(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】クロム補助エチレンオリゴマー化方法において1-オクテンを製造するための配位子
(51)【国際特許分類】
B01J 31/22 20060101AFI20240611BHJP
B01J 31/14 20060101ALI20240611BHJP
C07C 2/36 20060101ALI20240611BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240611BHJP
C07C 11/107 20060101ALI20240611BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
B01J31/22 Z
B01J31/14 Z
C07C2/36
C07C11/02
C07C11/107
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021556644
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 IB2020052400
(87)【国際公開番号】W WO2020188476
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-15
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アル‐ダジャン,マーヘル
(72)【発明者】
【氏名】アル‐ネザリ,アブドゥラジ
(72)【発明者】
【氏名】コロブコヴ,イリア
(72)【発明者】
【氏名】アルバヒリ,カリド
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-523908(JP,A)
【文献】特表2008-537905(JP,A)
【文献】特表2009-516580(JP,A)
【文献】特表2011-504799(JP,A)
【文献】N. PEULECKE et al.,“Ligands with an NPNPN-framework and their application in chromium catalysed ethene tri-/tetramerization”,Dalton Transactions,2016年,Vol. 45, No. 21,p.8869-8874,DOI: 10.1039/c6dt01109h
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 2/36
C07C 11/02
C07C 11/107
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ヘキセン触媒および1-オクテン触媒を含んでなる、1-ヘキセンおよび1-オクテンを製造するための触媒組成物であって、前記1-ヘキセン触媒
および前記1-オクテン触媒
の両者が窒素リン窒素リン窒素(NPNPN)配位子を含
み、
前記1-ヘキセン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含む、触媒組成物。
【化1】
式中、R
1
およびR
2
は同じまたは異なって、(i)C
3
~C
4
非環式脂肪族基、(ii)環式または非環式、直鎖または分岐、置換または非置換であってよいC
5
~C
10
脂肪族基、および(iii)それらの任意の組み合わせ、からなる群より選択され、nは0または1であり、m=n+3である。
【請求項2】
クロム(III)
種および活性化
剤をさらに含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記1-オクテン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含む、請求項1または2に記載の触媒組成物。
【化2】
式中、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して芳香族基または置換芳香族基であり、nは0または1であり、m=n+3である。
【請求項4】
Ar
1およびAr
2がそれぞれ独立してフェニル基またはアルキル置換フェニル基である
、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
nが0であり、
前記1-オクテン触媒が、以下の式で表される構造を有する
配位子を含む、請求項4に記載の触媒組成物。
【化3】
【請求項6】
nが1であり、
前記1-オクテン触媒が、以下の式で表される構造を有する
配位子を含む、請求項
4に記載の触媒組成物。
【化4】
【請求項7】
R
1およびR
2がそれぞれ独立して炭素原子数5~10の環式炭化水素基、置換環式炭化水素基、直鎖炭化水素基または分岐炭化水素基で
ある、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
nが0であり、前記1-ヘキセン
触媒の配位子が、以下の式で表される構造を有する、請求項
7に記載の触媒組成物。
【化5】
【請求項9】
nが1であり、前記1-ヘキセン
触媒の配位子が、以下の式で表される構造を有する、請求項
7に記載の触媒組成物。
【化6】
【請求項10】
前記1-オクテン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含み、
【化7】
かつ、前記1-ヘキセン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含む、
【化8】
請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項11】
エチレンをオリゴマー化して1-ヘキセンおよび1-オクテンを含むオリゴマー組成物を製造するのに充分な条件下に、エチレンを含む反応体流を、請求項1~
10のいずれか一項に記載の触媒組成物を含む溶液と接触させることを含む、オレフィンから1-ヘキセンおよび1-オクテン
の両方を含む組成物を製造する方法。
【請求項12】
前記1-ヘキセン触媒
:1-オクテン触媒の重量比が10:1~1:10である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセン
:1-オクテンの重量比が0.5:1より大きい、請求項
11または12に記載の方法。
【請求項14】
1-ヘキセン触媒
:1-オクテン触媒の重量比
が1:1であり、かつ、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセン
:1-オクテンの重量比が少なくとも2.5:1である、請求項
11または12に記載の方法。
【請求項15】
1-ヘキセン触媒
:1-オクテン触媒の重量比
が1:2.3であり、かつ、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセン
:1-オクテンの重量比が少なくとも1.5:1.17である、請求項
11または12に記載の方法。
【請求項16】
1-ヘキセン触媒
:1-オクテン触媒の重量比
が1:4であり、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセン
:1-オクテンの重量比が1:1以上である、または、1-ヘキセン触媒
:1-オクテン触媒の重量比
が1:8であり、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセン
:1-オクテンの重量比が1:1.3を超える、請求項
11または12に記載の方法。
【請求項17】
前記クロム(III)種は、クロム(III)アセチルアセトネート、Cr(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタジオネート)
3
、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロムトリクロライドトリス-テトラヒドロフラン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、クロム(III)オクタノエート、クロムヘキサカルボニル、及びクロム(III)ナフテネートからなる群より選択される、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記活性化剤は、メチルアルミノキサン化合物である、請求項2に記載の触媒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2019年3月19日に出願された米国仮特許出願No.62/820,437の優先権の利益を請求し、その全ての内容を参照として本明細書で全て援用する。
