(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】アブレーションに基づく歯科用途用の3D製作
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20240611BHJP
B29C 64/194 20170101ALI20240611BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240611BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240611BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240611BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240611BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240611BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240611BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20240611BHJP
A61C 13/34 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/194
B29C64/314
B29C64/112
B29C64/124
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y70/00
A61C13/00 Z
A61C13/34 Z
(21)【出願番号】P 2021549146
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 IB2020050664
(87)【国際公開番号】W WO2020170053
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-25
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519016549
【氏名又は名称】アイオー テック グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ゼノウ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ネシェル ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ジラン ジブ
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0272121(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0071989(US,A1)
【文献】米国特許第05590454(US,A)
【文献】中国実用新案第201139649(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
A61C 13/00
A61C 13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元歯科装置を製作する方法であって、
支持材料の層をインクジェット印刷、レーザ誘起前方転写(LIFT)、デジタル光プロジェクタ(DLP)印刷、ステレオリソグラフィ(SLA)印刷、又は機械式のうちの1つによって液体状態で基材表面上に施工するステップと、
支持材料の固体層を作製するために前記支持材料を冷却又は紫外線(UV)硬化によって硬化するステップと、前記支持材料の硬化された外面を作製するために前記支持材料の
前記固体層を硬化するステップと、
所望の構造が形成される前記支持材料の固体層内に区域を作製するために、
第1のパルス持続時間で構成されたレーザ光線を用いて前記支持材料の不要部分をアブレーションするステップと、
第1のパルス持続時間よりも短い第2のパルス持続時間で構成されたレーザビームを用いて、所望の構造が形成される支持材料の前記固体層内の前記区域の表面を粗面化するステップと、
所望の構造が形成される前記支持材料の固体層内の前記区域内に活性歯科材料を堆積するステップと、
前記の施工するステップ、硬化するステップ、アブレーションするステップ、
粗面化するステップ、及び堆積するステップを前記三次元歯科装置が完成するまで一層ずつ繰り返すステップと、
残った支持材料を水又は他の溶媒によって除去するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記支持材料の
前記固体層を硬化するステップは、前記支持材料の固体層を作製するためのUV硬化に用いた波長と同じ波長のUV照射を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持材料の
前記固体層を硬化するステップは、前記支持材料の固体層を作製するためのUV硬化に用いた波長と異なる波長のUV照射を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性歯科材料は、インクジェット印刷、レーザ誘起前方転写(LIFT)、デジタル光プロジェクタ(DLP)印刷、ステレオリソグラフィ(SLA)印刷、又は機械式のうちの1つによって、液体状態で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記活性歯科材料の堆積後、堆積された歯科材料から加熱によって溶媒が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記歯科材料は、空気流、又は加熱ランプへの曝露のうちの1つによって加熱される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性歯科材料の堆積後、この歯科材料が硬化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記歯科材料は、UV硬化によって硬化される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記残った支持材料の除去後、前記三次元歯科装置がオーブン内で焼結される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記支持材料は、水混和性溶媒、水溶性ポリマー、及び水溶性ポリマーを形成するモノマーのうちの1又は2以上を含む水ベースの支持材料である、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記
