(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】プローブ表面のコーティングの検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/22 20060101AFI20240611BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240611BHJP
G01B 9/021 20060101ALI20240611BHJP
G01N 3/30 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01B11/22 G
G01B11/24 D
G01B9/021
G01N3/30 P
(21)【出願番号】P 2021560274
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2020060244
(87)【国際公開番号】W WO2020208180
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】デリンク,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルマン,トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】フライターク,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ベーレンス,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】シュトックブリンク,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】テゲトーフ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】エッケルト,カリン
(72)【発明者】
【氏名】ケルシュティンク,ユッタ
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09488470(US,B1)
【文献】特表2013-531227(JP,A)
【文献】特開平08-304253(JP,A)
【文献】特表2009-509150(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099220(WO,A1)
【文献】N. Budini et al.,"Characterization of drying paint coatings by dynamic speckle and holographic interferometry measurements",Applied optics,米国,Optical Society of America,2016年06月07日,Vol.55 No.17,p. 4706-4712
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00
G01B 11/00-11/30
G01N 3/30
21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ表面のコーティングを検査するための方法であって、
- プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれにおける前記コーティングの深さを示すセンシングデータを提供する工程(41)、
- 前記センシングデータから前記コーティングの深さ表示を決定する工程(42)、および、
- 前記深さ表示に基づいてコーティング特性を導出する工程(43)、
を含み、且つ
前記深さ表示が、前記コーティング表面の地形図を含み、且つ
前記地形図に基づいて前記コーティング特性を導出する工程(43)は、
- 複数の所定の深さ間隔のそれぞれについて、前記地形図により示される前記コーティング深さがそれぞれの前記深さ間隔にあるサブセット内のプローブ表面点の数をカウントする工程(4311)、および、
- 前記カウントの結果をそれぞれの前記深さ間隔に関連付ける工程(4312)、
によって、深さヒストグラム(H)を生成する工程(431)を含む、方法。
【請求項2】
前記センシングデータは、光ビームと前記コーティングとの相互作用を示すホログラフィックインターフェログラムデータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記深さ表示を決定する工程(42)は、
- 前記ホログラフィックインターフェログラムデータにデジタルホログラフィック再構成を適用することにより、再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータを計算する工程(421)、および、
- 前記再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータに基づいて前記コーティングの深さ表示を決定する工程(422)、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記地形図に基づいて前記コーティング特性を導出する工程(43)は、
- 前記ヒストグラム(H)の局所的な最大値の位置を示すピーク深さ間隔を決定する工程(432)をさらに含む、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング特性は、決定された前記ピーク深さ間隔に基づいて導き出される(工程433)、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング特性が、前記コーティングの構造および/または材料の変化を示し、および/またはコーティング層の厚さを示す、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
さらに、以下の工程、
- 導出された前記コーティング特性に基づいて、前記コーティングの機械的抵抗を評価する工程(44)を含み、
前記評価は、決定された前記コーティング特性に基づいて前記コーティング内の複数の領域のそれぞれの特徴的なサイズを推定することを含み、前記領域は、前記コーティングへの機械的衝撃を示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
所与のプローブ表面点でのコーティングの深さは、選択された基準面から、所与のプローブ表面点の上で、プローブ表面に垂直な方向にあるコーティング表面上の点までのユークリッド距離であり、及び
前記基準面が、コーティングが規則的である領域においてコーティング表面と実質的に一致するように選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングは、前記光ビームに対して少なくとも部分的に透過性であり、前記ホログラフィックインターフェログラムデータは、前記光ビームと前記コーティングの内部領域との相互作用を示し、前記深さ表示は、コーティングの層間の界面を示す層プロファイルを含む、請求項2を引用する請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記相互作用が、前記光ビーム内の位相ジャンプを含み、前記界面が、検出された前記位相ジャンプに基づいて前記層プロファイルに示される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング特性は、層の厚さであり、前記層の厚さを導出する工程は、
- 前記層プロファイルに基づいて前記層の厚さを推定する工程、および、
- 前記層の既知の屈折率に基づいて推定された前記層の厚さを修正する工程、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プローブ表面のコーティングに衝撃試験を実施するための方法であって、
- 弾道物体を前記コーティングに撃ち込む工程(1)、
- 前記弾道物体を前記コーティングから除去することによる前記コーティングの洗浄工程(2)、
- プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれでの前記コーティングの深さを示すセンシングデータを収集する工程(3)、および、
- 請求項1に記載の方法によって前記コーティングを検査する工程(4)、
を有する方法。
【請求項13】
プローブ表面のコーティングを検査するための検査装置(140)であって、該装置は、
- プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれにおける前記コーティングの深さを示すセンシングデータを提供するための提供ユニット、
- 前記センシングデータから前記コーティングの深さ表示を決定するための決定ユニット、および、
- 前記深さ表示に基づいてコーティング特性を導出するための導出ユニット、
を有
し、且つ
前記深さ表示が、前記コーティング表面の地形図を含み、且つ
前記深さ表示に基づいてコーティング特性を導出するための導出ユニットは、
前記地形図に基づいて前記コーティング特性を導出する工程(43)を行い、
前記地形図に基づいて前記コーティング特性を導出する工程(43)は、
a) 複数の所定の深さ間隔のそれぞれについて、前記地形図により示される前記コーティング深さがそれぞれの前記深さ間隔にあるサブセット内のプローブ表面点の数をカウントする工程(4311)、および、
b) 前記カウントの結果をそれぞれの前記深さ間隔に関連付ける工程(4312)、