【0002】
発明の背景
A.発明の分野
本発明は、概して、エチレンから、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む組成物を製造する方法に関する。該方法は、エチレンをオリゴマー化して1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む組成物を製造するのに充分な条件下に、エチレンを1-オクテン触媒および1-ヘキセン触媒に接触させることを含む。
【背景技術】
【0003】
B.関連技術の説明
コモノマー級の1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む直鎖αオレフィン(LAO)を製造するための現在の方法は、エチレンのオリゴマー化に依存しており、鎖長が4、6、8等であるエチレン誘導オリゴマーの混合物を導くことができる。理論に拘泥されないが、これは、Schulz-Flory-またはPoisson-産物分布につながる鎖成長および置換反応ステップの競合が主体である化学機構が原因であると考えられる。対象マーケットセグメントはそれぞれ、マーケットの大きさおよび成長、地域、細分化などの点で異なる挙動を示す可能性があることから、商業的な観点から見ると、この製品分布はすべての範囲のLAO製造業者にとって課題となる。そのため、製品の範囲の一部は特定の経済状況下で大きな需要があるかもしれないが、一方で、他の製品フラクションは全く市場性がないか、あるいはわずかなニッチなマーケットでしか市場性がないかもしれないので、LAO生産者がマーケットの要求に順応することは困難である。例えば、特定グレードのポリエチレン材料は、優れた引張強度や亀裂抵抗のような向上した物理的特性を必要とし、1-オクテンの存在を必要とするが、他のエチレン誘導オリゴマーは必要としない。
【0004】
エチレンのオリゴマー化は、通常、適切な触媒の存在下に進行する。幾つかの現存のエチレンオリゴマー化、すなわち、二量化、三量化または四量化の触媒は、一つ以上の欠点を有する。これらの欠点は以下を含み得る。
1)所望の産物(例えば、1-オクテンおよび/または1-ヘキセン)への低い選択性、2)C8画分中のLAO異性体への低い選択性(例えば、異性化、分岐オレフィン形成等)、
3)ワックス形成(例えば、重質の長鎖(高炭素数)産物の形成)、
4)かなりのLAO産物収率損失および装置の汚染につながり得るポリマー形成(分岐および/または架橋PEを含むポリエチレン)、
5)産物1kg当たりの費用増加につながる低い回転率/触媒活性、
6)高い触媒または配位子費用、
7)低い触媒提供可能性および高い触媒費用につながる複雑なマルチステップ配位子合成、
8)活性および選択性の両方における触媒性能の微量不純物への影響を受けやすいこと(例えば、触媒損失/中毒にいたる)、
9)技術的/商業的環境における触媒成分の困難な取り扱い(例えば、触媒複雑合成、予備混合、不活性化、触媒回収、または配位子回収)、
10)過酷な反応条件、例えば、高い温度および圧力、結果として、特殊な装置が必要(投資、維持、およびエネルギー費用の増加)、
11)高い共触媒/活性化剤費用または消費、および/または、
12)大量の比較的不明瞭な化合物を活性化剤として使用する場合(例えば、特定のメチルアルミノキサン(MAO)種)によく見られる、さまざまな共触媒の品質の変動に影響を受けやすいこと。
【0005】
LAOを製造する試行が記載されてきた。例えば、Al-Hazmiらの米国特許出願公開第2017/0203288号明細書が、クロム化合物と、式(R1)(R2)N-P(R3)-N(R4)-P(R5)-N(R6)(R7)(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アミノ、トリメチルシリルまたはC1-C20ヒドロカルビル、好ましくは直鎖または分岐C1-C10アルキル、フェニル、C6-C20アリールまたはC6-C20アルキル置換フェニルである)で表される官能化トリアミノジホスフィン(NPNPN)配位子とを含み得る触媒組成物の使用を記載している。この触媒は、ほぼ8重量%を超えるC10+および約50:50重量%比の1-ヘキセンと1-オクテンとを生成する点において不利である。C8に対するC6の比率が高くなると、C10+の量も増加し、従って、所望産物の合計量が少なくなる。さらにもう一つの例において、Peulecke(Dalton Transactions,2016,45;8869-8874)は、式(R1)(R2)N-P(Ph)-N(R3)-P(PH)-N(R4)(R5)で表されるNPNPN配位子を用いた1-ヘキセンと1-オクテンとの混合物の製造を記載している。この触媒系は、11重量%を超えるC10+が生成されること、および、1-オクテンの収率が1-ヘキセンの収率を超えるとC10+炭化水素の生成が増えることにおいて不利である。
【0006】
従って、高い選択性および純度で1-オクテンと1-ヘキセンとの混合物を製造することができるエチレンのオリゴマー化のための触媒系がなお必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2017/0203288号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Dalton Transactions,2016,45;8869-8874
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
1-オクテンおよび/または1-ヘキセンの需要の変動に関する問題の少なくとの一部に対する解決を提供する発見がなされた。該解決は、所望の量の1-ヘキセンと1-オクテンとの混合物を含む組成物を製造するようにエチレンをオリゴマー化するために1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との混合物を用いることを前提とする。1-ヘキセンと1-オクテンとを同時に製造することは以下の利点を提供する。1)タンデム混合物中の個々の触媒の量に応じてオリゴマー混合物の組成が変化し(例えば、1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比が20:80~90:10)、それにより、経済的および/または加工の要望に基づき種々のタンデム混合物を連続的に製造することができる。すなわち、触媒および/または供給源を変えるために、製造を停止することなく、最終生成物収率をリアルタイムに変化させることができる。さらに、実施例に非限定的に例示しているように、該触媒はお互いに安定であり、該タンデム触媒系の触媒活性は高く、高品質オリゴマーの純度を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記1-オクテン触媒は、特定の末端アミンアルキル置換基およびリンを有するNPN(CH3)PN配位子系を含むことができる。特に、該リン置換基は芳香族基および/またはアルキル置換芳香族基に限定され、該末端アミンは炭素原子三個分異なる直鎖アルキル基を含む。実施例で非限定的に示されているように、驚くべきことに、リン原子の置換基を芳香族基または置換芳香族基に、および末端窒素原子上の炭化水素鎖の長さを限定することにより、99%を超える1-オクテンの選択率での少なくとも60重量%のC8炭化水素、および2重量%未満の溶媒不溶性材料(例えば、ポリマー)が生成されることが発見された。
【0011】
