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特許7502323プラズマアシスト製造プロセスで用いるためのドープされた石英ガラス部材、及び、該部材を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】プラズマアシスト製造プロセスで用いるためのドープされた石英ガラス部材、及び、該部材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20240611BHJP
   C03C 3/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C03B20/00 F
C03B20/00 C
C03B20/00 E
C03B20/00 K
C03C3/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021554772
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2020055116
(87)【国際公開番号】W WO2020182479
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】19162613.4
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】シュタミンガー, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ズーフ, マリオ
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-027882(JP,A)
【文献】特開2018-172270(JP,A)
【文献】特開2002-356347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00,
C03C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマアシスト製造プロセスで用いるための、ドープされた石英ガラス部材であって、
フッ素と反応して、SiFの沸点よりも高い沸点を有するフッ化物を形成することができる1つのドーパントを含み、
アルミニウムが前記ドーパントであり、該ドーパントの総ドーパント濃度が0.5から3重量%の範囲であり、
前記ドープされた石英ガラスは、(a)ドライエッチング手順で表面がドライエッチングに曝された後の表面の表面粗さがRa値で20nm未満であること、及び/又は、(b)ドーパント濃度の極大値が30μm未満の平均距離にある横方向濃度プロファイルを有するドーパント分布、によって定義される微小均質性を有するものであり、
前記ドライエッチング手順は、
・600ワットの電力が高周波電源に供給され、
・マイナス100ボルトのバイアス電圧が、前記高周波電源により、10ワットの入力電力で試験サンプルに印加され、
・5sccmのアルゴン、1sccmのCF 、0.3sccmのO のプロセスガスが、ガス入口から反応器チャンバに導入され、
・チャンバ圧力が6Paに設定され、
・エッチング時間は60分である
ことを特徴とするドープされた石英ガラス部材。
【請求項2】
前記表面粗さがRa値で15nm未満であり、及び/又は、前記ドーパント濃度の極大値が20μm未満の平均距離にあることを特徴とする請求項1に記載の部材。
【請求項3】
前記ドープされた石英ガラスは合成的に製造されたSiO原料から作られたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の部材。
【請求項4】
プラズマアシスト製造プロセスで使用するための、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のドープされた石英ガラス部材を製造する方法であって、
前記方法は、
(a)水性液中にSiO粒子を含むスリップを提供するステップと、
(b)溶媒と、溶解した形の1つのドーパントとを含むドーピング溶液を提供するステップと、
(c)ドーピング溶液とスリップをまとめて分散液を形成し、その中で前記ドーパントを含む固体が沈殿するステップと、
(d)前記分散液を乾燥させて、SiOと前記ドーパントを含む粒状粒子を形成するステップと、
(e)前記粒状粒子を焼結又は融解して、前記ドープされた石英ガラス部材を形成するステップと、
を有し、
前記スリップ内の前記SiO粒子は、SiO一次粒子の集合体又は凝集体であり、平均粒子サイズが30μm未満であり、前記ドーパントがアルミニウムであり、該ドーパントの総ドーパント濃度が0.5から3重量%の範囲であることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記ドーピング溶液と前記スリップをまとめるために、前記ドーピング溶液は霧化されてスプレーミストを形成し、これが前記分散液に供給されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ドーピング溶液とスリップをまとめるときに、後者は流動を続けることを特徴とする請求項又は請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドーピング溶液とスリップをまとめる前に、後者は12より大きいpH値に調整されることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記SiO一次粒子は、熱分解的に生成されることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマアシスト製造プロセス、特に半導体製造で用いるための、ドープされた石英ガラス部材であって、フッ素と反応して、SiFの沸点よりも高い沸点を有するフッ化物を形成することができる少なくとも1つのドーパントを含むものに関する。
【0002】
さらに、本発明は、プラズマアシスト製造プロセスで使用するための、ドープされた石英ガラス部材を製造する方法であって、
(a)水性液中にSiO粒子を含むスリップを提供するステップと、
(b)溶媒と、溶解した形の少なくとも1つのドーパント又は少なくとも1つのドーパントのための出発物質とを含むドーピング溶液を提供するステップと、