によって、深さヒストグラム(H)を生成する工程(431)を含む、
検査装置(140)。
【請求項14】
プローブ表面のコーティングに衝撃試験を実施するためのシステム(100)であって、該システムは、
- 弾道装置(110)であって、
a)多数の弾道物体を受け取り、および、
b)所定の試験位置で弾道物体を発射する、ように適合されている弾道装置(110)、
- 前記コーティングから前記弾道物体をとりのぞくように適合された洗浄装置(120)、
- 前記プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれにおける前記コーティングの深さを示すセンシングデータを収集するように適合されたセンシングデバイス(130)、および、
- 請求項13に記載の検査装置(140)、を有し、
該システムは、所定の試験位置で、前記弾道物体が前記弾道装置によって発射されたときに、前記弾道物体によって前記プローブ表面の前記コーティングがヒットされるような向きで、前記プローブを受け取るように適合されているシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ表面のコーティングを検査するための方法および検査装置に関する。さらには、プローブ表面のコーティングに対して衝撃試験を実施するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな種類のコーティングが、機械の単一部分の表面や、製品全体の表面など、目的の機能を備えた表面を与えるための多くの技術分野で使用されている。そのような機能は、コーティングの下にあるバルク材料の保護を提供することからなる場合があり、またはコーティングされた部分に追加の特性を与えることからなる場合がある。腐食や化学的影響に対する保護が改善される可能性があるが、追加の機能は、光の誘導、設計可能な反射特性、流体力学的挙動の改善、または特定の物質のバリアまたは透過特性の変更に含まれる場合がある。一般的に使用されるコーティングの種類には、グロスペイントやワニスなどのバルク材料の表面に接触する前に液体であるものと、フィルムやホイルなどの事前に硬化されたものが含まれる。これはまた、さらに、典型的にはポリマーコーティングを備えている場合がある。ポリマーコーティングは、液体または粉末の形で塗布できる。さらに重要なクラスのコーティングは、電気的に適用されるガルバニックコーティングおよび電気的または化学的に適用可能な不動態化コーティングを含む。
【0003】
いずれにせよ、コーティングの特定の属性機能を検証するために、またはより一般的には、関心のある特徴を測定するために、コーティングの適切な検査および試験手段を所有することが開発、製造および品質管理における明らかな前提条件である。このような検査および試験の結果は、それぞれのコーティングまたはコーティングされた製品の特徴を定義するものとして解釈され、これらの特徴を生産現場および企業間で伝達する必要があるため、検査および試験手段は通常、客観的で再現性があり、可能な限り相互に比較可能な結果が得られるように設計されている。このような比較可能性を達成するための共通の取り組みは、ドイツ規格協会(DIN)および/または国際標準化機構(ISO)によって発行された公的規格、または製造業者の特定のニーズに適合した企業規格の点から明らかにされている。
【0004】
ただし、一般的に受け入れられている基準で合意されたテスト手順でさえ、テスト結果の人間による評価に依存している場合もある。これは、たとえば、自動車業界で広く使用されている、コーティングの機械的抵抗を評価するためのDIN EN ISO20567-1標準チップ衝撃試験の場合である。これらのテストでは、所定のタイプの石または鋼チップのサンプルが、表面に対象のコーティング、多くの場合、光沢のある塗料またはワニス、が施されているバルク材料プローブで撃たれる。撃たれた後、プローブは専門家によって視覚的に分析され、さまざまな場所でさまざまな程度にチップによって損傷を受けたコーティングの視覚的印象が、損傷したプローブの標準化された画像と照合される。標準化された画像は、各々別の抵抗のクラスを表している。しかし、最もよく訓練された専門家でさえ、与えられたテスト結果がどのクラスに属するかについて常に同意するわけではない。さらに、専門家がテスト結果を分類することをより注意深く目指すほど、専門家はより多くの時間を要する可能性がある。ただし、品質管理は通常、特に多数のプローブをテストする場合は、高い時間的プレッシャーの下で実行する必要があるが、これは珍しいことではない。進行中の生産プロセス中に、機械の特定の部品の品質を評価する必要がある場合、時間的プレッシャーはさらに高くなる。したがって、より少ない時間でより主観的な結果を得ることができるコーティングを検査するための方法が望まれる。
【0005】
一部の評価スキームは、単一の影響の重大度の評価にも依存している。その中で、単一の衝撃の厳しさは、一般に、その見かけの色によって判断される。これは、より深刻な衝撃が、より深くおよび/またはより大きな衝撃を残すという仮定に基づいている。もちろん、この仮定は、層間の知覚可能な色の違いに依存している。
【0006】
したがって、層の色が同じである場合、単一の欠陥の重大度を判断することはできない。したがって、コーティング層が同じ色を共有している場合でも、単一の機械的影響を評価することを可能にするコーティングを検査するための方法も望ましい。
【0007】
ブディノリ及び他の”Applied Optics - Chracterization of drying paint coatings by dynamic speckle and holographic interferometry measurements”は、溶剤ベースの塗料コーティングの乾燥プロセスを特性づけるための動的スペックルおよびホログラフィ干渉法技術に言及している。
【0008】
US 2013/0045663 A1は、半導体材料のスライスなどの物体の厚さを干渉法によって光学的に測定するために使用される装置に言及している。光干渉法による物体の厚さの読み取りが実行でき、大まかな厚さの値を取得でき、大まかな厚さの値が発生する頻度が評価され得る。
【0009】
US 9,488,470 B1は、基板上に堆積されたセラミックコーティングの状態を評価するための方法に言及している。この方法は、セラミックコーティングに光を照射し、コーティングの深さおよびコーティング上の横方向の位置の関数として、セラミックコーティングから戻される光の強度を測定し、測定された光の強度を分析して、例えば、コーティングから戻された光の強度に対する、露出されたコーティング表面から戻された光の強度を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】US 2013/0045663 A1
【文献】US 9,488,470 B1
【非特許文献】
【0011】
【文献】Budini et al.”Applied Optics - Chracterization of drying paint coatings by dynamic speckle and holographic interferometry measurements”.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、プローブ表面のコーティングを客観的かつより短時間で検査するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様では、プローブ表面のコーティングを検査するための方法が提供され、この方法は、a)プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれにおけるコーティングの深さを示すセンシングデータを提供する工程、b)センシングデータからコーティングの深さ表示を決定する工程、c)深さ表示に基づいてコーティング特性を導き出す工程、を含む。
【0014】
提供されたセンシングデータは、さまざまなポイントでのコーティングの深さを示しているため、センシングデータは、コーティングの深さ表示を決定するために使用できる。さらにコーティング特性が導き出されるので、コーティング自体の特性が得られ、したがって、主観的評価に依存せず、再現性のある評価を容易にするコーティングの客観的特性が得られる。したがって、専門家の介入がもはや必要ないので、例えば、コンピュータのような自動化されたシステムに方法を実装することによって、検査の速度も増加する。さらに、コーティング特性、すなわちコーティングの客観的特性は、コーティングの深さ表示に基づいて導出されるため、コーティングの幾何学的構成または構造に関する客観的情報を伝達し、その幾何学的構成または構造に起因する機能性に関してコーティングを評価するために使用できる。
【0015】
提供される方法の文脈において、プローブは、コーティングが適用可能であり、方法を維持することができる表面を有する任意の材料片であると理解される。この意味で、プローブは、例えば、車両のシャーシから切り出された部品などの製品の一部、または検査対象のコーティングを支持するためにのみ存在するダミー基板であり得る。好ましくは、コーティングは、プローブとは異なる材料または構造の1つまたは複数の層からなり、コーティングは、プローブの厚さよりも実質的に薄い厚さを有する。プローブ表面は、コーティングが別個の実体を形成するようにプローブ自体の一部であると理解されることが好ましいが、プローブとコーティングは、代替的に、コーティングとプローブ表面を有する厚みが消えない表面を有する共同体を形成すると理解される。コーティングの例には、光沢塗料およびワニスが含まれ、好ましくは、洗車ブラシなど、ストーンチップの衝撃または他の方法で発生する引っかき傷からシャーシを保護するために自動車産業で使用されるものを含むが、家具産業で、化学薬品や天候の影響に対する家具の耐性を増加する目的で使用されるものも含む。しかしながら、本明細書で言及されるコーティングは、また、例えば、様々な目的に望ましい微細構造を提供する目的で、フィルムやフォイル、並びにポリマーで作られているフィルムおよびホイルのコーティングなど、他の分野および他の用途で使用されるコーティングを含む。