前記1-ヘキセン触媒は、特定の末端アミンアルキル置換基およびリンを有するNPN(CH3)PN配位子系であり得る。特に、該リン置換基は、(i)C3~C4非環式脂肪族基、(ii)環式または非環式、直鎖または分岐、置換または非置換であってよいC5~C7脂肪族基、および(iii)それらの任意の組み合わせ、からなる群より選択される同じまたは異なっていてよい置換基に限定され、好ましくはシクロヘキシル基に限定され、該末端アミンは、長さが炭素原子三個分異なる直鎖アルキル基を含む。実施例で非限定的に示されているように、驚くべきことに、リン原子の置換基を、(i)C3~C4非環式脂肪族基、(ii)環式または非環式、直鎖または分岐、置換または非置換であってよいC5~C7脂肪族基、および(iii)それらの任意の組み合わせ、からなる群より選択される同じまたは異なっていてよい置換基に、好ましくはシクロヘキシル基に限定し、および末端窒素原子上の炭化水素鎖の長さを限定することにより、99%を超える1-ヘキセンの選択率での少なくとも80重量%の1-C6炭化水素、および3重量%未満の溶媒不溶性材料(例えば、C10+)が生成されることが発見された。
【0012】
本発明の一つの局面において、1-ヘキセンおよび1-オクテンの製造のための触媒組成物を説明する。触媒組成物は、1-ヘキセン触媒および1-オクテン触媒を含むことができ、該1-ヘキセン触媒、該1-オクテン触媒または両者は、窒素リン窒素リン窒素(NPNPN)配位子を含む。該触媒組成物は、クロム(III)種および活性化剤または共触媒(例えば、メチルアルミノキサン化合物、好ましくはメチルイソブチルアルミニウムオキシド化合物)も含み得る。クロム(III)種は、任意の無機または有機クロム化合物を含むことができ、クロムの価数は+3である。クロム(III)種の非限定的例は、クロム(III)アセチルアセトネート、Cr(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタジオネート)3、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロムトリクロライドトリス-テトラヒドロフラン、クロム(III)オクタノエートまたはクロム(III)ナフテネート、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0013】
前記1-ヘキセン触媒は、以下の式で表される構造を有する配位子と錯形成しているクロム(III)を含み得る。
【化1】
式中、R
1およびR
2は同じまたは異なって、(i)C
3~C
4非環式脂肪族基、(ii)環式または非環式、直鎖または分岐、置換または非置換であってよいC
5~C
10脂肪族基、または(iii)それらの任意の組み合わせ、からなる群より選択することができ、nは0または1であり、m=n+3である。一部の態様において、R
1およびR
2はそれぞれ独立してシクロヘキシル基またはアルキル置換シクロヘキシル基であり得、好ましくは両者がシクロヘキシル基である。一つの例において、nは0であり、該触媒は、以下の構造で表される(CH
3)(n-C
4H
9)NP(C
6H
11)N(CH
3)NP(C
6H
11)N(CH
3)(n-C
4H
9)である。
【化2】
もう一つの例において、nは1であり、該触媒は、以下の構造で表される(CH
3CH
2)(n-C
5H
11)NP(C
6H
11)N(CH
3)NP(C
6H
11)N(CH
2CH
3)(n-C
5H
11)である。
【化3】
【0014】
前記触媒組成物は、活性化剤または共触媒(例えば、メチルアルミノキサン化合物、好ましくはメチルイソブチルアルミニウムオキシド化合物)も含み得る。クロム(III)種は、任意の無機または有機クロム化合物を含むことができ、クロムの価数は+3である。クロム(III)種の非限定的例は、クロム(III)アセチルアセトネート、Cr(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタジオネート)3、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロムトリクロライドトリス-テトラヒドロフラン、クロム(III)オクタノエート、クロム(III)ナフテネート、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0015】
前記1-オクテン触媒は、以下の式を有する配位子と錯形成しているクロム(III)種を含み得る。
【化4】
式中、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して芳香族基または置換芳香族基であり、nは0または1であり、m=n+3である。一部の態様において、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立してフェニル基またはアルキル置換フェニル基であり得、好ましくは両者がフェニル基である。一つの例において、nは0であり、該触媒は、以下の構造で表される(CH
3)(n-C
4H
9)NP(C
6H
5)N(CH
3)NP(C
6H
5)N(CH
3)(n-C
4H
9)である。
【化5】
もう一つの例において、nは1であり、該触媒は、以下の式で表される(CH
3CH
2)(n-C
5H
11)NP(C
6H
5)N(CH
3)NP(C
6H
5)N(CH
2CH
3)(n-C
5H
11)である。
【化6】
【0016】
本発明のさらにもう一つの局面において、1-ヘキセンと1-オクテンとの混合物を含む組成物を製造する方法を説明する。方法は、エチレンをオリゴマー化して1-ヘキセンと1-オクテンとの混合物を含むオリゴマー組成物を生成するのに充分な条件下に、エチレンを含む反応体流を、本発明の触媒組成物を含む溶液に接触させることを含み得る。該溶液は、溶媒、好ましくは飽和炭化水素、より好ましくはn-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、またはその混合物を含み得る。接触条件としては、温度および/または圧力を含み得る。一部の態様において、接触温度は15℃~100℃、好ましくは40℃~70℃であり得、接触圧力は少なくとも2MPa、または2~20MPa、好ましくは2~7MPaであり得、あるいはその両方である。特に、前記オリゴマー組成物は、10重量%以下の溶媒不溶性材料を含む。1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比は、10:1~1:10、好ましくは2:1~1:10、より好ましくは1:1~1:9である。一部の態様において、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比は0.5:1より大きい。1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との比を変化させると、生成される1-ヘキセンと1-オクテンとの比に影響し得る。例えば、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:1の場合、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比は少なくとも2.5:1であり得る。もう一つの例において、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:2.3の場合、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比は少なくとも1.5:1であり得る。さらにもう一つの例において、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:4である場合、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比は1:1以上、好ましくは1:1~1:1.2となり得る。さらにもう一つの例において、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:8である場合、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比は1:1.3を超える、好ましくは1:1.3~1:1.5となり得る。
【0017】
本発明の他の態様を本出願全体において説明する。本発明の一つの局面に関して説明した態様は、本発明の他の局面に適用され、その逆もあり得る。本明細書に記載の各態様は、本発明の他の局面に適用可能な本発明の態様であると解される。本発明に説明されたいかなる態様または局面も、本発明のいかなる方法または組成物について実行することができ、その逆もあり得ると考えられる。さらに、本発明の組成物を用いて本発明の方法を達成することができる。
【0018】