水ベースの支持材料は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、アクリル酸、エチレングリコールアクリレート類、イソプロピルアクリルアミドのうちの1又は2以上と、レーザ波長吸収体とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザ波長吸収体は、カーボン充填材、金属、無機顔料、及び有機顔料のうちの1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザ波長吸収体は、前記支持材料の0.1体積%~5体積%で含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザ波長吸収体は、前記支持材料の20体積%まで含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザ波長吸収体は、前記支持材料の50体積%まで含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記活性歯科材料は、アマルガム、複合材料、グラスアイオノマー、金、セラミック、鋼、チタン、アクリル樹脂、ポリマー、ジルコニウム、及び歯牙漂白製品のうちのいずれか1又は2以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記支持材料は、ワックス・ベースの支持材料を含む、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ワックス・ベースの支持材料は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、みつろう、カルナバろう、及びイソパラフィンワックスのうちの1つと、レーザ波長吸収体とを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記レーザ波長吸収体は、カーボン充填材、金属、無機顔料、及び有機顔料のうちの1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記活性歯科材料は、アマルガム、複合材料、グラスアイオノマー、金、セラミック、鋼、チタン、アクリル樹脂、ポリマー、ジルコニウム、及び歯漂白製品のうちのいずれか1又は2以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記支持材料は、水混和性溶媒、水溶性ポリマー、及び水溶性ポリマーを形成するモノマーのうちの1又は2以上を含み、5体積%の油及び0.1体積%~1体積%の乳化剤が添加された、乳化剤ベースの支持材料である、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記活性歯科材料は、アマルガム、複合材料、グラスアイオノマー、金、セラミック、鋼、チタン、アクリル樹脂、ポリマー、ジルコニウム、及び歯漂白製品のうちのいずれか1又は2以上を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年2月19日出願の米国仮出願第62/807,382号及び2019年3月25日出願の米国仮出願第62/823,079号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、例えば、人工歯、義歯、副子、べニア、インレー、アンレー、コーピング、フレームパターン、クラウン及びブリッジ、模型、器具などの歯科用製品を作製するために構成されたシステムのような、印刷可能材料システムに関する。
【背景技術】
【0003】
部品を作るために用いられる従来の製造プロセスは、層ごと(layer-by-layer)の技術に基づくものである。この技術では、製造される部品は、組み合わされたときに三次元(「3D」)構造を作り上げる一連の不連続な断面領域と考えられる。部品を層ごとにビルドアップすることは、金属又はプラスチックのピースを切削及び穿孔して所望の形状にする従来の機械加工技術とは非常に異なったものである。
【0004】
ラピッドプロトタイピング技術において、部品は、コンピュータ支援設計(CAD)又は他のデジタル画像から直接生成される。ソフトウェアを用いて、デジタル画像をスライスして薄い断面層にする。次いでプラスチック又は他の硬化性材料の層を互いの上に配置して部品を構築する。構造材料の層を組み合わせるために用いることができる多様な技術が存在する。材料の層を完全に硬化するために硬化ステップを必要とする場合がある。
【0005】
Sachs他の特許文献1(米国特許第5,204,055号)に記載されているように、インクジェット印刷技術を用いて三次元物体を製作することができる。この技術では、粉末床の粉末粒子の層上にプリンタヘッドを用いてバインダ材料が排出される。粉末層は、製造される物体のデジタル方式で重ね合わされた区画に対応する。バインダは、選択された区域内の粉末粒子を互いに融合させる。この結果、形成される物体の、融合した断面セグメントが得られる。このステップを所望の物体が得られるまで新たな各層に対して繰り返す。最終ステップにおいて、レーザ光線で物体をスキャンして粉末層を焼結させ、互いに融合させる。
【0006】
別のインクジェット印刷プロセスにおいて、Sandersの特許文献2(米国特許第5,506,607号)及び特許文献3(米国特許第5,740,051号)に記載のように、低融点の熱可塑性材料を1つのインクジェット印刷ヘッドを通して吐出して、三次元物体を形成する。第2のインクジェット印刷ヘッドがワックス材料を吐出して、三次元物体の支持体を形成する。物体が生成された後、ワックス支持体が除去され、必要に応じて物体に仕上げ加工が施される。
【0007】
Leyden他の特許文献4(米国特許第6,660,209号)及び特許文献5(米国特許第6,270,335号)は、複数の噴射口を有する市販の印刷ヘッドを用いてホットメルト光硬化性材料の小滴を基材上に選択的に吐出するインクジェット印刷法を開示する。各噴射口には圧電素子が装備されており、電流が印加されたときに、材料を通じて伝播する圧力波を生じさせる。印刷ヘッドは、スキャン経路に沿って移動し、流動性材料を選択的に基材上に堆積させる。次のステップで光照射を用いて材料を硬化させる。
【0008】
Yamane他の特許文献6(米国特許第5,059,266号)は、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が材料の飛行経路に沿ってステージに噴射されるインクジェット法を開示する。材料の噴射動作を制御することによって物品が形成される。
