3)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体(コア層)の体積平均粒子径は195nmであった。
【0455】
ガラス製反応器に、ポリブタジエンゴムの水性ラテックス(R-A3)215重量部(ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体71重量部を含む)、および、脱イオン水82重量部を投入した。ここで、前記ガラス製反応器は、温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、および単量体の添加装置を有していた。ガラス製反応器中の気体を窒素で置換しながら、60℃にて投入した原料を撹拌した。次に、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール2.6重量部、およびBHP0.07重量部をガラス製反応器内に加え、10分間撹拌した。その後、EDTA0.004重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、およびSFS0.13重量部をガラス製反応器内に加え、30分間撹拌した。その後、BHP0.013重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに30分間撹拌した。その後、MMA22重量部、St7重量部およびBHP0.085重量部の混合物をガラス製反応器内に、70分間かけて連続的に添加した。その後、BHP0.013重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに1時間、ガラス製反応器内の混合物の撹拌を続けて重合を完結させた。以上の操作により、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-A3)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は200nmであった。
【0456】
<2.粉粒体の調製>
(実施例A1;粉粒体の調製)
水と樹脂(B)と乳化剤であるSDBSとを共にホモジナイザーを用いて混合することにより、樹脂(B)を乳化させた水性エマルジョン(S-A1)(樹脂(B)含有量50%)を調製した。次に、重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-A1)325重量部と、前記水性エマルジョン(S-A1)22.2重量部(樹脂(B)11.1重量部相当)とを混合することにより、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む水性ラテックス(L-A2)を調製した。水性ラテックス(L-A2)を、凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内(すなわち凝固室中ともいえる。)に噴霧し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を含むスラリーを得た。容器内の凝固性雰囲気は、以下のように形成した:(1)高さ9m、直径1.5mの円筒状の容器内において、容器内壁の上部に取り付けたサイドスプレーノズルから46℃の温水を内壁面を流下させる、(2)前記(1)と共に、25%酢酸カルシウム水溶液を、孔径が2.0mmの内部混合形2流体ノズルから圧力0.6Kg/cmGの水蒸気により100ミクロン以下の微細液滴として容器内に分散して、形成した。容器内の凝固性雰囲気の温度は60℃であり、凝固性雰囲気の圧力(容器内圧力)は大気圧とした。「凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内」は、「凝固室中」ともいえる。水性ラテックス(L-A2)の噴霧は、加圧ノズルの1種である空円錐ノズルであり、孔径が2.0mmのノズル8個を用い、噴霧圧力7.3Kg/cmGにて噴霧した。
すなわち、実施例A1では気相凝固を実施した。次に、スラリーを遠心脱水し、上記凝集体である湿粉を得た。さらに、得られた湿粉を用いて、湿粉をイオン交換水500重量部中に投入する操作と、得られた混合物を遠心脱水する操作とを合計2サイクル繰り返し、湿粉を得た。湿粉の含水率は、57%であった。最後に50℃の乾燥空気を吹き込むことで前記湿粉を舞わせながら、湿粉の温度が40℃に達するまで乾燥した。すなわち、実施例A1では気流乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0457】
(実施例A2;粉粒体の調製)
実施例A1と同じ方法により、含水率57%の湿粉を得た。最後に110℃の乾燥空気を吹き込むことで前記湿粉を舞わせながら、湿粉の温度が40℃に達するまで乾燥した。すなわち、実施例A2では気流乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を、32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0458】
(比較例A1;粉粒体の調製)
実施例A1と同じ方法により、含水率57%の湿粉を得た。最後に50℃の箱型乾燥機中で湿粉を48時間静置乾燥した。すなわち、比較例A1では静置乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を、32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得た。
【0459】
(比較例A2;粉粒体の調製)
酢酸カルシウム4重量部を溶解し、70℃に調温したイオン交換水600重量部を調製した。次に、重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-A1)325重量部と、前記水性エマルジョン(S-A1)22.2重量部(樹脂(B)11.1重量部相当)とを、上記イオン交換水600重量部中に投入し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を含むスラリーを得た。すなわち、比較例A2では液相凝固を実施した。次に、スラリーを遠心脱水し、上記凝集体である湿粉を得た。さらに、得られた湿粉を用いて、湿粉をイオン交換水500重量部中に投入する操作と、得られた混合物を遠心脱水する操作とを合計2サイクル繰り返し、湿粉を得た。湿粉の含水率は、60%であった。最後に50℃の箱型乾燥機中で湿粉を48時間静置乾燥した。すなわち、比較例A2では静置乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を、32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得た。