(c)ドーピング溶液とスリップをまとめて分散液を形成し、その中で前記ドーパント又はドーパント前駆体物質を含む粒子が沈殿するステップと、
(d)前記分散液を乾燥させて、SiOと前記ドーパント又はドーパント前駆体物質を含む粒状粒子を形成するステップと、
(e)前記粒状粒子を焼結又は溶融して、前記ドープされた石英ガラス部材を形成するステップと、
を有する方法に関する。
【0003】
プラズマアシストドライエッチング(略して「プラズマエッチング」とも呼ばれる)は、半導体部材及び高解像度ディスプレイの、並びに、太陽電池の製造における超微細構造の製造に不可欠な技術である。
【0004】
プラズマエッチングは、真空反応器内において比較的高温で腐食性の高い雰囲気で行われる。真空反応器は、一般に、低圧のエッチングガスでフラッシュされる。電極間の高周波放電又は無電極マイクロ波放電により、反応性の高いエッチングプラズマが発生する。
【0005】
ハロゲン含有エッチングガス、例えば、特に、ペルフルオロ炭化水素(例えば、CF、CHF、C、C、NF又はSFなど)は、ケイ素ベースの構造のエッチングに使用される。元素状フッ素、フッ素イオン、及びフッ素ラジカルは、所望のエッチング作用を示すだけでなく、プラズマに曝される他の部材とも反応する。これが引き起こす腐食摩耗は、粒子の生成と部材の著しい変化につながる可能性があり、これを交換する必要がある。これは特に、反応器の壁や、例えば、ウェーハホルダー、加熱デバイス、ペデスタル、及び、支持要素又はクランプ要素などの、処理対象の物体(これは、簡単にするために、以下では略して「ウェーハ」とも呼ばれる)に近い反応器挿入物の壁に影響を与える。
【背景技術】
【0006】
上記製造プロセスで使用される多くの物質に対する耐薬品性が高く、耐熱性が比較的高いため、石英ガラスは、特定の応力がかかる部材によく使用される。しかしながら、フッ素含有エッチングガスの場合、石英ガラスのSiOは反応性フッ素と反応してSiFを形成する。SiFの沸点は-86℃であるため、この化合物は容易に気相に移行し、石英ガラスの表面に著しい腐食が生じる。
【0007】
石英ガラスのドライエッチング耐性の向上は、他の物質をドープすることで達成できることが知られている。したがって、例えば、米国特許第6,887,576 B2号は、金属元素がフッ素と反応してSiFよりも高い沸点を有するフッ化物化合物を形成することができる場合、金属元素をドープすることによって石英ガラスの高いドライエッチング耐性が達成可能であることを開示している。これらの金属元素の例として、Al、Sm、Eu、Yb、Pm、Pr、Nd、Ce、Tb、Gd、Ba、Mg、Y、Tm、Dy、Ho、Er、Cd、Co、Cr、Cs、Zr、In、Cu、Fe、Bi、Ga、及びTiが言及されている。
【0008】
プラズマエッチング耐性石英ガラスを製造するために、複数の方法が言及されている。そのうちの1つでは、粒子径100から500μmの粒子を含む750gの石英粉末、熱分解によって生成された二酸化ケイ素で構成される200gのSiO粉末、及び700gの硝酸アルミニウムで構成される水性スリップが調製される。そのスリップをゆっくりと乾燥させて固体を形成し、次に真空下で1800℃で熱処理にかける。その結果、2.0重量%のAlをドープした透明石英ガラスが得られる。
【0009】
しかしながら、公知のドーパントのいくつかでは、ドライエッチング耐性を大幅に向上させるには、高いドーパント濃度が必要であり、これにより、析出、相分離、および結晶化が発生する可能性がある。
【0010】
これを回避するために、米国特許出願公開第US2005/0272588A1号は、希土類金属と酸化アルミニウムの同時ドーピングを提案しており、総ドーパント濃度に対して0.1から20重量%の範囲が与えられている。それに応じてドープされた石英ガラスブランクを製造するために、SiO粉末がドーパントの粉末酸化物と混合され、その混合物が減圧下にて石英ガラス管内で焼結される。
【0011】
米国特許出願公開第US2008/0066497A1号では、1.5重量%のAlと窒素がドープされた石英ガラスで構成されるウェーハホルダーが、ドライエッチングプロセスで使用するために記載されている。このAlドーピングは、SiO粉末とAl粉末の混合物を融解することによりベルヌーイ法で生成される。
【0012】
ドイツ特許第DE 10 2012 012 524B3号は、スリップルートを介したYb及びAlドープ石英ガラスの製造について記載している。そのスリップには、平均粒子サイズが約10μmのナノ粒子で構成されるSiO集合体の形でSiO粒子が含まれ、pH値は14に調整される。AlClとYbClが溶解したドーピング水溶液がスプレーミストによってスリップに供給される。該懸濁液の高いpH値は、AI(OH)とYb(OH)の形で水酸化物の即時の共沈をもたらす。そのドーパント濃度は、1モル%のAl及び0.25モル%のYb(懸濁液のSiO含有量基準)に設定される。該ドープされたSiOスリップはさらに粒状材料に加工され、そこからドープされた石英ガラス部材が製造される。
【0013】
米国特許出願公開第US2018/0282196A1号は、水性スリップから開始する希土類金属又は遷移金属でドープされたレーザー活性石英ガラスの製造について記載している。造粒後、依然多孔質のドープされたSiO粒状材料は、グラファイト型に入れられ、ガス圧焼結によってガラス化される。
【技術的課題】
【0014】
反応性プラズマドライエッチング技術のプロセス環境での用途のための既に公知のドープ石英ガラス材料では、プラズマ抵抗は再現性が低いことが証明されている。
【0015】
さらに、例えば、スパッタリング又は蒸着プロセスなどの半導体製造プロセスでは、材料層が反応器内の表面に堆積されるという問題がしばしば発生する。この材料層は時間の経過とともに剥離し、パーティクルの問題を引き起こす可能性がある。この材料層は粗い部材の表面によりよく付着するため、特定の部材の表面粗さが重要な役割を果たす。しかしながら、「表面粗さ」のパラメータがエッチング除去の結果として部材の寿命にわたって常に変化する場合、「表面粗さ」のパラメータを適切に考慮することは困難である。
【0016】
したがって、本発明は、高いドライエッチング耐性及び低いパーティクル形成によって並びに特にプラズマアシスト製造プロセスで使用される場合の均一なエッチング除去によって区別されるドープされた石英ガラス部材を提供するという目的に基づいている。