【0009】
Bredt他の特許文献7(米国特許第5,902,441号)は、下方向に割送り動作を行うことができる平面上に活性化可能な接着剤を含む粉末粒子の層を施工することを伴う、別のインクジェット印刷法を記載する。インクジェットプリンタは、粒子の層に活性化流体を所定パターンで導入する。流体は、混合物中の接着剤を活性化させ、粒子を互いに接着させて本質的に固体の層にする。物品の第1の断面部分が形成された後、可動面を下方向に割送り動作することができる。同じやり方で粒子の混合物の逐次的な層を施工して、所望の物品を形成する。
【0010】
Kapserchik他の特許文献8(米国特許出願公開第2004/0094058号)は、酸塩基セメントを用いたインクジェット印刷システムを開示する。平面上に粉末粒子の層を堆積させる。粉末は、金属酸化物又はアルミノケイ酸ガラスなどの塩基、ポリマー酸、又は他の酸を含む。インクジェットプリンタが水性バインダを吐出する。塩基性粉末が水の存在下で酸と相互作用して、イオン架橋したヒドロゲル塩が形成される。架橋ヒドロゲルの形成により、混合物の硬化が生じる。
【0011】
より具体的には、三次元歯科用製品を作製するためのインクジェット印刷法は下記特許文献に記載されている。
【0012】
Moszner他の特許文献9(米国特許第6,939,489号)は、歯の修復用の三次元歯科用フォームピース及び置換部品の製作のための、三次元プロット技術を用いたプロセスを開示する。三次元プロッタのノズルから排出されるマイクロドロップ又はマイクロコードを切り取ることによって層方式で物体が生成される。排出された材料を使用材料の種類に応じて様々な機構によって硬化させることができる。これには、融解した材料の冷却、重縮合、重付加、熱硬化、及び光照射が含まれる。
【0013】
Rheinberger他の特許文献10(米国特許第7,189,344号)は、総義歯又は部分義歯などの三次元歯科用修復部品を生成するための、インクジェット印刷を用いたプロセスを開示する。このプロセスは、層ごとに重合性材料をベース支持体に吹き付けることを含む。次の層を施工する前に、各材料層を光源によって重合する。この重合性材料は、70重量%以下の重合可能モノマー及びオリゴマーのうち少なくとも1つと、0.01重量%から10重量%までの重合開始剤と、少なくとも20重量%のワックス状かつ流動性のモノマー及び着色顔料のうちの選択された1つを有する混合物とを有する、ワックス状のものとして記載されている。
【0014】
Feenstraの特許文献11(米国特許第6,921,500号)及び特許文献12(米国特許第6,955,776号)は、クラウンなどの歯科用エレメントを作製するための、液体バインダ及び粉末床を用いたインクジェット印刷プロセスを開示する。このエレメントは、粉末の逐次的な層を施工すること、及びインクジェットプリンタを用いて層上に液体バインダを排出することによって生成される。バインダは、表面に重合可能及び/又は重縮合可能な有機基を有するナノメートルオーダの無機固体粒子を含むことが好ましい。粉末の最後の層にバインダが施工された後、過剰な未結合の粉末が除去される。次いで、粉末層を約400℃から800℃の範囲の温度まで加熱することによって焼結させる。焼結ステップは、粉末粒子間にネック部(neck)のみが形成されるように行われる。得られた焼結歯科用エレメントに、歯科用エレメントの材料よりも低い温度で融解するガラスセラミック又はポリマーなどの第2相材料を浸透させる。これは歯科用エレメントの間隙率を低減させる。
【0015】
Bordkin他の特許文献13(米国特許第6,322,728号)は、歯科用修復材を作製するために用いられる、溶融堆積モデリング及び三次元印刷などのソリッドフリーフォーム(solid free form)製作技術を記載する。三次元印刷は、逐次的に堆積された粉末層の選択された区域にバインダをインクジェット印刷することを含む。各層は、粉末床の表面上に粉末の薄層を広げることによって作製される。各層についての指示は、修復材のCAD表現から直接的に導き出すことができる。セラミック又は複合材料層にバインダ材料が施工される。この粉末/バインダ材料の施工を数回繰り返して、所望の形状の修復材を生成する。層形成プロセスが完了した後、構造を硬化させて粒子の結合をさらに促進する。
【0016】
Sun他の特許文献14(国際特許出願公開番号WO2014078537A1)は、三次元歯科装置を製作するための、デジタル光プロセッサ(DLP)プロジェクタ、又はステレオリソグラフィ(SLA)といった他の光線照射を用いた液体樹脂システムを記載する。DLP法又はステレオリソグラフィ及び材料を用いて、任意の歯科装置を作製することができる。この方法では、DLP法又はステレオリソグラフィに基づく3Dプリンタの樹脂槽内に、重合可能樹脂材料又は加熱された樹脂材料が液体として充填される。DLP法の場合、液体樹脂(又は加熱樹脂)の中に連続的にボクセル平面を投影し、次いでこの樹脂が重合して固体になることによって、3D物体を構築する。装置が完全に作り上げられるまで、重合材料の逐次層がこのようにして追加される。次いで、装置は、必要に応じて、洗浄され、仕上げ加工され、完全に最終硬化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第5,204,055号
【文献】米国特許第5,506,607号
【文献】米国特許第5,740,051号
【文献】米国特許第6,660,209号
【文献】米国特許第6,270,335号
【文献】米国特許第5,059,266号
【文献】米国特許第5,902,441号
【文献】米国特許出願公開第2004/0094058号
【文献】米国特許第6,939,489号
【文献】米国特許第7,189,344号
【文献】米国特許第6,921,500号
【文献】米国特許第6,955,776号
【文献】米国特許第6,322,728号
【文献】国際特許出願公開番号WO2014078537A1
【文献】米国特許第9,592,105号
【文献】米国特許出願公開第2002/0006532号
【文献】米国特許第5,231,062号
【文献】米国特許第5,096,862号
【文献】米国特許第4,098,612号
【文献】米国特許第4,174,973号
