(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】付着助剤としてのラムノリピド
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20240611BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240611BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240611BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240611BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K8/73
A61K8/898
(21)【出願番号】P 2021552947
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020054623
(87)【国際公開番号】W WO2020178048
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン クライネン
(72)【発明者】
【氏名】カトリン ダニエラ ブラント
(72)【発明者】
【氏名】マイケ シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】アリーナ ムース
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-506214(JP,A)
【文献】特開2002-105854(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108901546(CN,A)
【文献】特表2010-534657(JP,A)
【文献】JIANWEI CHEN; ET AL,POTENTIAL APPLICATIONS OF BIOSURFACTANT RHAMNOLIPIDS IN AGRICULTURE AND BIOMEDICINE,APPLIED MICROBIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY,ドイツ,SPRINGER,2017年10月10日,VOL:101, NR:23,PAGE(S):8309-8319,http://dx.doi.org/10.1007/s00253-017-8554-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の物質を媒体から表面へ付着させるためのラムノリピドの使用
であって、
前記物質が、少なくとも1種の第四級アンモニウム基を含有する、グアークワット、シロキサンクワット及びセルロースクワットを含む群から選択されていることを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記媒体が、界面活性剤混合物、エマルション及びマイクロエマルション
、並びに分散液を含む群から選択されていることを特徴とする、請求項
1に記載の使用。
【請求項3】
前記媒体が、化粧用配合物を含む群から選択されていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ラムノリピドが、前記媒体中に0.1重量%~30重量
%の濃度で含まれており、ここで、前記重量パーセントは、前記の全媒体を基準としていることを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記物質が、前記媒体中に0.05重量%~5重量
%の濃度で含まれており、ここで、前記重量パーセントは、前記の全媒体を基準としていることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
使用される全てのジ-ラムノリピドの、使用される全てのモノ-ラムノリピドに対する重量比が、51:49より大き
いことを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
25℃での前記媒体のpH値が、3.5~9.
0の範囲内であることを特徴とする、請求項1まで
6からのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記表面が、皮膚及び毛髪か
