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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】効力を判定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/573 20060101AFI20240611BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240611BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240611BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01N33/573 A
A61K31/485
A61P25/04
A61P35/00
A61P31/18
C12Q1/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021552875
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020056113
(87)【国際公開番号】W WO2020178447
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】19161136.7
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519353064
【氏名又は名称】エルディーエヌ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ワイ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/178676(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0153953(US,A1)
【文献】特表2015-529802(JP,A)
【文献】国際公開第2014/012054(WO,A1)
【文献】Mariya Farooqui,Naloxone acts as an antagonist of estrogen receptor activity in MCF-7 cells,Mol Cancer Ther.,2006年,5(3),pp.611-620,doi:10.1158/1535-7163.MCT-05-0016
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
A61P 31/18
A61K 31/485
A61K 45/06
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体である活性物質による治療法を受けている対象の治療をモニタリングするための方法であって、
前記治療ががん治療またはHIV/エイズ治療であって、
a.治療を受けている対象から得られた試料中のpERKのレベルを測定すること;
b.前記pERKのレベルを標準と比較すること、
を含み、
前記pERKのレベルが前記標準と比較して増加していることが、前記活性物質は有効レベルで投与されていることを示す、方法。
【請求項2】
前記標準が治療前の前記対象から得られた試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が末梢血単核球を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナルトレキソンの代謝産物または類似体が6-β-ナルトレキソール、ナロキソン、またはメチルナルトレキソンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象ががんまたはHIV/エイズの治療中であり、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象ががんの治療中である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが乳がん、肺がん、メラノーマ、結腸がん、またはグリオーマである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記pERKのレベルが前記標準のレベル以下であることが、前記活性物質の量が有効レベルに調整されることを示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、前記活性物質が一日あたり4.5mg以下の量のレベルでの治療を受けている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、前記活性物質が一日あたり3~4.5mgの量のレベルでの治療を受けている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記活性物質がナルトレキソンまたは6-β-ナルトレキソールである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記pERKが前記活性物質の投与の少なくとも24時間後に測定