【0017】
本発明はさらに、そのような部材を製造する方法の提供に関する。
【発明の概要】
【0018】
方法に関しては、上記のタイプの方法から出発して、この目的は、スリップ中のSiO粒子が、SiO一次粒子の集合体又は凝集体であり、平均粒子サイズが30μm未満であるということによって本発明に従って達成される。
【0019】
これらのSiO粒子は、スート堆積プロセスを用いて熱分解的に生成されることが好ましい。ここで、液体又は気体の出発物質は化学反応(加水分解又は熱分解)を受け、気相から固体SiOとして堆積表面に堆積する。反応領域は、例えば、バーナー炎又はアーク(プラズマ)である。合成石英ガラスは、これらのプラズマ堆積又はCVDプロセス(OVD、VAD、MCVD、PCVD又はFCVDプロセスとして知られる)によって工業スケールで製造される。出発物質は、例えば四塩化ケイ素(SiCl)又はポリアルキルシロキサンなどの塩素を含まないケイ素化合物である。
【0020】
この反応領域で形成されるSiO一次粒子は球形であり、平均粒子サイズは200nm未満、典型的には100nm未満である。反応領域では、これらの球状ナノ粒子が結合して、多かれ少なかれ球状の集合体又は凝集体の形で二次粒子を形成し、多孔質の「カーボンブラック」(しばしば「スート」としても知られる)として堆積表面に堆積し、いわゆる「スート体」または「スートダスト」として発生する。それらが反応領域内で発生する場所及び堆積表面へのそれらの経路に依存して、該二次粒子は異なる数の一次粒子から構成され、したがって常に広い粒子サイズ分布を示す。
【0021】
スート堆積プロセスは、「スート体」又は「スートダスト」に等方性のSiO質量分布を生成し、これは、均一なドーパント分布に有利である。
【0022】
このようにして熱分解的に生成された「二次粒子」を以下「SiO粒子」と呼ぶ。平均粒子サイズが30μm未満、好ましくは20μm未満、最も特に好ましくは15μm未満のこれらのSiO粒子を含む水性スリップが生成される。
【0023】
このスリップは、アルカリ性のpH値、例えば、12より大きいpH値、特に14のpH値に調整され、そして均質化される。
【0024】
さらに、溶媒及び少なくとも1つのドーパントを含むドーピング溶液が調製される。該ドーパント又はドーパント前駆体物質は上記溶媒に可溶である。アルミニウム(Al)の形態のドーパントの場合、溶媒は例えば水であり、ドーパントの可溶性前駆体物質は、例えば、AlClである。塩化物の代わりに、他の可溶性化合物、例えば硝酸塩又は有機化合物を、前駆体物質として用いることができる。
【0025】
このドーピング溶液は上記スリップに供給される。これは、好ましくは、連続的にかき混ぜること、例えば、スリップを振動、振とう又は攪拌することによって行われ、上記ドーピング溶液を、かき混ぜられたスリップに、ゆっくりと、細かく分割された形で(例えば、ドーピング溶液が噴霧された形で存在するスプレーミストの形で)供給する。このスプレーミストは、例えば、加圧下でドーピング溶液を噴霧ノズルに供給し、それをこの噴霧ノズルから微細な液滴の形でスリップ表面に向かって加速することによって生成される。この微細な液滴は、例えば、10μmから40μmの直径を有する。
【0026】
スリップのpH値が高いため、ドーパントの水酸化物(例えば、Al(OH)の形)の即時沈殿が生じる。この水酸化物固体は、スリップ中のSiO粒子の表面に吸着し、それによって固定化され、その結果、水酸化物粒子の凝固、分離、又は沈降が防止される。ドーパントが添加されたスリップはさらに均質化される。
【0027】
ドーパント又はドーパント前駆体物質は、SiO粒子の表面に沈降し、SiO粒子は完全に緻密ではないため、ドーパントもSiO粒子に入り、SiO一次粒子間の空洞に分布していると考えられる。この手順により、ドーパント又はドーパント前駆体物質がスリップのSiO固体部分内及びその上に可能な限り均一に分布することが保証される。したがって、スリップは、熱分解的に生成されたSiO粒子のみを含むことが好ましい。
【0028】
次に、ドーパントが添加されたSiOスリップは、従来の手段によって乾燥され、さらに、SiOと少なくとも1つのドーパントを含む多孔質粒状粒子へと処理される。この粒状粒子から、ドープされた透明な石英ガラス部材が焼結又は溶融される。
【0029】
この粒状粒子の焼結は、好ましくは、ガス圧焼結によって窒素含有雰囲気中で行われる。焼結中、粒状粒子の完全な融解が回避されるため、液相はほとんど又はまったく得られず、粒状粒子の配置によって事前定義された長距離秩序は、焼結後に実質的に維持される(粒子の再配列と拡散駆動の材料輸送に起因する焼結に典型的な圧縮を除いて)。スリップの元のSiO粒子の表面はドーパントで均一に占有されており、これらの粒子は焼結によって大幅に変化しないため、SiO粒子の初期サイズはドーパントの局所分布にとって重要である。したがって、SiO粒子の小さい初期平均粒子サイズは、ドーピングがなされる方法とともに、ドーパント分布の高い微小均一性に寄与し、したがって、高いドライエッチング耐性、低いパーティクル形成、および均一なエッチング除去に寄与する。
【0030】
上記部材に関しては、上記のタイプの部材から出発して、上記の技術的目的は、上記ドープされた石英ガラスが、(a)明細書で特定されるドライエッチング手順で表面がドライエッチングに曝された後の表面の表面粗さがRa値で20nm未満であること、及び/又は、(b)ドーパント濃度の極大値が30μm未満の平均距離にある横方向濃度プロファイルを有するドーパント分布、によって定義される微小均質性を有するものであることによって、本発明に従って達成される。
【0031】
本発明による石英ガラス部材は、1つのドーパント又は複数のドーパントを含む石英ガラスからなり、マイクロスケールでの比較的均一なドーパント分布によって区別される。標準化されたドライエッチング手順の後にドープされた石英ガラスによって示される表面粗さ、及び/又は、ドーパント濃度の極大値間の平均距離は、均一なドーパント分布の尺度として役立つ。
【0032】
「横方向」という用語は、(ある領域にわたる空間濃度プロファイルとは対照的に、)ある方向に沿った2次元濃度プロファイルを意味する。
【0033】