ら選択されていることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項に記載の非治療的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、少なくとも1種の物質を媒体から表面へ付着させるためのラムノリピドの使用である。
【0002】
従来技術
本発明の課題は、少なくとも1種の物質を媒体から表面、殊に皮膚及び毛髪へ付着させるのを促進する物質を同定することであった。
【0003】
多くの用途において、物質が配合物から表面へ付着されることで、前記表面に所望の特性を付与する。
コンディショニング剤、例えばポリクワットの、皮膚及び毛髪への付着は、例えば、改善された官能的性質をもたらす、それというのも、シャンプー配合物はしばしばそのようなコンディショニング剤を含有するからである。
しかしながら、大多数の用途において、付着されうる物質の理論的に利用可能な全量が付着されない。前記の物質の付着の最大化が望まれており、それにより資源にやさしく作業できる。
【0004】
本発明の説明
驚くべきことに、ラムノリピドの使用の際に、優れた付着が達成されることが見出された。
【0005】
したがって、本発明の対象は、少なくとも1種の物質を媒体から表面へ付着させるためのラムノリピドの使用である。
【0006】
本発明の利点は、本発明による使用の際に、極めて良好な官能的性質が達成されることである。
本発明のさらなる利点は、本発明による使用の際に、毛髪の特性、例えばくし通り、柔らかさ、成形性、つや、扱いやすさ及びほぐれやすさを改善することができることである。
本発明のもう一つの利点は、本発明による使用の際に、皮膚及び粘膜への刺激作用が少ないことである。
本発明のさらなる利点は、本発明による使用の際に、完全に再生可能原料をベースとする組成物を使用することができることである。
本発明のもう一つの利点は、シリコーンフリーであるが、それにもかかわらず皮膚及び毛髪への良好なコンディショニング特性を有する配合物を提供できることである。
本発明のもう一つの利点は、本発明による使用の際に、高い泡体積を達成することができることである。
さらなる利点は、本発明による配合物の泡体積が、皮膚及び毛髪上の皮脂の存在下でも悪影響を受けないことである。
本発明のもう一つの利点は、本発明による使用の際に、特に良好な泡のクリーミーさを達成することができることである。
本発明のさらなる利点は、本発明による使用の際に、容易に濃縮できる配合物が生じることである。
付加的な利点として、前記ラムノリピドの顕著な相溶性を挙げることができる。
本発明のもう一つの利点は、濡れた毛髪及び乾いた毛髪のコーミングフォースを低下させることである。
【0007】
本発明による使用は、以下に例示的に記載されるが、本発明がこれらの例示的な実施態様に限定されているものではない。以下に、範囲、一般式又は化合物の部類が明記されている場合には、これらは、明示的に挙げられている、対応する範囲又は化合物の群だけではなく、個々の値(範囲)又は化合物を取り出すことにより得ることができる、化合物の全ての部分範囲及び部分群も含むものとする。本明細書の範囲内で文献が引用される場合には、それらの内容は完全に、本発明の開示内容に属するものとする。本発明の範囲内で、異なる単位を複数有することができる化合物、例えば有機変性ポリシロキサンが記載される場合には、これらは統計的に分布されて(統計オリゴマー)又は規則的に(ブロックオリゴマー)、これらの化合物中に生じていてよい。そのような化合物中の単位の数についての情報は、対応する全ての化合物について平均した平均値として理解すべきである。
本発明による使用は、表面が生体のものである場合には、非治療的使用である。殊に、これに関連して、本発明による使用は、化粧的使用である。
示される全てのパーセント(%)は、他に明記されない限り、質量パーセントである。
【0008】
本発明の対象は、少なくとも1種の物質を媒体から表面へ付着させるためのラムノリピドの使用である。
【0009】
本発明に関連して用語「ラムノリピド」には、ラムノリピド、それらのプロトン化型並びに殊にそれらの塩が一緒に含まれる。
【0010】
本発明に関連して用語「ラムノリピド」とは、殊に一般式(I)の化合物及びそれらの塩の混合物であると理解され、
【化1】
式中、
m=2、1又は0、
n=1又は0、
R
1及びR
2=互いに独立して同じか又は異なる、炭素原子2~24個、好ましくは5~13個を有する有機基、殊に任意に分岐状の、任意に置換された、殊にヒドロキシ置換された、任意に不飽和の、殊に任意にモノ、ジ又はトリ不飽和のアルキル基、好ましくはペンテニル、ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニル及びトリデセニル及び(CH