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記pERKが前記活性物質の投与の少なくとも48時間後に測定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記pERKレベルがpERK発現レベルを測定することにより求められる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記pERKレベルがウェスタンブロッティングにより求められる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療ががん治療である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記がん治療が化学療法、放射線療法、ホルモン療法、または免疫療法である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記がん治療が化学療法である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記治療がHIV/エイズ治療である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療が抗レトロウイルス療法である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のバイオマーカーの発現レベルをモニタリングすることにより対象の治療をモニタリングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのがん治療の成功は、がんを標的とする活性化合物の、アジュバント型の分子との同時投与に基づいている。独立した治療上の有用性はないが、アジュバントは、がんを標的とする活性化合物が最大の治療効果を達成できるように、対象の免疫系をプライミングする役割を果たす。
【0003】
アジュバントは、典型的には患者の免疫応答を調節するものであるため、最も多くはがんワクチンやヒト型化抗体医薬などの生物学的製剤と組み合わせて使用される。アジュバントは、患者の免疫系を強め、がんワクチンの曝露に応答した抗体の産生を増加させるように、または、外来抗体医薬に対する患者の免疫原性を抑制もしくは低下させることにより、作用する。すなわち、アジュバントが担う重要な役割として、がん免疫療法において、治療の成功という結果に向かう原動力となることが挙げられる。
【0004】
多くの場合、アジュバントは、放射線療法や化学療法などのより昔から存在するがん治療と併用され、これにより相乗的な治療がもたらされ、アジュバントの存在によって治療法の効力が顕著に増加することとなる。これにより、従来のがん治療の使用量を減らすことができ、このことは、多くのがん治療は高用量投与ではネガティブな副作用を伴うことから、有益である。
【0005】
患者の年齢、性別、身長、および体重、さらには環境因子など、治療法が身体に及ぼす効果に影響する要因は多種多様であるため、治療薬とアジュバントが有効レベルで投与されているかどうかを知ることは困難である。さらに、従来のがん治療では、患者がネガティブな副作用を経験する結果となる場合が多く、これは最適でない用量によって悪化する可能性があり、この最適な用量も患者によって異なる可能性がある。
【0006】
以上から、治療法が個々の患者に対し及ぼしている効果のモニタリングを可能にし、患者に最適な治療量が投与されるようにする、新規の治療レジメンの開発が求められている。モニタリングにより最適な治療量が投与されていないことが明らかな場合、それに応じて治療薬の投与量を変更することで、当該治療法のネガティブな副作用を最小限にしつつ、当該治療を可能な限り有効なものとすることができる。
【発明の概要】
【0007】
化学療法剤単独の投与と比較して、ナルトレキソンと化学療法剤の同時投与はがん細胞成長を低減させることが知られている。しかしながら、最適な治療を確実に与えられるように、与えた用量の有効性を定量化する方法があれば、有益であろう。
【0008】
本発明者らは以前に、低用量ナルトレキソンが、内科療法において、以前に使用されていた高用量レジメンに優る利点があることを報告した。本発明者らはこの度、低用量のナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体である活性物を用いた治療が、対象におけるpERKの発現を増加させることを発見した。pERK発現は、活性T細胞の増殖を促し(D’Souzaら、J Immunol.、2008年、181巻(11号):頁7617-7629)、感染やがん化した細胞を破壊することを目的とした免疫応答を行うT細胞の機能を促す。しかし、ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体など
の活性物質の高用量投与が、逆の効果を与え、対象におけるpERKの発現を減少させることが分かった。結果として、上記活性物質が多すぎると、身体が癌性細胞や感染細胞を破壊することを助ける、活性T細胞の数を増加させる助けにならない。従って、本明細書に記載されるような治療を受けている対象にとって、対象のpERK発現を上昇させ免疫応答を向上させる(すなわち、T細胞増殖を促進する)レベルで、ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体である活性物を投与されることは、有益である。本発明の方法を用いることで、pERK発現レベルをモニタリングして、上記活性物質が、pERK発現を確実に増加させる所望の低用量且つ有効レベルで投与されているかどうかを判定することができる。