【文献】米国特許出願公開第2017/0189995A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの実施形態において、三次元歯科装置は、支持材料の層を液体状態で基材表面上に施工するステップと、支持材料の固体層を作製するために支持材料を冷却又は紫外線(UV)硬化によって硬化するステップと、支持材料の固体層内に所望の構造が形成される区域を作製するために、レーザ光線を用いて支持材料の不要部分をアブレーションするステップと、所望の構造が形成される支持材料の固体層内の区域内に活性歯科材料(例えば、アマルガム、複合材料、グラスアイオノマー、金、セラミック、鋼、チタン、アクリル樹脂、ポリマー、ジルコニウム、又は歯牙漂白製品)を堆積するステップと、施工するステップ、硬化するステップ、アブレーションするステップ、及び堆積するステップを三次元歯科装置が完成するまで一層ずつ繰り返すステップと、残った支持材料を水又は他の溶媒によって除去するステップと、によって製作される。支持材料の層は、インクジェット印刷、レーザ誘起前方転写(LIFT)、デジタル光プロジェクタ(DLP)印刷、ステレオリソグラフィ(SLA)印刷、又は機械式のうちのいずれかによって基材表面上に施工することができる。場合によっては、支持材料の硬化された外面を作製するために支持材料の第2の硬化を行うことができる。支持材料の第2の硬化を使用する場合、これは支持材料の固体層を作製するためのUV硬化に用いた波長と同じ波長のUV照射を用いて行うことができる。あるいは、支持材料の第2の硬化は、支持材料の固体層を作製するためのUV硬化に用いた波長と異なる波長のUV照射を用いて行うことができる。
【0019】
活性歯科材料は、インクジェット印刷、レーザ誘起前方転写(LIFT)、デジタル光プロジェクタ(DLP)印刷、ステレオリソグラフィ(SLA)印刷、又は機械式のうちのいずれかによって、液体状態で堆積することができる。活性歯科材料の堆積後、堆積された歯科材料から加熱(例えば、空気流、又は加熱ランプへの曝露)によって溶媒を除去することができる。
【0020】
活性歯科材料の堆積後、歯科材料を硬化することができる(例えば,UV硬化によって)。さらに、残った支持材料の除去後、三次元歯科装置をオーブン内で焼結することができる。
【0021】
上記プロセスのいずれか又はすべてを含む実施形態において、支持材料は、水混和性溶媒、水溶性ポリマー、及び水溶性ポリマーを形成するモノマーのうちの1又は2以上を含む水ベースの支持材料とすることができる。例えば、支持材料は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、アクリル酸、エチレングリコールアクリレート類、イソプロピルアクリルアミドのうちの1又は2以上、並びにレーザ波長吸収体とすることができる。レーザ波長吸収体は、いくつかの実施形態では、0.1体積%~5体積%とすることができる。他の実施形態において、レーザ波長吸収体は、より高い体積比率とすることができ、例えば、約20体積%まで、さらにはまた約50体積%までとすることができる。さらに、レーザ波長吸収体は、カーボン充填材、金属、無機顔料、及び/又は有機顔料とすることができる。
【0022】
上記プロセスのいずれか又はすべてを含む他の実施形態において、支持材料は、ワックス・ベースの支持材料とすることができる。例えば、ワックス・ベースの支持材料は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、みつろう、カルナバろう、及び/又はイソパラフィンワックスと、カーボン充填材、金属、無機顔料、及び/又は有機顔料などのレーザ波長吸収体とを含むことができる。
【0023】
上記プロセスのいずれか又はすべてを含むさらに別の実施形態において、支持材料は、水混和性溶媒、又は水溶性ポリマー、及び水溶性ポリマーを形成するモノマーを含み、5体積%の油及び0.1体積%~1体積%の乳化剤が添加された、乳化剤ベースの支持材料とすることができる。
【0024】
本発明のこれらの実施形態及び更なる実施形態を以下、説明する。
【0025】
本発明を、添付の図面において、限定ではなく例示的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による水ベースのプロセスの概略を示す。
【
図2】本発明の更なる実施形態によるワックス・べースのプロセスの概略を示す。
【
図3】本発明の更に別の実施形態によるエマルション・ベースのプロセスの概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、一般に、例えば、人工歯、義歯、副子、べニア、インレー、アンレー、コーピング、フレームパターン、クラウン及びブリッジ、模型、器具などの歯科装置を作製するための、ラピッドプロトタイピングシステムに関する。より具体的には、こうした歯科装置を、アブレーションによって彫刻することができる支持材料を用いて、新規な液体から三次元物体として歯科装置をビルドアップすることによって、製作することができる。支持材料は、LIFT(レーザ誘起前方転写)、SLA(ステレオリソグラフィ)、DLP(デジタル光加工)、インクジェット、又は機械式システムによって印刷することができ、レーザ光線によって不要部分を除去し、各層を順次形作ることによって、形成することができる。支持材料は、アブレーションの前に相変化又は硬化することが可能であり、模型が仕上がった後、水又は他の環境にやさしい溶媒で除去することができる。
【0028】
本発明の実施形態において、アブレーションベースの3Dプリンタを用いて、材料の構造を層ごとに作製して、物体をビルドアップする。得られた三次元物体は、非常に良好な寸法安定性を有する。1つの実施形態において、いくつかの材料系を用いて歯科装置を製造する。本発明の材料は、歯科用途に適しており、機械的強度と優れた物理的性質の両方を併せ持つ。さらに、これらの材料は、良好な生体適合性を有しており、歯科用途にとって理想的なものとなる。
【0029】
歯科装置は、以下の構成要素を用いて調製することができる。
a.支持材料
b.活性材料
c.レーザアブレーション及びUV照射
【0030】
本発明の種々の実施形態において、三次元歯科装置は以下のように製作される。
1)(加熱により又は加熱なしで)液体状態の支持材料を、インクジェット、LIFT、DLP、SLA、又は他の機械式手法のいずれかによって、均質な層として表面上に施工する。
2)次いで、支持材料を冷却又は紫外線(UV)照射への曝露によって堅くして(硬化)、固体支持体を作製する。好ましくは、各層の外側皮膜に対して追加の第2の硬化(同じ又は別の照射波長を用いる)を用いて、第1の硬化において生成されたものよりもさらに硬い外側皮膜を作製する。
3)レーザ光線を用いて支持材料の不要部分をアブレーションする。加工精度により、又は外側層と内側部分との間の硬度差を用いることによって、レーザ光線が下層に浸透することはない。
4)次いで、インクジェット、LIFT、DLP、SLA、又は他の機械式手法によって、歯科材料を(加熱により又は加熱なしで)液体状態で構造の表面材料の上に堆積し、均質な層として表面上に施工する。