本明細書を通して用いられる種々の用語および表現の定義を以下に示す。
【0019】
「アルキル基」という用語は、直鎖または分岐飽和炭化水素を示す。アルキル基の非限定的例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等が挙げられる。
【0020】
「アリール」基または「芳香族」基は、各環構造の中に単結合と二重結合とを交互に含む置換または非置換の単環式または多環式炭化水素である。アリール基の置換基の非限定的例としては、アルキル、置換アルキル基、直鎖または分岐アルキル基、直鎖または分岐不飽和炭化水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、アミン、ニトロ、アミド、ニトリル、アシル、アルキルシラン、チオールおよびチオエーテル置換基が挙げられる。アルキル基の非限定的例としては、直鎖および分岐C1~C5炭化水素が挙げられる。不飽和炭化水素の非限定的例としては少なくとも一つの二重結合を含むC2~C5炭化水素(例えば、ビニル)が挙げられる。該アリールまたはアルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、エーテル、アミン、ニトロ(-NO2)、アミド、ニトリル(-CN)、アシル、アルキルシラン、チオールおよびチオエーテル置換基で置換することができる。ハロゲンの非限定的例としては、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、またはフルオロ(-F)置換基が挙げられる。ハロアルキル置換基の非限定的例としては、-CX3、-CH2X、-CH2CH2X、-CHXCH2X、-CX2CHX2、-CX2CX2が挙げられ、Xは、F、Cl、Brまたはそれらの組み合わせである。アミン置換基の非限定的例としては、-NH2、-CH2NH2、-CHCH2NH2、-C(NH2)CH3が挙げられる。アルコキシの非限定的例としては,-OCH3、-OCH2CH3等が挙げられる。アルキルシラン置換基の非限定的例としては、-Si(CH3)3、-Si(CH2CH3)3等が挙げられる。多環式基の非限定的例としては、-C10H7、および置換C10共役環系のような、二個以上の共役環(例えば、融合芳香環)および置換共役環を含む環系が挙げられる。
【0021】
「溶媒不溶性」という表現は、反応条件下にて反応溶媒と均質溶液を形成しない分子量が400g/モル以上である炭化水素材料(炭素原子30+)を示す。例えば、該材料は、反応中に沈降するまたは第二の相を形成する。そのような材料は、重量法で測定して、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満の量で存在する。
【0022】
「約」または「およそ」という用語は、当業者により理解される近いことと定義される。一つの非限定的態様において、該用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0023】
「重量%」、「体積%」または「モル%」という用語は、成分を含む合計重量、材料の合計体積または合計モルに対する成分の重量%、成分の体積%または成分のモル%をそれぞれ示す。非限定的例において、材料100グラム中の成分10グラムは、成分10重量%である。
【0024】
「実質的」と言う用語およびその変形表現は、10%以内、5%以内、1%以内または0.5%以内の範囲を含むと定義される。
【0025】
「阻害する」、「減少する」、「妨げる」または「回避する」という用語あるいはそれらの任意の変形表現は、特許請求の範囲および/または明細書において用いられた場合、所望の結果を得るための任意の測定可能な減少または完全な阻害を含む。
【0026】
「効果的」という用語は、明細書および/または特許請求の範囲で用いられた場合、所望の、期待されるまたは意図する結果を達成するために適していることを意味する。
【0027】
特許請求の範囲または明細書において「含む」、「包含する」、「含有する」または「有する」という用語のいずれかと組み合わせて冠詞「a」または「an」を用いる場合、「一つ」を意味するが、「一つ以上」、「少なくとも一つ」および「一つまたは二つ以上」の意味にも相当する。
【0028】
「含んでいる」(および「含む」のような任意の形)、「有している」(および「有する」のような任意の形)、「包含している」(および「包含する」のような任意の形)または「含有している」(および「含有する」のような任意の形)という用語は、包括的または開放的であり、付加的な、列挙されていない要素または方法工程を排除するものではない。
【0029】
本発明の前記方法は、本明細書全体に開示されている特定の構成要素、成分、組成物等を、「含む」、「それらから本質的になる」または「それらからなる」ことができる。一つの非限定的局面において、「から本質的になる」という移行句に関して、本発明の該触媒組成物の基本的かつ新規な特徴は、溶媒不溶性材料の生成を最低量(例えば、2重量%未満)としつつ、エチレンのオリゴマー化により、高純度の1-オクテンおよび高純度の1-ヘキセンを調整可能な量で含む組成物を製造することができる性能である。
【0030】
本発明の要旨において、少なくとも二十個の態様をここに記載する。態様1は、1-ヘキセンおよび1-オクテンを製造するための触媒組成物である。1-ヘキセン触媒および1-オクテン触媒を含む該触媒組成物において、該1-ヘキセン触媒、該1-オクテン触媒または両者が、窒素リン窒素リン窒素(NPNPN)配位子を含む。態様2は、態様1に記載の触媒組成物であって、触媒組成物は、さらに、クロム(III)種、好ましくはクロム(III)アセチルアセトネート、Cr(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタジオネート)
3、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロムトリクロライドトリス-テトラヒドロフラン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、クロム(III)オクタノエート、クロムヘキサカルボニル、またはクロム(III)ナフテネート、および活性化剤または共触媒、好ましくはメチルアルミノキサン化合物、より好ましくはメチルイソブチルアルミニウムオキシド化合物を含む。態様3は、態様1~2のいずれか一つに記載の触媒組成物であって、前記1-オクテン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含む。
【化7】
【0031】
式中、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して芳香族基または置換芳香族基であり、nは0または1であり、m=n+3である。態様4は、態様3に記載の触媒組成物であって、Ar
1およびAr
2がそれぞれ独立してフェニル基またはアルキル置換フェニル基である、好ましくはAr
1およびAr
2の両方がフェニル基である。態様5は、態様4に記載の触媒組成物であって、nが0であり、前記配位子は、以下の式で表される構造を有する。
【化8】
【0032】
態様6は、態様5に記載の触媒組成物であって、nが1であり、前記配位子は、以下の式で表される構造を有する。
【化9】
【0033】
態様7は、態様1に記載の触媒組成物であって、前記1-ヘキセン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含む。
【化10】
【0034】
式中、R
1およびR
2は同じまたは異なって、(i)C
3~C
4非環式脂肪族基、(ii)環式または非環式、直鎖または分岐、置換または非置換であってよいC
5~C
10脂肪族基、および(iii)それらの任意の組み合わせ、からなる群より選択され、nは0または1であり、m=n+3である。態様8は、態様7に記載の触媒組成物であって、R
1およびR
2がそれぞれ独立して炭素原子数5~10の環式炭化水素基、置換環式炭化水素基、直鎖炭化水素基または分岐炭化水素基であり、好ましくはR
1およびR
2がそれぞれシクロヘキシル基である。態様9は、態様8に記載の触媒組成物であって、nが0であり、前記1-ヘキセン配位子が、以下の式で表される構造を有する。
【化11】
【0035】