【0009】
本発明の第一の態様において、ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体である活性物による治療法を受けている対象の治療をモニタリングするための方法であって、
a.治療を受けている対象から得られた試料中のpERKのレベルを測定すること;
b.上記pERKのレベルを標準と比較すること、
を含み、
上記pERKのレベルが上記標準と比較して増加していた場合、上記活性物質は有効レベルで投与されているものとする、
方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の説明は添付の図面を参照して行う。
図1A】(A)1.5mg、(B)3.0mg、(C)4.5mg、(D)6.0mg、および(E)10mgを含有する錠剤によって生じた、0時間および48時間の時点の、pERK、p21、およびBAXの発現レベルを示している。
図1B】同上。
図1C】同上。
図1D】同上。
図1E】同上。
図2】異なる量のナルトレキソン(NTX)を投与後のPBMC試料のウェスタンブロッティングを示している。
図3】1.5mg、3.0mg、4.5mg、6.0mg、および10mgを含有する錠剤によって生じた、pERK、p21、およびBAXの発現レベルを示している。
図4】pERK発現レベルとナルトレキソンの最高血中濃度との間に逆相関があること(左)、およびpERK発現レベルと6-β-ナルトレキソールの最高血中濃度との間に逆相関があること(右)を示している。
図5】実施例2の結果を示している;LDN、NTX、またはDMSOと一緒に培養されたPBMCのCD69発現。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、低用量ナルトレキソン(LDN)が、免疫系に対して有益な「プライミング」効果を有することを発見した。すなわち、LDNは、さらなる薬剤/治療選択肢による治療前に免疫系の細胞をプライミングするのに使用されることとなる。
【0012】
さらなる薬剤の投与前の第一治療期の一部としてLDNでプライミングを行った場合、LDN期によるプライミングなしや継続的なLDN投与よりも、より大きな細胞殺傷効果が、以前の出願時に本発明者らによって示された。しかし、現在のところ、適切量のLDNが投与されたかどうか、ひいては、プライミング効果が存在しているかどうか、を判定する簡便な方法は存在していない。
【0013】
本発明は、活性物質である、ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体の低用
量投与が、対象における、バイオマーカーとしてのリン酸化ERK(pERK)の発現を増加させるという発見に基づく。これは、ナルトレキソン化合物によって例示されている。有効な低用量の投与を受けている患者にある特定のレベルのpERK発現が見られるようである。すなわち、ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体による治療を受けながら、対象におけるpERK発現レベルを測定することにより、上記薬剤が所望の低用量且つ有効レベルで投与されているかどうかを、医師がモニタリングすることが可能となる。以上より、本発明者らは、pERKの発現レベルを測定することにより治療をモニタリングし、投与されている活性物質であるナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体の量を、効力および安全性が最大となるように変化させるための、インビトロの方法を発明した。
【0014】
ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体などの活性薬剤は、治療を受けている対象に投与された場合、対象の治療に用いられている抗がん剤の細胞毒性や細胞分裂阻害活性を増強する。理論に拘束されることを望むものではないが、pERKの発現レベルの増加は、細胞が活性物質であるナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体の作用に応答していることを示すものであり、ひいては、活性物質が有効な低用量で投与されていることを示している。一方、活性薬剤の投与が多過ぎるか少な過ぎると、pERK発現が減少することとなり、活性物質の抗がん剤に対するアジュバント効果が低減するおそれがある。CD3+細胞は、身体において病気と闘うための重要な役割を担う免疫細胞である。CD3+細胞が活性化すると、T細胞の増殖が増大するが、これが身体の病気に対する防御で重要となる。そのため、免疫系のブーストは有効に行われる。さらに、これらの細胞の活性が増加すると、全体的な細胞毒性が増加し、その後、さらなる治療薬の投与を含む治療レジメンの細胞毒性が増加する。従って、pERKは、投与中の活性物質の量が、さらなる治療薬の細胞毒性や細胞分裂阻害活性を増強する所望の低用量且つ有効レベルであるかどうかを確認するために有用なマーカーであり、このさらなる治療薬は活性物質が有効なレベルである場合に続いて投与されることとなる。