5)加熱を用いて、空気流又は加熱ランプによって歯科材料から溶媒を除去する。他の応用において、歯科材料がUV硬化を必要とする場合があり、硬化のためにUV硬化を用いることができる。
6)工程1~5に基づく層ごとのレーザ堆積を用いて歯科用物体を作製し、次いで水又は他の環境にやさしい溶媒によって支持材料を除去する。
7)その物体にとって必要であれば、次いで最終構造を焼結用の高温オーブンに入れることができる。
【0031】
1.支持材料
本発明の実施形態による支持材料は、以下の性質を有する。
【0032】
A.水溶性(又は他の容易に除去できる材料):水溶性物質を支持材料として用いることは、支持材料を最終的に直接除去することができるので極めて有益である。したがって、本発明によって使用される支持材料は、水、好ましくは冷水を用いて容易に除去されるものであることが好ましい。
【0033】
B.低アブレーション閾値:支持材料にとって望ましい他の性質は、アブレーションプロセスに関係がある。アブレーションプロセスに必要なエネルギーが低い材料は、プロセス中に使用される総エネルギーを削減し、また、歯科装置の製作のための総時間も短縮する。したがって、本発明によって使用される支持材料は、好ましくは低アブレーション閾値材料、すなわちレーザ波長における吸収が良いことと、低い帯域エネルギーとの優れた組合せを有し、それゆえ切削及び蒸発が速い材料である。
【0034】
C.無毒性蒸気:アブレーションプロセスは、毒性蒸気を発生させることがある。したがって、本発明によって使用される支持材料は、無毒性蒸気を発生させるものであることが好ましい。
【0035】
D.材料の性質:支持材料は、所望の歯科構造を動かないように保持するのに十分な強度を有し、かつ歯科構造の成分に対して不活性なものであるべきである。支持材料はまた、3つの異なる状態間でそのレオロジー的挙動が変化することが可能なものであるべきである。すなわち、基材又は他の表面に施工されるときには流動し、歯科装置をビルドアップしている間は固体であり、アブレーションによって、下の層に損傷を与えることなく蒸発するものであるべきである。したがって、本発明によって使用される支持材料は、これらの特質を示すものであることが好ましい。
【0036】
上記条件のすべてを満たす支持材料は、以下の方法のいずれか1つ又はこれらのいくつかの方法の組合せを用いて調製することができる。
【0037】
A.水溶性ベース:水混和性溶媒、水溶性ポリマー、及び水溶性ポリマーを形成するモノマーのみを用いることで、第1の条件を満たすことになる。水溶性材料の例は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリプロピルアクリルアミド等である。UV照射により(光開始剤の存在下で)水溶性ポリマーを生成するモノマーの例は、ビニルピロリドン、アクリル酸、エチレングリコールアクリレート類、イソプロピルアクリルアミド等である。
【0038】
主としてグリコール類由来の水溶性溶媒を水溶性ベースに添加することで、水への溶解性及び低エネルギーのアブレーション閾値の両方を示すとともに無毒性蒸気の材料が得られる。必要な機械的性質を著しく損なうことなく、溶媒、主として高粘性の溶媒を構造の一部として用いることができる。アブレーション中に、結合エネルギーが最も低い物質が最初に構造から離脱する(すなわち、最初に気化する)。したがって、他の化学結合よりも弱い水素結合のみで保持されている溶媒は、たとえ高沸点のものであっても最初に離脱するので、アブレーション閾値を下げ、かつ毒性蒸気を加えない。
【0039】
アブレーション閾値を下げるために、レーザ波長における良好な吸収体を使用すべきである。その目的で、非常に良好な吸収率を有する材料を支持材料中に例えば0.1体積%~5体積%分散させ、又は他の実施形態では、もっと高い体積比率、例えば約20体積%まで、さらには約50体積%まで分散させて、所望の吸収効果を達成する。使用することができる良好な吸収体の例は、カーボン充填材、金属、無機顔料、及びある種の高度に設計された有機顔料である。有機顔料のいくつかの良い例は、SDA1906、SDA3734及びSDA3755(フロリダ州ジュピターのH.W.Sands Corp.製)であり、無機顔料の場合は、Black444、Green260及びBlue10K525(オハイオ州シンシナティのShepherd Color Company製)が良い例である。
【0040】
アブレーションは、各回、支持材料の1つの層のみに影響を及ぼすことが好ましい。したがって、最後に仕上げた層の性質と新たな層の性質との間で区別があることが望ましい。したがって、第2のUV(又はIR)吸収系を配合物に添加して、第2のUV(又はIR)硬化が各層の外面のみに生じるようにすることができる。例えば、施工後、支持材料を1つの波長(例えば、低めの波長、例えば365nm)でUV硬化して、固体構造を作製することができる。次いで、アブレーションによって、不要部分を蒸発させることができる。その後、支持材料を別の波長(例えば、高めの波長、例えば400nm又は532nm)でUV硬化することができる。このような異なる波長で硬化可能な材料の例は、365nmではSpeedCure TPO、400nmではSpeedCure DETXと第三級アミン(両方とも英国ウェストヨークシャーのLambson Limited製)、及び532nmではエオシンと第三級アミンである。1つの実施形態において、支持材料は、10%ポリアクリル酸水溶液を用いることによって作られる。その溶液に10%~40%のアクリル酸モノマーと、0.1%~2%のSpeed Cure TPOとを第1のUV硬化系として添加する。アブレーション材料のために、0.1%~5%のBlue 10K525を溶液に添加する。第2の硬化のために、別の系である0.1%-2%のエオシン及びSpeed Cure EDBが添加される。
【0041】
2つの層間を区別するための別のより簡便な手法は、異なる性質の活性材料(すなわち、歯科装置を作り上げる材料)を用いることである。この手法では、支持材料のアブレーションの後、別のソフトなアブレーションが行われる。このソフト・アブレーションの工程において、次の層で活性材料が使用する区域のみが、粗面を生成するのにちょうど十分なエネルギーを用いて穏やかにアブレーションされる。活性材料が表面に施工される次の工程において、活性材料は、アブレーションされた区域に入る。このようにして、完全にアブレーションされた区域が充填されるとともに、粗面の穴も充填される。支持材料は、水によって除去される。
【0042】