2)
o-CH
3(ここで、o=1~23、好ましくは4~12)からなる群から選択されるものである。
n=1の場合には、前記の2個のラムノース単位の間のグリコシド結合は、好ましくはα-配置にある。前記脂肪酸の光学活性な炭素原子は、好ましくはR-エナンチオマーとして存在する(例えば(R)-3-{(R)-3-[2-O-(α-L-ラムノピラノシル)-α-L-ラムノピラノシル]オキシデカノイル}オキシデカノエート)。
【0011】
本発明に関連して用語「ジ-ラムノリピド」とは、n=1である一般式(I)の化合物又はそれらの塩であると理解される。
本発明に関連して用語「モノ-ラムノリピド」とは、n=0である一般式(I)の化合物又はそれらの塩であると理解される。
別個のラムノリピドは、次の命名法に従って略称される:
「ジRL-CXCY」とは、一方の基R1及びR2=(CH2)o-CH3(ここで、o=X-4)及び残りの基R1又はR2=(CH2)o-CH3(ここで、o=Y-4)である、一般式(I)のジ-ラムノリピドであると理解される。
「モノRL-CXCY」とは、一方の基R1及びR2=(CH2)o-CH3(ここで、o=X-4)及び残りの基R1又はR2=(CH2)o-CH3(ここで、o=Y-4)である、一般式(I)のモノ-ラムノリピドであると理解される。
したがって、使用される命名法は、「CXCY」と「CYCX」との間で相違しない。
m=0であるラムノリピドについては、それに応じて、モノRL-CXもしくはジRL-CXが使用される。
【0012】
上記の添え字X及び/又はYの1一方に、「:Z」が設けられている場合には、これは、前記のそれぞれの基R1及び/又はR2=Z二重結合を有する炭素原子X-3もしくはY-3個を有する非分岐状の非置換の炭化水素基であることを意味する。
【0013】
本発明に関連してラムノリピドの含有率の決定のために、単に、前記ラムノリピドアニオンの質量、すなわち、「水素1個を差し引いた一般式(I)」が考慮される。
本発明に関連してラムノリピドの含有率の決定のために、全てのラムノリピドは、酸性化によりそのプロトン化型(一般式(I)参照)へ変換され、かつHPLCにより定量される。
【0014】
本発明によれば好ましいのは、使用されるラムノリピドが、51重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%、特に好ましくは75重量%~85重量%のジRL-C10C10を含有することであり、ここで、前記重量パーセントは、使用される全てのラムノリピドの和を基準としている。
【0015】
本発明によれば好ましいのは、使用されるラムノリピドが、0.5重量%~9重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、特に好ましくは0.5重量%~2重量%のモノRL-C10C10を含有することであり、ここで、前記重量パーセントは、使用される全てのラムノリピドの和を基準としている。
【0016】
本発明による好ましい使用は、使用される全てのジ-ラムノリピドの、使用される全てのモノ-ラムノリピドに対する重量比が、51:49より大きい、殊に91:9より大きい、好ましくは97:3より大きい、特に好ましくは98:2より大きいことにより特徴付けられている。
【0017】
本発明によれば好ましいのは、使用されるラムノリピドが、0.5~25重量%、好ましくは5重量%~15重量%、特に好ましくは7重量%~12重量%のジRL-C10C12を含有することであり、ここで、前記重量パーセントは、使用される全てのラムノリピドの和を基準としている。
【0018】
本発明によれば好ましいのは、使用されるラムノリピドが、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、特に好ましくは0.5重量%~2重量%のモノRL-C10C12及び/又は、好ましくは及び、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、特に好ましくは0.5重量%~2重量%のモノRL-C10C12:1を含有することであり、ここで、前記重量パーセントは、使用される全てのラムノリピドの和を基準としている。
【0019】
本発明による特に好ましい使用は、使用されるラムノリピドが、
0.5重量%~15重量%、好ましくは3重量%~12重量%、特に好ましくは5重量%~10重量%のジRL-C10C12:1、