【0460】
(比較例A3;粉粒体の調製)
酢酸カルシウム4重量部を溶解し、70℃に調温したイオン交換水600重量部を調製した。次に、重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-A1)325重量部を、上記イオン交換水600重量部中に投入し、重合体微粒子(A)の凝集体を含むスラリーを得た。すなわち、比較例A3では液相凝固を実施した。次に、スラリーを遠心脱水し、上記凝集体である湿粉を得た。さらに、得られた湿粉を用いて、湿粉をイオン交換水500重量部中に投入する操作と、得られた混合物を遠心脱水する操作とを合計2サイクル繰り返し、湿粉を得た。湿粉の含水率は、58%であった。最後に50℃の箱型乾燥機中で湿粉を48時間静置乾燥した。すなわち、比較例A3では静置乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を、32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)を含む粉粒体を得た。
【0461】
(比較例A4;粉粒体の調製)
水性ラテックス(L-A3)を、凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内(すなわち凝固室中ともいえる。)に噴霧し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を含むスラリーを得た。容器内の凝固性雰囲気は、以下のように形成した:(1)高さ9m、直径1.5mの円筒状の容器内において、容器内壁の上部に取り付けたサイドスプレーノズルから46℃の温水を内壁面を流下させた;(2)前記(1)と共に、25%酢酸カルシウム水溶液を、孔径が2.0mmの内部混合形2流体ノズルから圧力0.6Kg/cmGの水蒸気により100ミクロン以下の微細液滴として容器内に分散して、凝固性雰囲気を形成した。容器内の凝固性雰囲気の温度は60℃であり、凝固性雰囲気の圧力(容器内圧力)は大気圧とした。「凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内」は、「凝固室中」ともいえる。水性ラテックス(L-A2)の噴霧は、加圧ノズルの1種である空円錐ノズルであり、孔径が2.0mmのノズル8個を用い、噴霧圧力7.3Kg/cmGにて噴霧した。すなわち、比較例A4では気相凝固を実施した。次に、スラリーを遠心脱水し、上記凝集体である湿粉を得た。さらに、得られた湿粉を用いて、湿粉をイオン交換水500重量部中に投入する操作と、得られた混合物を遠心脱水する操作とを合計2サイクル繰り返し、湿粉を得た。湿粉の含水率は、56%であった。最後に50℃の乾燥空気を吹き込むことで前記湿粉を舞わせながら、湿粉の温度が40℃に達するまで乾燥した。すなわち、比較例A4では気流乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)を含む粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0462】
(比較例A5;粉粒体の調製)
比較例A4で得られた粉粒体の重合体微粒子(A)100重量部相当の量と、前記樹脂(B)11.1重量部とを自転・公転ミキサーで2000rpmにて40分間混合した。その後、得られた混合物を32メッシュの篩にてふるい、粒体を得た。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0463】
(実施例A3;粉粒体の調製)
以下のように水性ラテックス(B)調製工程を行った。すなわち、水と、樹脂(B)と、乳化剤であるSDBSと、を混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物をホモジナイザーを用いて撹拌(混合)した。かかる水性ラテックス(B)調製工程により、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、すなわち、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴(B)を含む水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-A2)を得た。水性ラテックス(S-A2)100重量%における、樹脂(B)含有量は50重量%であった。水性ラテックス(S-A2)を試料とし、上述した方法により水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-A2)中の液滴の体積平均粒子径(粒度分布)を測定した。その結果、水性ラテックス(S-A2)中の液滴の体積平均粒子径は5.60μm、標準偏差は5.21μmであった。従って、x-σは0.39であり、x+5σは31.65であった。
【0464】
重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-A3)325重量部と、前記水性エマルジョン(S-A2)22.2重量部(樹脂(B)11.1重量部相当)とを混合した。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液である、水性ラテックス(L-A4)を調製した。かかる混合液(水性ラテックス(L-A4))を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液(水性ラテックス(L-A4))中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が0.39以上、31.65以下である液滴は検出限界以下であった。本明細書において、検出限界以下の結果は、N.D.(Not detectionの略)として記載している。水性ラテックス(L-A4)を、凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内(すなわち凝固室中ともいえる。)に噴霧し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を含むスラリーを得た。