【0016】
この方法に従って提供されるセンシングデータは、プローブ表面の所与の点でのコーティングの深さを示すデータを収集するように適合された任意のセンシングデバイスによって収集されるデータである。好ましくは、所与のプローブ表面点でのコーティングの深さは、選択された基準面から、所与のプローブ表面点の上で、プローブ表面に垂直な方向にあるコーティング表面上の点までのユークリッド距離である。その中で、コーティング表面は、プローブとは反対側を向いている。すなわち、空気などの周囲媒体との界面を形成しているコーティングの側面として定義されている。同様に、所与のプローブ表面点でのコーティングの深さは、選択された基準面から、プローブ表面に垂直な方向で、所与のプローブ表面点上にあるコーティングの内部の点までのユークリッド距離であることが好ましい場合がある。その場合、深さは部分的な深さである。それは、例えば、コーティング層間の界面の位置に対応することができる。基準面が、コーティングが規則的である領域、例えば、それが損傷されていない領域においてコーティング表面と実質的に一致するように選択される場合、深さは、コーティングが特定の領域で平面から逸脱する程度を測定する欠陥深さである。標準的な試験手順で使用されるチップなどの弾道物体の機械的衝撃に起因する偏差の場合、欠陥の深さは侵入深さと呼ばれることもある。他方、基準面がプローブ表面と実質的に一致するように選択される場合、これは、プローブ表面が実質的に平面である場合に可能であり、深さは、コーティングの完全な深さまたは厚さと呼ばれ得る。基準面のその選択により、深さは部分的な深さでもあり得、これは、プローブ表面からコーティング内の、すなわちコーティングの内部の特定の点までのユークリッド距離を示すであろう。このような部分的な深さは、プローブ表面からの特定の点の高さとしても理解できる。特に、そのような特に関心のある点は、コーティングの2つの層の間の界面にあり得る。もちろん、距離測定の他の選択は、特に、基準面の他の選択を含み、本発明に従って深さを定義するために可能である。基本的に、そのような選択は単に座標の選択に対応する。原則として、任意の座標系が使用できる。しかしながら、好ましい座標系は、プローブおよび/またはコーティング表面の形状に適合されているものである。例えば、座標は、表面が平面である場合、2つの軸、例えば、x軸およびy軸がプローブまたはコーティング表面内にあるデカルト座標系の座標であり得る。その場合、デカルト座標系の3番目の方向、たとえばz方向は、コーティングの深さを測定するのに役立つ。プローブ表面および/またはコーティング表面が平面でない他の場合において、他の座標系および/または深さの測定が優先され、おそらく平面ではなく参照球に関して定義され、球極座標を使用する場合がある。
【0017】
センシングデバイスは、センシングデータが提供されるプローブ表面点の数が制限され得るように、すなわち、それらがプローブ表面点の完全なセットのサブセットを形成し得るように、有限の解像度を有し得る。優先的に、このサブセット、または少なくともそれに含まれるポイントの数は、事前に決定されている。センシングデバイスは、プロフィロメーター、偏向測定装置、あるいは従来の顕微鏡などの光学装置であり得る。しかしながら、センシングデータがホログラフィックデバイスを使用して収集されることが特に好ましい。ホログラフィーを採用することは、センシングに使用される光に関する位相情報が少なくともその波長のいくつかの倍数内で失われないので、センシングデータが深さ情報を示すだけでなく、コーティングの光学特性に関する情報も提供するという利点を有する。
【0018】
いずれにせよ、提供されたセンシングデータから、コーティングの形状に関する三次元情報を、深さ表示を決定する工程によってキャプチャされるように取得することができる。センシングデータがプローブ表面点のサブセットでのコーティングの厚さで構成されている可能性がある特に単純なケースでは、深さ表示は、プローブ表面点の座標を対応する厚さの値、つまりコーティングの完全な深さにマッピングするだけでよい。その場合、深さ表示は、例えば、3次元画像または3次元画像の2次元投影であり得る。あるいは、深さ表示は、例えば、プローブ表面点の座標によって調整された2次元マップであり得る。ここで、追加の深さ情報は、等高線またはカラーまたはグレーの陰影で符号化される。深さ表示はまた、例えば、深さ情報がカラーまたはグレーの陰影でさらに符号化される3次元画像の2次元投影などの組み合わせであり得る。
【0019】
その視覚化に関係なく、深さ表示によって運ばれる情報は、コーティング特性、すなわち、例えば、その幾何学的特性、コーティングの可能な層状構造、または、それが含む1つ以上の材料に関連するコーティングの特性を導出するために使用される。例えば、触覚的または視覚的に知覚されるコーティング表面の主観的な粗さの程度は、その粗さの原因となるコーティング表面の形状の変化に関する長さスケール特性になるコーティング特性を選択することで、客観化することができる。同様に、コーティング特性は、所与の参照形状からの偏差を測定することによってコーティング表面形状の均一性を客観的に定量化するか、または幾何学的サブストラクチャが再表示される長さスケールを示すことによって周期性の程度を定量化することができ、これはコーティングの特定の機能特性を達成するために重要である可能性がある。さらに、コーティングが検査前に明確で既知の方法で処理されている場合、コーティング特性は、形状自体を超えて広がる情報、すなわち、たとえば、コーティングが適用された処理にどのように応答するかについても得ることができる。言い換えれば、深さ表示によってエンコードされた情報は、過去に関連する情報を使用して解釈することができる。たとえば、衝撃試験では、コーティングに欠陥が生じ、その内部に窓ができるため、さまざまな層の材料組成などの構造特性の検査も容易になる。製造されたフィルムコーティングまたは適用中のフィルムコーティングの検証のために、部分的な深さの値を使用して、層間の界面などのコーティングの内部構造が許容できる形で形成されているかどうかを評価できる。
【0020】
この方法のいくつかの実施形態では、センシングデータは、光とコーティングとの相互作用を示すホログラフィック干渉図データを含み、深さ表示を決定する工程は、デジタルホログラフィック再構成をホログラフィックインターフェログラムデータに適用することによって再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータを計算すること、および再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータに基づいてコーティングの深さ表示を決定することを含む。ホログラフィックインターフェログラムデータは、好ましくは、ホログラフィック手段によって生成された干渉パターンに関連するデータであり、その場合、光とコーティングとの相互作用は、通常、レーザーによって、プローブ、プローブ表面、またはプローブ表面を覆うコーティングを通して/において生成されるコヒーレント光のビームの透過/反射である。
【0021】
そのような干渉パターンを生成するためのホログラフィック手段は、典型的には、コヒーレントまたは少なくとも実質的にコヒーレントな光ビーム線を生成するための光源、および生成されたビームを少なくとも2つのビームに分割するためのビーム分割手段を含み、一方のビームは一般にオブジェクトビームと、他のビームは一般に参照ビームと呼ばれる。次に、オブジェクトビームは、上記の意味で、反射または透過によってコーティングなどのオブジェクトと相互作用し、続いて、オブジェクトビームおよび参照ビームは、それらが互いに再結合して重ね合わせビームを形成するようにミラーリング手段によって方向が変えられる。ミラーリング手段は、調整可能であるように適合され、それによって、オブジェクトビームと重ね合わせる前に、参照ビームが移動する距離、すなわちその光路長を変更するように適合されたミラーを備えることができる。例えば、ミラーリング手段は、オブジェクトビームと重ね合わせる前に参照ビームの光路長を調整するための標準的なホログラフィックセットアップで使用されるように、標準的な参照ミラーを含むことができる。
【0022】
重ね合わせビームは通常、感光性媒体に向けられる。オブジェクトビームはオブジェクト、つまりこの場合はコーティングと相互作用しているため、重ね合わせの際の参照ビームの位相とは異なる位相を運ぶ。これは、重ね合わせビームの強度が感光性媒体に到達するときに空間内で変化することを意味する。感光性媒体は、干渉パターンの形で空間的に変化する強度を記録する。干渉パターンは、インターフェログラムとも呼ばれる。干渉パターンは、参照ビームの調整された光路長によってさらに影響を受ける。参照ビームの光路長を調整することは、オブジェクトの内部に関する情報を収集する場合に特に有利である。例えば、参照ミラーの位置を変えることによって参照ビームの光路長を調整することは、コーティングの異なる深さまたは部分的な深さの位置に対応するデータを含むインターフェログラムデータにつながる可能性がある。コーティングが少なくとも部分的に透明である場合、インターフェログラムデータに基づいて、層プロファイルを決定することができる。層プロファイルは、コーティングの異なる層間の界面を示している。層プロファイルから、層の厚さは、層プロファイルによって示される2つの界面間の深さの差としての層プロファイルによって表される層の幅として導出することができる。すなわち、たとえば、幅は、層プロファイルに示されているように、界面に垂直な方向の層に属するピクセル数から導出することができる。