態様10は、態様9に記載の触媒組成物であって、nが1であり、前記1-ヘキセン配位子が、以下の式で表される構造を有する。
【化12】
【0036】
態様11は、態様1に記載の触媒組成物であって、前記1-オクテン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含み、
【化13】
【0037】
かつ、前記1-ヘキセン触媒が、以下の式で表される構造を有する配位子を含む。
【化14】
【0038】
態様12は、オレフィンから1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む組成物を製造する方法であって、該方法は、エチレンをオリゴマー化して1-ヘキセンおよび1-オクテンを含むオリゴマー組成物を製造するのに充分な条件下に、エチレンを含む反応体流を、態様1~11のいずれか一つに記載の触媒組成物を含む溶液と接触させることを含む。態様13は、態様12に記載の方法であって、前記1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が10:1~1:10、好ましくは2:1~1:10、より好ましくは1:1~1:9である。態様14は、態様12~13のいずれか一つに記載の方法であって、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比が0.5:1より大きい。態様15は、態様12~13のいずれか一つに記載の方法であって、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:1であり、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比が少なくとも2.5:1である。態様16は、態様12~13のいずれか一つに記載の方法であって、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:2.3であり、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比が少なくとも1.5:1である。態様17は、態様12~13のいずれか一つに記載の方法であって、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:4であり、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比が1:1以上、好ましくは1:1~1:1.2である、または、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が約1:8であり、前記オリゴマー組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比が1:1.3を超える、好ましくは1:1.3~1:1.5である。態様18は、態様12~17のいずれか一つに記載の方法であって、オリゴマー組成物が10重量%以下の溶媒不溶性材料を含む。態様19は、態様12~18のいずれか一つに記載の方法であって、接触条件が、15℃~100℃、好ましくは40℃~70℃の温度、少なくとも2MPa、または2~20MPa、好ましくは2~7MPaの圧力、あるいはその両方を含む。態様20は、態様12~19のいずれか一つに記載の方法であって、前記溶液が溶媒、好ましくは飽和炭化水素、より好ましくはn-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、またはそれらの混合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の利点が、以下の詳細な説明の利益と共に、添付の図面を参照して、当業者に明らかとなる。
【0040】
【
図1】エチレンのオリゴマー化から、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含む組成物を製造するためのシステムの概略図である。
【
図2】1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒とを種々の比で含む組成物からの活性および生成物分布を示すグラフである。
【0041】
本発明は種々の修飾および別形態をとりやすいが、その特定の態様を、図面に例として示す。図面は原寸に比例していない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
エチレンのオリゴマー化から、溶媒不溶性材料を有意な量で生成することなく、調整可能量の1-ヘキセンおよび1-オクテンを許容できる収率で高い選択性で製造するための方法を提供する発見がなされた。該発見は、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との混合物を使用することを前提とし、両方の触媒が、1-ヘキセンまたは1-オクテンの製造に特異的なNPNPN配位子系を有するものである。特に、実施例において非限定的に示すように、用いられる特定の触媒の量に基づいて、1-ヘキセンおよび1-オクテンの量を調整することができる。例えば、各触媒50重量%により、1-ヘキセン65~70重量%および1-オクテン30~35重量%を含む混合物が生成され、90:10重量比の1-オクテン触媒と1-ヘキセン触媒とにより、1-ヘキセン40~45重量%および1-オクテン55~60重量%を含む混合物が生成される。すべての場合に。さらに、2重量%未満のポリマー材料が生成される。特に、前記方法は、同じ溶媒、クロム源および任意の共活性化剤を用いることができる。この触媒組み合わせによって、1-ヘキセンおよび1-オクテンを高純度で製造するための優れた簡単な調整可能な方法が提供される。
【0043】
本発明のこれらのおよび他の非限定的局面を、以下の部分にさらに詳細に説明する。
A.触媒組成物
【0044】
前記触媒組成物は、本発明の前記配位子、クロム(III)種、および活性化剤または共触媒を含むことができる。本発明の該配位子は、明細書および実施例を通して記載されているように調製することができる。該触媒組成物は、脂肪族または芳香族炭化水素溶媒中の溶液として提供することができる。脂肪族炭化水素溶媒として、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、トルエン等が挙げられる。
【0045】
前記クロム種は、クロム(III)の有機塩、無機塩、配位錯体、または有機金属錯体であり得る。一つの態様において、該クロム種は、有機金属クロム(III)種である。該クロム種の非限定的例は、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)オクタノエート、CrCl3(テトラヒドロフラン)3、クロム(III)-2-エチルヘキサノエート、クロム(III)クロライド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。各触媒についての配位子/Crモル比は、約0.5~50、約0.5~5、約0.8~約2.0、約1.0~5.0、または好ましくは約1.0~約1.5であり得る。
【0046】
前記活性化剤(当該分野において共触媒としても知られている)は、アルミニウム化合物であり得る。アルミニウム化合物の非限定的例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミノキサン、またはそれらの混合物が挙げられる。一部の態様において、該活性化剤は、修飾されたメチルアルミノキサン、より好ましくは、MMAO-3A(CAS No.146905-79-5)とすることができ、これは、MMAO-3A濃度約18%に相当する7%のアルミニウムを含むトルエン溶液としてAkzo Nobelから得られる修飾メチルアルミノキサンタイプ3Aである。Al/Crモル比は、約1~約1000、約10~約1000、約1~500、約10~500、約10~約300、約20~約300、または好ましくは50~約300でありある。
【0047】
前記触媒組成物は、さらに、溶媒を含むことができる。該溶媒は、混和性があるならば、前記オリゴマー化方法において用いられる溶媒と同じまたは異なってよい。溶媒の非限定的例は、直鎖および環式脂肪族炭化水素、直鎖オレフィン、エーテル、芳香族炭化水素等である。前記溶媒の少なくとも一つを含む組み合わせを用いることができる。好ましくは、該溶媒はn-ヘプタン、トルエンまたはメチルシクロヘキサン、あるいはそれらの組み合わせである。