容器内の凝固性雰囲気は、以下のように形成した:(1)高さ9m、直径1.5mの円筒状の容器内において、容器内壁の上部に取り付けたサイドスプレーノズルから46℃の温水を内壁面を流下させた;(2)前記(1)と共に、25%酢酸カルシウム水溶液を、孔径が2.0mmの内部混合形2流体ノズルから圧力0.6Kg/cmGの水蒸気により100ミクロン以下の微細液滴として容器内に分散して、凝固性雰囲気を形成した。容器内の凝固性雰囲気の温度は60℃であり、凝固性雰囲気の圧力(容器内圧力)は大気圧とした。「凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内」は、「凝固室中」ともいえる。水性ラテックス(L-A2)の噴霧は、加圧ノズルの1種である空円錐ノズルであり、孔径が2.0mmのノズル8個を用い、噴霧圧力7.3Kg/cmGにて噴霧した。すなわち、実施例3では気相凝固を実施した。次に、スラリーを遠心脱水し、上記凝集体である湿粉を得た。さらに、得られた湿粉を用いて、湿粉をイオン交換水500重量部中に投入する操作と、得られた混合物を遠心脱水する操作とを合計2サイクル繰り返し、湿粉を得た。湿粉の含水率は、55%であった。最後に50℃の乾燥空気を吹き込むことで前記湿粉を舞わせながら、湿粉の温度が40℃に達するまで乾燥した。すなわち、実施例3では気流乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0465】
【表1】
〔実施例B〕
以下、実施例Bおよび比較例Bによって本発明の一実施形態(第2実施形態)をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、前記または後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例Bおよび比較例Bにおいて「部」および「%」とあるのは、重量部または重量%を意味する。
【0466】
<成分>
各製造例B、実施例Bおよび比較例Bにおいて使用した各成分は、以下の通りである。
・重合体微粒子(A)
以下に示す製造例Bで得られた重合体微粒子(A)を使用した。
・樹脂(B)
実施例Aで使用した混合物と同じ混合物を使用した。
・マトリクス樹脂(C)
実施例Aと同じくビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用した。
【0467】
<評価方法>
先ず、実施例Bおよび比較例Bによって製造した樹脂組成物の評価方法について、以下説明する。
【0468】
(体積平均粒子径の測定)
水性ラテックスに分散している弾性体または重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)は、実施例Aと同じ装置かつ同じ方法で調製した測定試料を用いて測定した。測定は、水、および、各製造例Bで得られた弾性体または重合体微粒子(A)の屈折率を入力し、計測時間120秒、ローディングインデックス1~10の範囲内になるように試料濃度を調整して行った。また、粉粒体の体積平均粒子径(Mv)は、実施例Aと同じ装置を用いて測定した。
【0469】
(水性ラテックス(B)または混合液中の液滴の、体積平均粒子径および含有量の測定)
樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、または、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液中の液滴の、体積平均粒子径および含有量は、水性ラテックス(B)または混合液を試料とし、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を使用した。
【0470】
(樹脂(B)の示差熱走査熱量測定(DSC))
使用した樹脂(B)を用い、実施例Aと同じ装置を用いて、同じ条件で測定した。その結果、実施例Aと同じく、樹脂(B)のDSCのサーモグラムは-16.9℃の吸熱ピークを示した。
【0471】
(樹脂(B)の粘度測定)
使用した樹脂(B)を用い、実施例Aと同じ装置を用いて、同じ条件で粘度を測定した。その結果、実施例Aと同じく、樹脂(B)の粘度は11,000mPa・sであった。
【0472】
(粉粒体の耐ブロッキング性)
実施例Bおよび比較例Bで得られた粉粒体を用い、実施例Aと同じ方法で粉粒体のブロックを調製した。次に、得られた粉粒体のブロックを崩すために必要な力をレオメーターにて測定した。得られた結果に基づき、以下の基準で耐ブロッキング性を評価した。
合格:粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Pa以下である。
不合格:粉粒体のブロックを崩すために必要な力が30000Paを超える。
【0473】
(樹脂組成物の分散性)
実施例Bおよび比較例Bで得られた粉粒体15重量部(15g)、マトリクス樹脂(C)であるビスフェノールA型エポキシ樹脂85重量部(85g)を準備した。準備した粉粒体およびビスフェノールA型エポキシ樹脂を、容積200mLである容器内に加えて混合し、樹脂組成物を得た。容器の容積は、準備した粉粒体およびビスフェノールA型エポキシ樹脂の体積の約2倍であった。得られた樹脂組成物を、羽根径(Φ)が32mmであるディスパー(PRIMIX株式会社製)を使用し、回転数3000rpmの条件にて混合した。樹脂組成物をグラインドメーター(グラインドゲージ)上に載せ、金属スクレーパーでゲージ上の樹脂組成物をかき取り、分散状態を目視で確認した。スクレーパーの運動で生じた平均粒径10μm以上の粒状痕が、3mm幅の帯の中に5~10個の点が発生した位置の目盛りを読み取った。撹拌開始から、目盛りが0μmになるまでの撹拌時間、すなわち分散性が良好な状態となるまでの撹拌時間を計測した。結果を表2に示す。
【0474】
<1.弾性体の調製>
(製造例B)
(製造例B1-1;ポリスチレン-ブタジエンゴムラテックス(R-B1)の調製)