【0015】
ある実施形態では、上記活性物質は、対象において期待される正常基底レベルを超えるように、pERKの発現レベルを増加させるのに十分な量で、与えられる。例えば、上記活性物質は、pERKの発現レベルを、対象において期待される正常基底レベルと比較して、少なくとも10%増加させるのに十分な量で投与されてもよく、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%増加させるのに十分な量で投与される。「正常」基底レベルは、上記活性物質の投与前の対象から得られた試料においてpERKの発現レベルを測定することで求められるものでもよいし、あるいは、健常対象における発現の基底レベルを測定することにより確立された標準対照であってもよい。
【0016】
また、上記活性物質が最も有効な量で投与されている場合の、pERK発現レベルの増加には、最適な範囲があることが分かった。よって、ある実施形態では、上記活性物質は、上記のように、対象において期待される正常基底レベルを超えるように、pERKの発現レベルを増加させるのに十分な量で投与される一方、活性物質の投与量は、pERKの発現レベルを、対象において期待される正常基底レベルと比較して、最大でも90%増加させるものであり、あるいは好ましくは最大でも85%、より好ましくは最大でも80%、さらにより好ましくは最大でも75%、さらにより好ましくは最大でも70%、増加させるものである。
【0017】
上記活性物質は、pERKの発現レベルを、対象において期待される正常基底レベルの、15%~90%に増加させるのに十分な量で投与されることが好適であり、好ましくは20%~85%、より好ましくは25%~80%、さらにより好ましくは35%~75%、さらにより好ましくは40%~70%、さらにより好ましくは45%~65%、さらにより好ましくは50%~60%に増加させるのに十分な量で投与される。
【0018】
pERKの発現レベルの、細胞集団における測定は、当業者が利用できる分析法を任意の数用いて行うことができ、例えば、ゲル電気泳動およびウエスタンブロット解析、2D-PAGE、カラムクロマトグラフィ、リボソームプロファイリング、または質量分析が挙げられるが、これらに限定はされない。発現レベルの増加は、pERKの発現レベルを増加させる上記活性物質の投与前後のバイオマーカーの発現レベルを比較することにより、求めることができる。
【0019】
ある実施形態では、上記方法で使用される対象から得られた生物試料は、血液、血漿、血清、リンパ液、組織、または組織試料由来の細胞であり、好ましくは血液である。上記試料は末梢血単核球(PBMC)などの白血球を含むことが好ましく、CD3+細胞を含むことが好ましい。上記生物試料のいずれかを対象から得るための従来技術は当業者に周知である。血液試料を使用できることで、遺伝子発現を測定し免疫系のプライミングが生じていたかどうかを確認するプラットフォームが便利で簡単なものとなる。
【0020】
上記方法で使用される「標準」値は、健常対象から得られた生物試料から求められたpERKの発現レベルとすることができる。本明細書で使用される場合、「健常対象」とは、がんや中枢神経系障害を患っていない対象を指す。上記標準値は、本発明の方法が実施された時点で健常人から得られた試料においてpERKの発現レベルを測定することで求めてもよい。あるいは、上記標準値は、健常人から得られた等価試料におけるpERKの発現レベルの事前の測定からの所定値としてもよい。pERKの発現を増加させる上記活性物質の治療をモニタリングする場合、上記標準値は健常人から得られたものとしてもよいし、あるいは、上記標準値は対象から事前に得られた試料において測定されたpERK濃度としてもよく、すなわち、上記標準値は上記活性物質の投与前の対象から得られた試料におけるpERKの発現レベルとしてもよい。
【0021】
対象のpERKレベルと標準の比較を用いて、投与中の活性物質の量が所望の低用量且つ有効レベルであるかどうかが判定される。pERKレベルが本明細書に記載の標準と比較して最適レベルに増加している場合、上記活性物質は所望の低用量且つ有効レベルで投与されているということである。反対に、pERKレベルが標準以下のレベルである場合、上記活性物質は有効なレベルで投与されていないということである。このように、治療レジメン(treatment regime)で投与される活性物質の量は適宜調整することができ、すなわち、投与される活性物質の量は、有効レベルで投与されていない場合、適宜増減される。
【0022】
pERKのレベルは、上記活性物質の投与の少なくとも24時間後には測定されることが好適であり、上記活性物質の投与の少なくとも48時間後には測定されることがより好適である。
【0023】