驚くべきことに、マイクロスケールでの均一なドーパント分布は、部材のドライエッチング抵抗を増加させるだけでなく、ドライエッチング処理後の表面の粗さを減少させることが示されている。ドープされた石英ガラス部材がプラズマアシスト製造プロセスで使用される場合、その高い微小均質性は、表面粗さの急速な増加を打ち消し、したがって、同時に、ドライエッチング速度を遅くする。
【0034】
標準化されたドライエッチング手順を使用して処理された表面の粗さは、20nm未満のRa値、理想的には15nm未満のRa値を有する、小さい粗さの深さによって区別される。
【0035】
図13は、試験サンプル13のドライエッチング処理を実施するためのプラズマ反応器1の概略図である。反応器1は、プラズマ反応器チャンバ3を取り囲む壁2を有する。壁2は、ガス源(図示せず)に接続され、そこからガスを反応器チャンバ3に供給することができる、ガス入口4を備えている。高真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス出口5を介して、チャンバ内部3は、ドライエッチング処理に適した0.5から10Paの低いチャンバ圧力を確立するためにポンプで排気される。上部電極9に接続された13.56MHzの高周波電源8は、反応器チャンバ3内で点火されたプラズマ10にエネルギーを誘導結合する。さらなる13.56MHzの高周波電源11が下部電極12に接続され、下部電極12は処理される試験サンプル13の下に配置され、それによって、独立した電気バイアス電圧を試験サンプル13に印加することができる。試験サンプル13は、全体として参照符号15が与えられる保持デバイス上に保持される。反応器の壁2の上部閉鎖は、誘電体窓18によって形成される。
【0036】
微小均一性を決定するために、試験サンプルは、以下の処理ステップを伴う標準的なドライエッチング手順にかけられる。
(a)直径28mm、厚さ1mmの円形断面の石英ガラスディスクの平らな面を、Ra値が4nm以下の表面粗さになるように研磨する。
(b)上記石英ガラスディスクがプラズマ反応器1に導入され、研磨された平らな面が、以下のパラメータによって特徴付けられるドライエッチング手順にかけられる。
・600ワットの電力が高周波電源8に供給される。
・マイナス100ボルトのバイアス電圧が、高周波電源11により、10ワットの入力電力で試験サンプルに印加される。
・以下のプロセスガスが、ガス入口4から反応器チャンバ3に導入される:5sccmのアルゴン、1sccmのCF、0.3sccmのO
・チャンバ圧力が6Paに設定される。
・エッチング時間は60分である。
【0037】
このドライエッチング手順の後、サンプル中のドーパント分布の均一性の尺度である表面粗さが得られることが示される。これは、ドーパントが豊富な石英ガラス領域が、ドーパントが少ない石英ガラス領域と比較して異なるドライエッチング特性を示すという事実に起因するかもしれない。原則として、ドーパントが豊富な石英ガラス領域は、比較的低いエッチング速度を有する。60分のエッチング時間の間に、エッチング速度のわずかな違いでさえ顕著になり、エッチングされた表面の粗面化を引き起こす。しかしながら、本発明による部材では、エッチング速度の差が非常に小さいため、20nm未満、好ましくは15nm未満の平均表面粗さ(Ra値)が得られる。したがって、この小さい表面粗さは、ドーパント分布の高い均一性を示している。
【0038】
ドーパント分布の高い均一性は、少なくとも1つのドーパントの濃度プロファイルが横方向で測定されるとき、わずかな距離だけ離れているドーパント濃度の極大値が決定されるということによっても示される。したがって、好ましくは、ドープされた石英ガラスは、横方向の濃度プロファイルを有するドーパント分布によって定義される微小均一性を有し、ドーパント濃度の極大値は、平均距離が30μm未満、好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満である。
【0039】
少なくとも1つのドーパントの横方向濃度プロファイルは、空間的に分解された分析、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)によって決定される。上記距離は、隣接する濃度の極大値間の中心間距離として取得され、該平均距離は、複数の測定値の算術平均である。
【0040】
横方向のドーパント濃度プロファイルの決定を、図1aから1cを用いて説明する。図1aのスケッチは、2つの隣接するSiO粒子41a、41bを示しており、それらの表面はそれぞれ、ドーパントの層42でコーティングされている。矢印「D」で示されるように、SiO粒子はほぼ等しい粒子サイズを有する。
【0041】
図1bのスケッチは、焼結操作の結果として共に結合した2つのSiO粒子41a、41bと、焼結によってドーパント層42から生じるドーパントに富むガラス領域43(ドーパントに富むガラス領域43は、SiO粒子を取り囲み、また、それらの間に延びる。)の概略図を示す。ガラス領域43は、別個の相を表さないが、それは、比較的高い割合のドーパントによってのみ、前者のSiO粒子41a、41bの領域とは異なる。焼結プロセス中の拡散の結果、元々粒子表面に集中していたドーパントが石英ガラス全体に分布したが、それでも前者の表面の領域で最大濃度を示す。
【0042】
これは、図1cの図に概略的に示され、ここでは、空間分解分析によって決定されたドーパント濃度「C」が位置座標「x」に対してプロットされ、その横方向の経路は方向矢印44で示される。ドーパント濃度の極大値45は、ガラス領域43で決定される。極大値45の中心間距離A1およびA2は、最大で、SiO粒子41a、41bの初期平均粒子サイズDと同じ大きさである(すなわち、例えば平均粒子サイズが30μm未満のSiO粒子の場合は30μmよりも小さい)。ここで、これは、高いドライエッチング耐性、低いパーティクル形成、及び均一なエッチング除去に寄与する、ドーパント分布の高い微小均一性の尺度であると考えられる。
【0043】
本発明による部材は、上記の本発明の方法によって製造することができる。
【0044】
ドーパント分布の高い均一性に関して、1つ又は複数のドーパントが0.1重量%から5重量%の範囲の総ドーパント濃度で、好ましくは0.5から3重量%の範囲の総ドーパント濃度で存在する場合に有利であることが判明した。
【0045】
総ドーパント濃度が0.1重量%未満の場合、ドライエッチング耐性の改善への影響は減少する。また、総ドーパント濃度が5重量%を超えると、望ましくない気泡の形成を抑制することが次第に困難になることがわかった。