0.5~25重量%、好ましくは5重量%~15重量%、特に好ましくは7重量%~12重量%のジRL-C10C12、
0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、特に好ましくは0.5重量%~2重量%のモノRL-C10C12及び
0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、特に好ましくは0.5重量%~2重量%のモノRL-C10C12:1
を含有することにより特徴付けられており、ここで、前記重量パーセントは、使用される全てのラムノリピドの和を基準としている。
【0020】
さらに、本発明により使用されるラムノリピドが、少量のみの式モノRL-CXもしくはジRL-CXを含有する場合が好ましい。殊に、本発明により使用されるラムノリピドは、好ましくは
0重量%~5重量%、好ましくは0重量%~3重量%、特に好ましくは0.1重量%~1重量%のジRLC10を含有し、ここで、前記重量パーセントは、使用される全てのラムノリピドの和を基準としている。
【0021】
本発明によれば好ましい使用は、前記物質がポリマーであることにより特徴付けられている。
【0022】
本発明によれば好ましい使用は、前記物質が、シロキサン、炭水化物、殊に多糖類、ペプチド、タンパク質、タンパク質水解物、ポリアリルアミン、ポリイミン、ポリアクリレート及びポリメタクリレートを含む、好ましくはこれらからなる群から選択されていることにより特徴付けられている。
【0023】
本発明によれば好ましい使用は、前記物質が、イオン性の置換基、イオン化できる置換基及びプロトン化できる置換基の群から選択される少なくとも1種のものを有することにより特徴付けられており;殊に好ましいのは、前記物質がカチオン性であることである。
【0024】
本発明によれば好ましい使用は、前記物質が、プロトン化できる窒素及び永続的に四級化された窒素から選択される少なくとも1種のものを含有する、殊に前記物質が、少なくとも1種の第四級アンモニウム基を含有することにより特徴付けられている。
【0025】
本発明によれば好ましい使用は、前記物質が、グアークワット(第四級アンモニウム化合物)、シロキサンクワット及びセルロースクワットを含む、好ましくはこれらからなる群から選択されていることにより特徴付けられている。
【0026】
本発明によれば好ましい使用は、前記媒体が、界面活性剤混合物、エマルション及びマイクロエマルション、殊にO/Wエマルション、W/Oエマルション、シリコーン中水型エマルション、水中シリコーン型エマルション、O/Wマイクロエマルション、W/Oマイクロエマルション、シリコーン中水型マイクロエマルション、水中シリコーン型マイクロエマルション並びに分散液を含む、好ましくはこれらからなる群から選択されていることにより特徴付けられている。
【0027】
本発明によれば好ましい使用は、前記媒体が、化粧用配合物、殊にシャンプー、コンディショナー、シャワージェル、浴用石けん、バスオイル、ジェル、ムース及びパウダーを含む、好ましくはこれらからなる群から選択されていることにより特徴付けられている。
【0028】
本発明による好ましい使用の範囲内で使用される化粧用配合物は、以下の群から選択される、少なくとも1種の付加的な成分を含有していてよい:
エモリエント剤、
乳化剤、
増粘剤/粘度調整剤/安定剤、
UV光保護フィルター、
酸化防止剤、
ヒドロトロープ(又はポリオール)、
固体材料及び充填剤、
皮膜形成剤、
真珠光沢添加剤、
消臭剤及び制汗剤作用物質、
昆虫忌避剤、
セルフタンニング剤、
防腐剤、
コンディショニング剤、
着色剤、
化粧用作用物質、
ケア添加剤、
過脂肪剤、
溶剤。
個々の群の例示的な代表例として使用することができる物質は、当業者に公知であり、かつ例えば、独国特許出願第102008001788.4号(DE 102008001788.4)から読み取ることができる。この特許出願は、これにより参照として援用され、ひいては開示の一部とみなされる。
さらなる任意の成分並びにこれらの成分の使用される量に関して、当業者に公知の関連するハンドブック、例えばK. Schrader, "Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika"、第2版、p.329~341、Huethig Buch Verlag Heidelbergが明らかに参照される。
前記のそれぞれの添加物の量は、意図される使用に依存する。
【0029】