上記活性物質は、低用量で、すなわち、上記活性物質の血漿中濃度を少なくとも0.34ng/mlに、または少なくとも3.4ng/mlに、または少なくとも34ng/mlに、または少なくとも340ng/mlに増加させるのに有効な量で、投与されることが好適である。ある実施形態では、上記活性物質は、上記活性物質の血漿中濃度を0.3ng/ml~3,400ng/mlの範囲内に増加させるのに有効な量で投与され、好ましくは34ng/ml~3,400ng/mlの範囲内に、より好ましくは340ng/ml~3,400ng/mlの範囲内に、増加させるのに有効な量で投与される。そのような量を達成するために有効な量は、当業者に公知の任意の数の従来手法を用いて求めることができる。例えば、当業者であれば、ある量の上記活性物質を投与した後の、試料中の上記活性物質の濃度の増加を求めるために、対象から得られた血漿試料に対し質量分析を実施することができる。有効量とは、血漿中濃度の所望の増加を引き起こすために求められた量である。
【0024】
1つの実施形態では、低用量、すなわち、上記治療法で使用される上記活性物質の1日当たりの有効量は、約0.01mgから最大10mgまでとしてよく、好ましくは約0.1mg~約8mg、最も好ましくは約1~約6mgの上記活性物質であり;例えば、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、または約50mgの上記活性物質が1日当たりに使用される。ある実施形態では、使用される上記活性物質の1日当たりの有効量は、4.5mg以下であり、例えば2mg~4.5mgまたは3mg~4.5mgであり、好ましくは3mg~4mgである。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」および「治療すること(to treat)」および「治療法(therapy)」とは、1)診断された病的状態または障害を治癒、その進行を減速、および/または停止させる治療的処置、並びに、2)標的の病的状態または障害の発症を抑制および/または遅延させる予防的(prophylactic)または抑制的(preventative)処置の両方を指す。すなわち、治療を必要としているものには、障害を既に有しているもの;障害を有する傾向にあるもの;および障害が予防されるべきであるものが含まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ナルトレキソン」は、モルフィナン-6-オン、17-(シクロプロピルメチル)-4,5-エポキシ-3,14-ジヒドロキシ-(5α)、並びにその薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグを指す。ナルトレキソンの構造類似体であるナロキソンの使用も本発明の範囲内であり、明細書および特許請求の範囲で使用される用語「類似体」に包含される。同様に、メチルナルトレキソンも、本発明の全ての態様における使用に適した類似体として企図される。
【0027】
6-β-ナルトレキソールは、ナルトレキソンの主要な活性代謝物であり、明細書および特許請求の範囲で使用される用語「代謝産物」に包含される。本明細書で使用される場合、「6-β-ナルトレキソール」とは、17-(シクロプロピルメチル)-4,5-エポキシモルフィナン-3,6β,14-トリオール、並びにその薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグを指す。また、6-β-ナルトレキソールという用語は、本発明の各実施形態の6-β-ナルトレキソールの新規の使用に関して、機能的に同等のその類似体および機能的同等性を保持する代謝産物をも包含する。ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体の好ましい形態は塩酸塩形態である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「細胞毒性」とは、細胞に対し毒性の作用物の量を指す。細胞毒性は従って、細胞と接触した際に細胞死を誘導する作用物の能力を指す場合もある。細胞死をもたらす細胞毒性機構は、壊死またはプログラム細胞死(アポトーシス)によるものであってもよい。細胞毒性は、細胞集団において、任意の数の細胞生存アッセイを用いて測定されてもよいし、あるいはアポトーシスの開始に際し活性化されるタンパク質因子に特異的な抗体を用いて測定されてもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「細胞分裂停止」とは、細胞の成長および増殖の阻害を指す。よって、細胞分裂阻害剤は、おそらくは細胞毒性を引き起こさずに、細胞の増殖または成長を阻害する作用剤を指す場合がある。作用剤が引き起こす細胞分裂停止は、細胞集
団内の個々の細胞のDNA含量を測定することにより定量することができる。増殖中の細胞集団は、DNA含量レベルが異なる細胞亜集団を含むこととなる。細胞内のDNA含量は、細胞が属している細胞周期の時期に依存することとなる。作用剤により細胞分裂停止が引き起こされた場合、細胞周期の各期に含まれる細胞集団のバランスは異常なものとなる。例えば、細胞分裂停止がS期またはG2期で生じた場合、異常な数の細胞が、体細胞で通常確認されるDNA含量の2倍の含量を含有することとなる。逆に、細胞分裂停止がG0期またはG1期で生じた場合、異常な数の細胞が、体細胞で通常確認されるDNA量を含有することとなる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、任意の動物(例えば、哺乳動物)を指し、例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類などが挙げられるが、これらに限定はされない。通常、用語「対象」および「患者」は、本明細書では同義的に使用され、ヒト対象を指す。