【0046】
上記ドープされた石英ガラスは、好ましくは、Al、Sm、Eu、Yb、Pm、Pr、Nd、Ce、Tb、Gd、Ba、Mg、Y、Tm、Dy、Ho、Er、Cd、Co、Cr、Cs、Zr、In、Cu、Fe、Bi、Ga及びTiからなる群から選択されたドーパントを含む少なくとも1つのドーパント化合物を含む。これらの金属は、一般に石英ガラスにおいて酸化物の化合物として存在し、フッ素と反応して、SiFの沸点よりも高い沸点を有するフッ化物の化合物を形成することができる。
【0047】
高いドライエッチング耐性に関して、アルミニウムがドーパントであり、Alがドーパント化合物である石英ガラス部材の実施形態が特に適切であることが判明しており、この場合の総ドーパント濃度は、好ましくは0.5から3重量%の範囲である。
【0048】
石英ガラスの不純物は、ドライエッチング耐性に悪影響を与える可能性がある。したがって、ドープされた石英ガラスの少なくともSiO部分は、合成的に製造されたSiO原料から作られたものである。合成的に製造されたSiO原料は、高純度により区別される。
【0049】
[定義及び試験方法]
上記説明における個々の用語は、以下でさらに定義される。これらの定義は本発明の説明の一部である。以下の定義の1つと明細書の残りの部分との間に不一致がある場合は、明細書内でなされた記述が決定的である。
【0050】
[石英ガラス]
ここで、石英ガラスは、少なくとも90モル%のSiO含有量の高シリカガラスであると理解される。
【0051】
[ドーピング]
ドーピングは、1つまたは複数のドーパントで構成される。「ドーパント」は、所望の特性を得るために意図的にガラスに添加される物質である。
【0052】
ドーパント(例えば、イッテルビウム;Yb)は、通常、元素形態ではなく、化合物として、例えば、酸化物の化合物として、石英ガラス中に存在する。適切な場合には、ドーパントに関連する濃度の数値は、SiOと、最も高い酸化段階にある関連化合物(例えばYb)の形のドーパントのモル濃度に基づく。非酸化物型のドーパント(例えば、YbCl)に用いられる出発物質の量の決定は、その非酸化物の形での出発物質と酸化物の形での最終ドーパントのそれぞれのモル重量の比を考慮に入れる。
【0053】
[スリップ-分散液]
「スリップ」という用語は、液体中に固体のSiO粒子を含む分散液に用いられる。蒸留又は脱イオンによって精製された水を液体として使用することができ、不純物の含有量を最小限に抑えることができる。
【0054】
[粒子サイズ及び粒子サイズ分布]
SiO粒子の粒子サイズと粒子サイズ分布は、D50値を用いて特徴付けられる。これらの値は、粒子サイズの関数としてのSiO粒子の累積体積を示す粒子サイズ分布曲線から取得される。粒子サイズ分布は、多くの場合、関連するD10、D50、およびD90の値を使用して特徴付けられる。D10値は、SiO粒子の累積体積の10%がより小さい粒子サイズを特徴づけ、同様に、D50値とD90値は、SiO粒子の累積体積のそれぞれ50%と90%がより小さい粒子サイズを特徴付ける。粒子サイズ分布は、ISO13320に準拠した光散乱及びレーザー回折分光法によって決定される。
【0055】
[粒状材料]
層状造粒と圧力造粒を区別することができ、処理に関しては、湿式造粒法と乾式造粒法を区別することができる。公知の方法は、パン型造粒機での圧延造粒、噴霧造粒、凍結造粒、遠心噴霧、流動床造粒、造粒ミルを使用する造粒方法、圧縮、ローラープレス、ブリケット製造、フレーク製造又は押出である。
【0056】
造粒中、「SiO粒状材料粒子」又は略して「粒状材料粒子」とここで呼ばれる、個々の、比較的大きな凝集体が、SiO一次粒子の集合によって形成される。全体として、粒状粒子は「SiO粒状材料」を形成する。
【0057】
[粒状材料の精製]
粒状粒子の熱化学的「精製」により、不純物の含有量が減少する。主な不純物は、原料に由来するか、処理操作の結果として導入される、OH基、炭素含有化合物、遷移金属、アルカリ金属、及び、アルカリ土類金属である。この精製は、塩素含有、フッ素含有及び/又は酸素含有雰囲気下での高温(>800℃)での処理を含む。
【0058】
[焼結/溶融]
ここでの「焼結」とは、1100℃を超える高温での処理を指す。これにより、粒状粒子がガラス化され、所定の長距離秩序を維持しながら、粒状粒子が完全に溶ける(長距離秩序を排除する)ことなく、ドープされた透明な石英ガラス部材が形成される。
【0059】
「溶融」中、粒状粒子は1800℃を超える非常に高い温度に加熱され、粘性のある石英ガラス融解物を形成する。
【0060】
[表面粗さ]
表面粗さは、プロフィロメーター(VEECO Dektak 8)を使用して測定される。平均粗さ深さRaは、DIN 4768(2010)に準拠した測定値から決定される。
【0061】
[微小均一性の測定]
微小均一性(マイクロメートル範囲のドーパント分布の均一性として定義される)は、標準的なドライエッチング手順を実行した後、表面粗さに基づいて間接的に決定される。その代わりに又はそれに加えて、ドーパント濃度プロファイルは、エネルギー分散型X線分光法(EDX)によって決定される。
【0062】
[タップ密度の測定]
「タップ密度」という用語は、例えば、容器を振動させることによる、粉末又は粒状材料の機械的圧縮後に生じる密度を指す。これは、DIN/ISO787第11部に従って決定される。
【例示的な実施の形態】
【0063】
本発明は、例示的な実施形態及び図面を参照して、以下でより詳細に説明される。個々の図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】プラズマエッチング反応器で標準的なドライエッチングプログラムを実行した後の、本発明によるAlドープ石英ガラスからなるサンプルのエッチングプロファイルである。
図2】標準的なドライエッチングプログラムを実行した後の、純粋なドープされていない石英ガラス(参照サンプル)からなる参照サンプルのエッチングプロファイルである。
図3】プラズマエッチング反応器の加速電圧の関数としての侵食速度を示すグラフである。
図4】石英ガラスのAl濃度の関数としての侵食速度を示すグラフである。
図5】プラズマエッチング反応器のエッチングガス中のCF濃度の関数としての侵食速度を示すグラフである。