耐圧重合器中に、脱イオン水160重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.02重量部、および水酸化ナトリウム0.003重量部を投入した。ここで、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸は、水酸化ナトリウムの存在下で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムとなり、乳化剤として機能した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、ブタジエン(Bd)76.5重量部、およびスチレン(St)23.5重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.05重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から20時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸および水酸化ナトリウムのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリスチレン-ブタジエンゴムを主成分とする弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B1)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体(コア層)の体積平均粒子径は240nmであった。
【0475】
(製造例B1-2;ポリスチレン-ブタジエンゴムラテックス(R-B2)の調製)
耐圧重合器中に、脱イオン水160重量部、EDTA0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.05重量部、および水酸化ナトリウム0.003重量部を投入した。ここで、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸は、水酸化ナトリウムの存在下で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムとなり、乳化剤として機能した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd76.5重量部、およびSt23.5重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.05重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から25時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸および水酸化ナトリウムのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリスチレン-ブタジエンゴムを主成分とする弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B2)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体(コア層)の体積平均粒子径は170nmであった。
【0476】
(製造例B1-3;ポリスチレン-ブタジエンゴムラテックス(R-B3)の調製)
耐圧重合器中に、脱イオン水160重量部、EDTA0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸0.07重量部、および水酸化ナトリウム0.003重量部を投入した。ここで、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸は、水酸化ナトリウムの存在下で、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムとなり、乳化剤として機能した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd76.5重量部、およびSt23.5重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.05重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から25時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸および水酸化ナトリウムのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリスチレン-ブタジエンゴムを主成分とする弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B3)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体(コア層)の体積平均粒子径は150nmであった。
【0477】
(製造例B1-4;ポリスチレン-ブタジエンゴムラテックス(R-B4)の調製)
耐圧重合器中に、脱イオン水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、EDTA0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、および乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1.5重量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd76.5重量部、およびSt23.5重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から13時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTAおよび硫酸第一鉄・7水和塩のそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリスチレン-ブタジエンゴムを主成分とする弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B4)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体(コア層)の体積平均粒子径は80nmであった。
【0478】
(製造例B1-5;ポリブタジエンゴムラテックス(R-B5)の調製)