それぞれの用途のための典型的な骨格処方は、公知の従来技術であり、かつ例えば、それぞれの基礎物質及び作用物質の製造者のパンフレットに含まれている。これらの既存の処方は通例、変えずに受け取ることができる。しかし必要に応じて、調整及び最適化のために、所望の変更は、単純な試験により煩雑さを伴うことなく行うことができる。
【0030】
本発明によれば好ましい使用は、前記ラムノリピドが、前記媒体中に、0.1重量%~30重量%、好ましくは0.5重量%~25重量%、特に好ましくは1.0重量%~12重量%の濃度で含まれていることにより特徴付けられており、ここで、前記重量パーセントは、前記の全媒体を基準としている。
【0031】
本発明によれば好ましい使用は、前記物質が、前記媒体中に、0.05重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~3重量%、特に好ましくは0.15重量%~1.5重量%の濃度で含まれていることにより特徴付けられており、ここで、前記重量パーセントは、前記の全媒体を基準としている。
【0032】
本発明によれば好ましい使用は、25℃での前記媒体のpH値が3.5~9.0、好ましくは3.8~7.0、特に好ましくは4.4~6.6の範囲内であることにより特徴付けられている。
本発明に関連して「pH値」は、相応する組成物について25℃で5分の撹拌後に、ISO 4319 (1977)に従って校正されたpH電極を用いて測定される値として定義されている。
【0033】
本発明によれば好ましい非治療的使用は、前記表面が、皮膚及び毛髪、殊に毛髪から選択されていることにより特徴付けられている。
【0034】
以下に記載される実施例において、本発明は例示的に記載されるが、本発明は、その応用範囲が明細書全体及び請求の範囲から明らかになり、実施例において挙げられる実施態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
例1:毛髪への四級化グアーの付着
この例は、多様な界面活性剤(SLES及び異なるベタイン)の、ラムノリピドによる交換が、付着される四級化グアーの量を有意に高めることを示す。ラムノリピドとして、以下に、RHEANCE(登録商標) One(Evonik Industries、50%、INCI:糖脂質)を使用した。これらの配合物成分は、次の組成において一般に認められたINCI命名法の形で英語の用語を使用して名付けられている。応用例1a~1eにおける全ての濃度は、活性成分含有率で示されている。
前記グアーの付着の程度は、一方では、そのゼータ電位(表面電位)の測定により求められた。そのためには、前記毛髪繊維上のゼータ電位が測定される。カチオン性ポリマーの付着される量と前記ゼータ電位との関係は、J. Jachowicz, M. Berthiaume, and M. Garcia Colloid & Polymer Sci 263:847-858 (1985)に記載されており、あまり強く負ではないゼータ電位は、より高い付着に相当する。
前記毛髪のゼータ電位を、Fiber Potential Analyzer(FPA、emtec社、ライプツィヒ、独国)で測定した。前記毛髪束のゼータ電位を、前記処理前に測定した、それというのも、その損傷度は前記ゼータ電位への影響を有し、かつ一系列内で同じ損傷/ゼータ電位の毛髪のみを使用したからである。その際に、より強い負のゼータ電位は、直感に反して、あまり強く損傷されていない毛髪を表す。その後、あまり強く損傷されていない毛髪へのカチオン性ポリマーの付着により、より強い正のゼータ電位を達成することができる。
【0036】
毛髪の2つの品質を、その予備測定により、一方では毛髪を-31.0mV及びより強く損傷された毛髪を-25.0mVのゼータ電位で同定することができた。
前記測定のために、前記毛髪束(Kehrling)を、対応する配合物で、その官能的性質の測定に相応して処理した(パネル試験、下記参照)。
前記毛髪のゼータ電位を測定するために、毛髪束(4g)を前記FPAの測定チャンバ中へ入れ、かつ水道水を通した。NaCl 1gを水2L中に溶解させて一定の水質及び伝導度値を達成し、この水を、前記測定のために用いた。前記束を、前記測定前に前記水(NaCl 1g/2L)中に浸漬して前記毛髪を濡らした。各試料につきそれぞれ10の測定を、工場側で調整されたオートモードで実施し、引き続きその平均値が計算された。挙げた全ての値は平均値であり、前記の個々の値のゆらぎは、上に向かって最大0.5mV及び下に向かって0.5mVであり、その再現性は、同様に0.5mVで示すことができる。
【0037】