【0048】
前記触媒溶媒中におけるクロム化合物の濃度は、用いられる特定の化合物、および所望の反応速度に依存して変化する。一部の態様において、クロム化合物の濃度は1リッター当たり約0.01~約100ミリモル(mmol/L)、約0.01~約10mmol/L、約0.01~約1mmol/L、約0.1~約100mmol/L、約0.1~約10mmol/L、約0.1~約10mmol/L、約1~約10mmol/L、および約1~約100mmol/Lである。好ましくは、該クロム化合物の濃度は約0.1~約1.0mmol/Lである。
1. 1-ヘキセン触媒配位子
【0049】
本発明の1-ヘキセン触媒の配位子は、以下の式で表すことができる。
【化15】
式中、R
1およびR
2は、(i)C
3~C
4非環式脂肪族基、(ii)環式または非環式、直鎖または分岐、置換または非置換であってよいC
5~C
10脂肪族基、および(iii)それらの任意の組み合わせからなる群より選択され、nは0または1であり、m=n+3である。該C
5~C
10脂肪族基としては、環式または非環式、直鎖または分岐、置換または非置換であり得る。C
5~C
10脂肪族基の非限定的例としては、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチル、ノニル、シクロノニル、デシル、シクロデシルが挙げられ、化合物を置換または分岐にする置換基を含むことができる。好ましい例において、R
1およびR
2はシクロヘキシルである。前記C
3~C
4非環式脂肪族基は、イソプロピルおよびtert-ブチルであり得る。前記配位子は、(CH
3)(n-C
4H
9)NP(R
1)N(CH
3)NP(R
2)N(CH
3)(n-C
4H
9)、(CH
3CH
2)(n-C
5H
11)NP(R
1)N(CH
3)NP(R
2)N(CH
2CH
3)(n-C
5H
11)、(CH
3)(n-C
4H
9)NP(C
6H
11)N(CH
3)NP(C
6H
11)N(CH
3)(n-C
4H
9)および(CH
3CH
2)(n-C
5H
11)NP(C
6H
11)N(CH
3)NP(C
6H
11)N(CH
2CH
3)(n-C
5H
11)であり得る。該配位子の非限定的構造を以下に示す。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
式中、R
3およびR
4は任意の炭素原子上のアルキル基を表す。R
3およびR
4の非限定的例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル等が挙げられる。
【0050】
前記NPNPN配位子系は、当業者に知られている合成手法により作ることができる。一部の態様において、配位子(1)は、スキームIに示す反応経路により得ることができる。
【化20】
式中、R
1およびR
2は先のように定義され、R
5はメチルまたはエチルであるが、R
5がメチルの場合はR
6はブチルであり、およびR
5がエチルの場合はR
6はペンチルである。
【0051】
一部の態様において、前記触媒組成物は、クロム(III)アセチルアセトネートをクロム化合物として、Et(n-ペンチル)N-P(シクロヘキシル)-N(Me)-P(シクロヘキシル)-N(n-ペンチル)EtをNPNPN配位子として、およびMMAO-3Aを活性化剤として含む。もう一つの態様において、前記触媒組成物は、クロム(III)アセチルアセトネートをクロム化合物として、Me(n-ブチル)N-P(シクロヘキシル)-N(Me)-P(シクロヘキシル)-N(n-ブチル)MeをNPNPN配位子として、およびMMAO-3Aを活性化剤として含む。
2. 1-オクテン触媒配位子
【0052】
1-オクテン触媒の重要なパラメーターは、リン置換基および窒素置換基の選択を含む。該リン置換基は、芳香族基またはアルキル置換芳香族基を含み、中間窒素置換基はメチル置換基を含み、末端窒素置換基は、炭素原子数が三個違う異なる直鎖アルキル炭化水素基を含む。本発明の該1-オクテン触媒の該配位子は以下の式により表すことができる。
【化21】
Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して芳香族基または置換芳香族基であり得、nは0または1であり、m=n+3である。芳香族基または置換芳香族基としては、フェニル(Ph)、C
6~C
11アリールまたはC
6~C
20置換アリールが挙げられる。C
6~C
11アリール基の非限定的例として、メチルベンジル、ジメチルベンジル(オルト、メタ、およびパラ置換)、エチルベンジル、プロピルベンジル等が挙げられる。置換C
6~C
20アリール基のための置換基の非限定的例として、アルキル、置換アルキル基、直鎖または分岐アルキル基、直鎖または分岐不飽和炭化水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、アミン、ニトロ、アミド、ニトリル、アシル、アルキルシラン、チオールおよびチオエーテル置換基が挙げられる。アルキル基の非限定的例として、直鎖および分岐C
1~C
5炭化水素が挙げられる。不飽和炭化水素の非限定的例として、少なくとも一つの二重結合を含むC
2~C
5炭化水素が挙げられる(例えば、ビニル)。アリールまたはアルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、カルボン酸、エステル、エーテル、アミン、ニトロ(-NO
2)、アミド、ニトリル(-CN)、アシル、アルキルシラン、チオールおよびチオエーテル置換基で置換することができる。ハロゲンの非限定的例として、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)またはフルオロ(-F)置換基が挙げられる。ハロアルキル置換基の非限定的例としては、-CX
3、-CH
2X、-CH
2CH
2X、-CHXCH
2X、-CX
2CHX
2、-CX
2CX
2が挙げられ、XはF、Cl、Brまたはそれらの組み合わせである。アミン置換基の非限定的例としては、-NH
2、-CH
2NH
2、-CHCH
2NH
2、-C(NH
2)CH
3が挙げられる。アルコキシの非限定的例としては、-OCH
3、-OCH
2CH
3等が挙げられる。アルキルシラン置換基の非限定的例としては、-Si(CH
3)
3、-Si(CH
2CH
3)
3等が挙げられる。多環式基の非限定的例としては、-C
10H
7および置換C
10融合芳香環系のような、融合芳香環および置換融合芳香環が挙げられる。一部の態様において、C
6~C
20アリール基は、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、トリフルオロトルエン、フェニルアミン、ニトロベンゼン、ジクロロトルエン、ベンゾニトリル、トリメチルベンジルシラン、ベンジルメチルエーテル、または融合芳香環(C
10H
7)である。前記配位子は、(CH
3)(n-C
4H
9)NP(Ar
1)N(CH
3)NP(Ar
2)N(CH
3)(n-C
4H
9)、(CH
3CH
2)(n-C
5H
11)NP(Ar
1)N(CH
3)NP(Ar
2)N(CH
2CH
3)(n-C
5H
11)、(CH
3)(n-C
4H
9)NP(C
6H
5)N(CH
3)NP(C
6H
5)N(CH
3)(n-C
4H
9)および(CH
3CH
2)(n-C
5H
11)NP(C
6H
5)N(CH
3)NP(C
6H
5)N(CH
2CH
3)(n-C
5H
11)であり得る。該配位子の構造を以下に示す。
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
式中、R
7およびR
8は芳香環の上に置換しているアルキル基を表す。そのようなアルキル基の非限定的例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル等が挙げられる。
【0053】
前記NPNPN配位子系は、当業者に知られている合成手法により作ることができる。一部の態様において、配位子(1)は、スキームIに示す反応経路により得ることができる。
【化26】
式中、Ar
1およびAr
2は先のように定義され、R
5はメチルまたはエチルであるが、R
5がメチルの場合はR
6はブチルであり、およびR