耐圧重合器中に、脱イオン水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、EDTA0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、および、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1.55重量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd100重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から15時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTAおよび硫酸第一鉄・7水和塩のそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-B5)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体の体積平均粒子径は90nmであった。
【0479】
(製造例B1-6;ポリブタジエンゴムラテックス(R-B6)の調製)
耐圧重合器中に、ポリブタジエンゴムの水性ラテックス(R-B5)をポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体7重量部に相当する量、脱イオン水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、EDTA0.002重量部、および硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd93重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.02重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から30時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTA、および硫酸第一鉄・7水和塩のそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B6)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体(コア層)の体積平均粒子径は195nmであった。
【0480】
<2.重合体微粒子(A)の調製(グラフト部の重合)>
(製造例B2-1;重合体微粒子ラテックス(L-B1)の調製)
ガラス製反応器に、弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(前記ポリスチレン-ブタジエンゴムラテックス)(R-B1)201重量部(ポリスチレン-ブタジエンゴムを主成分とする弾性体70重量部を含む)、および、脱イオン水73重量部を投入した。ここで、前記ガラス製反応器は、温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、および単量体の添加装置を有していた。ガラス製反応器中の気体を窒素で置換し、投入した原料を60℃にて撹拌した。次に、EDTA0.003重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.0007重量部、およびSFS0.14重量部をガラス製反応器内に加え、10分間撹拌した。その後、メチルメタクリレート(MMA)28.5重量部、ブチルアクリレート1.5重量部、およびt-ブチルハイドロパーオキサイド(BHP)0.1重量部の混合物をガラス製反応器内に、80分間かけて連続的に添加した。その後、BHP0.012重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに1時間、ガラス製反応器内の混合物の撹拌を続けて重合を完結させた。以上の操作により、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B1)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は240nmであった。得られた水性ラテックス(L-B1)における固形分濃度(重合体微粒子(A)の濃度)は30%であった。
【0481】
(製造例B2-2;重合体微粒子ラテックス(L-B2)の調製)
製造例B2-1において、弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B1)の代わりに、弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B2)を用いたこと以外は製造例B2-1と同じ方法により、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B2)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は170nmであった。得られた水性ラテックス(L-B2)における固形分濃度(重合体微粒子(A)の濃度)は30%であった。
【0482】
(製造例B2-3;重合体微粒子ラテックス(L-B3)の調製)
製造例B2-1において、弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B1)の代わりに、弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B3)を用いたこと以外は製造例B2-1と同じ方法により、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B3)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は150nmであった。得られた水性ラテックス(L-B3)における固形分濃度(重合体微粒子(A)の濃度)は30%であった。
【0483】
(製造例B2-4;重合体微粒子ラテックス(L-B4)の調製)
製造例B2-1において、弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B1)の代わりに、弾性体(コア層)を含む水性ラテックス(R-B4)を用いたこと以外は製造例B2-1と同じ方法により、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B4)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は80nmであった。得られた水性ラテックス(L-B4)における固形分濃度(重合体微粒子(A)の濃度)は30%であった。
【0484】
(製造例B2-5;重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B5)の調製)