前記配合物はそれぞれグアー0.5%及び界面活性剤12%を含有していた。界面活性剤として、ラウレス硫酸Na(SLES)、コカミドプロピルベタイン(CAPB)、ココベタイン(COB)及び糖脂質(RL)を使用した。
【0038】
正の測定値が得られている場合には、これらはその数値の前に記載されており、前記測定値のより良好な区別を達成できる。
【0039】
例1a:ラウリルエーテル硫酸Na(SLES)及びラムノリピド(RL)の二元混合物(活性成分含有率による値)
【表1】
【0040】
例1b:SLES 9%もしくはRL 9%;コカミドプロピルベタイン(CAPB)3%もしくはココベタイン(COB)3%の二元混合物(活性成分含有率による値)
【表2】
【0041】
例1c:SLES 6%もしくはRL 6%;CAPB 6%もしくはCOB 6%の二元混合物(活性成分含有率による値)
【表3】
【0042】
例1d:SLES COB配合物における部分置換(活性成分含有率による値)
【表4】
【0043】
例1e:個々の界面活性剤、界面活性剤12%(活性成分含有率による値)
【表5】
【0044】
例1a~1eからの測定の結果はそれぞれ、前記配合物におけるラムノリピドの使用が、あまり負ではないゼータ電位、ひいては前記カチオン性ポリマー(グアークワット)のより高い付着の結果となることを示す。
【0045】
例1f:
同じように、前記グアーの付着の程度は、異なる配合物を毛髪束に塗布し、引き続き官能評価したことによる、改善された官能的性質(パネル試験)により示されることができた。これらの配合物成分は、次の組成において一般に認められたINCI命名法の形で英語の用語を使用して名付けられている。応用例1fにおける全ての濃度は、重量パーセントで示されている。
【0046】
その官能パネルによる評価のために、3つの単純な化粧品シャンプー配合物、すなわちラムノリピドを異なる濃度で含有する本発明による例A、B及びCを製造した(第1表参照)。
【0047】
第1表:付着する特性を試験するためのシャンプー配合物;重量パーセントにおける値
【表6】
【0048】
毛髪束官能試験のための実験条件:
毛髪束官能試験のために、Kerling社の欧州人種の毛髪(前もって製造された毛髪の束、長さ18cm、4g;漂白により標準化されて予め損傷される)並びに細かい側(約9.5歯/cm)及び粗い側(約4歯/cm)を有する鋸歯状のプラスチックコーム(長さ17cm)を使用する。
【0049】
前記毛髪束を、前記毛髪束官能試験のために、次のとおり第1表に記載されたシャンプー配合物で処理する:
予め損傷された毛髪束の、シャンプー配合物での標準化された処理:前記毛髪束を、温流水下に濡らす。過剰の水を、手で軽く絞り出し、ついで、前記シャンプーを塗布し、やさしく毛髪中にすり込む(毛髪束(2g)あたり配合物0.5g)。1分の滞留時間後に、前記毛髪を流水下で1分間すすぎ流す。
引き続き、前記毛髪束の官能評価を、4人の試験者により、空気湿度50%及び25℃での標準化された条件下で行う。
【0050】
前記パネルによる前記毛髪束の評価を、次のとおり行う:
官能パネルによる前記毛髪束の評価:
その試験規準は次のとおりである:前記毛髪のほぐれやすさ、濡れたくし通り及び濡れた感触。前記官能評価は、1~5のスケールで付与される評点で行い、ここで、1は最悪及び5は最良の評価である。個々の試験規準は、それぞれ固有の評価を得る。各パネル関与者は、全ての試験配合物について全ての規準を評価する。各毛髪束は、その際に1回のみ使用される。
前記評価規準の詳細は、独国特許出願公開第10327871号明細書(DE 103 27 871)に記載されている。
本発明による配合物A、B及びCでの前記毛髪束の上記のように実施された処理の前記パネルによる官能評価の結果は、第2表に示されている。
【0051】
第2表:4人の被験者からの平均値としての前記官能評価の結果
【表7】
【0052】
前記官能パネルの結果は、前記配合物中のラムノリピドの割合が上昇するにつれて、全ての試験規準について前記官能パネルによるより良好な評価が達成されることを示す。
【0053】
例2:毛髪へのポリクオタニウム-10及びシリコーンクワットの付着
この例は、ラウレス硫酸Na(SLES)の代わりのラムノリピドの使用が、四級化ヒドロキシエチルセルロースの付着される量を有意に高めることを示す。このことは、官能的性質パネル試験において次のとおり確認された。これらの配合物成分は、次の組成において一般に認められたINCI命名法の形で英語の用語を使用して名付けられている。応用例2における全ての濃度は、重量パーセントで示されている。