6がエチルの場合はペンチルである。
【0054】
混合物中の1-ヘキセン触媒系の非限定的例は、クロム(III)アセチルアセトネートをクロム化合物として、Et(n-ペンチル)N-P(Ph)-N(Me)-P(Ph)-N(n-ペンチル)EtをNPNPN配位子として、およびMMAO-3Aを活性化剤として含む。もう一つの態様において、前記触媒系は、クロム(III)アセチルアセトネートをクロム化合物として、Me(n-ブチル)N-P(Ph)-N(Me)-P(Ph)-N(n-ブチル)MeをNPNPN配位子として、およびMMAO-3Aを活性化剤として含む。
B. 1-ヘキサンおよび1-オクテンへのエチレンのオリゴマー化のシステム
【0055】
1-ヘキセンおよび1-オクテンを所望の比で含む組成物を生成するようにエチレンを調整可能にオリゴマー化するための方法において、本発明の触媒組成物の混合物を用いることができる。一つの態様において、該方法は、1-ヘキセンと1-オクテンとの混合物を生成するのに効果的なエチレンオリゴマー化条件下において、エチレンを前記触媒組成物に接触させることを含む。当業者は、1-ヘキセンおよび1-オクテンを生成するためのエチレンのオリゴマー化は、それぞれ、エチレンの三量化および四量化により行うことができることを理解する。1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比は、10:1~1:10、または、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10であり得る。該組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比は、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が1:1~10:1である場合、0.5:1を超える、または0.5:1、1.0:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、または5:1であり得る。該組成物中における1-ヘキセンと1-オクテンとの重量比は、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との重量比が1:1~1:10である場合、0.5:1を超える、または0.5:1、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:1、1:3.5、1:4、または1:5であり得る。
【0056】
前記オリゴマー化溶媒としては、前記触媒系が溶解し得る任意の溶媒が挙げられる。例えば、飽和炭化水素、より好ましくは、n-ヘキサン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、またはそれらの混合物を用いることができる。反応条件としては、温度および圧力が含まれ得る。反応温度は15℃~100℃、または、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃および100℃のうちの少なくとも一つ、少なくとも一つに対応する、または任意の二つの間の温度であり得る。一部の例において、反応温度は40℃~70℃の範囲であり得る。反応圧力は、2MPa、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20MPaのうちの少なくとも一つ、少なくとも一つに対応する、または任意の二つの間の圧力であり得る。一部の態様において、反応圧力は2~20MPaである。例えば、圧力2~7MPaにおいて反応温度が40℃~70℃であり得る。
【0057】
図1は、1-ヘキセンと1-オクテンとの調整可能混合物を製造するためのシステムの概略図である。システム100は、エチレンを含む供給反応体のための入口102、該入口と液体連通するように構成された反応領域104、および反応領域104と液体連通するように構成されると共に、該反応領域から1-ヘキセンと1-オクテンとの混合物を含む生成物流を除去するように構成された出口106を含み得る。反応領域104は、本発明の触媒混合物を含むことができる。該エチレン供給反応体は、前記入口102を介して反応領域104に入ることができる。一部の態様において、該エチレン供給反応体を用いて、反応領域104内の圧力を維持することができる。一部の態様において、該供給反応体流は、不活性ガス(例えば、窒素またはアルゴン)を含む。充分な時間後に、所望量の1-ヘキセンおよび1-オクテンを有する生成物流を、生成物出口106を介して反応領域104から除去することができる。該生成物流は、他の加工ユニットに送り、貯蔵し、および/または輸送することができる。一部の態様において、生成物流106を分離ユニットに送り、そこで該混合物が1-ヘキセン流と1-オクテン流とに分けられる。
【0058】
システム100は、一つまたはそれ以上の加熱および/または冷却デバイス(例えば、断熱器、電気ヒーター、壁内のジャケット付き熱交換器)または制御装置(例えば、コンピューター、フロー弁、自動弁、等)を含むことができ、これらは反応混合物の反応温度および圧力を制御するために用いることができる。一つの反応器のみを示しているが、一つのユニットに複数の反応器を収容することができる、または複数の反応器を一つの伝熱ユニットに収容することができると解すべきである。
【0059】
前述のように、本発明の該方法および触媒組成物により、1-オクテンおよび1-ヘキセンを高い選択性で製造することができ、LAO生成物分布が1-ヘキセンおよび1-オクテンに限定される。1-オクテンおよび1-ヘキセンへの調整可能選択性は、高い生成物純度につながるので有利な特徴であり、それにより、分離過程におけるさらなる精製工程の必要性が回避される。該触媒選択およびプロセスのさらなる有利な特徴は、望ましくないポリマー形成につながるエチレン重合の抑制、穏やかな反応条件、および結果として、低い装置投資費用ならびに操作およびエネルギー費用を含む。さらに、比較的単純で簡単なプロセス設計が可能である。1-オクテンへの純度は、少なくとも約99%、または99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%であり得る。少なくとも99.1%の純度が好ましい。1-ヘキセンへの純度は、少なくとも約99%、または99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%であり得る。少なくとも99.1%の純度が好ましい。一つの態様において、1-オクテンを生成する場合、1-オクテンと1-ヘキセンとの重量比は、0.3未満、または0~0.3、または0.1、0.15、0.2、0.25または0.3、あるいはそれらの間の任意の範囲もしくは値であり得る。
実施例
【0060】
本発明を、具体的実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例は、説明のためのみに提供されており、本発明のいかようにも制限する意図はない。当業者は、実質的に同じ結果を生み出すように変化または修飾することができる種々の重要ではないパラメーターを容易に理解することができる。
実施例1
(配位子2の合成)
【0061】
ルートA、一般的手順(スキームIを参照)。
全ての操作は、不活性雰囲気下に行った。ビス(クロロホスフィノ)アミンC6H11P(Cl)N(CH3)P(Cl)C6H11(4.60g、14mmol)を、無水トルエン20mLに溶解した。適切な二級アミン(ブチルアミン29.4mmol)およびNEt3(35mmol)を無水トルエン30mLと混合し、-10℃に冷却した。ビス(クロロホスフィノ)アミンのトルエン溶液を、激しく攪拌しながら不活性雰囲気下に反応混合物に滴下した。試薬の添加により、白色ゲル状材料が沈降した。攪拌を続け、溶液を25℃になるまで3時間放置し、次に、75℃に加熱し、その温度でさらに12時間攪拌した。減圧下に全ての揮発性化合物を蒸発させた後、該残渣を無水の熱いn-ヘプタンに取り込み、不溶性材料を濾過により分離した。溶媒を蒸発させると、淡黄色油状物が得られた。該生成物の純度を、1H、13Cおよび31PNMRを用いて調べた。望ましい場合は、該生成物を、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンまたはn-ペンタンから再結晶して純度を上げることができる。