ガラス製反応器に、ポリブタジエンゴムの水性ラテックス(R-B6)215重量部(ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体71重量部を含む)、および、脱イオン水82重量部を投入した。ここで、前記ガラス製反応器は、温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、および単量体の添加装置を有していた。ガラス製反応器中の気体を窒素で置換しながら、60℃にて投入した原料を撹拌した。次に、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコール2.6重量部、およびBHP0.07重量部をガラス製反応器内に加え、10分間撹拌した。その後、EDTA0.004重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、およびSFS0.13重量部をガラス製反応器内に加え、30分間撹拌した。その後、BHP0.013重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに30分間撹拌した。その後、MMA22重量部、St7重量部およびBHP0.085重量部の混合物をガラス製反応器内に、70分間かけて連続的に添加した。その後、BHP0.013重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに1時間、ガラス製反応器内の混合物の撹拌を続けて重合を完結させた。以上の操作により、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B5)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は200nmであった。
【0485】
<3.粉粒体の調製>
実施例B1(製造例B3-1)
以下のように水性ラテックス(B)調製工程を行った。すなわち、水と、樹脂(B)100重量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム6.5重量部と、を混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物をホモジナイザーを用いて10000rpmにて5分間撹拌した。かかる水性ラテックス(B)調製工程により、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、すなわち、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴(B)を含む水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B1)を得た。水性ラテックス(S-B1)100重量%における、樹脂(B)含有量は50重量%であった。水性ラテックス(S-B1)を試料とし、上述した方法により水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B1)中の液滴の体積平均粒子径(粒度分布)を測定した。その結果、水性ラテックス(S-B1)中の液滴の体積平均粒子径は11.17μm、標準偏差は8.18μmであった。従って、x-σは2.99であり、x+5σは52.07であった。
【0486】
重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-B1)325重量部と、樹脂(B)11.1重量部相当である水性ラテックス(S-B1)22.2重量部とを混合した。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が2.99以上、52.07以下である液滴は検出限界以下であった。本明細書において、検出限界以下の結果は、N.D.(Not detectionの略)として記載している。
【0487】
次に、以下のようにして調製工程を行った。まず、酢酸カルシウム4重量部を溶解し、70℃に調温したイオン交換水600重量部を調製した。次に、混合工程にて得られた混合液347.2重量部を、上記イオン交換水600重量部中に投入し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を含むスラリーを得た。次に、スラリーを遠心脱水し、上記凝集体である湿粉を得た。さらに、得られた湿粉を用いて、湿粉をイオン交換水500重量部中に投入する操作と、得られた混合物を遠心脱水する操作とを合計2サイクル繰り返し、湿粉を得た。最後に50℃の乾燥機中で湿粉を48時間乾燥し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0488】
比較例B1(製造例B3-2)
以下のように水性ラテックス(B)調製工程を行った。すなわち、水と、樹脂(B)100重量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム24.0重量部と、を混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物をホモジナイザーを用いて10000rpmにて5分間撹拌した。かかる水性ラテックス(B)調製工程により、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、すなわち、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴(B)を含む水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B2)を得た。水性ラテックス(S-B2)100重量%における、樹脂(B)含有量は50重量%であった。水性ラテックス(S-B2)を試料とし、上述した方法により水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B2)中の液滴の体積平均粒子径(粒度分布)を測定した。その結果、水性ラテックス(S-B2)中の液滴の体積平均粒子径は1.46μm、標準偏差は0.6μmであった。従って、x-σは0.86であり、x+5σは4.46であった。
【0489】