【0023】
感光性媒体がデジタル処理手段に結合されるとき、インターフェログラムを表すデータ、すなわちインターフェログラムデータは、保存され、および/またはさらにデジタル的に処理され得る。従来のホログラフィでは、アナログ形式のインターフェログラムで、感光性媒体に再構成ビームを照射することによってオブジェクトビームが相互作用したオブジェクトの画像の光学的再構成に使用されるが、ホログラフィックインターフェログラムデータは、同様にオブジェクトの画像をデジタル的に再構成するのに使用できる。これは、デジタルホログラフィック再構成技術の根底にある考え方である。デジタル再構成技術は、干渉パターンがオブジェクトのフーリエ変換に関連しているという洞察を使用しており、その逆数が決定できる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、ホログラフィックインターフェログラムデータは、少なくとも2セットのインターフェログラムデータを含み、各セットは、異なる波長のコヒーレント光とコーティングとの相互作用を示し、再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータは、合成再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータを含む。本明細書において、「合成」という用語は、デジタル処理手段が、実際にコーテイングに使用される少なくとも2つの波長、すなわち合成波長の光の関数である波長の光の仮想的な相互作用に関する情報を含む再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータを計算するために使用されることを強調する。好ましくは、合成波長は、少なくとも2つの異なる波長を有するコヒーレント光ビームの-仮想-重ね合わせのビート周波数に対応する。したがって、例えば、2つの異なる波長の場合、合成波長は、それらの合計またはそれらの差であり得る。実際のインターフェログラムを記録するために使用される波長よりも大きい合成波長は、かなりの異なるスケールで深さが変化するコーテイングを検査するのに特に利点がある。そのようなコーティングは、比較的大きな機能要素によって中断された微細な表面構造を有するコーティング、または実際に、テスト手順から生じたインパクト領域を有するコーテイングなどである。これは、合成波長が長いため、実際に使用される波長が小さいことによって、より高いベース解像度を維持しながら、より大きな構造で位相のあいまいさを回避できるためである。
【0025】
デジタル的に再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータは、単にオブジェクトのデジタル画像、すなわち、例えば、プローブ表面およびそれを覆うコーティングの画像であり得る。その場合、深さ表示は、適切に適合された座標系で表されたその画像であり得、好ましくは、1つの軸がプローブ表面に垂直な方向を指している。デジタルホログラフィック再構成によって提供される解像度の向上は、たとえば、コーティングの非常に詳細で正確な深さ表示に反映される。
【0026】
この方法のいくつかの実施形態では、深さ表示は、コーティング表面の地形図を含む。地形図には、完全な深さまたは侵入深さの情報が含まれているが、部分的な深さの情報は含まれていないため、コーティングの内部からのセンシング値に依存しない。したがって、地形図は、光学的センシング手段および不透明なコーティング材料の場合のように、コーティングの内部をセンシングするのに不適切な手段によって記録されたセンシング値についてさえ決定され得る。
【0027】
本発明による方法のいくつかの実施形態では、地形図に基づいてコーティング特性を導出することは、複数の所定の深さ間隔のそれぞれについて、サブセット内のプローブ表面点の数を数えることによって深さヒストグラムを生成することを含む。地形図で示されるコーティング深さは、それぞれの深さ間隔にあり、カウント結果をそれぞれの深さ間隔に関連付ける。したがって、地形図は、コーティング全体の深さの分布に関する情報を提供する深さヒストグラムを生成する。これには、コーティングの客観的特性が再現可能な方法で評価可能になるという利点がある。たとえば、コーティングの表面が、コーティングの深さが測定される基準面に完全に平面で平行な場合、深さのヒストグラムは、センシングデータが提供されたプローブ表面点のサブセット内のポイントの数に対応する単一の非ゼロエントリのみを含む。ここで、数は、ヒストグラムを介して、提供されたセンシングデータが示す深さが入る、深さ値の間隔に関連付けられる。所定の深さ間隔は、好ましくはサイズが等しく、それらのサイズがヒストグラムの細かさまたは粗さを決定する。深さ間隔の最小サイズは、センシングデータによって示される深さ間の最小距離に等しくなるように合理的に選択され、最大サイズは、センシングデータによって示される深さ間の最大距離に等しくなる。有利には、センシングデータに含まれる情報の量を保持するために、ヒストグラムの深さ間隔のサイズは、センシングデータを特徴付ける解像度に対応する。当業者は、例えば、センシングデータが提供されるコーティングの部分の空間的範囲よりもはるかに短い周期性の長さを有する周期的パターンなどの規則的な厚さ分布を有するコーティングが、結果としてかなり平坦な深さヒストグラム、つまり、コーティングの周期的パターンが異なるポイント間で大きな深さの差を示す場合でも、深さ度間隔の大部分に関連するカウント結果が互いにかなり類似している深さヒストグラムを生じることを理解するであろう。他方、比較的厚い部分を有する大部分および実質的に薄い部分のみを特徴とするコーティング形状は、カウント結果に対応してより大きな差を含む深さヒストグラムをもたらすであろう。明確に定義された試験手順に従って機械的衝撃によってコーティングに欠陥が生じた場合、深さヒストグラムの形状を使用して、明確に定義された試験手順に関するコーティングの特性を導き出すことができる。ただし、衝撃試験とは関係のないコーティングを検査するより一般的なケースでも、深さヒストグラムを使用して、コーティングの構造特性を客観的に取得できる。
【0028】
いくつかの実施形態では、地形図に基づいてコーティング特性を導出することは、ヒストグラム内の局所的な最大値の位置を示すピーク深さ間隔を決定することをさらに含む。このようにして、頻繁に遭遇する深さ値を含む深さ間隔が識別される。すなわち、センシングデータが提供されたプローブ表面点の多くに存在するコーティングの厚さが示される。「局所的な最大値」という用語は、ヒストグラムを指すので、空間的局所性の意味を持たない。すなわち、コーティング深さの空間的に局所的な最大値を記述しない。むしろ、「局所的」という表現は、深さヒストグラムに関して、深さヒストグラムが複数の局所的な最大値、すなわち他のピークを含み得、それぞれが近隣の深さ間隔に対応するカウント値よりも高いカウント値に個別に対応することを示す。深さヒストグラムの局所的な最大値の位置を決定することは、コーティングの特に意味のある特性を導き出すことができるので、コーティングを調べるのに特に有利である。たとえば、コーティングが異なる材料の2つの層で構成されており、このコーティングが標準のストーンチップ衝撃試験手順で行われるように弾道物体の機械的衝撃を受けた場合、局所的な最大の位置はコーティングが損傷しているコーティング層を表す。特に、コーティングの異なる層は、色が異なっていなくても区別できるようになる。局所的な最大地を特定することは、局所的な最大値は一般にコーティングの重要な構造的特徴の指標となるため、衝撃試験を実行せずにコーティングを検査する場合にも特に有利である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ピーク深さ間隔を決定することは、ベース深さの多様性を示す許容閾値を提供する工程、選択された深さ間隔に関連するカウント結果を差し引くことによってカウント差を計算する工程、選択されたカウント差の符号を決定する工程、および/または選択された深さ間隔に関連付けられたカウント結果を選択された深さ間隔と比較する工程、および提供された許容閾値、計算されたカウント差、および決定された符号および/または比較されたカウント結果に基づいてピーク深さ間隔を決定する工程、を含む。好ましくは、これらの工程は、深さヒストグラムの離散化された導関数を計算し、それが符号を変更する場所を決定することになる。ここで、離散化された導関数が符号を変更する深さ間隔は、局所的な最大値の候補位置として取られる。候補ピーク位置の近傍のすべての深さ間隔のカウント結果が、候補ピーク位置に対応する深さ間隔に関連付けられたカウント結果よりも小さく、カウント結果が所定のベース深さの多様性を超える場合、候補ピーク位置は真のピーク位置として受け入れられる。ベース深さの多様性は、すべての、または実質的にすべての深さ間隔で置き換えられるカウントの数である。
【0030】