図1は、このプロセス100の態様を示す。102において、支持材料10が基材12上に堆積されるか又はその他の方法で施工される。104において、支持材料は、例えば、その支持材料の硬化波長のUV照射に曝露することによって硬化される。その後、106において、区域14内の支持材料の一部がレーザアブレーションによって除去される。アブレーションプロセスは、下にある基材12がこのプロセスで気化その他損傷しないように制御される。このことは、UV照射の制御された適用、例えば基材の材料を気化するには不十分な比較的低いエネルギーでの適用を通じて達成することができる。所望の構造が製作される区域14内の支持材料のアブレーションの後、区域内の基材12のソフト・アブレーション108が行われる。上述のように、ソフト・アブレーションは、所望の構造が製作される区域内の基材12の表面を粗面化する役割を果たす。これは、低エネルギーのレーザの1又は2以上のパルスを用いて行うことができる。1つの実施形態において、パルスNd:YAGレーザを用いることができ、0.1nsから1.0nsの範囲のパルスが放出されるようにレーザのパルス出力を制御することができる。この範囲内の持続時間が長めのパルスを106のようなアブレーション工程中に用いることができ、他方、この範囲内の持続時間が短めのパルスを108のようなソフト・アブレーション工程中に用いることができる。
【0043】
ソフト・アブレーション工程108の後、支持材料が除去されて基材表面のソフト・アブレーションが行われた同じ区域内の基材に、活性材料16の層が堆積その他の方法で施工される(110)。次に、活性材料16及び残った支持材料の層10の上に支持材料の第2の層18が堆積され、支持材料の新たな層18はUV硬化114される。
【0044】
支持材料の新たな層18の硬化の後、その支持材料の新たな層の一部が、所望の構造の次の層が製作される区域20内のレーザアブレーション116によって除去される。前と同様に、区域20内の支持材料のアブレーションの後、活性材料の露出表面と区域20内の以前に堆積された支持材料層10の任意の部分とのソフト・アブレーション118が行われる。
【0045】
この所望の構造の層ごとの構築を、活性材料の更なる施工120、その上への支持材料の施工、新たに付加した支持材料の層の硬化、特定の区域内の新たに付加した支持材料の層のアブレーション、及び、このアブレーションで露出した下にある構造の表面のソフト・アブレーションによって、所望の構造が形成されるまで続けることができる。所望の構造の形が完成すると、水洗することによって、活性材料の所望の構造22を基材12上の所定位置に残して支持材料を除去122することができる。
【0046】
B.ワックス・ベース:支持材料についての別の手法は、アブレーションすることができるワックス材料を用いる。この目的で、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、みつろう、カルナバろう、イソパラフィンワックス等をその融点まで加熱することによって支持材料として用いることができる。次いでワックスをその液体状態で施工し、施工の直後に固化する。ワックスは、無毒性の低アブレーション閾値材料であり、したがって、この用途に好適である。ワックス・ベースのプロセス200の一例を
図2に示す。
【0047】
202において、上記で説明したような支持材料30が基材12に堆積その他の方法で施工される。204において、支持材料は冷却され、その後、206において、区域14内の支持材料の一部がレーザアブレーションによって除去される。ワックス支持材料のアブレーション閾値を下げるために、レーザ波長における良好な吸収体を使用すべきである。この目的には上述のすべての材料が妥当である。アブレーションプロセスは、下にある基材12がこのプロセスで気化その他損傷しないように制御される。このことは、レーザパルスの制御された適用、例えば基材の材料を気化するには不十分な比較的低いエネルギーでの適用を通じて達成することができる。
【0048】
所望の構造が製作される区域14内の支持材料のアブレーションの後、構造は加熱され、UV照射への曝露によって硬化される(208)。UV光による硬化を促進するために、ワックス支持材料に5%~50%のSR586、SR587、又はSR324(ペンシルバニア州エクストンのSartomer製)を添加することができる。随意的に、層間の区別のために、UV架橋ワックスを支持材料に添加することができる。支持材料層の上部のモノマーの拡散を可能にするために、UV硬化の前に表面を加熱する。
【0049】
UV硬化の後、支持材料が除去された同じ区域内の基材に、活性材料16の層が堆積その他の方法で施工される(210)。次に、活性材料16及び残った支持材料の層30の上に支持材料の第2の層32が堆積され、支持材料の新たな層は、冷却214され、所望の構造の次の層が製作される区域20内でアブレーション216される。前と同様に、区域20内の支持材料のアブレーションの後、構造は、加熱され、UV照射への曝露によって硬化される(218)。
【0050】
所望の構造の層ごとの構築を、活性材料の更なる施工220、その上への支持材料の施工、新たに付加した支持材料の層の冷却、特定の区域内の新たに付加した支持材料の層のアブレーション等によって、所望の構造が形成されるまで続けることができる。所望の構造の形が完成すると、加熱することによって、活性材料の所望の構造22を基材12上の所定位置に残して、支持材料を除去222することができる。
【0051】
C.エマルション・ベース:各層の内側の材料間の区別をその表面において作り出す別の方法は、第2の硬化が油相のみにて生じるエマルション・ベースの配合によって行うことができる。この手法を用いると、支持材料の外側層は、第1の硬化を妨げることなく、第2の硬化で架橋される。水ベースの例と同じ材料に5%の油及び0.1%~1%の乳化剤を添加して、支持材料に用いることができる。
【0052】
図3は、本発明の実施形態によるエマルション・ベースのプロセスの主工程を示す。302において、支持材料40が基材12上に堆積その他の方法で施工される。304において、支持材料は、例えばその支持材料の硬化波長のUV照射に曝露することによって硬化される。その後、306において、区域14内の支持材料の一部がレーザアブレーションによって除去される。アブレーションプロセスは、下にある基材12がこのプロセスで気化その他損傷しないように制御される。このことは、レーザパルスの制御された適用、例えば基材の材料を気化するには不十分な比較的低いエネルギーでの適用を通じて達成することができる。所望の構造が製作される区域14内の支持材料のアブレーションの後、第2のUV硬化308が行われる。上述のように、この第2のUV硬化は油相においてのみ生じ、1つの層と他の層との間を区別する。