前記官能パネルによる評価のために、2つの単純な化粧品シャンプー配合物、すなわち本発明による例D並びに本発明によらない例Eを製造した(第3表参照)。
【0054】
第3表:付着する特性を試験するためのシャンプー配合物。
【表8】
【0055】
例1fに記載された前記毛髪束官能試験のための実験条件が当てはまる。
予め損傷された毛髪束を、ついで同様に例1fに記載されたように第3表からのシャンプー配合物で処理する。
前記官能評価を、空気湿度50%及び25℃での標準化された条件下で例1fに記載されたように行う。
【0056】
その試験規準は次のとおりである:ほぐれやすさ、濡れたくし通り、濡れた感触。前記評価の詳細は、例1f並びに独国特許出願公開第10327871号明細書(DE 103 27 871)から読み取ることができる。
本発明による配合物D及び本発明によらない比較配合物Eでの前記毛髪束の上記のように実施された処理の前記パネルによる官能評価の結果は、第4表に示されている。
【0057】
第4表:4人の被験者からの平均値としての前記官能評価の結果
【表9】
【0058】
前記官能パネルの結果は、前記配合物におけるラムノリピドの使用(本発明による配合物D)が、ラウレス硫酸Naの使用(本発明によらない配合物E)よりも、有意に良好な評価をもたらすことを示し、このことは、ラムノリピドの使用の場合の前記カチオン性ポリマー(ポリクオタニウム-10)の高められた付着に起因されうる。
【0059】
前記カチオン性ポリマーの改善された付着は、さらに、次の例に説明されるように、毛髪上のコーミングフォースの測定により示すことができる:
コーミングフォース測定の実験条件
測定装置:Diastron MTT 175
測定区間:16.5cm
コーミング速度:2000mm/min
使用される毛髪束:長さ=約20cm(全長18cmの固定されない毛髪);幅=1.5cm;重量(ドライ)=3g
測定条件:T=22℃。
前記毛髪束を、重量測定により測定して、60%の残留水分で測定する。
前記実験のために、Kerling社の4h漂白した欧州人種の毛髪を使用する(予め製造された平らな束、幅1.5cm、3g)。
【0060】
コーミングフォース測定の実施
1.前記毛髪束を、緩衝液(クエン酸Na、pH=6)中に20秒浸漬する。
2.前記毛髪束を、コーミング抵抗の変化が確認され得なくなるまで、手でプレコーミングする。
3.前記毛髪束を前記測定装置で固定し、1回目のコーミングフォース測定を実施する。前記測定を全部で10回繰り返す。各々のさらなる測定の前に、前記毛髪束を、デオドラントポンプ噴霧器からの2つの噴射により前記緩衝液で湿らす。%での前記コーミング労力の平均値を、MTT175-ソフトウェアを用いて測定する。
【0061】
最初に、全ての毛髪束を未処理で測定する。引き続き、前記毛髪束を、前記試験配合物で次のとおり処理する:
前記コーミングフォース測定のための前記毛髪束の処理
毛髪束あたり、それぞれの試験配合物0.5gを使用する(毛髪2g/溶液0.5g)。前記配合物を、前記毛髪へ30秒間マッサージして擦り込み、ついで1分間放置し、引き続き30秒間、37℃の水道水を流しながらすすぎ流す。引き続き、前記毛髪束をもう1回30秒間シャンプーし、1分間放置し、最後に1分間、37℃の水道水を流しながらすすぎ流す。
【0062】
前記コーミングフォース測定の実施
前記試験配合物を用いる前記コーミングフォース測定の実施のために、前記項目1~3を繰り返す。試験配合物あたり、それぞれ4つの毛髪束を測定する。%での前記コーミング労力の平均値を引き続きMTT175-ソフトウェアを用いて測定する。
【0063】
前記の方法を用いて、ラムノリピド含有配合物A(本発明による)のコーミングフォースを、ラムノリピドの代わりにラウレス硫酸Naを含有する比較配合物B(本発明によらない)と比較した。前記結果は、第5表に示されている。
【0064】
第5表:4つの個々の値の平均値としてのコーミングフォース測定の結果;%でのコーミング労力の低下が示されている
【表10】
【0065】
前記結果は、本発明による配合物Aが、比較配合物Bよりも前記コーミングフォースのより顕著な低下を有することを示す。
【0066】
さらなる配合物例
これらの配合物成分は、次の組成において一般に認められたINCI命名法の形で英語の用語を使用して名付けられている。前記応用例における全ての濃度は、活性成分含有率で示されている。
【表11-1】
【表11-2】
【0067】
【0068】
【0069】
【表14-1】
【表14-2】
【表14-3】
【表14-4】
【0070】
【0071】