重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-B1)325重量部と、樹脂(B)11.1重量部相当である水性ラテックス(S-B2)22.2重量部とを混合した。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が0.86以上、4.46以下である液滴は14.8重量%であった。結果を表2に示した。
【0490】
次に、混合工程にて得られた混合液を用いて、製造例B3-1と同じ方法により調製工程を行い、粉粒体を得た。
【0491】
実施例B2(製造例B3-3)
以下のように水性ラテックス(B)調製工程を行った。すなわち、水と、樹脂(B)100重量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム13.0重量部と、を混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物をホモジナイザーを用いて10000rpmにて5分間撹拌した。かかる水性ラテックス(B)調製工程により、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、すなわち、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴(B)を含む水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B3)を得た。水性ラテックス(S-B3)100重量%における、樹脂(B)含有量は50重量%であった。水性ラテックス(S-B3)を試料とし、上述した方法により水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B3)中の液滴の体積平均粒子径(粒度分布)を測定した。その結果、水性ラテックス(S-B3)中の液滴の体積平均粒子径は5.96μm、標準偏差は5.12μmであった。従って、x-σは0.84であり、x+5σは31.56であった。
【0492】
重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-B1)325重量部と、樹脂(B)11.1重量部相当である水性ラテックス(S-B3)22.2重量部とを混合した。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が0.84以上、31.56以下である液滴は4.9重量%であった。結果を表2に示した。
【0493】
次に、混合工程にて得られた混合液を用いて、製造例B3-1と同じ方法により調製工程を行い、粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0494】
比較例B2(製造例B3-4)
以下のように水性ラテックス(B)調製工程を行った。すなわち、水と、樹脂(B)100重量部と、乳化剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム6.5重量部と、を混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物をホモジナイザーを用いて3000rpmにて5分間撹拌した。かかる水性ラテックス(B)調製工程により、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、すなわち、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴(B)を含む水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B4)を得た。水性ラテックス(S-B4)100重量%における、樹脂(B)含有量は50重量%であった。水性ラテックス(S-B4)を試料とし、上述した方法により水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B4)中の液滴の体積平均粒子径(粒度分布)を測定した。その結果、水性ラテックス(S-B4)中の液滴の体積平均粒子径は68.72μm、標準偏差は36.54μmであった。従って、x-σは32.18であり、x+5σは251.42であった。
【0495】
重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-B1)325重量部と、樹脂(B)11.1重量部相当である水性ラテックス(S-B4)22.2重量部とを混合した。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が32.18以上、251.42以下である液滴は100.0重量%であった。結果を表2に示した。
【0496】
次に、混合工程にて得られた混合液を用いて、製造例B3-1と同じ方法により調製工程を行い、粉粒体を得た。
【0497】
実施例B3(製造例B3-5)
製造例B3-1において、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B1)の代わりに、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B2)を用いたこと以外は製造例B3-1と同じ方法により、水性ラテックス(B)調製工程を含む混合工程を行った。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が2.99以上、52.07以下である液滴は検出限界以下であった。結果を表2に示した。次に、混合工程にて得られた混合液を用いて、製造例B3-1と同じ方法により調製工程を行い、粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0498】
実施例B4(製造例B3-6)
製造例B3-2において、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B1)の代わりに、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B2)を用いたこと以外は製造例B3-2と同じ方法により、水性ラテックス(B)調製工程を含む混合工程を行った。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が0.86以上、4.46以下である液滴は検出限界以下であった。結果を表2に示した。次に、混合工程にて得られた混合液を用いて、製造例B3-1と同じ方法により調製工程を行い、粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0499】