【0053】
第2の硬化の後、支持材料が除去されて基材表面のソフト・アブレーションが行われた同じ区域内の基材に、活性材料16の層が堆積その他の方法で施工される(310)。次に、活性材料16及び残った支持材料の層40の上に支持材料の第2の層42が堆積312され、支持材料の新たな層42はUV硬化314される。
【0054】
支持材料の新たな層の硬化の後、その支持材料の新たな層の一部が、所望の構造の次の層が製作される区域20内のレーザアブレーション316によって除去される。前と同様に、区域20内の支持材料のアブレーションの後、活性材料の露出表面と区域20内の以前に堆積された支持材料層の任意の部分との第2のUV硬化318が行われる。この所望の構造の層ごとの構築を、活性材料の更なる施工320、その上への支持材料の施工、新たに付加した支持材料の層の硬化及び選択的アブレーション、第2の硬化等によって、所望の構造が形成されるまで続けることができる。所望の構造の形が完成すると、活性材料の所望の構造22を基材12上の所定位置に残して、支持材料を除去322することができる。
【0055】
LCSTベース材料:別の手法は、支持材料として低臨界溶解温度(LCST)ポリマーを使用することである。これらのポリマーは、高い温度ではゲル化し、低い温度では液体になり、これを用いることによって、支持材料を液体状態で施工することができ、ポリマーのゲル化点より高温まで加熱することによって固化させることができる。この手法に用いることができるポリマーは、メチルセルロース類又は多数の水素結合を含む他のポリマー由来のものである。これらのポリマーの除去は、そのゲル化点より低い温度まで冷却することによって達成することができる。
【0056】
2.活性材料
上記の例のいずれか又はすべての歯科用途のための活性材料は、人工歯、義歯、副子、べニア、インレー、アンレー、コーピング、フレームパターン、クラウン及びブリッジなどのような歯科製品を作製するためのあらゆる材料とすることができる。本発明の実施形態で用いられるアブレーションプロセスは、新規の、より優れた活性材料を使用する可能性を創出するとともに、現在の歯科用材料(いくつかの一般的な活性材料を以下で列挙する)の加工性を高め、施工時間を短縮する。
【0057】
他の従来の製作法では実装が困難な新規活性材料の1つの種類は、セラミックである。セラミックの中でも、重要な例はジルコニアであり、これは従来の印刷技法には上手く適合しない。各印刷装置は、その応用の可能性に限界があり、インクジェットプリンタは、ノズルを詰まらせることのない非常に低粘性の材料で最も良く機能し、SLA及びDLPプロセスは、各々、限られた数の材料でのみ機能する。どちらも、ジルコニアに他の材料を添加する必要があるが、これらの添加はジルコニアの有用な性質を劣化させるという事実に直面する。結果として、従来の技術で印刷されるジルコニア構造は、脆弱になり、焼結条件に対して非常に敏感になる。
【0058】
本発明の実施形態により用いられるアブレーションプロセスによってのみ実装することができる新規材料は、純ジルコニア、アルミナ、セラミックガラス、又は他のいずれかのセラミック材料であり、流動性及び加工性を生み出すための限られた量の添加材料を含む。添加材料は、容易に除去されるものであるべきである。その目的で、2つの可能なルートが提示される。
a.ジルコニア又は他のいずれかのセラミック材料に、容易に蒸発する溶媒のみを添加する。溶媒は、加工性のみを与える(拡散性すら無視することができる)。
b.相分離固体材料。ジルコニア又は他のいずれかのセラミック材料と固溶体を形成し、融解によって容易に分離する、ある種のワックス状材料の添加。
【0059】
1つの実施形態において、このとき、約40重量%~70重量%のジルコニア又は他のいずれかのセラミック材料を溶媒、例えば水、エタノール、グリセロール、又は他の溶媒に添加する。揮発性有機化合物(VOC)の量を制限すること及び引火性を小さくすることは、溶媒を選択するうえで重要な考慮事項である。追加の材料は添加すべきではないが、界面活性剤及びレオロジー又はレベリングの改質剤を配合物に添加することができる。
【0060】
部分安定化ジルコニアは、ジルコニアの多形の混合物であり、なぜなら不十分な立方晶相形成酸化物(安定剤)が添加されており、立方晶と準安定正方晶のZrO2混合物が得られるためである。純ジルコニアに少量の安定剤を添加すると、その構造は、1000℃より高い温度では正方晶相になり、それより低い温度では立方晶相と単斜晶(又は正方晶)相との混合物になる。この部分安定化ジルコニアは、正方晶ジルコニア多結晶(TZP)とも呼ばれる。いくつかの異なる酸化物、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化カルシウム(CaO)、及び酸化セリウム(Ce2O3)をジルコニアに添加して、正方晶及び/又は立方晶相を安定化することができる。これらのセラミック材料に関する更なる情報は、例えば、特許文献15(米国特許第9,592,105号)及び特許文献16(米国特許出願公開第2002/0006532号)で見つけることができる。
【0061】
本発明の実施形態によって作られるセラミック補綴材料は、所望の曲げ強さ及び光透過性を与えるように選択することができる。
【0062】
その目的のための1つの好ましいセラミックは、酸化アルミニウムである。酸化アルミニウムは、強く硬質で透明であり、中間色(neutral color)を有し、容易に入手できる。さらに、酸化アルミニウムは、その光透過性が可視スペクトル全域にわたって実質的に一定であり、したがって可視光のすべての波長を透過するという点でもまた適している。所望であれば、焼結を補助し、酸化アルミニウムの強度を高めるために、酸化アルミニウムに酸化マグネシウムを1パーセントまで添加することができる。
【0063】
同じく光透過性結晶セラミック補綴材を提供する他の材料を使用してもよい。例えば、マグネシウム-アルミニウムスピネル、酸化ジルコニウム、イットリウムアルミニウムガーネット、ケイ酸ジルコニウム、酸化イットリウム及びムライトは、本発明の実施形態により作られる補綴材に適した結晶材料である。これらのセラミック材料に関する更なる情報は、例えば特許文献17(米国特許第5,231,062号)、特許文献18(米国特許第5,096,862号)、特許文献19(米国特許第4,098,612号)、及び特許文献20(米国特許第4,174,973号)で見つけることができる。
【0064】
歯科製品に用いられる活性材料は、以下のうち1又は2以上とすることができ、これは単一材料の歯科製品(one material dental product)又は2種以上の材料の歯科製品(more than one material dental product)(例えば、セラミック由来の歯科製品及び外層用漂白製品)で使用することができる。