図6】さまざまなサンプルのプラズマエッチング反応器のエッチングチャンバ内の内部圧力の関数としての相対侵食速度を示すグラフである。
図7】エッチング時間の関数としての、エッチングされたサンプルの表面の化学的占有率を示すグラフである。
図8】標準的なドライエッチングプログラムを実行した後の、Alドープ石英ガラスからなる比較サンプルのエッチングプロファイルである。
図9】プラズマエッチング反応器内で標準的なドライエッチングプログラムを実行した後の、純粋なドープされていない石英ガラス(参照サンプル)からなるサンプル表面の走査型電子顕微鏡画像である。
図10】プラズマエッチング反応器内で標準的なドライエッチングプログラムを実行した後の、本発明によるAlドープ石英ガラスからなるサンプル表面の走査型電子顕微鏡画像である。
図11】標準的なドライエッチングプログラムを実行した後の、Alドープ石英ガラスからなる比較サンプルの表面の走査型電子顕微鏡画像である。
図12図11の比較サンプルの倍率の表面である。
図13】プラズマアシスト製造プロセスを実行するための、特にドライエッチング手順を実行するための反応器の実施形態を示す概略図である。
図14】横方向のドーパント濃度プロファイルを決定する方法を説明するスケッチである。
図15】プラズマ反応器で標準的なドライエッチングプログラムを実行した後、火炎溶融及びAlドープ石英ガラスからなる試験サンプルの表面のエネルギー分散型X線分光法(EDX)によって生成された画像である。
図16図15に描かれた測定線に沿った、試験サンプル内の元素Si、Al、C、酸素(O)、及びフッ素(F)の横方向の2次元相対濃度分布を示すグラフである。
【0065】
[ドープされた石英ガラス部材の製造]
従来のスート堆積プロセスでは、出発物質としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)を用いて、平均粒子サイズが100nm未満のSiO一次粒子を合成した。これらは、反応領域で凝集して、多かれ少なかれ球状の、集合体又は凝集体の形で、二次粒子を形成した。これらの二次粒子は、異なる数の一次粒子で構成され、おおよその平均粒子サイズ(D50値)が10μm未満であったものであり、以下では「SiO粒子」とも称する。表1に、このSiO粒子の典型的な特性を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
超純水中にて、平均粒子サイズ(D50値)が約10μmである、これら個々の、合成的に製造されたSiO粒子で構成されるスリップを作製した。
【0068】
濃アンモニア溶液を加えることにより、pH値を14に調整した。このアルカリ性懸濁液を均質化し、濾過した。
【0069】
また、超純水中のAlClのドーピング水溶液が作製され、均質化され、同様にろ過された。
【0070】
ドーピング溶液はスプレーミストの形でスリップに供給され、それは攪拌によってかき混ぜられた。スプレーミストを作製するために、ドーピング溶液をスプレーノズルを使用して噴霧し、操作圧力を2バールに設定し、流量を0.8l/hに設定した。このようにして作製されたスプレーミストには、平均直径が10μmから40μmの液滴が含まれていた。スリップのpHが高いため、Al(OH)の形でドーパントの即時沈殿が生じた。その固体粒子は、SiO粒子の既存の表面に吸着され、それによって固定化され、その結果、固体粒子の凝固、又は沈降が防止された。次に、ドーパントが添加されたスリップを、さらに2時間撹拌することによって均質化した。この手順により、最適に均一にドープされたSiOスリップが確実に得られた。
【0071】
ドープされたSiOスリップは凍結され、さらに凍結造粒によって処理されて粒状材料が形成された。解凍後に得られた粒状材料スラリーを超純水で複数回洗浄し、そのたびに過剰の水をデカントした。
【0072】
次に、アンモニアを除去して精製した粒状材料スラリーを約400℃の温度で乾燥させた。乾燥した粒状材料は、典型的には、300μmから600μmの範囲のグレインサイズを有していた。それをプラスチック金型に密着させ、400バールで均衡的にプレスして、粒状材料ブランクを形成した。
【0073】
粒状材料ブランクは、塩素含有雰囲気中、約900℃で約8時間処理された。その結果、ブランクから不純物が除去され、ヒドロキシル基の含有量が約3重量ppmに減少した。
【0074】
精製された粒状材料ブランクは、直径30mm、長さ100mmの円筒形を有していた。その平均密度は、ドープされた石英ガラスの密度の約45%であった。それを真空炉で1550℃に加熱して予備焼結し、その後アルゴン下でガス圧焼結して焼結し、Alドープ透明石英ガラスの円柱を形成した。ガス圧焼結プロセスは、グラファイト製の排気可能な焼結型を備えたガス圧焼結炉内で行った。焼結型の内部は円筒形の構成であり、基部と環状断面を有する側壁によって区切られた。
【0075】
このようにして、平均Al濃度が1から2.7重量%のガラスサンプルを調製した。測定を行うために、ガラスサンプルから厚さが約1mm、横方向の寸法が13mm×13mmから28mm×28mmのプレートを切り取り、研磨した。
【0076】
[プラズマエッチング試験]
ドライエッチング試験を、Alドープ石英ガラスのサンプルと市販の石英ガラスのサンプルで行った。この目的のために、図13を用いて上記で説明したように、ドライエッチング反応器を使用した。
【0077】
測定するサンプルの表面は、初期平均粗さ(Ra値)が約3nmになるように研磨し、ポリイミドテープで部分的にマスキングした。エッチングステージ(以下「侵食ステージ」とも称する)と表面粗さを測定するために、次に、それらのサンプルを、市販の高均一性のドープされていない石英ガラス(Heraeus Quarzglas GmbH&Co.KGの「Spectrosil2000」)からなる参照サンプルとともに0.5時間から3時間の時間で処理した。
【0078】
[表面プロファイルと侵食速度]
参照サンプルと比較したアルミニウムドープサンプルの相対的な侵食速度は、サンプルの酸化アルミニウム濃度、チャンバ圧力、プラズマに結合された誘導電力、及び印加されたバイアス電圧の関数として変化した。
【0079】