【0031】
対象はいくつかの障害に対し治療中のものであってもよく、LDNのプライミング効果は免疫系をブーストするものであるため、異なる疾患を標的とした一連の治療での使用においてLDNは有益である可能性がある。そのような例の1つとして、疾患それ自体(例えば、HIV/エイズ)または疾患に関連した治療(例えば、がん治療中の化学療法)によって免疫無防備状態となった患者が挙げられる。「免疫不全」または「免疫無防備状態」は、免疫系が弱まった、または損なわれたことで、感染症と闘う能力が低減した状態である。治療は、がんを治療するための、好ましくは乳がん、肺がん、メラノーマ、結腸がん、またはグリオーマの治療における、投与計画として、またはその一部として意図されたものであることが好ましい。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「HIV」とは、「ヒト免疫不全ウイルス」を指し、これは、免疫系の細胞に傷害を与え、日常の感染や疾患と闘う能力を弱めるウイルスである。「エイズ」とは、「後天性免疫不全症候群」を指し、免疫系がHIVウイルスによって重篤な傷害を受けた場合に生じる、生命にかかわる恐れのあるいくつかの感染および病気を述べている。
【0033】
典型的には、HIVは抗レトロウイルス薬により治療される。従って、LDNによるプライミング後に、抗レトロウイルス療法が施行されてもよい。抗レトロウイルス療法は、通常、3種の異なる薬剤分子を用いて処方される。例えば、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(アバカビル(ザイアジェン)、エムトリシタビン(エムトリバ)、ラミブジン(ラミブジンRBX、ゼフィックス、ゼトラム(zetlam))など)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(デラビルジン(レスクリプター)、ドラビリン(ピフェルトロ)、エファビレンツ(サスティバ)など)、プロテアーゼ阻害剤(アタザナビル(レイアタッツ)、ダルナビル(プリジスタ)、ホスアンプレナビル(レクシヴァ、テルジール)など)、侵入阻害剤(エンフビルチド(フゼオン)、マラビロック(シーエルセントリ)など)、およびインテグラーゼ阻害剤(ドルテグラビル(テビケイ)、エルビテグラ(ビテクタ)、ラルテグラビル(アイセントレス)など)が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「がん」とは、前がん病変を包含する、良性(非がん性)または悪性(がん性)の、過剰な細胞成長、細胞増殖、および/または細胞生存の結果生じる、あらゆる組織塊を指す。本明細書で使用される場合、用語「がん細胞」とは、がん由来の細胞株または不死化細胞株を指す。
【0035】
通常、がん治療は、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、または免疫療法のうちの1または複数を含む。よって、LDNによるプライミング後に、がん治療が施行されてもよい。本明細書で使用される場合、「化学療法」、「化学療法剤」、「放射線療法」、「ホ
ルモン療法」、および「免疫療法」は、当該技術分野における通常の意味を有する。用語「抗がん剤」は、「化学療法剤」と同義的に使用される。併用療法を用いることで、複数の既知の治療法を使用してもよい。
【0036】
ある実施形態では、化学療法は、PI3-キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、タキサン、代謝拮抗剤、アルキル化剤、細胞周期阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、および細胞傷害抗体からなる群から選択される抗がん剤を投与することを含む。
【0037】
化学療法剤がPI3-キナーゼ阻害剤である場合、好適な例としては、ワートマニン、LY294002、デメトキシビリジン、IC87114、NVP-BEZ235、BAY80-6946、BKM120、GDC-0941、GDC-9080;並びにこれらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0038】
抗がん剤がAKT阻害剤である場合、好適な例としては、MK-2206、GSK690693、ペリホシン、PHT-427、AT7867、ホオノキオール、PF-04691502;並びにこれらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0039】
抗がん剤がタキサンである場合、好適な例としては、パクリタキセルおよびドセタキセル;並びにこれらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0040】