実施例B5(製造例B3-7)
製造例B3-1において、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B1)の代わりに、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B3)を用いたこと以外は製造例B3-1と同じ方法により、水性ラテックス(B)調製工程を含む混合工程を行った。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が2.99以上、52.07以下である液滴は検出限界以下であった。結果を表2に示した。次に、混合工程にて得られた混合液を用いて、製造例B3-1と同じ方法により調製工程を行い、粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0500】
実施例B6(製造例B3-8)
製造例B3-1において、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B1)の代わりに、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックス(L-B4)を用いたこと以外は製造例B3-1と同じ方法により、水性ラテックス(B)調製工程を含む混合工程を行った。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む混合液を得た。得られた混合液を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が2.99以上、52.07以下である液滴は検出限界以下であった。結果を表2に示した。次に、混合工程にて得られた混合液を用いて、製造例B3-1と同じ方法により調製工程を行い、粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【0501】
実施例B7(製造例B3-9)
以下のように水性ラテックス(B)調製工程を行った。すなわち、水と、樹脂(B)と、乳化剤であるSDBSと、を混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物をホモジナイザーを用いて撹拌(混合)した。かかる水性ラテックス(B)調製工程により、樹脂(B)を含む水性ラテックス(B)、すなわち、1つ以上の樹脂(B)を含む液滴(B)を含む水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B5)を得た。水性ラテックス(S-B5)100重量%における、樹脂(B)含有量は50重量%であった。水性ラテックス(S-B5)を試料とし、上述した方法により水性ラテックス(B)である水性ラテックス(S-B5)中の液滴の体積平均粒子径(粒度分布)を測定した。その結果、水性ラテックス(S-B5)中の液滴の体積平均粒子径は5.60μm、標準偏差は5.21μmであった。従って、x-σは0.39であり、x+5σは31.65であった。
【0502】
重合体微粒子(A)100重量部相当である水性ラテックス(L-B5)325重量部と、前記水性エマルジョン(S-B5)22.2重量部(樹脂(B)11.1重量部相当)とを混合した。かかる混合工程により、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを含む混合液である、水性ラテックス(L-B6)を調製した。かかる混合液(水性ラテックス(L-B6))を試料とし、上述した方法により混合液中の液滴の体積平均粒子径および含有量(粒度分布)を測定した。その結果、混合液(水性ラテックス(L-B6))中の樹脂(B)100重量%に対する、体積平均粒子径が0.39以上、31.65以下である液滴は検出限界以下であった。水性ラテックス(L-B6)を、凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内(すなわち凝固室中ともいえる。)に噴霧し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝集体を含むスラリーを得た。容器内の凝固性雰囲気は、以下のように形成した:(1)高さ9m、直径1.5mの円筒状の容器内において、容器内壁の上部に取り付けたサイドスプレーノズルから46℃の温水を内壁面を流下させた;(2)前記(1)と共に、25%酢酸カルシウム水溶液を、孔径が2.0mmの内部混合形2流体ノズルから圧力0.6Kg/cmGの水蒸気により100ミクロン以下の微細液滴として容器内に分散して、凝固性雰囲気を形成した。容器内の凝固性雰囲気の温度は60℃であり、凝固性雰囲気の圧力(容器内圧力)は大気圧とした。「凝固性雰囲気をその内部に形成させた容器内」は、「凝固室中」ともいえる。水性ラテックス(L-A2)の噴霧は、加圧ノズルの1種である空円錐ノズルであり、孔径が2.0mmのノズル8個を用い、噴霧圧力7.3Kg/cmGにて噴霧した。すなわち、実施例B7では気相凝固を実施した。次に、スラリーを遠心脱水し、上記凝集体である湿粉を得た。さらに、得られた湿粉を用いて、湿粉をイオン交換水500重量部中に投入する操作と、得られた混合物を遠心脱水する操作とを合計2サイクル繰り返し、湿粉を得た。湿粉の含水率は、55%であった。最後に50℃の乾燥空気を吹き込むことで前記湿粉を舞わせながら、湿粉の温度が40℃に達するまで乾燥した。すなわち、実施例B7では気流乾燥を実施した。乾燥後の粉粒体を32メッシュの篩にてふるい、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む粉粒体を得た。得られた粉粒体について耐ブロッキング性を評価したところ、合格であった。得られた粉粒体について体積平均粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は10mm以下であった。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0503】
本発明の一実施形態によれば、重合体微粒子のマトリクス樹脂への分散性に優れる、粉粒体を提供することができる。従って、本発明の一実施形態は、マトリクス樹脂(熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂など)に配合し、接着剤、コーティング材、成形体等の種々の用途に好適に用いることができる。