図2のグラフは、上記で説明した標準的なドライエッチング手順を合計1時間のエッチング時間にわたって行った後、ドープされていない石英ガラスの参照サンプルに対して、このようにして得られた表面プロファイルを示している。エッチング深さH(nm)は、位置座標P(μm)に対してプロットされている。グラフの右側は、サンプルのマスクされた表面領域であり、左側は、サンプルのエッチング及び粗面化された領域である。これは、約1360nmの高さで顕著な侵食ステージが形成されたことを示している。侵食された表面のRa値は約15nmであった。
【0080】
比較として、図1は、2.7重量%のAlをドープしたサンプル(これは参照サンプルとともに処理された)のプロファイル曲線を示している。このサンプルは、約560nmの侵食ステージを示しているため、参照サンプルよりも侵食速度が約59%低くなっている。侵食された表面のRa値は約10nmであったため、参照サンプルよりもいくらか小さくなった。
【0081】
図3のグラフは、参照サンプルと比較した、1.5%Alをドープした石英ガラスのサンプルのバイアス電圧に対する侵食速度の依存性の例を示している。ここでは、侵食速度v(μm/h)がバイアス電圧Bv(V)に対してプロットされている。0Vから300Vの間の全バイアス電圧範囲にわたって、アルミニウムをドープしたサンプルの侵食速度は、参照サンプルの侵食速度よりも著しく低いことが示された。しかしながら、より高いバイアス電圧では、侵食速度間の相対的な差は減少した。これは次のように解釈される。
【0082】
プラズマ処理中に、フルオロカーボンプラズマからのフッ素がAlドープ石英ガラスのアルミニウムと反応し、フッ化アルミニウムと二酸化ケイ素を含むガラスの表面層が生成される。また、フッ素はガラス中のケイ素と反応してフッ化ケイ素(SiF)を形成する。SiFは周囲温度で気体であるため、すぐに表面から離脱する一方で、AlFは固体で表面に残り、それによってさらなる侵食を防止し、侵食速度を低下させる。より高いバイアス電圧では、ガラス表面に到達するイオン(主にアルゴンイオン)のエネルギーがより高くなり、化学反応によって形成されたAlFのスパッタリングを含む、表面のスパッタリングの増加につながる。したがって、より高いバイアス電圧では、アルミニウムドープサンプルの侵食速度は、純粋な石英ガラスの侵食速度に近づく。
【0083】
図4のグラフは、侵食速度v(μm/h)の初期Al濃度CAl(重量%)への依存性を示す。侵食速度は、参照サンプル(CAl=0)、並びに、計量されたAl濃度が1、1.5、及び2重量%のサンプルについて決定された。以下のエッチングパラメータを使用した:プラズマガス組成:90体積%のアルゴン及び10体積%のCF
誘導電力:600W、
バイアス電圧(DCバイアス):100V、
チャンバ圧力:2.8Pa。
【0084】
酸化アルミニウム濃度とともに侵食速度が低下し、最高濃度(CAl=2重量%)のサンプルでは、参照サンプルの侵食速度に基づいて約40%に低下することが示されている。
【0085】
図5のグラフは、以下のエッチングパラメータについて、侵食速度v(μm/h)の、プラズマガス組成、より正確にはプラズマガス中のCFの比率CCF4(体積%、残りはアルゴン)、及び、ドーパント濃度(Al 濃度0;1.0;1.5;2.0及び2.5重量%の場合)への依存性を示している。
誘導電力:600W、
バイアス電圧:100V DC、
チャンバ圧力:2.8Pa。
【0086】
最大の侵食速度は、おおよそ10体積%CFと90体積%アルゴンを含むプラズマガスの組成で得られる。参照サンプルと比較したアルミニウムドープ石英ガラスの相対的な侵食速度は、この試験で最大のCF含有量である80体積%で最低であった。これは、侵食速度の低下は、プラズマがガラス中のアルミニウムとの化学反応に利用できるフッ素に富んでいて、緻密なAlFのマスキングを形成する場合に最も顕著であり、プラズマがアルゴンに富んでいる場合、侵食速度の低下はそれほど顕著ではなく、それにより、サンプル表面でのAlFのスパッタリング速度が増加する、という理論と一致している。
【0087】
図6は、1.5重量%及び2.5重量%のAlをドープした石英ガラスサンプルのチャンバ圧力に対する侵食速度v(μm/h)の依存性を示している。このグラフでは、相対侵食速度(μm/h単位、参照サンプルの侵食速度に基づく)の変化が、異なるチャンバ圧力(1Pa及び6Pa)のバイアス電圧Bv(V単位)に対してプロットされている。十分に低い圧力と高いバイアス電圧では、アルミニウムドープガラスと参照サンプルの間で侵食速度に顕著な差は見られない。1Paの低いチャンバ圧力では、1.5重量%の計量されたAl濃度のサンプルは、約50V未満のバイアス電圧でのみ侵食速度の低下効果を示す。しかしながら、6Paの高いチャンバ圧力では、計量したAl濃度が1.5重量%及び2.5重量%のサンプルの両方で、約400Vのバイアス電圧までは、低い相対侵食速度を示した。したがって、エッチング速度に対するドーピングの影響は、バイアス電圧とチャンバ圧力の両方に依存する。より低いチャンバ圧力では、サンプル表面へのイオンの流れがより速く、これはフッ化アルミニウムマスキングのより強力なスパッタリングにつながるであろうと想定される。したがって、より低いチャンバ圧力では、侵食速度の低下につながるマスキング効果は、高いチャンバ圧力よりも顕著ではないであろう。
【0088】
アルミニウムドープサンプルの侵食速度の低下は侵食された表面のAlF濃縮に起因するという理論を支持するために、侵食された表面でX線光電子分光測定を実施した。これらの測定結果を図7のグラフに示す。このグラフから、アルミニウム、フッ素、及びケイ素の相対モル濃度C(モル%)の変化が、エッチング期間t(分)にわたって、0.6重量%の計量されたAl含有量を有する試験サンプルで見られる。これらの測定は、不純物(例:カーボン)を除去するために表面を10分間予備スパッタリングした後にのみ開始した。サンプルをプラズマガスで15分、30分、60分、及び120分間処理した。測定期間ごとに個別のサンプルを作製した。プラズマ処理の過程で表面がアルミニウムとフッ化物で濃縮され、約30分後にほぼ一定の濃度に達することが示された。約1.6モル%の初期アルミニウム(酸化物)濃度が、プラズマ処理により、約10モル%に増加し、フッ化物濃度が約20モル%に上昇した。1:2のAl:F比は、純粋なAlF種に期待される1:3のモル比に完全には対応していないが、AlとFの間で化学反応が起こり、これら2つの種の濃縮が表面上に生じたことを示している。同時に、ケイ素の相対モル濃度が低下した。これは、AlとFの濃縮、及び、揮発性のSiFが生成されるフッ素とケイ素の化学反応によって説明できる。