抗がん剤が代謝拮抗物質である場合、好適な例としては、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、カペシタビン(capecitabin)、シトシンアラビノシド(cytosinarabinoside)(シタラビン(Cytarabin))、ゲムシタビン、6-チオグアニン(6-thioguanin)、ペントスタチン、アザチオプリン(azathioprin)、6-メルカプトプリン(6-mercaptopurin)、フルダラビン(fludarabin)、およびクラドリビン(cladribin);並びにこれらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0041】
抗がん剤がアルキル化剤である場合、好適な例としては、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、ダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド(dimethyltriazenoimidazol ecarboxamide))テモゾロミド、およびオキサリプラチン;並びにこれらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0042】
抗がん剤が細胞周期阻害剤である場合、好適な例としては、エポチロン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、UCN-01、17AAG、XL844、CHIR-124、PF-00477736、CEP-3891、フラボピリドール、ベルベリン、P276-00、テラメプロコル、イソフラボン ダイゼイン、BI2536、BI6727、GSK461364、シクラポリン、ON-01910、NMS-P937、TAK-960、イスピネシブ、モナストロール、AZD4877、LY2523355、ARRY-520、MK-0731、SB743921、GSK923295、ロナファーニブ、proTAME、ボルテゾミブ、MLN9708、ONX0912、CEP-18770;並びにこれらの組み合わせ;並びに上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定はされない。細胞周期阻害剤の特に好適な例としては、ヘスペラジン(Hespaeradin)、ZM447439、VX-680、MLN-8054、PHA-739358、AT-9283、AZD1152、MLN8237、ENMD2076、SU6668;並びにこれらの組み合わせ;並びに他のオーロラキナーゼ阻害剤;並びに上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接体、およびプロドラッグが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0043】
チェックポイント阻害剤は、CTLA4分子、PD-1分子、およびPD-L1分子を標的とする現在承認されている阻害剤によるがん免疫療法の形態である。
【0044】
別の実施形態では、上記治療法は、上記対象にビタミンDを投与することを含んでよい。ビタミンDと上記活性物質は、並行してもしくは同時に、逐次的に、または個別に、投与されてよく、好ましくは同時に投与される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ビタミンD」とは、ビタミンD、および上記活性物質の細胞分裂阻害効果をブーストすることが可能な代謝産物をもたらすビタミンDの代謝経路の任意の中間体または生成物を指す。代謝産物とは、ビタミンD前駆物質を指していてもよく、これを対象内の天然のビタミンD合成経路に組み入れることで、本発明の治療法を実施することができる。あるいは、代謝産物は、ビタミンDを利用する同化プロセスまたは異化プロセスから生じた分子を指す場合がある。ビタミンD代謝産物の非限定例としては、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、カルシジオール、およびカルシトリオール、1a-ヒドロキシコレカルシフェロール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、1a,25-ヒドロキシコレカルシフェロール、24,25-ヒドロキシコレカルシフェロールが挙げられる。「活性」代謝産物は、本発明と絡めて使用することができる代謝産物である。ビタミンDまたはその活性代謝物の投与レジメン(dosage regime)は、当業者に周知のものとする。ビタミンDという用語は、上記のいずれかの薬剤的に許容できる塩も包含する。本発明での使用に特に好適なビタミンDの代謝産物はカルシトリオールである。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「並行して(concurrently)」もしくは「同時に(simultaneous)」、「逐次的な(sequential)」、または「個別の(separate)」とは、上記活性物質およびビタミンD生成物の投与が、同じ治療レジメンの一部として行われることを意味する。
【0047】
本明細書で定義される、「同時」投与は、上記活性物質およびビタミンD生成物を、互いに約2時間以内または約1時間以内またはそれ以下の時間以内に投与することを包含し、同じ時間における投与がさらにより好ましい。
【0048】
本明細書で定義される、「個別」投与は、上記活性物質およびビタミンD生成物を、約12時間超、または約8時間超、または約6時間超、または約4時間超、または約2時間超離して投与することを包含する。