いくつかの実施形態では、コーティング特性は、決定されたピーク深さ間隔に基づいて導き出されている。ヒストグラムのピークにはコーティングの深さの変化に関する重要な情報が含まれているため、このようにこの重要な情報はコーティング特性によってキャプチャされる。例えば、コーティング特性は、境界値または中心値など、決定されたピーク深さ間隔からの深さ値になるように単純に選択される。その場合、客観的で再現性のある検査を容易にするのに特に適している。
【0031】
いくつかの実施形態では、コーティング特性は、コーティングの構造および/または材料の変化を示し、および/またはコーティング層の厚さを示す。構造および/または材料の変化は、コーティングの2つの層の間の界面でしばしば発生する。好ましくは、複数のコーティング特性が決定され、その結果、コーティングの構造および/または材料の複数の変化、すなわち、コーティング層間の複数の界面が、複数のコーティング特性によって示される場合、界面間の関係が決定できる。特に、コーティング特性が、2つのピーク深さ間隔からの深さ値である場合、層の厚さはそれらの差によって推定される。さらに、他のコーティング特性は、コーティング特性によって示される深さ値に基づいて導き出すことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、この方法は、導出されたコーティング特性に基づいてコーティングの機械的抵抗を評価する工程をさらに含む。特に、機械的抵抗は、標準的な分類に従って評価でき、これは、平均的な欠陥の深さや平均的な欠陥のサイズなどの統計的特性の観点から測定された、標準化されたテスト手順中に生成される欠陥の分布を示す。
【0033】
特に、評価は、決定されたコーティング特性に基づいて、コーティング内の複数の領域のそれぞれの特徴的なサイズを推定することを含む。好ましくは、評価は、決定された地形図にさらに基づく。例えば、欠陥の典型的なサイズ、すなわち、ストーンチップ衝撃試験などの試験における弾道物体の衝撃から生じる衝撃領域は、各欠陥のサイズ、すなわち、地形図から推測可能なサイズを割り当てることによって推定することができ、その後、典型的な欠陥のサイズは、異なる欠陥の複数のサイズから推定される。所与の欠陥のサイズの測定は、例えば、2つの層間の界面に対応する深さ値でプローブ表面に平行な方向のその範囲を測定することによって客観的に得られる。導出されたコーティング特性が層界面の深さの値を示している場合、この測定は地形図を使用して実行できる。測定が行われるプローブ表面に平行な方向は、例えば、測定値が最大になるように、すなわち、コーティング特性によって示される深さ値で、欠陥が最大の範囲を有する方向と一致するようにすることができる。
【0034】
より具体的には、領域は、コーティングへの機械的影響を示し得る。前述のように、このような機械的衝撃は、標準化されたストーンチップ衝撃試験などの標準的な試験手順から生じることが好ましい。領域は、必ずしも欠陥領域、すなわちコーティングの損傷部分である必要はなく、コーティングの損傷していない無傷の部分を含むこともできることが理解される。
【0035】
いくつかの実施形態では、コーティングは、光ビームに対して少なくとも部分的に透過性であり、ホログラフィックインターフェログラムデータは、光ビームとコーティングの内部領域との相互作用を示し、深さ表示は、コーティングの層間の界面の層プロファイルを含む。言い換えれば、コーティングの透過性により、コーティングの内部領域に関する情報を得ることができる。これは、例えば、層間の界面の位置および形状を含むことができる。したがって、層プロファイルは、コーティングの内部からの情報の表現として理解されるべきである。例えば、それは、コーティング表面に垂直な平面におけるコーティングの断面視覚化を含み得る。コーティングが複数の層を含む場合、界面が層プロファイルに見えるようになる可能性がある。層プロファイルは、例えば、デジタルホログラフィック再構成技術を使用して決定することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、相互作用は、光ビームの位相ジャンプを含み、界面は、検出された位相ジャンプに基づいて層プロファイルで示される。層が異なる屈折率を含むことが知られている場合、層界面を検出するこの方法は特に好ましい。これは、第1の屈折率を有する第1の層を通過し、少なくとも部分的に、第2の屈折率を有する第2の層に向かう界面で反射される光ビーム線に関連する位相が、第2の屈折率が第1の屈折率よりも高い場合、180°の変化を経験するためである。この位相ジャンプに関する情報は、インターフェログラムデータにエンコードされ、たとえば、デジタルホログラフィック再構成中に使用して、特に正確な層プロファイルを決定できる。
【0037】
いくつかの実施形態では、コーティング特性は層の厚さであり、層の厚さを導出することは、層のプロファイルに基づいて層の厚さを推定し、層の既知の屈折率に基づいて推定された層の厚さを補正することを含む。例えば、第1の層の屈折率は、第1の層の材料に関する以前の知識から知ることができる。屈折率は、文献からさまざまな材料で知られている。特定の材料については、参照測定を実行することが好ましい場合がある。所与のプローブ表面点での推定層厚は、例えば、その点でのコーティングの完全な深さと、その点での第1の最上層と第2の層との間の界面の部分的な深さとの間の差に対応する。これは、例えばピクセルを数えることによって、この場合、コーティング表面に垂直な第1の層の範囲を測定することによって、層プロファイルから直接決定することができる。好ましくは、推定された層の厚さは、それを既知の屈折率で乗算することによって補正される。
【0038】
本発明のさらなる態様では、プローブ表面のコーティングに対して衝撃試験を実施するための方法が提示され、弾道物体をコーティングに撃ち込み、弾道物体をコーティングから除去することによってコーティングを洗浄し、プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれにおけるコーティングの深さを示すセンシングデータを収集する工程、および、前述の方法に従ってコーティングを検査する工程を含む。
【0039】
別の態様では、プローブ表面のコーティングを検査するための検査装置が提示され、装置は、プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれでコーティングの深さを示すセンシングデータを提供するための提供ユニット、センシングデータからコーティングの地形図を決定する決定ユニット、および、地形図に基づいてコーティング特性を導出するための導出ユニットを有する。提供ユニットは、センシングデータを提供するように適合された任意のハードウェアであり得る。たとえば、提供ユニットは、センシングデータが記憶されている一般的なタイプの記憶媒体から入力データを受信し、入力データを決定ユニットに渡すように適合された一般的な入力手段を備えることができる。さらに、提供ユニットは、それ自体が、センシングデータを記憶し、要求またはコマンドに応じてそれらを決定ユニットに渡すように適合された記憶手段を備えることができる。決定ユニットおよび導出ユニットは、通常、それぞれ、センシングデータを受信し、それらを制御可能な方法で処理するように適合されたデータ処理手段を備える。決定ユニットと導出ユニットは、処理手段の一部を共有することができるが、構造的に完全に互いにばらばらである可能性もある。
【0040】
別の態様では、プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれでコーティングの深さを示すセンシングデータを収集するように適合されたセンシングデバイスと、プローブ表面のコーティングを検査するための検査デバイスとを含むシステムが提供される。センシングデバイスは、好ましくは、ホログラフィック手段を含み、センシングデータは、光ビームとコーティングとの相互作用を示すホログラフィックインターフェログラムデータを含み、光ビームは、好ましくはオブジェクトビームである。いくつかの実施形態では、相互作用は、オブジェクトビームとコーティングの内部領域との相互作用である。内側領域は、コーティングの異なる層を含むことができ、その場合、検査装置によって生成される深さ表示が層プロファイルを含むことが好ましい。次に、ホログラフィック手段は、参照ビームの光路長を調整するためのミラー手段を含むことが好ましく、調整された光路長は、ホログラフィックインターフェログラムデータが示す、オブジェクトビームとコーティングとの間の相互作用が起こった内部領域を示す。このようにして、ホログラフィックインターフェログラムデータの複数のセットが記録され、それぞれがコーティング内の異なる領域とのオブジェクトビームの相互作用を示す。これらの実施形態は、コーティングが光ビームに対して透明である場合に特に好ましい。
【0041】
さらに別の態様では、プローブ表面のコーティングに対して衝撃試験を実施するためのシステムが提示され、多数の弾道物体を受け入れ、所定の試験位置で弾道物体を発射するように適合された弾道装置を含む。システムは、所定の試験位置で、および、弾道物体が弾道装置によって撃たれるときに、プローブ表面のコーティングが弾道物体によって打たれることができるような向きで、プローブを受け取るために適合される。システムはさらに、コーティングから弾道物体を除去するために適合された洗浄装置、プローブ表面点の所定のサブセットのそれぞれにおけるコーティングの深さを示すセンシングデータを収集するように適合されたセンシングデバイス、および、以前に定義した検査装置を含む。
【0042】
本発明のさらなる態様は、プログラムがコンピュータ上で実行されるときに、コンピュータに以前に定義されたプローブ表面のコーティングを検査するための方法を実行させる命令を含む、プローブ表面のコーティングを検査するためのコンピュータプログラムに関する。