【0089】
本発明の方法によって調製された石英ガラスは、プラズマエッチング処理後、従来技術に従って製造されたアルミニウムドープサンプルの表面粗さよりも著しく低い表面粗さを有することが示されている。例えば、約0.9重量%のAlがドープされたサンプルは、上記の米国特許出願公開第US2008/0066497A1号に記載された方法(粉末混合物を融解し、ベルヌーイ法によって担体上に融解ガラス粒子を堆積する)によって調製した。図1及び2を参照して説明したサンプルと同様のプラズマ条件でこの石英ガラスを処理すると、図8の侵食プロファイル(エッチング深さH(nm)及び位置座標P(μm))に示すように、表面が大幅に粗くなった。サンプルのマスクされていない部分(左側)は、深さが1000nmを超える複数の谷と、Ra値が60nmの表面粗さを示している。これは、エッチング除去の結果としての部材の寿命の過程での表面の顕著な変化の尺度であり、半導体製造において粒子生成に関して「表面粗さ」のパラメータを適切かつ再現可能に考慮することを困難にする。
【0090】
表2において、エッチングされた表面のRa値が、図2を参照して説明された参照石英ガラス、図1を参照して説明された本発明による例、及び、図8を参照して説明された比較例についてまとめられている。
【0091】
【表2】
【0092】
ドライエッチング処理後、比較例の表面は、ドープされていないが均質性の高い参照石英ガラスの表面と比較して、17倍高い平均粗さ深さRaを示している。比較すると、ドライエッチング処理後、本発明によるドープされた石英ガラスの表面は、参照石英ガラスと比較して0.7倍低い平均粗さ深さRaを示す。
【0093】
複数のエッチング試験は、ドライエッチング処理の特定のパラメータに関係なく、本発明によるドープされた石英ガラスと参照石英ガラスの平均粗さ深さの比が、典型的かつ好ましくは0.5から3の範囲であること、及び、同時に処理された試験サンプルの場合、0.7から2の範囲が特に好ましいことを示している。
【0094】
図9は、標準的なドライエッチング手順後の参照サンプルの表面の10,000倍の倍率でのSEM画像である。その粗さプロファイルの山と谷の間の横方向の距離は約1μmである。
【0095】
図10は、同様に、0.5重量%のAlがドープされた、本発明による石英ガラスからなり、プラズマ処理された試験サンプルの表面の10,000倍の倍率を示している。その粗さプロファイルの山と谷の間の横方向の距離は、参照サンプルの場合と同じ範囲である。
【0096】
図11のSEM画像は、同様に、標準的なドライエッチング手順を用いてプラズマ処理され、米国特許出願公開第US2008/0066497A1号のようにベルヌーイ法により作製された、0.9重量%のAlがドープされた石英ガラスからなる比較サンプルの表面の10,000倍の倍率を示している。その表面の部分的な領域は図9及び10に示す表面と類似しているが、他の部分的な領域の構造が異なることがわかる。これは、この方法で調製されたプラズマ処理サンプルの不均一性が大きいことを強調している。
【0097】
図12は、約610倍の低倍率での比較サンプルの画像であり、これから、表面プロファイルの谷と山の間の横方向の距離が平均で約200μmであることがわかる。
【0098】
まとめると、これらの調査は、熱分解的に作製されたSiO粒子からなるドープされたスリップを用いて上記の製造方法によって製造されたドープされた石英ガラスは、プラズマ条件が表面の物理的スパッタリングが最小限に抑えられるようなものである場合、プラズマ侵食速度の少なくとも2分の1の減少をもたらすことを示している。特に、サンプルのバイアス電圧は高すぎてはならず、チャンバ圧力が約2Paを超えると好ましい効果があります。
【0099】
図15は、プラズマ反応器で標準的なドライエッチング処理を行った後の、火炎溶融アルミニウムドープ石英ガラスの化学的な微小均一性の測定結果を示している。火炎溶融は、粉末混合物を融解し、融解したガラス粒子をベルヌーイ法によって担体上に堆積させることによって行われる。ドライエッチング処理前の試験サンプル中のアルミニウム濃度の巨視的測定により、約0.7原子%が得られた。
【0100】
ドライエッチング処理後、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により化学組成の顕微鏡測定を行った。画像の暗い領域は、粗さ測定で表面形状測定的に決定されたトポグラフィーのピークに対応し、明るい領域はトポグラフィーの谷に対応する。明るい領域51aでは、EDX分析により次の化学組成(原子%)が得られる:
酸素:52.3%、ケイ素:26.0%、炭素:20.7%。
【0101】
したがって、明るい領域51は、たとえあったとしても無視できる量のアルミニウムを含む。暗い領域51bでは、次の化学組成が得られる(原子%):
酸素:46.5%、炭素:26.9%、ケイ素:20.0%、アルミニウム:3.7%、フッ素:2.8%。
【0102】
したがって、暗い領域51は、プラズマ侵食プロセスによって引き起こされたアルミニウム濃縮を示している。約30μmの縦方向の延長を持つ、明るい領域と暗い領域(51a;51b)の間の遷移領域は、図15では、参照符号51cの省略記号で表され、図16のラインスキャンの測定線は参照符号51dで表される。
【0103】
図16のラインスキャンでは、EDX元素濃度測定のパルス数「N」(相対単位)が、図15に描かれた測定線51dに沿った位置座標「x」に対してy軸にプロットされている。Si、Al、O、C、及びFの濃度プロファイルには、関連する化学元素記号が付されている。(Al、C、F)、(C、F)及び(Al、O)のような括弧内の複数の元素記号は、それぞれの場合に言及された元素のプロファイルが重なるプロファイル領域を示す。遷移領域51cでは、アルミニウム濃度が約30μmの距離にわたって著しく増加することが明らかである。この試験サンプルは、低いドライエッチング耐性を伴う不十分な微小均一性を示している。これは、プラズマアシスト製造プロセスで使用するためのドープされた石英ガラスの製造において、用いられる製造方法が微小均一性の調整に重要な役割を果たすという事実の証拠である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16