【0062】
ルートB、一般的手順(スキームIを参照)。
全ての操作は、不活性雰囲気下に行った。適切な二級アミン(10mmol)を無水n-ヘプタン20mLに溶解し、-10℃に冷却し、5モル%過剰のn-ヘキサン中のn-BuLiで処理した。溶液を、次に、温度を25℃に上げながら3時間攪拌して、白色沈降物を形成した。固形物を、溶液から分離し、n-ヘキサンで洗い、無水Et2Oの30mLと共にフラスコに移した。得られた懸濁液を、-10℃に冷却し、無水Et2Oの30mL中のビス(クロロホスフィノ)アミンC6H11P(Cl)N(CH3)P(Cl)C6H11(1.61g、4.9mmol)の溶液を、激しく攪拌しながら該反応混合物に滴下した。添加後、反応混合物を25℃になるまで12時間連続的に攪拌した。該反応中、白色固形物が形成した。不溶性材料を濾過により分離し、Et2Oで洗い、廃棄した。溶液と洗浄液とを合わせ、溶媒を減圧下に除去して、淡黄色粘性油状物を生成した。該生成物の純度を、1H、13Cおよび31PNMRを用いて調べた。望ましい場合は、該生成物を、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンまたはn-ペンタンから再結晶して純度を上げることができる。
【0063】
Jeffersonらの手順(J.Chem.Soc.Dalton Trans.1973,1414-1419)を用いて、前駆体(C6H11)P(Cl)N(Me)P(Cl)(C6H11)を調製した。
実施例1
(配位子7の合成)
【0064】
二つの方法を用いて、前記構造(2)および(3)を有する配位子を調製することができる。比較用配位子は以下の構造を有しており、アミノ官能基はメチル基およびエチル基を含んでいた(すなわち、nは3未満)。
【0065】
ルートA、一般的手順(スキームIを参照)。
全ての操作は、不活性雰囲気下に行った。ビス(クロロホスフィノ)アミン(PhP(Cl)N(CH3)P(Cl)Ph(4.42g、14mmol)を、無水トルエン20mLに溶解した。適切な二級アミン(29.4mmol)およびNEt3(35mmol)を無水トルエン30mLと混合し、-10℃に冷却した。ビス(クロロホスフィノ)アミンのトルエン溶液を、激しく攪拌しながら不活性雰囲気下に反応混合物に滴下した。試薬の添加により、白色ゲル状材料が沈降した。攪拌を続け、溶液を25℃になるまで3時間放置し、次に、75℃に加熱し、その温度でさらに12時間攪拌した。減圧下に全ての揮発性化合物を蒸発させた後、該残渣を無水の熱いn-ヘプタンに取り込み、不溶性材料を濾過により分離した。溶媒を蒸発させると、白色油状物が得られた。該生成物の純度を、1H、13Cおよび31PNMRを用いて調べた。望ましい場合は、該生成物を、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンまたはn-ペンタンから再結晶して純度を上げることができる。
【0066】
ルートB、一般的手順(スキームIを参照)。
全ての操作は、不活性雰囲気下に行った。適切な二級アミン(10mmol)を無水n-ヘプタン20mLに溶解し、-10℃に冷却し、5モル%過剰のn-ヘキサン中のn-BuLiで処理した。溶液を、次に、温度を25℃に上げながら3時間攪拌して、白色沈降物を形成した。固形物を、溶液から分離し、n-ヘキサンで洗い、無水エーテル30mLと共にフラスコに移した。得られた懸濁液を、-10℃に冷却し、無水エーテル30mL中のビス(クロロホスフィノ)アミン(PhP(Cl)N(CH3)P(Cl)Ph(1.55g、4.9mmol)の溶液を、激しく攪拌しながら該反応混合物に滴下した。添加後、反応混合物を25℃になるまで12時間連続的に攪拌した。該反応中、白色固形物が形成した。不溶性材料を濾過により分離し、エーテルで洗い、廃棄した。溶液と洗浄液とを合わせ、溶媒を減圧下に除去して、白色粘性油状物を生成した。該生成物の純度を、1H、13Cおよび31PNMRを用いて調べた。望ましい場合は、該生成物を、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンまたはn-ペンタンから再結晶して純度を上げることができる。
【0067】
Jeffersonらの手順(J.Chem.Soc.Dalton Trans.1973,1414-1419)を用いて、前駆体PhP(Cl)N(Me)P(Cl)Phを調製した。
実施例2
(触媒組成物の調製およびエチレンのオリゴマー化)
【0068】
ディップチューブ、サーモウェル、メカニカルパドル攪拌器、冷却コイル、および温度、圧力および攪拌器速度のための制御装置を備える反応機(すべてデータ取得システムに接続)を、次に、減圧下に130℃に加熱しつつ不活性化し、乾燥窒素流を通気しながら30℃に冷却した。データ取得システムに結合されたガス供給制御ユニットにより、等圧エチレン供給を維持した。コンピューター制御されたデータ取得システムにより経時的な供給シリンダー内の圧力損失を介してエチレン消費をモニターした。
【0069】
配位子(本発明の配位子(2)または比較用配位子)およびクロム前駆体としてのクロム(III)アセチルアセトネートのトルエンストック溶液の適量(配位子とCrとの比が1.20)を計量して不活性雰囲気下にシュレンク管に仕込んだ。無水n-ヘプタン30mLをステンレス鋼圧力反応器に導入し、反応温度まで温めた。反応器の温度が安定した後、反応器を、エチレンを用いて30バールに加圧し、機械的に連続的に攪拌しつつ0.5時間放置した。その時間後、圧力を0.2バール(0.02MPa)に低下させ、無水n-ヘプタン中のMMAO-3Aの0.3Mストック溶液の適量を、仕込みポートを介して反応器に導入して、AlとCrとの比を300とした。攪拌は10分間続けた。それに続いて、Crと配位子溶液の混合物を、仕込みポートを介して反応器に導入した。
【0070】
該触媒を該反応器に導入した直後に、圧力を30バール(3MPa)に上げた。標準的反応条件は、エチレン圧力30バール(3MPa)、温度45℃、攪拌速度450RPMである。1時間の触媒処理後、エチレン供給を停止し、反応温度を5℃に下げた。該反応器からのエチレンを排出して圧力を0.2バール(0.02MPa)とした。該反応を、0.3M HCl/イソプロパノール混合物でクエンチすることにより停止した。液体生成物を、既知量のトルエン内部標準を用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。任意の不溶性副産物、すなわち、ワックス、ポリエチレンを濾過し、乾燥し、秤量した。前述と同じ成分および量を用いて、該反応器を清浄化することなく、連続的触媒実験を行った。表1は、構造2および7を有する配位子およびそれらの混合物の結果を示す。
【0071】
【0072】
表1は、1-ヘキセン触媒と1-オクテン触媒との混合物および個々の触媒を用いて調製された触媒系を用いてこれらの標準的条件下に行われたエチレンオリゴマー化実験の結果を要約する。該表は、ヘキセン(C6)およびオクテン(C8)のそれぞれの選択性、および液相中の溶媒不溶物の重量%を示す。()内の数字は、C6/C8全フラクション中のそれぞれの直鎖αオレフィンの選択性を示す。これらのLAO純度は、通常、有利に高い。
図2は、触媒混合物についての表1の結果を示す図である。該結果から理解されるように、前記触媒を混合すると、末端アルケンの純度および触媒活性に有害な効果を及ぼすことなく最終混合組成物中の選択性につながる。
【0073】
本出願の態様およびその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲により定義される態様の精神および範囲から離れることなく、種々の変化、置き換えおよび変更を行い得ると理解すべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されている過程、機械、製造、組成物、手段、方法および工程の特定の態様に制限されることを意図していない。当業者は、前記開示から、本明細書に記載の対応する態様と実質的に同じ機能を行うまたは実質的に同じ結果を達成する、現存するまたは後で開発される過程、機械、製造、組成物、手段、方法または工程を、利用することができることを容易に理解する。従って、添付の特許請求の範囲は、そのような過程、機械、製造、組成物、手段、方法または工程を、その範囲内に含むことを意図している。