【0049】
本明細書で定義される、「逐次」投与は、上記活性物質およびビタミンD生成物のそれぞれを、複数のアリコートで且つ/または複数回投与で且つ/または別個の機会に、投与することを包含する。上記活性物質は、患者に、ビタミンD生成物の投与の前に投与されてもよいし、後に投与されてもよい。あるいは、ビタミンD生成物は、上記活性物質によ
る治療が終わった後、患者に適用され続ける。
【0050】
CD69は、他と相互作用する細胞の能力の一部として発現されるようになる表面マーカーである。これは、当該細胞が活性であること、または活性になりつつあることの徴候である。すなわち、CD69発現は、CD3+細胞およびT細胞などの免疫細胞において、それらが活性化される際に増加する。よって、第二の態様において、ナルトレキソンまたはその代謝産物もしくは類似体である活性物による治療法を受けている対象の治療をモニタリングするための方法であって、治療を受けている対象から得られたCD3+細胞試料におけるCD69発現を測定すること;を含み、上記CD69発現が対照と比較して増加していた場合、上記活性物質は有効レベルで投与されているものとする、方法が提供される。
【0051】
CD69の発現レベルの、細胞集団における測定は、当業者が利用できる分析法を任意の数用いて行うことができ、例えば、ゲル電気泳動およびウエスタンブロット解析、2D-PAGE、カラムクロマトグラフィ、リボソームプロファイリング、または質量分析が挙げられるが、これらに限定はされない。第1の態様について記載された他の全ての実施形態は第二の態様に適用できる。
【実施例
【0052】
実施例1:PD解析
5つの治療コホートを用意し、各コホートには8人の健常志願者が含められた。各志願者は、1mg、3mg、4.5mg、6mg、または10mg錠剤としてのナルトレキソンの単回投与による治療を受けた。PBMCを、0時間および48時間の時点でフィコール抽出により回収し、細胞溶解緩衝液中で溶解した。次にそれらの試料に対してウェスタンブロッティングを行い、pERK、tERK、BAX、およびp21を測定した。
【0053】
結果
図1A図1C図1Eに示すように、1mg、4.5mg、6mg、または10mg錠剤を投与した場合、0時間と比較して48時間の時点で、対象におけるpERK発現レベルが減少していた。これは図2のウェスタンブロッティングでも示されており;48時間時点の測定値ブロットA3、C3、D3、およびE3は、0時間時点の対応ブロットA1、C1、D1、およびE1よりも小さかった。図3に示すように、pERK発現と、ナルトレキソンおよび6-β-ナルトレキソールの最高血中濃度との間には逆相関があることが分かり、ナルトレキソンおよび6-β-ナルトレキソールの最高血中濃度が高くなるほど、pERK発現がより大きく低減することになることを示唆している。しかし、図1Bに示すように、3mg錠剤、すなわち所望の低用量を投与した場合、0時間と比較して48時間の時点で、対象におけるpERK発現レベルが減少していた。これは、他の用量を投与された対象と比較して、有利な低用量のナルトレキソンを投与された対象のpERK発現レベルには明確な違いがあることを示している。
【0054】
実施例2:LDN投与後のCD3+活性化
Histopaque-1077を用いて、病理学的に健常なドナーから得られた全血から、または全血の白血球除去(leucoreduction)の残留物から、末梢血単核球を単離した。単核画分を回収し、低張塩化アンモニウム溶液中でのインキュベーションにより赤血球混入物を除去した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、10分間200gで遠心分離することで血小板混入物を除去し、RPMI-1640培地中1×10個 mlの濃度で再懸濁した。これらの細胞に、ナルトレキソンを、10μMの従来の高用量ナルトレキソン(NTX)または10nMの低用量ナルトレキソン(LDN)のいずれかの濃度で添加し、37℃の空気中、5%COを含む加湿雰囲気下で、48時間インキュベートした。末梢血単核球を、洗浄用緩衝液(1%(v/v)FBSおよび0.09%(v/v)NaNを含有するPBS)で2回洗浄し、関連抗体および標記抗体で4℃で30分間染色し、免疫細胞プロファイルの評価を行った。細胞を洗浄用緩衝液で洗浄し、4%パラホルムアルデヒド中、4℃で20分間固定した。BDバイオサイエンス社製LSR II Flow Cytometerと専用のプロプライエタリソフトウェアを用いて、表面マーカーの発現を解析した。
【0055】
結果
CD3+細胞の活性化状態はCD69発現によって示され;CD69の発現レベルが高いほど、それに相関して、CD3+の活性化が増大する。CD3+細胞は、細胞傷害性T細胞(CD8+ナイーブT細胞)およびヘルパーT細胞(CD4+ナイーブT細胞)の両方の活性化を助けるT細胞コレセプターである。図5に示されているように、CD3+/CD8+細胞(キラーT細胞)におけるCD69発現は、LDNとの培養後に増加したが、NTXまたは溶媒対照(DMSO)との培養後では、CD69発現は増加しなかった。このように、LDNのプライミングが完了し、pERK発現が増加すると、免疫系は好適にブーストされる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5