【0043】
一態様では、本発明は、プローブ表面のコーティングに対して衝撃試験を実行するためのコンピュータプログラムにも関し、プログラムが以前に定義されたシステムを制御するコンピュータ上で実行されると、システムに上で定義されたようなプローブ表面のコーティングに衝撃試験を実行するため方法を実行させる命令を含む。
【0044】
請求項1の方法、請求項11の方法、請求項12の検査装置、請求項13のシステム、および、請求項14および15のコンピュータプログラムは、特に、従属請求項で定義されているとおり、類似および/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0045】
本発明の好ましい実施形態はまた、従属請求項または上記の実施形態とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであり得ることを理解されたい。
【0046】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明によるプローブ表面のコーティングに対して衝撃試験を実施するためのシステムの実施形態を概略的かつ例示的に示したものである。
【
図2】本発明によるプローブ表面のコーティング上で衝撃試験を実施するための方法を例示的かつ概略的に示すフローチャートである。
【
図3】本発明に従ってコーティングを検査するために実行される工程を示すフローチャートを概略的かつ例示的に示したものである。
【
図4】本発明の実施形態においてコーティングを検査するために生成された例示的な深さヒストグラムを示す。
【
図5】
図4に示されている深さヒストグラムの導関数の例示的なグラフを示めす。
【
図6】プローブ表面のコーティングにおける衝撃領域の概略的かつ例示的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、プローブ表面のコーティングに対して衝撃試験を実施するためのシステムを概略的かつ例示的な表現で示したものである。システム100は、好ましくは、プローブ表面のコーティング上でチップ衝撃試験を自動的に実行し、その後、試験結果を収集し、その適切な分析を実行するために必要なすべてのデバイスを組み込んだ単一の自動システムである。代替的に、システム100はまた、必要なすべてのデバイスを1つの場所で組み合わせることができない場合、方法は完全に自動化されないが、例えば、あるデバイスから別のデバイスへのプローブの手動転送および/またはデバイスの手動制御などの人間の相互作用が必要になる。衝撃試験を実施するために、システム100は、弾道装置110を備える。弾道装置は、衝撃試験に使用される弾道物体を受け入れるように適合されている。典型的には、弾道物体は、所定のサイズおよび所定の質量を有する鋼または石のチップであり、チップのサイズおよび質量分布は、企業または国際規格に従うことができる。弾道装置110は、装置の内部に向かって開口部を有するレセプタクルを介してチップを受け取り、その結果、複数のチップを、それらすべてを一度に開口部を通して移動させることなく、レセプタクルに供給することができる。むしろ、開口部は、制御された方法および制御された速度でチップによって通過され得、その結果、所定の量のチップが、所定の時間工程で弾道装置110の内部に到達する。弾道装置が所定の試験位置でチップを射撃するために射撃手段を使用している場合、弾道装置の内部に到達したチップは、好ましくは、射撃手段にさらに供給される。射撃手段は、例えば、空気の作用、すなわち空気圧によって操作可能であり、構成可能な頻度および構成可能な時間にわたってチップを1つずつ発射するように適合されている。弾道装置が適切な速度で適切な方向にそれらを撃つように適合されているので、チップは試験位置に到達する。システム100は、その表面が弾道装置110の弾道手段に面するような向きで試験位置でプローブを受け取るように適合されている。したがって、プローブがその表面でコーティングされ、その表面が発射手段に向かって配向された状態で試験位置に配置されると、弾道装置110を操作して、チップをプローブ表面のコーティング上に、場合によってはプローブ表面のコーティング内に発射することができる。このようにして、コーティングは一般的に損傷を受ける。
【0049】
システム100は、衝撃後にその中で動かないチップをコーティングから除去するように適合された洗浄装置120をさらに備える。コーティングからストーンチップを除去するために、洗浄装置120は、例えば、テープを巻くための手段、およびテープを運んで試験位置に配置されたコーティングされたプローブに接触させるための手段、および、したがってテープをコーティング内の動かないチップに接触させるための手段を備える。テープは、好ましくは、テープがコーティング内で動かないチップと繰り返し接触させられ、そこから剥がされると、石のチップがテープに付着し、それによってチップがコーティングから除去できるような接着剤を含む。好ましくは、コーティングからチップを除去することは、テープをコーティングと接触させ、続いてそれをコーティングから除去することの数回の繰り返しを含み、各繰り返しの後にテープの置き換え移動が続き、その結果、各繰り返しは、テープの新しい部分で行われる。
【0050】
システム100は、コーティングされたプローブの表面形状をセンシングするように適合されたセンシングデバイス130をさらに備える。好ましくは、センシングデバイスは光学装置である。このようにして、形状を非接触で検出することができる。コーティング表面が検知に使用される光の周波数範囲で透過性でない場合、検知された形状は表面形状に限定される。コーティング表面が使用された周波数範囲で透過性であり、コーティングの残りの部分も透過性である場合、コーティング内の位置についてもセンシングデータが取得できる。センシングデバイス130は、通常、制限された分解能を有する。これは、それがアナログ装置である場合、それ以下ではセンシングデータの差異が検出され得ない距離を決定し、それがデジタル装置である場合、それは、限られた量のデータポイントを収集するだけである。センシングデバイスの較正は、試験位置、またはコーティングされたプローブ表面上の点の分布を決定し、そのために、センシングデータは、センシングデバイス130によって収集され得る。
【0051】
システム100は、センシングデバイス130によって提供されるセンシングデータを分析するのに役立つコンピュータなどの検査装置140をさらに備え、それはしたがって、プローブ表面のコーティングを検査するように適合されている。検査装置140は、センシングデータを提供するように適合された、センシングデバイス130に電子的に結合可能なインターフェースなどの提供ユニット141を備える。提供ユニットはまた、任意の記憶媒体に記憶されたセンシングデータを読み取り、さらなる分析のためにそれを提供するように適合された読み取りユニットとして理解され得る。検査装置140はまた、センシングデータに基づいてコーティングの深さ表示を決定するように適合されたコンピュータ140のプロセッサによっておそらく実現される決定ユニット142と、決定ユニット142と類似または同一であり得る導出ユニット143を備える。導出ユニットは、決定された深さ表示に基づいてコーティングの特性を導出するように適合されている。
【0052】
フィルムまたはホイル上に構造化コーティングを堆積する進行中の製造プロセス中の品質管理など、チップ衝撃試験に関係のない用途では、センシングデバイス130および検査装置140を、ホログラフィックカメラの形態などでシステム100の残りの部分から独立して使用するように配置することができる。この場合、コーティングがセンシングに使用される光に対して透明であるという条件で、センシングデバイスがコーティングの内部から光学的なセンシングデータを収集するように適合されることが特に好ましい。したがって、センシングデータは、光とコーティングの内部領域との相互作用を示す。これは、たとえば、追加のスライド可能なミラーを使用して参照ビームの移動距離を調整することで実現できる。このようにして、コーティングを通過する途中の光ビームによって収集された相対的な位相シフトは、センシングデータに入ることができ、したがって、異なる部分的な深さでの層の屈折率についての結論を可能にする。屈折率の変化は、検査装置140によって、層間の界面の位置を示すものとして解釈することができる。好ましくは、光学的に厚い層に向かう界面での光の反射中に生じる180°の位相ジャンプが認識される。提供ユニット141によって提供されるセンシングデータ、すなわち、例えば、ホログラフィックインターフェログラムデータにおける位相ジャンプのそのような認識に基づいて、決定ユニット142は、コーティングの層プロファイルを決定することができる。決定ユニット142は、当業者に知られているデジタルホログラフィック再構成のための標準的な技術を使用して、層プロファイルを決定するように適合させることができ、インターフェログラムデータが1つの実際の波長より多くのデータを含む場合、再構成は合成波長に対して実行されることが好ましい場合がある。層プロファイルから、コーティング特性として、層の厚さは、導出ユニット143によって導出され得る。例えば、層の厚さは、例えば、2つの界面間のピクセル数に基づいて、層プロファイルにおいて導出可能であり、以前の独立した測定から知られている対応する屈折率と乗算することによって修正することができる。
【0053】
さらに、ホログラフィック手段によって生成された層プロファイルから、層の厚さおよび/または界面位置、すなわち界面の部分的な深さの直接決定は、すなわちコーティングが透明または部分的に透明である場合、石の衝撃試験の結果にも適用できる。その場合、欠陥の特徴的なサイズは、層のプロファイルから直接決定された層の界面の位置に基づいて決定することができる。