【0065】
A.アマルガム。一般に「充填剤(filling)」とも称されるアマルガムは、銀、スズ、及び銅を水銀と合金にした小粒子で作られたシーラントである。アマルガムは、その機械的性質及び長寿命であることにより、長年にわたって第1の選択肢であった。しかしながら、その主たる欠点は、水銀(安定な状態)を含んでいること及び美観に欠けることである。
【0066】
B.複合材料。これらの美観に優れた充填剤は、長年にわたって利用可能であった。現在、この材料は、保存修復歯科における第1の選択肢であり、それは歯髄保護について及び接着剤技術において為された重要な進歩によるものである。複合材料は、空洞に挿入され、重合ランプによって硬化される。複合材料はまた、クラウン及びブリッジを恒久的にシールするのにも使用される。
【0067】
C.グラスアイオノマー。この材料は、乳歯の一時的充填に用いられる。これはクラウン及びブリッジの恒久的シールにも使用される。
【0068】
D.金。歯科では、金は、金合金の形態で見受けられる。金は、重要な補綴の実現にとって必須の無害性、精度、剛性ゆえに理想的な材料である。これは主として後部の再建に用いられる。グレーゴールドが目立たないので通常選択される。
【0069】
E.セラミック。セラミック修復は、幅広い美観的な可能性を提供するので、固定補綴(クラウン及びブリッジ)において選択される材料となってきている。
【0070】
F.鋼(クロム-コバルト)。フレームワーク及びクラスプ用の除去可能な補綴で使用される。
【0071】
G.チタン。その抗アレルギー性の特質ゆえにインプラント歯科で使用される。除去可能な補綴での金属アレルギーの稀な症例でも使用することができる。
【0072】
H.アクリル樹脂及び他のポリマー。義歯の歯牙は、アクリル樹脂又はセラミックで作られる。現在、他の樹脂製品もまた利用可能である。
【0073】
I.ジルコニウム。ジルコニウムは、主として固定補綴のフレームワークに使用される。これは、ここ20年間にわたって歯科学で使用されているCADCAMセラミックの1つのタイプであり、生体適合性及び美観的性質ゆえに普及している。
【0074】
J.歯牙漂白製品。黄ばんだ前歯の美観を最適化するために使用される。夜間使用のものは「過酸化尿素」ゲルからなる。日中使用には、過酸化水素の誘導体が用いられる。内部漂白、例えば歯根治療後の黒ずんだ歯牙の内部漂白にも、過酸化尿素が使用される。マイクロアブレージョンに用いられるゲルは、リン酸で構成される。
【0075】
アブレーション:本明細書で論じるアブレーション操作は、引用により本明細書に組み入れるZenou他の特許文献21(米国特許出願公開第2017/0189995A1号)に記載されているように行うことができる。
【0076】
このように、新規な支持材料を用いた歯科用途のアブレーションベースの方法を説明してきた。本発明の1つの実施形態において、三次元歯科装置は、支持材料の層を液体状態で基材表面上に施工するステップと、支持材料の固体層を作製するために支持材料を冷却又は紫外線(UV)硬化によって硬化するステップと、支持材料の固体層内に所望の構造が形成される区域を作製するために、レーザ光線を用いて支持材料の不要部分をアブレーションするステップと、所望の構造が形成される支持材料の固体層内の区域内に活性歯科材料を堆積するステップと、施工するステップ、硬化するステップ、アブレーションするステップ、及び堆積するステップを三次元歯科装置が完成するまで一層ずつ繰り返すステップと、その後、残った支持材料を水又は他の溶媒によって除去するステップと、によって製作することができる。残った支持材料を除去した後、三次元歯科装置は、オーブン内で焼結される。
【0077】
種々の実施形態において、活性歯科材料は、インクジェット印刷、LIFT、DLP印刷、SLA印刷、又は機械式アプリケーションによって、液体状態で堆積することができる。活性歯科材料は、アマルガム、複合材料、グラスアイオノマー、金、セラミック、鋼、チタン、アクリル樹脂、ポリマー、ジルコニウム、及び歯牙漂白製品のうちのいずれか1又は2以上とすることができる。
【0078】
図1~
図3の例に関連して上記では詳述しなかったが、活性歯科材料の層の堆積後、堆積された歯科材料から溶媒を除去することが必要な場合がある。これは、例えば、空気流、又は加熱ランプへの曝露によって行うことができる。あるいは、又はこれに加えて、活性歯科材料を、層ごとに、例えばUV硬化によって硬化させることが必要な場合がある。
【0079】
支持材料の層は、インクジェット印刷、LIFT、DLP印刷、SLA印刷、又は機械式アプリケーションによって基材表面に施工することができる。いくつかの実施形態において、支持材料の第2の硬化を行って、支持材料の硬化された外面を作製することができる。この支持材料の第2の硬化は、支持材料の固体層を作製するためのUV硬化に用いた波長と同じ波長又は異なる波長のUV照射を用いて行うことができる。種々の実施形態において、支持材料は、水ベースの支持材料、ワックス・ベースの支持材料、又は乳化剤ベースの支持材料とすることができる。
【0080】
本発明の実施形態において有用な水ベースの支持材料は、水混和性溶媒、水溶性ポリマー、及び水溶性ポリマーを形成するモノマーを含む。水ベースの支持材料はまた、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、アクリル酸、エチレングリコールアクリレート類、イソプロピルアクリルアミドのうちの1又は2以上、並びに、いくつかの実施形態では0.1体積%~5体積%の、又は他の実施形態ではより高い体積比率、例えば、約20体積%まで、さらにはまた約50体積%までの、レーザ波長吸収体(例えば、カーボン充填材、金属、無機顔料、及び有機顔料)を含むことができる。
【0081】
本発明の実施形態で有用なワックス・ベースの支持材料は、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレングリコールワックス、みつろう、カルナバろう、及びイソパラフィンワックスと、レーザ波長吸収体(例えば、カーボン充填材、金属、無機顔料、及び有機顔料)とを含む。
【0082】
本発明の実施形態で有用な乳化剤ベースの支持材料は、水混和性溶媒、水溶性ポリマー、及び水溶性ポリマーを形成するモノマーのいずれかを含み、5体積%の油及び0.1体積%~1体積%の乳化剤が添加されている。
【符号の説明】
【0083】
10、30、40:支持材料
12:基材
14、20:区域
16:活性材料
18、32、42:支持材料の新たな層
22:構造