【0054】
図2は、
図1に関連して説明されたシステム100が、プローブ表面のコーティングに対して衝撃試験を実行するためにどのように使用され得るかを概略的に示したものである。本発明による一般的な手順は以下の通りである。第1の工程1において、弾道物体は、システム100の弾道装置110を使用してコーティングに撃ち込まれる。次に、第2の工程2において、コーティングは、洗浄装置120を使用して、そこに撃ち込まれ、そこで動けない弾道物体を除去することによって洗浄される。その後、第3の工程で、センシングデータが、センシングデバイス130を使用して収集される。第4の工程4で、洗浄されたコーティングは、検査装置140を使用して検査される。工程4は、続いて
図3を参照してより詳細に説明される。
【0055】
図3は、前述の検査装置140を使用して実行することができる、それ自体の方法としてコーティングを検査する工程を概略的かつ例示的に示すフローチャートである。したがって、第1の工程41は、プローブ表面点のサブセットのそれぞれにおけるコーティングの深さを示すセンシングデータを提供することからなる。特定の実施形態では、センシングデータは、それぞれ第1および第2の波長によって定義されたレーザーで生成され、感光性媒体を使用して記録されたホログラフィックインターフェログラムを表す第1および第2のデータセットを含む。インターフェログラムにエンコードされた干渉は、光ビームの一部とコーティングとの相互作用による位相変調に起因する。この部分、つまりプローブビームは、干渉計によって元のレーザービームから分割され、コーティングと相互作用し、その後、参照ビームとして機能するソースビームの残りの部分と再び重ね合わされる。位相変調は波長ごとに異なるため、対応するインターフェログラム、したがって2セットのホログラフィックインターフェログラムデータは互いに異なる。つまり、単一波長で収集したインターフェログラムデータのみを使用する場合よりも、コーティングに関するより多くの情報が提供される。
【0056】
この実施形態では、工程42は、合成波長に対応する再構成データを決定することを含むホログラフィックインターフェログラムデータにデジタルホログラフィック再構成を適用することによって、再構成ホログラフィックインターフェログラムデータを計算する工程421を含む。合成波長は、好ましくは、第1の波長を有するレーザービームと第2の波長を有するレーザービームとの架空の重ね合わせのビート周波数に対応する、すなわち、その逆数に比例する。合成波長は、第1の波長と第2の波長の合計に等しいことが特に好ましい。このようにして、短距離の分解能を犠牲にすることなく、大きな深さ変動を正確かつ明確に決定することができる。次に、工程422において、コーティングの深さ表示は、再構成されたホログラフィックインターフェログラムデータに基づいて決定される。たとえば、深さ表示は地形図であり、特にコーティング表面の形状を視覚化する再構成から生じる3次元画像の2次元投影であり、デカルト座標系は、コーティングの下にあるプローブ表面と一致する参照x-y平面で想像できる。この例では平面であると想定される。この構成では、コーティング表面上の点のz値は、完全な深さ、つまりコーティングの厚さとして解釈される。第1および第2の波長を超える合成波長に対応する再構成データをもたらすデジタルホログラフィック再構成の好ましい場合において、コーティング表面の微細構造およびコーティング厚さの実質的により大きな幾何学的変動の両方が、地形図によって解決される。
【0057】
好ましくは、衝撃試験による損傷は、例えば、75mm×75mmの正方形領域など、コーティングされたプローブ表面の有限領域に限定される弾道装置110によって制御される。多くの場合、この正方形の領域のみが地形図に表示される。ただし、深さの値は、正方形の領域の外側でも収集できる。次に、コーティングされたプローブ表面のおそらく傾斜した位置を、すなわち、例えばプローブの角の位置であり得る1つより多い、好ましくは少なくとも3つの位置で、正方形の外側の深さ値を平均することによって検出することができる。次に、衝突領域の内側からの値を含む、したがって地形図に含まれるすべての深さ値を、傾斜した位置に対して補正することができる。
【0058】
工程43において、コーティング特性は、深さ表示に基づいて導出される。本明細書で説明する実施形態では、深さ表示は地形図を含み、工程43自体は、深さヒストグラムを生成する工程431、ヒストグラム内の局所的な最大値の位置を示すピーク深さ間隔を決定する工程432、および決定されたピーク深さ間隔に基づいてコーティング特性を導出する工程433を含む。次に、工程431は、所定の深さ間隔のそれぞれについて、地形図によって示されるコーティング深さがそれぞれの深さ間隔にあるサブセット内のプローブ表面点の数を数える工程4311と、カウント結果をそれぞれの深さ間隔に関連付ける工程4312とを含む。この特定の実施形態では、所定の深さ間隔は、等しいサイズを有するように選択され、このサイズは1μmであると決定され、深さ間隔の数は、損傷していない領域のコーティングの深さに対応する推定最大コーティング深さに等しいと見なされる。通常、この方法では、衝撃試験から生じるコーティングへの損傷が衝撃領域のコーティングの深さを最大100μmまで減少させると予想されるため、深さ間隔の数は少なくとも100である。次に、地形図のすべてのポイントを調べ、それに関連付けられた深さが指定された深さ間隔内にあるかどうかを各ポイントで決定することにより、カウントが実行される。深さ値が特定の深さ間隔内にあるかどうかを判断することは、深さ値を深さ間隔の境界と比較することを含む。例えば、深さ値が、深さ間隔の下限以上であるが深さ間隔の上限よりも小さい場合、深さ値は深さ間隔内にあると決定される。このようにして、深さヒストグラムに表されていない深さ値が存在するリスクを冒すことなく、すべての深さ間隔に対応して決定を下すことができる。
【0059】
チップ衝撃試験の文脈では、深さの値は、侵入深さの値dpである可能性がある。つまり、特定のプローブ表面点でのコーティングの厚さと無傷のコーティングの深さの間の偏差を示す。無傷のコーティングの深さは、衝撃領域の外側のコーティングの厚さに対応し得る。侵入深さは、実際のコーティングの厚さを知らなくても決定できるが、無傷のコーティング表面に対応するz座標の値z0、おそらく傾斜したプローブ位置が前述のように補正されていると、それぞれのポイントでのコーティング表面のz座標の値の差、すなわちdp=z0-zを決定するだけである。好ましくは、両方向でz0の周りに対応するマージンを設定することにより、所定の粗さレベルを超える絶対値を有する侵入深さ値のみが考慮される。このマージンのサイズは、手動または自動で設定できる。自動的に設定される場合、それは、好ましくは、参照プローブなどの参照パターンから学習され、その後、以降のすべてのプローブに適用される。衝撃試験では、マージンは、実質的に損傷することなくコーティング表面から跳ね返ったチップの衝撃を無視するのにも役立つ。マージンは一般にコーティングの種類によって異なり、小さな無視レベルの0.5μmから、クリアコートなどの透明コーティングの場合の5μmまでの範囲になる。
【0060】
ヒストグラム内の局所的な最大値の位置を示すピーク深さ間隔を決定する工程432は、
図3を参照して説明されるこの特定の実施形態では、ベース深さの多様性を示す許容閾値を提供する工程4321、選択された深さ間隔に関連するカウント結果を差し引くことによるカウント差異を計算する工程4322、選択されたカウント差の符号を決定する工程4323、および/または選択された深さ間隔に関連するカウント結果を比較する工程4324、および提供された許容閾値、計算されたカウントの差、および決定された符号および/または比較されたカウント結果に基づいてピーク深さ間隔を決定する工程4324を含む。この実施形態では、許容閾値は、ベースレベル、すなわち、実質的にすべての深さ間隔でほぼ検出されたカウントの数を排除するのに役立ち、自動的に決定される。その存在は、欠陥の一般的に不均一な形状によるものである。他の実施形態では、許容閾値は手動で設定される。工程4322は、好ましくは、関数の離散導関数を決定するための標準的な技術を使用し、この場合、関数は、コーティングの深さに依存して結果をカウントすることによって与えられる。工程4323は、この実施形態では、カウント結果の離散導関数の符号が変化する2つの隣接する深さ間隔、すなわち、カウント差を検出することによって実現され、検出は、提供された許容閾値を超えるカウント結果に関連する深さ間隔に対してのみ実行される。ピーク深さ間隔が決定されると、工程433において、それに基づいてコーティング特性が導き出される。次に、導出されたコーティング特性に基づいてコーティングの評価44を実施することができる。コーティング特性は、好ましくは、コーティングの構造および/または材料の変化を示す。これは、コーティングに発射された弾道物体が、コーティング内の構造および/または材料の変化に対応する深さを示す欠陥をその中に残すためであり、例えば、2つのコーティング層間の界面によって与えられる可能性がある。最初のタイプの欠陥は、層の界面でのコーティング材料の顕著なオフチッピングにより、鋭いピークにつながる。2番目のタイプの欠陥は、ヒストグラムのより広いピークにつながる。この2番目のタイプの欠陥は、弾道物体がより掘り下げてコーティング材料に入り、欠陥壁に沿って層の大部分を表示する場合に発生する。
【0061】
好ましくは、コーティングは、薄い表面層、表面層の下にある第1の主要欠陥層、および第1の主要欠陥層の下にある第2の主要欠陥層を含む。その場合、ヒストグラムは3つのピーク深さ間隔を含み、第1のピーク深さ間隔はコーティングの表面層を示し、第2のピーク深さ間隔は第1の主要欠陥層を示し、第3のピーク深さ間隔はコーティングの2番目の主要な欠陥層を示す。次に、コーティング特性は、例えば、第1の主要欠陥層と第2の主要欠陥層との間で遷移が発生する位置を示す界面部分深さ値として導出することができる。特定の実施形態では、特徴的なサイズは、地形図において、プローブ表面に平行な方向で、決定された界面部分深さに対応する深さでその範囲を測定することによって、各欠陥について推定することができる。複数の欠陥の特徴的なサイズを統計的に分析することができ、統計分析を使用して、標準的な参照値に従ってコーティングの機械的抵抗を評価することができる。例えば、そのような標準参照値は、複数の欠陥の平均的な特性サイズに依存する可能性がある。それはさらに、追加的または代替的に、コーティング表面の損傷領域の総割合に依存し得る。損傷した領域の見積もりは、欠陥に起因するポイントの総数によって与えられる場合がある。この数は、深さヒストグラムに基づいて、つまりピークに関連付けられたカウント結果を合計することによっても見積もることができる。カウント結果は、ピークの最大値を示す対応する決定されたピーク深さ間隔の周りの所定の範囲内にある深さ間隔に関連付けられている場合、ピークに関連付けられ得る。たとえば、カウント結果がピークの6σの範囲内にある場合は、カウント結果を含めることができる。σは標準変動を示す。ただし、他の範囲も適用でき、モデルシステムから学習できる可能性がある。また、決定された境界面の部分的な深さを超える位置を示す深さ間隔に関連付けられているカウント結果のみが含まれる可能性がある。
【0062】
図4は、前の図に関して説明した実施形態による例示的な深さヒストグラムHを示している。横軸はコーティングへの侵入深さdpを1μm単位で示し、縦軸はコーティング結果n、つまりそれぞれの侵入深さを示す、センシングデータが最初に提供されたプローブ表面点の所定のサブセット内のポイント数を示す。たとえば、7±0.5μmの侵入深さが測定されたコーティングの検査部分には約10,000ポイントが存在する。ヒストグラムHは、3つの最大値を表示し、そのうち2つは顕著に現れているが、最初の最大値のピーク値は大幅に低くなっている。それぞれのピーク深さ間隔は、最初のピークで2μmから6μm、2番目のピークで45μmから57μm、3番目のピークで87μmから98μmである。ピーク間では、約17,000カウントの閾値を超えない。同時に、表示された貫通深さの範囲では、カウント結果も0に近づくことはない。この0から17,000までのカウントの基本レベルは、コーティング特性の導出には無関係であると理解できるため、許容閾値を17,000に設定することで排除できる。
【0063】
図5は、
図4のヒストグラムHの離散導関数H‘を示している。ここでも、横軸は侵入深さdpをμmで示し、縦軸は、カウント結果nが侵入深さの間隔ごとにどのように変化するかを測定する。Δn/Δdpで表されるこの変化は、マイクロメートルの逆数の単位、μm
-1で測定される。2番目と3番目の最大値は、それぞれ約51μmと約92μmでの離散導関数の明確に区別可能な符号の変化に基づいてかなり簡単に検出される。どちらの場合も符号はプラスからマイナスに変化する。最初のピーク深さ位置を決定するために、2つの侵入深さ値、つまり約5μmの値と約7μmの値が候補として機能する。これらの値の両方で、離散導関数の符号がプラスからマイナスに変化するためである。この場合、真のピーク深さ間隔位置は平均化によって計算される。つまり、この場合は6μmになる。他の実施形態では、真のピーク深さ間隔位置は、おそらくガウス形状の分析ピーク関数を、ピークの近傍のカウント結果に適合させることによって決定され、ピーク位置は、分析ピーク関数の最大値の位置として推定される。
【0064】
図6は、チップ衝撃試験手順中のチップの衝撃に起因する欠陥を有する多層コーティングで覆われたプローブの例示的な部分の断面を示している。
図6は、コーティングの内部、この場合はプローブからの検知データに基づいて決定された層プロファイルの概略的な視覚化と見なすこともできる。プローブは、バルク部分PBおよびプローブ表面PSを含む。コーティングはプローブ表面PSを覆い、3つの層で構成される。最上層は比較的薄い表面層LSである。その下に、第1の主層L1および第2の主層L2が続き、ここで、表面層LSおよび第1の主層は、インターフェースIS1によって分割されている。この例では、第1の主層L1は、表面層LSと第2の主層L2との間に挟まれており、第2の層は、プローブ表面PSと直接接触している。欠陥Dは3つの層すべてに影響を及ぼす。他の例では、コーティングはさらなる層を含み得、下の層は、チップの衝撃によって影響されないように十分に深く横たわっている。
図6に示す例では、第1の主層L1と第2の主層L2の両方が実質的に影響を受けるため、それぞれ第1および第2の主要欠陥層と呼ぶこともできる。欠陥Dの特徴的なサイズは、断面において、第1の主欠陥層L1と第2の主欠陥層L2との間の界面I12に沿って測定される、その幅wによって与えられると仮定される。界面の位置、すなわち部分的な深さは、深さヒストグラムから決定されたそれぞれのピーク深さ間隔から、または透明または部分的に透明なコーティングの場合は、上で説明したように層プロファイルから知られている。Wが測定される断面は、例えば、Wが最大になるように、企業の慣習に従って選択され得る。任意に、WをさらにW‘=(W+W
perp)/2に修正することもできる。ここで、W
perpは、元の断面に垂直な断面の境界面I12に沿った測定値としての欠陥の最大範囲である。次に、欠陥は、慣例により、指定された閾値によって定義された重大度クラスに分類される。たとえば、W
(‘
)≦1mmの欠陥は最も重大度の低いクラスに分類されるが、1mm<W
(‘
)≦1mmの欠陥はすでにより重大度の高いクラスに分類される。おそらく平均重大度クラスおよび/または標準変動によってほぼパラメータ化された、すべての欠陥にわたる重大度クラスの分布は、チップの衝撃に対するテストされたコーティングの抵抗を正確に測定する。その特性は、コーティングの機械的抵抗の評価44に役立つ。
【0065】
図を参照して上記の実施形態は、衝撃試験手順から生じた衝撃に関してコーティングを検査し、デジタルホログラフィック技術を使用するための本発明の適用を参照したが、同じまたは同様の原理を他の目的にも、そして異なる手段で適用できることが理解される。特に、開示された方法は、ホログラフィックイメージング技術と組み合わせて使用されることに限定されず、同様に、深さ表示を決定するのに適したセンシングを提供するための他の手段を利用することができる。そのような手段は、具体的には、プロフィロメトリックおよびデフレクトメトリック測定および/または画像化システムを含む。また、この方法は、構造化コーティングがフィルムまたはホイルに適用される進行中の製造プロセスを監視するための用途を見つけること、または特定の機能を得るために望ましい特定のコーティング構造が達成されたかどうかなどのその結果を評価するための用途を見つけることが理解される。特に、深さヒストグラムの決定は、石の衝撃試験に関連してのみ提案されてきたが、本明細書で言及される深さヒストグラムは、そこから客観的特性を導き出すことによって、他のタイプのコーティングの検査においても有利であることが理解される。他方、クリアコートなどの透明または部分的に透明なコーティングに対して実施される衝撃試験では、付加的にまたは代替的に、コーティングの地形図から深さヒストグラムが決定され、層界面の位置などのコーティング特性が、層プロファイルから導出することもできることに留意されたい。
【0066】
開示された実施形態に対する他の変形は、当業者によって理解され、実施され、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の検討から特許請求される発明を実施することができる。
【0067】
請求項において、「含む」という単語は、他の要素または工程を除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。
【0068】
単一のユニットまたはデバイスは、特許請求の範囲で引用されるいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
【0069】
センシングデータの提供、センシングデータからのコーティングの深さ表示の決定、深さ表示に基づくコーティング特性の導出などの手順だけでなく、弾道物体のコーティングへの発射などの手順、コーティングの洗浄、および1つまたは複数のユニットまたはデバイスによって実行されると説明されているセンシングデータの収集は、他の任意の数のユニットまたはデバイスによって実行できる。これらの手順および/またはシステムの操作は、コンピュータプログラムの命令としておよび/または専用のハードウェアとして実施することができる。
【0070】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、またはその一部として供給される、光記憶媒体または固体記憶媒体などの適切な媒体上に格納および/または分配することができるが、他の形態、例えば、インターネットまたはその他の有線または無線通信システムなど他の形態でも分配できる。クレーム内の参照記号は、範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。